東大 過去問 2025年 化学|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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東京大学 第2次学力試験(前期)2025年 理科「化学」(東京大学公式サイト)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

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お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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化  学

第1問 次の文章を読み,問ア~コに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。

t1-0

アボガドロ定数 NA=6.0×1023mol−1

気体定数 R=8.31×103Pa·L·K−1·mol−1,2=1.41,3=1.73

 物質の①沸点と②融点は,物質を構成する原子間,イオン間や分子間にどのような結合が形成され,どのような力が働くかによって決まる。例えば,図1—1に 14 族から 17 族の水素化合物の分子量と大気圧における沸点の関係を示すとおり,③元素の族によらず共通の傾向がある。一方,金属の融点はさまざまであり,タングステンのように融点が 3000∘C を超える金属もあれば,④水銀やガリウムのように低い融点をもつ金属もある。

 状態図は,温度と圧力を変化させたときに物質がとる状態を表す。さまざまな圧力における沸点や融点を読み取れるだけでなく,⑤圧力を変えたときの物質の状態の変化,⑥蒸気圧降下,沸点上昇,凝固点降下といった希薄溶液の性質や,⑦昇華や凝華(注1)といった現象も状態図を用いて理解できる。また,状態図には,ある特定の温度と圧力で現れる特徴的な状態も表される。例えば,図1—2に示した水の状態図において,点Tは固体,液体,気体が共存する⑧三重点である。点Cは⑨臨界点であり,点Cにおいて液体と気体の密度が一致する。温度と圧力が点Cの値を超える領域(図1—2の網掛け部分)は超臨界状態とよばれ,この状態において物質は液体と気体の両方の性質をもつ。

 (注1)凝華:物質の状態が気体から固体に変化すること。

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図1—1 水素化合物の沸点
図1—1 水素化合物の沸点
図1—2 水の状態図
図1—2 水の状態図

〔問〕

ア 下線部①と③に関して,図1—1に示した水素化合物のうち,分子量が 30 を超える物質に着目すると,分子量が大きいほど高い沸点をもつ傾向がある。このような傾向がある理由を簡潔に述べよ。

イ 下線部②に関して,CaO,KF,MgO,NaF の結晶構造は全て塩化ナトリウム型であり,表1—1は各物質の単位格子の一辺の長さ a を示す。これらの物質を,融点の高い順に左から並べよ。

表1—1 単位格子の一辺の長さ
表1—1 単位格子の一辺の長さ
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ウ 下線部④に関して,金属元素のうち,大気圧における単体の融点が 100∘C 未満であるものを,水銀とガリウム以外から 1 つ答えよ。ただし,安定に存在する同位体をもつ金属元素から答えること。さらに,答えた金属元素の単体が低い融点をもつ理由を簡潔に述べよ。

エ 下線部⑤に関して,図1—2に示すように,大気圧下で 0∘C よりもわずかに低温の点Mから,温度を一定に保ったまま圧力がゆっくりと上昇したとき,氷は点Nの圧力において融解し水となる。これは,点Nにおける氷の密度が水と比べて低いためである。氷の結晶構造に関する以下の説明文を読み,大気圧,0∘C における氷の密度を計算し,水の密度と比べて低いことを示せ。答えに至る過程も記せ。なお,大気圧,0∘C における水の密度は 1.00g·cm−3 としてよい。

〔説明文〕

 大気圧,0∘C における氷の結晶構造を図1—3に示す。氷において,酸素原子の位置は規則正しく繰り返されている。一方,水素原子は,隣接する 2 つの酸素原子の間にあり,共有結合と水素結合で隣接する酸素原子と結びついている。この結晶構造の単位格子は,図1—4に示すように,一辺の長さが 0.45nm,内角の 1 つが 120∘ のひし形の底面をもち,高さが 0.74nm の四角柱の形状である。この単位格子において,全ての酸素原子は長方形DEFG上にあり,図1—5はその様子を示している。

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図1—3 氷の結晶構造
図1—3 氷の結晶構造

実線は共有結合を,破線は水素結合を示す。

図1—4 氷の単位格子
図1—4 氷の単位格子

水素原子を省略している。

図1—5 図1—4のDEFGを通る断面図
図1—5 図1—4のDEFGを通る断面図

オ 下線部⑥および⑧に関して,水に不揮発性の物質を少量溶解させたときに,図1—2の三重点Tの(A)温度と(B)圧力はどのように変化するか。(A)と(B)のそれぞれの変化について,次の(1)~(3)から選べ。

(1) 上昇する

(2) 変化しない

(3) 低下する

カ 下線部⑥に関して,希薄溶液の溶媒の蒸気圧 p は溶媒のモル分率 x に比例し,純粋な溶媒の蒸気圧 p0 を用いて p=xp0 と表される。これをラウールの法則という。いま,少量の不揮発性の物質を水に溶解させた水溶液Sを調製し,水溶液Sと水の蒸気圧を比べたところ,水溶液Sの蒸気圧 P は水の蒸気圧 P0 と比べて低く,両者の差 ΔP=P0−P は P0 に対して 0.0720% だった。大気圧における,水溶液Sと水の沸点の差は何 K か,有効数字 2 桁で求めよ。答えに至る過程も記せ。なお,水のモル沸点上昇の値 Kb=0.52K·kg·mol−1 を用いてよい。また,蒸気圧降下の大きさの温度変化は無視してよい。

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キ 下線部⑦の状態の変化は,固体の無機物や有機物の精製に使われる。以下に,ある化合物Aの精製(昇華精製)の説明文を記す。説明文中の下線部⑩のようにして,化合物Aをガラス容器の中間(位置Y)に凝華させるべき理由を述べよ。なお,理由には,化合物Aが凝華したときに図1—6のX,Zの各位置に存在する物質に関する記述を含めること。

〔説明文〕

 化合物Aとさまざまな不純物を含む粉末がある。この粉末を,図1—6に示すように,円筒形のガラス容器の左端(位置X)に置いた。次に,粉末が飛散しないように気をつけながら,真空ポンプを用いてガラス容器内を減圧し,低い圧力 P1 に保った。続いて,⑩ガラス容器を加熱することで図1—6のグラフのようにガラス容器内に温度勾配をつけ,十分な時間保持した。その結果,位置Yに化合物Aが凝華した。X,Zの各位置には固体の物質が存在した。その後,加熱をやめ,高い純度の化合物Aを位置Yから回収した。

図1—6 化合物Aの昇華精製の概略図
図1—6 化合物Aの昇華精製の概略図
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ク 昇華精製は,さまざまな溶媒に対して低い溶解度をもつ固体物質の精製によく用いられる。一方,いずれかの溶媒に十分に溶解する固体物質の精製には,a,bやクロマトグラフィーといった,溶媒を用いる手法が用いられることが多い。また,溶媒に十分に溶解する物質であっても,さらに純度を高めるために,⑪溶媒を用いる手法により精製された後に,昇華精製が行われることもある。aとbにあてはまる最も適切な語句をそれぞれ 5 文字以内で記せ。また,下線部⑪の手順において昇華精製が行われる理由のうち,溶媒に関係する理由を簡潔に述べよ。

ケ 下線部⑨に関して,臨界点Cにおける水蒸気の実際の密度は,理想気体の場合と大きく異なる。理想気体を仮定したときに,点Cに近い温度 377∘C(650K)と圧力 2.00×107Pa における水蒸気の密度〔g·cm−3〕を有効数字 2 桁で求めよ。答えに至る過程も記せ。

コ 下線部⑨に関して,臨界点Cでは密度だけでなく熱やエネルギーについても特徴的な性質が現れ,曲線TCに沿って点Cに向かうとcが 0 に近づき,点Cにおいて 0 になる。cにあてはまる最も適切な語句を答えよ。

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第2問 次の文章を読み,問ア~サに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。

log100.5=−0.30,log100.7=−0.15

なお,[物質]は,ある物質の溶液中のモル濃度を表す。

 火山で噴気として放出されるガス(火山ガス)は,その①大部分を水蒸気が占め,他には二酸化炭素,硫化水素,二酸化硫黄,塩化水素等が含まれる。火山ガスを②水酸化カリウム水溶液等の塩基性水溶液に通すと,二酸化炭素,硫化水素,二酸化硫黄,塩化水素は溶液に溶ける。③この溶液中の各イオンの濃度を測定することで,火山ガス中の二酸化炭素と塩化水素の濃度を求めることができる。一方,硫化水素と二酸化硫黄は採取後に溶液中で互いに反応し,単体の硫黄を生成するため,この方法で火山ガス中の硫化水素と二酸化硫黄の濃度を求めることは難しい。そこで別に,④ヨウ素酸カリウム(KIO3)とヨウ化カリウムの塩酸酸性水溶液に火山ガスを通じ,⑤硫化水素と二酸化硫黄をヨウ素と反応させ,それぞれ単体の硫黄と硫酸イオンを生成させる。この単体の硫黄と,溶液中の硫酸イオンを分けて定量することで,火山ガス中の硫化水素と二酸化硫黄の濃度を求める。

 火山ガスに含まれる⑥水と硫化水素は,ともに 16 族元素A(O,S,Se,Te)からなる H2A 分子である。16 族元素の H2A 分子の沸点を比べると,水の沸点が他より異常に高い。これは水分子間に働く水素結合に由来する。⑦水素結合を X−Hδ+⋯Yδ−(XとYは主に酸素原子や窒素原子)と表記すると,X−Hδ+ と Yδ− の間には,主に静電気的な引力が働いている。

〔問〕

ア 下線部①に関して,図2—1のように火山ガスを氷水で冷却し,火山ガス中の水蒸気が凝縮した水を主とする液体(凝縮水)と,残留気体に分けて採取した。全ての二酸化硫黄は硫化水素と反応し,単体の硫黄を生成した。一方,二酸化炭素,硫化水素,塩化水素は,凝縮水か残留気体のいずれかに含まれていた。これら 3 つの成分が,それぞれ凝縮水と残留気体のいずれに主に含まれるか,理由とともに答えよ。

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図2—1 火山ガスからの凝縮水と残留気体の分取
図2—1 火山ガスからの凝縮水と残留気体の分取

イ 下線部②に関して,塩基性水溶液として水酸化カルシウム水溶液を使うと,はじめは炭酸カルシウム等の沈殿が生じるが,さらに火山ガスを通し続けると沈殿の量が減少する。これは炭酸カルシウムの沈殿が溶け,炭酸水素イオンとカルシウムイオンが生じるためである。

 炭酸水素カルシウムは固体として単離されないため,水への溶解度を実験的に求めることはできない。しかし,炭酸カルシウムの沈殿の溶解が進行し,沈殿が完全に消失したとき,水溶液中に溶けている炭酸水素イオンとカルシウムイオンの量から,みかけの溶解度を理論的に計算することは可能である。

 水酸化カルシウム水溶液に過剰の二酸化炭素を加え,炭酸カルシウムの沈殿が完全に消失したとき,水溶液の pH は 8.3 であった。このとき,炭酸水素カルシウムのみかけの溶解度〔mol·L−1〕として,最も近いものを以下の(あ)~(お)から選べ。ただし計算の過程を示すこと。

 必要に応じて以下の定数を用いてよい。

炭酸カルシウムの溶解度積 Ksp=5.0×10−9(mol·L−1)2

K1=[H+][HCO3−][CO2]=5.0×10−7mol·L−1 K2=[H+][CO32−][HCO3−]=5.0×10−11mol·L−1

(あ)5×10−4

(い)5×10−3

(う)5×10−2

(え)5×10−1

(お)5

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ウ 下線部③に関して,水溶液中の塩化物イオン濃度の測定には,クロム酸カリウム水溶液を指示薬として,硝酸銀水溶液により滴定する方法(モール法)がよく用いられる。しかし,下線部③の溶液中の塩化物イオン濃度は,モール法では正しく定量できない。その理由を述べよ。

エ 下線部④の水溶液中でヨウ素が生成する反応式を書け。

オ 下線部⑤に関して,二酸化硫黄がヨウ素を含む水溶液に溶け,亜硫酸が生じる反応式と,亜硫酸とヨウ素が反応して硫酸が生じる反応式をそれぞれ記せ。

カ 下線部⑤に関して,火山ガス中のほぼ全ての硫化水素はヨウ素と反応して単体の硫黄を生じるが,その硫黄がさらにヨウ素と反応して亜硫酸を生じることはない。これにより硫化水素に由来する単体の硫黄と,二酸化硫黄に由来する硫酸を分別して定量できる。硫化水素とヨウ素が反応して単体の硫黄を生じる平衡反応と,単体の硫黄とヨウ素が反応して亜硫酸が生じる平衡反応の,反応式をそれぞれ記せ。また,実際にはこれらの平衡反応のいずれにおいても,硫黄を含む物質として単体の硫黄のみが生じる理由を述べよ。

キ 下線部⑥に関して,分子の形は,電子対(共有電子対や非共有電子対)の間に働く静電気的な反発が最も小さくなる構造から推定できる。16 族元素の H2A 分子には,2 つの A−H 結合の共有電子対と,A原子上の 2 つの非共有電子対がある。これら 4 つの電子対が,A原子を中心とした四面体の頂点方向に配置される場合に,電子対間の反発は最も小さい。そのため,16 族元素の H2A 分子は折れ線構造をとると推定される。

 亜硫酸イオンの電子式を示し,上記を踏まえて亜硫酸イオンがとりうる立体構造を推定して図示せよ。またそのように推定した理由も簡潔に述べよ。ただし硫黄と酸素の間の結合はいずれも等価とする。なお立体構造を図示する際は,図2—2に示す六フッ化硫黄の例を参考にしてもよい。

図2—2 六フッ化硫黄の立体構造を表す模式図
図2—2 六フッ化硫黄の立体構造を表す模式図
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ク 下線部⑦に関して,X−Hδ+ を水素結合のドナー,Yδ− を水素結合のアクセプターと呼ぶ。水素結合のドナー部位をもつ分子Gとアクセプター部位をもつ分子Qが,ある溶媒中で水素結合を介して複合体 G·Q を形成する式(1)の平衡を考える。

p34a

 このとき,溶媒の影響を無視し,式(1)の反応の平衡定数(KGQ)を式(2)で定義する。

KGQ=[G·Q][G][Q](2)

 つづいて,溶媒の影響を考慮し,G·Q の形成を考える。溶媒分子(W)が水素結合のドナー部位とアクセプター部位を併せもつ場合,複合体を形成していないGとQはWと水素結合を形成し,この状態を G·W,W·Q と表す。G·W と W·Q から G·Q の形成に伴い,2 つのWが水素結合を介して二量体 W·W を形成すると仮定すると,溶媒Wの中で G·Q を形成する平衡は式(3)で表される。

p34b

 ここで,G·W,W·Q,W·W それぞれの形成を式(1)と同じように表し,これらの平衡定数 KGW,KWQ,KWW を式(2)と同様に定義する。式(3)の平衡定数(K)を KGW,KWQ,KGQ,KWW を使って表せ。

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ケ 問クにおいて,式(1)の反応の平衡定数 KGQ の常用対数(log10KGQ)が,αG と βQ の積で表されるとする(式(4))。

log10KGQ=αGβQ(4)

ここで,αG をGのドナー定数,βQ をQのアクセプター定数と呼ぶ。これらはともに正の実数であり,GとQが互いに相互作用する部分の電荷の絶対値に比例する。

 Wのドナー定数とアクセプター定数をそれぞれ αW,βW とする。ここで,log10KGW,log10KWQ,log10KWW は式(5)~(7)で表されるとする。

log10KGW=αGβW(5) log10KWQ=αWβQ(6) log10KWW=αWβW(7)

 このとき問クの式(3)の平衡が右に偏る条件が,以下の 2 つのいずれかであることを示せ。

αG>αWかつβQ>βW(条件 1) αG<αWかつβQ<βW(条件 2)

コ 問ケの条件 1 と 2 それぞれについて,G·Q を形成する駆動力を説明せよ。

サ 問クとケの考え方は,GとQの間に水素結合を形成しない場合にも拡張できる。セッケンを水に溶かして生じる脂肪酸イオンは親水部と疎水部をもち,ある濃度以上になると水中でミセルを形成する(図2—3)。ミセルの形成では,式(3)のGとQがそれぞれ何に相当するか,図2—3中の(か)~(け)から選べ。また,このとき条件 1 と 2 のどちらが成立しているか,その理由とともに答えよ。

図2—3 ミセルの形成の模式図
図2—3 ミセルの形成の模式図

セッケン由来の脂肪酸イオンおよびミセルに近接する水分子のみを模式的に示している。

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第3問 次の文章を読み,問ア~ケに答えよ。なお,アミノ酸やペプチドの構造式は,それぞれのアミノ基,N末端を左側に置いて描くこと。特に指示がない限り,官能基の電離状態を考えなくてよい。必要があれば以下の原子量を用いよ。

H:1.0,C:12,N:14,O:16,S:32

 ペプチドは,構成要素となる複数のアミノ酸の間でアミノ基とカルボキシ基が脱水縮合してできた化合物で,鎖状のペプチドは,図3—1(a)に示すとおりN末端とC末端をもつ。図3—1(b)に示すα-アミノ酸においては,側鎖(R)が水素以外の場合,①L型とD型の鏡像異性体が存在する。

 ペプチドは,脱水縮合を促進する試薬である「縮合剤」を用い,複数のアミノ酸を脱水縮合することで化学合成できる。②アミノ酸は分子内にアミノ基とカルボキシ基を両方もつため,目的のペプチドを高い効率で合成するためには,これらの官能基の反応性を適切に制御することが重要である。有機化学では,反応性の高い官能基を反応性の低い官能基に変換しておくことを「保護」といい,この目的に使用する原子団(基)を「保護基」という。また,保護基を適切な反応によって除去し,反応性の高いもとの官能基に戻すことを「脱保護」という。③ペプチドの合成では,ペプチドの化学構造や脱水縮合の条件を考慮し,適切な保護基を選択する必要がある。

 ペプチドの合成法には,全ての反応を均一な溶液中で行う「液相合成法」と,不溶性の合成樹脂の細粒(樹脂ビーズ)上で反応を行う「固相合成法」がある。④固相合成法を用いると,数十個以上のアミノ酸が結合したポリペプチドの簡便な合成が可能になる。これにより生命科学研究や医薬品開発が飛躍的に進歩した。

図3—1 ペプチドのN末端・C末端の定義と,α-アミノ酸の構造
図3—1 ペプチドのN末端・C末端の定義と,α-アミノ酸の構造

(a)ペプチドのN末端とC末端の定義。(b)L型とD型α-アミノ酸の一般的構造。図の破線—くさび型表記では,破線で表される結合(

p36a

)が紙面奥側に,くさびで表される結合(

p36b

)が紙面手前側に出ていることを表す。なお,紙面奥側,手前側の結合を左右どちらに表記しても同じ構造を表す。

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表3—1 本問に関連するα-アミノ酸の名称,側鎖(R)の構造,分子量
表3—1 本問に関連するα-アミノ酸の名称,側鎖(R)の構造,分子量

〔問〕

ア ビウレット反応を用いると,一般的にトリペプチド以上の長さのペプチドを検出できる。この反応に使用する最も適切な試薬を選択肢(1)~(5)から,また反応を行う水溶液の液性を選択肢(6),(7)からそれぞれ選べ。

(1) FeCl3

(2) FeCl2

(3) Cu2O

(4) CuSO4

(5) KMnO4

(6) 酸性

(7) 塩基性

イ アミノ酸 A1,A2,A3,A4 から構成される鎖状テトラペプチドXの化学構造を決定する実験を行ったところ,以下のように結果 1 ~ 8 を得た。アミノ酸 A1,A2,A3 の名称をそれぞれ書け。L型とD型を区別する必要はない。また,A4 として考えうるアミノ酸の構造式を図3—2を参考にして全て描け。アミドの C−N 結合は自由に回転できるものとする。

図3—2 構造式の例
図3—2 構造式の例

不斉炭素原子をもつ場合には,図3—1(b)に準じて破線—くさび型表記を用いよ。

結果1:A1,A2,A3,A4 は全て異なるアミノ酸であった。

結果2:ペプチドXの配列はN末端から順に A1,A2,A3,A4 であった。

結果3:A1,A2,A3 はいずれもα-アミノ酸で,側鎖(R)は表3—1に示すもののいずれかであった。

結果4:A4 は 1 つのアミノ基(−NH2)と 1 つのカルボキシ基以外は飽和炭化水素で構成されるアミノ酸で,環状構造をもたなかった。

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結果5:ペプチドXを塩酸で短時間処理し,部分的にアミド結合を加水分解すると,トリペプチドa,bとジペプチドc,d,eが得られた。

結果6:結果5で得られたa,b,c,d,eについて,pH 7.0 の緩衝液を用いて電気泳動を行ったところ,aとcのみが陰極側に移動した。

結果7:結果5で得られたcの分子量は 220 未満であった。また,cを完全に加水分解して得られたアミノ酸のうち,pH 7.0 の緩衝液中,電気泳動で陰極側に移動したアミノ酸を元素分析した結果,質量百分率が C:49.3%,H:9.6%,N:19.2%,O:21.9% であった。

結果8:結果5で得られたa,b,c,d,eのうち 1 種類のペプチドは立体異性体をもたず,そのペプチドの分子量は 150 以上 170 未満であった。

ウ 下線部①に関連して,化合物Bから触媒Cを用いて,D型アラニンに容易に変換可能な化合物Dを合成した(図3—3)。これに関する以下の文章の空欄あ~うにあてはまる最も適切な語句を記せ。なお,うは「奥」または「手前」のいずれかで解答せよ。

図3—3 化合物Bと触媒Cを用いた化合物Dの合成反応式
図3—3 化合物Bと触媒Cを用いた化合物Dの合成反応式

破線—くさび型表記は図3—1(b)に準ずる。

 化合物Bの水素化を行う際に,鏡像異性体の一方である触媒C(不斉触媒)を用いたところ,化合物Dが化合物Eよりも多く生成した。この反応の遷移状態では,化合物B,触媒C,水素の 3 成分から複合体が生じる。このとき,水素が図3—3における化合物Bの紙面手前側から反応するか,奥側から反応するかによって,あの関係に相当する 2 種類の遷移状態が形成される。あは物理的・化学的性質が異なるため,2 種類の遷移状態を経由する反応経路において,いに差が生じる。図3—3の反応では,水素が紙面う側から反応する方がいが小さいため反応が進行しやすく,化合物Dが多く生成した。

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エ 下線部②に関連して,同じ物質量のL型アラニンとグリシンを溶媒中で混合し,縮合剤を作用させた。このとき生じうる鎖状ジペプチドは何種類考えられるか,数字で答えよ。ただし,不斉炭素原子に結合した原子および原子団(基)の立体的な配置は変化しないものとする。

オ 下線部②に関連して,L型アラニンのアミノ基がアセチル基で保護された化合物と,グリシンのカルボキシ基がエチルエステルとして保護された化合物を脱水縮合して得られる,保護されたジペプチドの構造式を問イの図3—2に記載された構造式の例にならって描け。

カ 下線部③に関連して,ポリペプチドの合成について考える。適切な保護基をもつアミノ酸を用いると,N末端とC末端の両方が保護されたジペプチドのN末端のアミノ基のみを選択的に脱保護できる。こうして得られたC末端が保護されたジペプチドと,アミノ基が保護された別のアミノ酸を脱水縮合すれば,N末端とC末端の両方が保護されたトリペプチドが得られる。このように脱保護—脱水縮合を繰り返し,最後に脱保護することで配列を制御してポリペプチドを合成できる。ここで,アミノ基がアセチル基で保護されたアミノ酸を用いると,ポリペプチドの収量が大幅に低下してしまう。この理由を脱保護時に起こりうる具体的な反応に言及し,簡潔に説明せよ。

キ 下線部④に関して,固相合成法の概略を図3—4および図3—5に示す。目的のペプチドを高い純度で合成するためには,液相合成法,固相合成法いずれの場合も,各工程において未反応の保護されたアミノ酸や縮合剤由来の不要な生成物などを除く精製操作が必要である。液相合成法では,カラムクロマトグラフィーなどの煩雑な精製操作が必要であるが,固相合成法では精製操作を大幅に簡略化できる。固相合成法においてどのような実験操作を行うと,不要な化合物を効率的に除去できるか,簡潔に説明せよ。

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図3—4 テトラペプチドを例としたペプチド固相合成の手順
図3—4 テトラペプチドを例としたペプチド固相合成の手順

保護されたアミノ酸 Y1~Y4 を用いて,樹脂ビーズ上でペプチド鎖をN末端方向に伸長させ,最後に脱保護,および樹脂ビーズ上の官能基とペプチドの間の結合を分解する反応を行うことで,目的のペプチドが得られる。樹脂ビーズには多数のペプチド鎖が結合しているが,図では簡略化のため,そのうちの 1 本のペプチド鎖のみが描かれている。

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図3—5 ペプチド固相合成中の反応容器の様子
図3—5 ペプチド固相合成中の反応容器の様子

ク 図3—4にしたがって,それぞれ適切に保護されたグリシン,D型アスパラギン酸,D型リシン,L型チロシンを順に用い,ペプチドZを得た。Zを水酸化ナトリウム水溶液中に溶解させた際,最も多く存在するZのイオンの構造式を,官能基の電離状態を考慮して描け。なお,図3—6に示したペプチドの部分構造を解答用紙に描き写し,図3—1(b)も参考にしながら,破線—くさび型表記を用いて,必要な構造を描き加えて完成させよ。アミド結合の NH は電離せず,アミノ酸側鎖はペプチド合成時に反応に関与しないものとする。また,水酸化ナトリウム水溶液中でペプチド結合は安定に存在し,不斉炭素原子に結合した原子および原子団(基)の立体的な配置は変化しないものとする。

図3—6 解答用紙に描き写すペプチドの部分構造
図3—6 解答用紙に描き写すペプチドの部分構造

ケ 図3—4に示す固相合成の途中で,保護されたアミノ酸 Y3 の脱水縮合(工程❸)の実験操作が終わり,ペプチドのN末端の脱保護を行う前に,樹脂ビーズを一部小分けにした。この小分けした樹脂ビーズをニンヒドリン溶液に浸し加熱したところ,青紫色を呈した。この結果を踏まえ,目的のテトラペプチドを高い収量で得るために,次に行うべき適切な実験操作を,理由とともに簡潔に述べよ。なお,保護基が脱保護の反応条件以外で除去されることはなく,ペプチド中のアミノ酸側鎖の影響は考慮しないものとする。