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化 学
第1問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~エに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
気体定数:R = 8.3 P a · m 3 · K − 1 · m o l − 1
水の飽和蒸気圧(27 ℃):3.5 × 10 3 P a
結果だけでなく,答に至る過程も示せ。気体はすべて理想気体とし,液体の体積および液体に対する気体(H 2 ,O 2 ,C O 2 )の溶解は無視できるものとする。
近年,メタンハイドレートと呼ばれるメタンの水和物が,日本近海の海底に多量に存在することが明らかになった。メタンハイドレートは水分子とメタン分子とからなる氷状の固体結晶である。高濃度にメタンを蓄える性質から「燃える氷」としても知られており,新しいエネルギー資源としてその有効利用に大きな期待が寄せられている。
水中における水分子は,水素結合によって周りの水分子と会合し,分子の集団を形成する。このような分子の集団はクラスターと呼ばれる。液体の水を冷却すると,水分子間の水素結合が切断されにくくなるため,クラスターのサイズが大きくなり,やがて氷の結晶へと成長する。水中にメタンのような疎水性分子が存在すると,水分子は疎水性分子を取り囲むようにしてクラスターを形成する。メタンハイドレートの結晶では,水分子がメタン分子の周りを“かご”状に取り囲んだ構造をとることが知られている。このようにして,メタン分子と水分子からハイドレートが形成され,全体としてエネルギーが低下する。以下では,メタンハイドレート(固体)の組成比は,メタン:水=4:23,またメタンハイドレート(固体)の密度は 0.91 g · c m − 3 とする。
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〔問〕
ア メタン(気体)と水(液体)からメタンハイドレート(固体)が生成する反応は,低温・高圧ほど有利である。その理由をルシャトリエの原理に基づいて80字以内で説明せよ。
イ 以下の式を用いて,メタンハイドレート(固体)の完全燃焼を熱化学方程式で記せ。ただし,式中でメタンハイドレートを 4 C H 4 · 23 H 2 O (固)と表す。また,燃焼後の水はすべて液体とする。
4 C H 4 · 23 H 2 O (固) = 4 C H 4 (気) + 23 H 2 O (液) + Q 1 [ k J ] ( 1 )
C (黒鉛) + 2 H 2 (気) = C H 4 (気) + Q 2 [ k J ] ( 2 )
C (黒鉛) + O 2 (気) = C O 2 (気) + Q 3 [ k J ] ( 3 )
H 2 (気) + 1 2 O 2 (気) = H 2 O (液) + Q 4 [ k J ] ( 4 )
ウ 容積 1.0 × 10 3 c m 3 の密閉容器を 0 ℃ で 5.1 × 10 4 P a の酸素で満たし,その中に体積 1.0 c m 3 のメタンハイドレート(固体)を入れ,完全燃焼させた。燃焼後に容器内に存在する水の物質量[mol]を有効数字2桁で求めよ。
エ 問ウにおける燃焼の後,密閉容器を 27 ℃ に保ち,平衡状態とした。このとき,容器内の圧力[Pa]を有効数字2桁で求めよ。
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Ⅱ 次の文章を読み,以下の問オ~クに答えよ。
生体内で起こる多くの化学反応において,酵素と呼ばれるタンパク質が触媒として働いている。酵素(E)は,基質(S)と結合して酵素—基質複合体(E · S )となり,反応生成物(P)を生じる。また酵素—基質複合体から酵素と基質に戻る反応も起こる。これらの反応は次式(1)~(3)のように表すことができる。
E + S ⟶ E · S ( 1 )
E · S ⟶ E + P ( 2 )
E · S ⟶ E + S ( 3 )
〔問〕
オ 以下の文の空欄( a )~( d )に入る適切な式を記せ。ただし,反応(1),(2),(3)の反応速度定数をそれぞれ k 1 ,k 2 ,k 3 とし,酵素,基質,酵素—基質複合体,反応生成物の濃度をそれぞれ [ E ] ,[ S ] ,[ E · S ] ,[ P ] とする。
反応(1)によって E · S が生成する速度は v 1 = ( a ),反応(2)において P が生成する速度は v 2 = ( b )と表される。一方,E · S が分解する反応は,反応(2)と反応(3)の2経路があり,それぞれの反応速度は,v 2 = ( b ),v 3 = ( c )と表される。したがって E · S の分解する速度 v 4 は,v 4 = ( d )となる。
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カ 多くの酵素反応では酵素—基質複合体 E · S の生成と分解が釣り合い,E · S の濃度は変化せず一定と考えることができる。この条件では,反応生成物 P の生成する速度 v 2 は,次式(4)となることを示せ。
v 2 = k 2 × [ E ] T × [ S ] K + [ S ] ( 4 )
ただし,[ E ] T は全酵素濃度,
[ E ] T = [ E ] + [ E · S ] ( 5 )
である。また,
K = k 2 + k 3 k 1 ( 6 )
である。
キ インベルターゼは加水分解酵素の一種であり,スクロースをグルコースとフルクトースに分解する。
C 12 H 22 O 11 スクロース + H 2 O ⟶ C 6 H 12 O 6 グルコース + C 6 H 12 O 6 フルクトース ( 7 )
式(7)の反応速度はスクロースを基質(S)として式(4)に従い,K = 1.5 × 10 − 2 m o l · L − 1 とする。インベルターゼ濃度が一定の場合,スクロース濃度が 1 × 10 − 6 ~1 × 10 − 5 m o l · L − 1 の範囲にあるとき,スクロース濃度と反応速度 v 2 との関係として最も適切なものを(A)~(D)から選べ。また,その理由を式(4)を用いて簡潔に説明せよ。
(A) 反応速度 v 2 はスクロース濃度にほぼ比例する。
(B) 反応速度 v 2 はスクロース濃度の2乗にほぼ比例する。
(C) 反応速度 v 2 はスクロース濃度にほぼ反比例する。
(D) 反応速度 v 2 はスクロース濃度によらずほぼ一定である。
ク 問キにおいて,スクロース濃度が 1 ~2 m o l · L − 1 の範囲にあるとき,スクロース濃度と反応速度 v 2 との関係として最も適切なものを,問キの(A)~(D)から選び,その理由を式(4)を用いて簡潔に説明せよ。
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第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
ファラデー定数:F = 9.65 × 10 4 C · m o l − 1
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。
一度放電したら,充電して再び用いるのが困難な電池を一次電池という。リチウムの単体が一次電池の負極として広く用いられるのは,高い電圧を取り出すのに有利なためである。アルカリ金属である①リチウムの単体は水と激しく反応するため,電解質には有機溶媒やポリマーが用いられる。
一方,繰り返し充電と放電が可能な電池を二次電池といい,中でもリチウムイオン二次電池は携帯機器の電源として急速に普及した。リチウムの単体からなる電極は充電と放電の繰り返しには適していないため,負極には②黒鉛を電極の表面に接着したものが用いられる。また,正極には電極表面にコバルト酸リチウム L i C o O 2 を接着したものが用いられる。
充電のときには,図2—1のように電解質中で正極側をプラス,負極側をマイナスとする電圧を加える。負極では③黒鉛が電解質中のリチウムイオンと反応し,炭素とリチウムからなる化合物が形成される(反応1)。この反応と同時に④正極の L i C o O 2 は,電解質へリチウムイオンが引き抜かれて L i ( 1 − x ) C o O 2 ( 0 < x ≦ 1 ) (*注)へ変化する(反応2)。一方,放電のときには,負極では炭素とリチウムの化合物がリチウムイオンを放出して黒鉛へ戻る反応(反応3)が起こるのと同時に,正極では L i ( 1 − x ) C o O 2 が電解質からリチウムイオンを受け取って L i C o O 2 へと戻る反応(反応4)が起こり,外部回路に電流が発生する。
(*注) 化合物の中には,各元素の構成比を整数で表現することが困難なものがあり,その場合は小数を用いて化学式を表現することがある。例えば本文中の化合物 L i ( 1 − x ) C o O 2 ( 0 < x ≦ 1 ) は,充電反応の進行に伴って L i C o O 2 中の L i がところどころ失われている。失われた L i の量が充電前に存在した L i のうちの割合 x に相当するとき,化合物全体で平均した組成は L i : C o : O = 1 − x : 1 : 2 となっている。
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図2—1 リチウムイオン電池の充電反応と放電反応
図2—2 炭素とリチウムからなる化合物 X の構造
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〔問〕
ア 下線①の反応式を書け。
イ 下線②の黒鉛は炭素の単体であり,ダイヤモンドなどの同素体が存在する。炭素以外の元素の単体のうち,互いに同素体となる物質が存在するものの組み合わせを1つ挙げ,以下の例にならって物質名で答えよ。なお,化学式は使わないこと。
(例) 黒鉛とダイヤモンド
ウ 充電後のリチウムイオン電池の負極の表面には,下線③の反応によって化合物 X が生成した。化合物 X は炭素とリチウムだけで構成されており,以下の2つの特徴を持つ。化合物 X に含まれる炭素とリチウムの原子数の比を求めよ。
特徴(1) 黒鉛は,炭素が正六角形の網目状に結合した平面(これを炭素平面とよぶ)をつくり,その平面がいくつも積み重なっている。一方,化合物 X は図2—2の(1)のように,黒鉛の各炭素平面の間にリチウムが挿入された構造になっている。
特徴(2) 図2—2の(2)に示すとおり,リチウムからその直下にある炭素平面へ垂線を引くと,垂線は炭素のつくる正六角形の中心で炭素平面と交わっている。この垂線と交わる正六角形が互いに隣り合うことなく最密となるように,リチウムが配置されている。
エ 0.60 g の化合物 X をリチウムイオン電池の負極に用いて 20 m A の電流値で放電するとき,放電が可能な最大の時間(秒)を有効数字2桁で計算せよ。ただし,負極においては図2—1の反応3以外の反応は起こらないものとする。なお,途中の計算過程も記すこと。
オ L i C o O 2 の C o のうちの一部を A l と入れ替えてつくった化合物 L i C o ( 1 − y ) A l y O 2 ( 0 < y < 1 ) を正極に用いて充電を行うと,下線④と同様の反応によって L i ( 1 − x ) C o ( 1 − y ) A l y O 2 が生じる。L i C o O 2 と L i C o ( 1 − y ) A l y O 2 それぞれ 1.96 g を正極に用いて充電を行い,両方の正極の x が等しくなるように充電を停止したところ,L i C o ( 1 − y ) A l y O 2 を用いた正極に充電された電荷量は 9.65 × 10 2 C であった。また充電後の L i ( 1 − x ) C o O 2 と L i ( 1 − x ) C o ( 1 − y ) A l y O 2 の重量の差は 4.2 × 10 − 3 g であった。x と y の値を有効数字2桁で求めよ。なお,途中の計算過程も記すこと。
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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~ケに答えよ。
水酸化銅(Ⅱ) C u ( O H ) 2 は,濃アンモニア水中で(1)式の反応を起こし,正電荷を持った正方形構造の錯イオンとなる。
また,塩化パラジウム(Ⅱ) P d C l 2 に濃アンモニア水を加え,加熱を続けると,(2)式の反応が起こり,塩化パラジウム(Ⅱ)は正電荷を持った正方形構造の錯イオン A となる。
このように,銅(Ⅱ)やパラジウム(Ⅱ)の錯イオンは正方形構造をとりやすいことが知られている。
〔問〕
カ (1)式および(2)式において,N H 3 と金属イオンの間の化学結合は何結合と呼ばれるか。
キ 塩化パラジウム(Ⅱ)の水溶液に,塩化パラジウム(Ⅱ)に対して2倍の物質量の N a C l を加えると,塩化パラジウム(Ⅱ)は負の電荷をもった錯イオン B となる。錯イオン B の構造式を示せ。
ク (2)式の反応の後,未反応のアンモニアを完全に取り除き,錯イオン A に対して2倍の物質量の H C l を加えると,電荷を持たない化合物 C が沈殿する。この時,化合物 C に対して2倍の物質量の塩化アンモニウムが生成する。ここで化合物 C に対して,正方形構造を有する2種類の異性体を考えることができる。この2種類の異性体の構造式を,その違いがわかるように示せ。
ケ 錯イオン A および錯イオン B の水溶液を混合すると,化合物 D が沈殿する。化合物 D と化合物 C は構成する元素の組成が等しく,かつ化合物 D は化合物 C の2倍の式量を持つ。化合物 D の構造式を示せ。
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第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~エに答えよ。化学構造式を示す場合は,不斉炭素上の置換様式(紙面の上下)を特定しない平面構造式で示すこと。
(平面構造式の例)
ある植物の果汁に含まれる酸味成分として分子式 C 4 H 6 O 5 を持つ化合物 A を得た。化合物 A の化学構造式を決定するために以下の実験を行った。
化合物 A の 0.10 m o l · L − 1 の水溶液 10 m L をつくり,0.10 m o l · L − 1 の水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ,20 m L で中和点に達し,溶液はアルカリ性であった。この実験により,平面構造式の候補は5個に絞られた。ただしここで,モノ炭酸エステルは中性の水中において容易に分解するため,候補として考慮しない。
(モノ炭酸エステルの例)
化合物 A をエーテル中で金属ナトリウムと反応させたところ,化合物 A 1.0 m o l あたり,水素 1.5 m o l が発生し,反応後も金属ナトリウムは残っていた。この反応により化合物 A の平面構造式の候補は,①5個から3個に絞られた。
化合物 A をクロム酸二カリウムで酸化したところ,分子式 C 4 H 4 O 5 の化合物 B が得られた。この反応により,②上記3個の候補の1個が除外され,候補は2個に絞られた。
化合物 A に強酸を加えると,分子内から水が1分子除去されて,化合物 C と D の混合物が得られた。この化合物 C と D は,いずれもオゾンおよび臭素と反応した。2つの化合物 C と D が得られたことから,③上記2個の候補の1個が除外され,化合物 A の平面構造式が特定できた。
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〔問〕
ア 下線部①で除外された2個の平面構造式を示せ。
イ 下線部②および③で除外された平面構造式をそれぞれ示し,各々の理由を記せ。
ウ 化合物 A および B の平面構造式をそれぞれ示せ。
エ 化合物 C と D の組み合わせに対して考えられる2個の平面構造式を示せ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問オ~ケに答えよ。
互いに混ざり合わない等容量の有機溶媒と水または緩衝液を分液漏斗(図3—1)内で混合し,そこに化合物を加えて撹拌すると,化合物は2種の溶媒にある特定の比率で分配される。その比率を a : ( 1 − a ) とすると,a は0から1の範囲で化合物に固有の値となり,化合物の親水性が高いと0,親油性が高いと1に近い値となる。この分配操作は,複数の化合物の混合物から特定のものを分離する目的に利用される。以下では,3つの異なる条件にて多段階の分配操作を行い,1回の分配操作では分離できない混合物の分離を試みた。
実験a 3つの化合物 E,F,G がそれぞれ 1 g ずつ含まれる混合物がある。これらは図3—2に構造式を示したいずれかの化合物に該当する。この混合物を図3—3の操作段階数 n = 1 に示したように,等容量の有機溶媒と p H = 7 の緩衝液を用いて分配した。次に操作段階数 n = 2 に示したように,得られた下層の水相 1—ⅰ を新しい等容量の有機溶媒と,また,上層の有機相 1—Ⅰ を新しい等容量の緩衝液と混合して分配した。更に,操作段階数 n = 3 に示したように,得られた下層 2—ⅱ を新しい等容量の有機溶媒と混合,上層 2—Ⅰ を下層 2—ⅰ と混合,上層 2—Ⅱ を新しい等容量の緩衝液と混合して,分配操作を行った。このような操作を順次繰り返すことにより,操作段階数 n = 9 に示したように,9つの分液漏斗が得られた。上から分液漏斗の番号を①から⑨としたとき,上層と下層をあわせた各分液漏斗に含まれる化合物の存在量は図3—4 a の折れ線グラフのように示された。
実験b 緩衝液の pH を変えて実験a と同様の操作を行ったところ,図3—4 b のように化合物 E,F,G の分布が変化した。実験a および実験b の操作では,化合物 E と F を分離することができなかった。
実験c 3つの化合物の混合物を少量の酸とともに熱した後に中和したところ,化合物 F は化合物 H に変化したが,化合物 E と化合物 G は変化しなかった。この混合物に対して,実験a と同様に p H = 7 の緩衝液を用いた分配操作を行ったところ,化合物 E,G,H は図3—4 c のような分布を示した。
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〔問〕
オ 実験b の操作段階数 n = 3 において,中央の分液漏斗内( 3—Ⅱ と 3—ⅱ を合わせたもの)に含まれる化合物 E の量は 0.18 g であった。操作段階数 n = 1 において,上層には化合物 E が何 g 含まれていたか。
カ 実験b では酸性,アルカリ性のいずれの緩衝液を用いたと考えられるか,理由とともに記せ。
キ 化合物 E,F,G は,それぞれ図3—2の構造式のいずれに該当するか,構造式を用いて示せ。
ク 実験c における酸処理により化合物 F から化合物 H が生じた反応を構造式を用いて示せ。
ケ 図3—4 c で示された化合物 E,G,H の分離をさらに改善させるため,実験c の操作段階数が49回になるまで同様の分配操作を行った。このとき,各化合物の分布の近似曲線は図3—5の b から f のいずれになると予想されるか。なお,図3—5 a は図3—4 c の折れ線グラフを曲線で近似したものである。
図3—1 分液漏斗
図3—2 混合物に含まれる3つの化合物の構造式
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図3—3 ①から⑨は分液漏斗番号を示す
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図3—4
図3—5
第1問 燃える氷と、酵素の「席」 — メタンハイドレートの燃焼と酵素反応の速さ 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰはメタンハイドレート(「燃える氷」)。水分子がかご状にメタン分子をとり囲んだ固体で、組成はメタン:水=4:23。できやすい条件をルシャトリエの原理(平衡は加えられた変化をやわらげる向きに移る)で考え、燃やしたときの熱をヘスの法則(熱化学方程式の足し引き)で組み立て、閉じた容器で燃やしたあとの水の量と圧力を計算する。
圧力の計算のかぎは、水が全部気体になれるかを確かめること 。水蒸気の分圧は飽和蒸気圧(その温度で水蒸気がなれる最大の分圧)をこえられないので、こえる分は液体の水として残る。
後半Ⅱは酵素反応の速さ。酵素 E は基質 S と組(E·S)をつくってから生成物 P を出す。E·S の量が一定になる、という条件から速さの式を導き、基質がうすいときと濃いときで速さの変わり方がちがうことを読む。酵素を「数の限られた席」と考えると分かりやすい。
ア メタンハイドレートができる向き(メタン+水 → ハイドレート)は、本文の「全体としてエネルギーが低下する」から発熱の向き。また、気体のメタンが固体の中に取りこまれるので、気体の分子の数が減る向き。
温度を下げると、ルシャトリエの原理より、平衡は熱を出す向き(発熱の向き)に移るので、ハイドレートができる向きに有利。
圧力を上げると、平衡は圧力を下げる向き、つまり気体の分子が減る向きに移るので、これもハイドレートができる向きに有利。だから低温・高圧ほどできやすい。日本近海の深い海底(冷たく、水圧が高い)にたくさんあるのはこのため。
答え 生成は発熱反応で、気体のメタンが減る向きである。温度を下げると発熱の向きへ、圧力を上げると気体の分子が減る向きへ平衡が移動するので、生成に有利になる。
イ 燃焼の反応式をまず決める。ハイドレート 4 C H 4 · 23 H 2 O の中のメタン4個が燃えると C O 2 4個と水8個、酸素は8個いる。かごの水23個と合わせて、水は31個(液体)。
熱は、ヘスの法則で「ハイドレートをこわす → メタンを燃やす」の2段に分けて足す。
式(1):ハイドレートをメタンと水にこわすと Q 1 。
メタン1 mol の燃焼熱は、式(2)(3)(4)から「C と H 2 に分けて(− Q 2 )、それぞれ燃やす(Q 3 + 2 Q 4 )」で Q 3 + 2 Q 4 − Q 2 。メタンは4 mol あるので4倍。
合計 Q 1 + 4 ( Q 3 + 2 Q 4 − Q 2 ) を整理すると、燃焼の熱化学方程式の右辺の熱になる。
答え 4 C H 4 · 23 H 2 O (固) + 8 O 2 (気) = 4 C O 2 (気) + 31 H 2 O (液) + ( Q 1 − 4 Q 2 + 4 Q 3 + 8 Q 4 ) k J
ウ ハイドレート 4 C H 4 · 23 H 2 O の式量は 4 × 16 + 23 × 18 = 478 。体積 1.0 cm³、密度 0.91 g/cm³ なので質量は 0.91 g、物質量は
0.91 478 ≈ 1.90 × 10 − 3 m o l
イの反応式より、ハイドレート 1 mol から水は 31 mol。容器の中の水は、もとからかごにあった水と燃えてできた水を合わせて 1.90 × 10 − 3 × 31 mol。
酸素が足りているかも確かめる。酸素は 5.1 × 10 4 × 1.0 × 10 − 3 8.3 × 273 ≈ 2.25 × 10 − 2 mol、必要な酸素は 1.90 × 10 − 3 × 8 ≈ 1.52 × 10 − 2 mol なので足りていて、完全燃焼できる。
答え 5.9 × 10 − 2 m o l ( 0.91 478 × 31 )
エ 27 ℃ で容器の中にある気体は、残った酸素、できた C O 2 、そして水蒸気。
残った酸素:2.25 × 10 − 2 − 1.52 × 10 − 2 = 7.3 × 10 − 3 mol。C O 2 :1.90 × 10 − 3 × 4 = 7.6 × 10 − 3 mol。合わせて 1.49 × 10 − 2 mol。この分圧は
P = n R T V = 1.49 × 10 − 2 × 8.3 × 300 1.0 × 10 − 3 ≈ 3.7 × 10 4 P a
水は、もし全部気体なら 0.059 × 8.3 × 300 1.0 × 10 − 3 ≈ 1.5 × 10 5 Pa になり、27 ℃ の飽和蒸気圧 3.5 × 10 3 Pa をはるかにこえる。だから水はほとんど液体で残り、水蒸気の分圧は飽和蒸気圧そのもの。
全圧は、酸素と C O 2 の分圧に水蒸気の 3.5 × 10 3 Pa を足したもの。水を全部気体として計算すると、正しい値の約 4.5 倍になってしまう。
答え 4.1 × 10 4 P a (CO₂ と残った O₂ で 3.7 × 10 4 、水蒸気は飽和の 3.5 × 10 3 )
オ 反応の速さは、反応する物質の濃度のかけ算に速度定数をかけたもの。
反応(1)は E と S がぶつかって組になるので、速さは [ E ] と [ S ] の両方に比例:k 1 [ E ] [ S ] 。
反応(2)(3)は E·S が1つで分かれるので、[ E · S ] だけに比例:それぞれ k 2 [ E · S ] 、k 3 [ E · S ] 。
E·S がこわれる速さは、2つの道の合計なので v 2 + v 3 。
答え a = k 1 [ E ] [ S ] , b = k 2 [ E · S ] , c = k 3 [ E · S ] , d = ( k 2 + k 3 ) [ E · S ]
カ E·S の濃度が一定なので、「できる速さ=こわれる速さ」:
k 1 [ E ] [ S ] = ( k 2 + k 3 ) [ E · S ]
自由な酵素の濃度は式(5)より [ E ] = [ E ] T − [ E · S ] 。これを入れて、両辺を k 1 で割り、式(6)の K を使うと
( [ E ] T − [ E · S ] ) [ S ] = K [ E · S ]
[ E · S ] について解くと [ E · S ] = [ E ] T [ S ] K + [ S ] 。P ができる速さは v 2 = k 2 [ E · S ] なので、これに k 2 をかけると式(4)になる。
[ S ] K + [ S ] は、酵素のうち基質と組になっている割合(席が埋まっている割合)を表している。
答え k 1 ( [ E ] T − [ E · S ] ) [ S ] = ( k 2 + k 3 ) [ E · S ] ⇒ [ E · S ] = [ E ] T [ S ] K + [ S ] , v 2 = k 2 [ E · S ] = k 2 [ E ] T [ S ] K + [ S ]
キ スクロースの濃度 10 − 6 〜10 − 5 mol/L は、K = 1.5 × 10 − 2 mol/L よりずっと小さい。式(4)の分母 K + [ S ] は、ほぼ K とみなせる:
v 2 ≈ k 2 [ E ] T K [ S ]
k 2 ・[ E ] T ・K は一定なので、速さはスクロースの濃度に比例する。
基質がうすいと、酵素の席はほとんど空いていて、基質が来た分だけ反応する。だから基質を2倍にすると速さも2倍。
答え (A): [ S ] ≪ K なので v 2 ≈ k 2 [ E ] T K [ S ] (比例)
ク スクロースの濃度 1〜2 mol/L は、K よりずっと大きい。分母 K + [ S ] はほぼ [ S ] とみなせるので
v 2 ≈ k 2 [ E ] T [ S ] [ S ] = k 2 [ E ] T
基質が濃いと、酵素の席はほぼ全部埋まっていて、それ以上基質を増やしても順番待ちが増えるだけ。速さを決めるのは、酵素の数と、1つの席から P が出ていく速さ(k 2 )だけになる。計算では、1 から 2 mol/L にしても速さは 0.7% ほどしか増えない。
答え (D): [ S ] ≫ K なので v 2 ≈ k 2 [ E ] T (一定)
第2問 リチウムの行き来と、正方形の形の数 — リチウムイオン電池とパラジウムの錯イオン 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰはリチウムイオン電池。充電すると、Li⁺ が正極の L i C o O 2 から抜けて、負極の黒鉛の層のあいだに入る(化合物 X)。放電するとその逆で、Li⁺ が負極から正極へもどり、同じ数の電子が外の導線を流れる。Li⁺ 1個の移動=電子1個の移動 。これが計算のすべての土台。
X の組成は、黒鉛の六角形の網の上に Li を「となり合わないように、いちばんぎっしり」置く、という図の条件から数える。最後のオは、正極の Co の一部を Al にかえると、同じ重さでも物質量が変わる、という点を使って、電荷量と重さの差の2つの式から x と y を決める。
後半Ⅱはパラジウム(Ⅱ)の錯イオン。P d 2 + は正方形(平面の四角形)の錯イオンをつくる。4つの角に何が何個つくかで、全体の電荷と異性体の数が決まる。
ア リチウムはアルカリ金属で、水と反応して水素を出し、水酸化リチウムになる。ナトリウムと水の反応と同じ形。
Li は電子を1個出して L i + に、水の H が電子を受け取って H 2 になる。Li 2個で H 2 1個。電解質に水を使えない理由がこの反応。
イ 同素体は、同じ元素の単体で、原子のつながり方や並び方がちがうもの。炭素の黒鉛とダイヤモンドのほかに、代表的なものは酸素とオゾン(酸素原子 2個と 3個)、赤リンと黄リン、斜方硫黄と単斜硫黄(とゴム状硫黄)。どれか1組を物質名で書く。
答え 酸素とオゾン(ほかに 赤リンと黄リン、斜方硫黄と単斜硫黄 など)
ウ 特徴(2)の条件を、黒鉛の網の上で考える。Li は六角形の中心の真上にだけ置ける。となり合う六角形に同時に置いてはいけない。そのうえで、いちばんぎっしり(最密に)置く。
六角形の中心は三角形の網の目のようにならんでいる。となり合わないようにいちばんぎっしり置くと、六角形3つにつき1つの割合で Li が入る(1つ置くと、そのまわりの6つには置けず、その6つはそれぞれ3つの Li に囲まれるので、Li 1個あたり六角形 1 + 6 ÷ 3 = 3 個)。
炭素は、六角形の頂点に1つずつあり、1つの頂点を3つの六角形が共有しているので、六角形1個あたり 6 ÷ 3 = 2 個。六角形3個では炭素 6 個。
特徴(1)より、Li は各層のあいだ全部に入るので、層の数と層のあいだの数は同じとみてよい。だから炭素 6 個に Li 1 個。
エ X(L i C 6 )の式量は 6.9 + 12.0 × 6 = 78.9 。0.60 g の中の Li は
0.60 78.9 ≈ 7.60 × 10 − 3 m o l
放電の反応3で Li が全部 L i + として出ていくとき、Li 1個につき電子1個が流れる。流れる電気量は 7.60 × 10 − 3 × 9.65 × 10 4 ≈ 734 C。
電流 20 mA(0.020 A)で流すと、時間は電気量÷電流:
t = 734 0.020 s
答え 3.7 × 10 4 s ( 0.60 78.9 × 9.65 × 10 4 ÷ 0.020 )
オ 2つの正極を比べる。L i C o O 2 の式量は 6.9 + 58.9 + 32.0 = 97.8 で、1.96 g は n 1 = 0.0200 mol。Al 入りは Co(58.9)の一部を Al(27.0)にかえたので、式量は 97.8 − 31.9 y と小さくなり、同じ 1.96 g でも物質量 n 2 は多い。
式1(電荷量):Al 入りの正極から Li が x n 2 mol 抜け、同じ mol の電子が流れた。
x n 2 = 965 9.65 × 10 4 = 0.0100 m o l
式2(重さの差):どちらも x は同じで、抜けた Li の分だけ軽くなる。Al 入りのほうが多く抜けるので軽い。
6.9 x ( n 2 − n 1 ) = 4.2 × 10 − 3
式2より x ( n 2 − n 1 ) ≈ 6.09 × 10 − 4 mol。式1と引き算すると x n 1 = 0.0100 − 0.00061 = 0.00939 mol なので、x = 0.00939 0.0200 ≈ 0.47 。
n 2 = 0.0100 x ≈ 0.0213 mol から、Al 入りの式量は 1.96 0.0213 ≈ 91.9 。97.8 − 31.9 y = 91.9 を解いて y が出る(約 0.19)。
カ N H 3 の N は非共有電子対(結合に使われていない電子のペア)を持っている。この電子対を、電子の入る席の空いた金属イオンに一方的に差し出して、共有する形でできる結合を配位結合という。
結合ができてしまえば、ふつうの共有結合と区別はつかない。電子対の出どころが片方だけ、という点がちがう。
キ 塩化パラジウム(Ⅱ) P d C l 2 に、その2倍の物質量の NaCl を加えると、C l − が2個加わって、Pd のまわりの4つの角が全部 Cl になる:
P d C l 2 + 2 C l − ⟶ [ P d C l 4 ] 2 −
電荷は + 2 + ( − 1 ) × 4 = − 2 で、問題文の「負の電荷」と合う。構造式は、Pd を中心に Cl を正方形の4つの角に置き、全体を [ ] でくくって 2− をつける。
答え [ P d C l 4 ] 2 − (Pd を中心に Cl が正方形の4つの角)
ク 錯イオン A は [ P d ( N H 3 ) 4 ] 2 + (4つの角が全部 N H 3 )。ここに2倍の HCl を加えると、N H 3 2個が H⁺ を受け取って N H 4 + として外れ(塩化アンモニウムが2倍できる、という記述と合う)、空いた2つの角に C l − が入る。できる C は [ P d C l 2 ( N H 3 ) 2 ] で、電荷は + 2 − 2 = 0 。
正方形の4つの角に Cl 2個と N H 3 2個を置くと、Cl どうしがとなりの角にあるシス形と、対角の角(Pd をはさんで向かい合う)にあるトランス形の2通り。回したり裏返したりしても、この2つは重ならない。
もし正四面体の形なら、どの2つの角もとなり合うので1通りしかない。2種類あることが、正方形である証拠になる。
答え [ P d C l 2 ( N H 3 ) 2 ] のシス形(Cl どうしがとなり)とトランス形(Cl どうしが向かい合う)
ケ A は [ P d ( N H 3 ) 4 ] 2 + (陽イオン)、B は [ P d C l 4 ] 2 − (陰イオン)。電荷が +2 と −2 なので、1:1 で引き合って電荷を持たない塩になり、沈殿する。
組成を確かめる。A と B を1つずつ合わせると Pd 2・N 4・H 12・Cl 4。C の [ P d C l 2 ( N H 3 ) 2 ] は Pd 1・N 2・H 6・Cl 2 なので、ちょうど2倍。「組成が等しく、式量が2倍」という条件とぴったり合う。
構造式は、正方形の [ P d ( N H 3 ) 4 ] 2 + と正方形の [ P d C l 4 ] 2 − を並べて書く。中身の原子は C と同じでも、つながり方がちがう別の化合物。
答え [ P d ( N H 3 ) 4 ] 2 + [ P d C l 4 ] 2 − (A の正方形の陽イオンと B の正方形の陰イオンの塩)
第3問 候補しぼりと、分液漏斗のリレー — C₄H₆O₅ の構造決定と向流分配 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、分子式 C 4 H 6 O 5 の酸味成分 A の構造決定。実験を1つ行うたびに候補が 5 → 3 → 2 → 1 としぼられていく。各実験が「何を数えているか」を読むのがかぎ:滴定は COOH の数、金属ナトリウムは OH(COOH の OH も含む)の数、酸化は「OH がついた炭素に H があるか」、脱水は「できる C=C にシス・トランスがあるか」。
後半Ⅱは、分液漏斗をリレーのように何段もつないで、少しずつしか性質がちがわない化合物を分ける方法(向流分配)。1回の分配で有機層へ行く割合を a とすると、何段か後の分布は、「有機側へ行く/水側へ行く」を毎回くじ引きしたときの分かれ方(2項分布)になる。
図3—4 では、①の側が有機層に移りやすい化合物の行き先、⑨の側が水に移りやすい化合物の行き先。a が 1 に近い化合物は①へ、0 に近い化合物は⑨へ、中くらいの化合物は真ん中に山をつくる。
ア 滴定:A は 0.10 mol/L × 10 mL で 1.0 mmol。中和に NaOH 0.10 mol/L × 20 mL = 2.0 mmol 使ったので、A は2価の酸で、COOH をちょうど2つ持つ。
C 4 H 6 O 5 から COOH 2つ(C 2 H 2 O 4 )を除くと、残りは C 2・H 4・O 1。この部品で2つの COOH をつなぐ置き方は、モノ炭酸エステルを除くと5通り:
H O O C − C H ( O H ) − C H 2 − C O O H
H O O C − C ( O H ) ( C H 3 ) − C O O H , H O O C − C H ( C H 2 O H ) − C O O H
H O O C − C H ( O C H 3 ) − C O O H , H O O C − C H 2 − O − C H 2 − C O O H
金属ナトリウムは OH の H と反応して、OH 2つで H 2 1つを出す。1 mol から H 2 が 1.5 mol なので、OH は3つ(COOH 2つ+アルコールの OH 1つ)。残りの O がエーテル(C−O−C)になっている下の2つは、OH が2つしかないので除かれる。
答え H O O C − C H ( O C H 3 ) − C O O H , H O O C − C H 2 − O − C H 2 − C O O H
イ ②の酸化:A(C 4 H 6 O 5 )から B(C 4 H 4 O 5 )へ、H が2つ減る。これはアルコールが酸化されて、OH の H と、OH のついた炭素の H が取れて C=O になる変化。
H O O C − C ( O H ) ( C H 3 ) − C O O H は、OH のついた炭素に H が無い(第三級アルコール)ので、この酸化が起きない。だから除かれる。
③の脱水:残りの2つから水を1分子取ると、C=C ができる(オゾンや臭素と反応するのはこのため)。H O O C − C H ( C H 2 O H ) − C O O H からできるのは C H 2 = C ( C O O H ) 2 の1種類だけ。C=C の片方の炭素に H が2つついているので、シス・トランスの区別が無い。
答え ②: H O O C − C ( O H ) ( C H 3 ) − C O O H (OH のついた C に H が無い第三級アルコールで酸化されない)。③: H O O C − C H ( C H 2 O H ) − C O O H (脱水で C H 2 = C ( C O O H ) 2 の1種類しかできず、シス・トランスが無い)
ウ 残るのは H O O C − C H ( O H ) − C H 2 − C O O H 。これがリンゴ酸で、果汁の酸味という話とも合う。
B は、A の OH のついた炭素(第二級アルコール)が酸化されて、C=O(ケトン)になったもの。− C H ( O H ) − が − C O − に変わる。
答え A : H O O C − C H ( O H ) − C H 2 − C O O H , B : H O O C − C O − C H 2 − C O O H
エ A から水を取ると、OH のついた炭素と、となりの C H 2 の炭素の間に C=C ができ、H O O C − C H = C H − C O O H になる。
C=C は回転できないので、2つの COOH が同じ側にあるシス形(マレイン酸)と、反対側にあるトランス形(フマル酸)の2つができる。これが C と D の組み合わせ。
答え H O O C − C H = C H − C O O H のシス形(COOH が同じ側:マレイン酸)とトランス形(反対側:フマル酸)
オ 1回の分配で、化合物 E の割合 a が有機層へ、1 − a が水層へ行く。3段目(n = 3 )の真ん中の漏斗には、「有機へ1回・水へ1回」行った分が集まる。その行き方は2通り(先に有機か、先に水か)なので、量は
2 a ( 1 − a ) × 1 g = 0.18 g
これを解くと a ( 1 − a ) = 0.09 で、a = 0.9 か a = 0.1 の2つの解がある。
どちらかは図3—4 b で決める。実験 b では E が①の側(有機層に移りやすい側)にかたよっているので、a = 0.9 。n = 1 の上層(有機層)には a × 1 g が入っていた。式だけで a = 0.1 を選ぶと、まちがった答えになる。
答え 0.90 g ( 2 a ( 1 − a ) = 0.18 , a = 0.9 )
カ 図3—4 a(pH 7)では E と F は⑨の側(水に移りやすい)、b では①の側(有機溶媒に移りやすい)に動いた。E と F はカルボン酸(COOH を持つ)。
pH 7 では COOH が電離して − C O O − になり、イオンになるので水に溶けやすい。酸性にすると電離がおさえられて電荷の無い −COOH のままになり、有機溶媒に移りやすくなる。だから実験 b は酸性の緩衝液。
G(アミド)は電離しないので、pH を変えても分布は変わらない。図の G の山が a と b で同じなのとも合う。
答え 酸性。E と F はカルボン酸で、酸性では COOH が電離せず有機溶媒に移りやすくなり、①(有機の側)へ動いたから
キ 図3—2 の3つは、左から 2,4-ジヒドロキシフェニル酢酸、3,5-ジヒドロキシフェニルアセトアミド(真ん中、COOH のかわりに C O N H 2 )、3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸。
G:pH によって動かないので、電離する COOH を持たないアミド(真ん中)。
E と F:どちらもカルボン酸(左と右)で、pH の変化では分けられなかった。区別するのは実験 c。酸で熱すると F だけが H に変わった。これは COOH と、ベンゼン環の近くの OH が分子の中でエステルをつくる反応で、COOH のついた C H 2 のとなりの位置(2位)に OH がある左の化合物だけが、無理のない5つの原子の輪をつくれる。だから F が左、E が右。
答え G:3,5-ジヒドロキシフェニルアセトアミド(中央の構造)、E:3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸(右)、F:2,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(左)
ク F の −COOH と、ベンゼン環の2位の −OH が、分子の中で脱水してエステル結合をつくる(酸は触媒)。輪は、ベンゼン環の炭素2つ・C H 2 ・C=O・O の5つの原子でできる五員環(ラクトン:輪になったエステル)。水が1分子取れる。
H は COOH を持たないので電離せず、pH 7 でも有機溶媒に移りやすい。だから図3—4 c では H が①の側へ動き、⑨の側に残った E と分かれた。
答え F(2,4-ジヒドロキシフェニル酢酸) ⟶ H(COOH と となりの OH がエステルをつくった 5 員環のラクトン:6-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノン) + H 2 O
ケ 段数を増やすと、それぞれの山の位置は段数に比例して動き、山の幅は段数の平方根に比例してしか広がらない。だから山どうしがはっきり離れる。
図3—4 c から、それぞれの a を読む。E は⑨の端にほぼ全部あり、a はほぼ 0 → 49段でも㊾の端に鋭く残る。G は④あたりが山(9段で左から約 3/8)で、a は約 0.6 → 49段では⑲〜⑳あたりに山、高さは約 0.12 g まで下がる。H は①に近く、a は約 0.93 → 49段では①ではなく④あたりに山ができる(①から少し離れる)。
この3つがそろっているのが d。b・f は E が㊾の端にない、c・e は H の山が①の端にはりついていて、段数を増やしたときの動きと合わない。