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化 学
第1問
Ⅰ 自然界には高圧下で起こる様々な化学変化や物理現象がある。例えば,地球内部での化学変化は数百万気圧に及ぶ圧力下で起こっている。近年,図1—1に示したダイヤモンドアンビルセルという簡便な装置を用いることにより,実験室においても百万気圧を超える超高圧を発生させることが可能となった。この装置では,図1—1のように金属板にあけた小さな穴の中に試料を充填し,これを上下から,もっとも硬い物質であるダイヤモンドで圧縮することにより超高圧を得る。
ダイヤモンドアンビルセルを用いて酸素を圧縮する実験を行った。これについて以下の問ア 〜エ に答えよ。ただし,計算においてはその過程を明示し,答えは有効数字2桁で記すこと。また,気体定数 R = 0.082 a t m · l · K − 1 · m o l − 1 ,アボガドロ定数 N A = 6.0 × 10 23 m o l − 1 とする。
〔問〕
ア 実在気体は,理想気体の状態方程式
P V = n R T ( 1 )
を完全には満たさない。ここで,P ,V および n は気体の圧力,体積および物質量を表し,T は温度である。理想気体からのずれを表すパラメーター Z は,
Z = P V n R T ( 2 )
で与えられ,理想気体では Z は常に1である。図1—2は,メタン,酸素について,温度 300 K における P と Z の関係を示したものである。低圧において,Z < 1 となる原因を50字程度で述べよ。
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イ 高圧では Z > 1 となる原因を50字程度で述べよ。
ウ 温度 300 K において,装置の試料空間に 10 a t m の酸素を封入した。この時,対向する2つのダイヤモンド面間の距離 d は 0.40 m m であった。これを圧縮し,内部の圧力が 800 a t m に達したときの距離 d を求めよ。ただし,試料空間は常に直径 0.40 m m の円柱であり,加圧による温度の変化はなく,酸素の漏れはないものとする。また,酸素は 10 a t m では理想気体とみなす。
エ さらに圧縮すると酸素は約10万気圧でオレンジ色の分子結晶となる。図1—3に示すように,この分子結晶は直方体の単位格子をもち,酸素分子の重心がその頂点および各面の中心に位置している。ダイヤモンド面間の距離 d が 0.0020 m m の時にこの酸素分子結晶が生成されたとして,その単位格子の体積を求めよ。
図1—1 ダイヤモンドアンビルセル
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図1—2 Z と P の関係
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図1—3 酸素分子結晶の構造
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Ⅱ 1823年,ドイツの化学者デベライナーは,白金の粉末を酸素と水素の混合気体にさらすと,白金表面で水が生成することを発見した。この現象は,後に,スウェーデンの化学者ベルセリウスによって“触媒反応”と呼ばれるようになった。この反応について考えてみよう。
酸素と水素の混合気体中に置かれた白金の表面では,それぞれの分子が解離して,酸素原子および水素原子として吸着している。白金表面の温度が高い場合には,これらの酸素原子と水素原子が反応し,次のように,反応中間体である O H を経て水分子を生成する。生成した水分子は白金表面から気体中に放出される。
O + H → k 1 O H ( 1 )
O H + H → k 2 H 2 O ( 2 )
ここで,k 1 ,k 2 はそれぞれ反応(1),(2)の反応速度定数である。白金表面の酸素原子,水素原子の単位面積当りの物質量(表面濃度,単位は m o l · c m − 2 )をそれぞれ [ O ] ,[ H ] とすると,例えば,反応(1)による O H の生成速度は気体反応と同様に,k 1 [ O ] [ H ] (単位は m o l · c m − 2 · s − 1 )で表される。
一方,白金表面の温度が低い場合には,白金表面に留まった水分子が,吸着している酸素原子と反応して次のように O H を生成する。
O + H 2 O → k 3 2 O H ( 3 )
ここで,k 3 は反応(3)の反応速度定数である。
高温 T 1 および低温 T 2 におけるこれらの反応について,以下の問オ 〜キ に答えよ。ただし,高温 T 1 ,低温 T 2 における反応速度定数は表1のようであり,高温 T 1 では反応(3)は起こらない。また,すべての反応は白金表面上でのみ起こるものとする。計算においてはその過程を明示し,答えは有効数字2桁で記すこと。
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表1 高温 T 1 ,低温 T 2 における反応(1),(2),(3)の反応速度定数
〔問〕
オ 高温 T 1 では,反応(1)によって生成した O H は,直ちに反応(2)によって水分子となる。このとき,反応(1)による O H の生成速度と反応(2)による O H の消費速度は等しいと考えてよい。今,何も吸着していない白金を高温 T 1 に保ちながら酸素と水素の混合気体にさらすと,酸素原子および水素原子の表面濃度がそれぞれ [ O ] = 6.2 × 10 − 10 m o l · c m − 2 ,[ H ] = 2.5 × 10 − 9 m o l · c m − 2 になった。このときの水分子の生成速度を求めよ。ただし,酸素原子および水素原子の表面濃度は常に一定に保たれるものとする。
カ オ の条件下で,O H の表面濃度 [ O H ] を求めよ。
キ 低温 T 2 では,反応速度定数 k 1 が極めて小さいため,反応(1)による O H の生成は起こらないと考えてよい。今,何も吸着していない白金を低温 T 2 に保ちながら酸素と水素の混合気体にさらし,酸素原子と水素原子をオ と同様に吸着させたところ,水の生成は見られなかった。これに対し,酸素原子,水素原子の表面濃度に比べてごく少量の水分子を追加して吸着させると,何が起こると予想されるか。理由と共に100字程度で述べよ。
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第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ 以下の文を読み,問ア 〜オ に答えよ。
ホタル石(C a F 2 )型構造とよばれる結晶構造をもつ酸化物は,酸化物イオン O 2 − が移動しやすく,その現象を利用して酸素センサーや酸素ポンプなどに応用されている。
図2—1はホタル石型構造の単位格子を示している。ホタル石型構造では,陽イオンは立方体の各頂点と各面の中心に位置し,陰イオンは4個の陽イオンに囲まれた位置にある。ホタル石型構造をもつ Z r O 2 に少量の C a O を混合して高温で熱すると,ホタル石型構造を保ったまま陽イオン位置に Z r 4 + と C a 2 + が均一に分布した酸化物(Z r 1 − x C a x O 2 − y )となる。C a O は Z r O 2 より陽イオン1個当りの O 2 − の数が少ないため,この酸化物では陰イオン位置に欠損(酸素空孔)が生じている。
酸素空孔をもつ Z r 1 − x C a x O 2 − y を 800 ℃ 程度に加熱すると,酸素空孔を介して O 2 − が速やかに移動するようになる。この Z r 1 − x C a x O 2 − y を隔壁としてその両側に多孔質の白金電極を設け,酸素中 800 ℃ で両電極間に数 V の電圧をかけると,この隔壁は固体の状態で電解質として働くようになる。すなわち,酸素分子は陰極で還元されて O 2 − となってこの電解質に入り,その中を陽極へ移動し,陽極で酸化されて酸素分子に戻る。このような操作で陰極側から陽極側へ酸素を移動させることにより,酸素ポンプとして用いることができる。
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〔問〕
ア ホタル石型構造の単位格子には,陽イオンと陰イオンがそれぞれ何個存在するか。
イ Z r O 2 と C a O が物質量(m o l )の比で 0.85 : 0.15 である酸化物を合成した。この酸化物において,下線部①で示される酸素空孔は,陰イオン位置の何 % 存在しているか。結果だけでなく導く過程も記せ。
ウ 問イ の酸化物において,1.00 c m 3 当りに含まれる酸素空孔の数を求めよ。ただし,単位格子の体積 a 3 を 1.36 × 10 − 22 c m 3 とし,有効数字2桁で示せ。結果だけでなく導く過程も記せ。
エ 下線部②の反応での,陰極と陽極における反応式を示せ。
オ 1.93 A の電流を500秒間流すことにより,酸素を陰極側から陽極側へ移動させた。移動した酸素の体積は,1 a t m ,800 ℃ で何 m l となるか,有効数字2桁で示せ。ただし,ファラデー定数を 9.65 × 10 4 C · m o l − 1 ,気体定数を 0.082 a t m · l · K − 1 · m o l − 1 とする。結果だけでなく導く過程も記せ。
図2—1 ホタル石型構造の単位格子
図では,各イオンの位置が模式的に示されている。
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Ⅱ 次の文章を読み,以下の問カ 〜サ に答えよ。必要があれば原子量として以下の値を用いよ。L a : 138.9 S r : 87.6 C u : 63.5 O : 16.0
銅を含んだ金属酸化物(以後,銅酸化物と略す)は,現在見つかっている物質の中で最高の温度で超伝導(電気抵抗が零となる現象)を示す物質が発見されるなど,興味深い物質群である。銅酸化物における超伝導の出現の条件は,酸素含有量と密接に結びついている。いま,超伝導を示す代表的な銅酸化物である L a 2 − x S r x C u O 4 − y の酸素含有量を,ヨウ素の酸化還元滴定により求めてみよう。
試料 L a 2 − x S r x C u O 4 − y を過剰のヨウ化カリウム(K I )の存在下で酸性水溶液(たとえば,6 m o l · l − 1 の塩酸)に溶かすと,式(1)で示す反応が起こる。この水溶液において,L a イオンおよび S r イオンの価数はそれぞれ 3 + および 2 + であるが,C u イオンは複数の価数をとり,その平均した値を ( 2 + p ) + とする。また,C u I は難溶性の白色の沈殿である。
C u ( 2 + p ) + + ( 2 + p ) I − ⟶ C u I ↓ + { ( 1 + p ) / 2 } I 2 ( 1 )
次に,反応式(1)で生成したヨウ素(I 2 )を以下の反応によって,チオ硫酸ナトリウム(N a 2 S 2 O 3 )水溶液で滴定する。
I 2 + 2 N a 2 S 2 O 3 ⟶ 2 N a I + N a 2 S 4 O 6 ( 2 )
このような操作で,遊離したヨウ素(I 2 )の量を測定することにより,L a 2 − x S r x C u O 4 − y における酸素含有量を求めることができる。
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〔問〕
カ 反応式(2)における反応の終点を決めるためには指示薬が必要である。適切な指示薬を記せ。また,指示薬を加えた状態で,反応終点前後の色の変化を記せ。
キ 反応式(1)および(2)に基づいて,滴定に要した N a 2 S 2 O 3 と試料中の C u ( 2 + p ) + の物質量 N ( m o l ) の比 N ( N a 2 S 2 O 3 ) N ( C u ( 2 + p ) + ) を求めよ。結果だけでなく求める過程も記せ。
ク 試料 L a 2 − x S r x C u O 4 − y のモル質量を M ( g · m o l − 1 ) ,試料の質量を W ( g ) ,滴定に要した N a 2 S 2 O 3 水溶液の濃度および体積をそれぞれ C ( m o l · l − 1 ) および V ( l ) とする。このとき,C u ( 2 + p ) + における p を M , W , C , V の関数で表せ。結果だけでなく求める過程も記せ。
ケ 試料 L a 2 − x S r x C u O 4 − y は,全体として電荷をもたない中性の物質である。これに基づいて,y を x および p の関数で表せ。ただし,L a ,S r ,O のイオンの価数はそれぞれ 3 + ,2 + ,2 − とする。結果だけでなく求める過程も記せ。
コ 試料 L a 2 − x S r x C u O 4 − y のモル質量 M ( g · m o l − 1 ) を x および p の関数で表せ。ただし,数字の部分は小数点以下1桁までとする。結果だけでなく求める過程も記せ。
サ このような手順で,N a 2 S 2 O 3 水溶液の濃度 C ( m o l · l − 1 ) がわかっていれば,試料の質量 W ( g ) ,滴定に要した N a 2 S 2 O 3 水溶液の体積 V ( l ) を測定することにより,試料 L a 2 − x S r x C u O 4 − y における銅イオンの価数 ( 2 + p ) + が決まり,結果として酸素量 ( 4 − y ) を決定することができる。C u ( 2 + p ) + における p を試料の質量 W ( g ) ,滴定に要した N a 2 S 2 O 3 水溶液の濃度 C ( m o l · l − 1 ) と体積 V ( l ) ,および x の関数で表せ。ただし,数字の部分は小数点以下1桁までとする。結果だけでなく求める過程も記せ。
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第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ ポリスチレンに関する次の文章を読み,問ア 〜オ に答えよ。
a )ポリスチレン試料 A ,B ,C がある。試料 A は,スチレンの重合実験によって合成した分子量未知の試料であり(注),また,試料 B は分子量が 2.00 × 10 4 のポリスチレンの標準試料である。一方,試料 C は少量の p -ジビニルベンゼンとともにスチレンを付加重合して合成した。これら3種類のポリスチレンを用いて,次の実験を行った。
試料 A 50.0 m g をトルエンに溶かして,溶液の全量が 100 m l になるようにした。この溶液を,半透膜で仕切ったU字型容器の右側に入れた。また,半透膜の左側には,右側と同じ高さになるまでトルエンを入れた(図3—1)。溶媒が蒸発しないように工夫して 30 ℃ で十分に長い時間にわたり放置したところ,半透膜の両側の液面の高さに 5.5 m m の差ができた。一方,試料 B 50.0 m g をトルエンに溶かして 100 m l にした溶液について,試料 A で行ったのと全く同じ実験を行った。半透膜の両側の液面差は 7.5 m m であった。また,試料 C について同じ実験をしようとしたが,試料 C はトルエンに不溶であった。
図3—1 半透膜で仕切ったU字型容器
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(注) 重合体は一般にさまざまな分子量をもつ分子からなるが,この問題では,同じ分子量の分子からなるものと仮定せよ。
b )ポリスチレンに濃硫酸を作用させてイオン交換樹脂を作った。この樹脂をカラムに充填し pH 3.4 の緩衝液を十分に流した。カラムの上部にアラニン,リシン,グルタミン酸を少量の緩衝液(pH 3.4)に溶かしたものを入れ,次に,同じ緩衝液をカラムの上から少しずつ流したところ,はじめにアミノ酸 D が溶出し,次にアミノ酸 E が溶出した。ついで pH 9.2 の緩衝液をカラムの上から流したところアミノ酸 F が溶出した。
〔問〕
ア スチレンにおいて,結合角を図3—2のように定義する。炭素 C 1 のまわりの3つの結合角の和(θ 1 + θ 2 + θ 3 )は,下線部①の重合反応において大きくなるか小さくなるかを記せ。また,この結合角の和は,重合体では何度か。次の中から最も近い値を一つ選んで記せ(405°,390°,375°,360°,345°,330°,315°)。
図3—2
イ 下線部②で,半透膜の左側と右側のどちらの液面が高くなるかを記せ。また,液面に差ができる理由を15字以内で解答せよ。
ウ 下線部③で,試料 C はなぜトルエンに不溶なのか。15字以内で理由を解答せよ。
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エ a )における実験から求まる試料 A の分子量はいくらか。有効数字2桁で解答せよ。ただし,用いたポリスチレンのトルエン溶液は十分に希薄であり,また液面移動に伴う濃度変化は無視できるものとする。
オ アミノ酸 D ,E ,F の組み合わせとして正しいものを(1)〜(6)から一つ選び,番号で記せ。
(1) D . アラニン E . リシン F . グルタミン酸
(2) D . アラニン E . グルタミン酸 F . リシン
(3) D . リシン E . グルタミン酸 F . アラニン
(4) D . リシン E . アラニン F . グルタミン酸
(5) D . グルタミン酸 E . アラニン F . リシン
(6) D . グルタミン酸 E . リシン F . アラニン
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Ⅱ 次の文章を読み,以下の問カ 〜シ に答えよ。なお,構造式は例にならって解答せよ。
(例)
分子式 C 4 H 10 O で表されるすべての異性体8種類を用意した。沸点の高い方から順番にこれらの化合物に 𝐀 1 ,𝐀 2 ,𝐀 3 ,・・・と試料番号をつけると,沸点は以下の表に示すとおりであった。なお,𝐀 3 と 𝐀 4 の沸点は完全に同一であった。試料 𝐀 1 〜𝐀 8 を用いて,以下に示す実験1を行い試料 𝐁 1 〜𝐁 8 を得た。また,試料 𝐁 1 〜𝐁 8 を用いて実験2の操作を行い,試料 𝐂 1 〜𝐂 8 を得た。
実験1:𝐀 1 〜𝐀 8 のそれぞれの試料に希硫酸酸性中,二クロム酸カリウムを穏やかな条件で作用させた後,有機成分を蒸留によって精製した。𝐀 1 を用いた場合に得られた有機成分を 𝐁 1 ,𝐀 2 からのものを 𝐁 2 ,以下同様に番号をつけて 𝐁 8 までの試料が得られた。𝐁 1 〜𝐁 8 の中で最も沸点が高かった試料では,実験1の操作前後で沸点に変化はなかった。
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実験2:𝐁 1 〜𝐁 8 のそれぞれの試料に,十分な量のアンモニア性硝酸銀の水溶液を作用させた後,酸性にして,有機成分を蒸留によって精製した。𝐁 1 を用いた場合に得られた有機成分を 𝐂 1 ,𝐁 2 からのものを 𝐂 2 ,以下同様に番号をつけて 𝐂 8 までの試料が得られた。𝐂 1 〜𝐂 8 の中で最も沸点が高かった試料は 𝐂 1 であった。
〔問〕
カ 試料 𝐀 1 〜𝐀 5 と試料 𝐀 6 〜𝐀 8 では沸点に大きな開きがある。その原因となる分子間力は何か。
キ 試料 𝐀 1 〜𝐀 8 のうち,実験1で化学変化が起こったものは何種類か。また,化学変化した場合,反応の前後で,(あ) すべて沸点が高くなった,(い) すべて沸点が低くなった,(う) 沸点が高くなったものと低くなったものがある,のいずれが正しいか。記号で解答せよ。
ク 試料 𝐁 1 〜𝐁 8 の中に同一の化合物はあるか。あれば,その構造式を示せ。
ケ 試料 𝐁 1 の化合物の構造異性体の中には不斉炭素原子を有する化合物がいくつかある。そのうち一つの構造式を示せ。
コ A ,B ,C 各試料群の中で最も沸点の高い化合物の沸点をそれぞれ T A ,T B ,T C とする。不等号あるいは等号を用いて,沸点の大小関係を示せ。以下の解答例を参考に T A ,T B ,T C の関係が明確になるように記述すること。
解答例:T A > T B > T C ,T A = T B > T C
不適切な例:T A < T B > T C (T A と T C の大小関係が不明)
サ A ,B ,C 計24個の試料の中には同一の化合物も存在する。この点を考慮し,24個すべての試料中には実際に何種類の化合物が存在するか解答せよ。
シ 多くの有機化合物には複数の水素原子が含まれているが,化合物中の水素原子の中には化学的性質が同一であり,等価なものも存在する。例えば,メタンやベンゼン,ジメチルエーテルなどの化合物では分子内に存在するすべての水素原子が等価であり,1種類の水素原子から成り立っているといえる。一方,ジメチルエーテルと同様2つのメチル基を有する酢酸メチルでは,メチル基の置かれている環境が異なるため,分子内に2種類の水素原子が存在する。また,ブロモエタンの場合にも,分子内に2種類の水素原子が存在することになる。𝐀 1 〜𝐀 8 の8種類の化合物の中で,分子内の水素原子の種類が最も少ない化合物の構造式をすべて示せ。
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第1問 押しつぶした酸素 と 白金の上でできる水 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、ダイヤモンドではさんで酸素を押しつぶす装置の問題。本物の気体は、理想気体の式 P V = n R T からずれる。そのずれを Z = P V n R T で表し、図1—2で読む。ずれの原因は2つで、分子どうしが引き合う力 (Z を小さくする)と、分子自身の大きさ (Z を大きくする)。
装置の中の酸素は、漏れず、温度も変わらないので、物質量 n は最初から最後まで同じ。「はじめに入れた量を数える → 押したあとの体積を Z を使って出す」が筋。試料の空間は直径が変わらない円柱なので、体積は高さ d に比例する。
後半Ⅱは、白金の表面で水ができる反応の速さ。中間体 OH は、できるのと同じ速さで使われて、量が一定に保たれる(定常状態)と考える。低温で水を少し足すと何が起こるかは、反応(3)と(2)を続けて見ると分かる。
ア 理想気体は、分子どうしに力がはたらかず、分子の大きさもないと考えた気体。
圧力が低いときは分子どうしが離れていて、分子の大きさはほとんど気にならない。一方、分子どうしが引き合う力は少しはたらく。壁にぶつかろうとする分子は、内側の分子に引きもどされて、ぶつかる勢いが弱まる。だから圧力が理想気体より小さくなり、P V が小さく、Z < 1 になる。
答え 分子の間に引き合う力がはたらき、壁にぶつかる勢いが弱まるので、圧力が理想気体より小さくなるから。
イ 圧力が高いと分子が詰めこまれ、分子自身の大きさが無視できなくなる。分子が自由に動ける空間は、容器の体積から分子が占める分を引いた分しかない。
同じ体積に押しこめるには、理想気体より大きな圧力が要る。だから P V が大きく、Z > 1 になる。高い圧力では、引き合う力より大きさの効き目のほうが勝つ。
答え 分子自身に大きさがあり、高い圧力では分子が動ける空間が容器の体積よりはっきり小さくなるから。
ウ 物質量 n と温度 T は変わらないので、はじめとあとの P V Z が等しい(= n R T )。
はじめ:10 a t m では理想気体とみなすので Z = 1 。
あと:800 a t m での Z を図1—2の酸素の線で読むと、Z ≈ 1.4 。
10 × V 1 1 = 800 × V 2 1.4
体積は高さ d に比例するので、V を d におきかえて
d 2 = 0.40 × 1.4 × 10 800 m m
理想気体のまま(Z = 1 )で計算すると 5.0 × 10 − 3 m m で、本物はそれより 4 割厚い。高い圧力では分子の大きさがきいて、押しても思ったほどは縮まない。
答え d = 0.40 × 1.4 × 10 800 = 7.0 × 10 − 3 m m (図1—2 から 800 atm の酸素は Z = 1.4)
エ 単位格子に酸素分子がいくつあるかを数えてから、「試料の体積 ÷ 単位格子の数」で1つの体積を出す。
頂点に 8 か所 × 1 8 = 1 個、面の中心に 6 か所 × 1 2 = 3 個で、単位格子1つに4個。
酸素の分子の数は、はじめの状態(10 atm・理想気体)から n = P 1 V 1 R T で決まる。結晶になったときの体積は V 1 × 0.0020 0.40 。単位格子の数は n N A 4 なので、単位格子の体積は
V 1 × 0.0020 0.40 n N A / 4 = 4 R T P 1 N A × 0.0020 0.40
V 1 が消えるので、円柱の大きさは要らない。R T P 1 = 0.082 × 300 10 L / m o l を c m 3 に直して計算する。はじめの量だけで決まるので、途中の Z も要らない。
答え 4 R T P 1 N A · 0.0020 0.40 = 8.2 × 10 − 23 c m 3
オ OH は、反応(1)でできたらすぐ反応(2)で水になる。だから水ができる速さは、OH ができる速さと同じ。
反応(1)の速さは k 1 [ O ] [ H ] 。表1の高温 T 1 の値 k 1 = 5.4 × 10 6 と、[ O ] 、[ H ] を入れる:
5.4 × 10 6 × 6.2 × 10 − 10 × 2.5 × 10 − 9
この反応は、遅い反応(1)が全体の速さを決めている(律速段階)。反応(2)がどれほど速くても、水のできる速さは変わらない。
答え k 1 [ O ] [ H ] = 8.4 × 10 − 12 m o l · c m − 2 · s − 1
カ 「OH ができる速さ = OH が使われる速さ」を式にする。使われる速さは反応(2)の k 2 [ O H ] [ H ] 。
k 1 [ O ] [ H ] = k 2 [ O H ] [ H ]
[ O H ] = k 1 [ O ] k 2
k 2 が k 1 よりずっと大きいので、OH はほとんどたまらない([ O ] の約 10 − 5 倍)。
答え [ O H ] = k 1 [ O ] k 2 = 3.3 × 10 − 15 m o l · c m − 2
キ 低温では反応(1)が起きないので、OH ができず、水も生まれない。ところが水を少し足すと、反応(3)で水1つが O と反応して OH が2つできる。
その OH は、それぞれ反応(2)で H と反応して水になる(低温でも k 2 は十分大きい)。つまり
水 1 個 ⟶ OH 2 個 ⟶ 水 2 個
足した水が、次の反応を起こす「火種」になり、しかも1回まわるごとに2倍にふえる。だから水の生成が始まり、どんどん速くなっていく(できた水が自分の生成をすすめる)。
答え 水の生成が始まり、しだいに速くなる。足した水が反応(3)で O と反応して OH が 2 個でき、それぞれ反応(2)で H と反応して水が 2 個になる。水 1 個から水 2 個ができるので、水が触媒のようにはたらき、生成した水がさらに反応をすすめる(O を使いきるまで)。
第2問 結晶の中の「酸素の空き」と、ヨウ素で数える銅の電荷 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、ホタル石型の結晶 Z r O 2 に C a O を混ぜると、O 2 − の席に空き(酸素空孔)ができる話。Z r 4 + の代わりに C a 2 + が入ると正の電荷が 2 足りなくなるので、それを打ち消すように O 2 − が1つ抜ける。電荷のつり合い で空きの数が決まる。空きがあると O 2 − がとなりへ移れるので、固体のまま電気を通す(酸素ポンプ)。
後半Ⅱは、銅をふくむ酸化物 L a 2 − x S r x C u O 4 − y の酸素の量を、ヨウ素の滴定で決める問題。銅イオンの電荷が高いほど、ヨウ化物イオンから多くの電子を奪い、多くのヨウ素 I 2 を出す。そのヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで量ると、銅の電荷が分かる。銅の電荷が分かれば、全体の電荷のつり合いから酸素の数が決まる。キ〜サは、この流れを順に式にしていく。
ア 陽イオンは立方体の頂点と面の中心にある(面心立方格子と同じ並び)。
頂点:8 か所 × 1 8 = 1 個 面の中心:6 か所 × 1 2 = 3 個 → 陽イオン 4 個
陰イオンは、4つの陽イオンに囲まれた位置にある。立方体を 8 つの小さな立方体に分けると、その1つずつの中心がこの位置で、全部が単位格子の中にまるごと入っている。→ 陰イオン 8 個
C a F 2 の組成(陽イオン:陰イオン = 1:2)とも合う。
イ 陽イオン1つあたりで考える。Z r 4 + が 0.85、C a 2 + が 0.15 なので、正の電荷の合計は
4 × 0.85 + 2 × 0.15 = 3.7
これを O 2 − で打ち消すには、O 2 − が 3.7 ÷ 2 = 1.85 個要る。組成は Z r 0.85 C a 0.15 O 1.85 。
陰イオンの席は陽イオン1つあたり 2 つ(アより 4:8)。そのうち 2 − 1.85 = 0.15 個分が空いている。空きの割合は 0.15 2 。
答え Z r 0.85 C a 0.15 O 1.85 ⇒ 2 − 1.85 2 × 100 = 7.5 %
ウ 単位格子1つに陰イオンの席は 8 つ(ア)。そのうちイの割合 7.5% が空いているので、単位格子1つあたりの空きは 8 × 0.075 = 0.60 個。
1.00 c m 3 の中の単位格子の数は 1.00 1.36 × 10 − 22 。空きの数は
8 × 0.075 1.36 × 10 − 22
答え 8 × 0.075 1.36 × 10 − 22 = 4.4 × 10 21 個
エ 陰極は電子を受けとる側。酸素分子が電子を受けとって(還元されて)O 2 − になる。O 原子1つにつき電子2つなので、O 2 1つに電子4つ。
陽極は電子を渡す側。O 2 − が電子を渡して(酸化されて)酸素分子に戻る。陰極の式のちょうど逆向き。
答え 陰極 O 2 + 4 e − ⟶ 2 O 2 − 、陽極 2 O 2 − ⟶ O 2 + 4 e −
オ 流れた電気量は 1.93 A × 500 s = 965 C 。電子の物質量は 965 9.65 × 10 4 = 0.0100 m o l 。
エの式より、O 2 1つ運ぶのに電子4つ。運ばれる酸素は 0.0100 4 m o l 。
体積は状態方程式 V = n R T P で、温度は 800 + 273 = 1073 K 、圧力は 1 a t m :
V = 0.0100 4 × 0.082 × 1073 L
これを mL に直す。高温で量るので、同じ量でも常温より大きな体積になる。
答え 1.93 × 500 9.65 × 10 4 × 1 4 × 0.082 × 1073 = 0.22 l = 2.2 × 10 2 m l
カ ヨウ素 I 2 の滴定には、デンプンを指示薬に使う。デンプンはヨウ素があると青紫色になる(ヨウ素デンプン反応)。
チオ硫酸ナトリウムを加えていくとヨウ素が減り、全部なくなった瞬間に青紫色が消えて無色になる。この色の消える所が終点。
キ 銅イオン 1 mol から出るヨウ素は、(1)式より 1 + p 2 mol。
(2)式より、ヨウ素 1 mol を量るのにチオ硫酸ナトリウムが 2 mol 要る。だから銅 1 mol あたりのチオ硫酸ナトリウムは
1 + p 2 × 2
電子の数で見ると分かりやすい。C u ( 2 + p ) + が C u I (C u + )になるとき、電子を 1 + p 個受けとる。その電子の数だけ、チオ硫酸イオンが電子を出す(1つで1個)。
答え N ( N a 2 S 2 O 3 ) N ( C u ( 2 + p ) + ) = 1 + p
ク 試料の化学式1つに Cu は1つ。だから銅の物質量は試料の物質量と同じで W M 。
滴定に使ったチオ硫酸ナトリウムは C V mol。キの比に入れて
C V W / M = 1 + p
ケ 化合物全体の電荷は 0。それぞれのイオンの電荷 × 数 を足す:
La:( + 3 ) × ( 2 − x ) Sr:( + 2 ) × x Cu:+ ( 2 + p ) O:( − 2 ) × ( 4 − y )
3 ( 2 − x ) + 2 x + ( 2 + p ) − 2 ( 4 − y ) = 0
整理すると − x + p + 2 y = 0 。これを y について解く。
S r 2 + を入れる(x をふやす)と正の電荷が減り、それを銅の電荷を上げる(p)か、酸素を減らす(y)かでおぎなう、という関係になっている。
コ M = 138.9 ( 2 − x ) + 87.6 x + 63.5 + 16.0 ( 4 − y )
数字をまとめると M = 405.3 − 51.3 x − 16.0 y 。ここにケの y = x − p 2 を入れて y を消すと、− 16.0 y = − 8.0 x + 8.0 p なので、x と p だけの式になる。
サ クの式 1 + p = C V M W の M に、コの式を入れる。すると p が両辺に出てくる:
W ( 1 + p ) = C V ( 405.3 − 59.3 x + 8.0 p )
p ( W − 8.0 C V ) = C V ( 405.3 − 59.3 x ) − W
両辺を W − 8.0 C V でわれば、p が W、C、V、x だけで表せる。
モル質量 M 自体が酸素の量(つまり p)に左右されるので、クの式に M をそのまま入れると p が決まらない。M の中の p まで追いかけたのがこの式。
答え p = C V ( 405.3 − 59.3 x ) − W W − 8.0 C V
第3問 ポリスチレンの分子量・アミノ酸の分け方・C₄H₁₀O の 8 つ 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰはポリスチレンの話。スチレンの C=C が開いてつながると、炭素のまわりの形が平面から立体(正四面体)に変わる。分子量は浸透圧(半透膜の両側の液面の差)から求め、同じ重さなら分子量が大きいほど分子の数が少なく、液面の差が小さい、という比例を使う。ポリスチレンに濃硫酸で − S O 3 H をつけた樹脂は、陽イオンを引きとめる(陽イオン交換樹脂)。アミノ酸が出てくる順は、その pH でどれだけ正の電荷をもっているかで決まる。
後半Ⅱは、C 4 H 10 O の異性体 8 つ(アルコール 4 つ、うち 2-ブタノールは鏡像の2つ、エーテル 3 つ)。沸点の表から、どれがどれかを決める。アルコールは水素結合で沸点が高い。二クロム酸カリウムで第一級アルコールはアルデヒドに、第二級はケトンになり、第三級とエーテルは変わらない。アンモニア性硝酸銀はアルデヒドだけをカルボン酸にする。
ア スチレンの C 1 は、C=C の炭素。二重結合の炭素は、3つの結合が同じ平面に広がっていて、3つの角の和は 360 ∘ 。
重合すると C=C が単結合になり、C 1 には新しく4本目の結合(となりのスチレンとの結合)ができる。4本の結合は正四面体の向きに広がり、1つの角は約 109.5 ∘ 。もとの3本も傘を閉じるように寄るので、3つの角の和は
3 × 109.5 ∘ ≈ 328 ∘
イ 半透膜は、小さな溶媒分子(トルエン)は通すが、大きなポリスチレンは通さない。
溶媒は、濃さの差をなくす向き、つまり溶液側(右)へしみこむ(浸透)。右の液面が上がり、液の高さの差による圧力が浸透圧とつり合ったところで止まる。
答え 右側(溶液側)。理由:溶媒が溶液側へ浸透するため
ウ p-ジビニルベンゼンは C=C を2つもつので、2本のポリスチレンの鎖の間に橋をかける(架橋)。
たくさん橋がかかると、全体が1つの巨大な網目になる。溶かすには橋(共有結合)を切らなければならないので、トルエンに入れても溶けない(ふくらむだけ)。
エ 浸透圧はモル濃度に比例し(Π = c R T )、液面の差は浸透圧に比例する。
A と B は同じ 50.0 m g を同じ 100 m L に溶かしたので、モル濃度は分子量に反比例する。だから液面の差も分子量に反比例する:
M A M B = 7.5 5.5
M B = 2.00 × 10 4 を入れる。分子量が大きい A のほうが、同じ重さでも分子の数が少ないので、液面の差が小さい。
答え 2.00 × 10 4 × 7.5 5.5 = 2.7 × 10 4
オ 樹脂には − S O 3 − がついていて、正の電荷をもつ物を引きとめる。正の電荷が小さい(0 に近い・負の)物ほど先に出てくる。
pH 3.4 での各アミノ酸の電荷は、等電点(電荷が 0 になる pH)との比べで分かる。pH が等電点より低いと正、高いと負に傾く。
グルタミン酸:等電点は約 3.2(側鎖に COOH をもつ酸性アミノ酸)。pH 3.4 ではほぼ 0(わずかに負)→ 最初に出る。
アラニン:等電点は約 6.0。pH 3.4 ではわずかに正 → 少し引きとめられて次に出る。
リシン:等電点は約 9.7(側鎖に N H 2 をもつ塩基性アミノ酸)。pH 3.4 では正の電荷が約 +1 で、しっかり引きとめられる。pH 9.2 の液にすると正の電荷が小さくなり、やっと出てくる。
カ C 4 H 10 O には、OH をもつアルコールと、C–O–C のエーテルがある。沸点の表の A 1 〜A 5 (83〜118 ℃)がアルコール、A 6 〜A 8 (33〜39 ℃)がエーテル。
アルコールは OH の H が、となりの分子の O に引かれて結びつく。エーテルは O に H がついていないので、分子どうしでこの結びつきができない。この力の有無が、沸点の大きな差になっている。A 3 と A 4 の沸点が完全に同じなのは、鏡に映した関係(鏡像異性体)の 2-ブタノールだから。
キ 第一級アルコール(A 1 1-ブタノール、A 2 2-メチル-1-プロパノール)→ アルデヒド
第二級アルコール(A 3 ・A 4 2-ブタノール)→ ケトン(2-ブタノン)
第三級アルコール(A 5 )とエーテル(A 6 〜A 8 )→ 変わらない
変わったのは A 1 〜A 4 。アルデヒドやケトンは OH をもたず、分子どうしの水素結合がなくなるので、沸点は下がる(1-ブタノール 118 ℃ → ブタナール約 75 ℃ など)。
ク A 3 と A 4 は、不斉炭素(OH のついた炭素)のまわりの向きだけが違う鏡像異性体。酸化するとその炭素が C=O になり、平面の形になって不斉炭素がなくなる。
だから B 3 と B 4 は、どちらも同じ 2-ブタノン C H 3 − C O − C H 2 − C H 3 になる。
答え ある(B₃ と B₄): C H 3 − C O − C H 2 − C H 3
ケ B 1 は 1-ブタノールを酸化したブタナール C H 3 C H 2 C H 2 C H O (C 4 H 8 O )。構造異性体は、分子式 C 4 H 8 O でつながり方が違う物。
C 4 H 8 O は C=O・C=C・輪のどれか1つをもつ。不斉炭素(4つの違う物がついた炭素)をつくるには、たとえば C=C をもつアルコールにして、OH のついた炭素に H・C H 3 ・ビニル基 C H 2 = C H − ・OH の4つをつければよい。このほか、輪の形(メチル基のついた三員環のエーテルなど)でも作れる。
コ それぞれの試料の群で、いちばん沸点の高い物をさがす。
B:酸化で変わった物は沸点が下がり、ブタナール約 75 ℃、2-ブタノン約 80 ℃。変わらなかった物では第三級アルコールの B 5 が 83 ℃ でいちばん高い。問題文の「最も沸点が高かった試料は、操作前後で沸点に変化はなかった」とも合う。
C:アンモニア性硝酸銀でアルデヒドがカルボン酸になる。C 1 はブタン酸(約 164 ℃)。カルボン酸は2分子が水素結合で組になるので、同じくらいの大きさのアルコールより沸点が高い。
サ 24 個の試料のうち、同じ物を1つにまとめて数える。
A:8 種類(2-ブタノールの鏡像2つは別の物として数える)。
B:新しくできたのは、ブタナール・2-メチルプロパナール・2-ブタノン(B 3 と B 4 は同じ)の 3 種類。B 5 〜B 8 は A と同じ物。
C:アルデヒドだけがカルボン酸になるので、新しくできたのはブタン酸と 2-メチルプロパン酸の 2 種類。ほかは B と同じ物。
シ 分子の中で、まわりの様子(どの原子にどうつながっているか)が同じ水素は同じ種類と数える。
2-メチル-2-プロパノール ( C H 3 ) 3 C − O H は、3つのメチル基が中心の炭素に同じようにつながっていて、メチル基の H は全部同じ種類。あとは OH の H で、全部で2種類。
ジエチルエーテル C H 3 C H 2 − O − C H 2 C H 3 は、O をはさんで左右が同じ形。C H 3 の H と C H 2 の H の2種類。
ほかの物(1-ブタノールなど)は、鎖にそって炭素ごとに環境が違うので、種類が3つ以上になる。
答え ( C H 3 ) 3 C − O H , C H 3 C H 2 − O − C H 2 C H 3