計算のために必要な場合は,以下の数値を使用せよ。
原子量 H = 1.0 C = 12.0 N = 14.0 O = 16.0 Si = 28.1 Br = 79.9
アボガドロ定数 /mol
第1問
次の文章〔Ⅰ〕から〔Ⅲ〕を読み,問 1 から問 11 に答えよ。
〔Ⅰ〕 氷は,水分子 が結びついた分子結晶である。a)<u>氷を構成する水分子の間にはファンデルワールス力や水素結合がはたらいている</u>。氷を構成する水分子の酸素原子 O に着目すると,その酸素原子の周りには,最も近い等距離の位置に 個の酸素原子があり, 個の酸素原子が の頂点に配置された構造をとっている。このような結晶構造をとる氷の密度は,液体状態にある水の密度より 。そのため,氷は水に入れると 。
問 1 下線部 a)に関して,次の記述の中から正しいものをすべて選び,解答欄の記号を○で囲め。
(a) ファンデルワールス力は,すべての分子間にはたらく。
(b) 典型的な水素結合は,電気陰性度の大きな原子に共有結合した水素原子と,その水素原子に直接共有結合しない電気陰性度の小さな原子との間ではたらく力によって生じる。
(c) 直鎖状オクタンの分子間にはたらくファンデルワールス力は,直鎖状ヘキサンの分子間にはたらくファンデルワールス力より弱いため,直鎖状オクタンの沸点は直鎖状ヘキサンの沸点より高い。
(d) 水素結合が分子間だけでなく,分子内にも作用する分子が存在する。
問 2 空欄 に入る適切な数字と,空欄 に入る適切な多面体の名称をそれぞれ書け。
問 3 空欄 および に入る語句のうち,最も適切な組み合わせを選び,解答欄の記号を○で囲め。
| ウ | エ | |
| (a) | 大きい | 浮く |
| (b) | 大きい | 沈む |
| (c) | 小さい | 浮く |
| (d) | 小さい | 沈む |
〔Ⅱ〕 次に,液体状態にある水の溶媒としての性質を考える。b)<u>水のような極性分子からなる液体は,多くの極性分子やイオン結晶を溶かし,例えば,硫化水素 や硝酸カリウム を溶かす</u>。c)<u>溶質の溶けやすさを表す指標として溶解度があり</u>,ある温度において一定量の溶媒に溶ける溶質の最大量で定義される。
問 4 下線部 b)に関して,硫化水素水溶液に関する以下の文章を読み,空欄 と を埋めて,式を完成させよ。また,以下の文章に記載されている情報のうち必要なものを用いて,空欄 に入る適切な正の整数を書け。なお,[A] は物質 A のモル濃度を表す。
25 ℃において,水 1.0 L に mol の硫化水素を溶かした水溶液を調製した。このとき,硫黄原子については,次の式が成り立つ。
また,この水溶液が電気的中性の条件をみたす場合,次の式が成立する。
これらの式が成立する条件において,硫化水素に関する電離平衡と,それらの電離定数 , および水のイオン積 が次のように与えられている。
このとき,硫化水素水溶液は と()の間の pH を示す。
問 5 下線部 c)に関して,温度などによる溶解度の違いを利用して,不純物を含む物質から高純度な物質を得ることがある。このように,固体物質の溶解度の違いを利用して物質を精製する操作の名称を書け。
問 6 下線部 c)に関して,水に対する硝酸カリウムの 20〜80 ℃における溶解度を表 1 に示す。いま 80 ℃の硝酸カリウム飽和水溶液 100 g を,20 ℃まで冷却したところ X〔g〕の固体結晶が析出した。この X の数値を有効数字 2 桁で書け。
問 7 飽和水溶液から固体結晶を析出させる方法の 1 つとして,溶媒である水を蒸発させる方法がある。80 ℃の硝酸カリウム飽和水溶液 100 g を,水溶液の温度を維持したまま水を蒸発させることによって,問 6 で得られた固体結晶の析出量 X〔g〕と同じ量を析出させるのに必要な水の蒸発量 Y〔g〕を求め,その数値を有効数字 2 桁で書け。
表 1
| 温度〔℃〕 | 溶解度〔g/水 100 g〕 |
| 20 | 31.6 |
| 40 | 63.9 |
| 60 | 109 |
| 80 | 169 |
〔Ⅲ〕 d)<u>溶質と溶媒の組み合わせによってはコロイドとよばれる状態が生じることがある</u>。e)<u>コロイド粒子の大きさは一般に,原子や分子の大きさより大きい</u>。いま,水を加熱し,沸騰した水に塩化鉄(Ⅲ)の水溶液を加えたところ,水酸化鉄(Ⅲ)を含むコロイド*が得られた。この水酸化鉄(Ⅲ)のコロイド粒子の溶液を電気泳動させたところ,コロイド粒子は陰極側へ移動した。f)<u>この水酸化鉄(Ⅲ)のコロイド粒子の溶液に電解質水溶液を加えて,凝析させた</u>。
問 8 下線部 d)に関して,以下の説明文の空欄 と に入る適切な語句を,次の語群からそれぞれ 1 つ選び,解答欄の記号を○で囲め。
[説明文]コロイド溶液のうち,液体の分散媒に不溶な が分散しているものは懸濁液とよばれ,液体の分散媒に不溶な が分散しているものは乳濁液とよばれる。
語群:(a) 固体 (b) 液体 (c) 気体
問 9 常温において懸濁液とみなせるものの例として,最も適切なものを次の語群から選び,解答欄の記号を○で囲め。
語群:(a) 牛乳 (b) 煙 (c) 墨汁 (d) 食塩水
*水酸化鉄(Ⅲ)は,条件によって組成は異なるが,水酸化酸化鉄(Ⅲ)FeO(OH) などの鉄の酸化物が含まれる混合物である。
問 10 下線部 e)に関して,コロイド粒子の大きさは一般に 1 nm から 100 nm 程度とされている。いま,一辺の長さが 100 nm の立方体状のコロイド粒子を考える。このコロイド粒子は単一原子で構成される結晶であり,その結晶構造は面心立方格子とする。結晶を構成する原子の原子半径が 0.14 nm のとき,この立方体状コロイド粒子を構成する単位格子の総数 Z を求め,その数値を有効数字 2 桁で書け。解答用紙には計算過程も記し,必要であれば,, として計算せよ。
問 11 下線部 f)に関して,水酸化鉄(Ⅲ)のコロイド粒子を凝析させるとき,同じ物質量で最も凝析を起こしやすいイオンとして適切なものを,(a) から (g) の中から 1 つ選び,解答欄の記号を○で囲め。
(a) (b) (c) (d) (e) (f) (g)
第2問
次の文章を読み,問 1 から問 8 に答えよ。
a)<u>ケイ素,アルミニウム,鉄,クロム,マンガン</u>などは地殻中で主に酸化物等の化合物の形態で存在している。これらの化合物から金属を得ることを製錬と呼び,製錬ではそれぞれの元素の特性に応じた還元方法を適切に選択することが不可欠である。b)<u>単体のケイ素は,二酸化ケイ素を高温で炭素により還元することで得られ</u>,集積回路や太陽電池などに用いられている。c)<u>単体のアルミニウムは,酸化アルミニウムを溶融塩電解により還元することで製造され</u>,鍋などの家庭用品の材料やジュラルミンなどの合金の原料として多量に使用されている。鉄の原料である鉄鉱石は,酸化鉄が主成分である。鉄鉱石から鉄を取り出す溶鉱炉の内部では,コークスから生じた一酸化炭素ガスにより酸化鉄が還元されており,溶鉱炉の下部から排出される鉄を という。 は炭素を 4 %(質量)程度含むため,硬くてもろい。炭素濃度を 2 から 0.02 %(質量)に調整した鉄を と呼び,建築材料や鉄道のレールに利用されている。また,鉄鉱石に含まれる二酸化ケイ素は,鉄鉱石やコークスとともに溶鉱炉に投入される と反応してスラグと呼ばれる物質となり,スラグは との比重の違いにより分離される。d)<u>鉄の製造プロセスでは,二酸化炭素排出量の低減が急務となっており,新しい還元方法が検討されている</u>。クロムやマンガンも,自然界では主に酸化物の形態で存在している。これらの酸化物を高温で炭素により還元することでクロムやマンガンを主成分とする金属が得られ,金属材料の添加成分等に利用されている。
問 1 下線部 a)に記載の元素のうち典型元素を次の (a) から (e) の中からすべて選び,解答欄の記号を○で囲め。
(a) ケイ素 (b) アルミニウム (c) 鉄 (d) クロム (e) マンガン
問 2 下線部 b)に関して,高温で二酸化ケイ素 と炭素 C を反応させた場合,ケイ素 Si と一酸化炭素ガス CO が生成する。56.2 g の Si を得るために必要な C の質量〔g〕を求め,その数値を有効数字 2 桁で解答欄に書け。ただし,反応に使用する と C はすべて反応することとする。
問 3 ケイ素およびケイ素の化合物に関する記述として正しいものをすべて選び,解答欄の記号を○で囲め。
(a) 単体のケイ素(常温・常圧)の結晶中でケイ素原子の配位数は 6 である。
(b) 単体のケイ素(常温・常圧)は,銅よりも電気伝導性が小さい。
(c) 二酸化ケイ素(常温・常圧)の結晶中で酸素原子の配位数は 4 である。
(d) 二酸化ケイ素は両性酸化物に分類される。
(e) フッ化水素酸に二酸化ケイ素を加えるとヘキサフルオロケイ酸が生成する。
(f) 二酸化ケイ素を主成分とするガラスに一定の融点はなく,加熱により変形する。
問 4 下線部 c)に関して,酸化アルミニウム等からアルミニウム単体を得るとき,水溶液の電解ではなく,溶融塩電解による還元が行われる。これはアルミニウムのイオン化傾向が よりも大きいためである。
(1) 空欄 に入る最も適切な物質名を解答欄に書け。
(2) 溶融塩電解で工業的に製造される金属として適切なものを次の (a) から (e) の中からすべて選び,解答欄の記号を○で囲め。
(a) 金 (b) 水銀 (c) 銅 (d) ナトリウム (e) リチウム
問 5 文中の空欄 から に入る最も適切な語句を書け。ただし,空欄 には鉱石の名称が入る。
問 6 下線部 d)に関して,従来の溶鉱炉内では酸化鉄(Ⅱ)FeO が一酸化炭素 CO ガスにより還元され,鉄が生成する。最近では,溶鉱炉からの二酸化炭素排出量を低減させるため,FeO を水素 ガスにより還元することが検討されている。工業的に鉄を製造する場合,鉄鉱石の還元反応を効率よく進めるため,溶鉱炉内の温度を高く保つ必要がある。そのため,酸化鉄の還元反応が発熱反応であるか,または吸熱反応であるかを理解することが不可欠である。
それぞれの物質は固有のエネルギーをもっており,化学反応により物質を構成する原子間の結合が変わると,それに伴ってもっているエネルギーの大きさが変化する。このとき反応物がもつエネルギーと生成物がもつエネルギーの差が主に熱の出入りとして現れる。ここでは,物質がもつエネルギーをエンタルピー という量で表し,生成物がもつエンタルピーと反応物がもつエンタルピーの差をエンタルピー変化 (=[生成物がもつエンタルピー]−[反応物がもつエンタルピー])と定義する。すなわち,生成物の方が反応物よりも小さいエンタルピーをもつ場合, は負の値をとり,反応の進行により外界に熱を放出するため「発熱反応」となる。逆の場合, は正であり,「吸熱反応」となる。
(1) 下の反応 (i) および (ii) の化学反応式を解答欄の (i) および (ii) に書け。ただし,物質の状態(固体,気体など)は書かないこと。
(i) FeO の CO による還元反応
(ii) FeO の による還元反応
(2) 下記の反応のエンタルピー変化の値を用いて,(1) で解答した 2 つの反応 (i) および (ii) のエンタルピー変化 および の値を求め,その数値〔kJ〕を整数で解答欄 (i) および (ii) に書け。
(3) (2) で求めた および の値にもとづいて下記の説明文の中で<u>正しい</u>ものを 1 つ選び,解答欄の記号を○で囲め。
(a) FeO(固)の還元剤が CO(気),(気)のいずれの場合も反応は発熱反応であり,溶鉱炉内部の温度を上昇させるようにはたらく。
(b) FeO(固)の還元剤が CO(気)である場合の反応は吸熱反応であり,(気)である場合の反応は発熱反応である。したがって,還元剤が CO(気)である場合は溶鉱炉内部の温度を維持するため,加熱する必要がある。
(c) FeO(固)の還元剤が CO(気)である場合の反応は発熱反応であり,(気)である場合の反応は吸熱反応である。したがって,還元剤が (気)である場合は溶鉱炉内部の温度を維持するため,加熱する必要がある。
問 7 クロムおよびクロム化合物に関する記述として正しいものをすべて選び,解答欄の記号を○で囲め。
(a) 酸化数 +6 のクロムを含む化合物には毒性の強いものが多い。
(b) 空気中で保管した単体のクロムの表面には,緻密な酸化被膜が生成するため,耐食性に優れている。
(c) クロム酸イオンを含む水溶液に酸を加えると二クロム酸イオンが生じるが,この反応は酸化還元反応である。
(d) クロム酸カリウム は水に不溶である。
(e) ニッケルとクロムの合金には,適度に電気抵抗が大きく電熱線に使用されているものがある。
問 8 酸化マンガン(Ⅳ)に関して,下記の反応の化学反応式を解答欄 (i) および (ii) にそれぞれ書け。ただし,触媒として作用する物質は,化学反応式に含めないこと。
(i) 酸化マンガン(Ⅳ)に濃塩酸を加えて加熱したときの反応
(ii) 酸化マンガン(Ⅳ)に塩素酸カリウムを加えて加熱したときの反応
第3問
次の文章〔Ⅰ〕と〔Ⅱ〕を読み,問 1 から問 12 に答えよ。構造式や不斉炭素原子の表示(*)を求められた場合は,下記の例にならって書け。なお,立体異性体に関して,不斉炭素原子に由来する立体異性体は区別しない。

〔Ⅰ〕 化合物 A と B はどちらも,分子式 の化合物であり,エステル結合を 3 個もつ。化合物 A は不斉炭素原子をもっていないが,化合物 B は不斉炭素原子を 1 個もつ。化合物 A と B について実験 1 から実験 8 を行った。
実験 1 化合物 A を水酸化ナトリウム水溶液で完全に加水分解した後に,酸性になるまで希塩酸を加えたところ,化合物 C,D,E と 2 価アルコールであるエチレングリコールが得られた。化合物 C は分子量 136.0 の芳香族化合物であり,化合物 E は 2 価カルボン酸であった。化合物 C,D,E は,不斉炭素原子をもっていなかった。
実験 2 化合物 C 68.0 mg を完全に燃焼させたところ,二酸化炭素 176.0 mg と水 36.0 mg のみが生成した。
実験 3 化合物 C を過マンガン酸カリウムで酸化すると,化合物 C から分子量が 30.0 増加した芳香族化合物 F が得られた。化合物 F のベンゼン環に結合している水素原子のいずれか 1 個を臭素原子に置き換えた構造として可能なものは,全部で 1 種類であった。
実験 4 化合物 D は,酢酸カルシウムを乾留することで得られ,薬品の原料や除光液などに用いられる。
実験 5 化合物 B を水酸化ナトリウム水溶液で完全に加水分解した後に,酸性になるまで希塩酸を加えたところ,化合物 C,ヒドロキシ基をもつ化合物 G と 2 価アルコールであるエチレングリコールが得られた。化合物 C,G は,不斉炭素原子をもっていなかった。
実験 6 化合物 G を二クロム酸カリウムで酸化すると,化合物 G から分子量が 14.0 増加した化合物 H が得られた。
実験 7 化合物 G について,適切な反応条件を用いて脱水反応を行ったところ,炭素原子間に二重結合が形成された化合物 I が得られた。
実験 8 化合物 I に臭素を反応させたところ,分子量が 159.8 増加した化合物 J が得られた。化合物 J は,不斉炭素原子をもっていなかった。
問 1 化合物 C の分子式を書け。
問 2 化合物 C と F の構造式をそれぞれの解答欄に書け。
問 3 化合物 D の名称を書け。
問 4 化合物 E の構造式を書け。
問 5 化合物 A の構造式を書け。
問 6 化合物 J の構造式を書け。
問 7 化合物 B の構造式を書け。不斉炭素原子には*印をつけよ。
〔Ⅱ〕 安息香酸は天然樹脂に含まれる芳香族カルボン酸であり,防腐剤,医薬品,染料,香料などの原料に用いられる。安息香酸に関して実験 9 から実験 11 を行った。
実験 9 安息香酸に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えると気体が発生した。
実験 10 適切な触媒を用いてアセチレンに安息香酸を付加させると,安息香酸から分子量が 26.0 増加した化合物 K が得られた。化合物 K に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えても気体は発生しなかった。
実験 11 化合物 K の付加重合によって,高分子 L が得られた。<u>222.0 g の高分子 L のエステル結合を 0.60 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液で完全に加水分解し,高分子 M を合成した</u>。
問 8 安息香酸について,次の (a) から (e) の記述の中で正しいものをすべて選び,解答欄の記号を○で囲め。
(a) 水溶液中でわずかに電離して,弱い塩基性を示す。
(b) エーテル溶液中で単体のナトリウムと反応して,水素を遊離させる。
(c) フェーリング液を還元する。
(d) ベンゼン環の炭素原子に結合したカルボキシ基の o 位にヒドロキシ基をもつ化合物はサリチル酸と呼ばれ,医薬品の原料になる。
(e) 現在,工業的にはクメン法と呼ばれる方法によって合成されている。
問 9 実験 9 の反応を化学反応式で示せ。ただし,安息香酸は構造式で書け。
問 10 化合物 K の構造式を書け。
問 11 実験 11 の下線部の反応で,理論上必要な水酸化ナトリウム水溶液の体積〔L〕を求め,その数値を有効数字 2 桁で書け。このとき,高分子 L は 100 % 加水分解したものとする。
問 12 高分子 M 22 g を 15 % ホルムアルデヒド水溶液で処理したところ,高分子 M のヒドロキシ基の 32 % がアセタール化し,高分子 N が生成した。
(1) 高分子 N の名称を書け。
(2) 生成した高分子 N の質量〔g〕を求め,その数値を有効数字 2 桁で書け。