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化 学
第1問 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア ~カ に答えよ。
①シュウ酸二水和物 H O O C − C O O H · 2 H 2 O とエタノールからシュウ酸ジエチルを得るために以下の実験を行った。フラスコにシュウ酸二水和物の固体 42.0 g を入れ,エタノール 100 m L とベンゼン 140 m L を加えてシュウ酸溶液を調製した。次に濃硫酸 0.50 m L と沸騰石を加え,図1—1に示す実験装置で反応液が沸騰し続けるように加熱し十分な時間反応させたところ,目的のシュウ酸ジエチルを得ることはできたが,②エステル化を完全に進行させることはできなかった。
そこで,同じ量の試薬を用い,図1—2に示す改良した実験装置を用意して同様の実験を行ったところ,エタノール,ベンゼンおよび水は蒸発し,生じた蒸気は側管内を上昇し,冷却器において凝縮して液だめ(図1—2)にたまった。反応時間の経過に伴い,液だめにたまる液体は③上層(ベンゼンとエタノールの混合物)と下層(水とエタノールの混合物)の二層に分離した。液だめの容積は反応液の体積よりも小さく,あふれた上層の液体は側管を通ってフラスコに戻った。十分な時間反応させると,④エステル化はほぼ完全に進行した。その後,⑤適切な分離操作を行ったところ,シュウ酸ジエチルが液体として高い収率(理論上の最大生成量に対して実際に得られた量のモル百分率)で得られた。
このように,⑥反応の仕組みに基づき実験装置や操作を工夫すると,目的物を効率よく得ることができる。
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図1—1 改良前の実験装置
図1—2 改良後の実験装置
〔問〕
ア 下線部①の化学反応式を記せ。水和水は含めなくてよい。
イ 下線部②の理由を 2 行以内で簡潔に説明せよ。
ウ 下線部④について述べた以下の文章について,空欄a にあてはまる語句を記せ。また,3 つの化合物の構造式を全て記せ。
反応の終了直後に,濃硫酸を中和する目的で水酸化ナトリウム水溶液を加えたところ,誤って過剰量を加えてしまい,a とよばれる反応が起きてシュウ酸ジエチルの収率が低下してしまった。これは,シュウ酸ジエチルから 3 つの化合物が生じたためであった。
エ 下線部⑤について,溶媒を用いた抽出以外の方法で,純粋なシュウ酸ジエチルを得るための方法を簡潔に述べよ。
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オ 下線部③について,下層の溶液の体積を測れば反応の進行度合いを知ることができる。ある時点においては,水とエタノールの混合物が 52.0 m L 得られた。この混合物の組成は,水とエタノールを 1 : 1 の体積比で混合したものと同じであった。この時点では,全てのカルボキシ基のうち何%がエステル化されたと考えられるか。計算過程を示しつつ有効数字 2 桁で求めよ。
ただし,シュウ酸二水和物は溶媒に完全に溶解し,水和水は溶媒の一部として振る舞う。ここではエステル化のみが進行し,水の移動はエステル化の進行より十分速く,フラスコ内の水は全て液だめに移るものとする。水の密度は 1.00 g · c m − 3 として計算せよ。実験に用いたエタノールの純度は 95.0 % (体積百分率)で,残りの 5.0 % は水である。液体の混合による体積変化,およびベンゼンまたは濃硫酸に含まれる水は無視してよい。
カ 下線部⑥に関して,濃硫酸を用いた酢酸とエタノールのエステル化では,エタノール由来の酸素原子のみが酢酸エチルの炭素—酸素単結合を形成する。これを確認するには,安定に存在する同位体を用いた実験を行えばよいと考えられる。では,どのような化合物を用意して,どのような実験を行えば確認できるか。2 ~ 3 行程度で具体的な手順を説明せよ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問キ ~コ に答えよ。
単糖は⑦分子式 C n H 2 n O n ( n ≧ 3 ) で表される化合物群であり,炭素原子数 n の直鎖状飽和炭化水素の全ての炭素原子に 1 つずつヒドロキシ基が結合した分子が,酸化された構造をもつ。多くの生物の体内には,グルコースなどの C 6 H 12 O 6 の分子式をもつ単糖が大量に存在する。しかし同じ C 6 H 12 O 6 の分子式をもち,生体内で重要な役割を果たす分子であるイノシトールは,⑧シクロヘキサンの全ての炭素原子に 1 つずつヒドロキシ基が付いた分子であり,単糖ではない。
単糖は,アルデヒド構造(ホルミル基)をもつアルドースと,ケトン構造(カルボニル基)をもつケトースに分類され,いずれも塩基性水溶液中で加熱すると徐々に構造が変化する。例えばグルコースからは,化学的に不安定で酸化されやすい中間体Aを経由して,フルクトースとマンノースが徐々に生成する(図1—3)。
図1—3 グルコースの塩基性条件下での加熱による別の単糖の生成
一方,フルクトースの塩基性水溶液を加熱すると,上記の中間体Aを経由してグルコースとマンノースが,また化学的に不安定で酸化されやすい別の中間体Bを経由して,⑨ケトースであるプシコースなどが徐々に生成する(図1—4)。
図1—4 フルクトースの塩基性条件下での加熱による別の単糖の生成
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フルクトースはケトースであるが,フェーリング液と混合,加熱するとすぐに反応して赤褐色沈殿を生じる。また,以下の実験結果 1 ,2 が知られている。
実験結果1 フルクトースがフェーリング液と反応して赤褐色沈殿を生じる速さは,アルドースであるグルコースとほぼ変わらない。
実験結果2 以下の化合物C,D,Eそれぞれをフェーリング液と反応させると,C,Dからは赤褐色沈殿が生じるが,Eからは赤褐色沈殿はほとんど生じない。
〔問〕
キ 下線部⑦に関して,C 3 H 6 O 3 の分子式をもつ最小の単糖の構造式を,下の例にならって全て記せ。なお不斉炭素原子を含む場合には,その炭素原子に*を付けて示すこと。
ク 下線部⑧に関して,イノシトールにはb 種類の立体異性体が存在し,その中で鏡像の関係にある異性体はc 組存在する。b ,c にあてはまる適切な数字をそれぞれ答えよ。なお,立体異性体の総数を数える際には,鏡像異性体はそれぞれ別の分子として数えよ。また,炭素—炭素単結合の回転により生じる異性体(配座異性体)については区別しないものとする。
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ケ 中間体A,Bは化学的に不安定で酸化されやすいという事実,及び実験結果 1 と 2 から,フェーリング液と反応して赤褐色沈殿を生じるために重要と考えられる単糖の化学構造(部分構造のみでよい)を記せ。また実験結果 2 で,化合物C,Dからは赤褐色沈殿が生じるが,化合物Eからは赤褐色沈殿がほとんど生じない理由を 50 字程度で説明せよ。なお,C 6 H 12 O 6 の分子式で表される単糖は,水溶液中で直鎖状分子と環状分子の平衡混合物として存在していることが知られているが,本問ではどの単糖も直鎖状分子として存在する比率は同じであるとする。
コ 下線部⑨に関して,プシコースの構造式を,以下の図1—5(iii)に示した投影図にならって記せ。ただし,プシコースのカルボニル基の炭素原子の位置番号はフルクトースと同じである。
図1—5 グルコースの構造を表す方法
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第2問 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
元素 N ,O ,C l ,A g ,A u / 原子量 14.0 ,16.0 ,35.5 ,107.9 ,197.0
ファラデー定数 9.65 × 10 4 C · m o l − 1
Ⅰ 次の文章を読み,問ア ~キ に答えよ。
両性金属(両性元素)である金属AとBは,酸および強塩基の水溶液のいずれに対しても反応し,気体を発生する。鉛も両性金属に分類されるが,他の両性金属に比べ①酸および強塩基の水溶液に対する反応性が低い。鉛(Ⅱ)イオン,Aの 2 価の陽イオン A 2 + ,Bの 2 価の陽イオン B 2 + のいずれかを含む中性から塩基性の水溶液に硫化水素を加えると,鉛(Ⅱ)イオンからは黒色沈殿が,A 2 + からは白色沈殿が,B 2 + からは灰黒色の沈殿がそれぞれ得られる。A 2 + から得られる上記の白色沈殿を構成する物質の結晶構造中の原子Aと硫黄原子を全て炭素原子に置き換えると,ダイヤモンドと同様の構造になる。鉛(Ⅱ)イオンと A 2 + のいずれかを含む水溶液に②二クロム酸カリウム水溶液を加えると,それぞれ③黄色沈殿が得られる。一方で,④B 2 + を含む水溶液に硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液を加えると,Bの 4 価の陽イオン B 4 + を生成し暗緑色の溶液が得られる。
〔問〕
ア 金属Aの元素記号を記せ。
イ 金属Bの元素記号を記せ。
ウ 下線部①に関して,十分量の希硫酸に鉛を加えると,はじめ気体が発生したが,その後固体が残っているにもかかわらず気体の発生が止まった。その理由を 20 字程度で説明せよ。
エ 下線部②に関して,赤橙色の二クロム酸イオンは水溶液中でクロムを含む黄色のイオンXと化学平衡にあり,溶液の p H によって平衡が移動する。Xの化学式を示し,この化学平衡を表すイオン反応式を記せ。
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オ 下線部③に関して,十分量の鉛(Ⅱ)イオンを含む水溶液に二クロム酸カリウム水溶液を加えると,二クロム酸鉛(Ⅱ)の沈殿ではなく,鉛(Ⅱ)イオンとイオンXからなる物質の黄色沈殿が生成し,溶液部分はほぼ無色になった。下線部の結果が得られた理由を以下の語句を全て用いて簡潔に説明せよ。
〔語句〕 平衡,溶解度
カ 下線部④のイオン反応式を B 2 + と B 4 + を用いて記せ。
キ 一般に,酸化作用のある化合物の水溶液の濃度はヨウ素還元滴定によって決定できる。この方法を用いて,ある過マンガン酸カリウム水溶液の正確な濃度を以下の手順で決定した。
過マンガン酸カリウム水溶液 3.00 m L に希硫酸を加え酸性にした後,十分量のヨウ化カリウム水溶液を加えた。反応が完結した後,デンプン水溶液を加えて濃青色の溶液を得た。この溶液に 2.00 m o l · L − 1 のチオ硫酸ナトリウム水溶液を 3.40 m L 滴下した時点で,溶液の色が無色に変化した。過マンガン酸カリウム水溶液の濃度〔m o l · L − 1 〕を有効数字 2 桁で答えよ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問ク ~シ に答えよ。
金と銀は 11 族に属し,結晶の構造はいずれもa で,単位格子中に含まれる原子の数は 4 個である。金は銀よりもb が小さく,酸化されにくい性質をもつ。金は硝酸とは反応しないが,王水(注1)や⑤ヨードチンキ(注2)とは反応し溶解する。一方,⑥銀は硝酸と反応し,銀イオンとなり溶解する。
金や銀などの貴金属は希少であるため,使用済みの電子機器などから溶解させて回収し再利用されている。⑦金を主成分とする金と銀の合金を王水に加えると,反応が起こり沈殿が生成する。沈殿からは銀を,⑧溶液からは金を回収できる。
(注1) 濃塩酸と濃硝酸を 3 : 1 の体積比で混合した溶液
(注2) ヨウ素 I 2 ,ヨウ化カリウム K I ,エタノールからなる溶液
この溶液中におけるヨウ化物イオン I − と三ヨウ化物イオン I 3 − の間の平衡と,I 3 − の還元の化学反応式はそれぞれ以下の式(1),式(2)で与えられる。
I 2 + I − ⇌ I 3 − ( 1 )
I 3 − + 2 e − ⟶ 3 I − ( 2 )
〔問〕
ク a ,b に入る語句として最も適切なものを以下の語群から選べ。
〔語群〕 体心立方格子,面心立方格子,六方最密構造,イオン化傾向,電気陰性度,電子親和力
ケ 下線部⑤に関して,金はヨードチンキ中の I 3 − によって酸化され,金イオンと I − からなる錯イオンを形成し溶解する。ここでは,主に直線形の A u + の錯イオンCと平面正方形の A u 3 + の錯イオンDが存在する。金から錯イオンCおよびDを形成するそれぞれのイオン反応式を示せ。
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コ 下線部⑥に関連して,銀イオンを含むアンモニア水溶液では,以下の二段階の平衡(式(3),式(4))が存在する。式(5)は,式(3)と式(4)をまとめたものである。
A g + + N H 3 ⇌ [ A g ( N H 3 ) ] + ( 平衡定数 K 1 〔 m o l − 1 · L 〕 ) ( 3 )
[ A g ( N H 3 ) ] + + N H 3 ⇌ [ A g ( N H 3 ) 2 ] + ( 平衡定数 K 2 〔 m o l − 1 · L 〕 ) ( 4 )
A g + + 2 N H 3 ⇌ [ A g ( N H 3 ) 2 ] + ( 平衡定数 K = 1.11 × 10 7 m o l − 2 · L 2 ) ( 5 )
銀を含む各イオンの存在割合とアンモニア濃度の関係が図2—1で与えられるとき,K 1 ,K 2 の値として最も適切なものを以下の(あ)~(お)の中からそれぞれ選べ。
(あ)1.2 × 10 3 ,(い)1.7 × 10 3 ,(う)3.3 × 10 3 ,(え)6.7 × 10 3 ,(お)9.2 × 10 3
図2—1 アンモニア濃度[NH3 ]と銀を含む各イオンの存在割合の関係
サ 下線部⑦に関して,銀を 7.00 m g 含む合金 100.0 m g を王水と反応させたところ,沈殿Eが 9.30 m g 生成した。溶液中の金を精製したところ 93.0 m g の純粋な金を回収できた。沈殿Eの質量から,Eの化学式を推定せよ。答えに至る計算過程も記せ。ただし,合金に含まれる金と銀は損失なく全て回収できたものとする。
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シ 下線部⑧に関して,金は A u 3 + を還元することで金属単体として回収される。ある水溶液に含まれる A u 3 + を金の単体に還元するために必要な亜硫酸ナトリウムの物質量は 3.00 × 10 − 4 m o l であった。一方,等量の A u 3 + を含む水溶液から電気分解により金を全て析出させ回収するには,1.00 A の電流を少なくとも何秒流せばよいか,有効数字 2 桁で答えよ。ただし,これらの還元反応では金イオンの還元のみが起こるものとする。なお,亜硫酸イオンが硫酸イオンに変化するイオン反応式は式(6)で与えられる。
S O 3 2 − + H 2 O ⟶ S O 4 2 − + 2 H + + 2 e − ( 6 )
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第3問 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
気体定数 R = 8.31 × 10 3 P a · L · K − 1 · m o l − 1
Ⅰ 次の文章を読み,問ア ~エ に答えよ。
化学実験では,必要に応じて液体に溶解した気体を放出させる,脱気という操作を行う。以下では二酸化炭素 C O 2 の水への溶解および放出を,ヘンリーの法則をもとに考える。ヘンリーの法則が成り立つとき,気体 1 P a あたり,液体 1 L あたりに溶解する物質量をヘンリー定数 k H と呼ぶ。たとえば,280 K での水に対する C O 2 の k H は 0.0600 × 10 − 5 m o l · L − 1 · P a − 1 であり,これは 1 L の水に 1.00 × 10 5 P a で接すると,0.0600 m o l の C O 2 が溶解することを表す。k H は温度により変化し,一定圧力下でも温度により溶解する物質量が変化する。
ここでは,すべての気体は①理想気体であるとする。気体の溶解による液体の体積変化,温度変化による液体の体積変化,水の蒸発および蒸気圧,C O 2 と水の反応は考えないものとする。
6.00 m o l の C O 2 を 100 L の水に溶解させた 280 K の水溶液を 3 つ用意した。これらは,水面と接するようにピストンを設置することで,容器内に密閉してある。このあと,それぞれの水溶液に対して脱気に相当する以下の 3 つの実験を行った(図3—1)。
実験1:温度を 280 K に保ったまま,ピストンをゆっくりと動かし,気体部分の体積が 69.8 L となる位置で固定し,長時間静置した。
実験2:温度を 280 K に保ったまま,ある物質量のアルゴン A r の気体を容器内にすみやかに追加した。その後,ピストンをゆっくりと動かし,ある位置で固定して長時間静置したところ,気体の全圧が 1.00 × 10 5 P a となった。
実験3:温度を 280 K に保ったまま,ピストンをゆっくりと動かし,気体部分の体積が 69.8 L となる位置で固定した。その後,容器を加熱して温度を 280 K からゆっくりと上昇させ,ある温度に保って長時間静置したところ,気体の圧力が 1.25 × 10 5 P a となった。
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図3—1 実験の概要
〔問〕
ア 下線部①に関する以下の説明文において,a ~d にあてはまる最も適切な語句をそれぞれ答えよ。
理想気体の状態方程式では,標準状態における気体 1 m o l の体積は 22.4 L であるが,実在気体ではこれとは異なる値になる。しかし,a 温・b 圧の条件では,実在気体を理想気体とみなすことができる。これは,a 温では分子の熱運動が激しくなり,c を無視でき,b 圧では単位体積中の分子の数が減り,d が無視できるようになるためである。
イ 実験1において,液体部分から気体部分に移動した C O 2 の物質量〔m o l 〕を有効数字 2 桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。必要があれば,1.00 × 10 5 P a および 280 K のとき,3.00 m o l の理想気体の体積が 69.8 L であることを用いよ。
ウ 実験2において,容器に追加した A r の物質量が(A) 1.00 m o l の場合および(B) 3.00 m o l の場合において,液体部分から気体部分に移動した C O 2 の物質量〔m o l 〕として最も適切なものを,次の(1)~(6)からそれぞれ選べ。ただし,A r の水への溶解は考えないものとする。
(1) 1.0 m o l
(2) 2.0 m o l
(3) 3.0 m o l
(4) 4.0 m o l
(5) 5.0 m o l
(6) 6.0 m o l
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エ 図3—2に絶対温度 T と水に対する C O 2 のヘンリー定数 k H との関係を示す。ただし,図3—2(下)の横軸は 1 / T である。図3—2を用い,実験3において気体の圧力が 1.25 × 10 5 P a となる温度〔K 〕が含まれる範囲として最も適切なものを,次の(1)~(4)から選べ。答えに至る過程も簡潔に記せ。
(1) 290 K 以上 310 K 未満
(2) 310 K 以上 330 K 未満
(3) 330 K 以上 350 K 未満
(4) 350 K 以上 370 K 未満
図3—2(上)絶対温度T と水に対するC O 2 のヘンリー定数k H との関係 (下)絶対温度の逆数1 / T と水に対するC O 2 のヘンリー定数k H との関係
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Ⅱ 次の文章を読み,問オ ~ケ に答えよ。
酸塩基滴定における p H 変化に基づいて,リン酸緩衝液の緩衝作用を考える。25 ∘ C において,0.0100 m o l · L − 1 のリン酸 H 3 P O 4 水溶液 10.0 m L を,0.0100 m o l · L − 1 の水酸化ナトリウム N a O H 水溶液で滴定したところ,図3—3に示す滴定曲線が得られた。②中性付近では,p H の変化が緩やかであることから緩衝作用が働いていることがわかる。一方,第一中和点と③第二中和点付近では,④p H の変化が大きいことから緩衝作用が働かないこともわかる。
25 ∘ C において,0.0100 m o l · L − 1 の H 3 P O 4 水溶液 10.0 m L と 0.0100 m o l · L − 1 の N a O H 水溶液e m L を混合すると,p H 7.0 のリン酸緩衝液が得られた。ここで,リン酸緩衝液への温度の影響を考える。⑤リン酸二水素イオン H 2 P O 4 − の電離は吸熱反応であるため,温度変化に伴いリン酸緩衝液の p H は変化する。このため,使用する温度を考慮した緩衝液の調製が必要である。
ここでは,中和により生成したナトリウム塩は完全に電離していると考えてよい。また,25 ∘ C におけるリン酸の電離定数とその値の常用対数を表3—1に示す。
表3—1 25 ℃におけるリン酸の電離定数とその値の常用対数
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図3—3 25 ℃におけるリン酸水溶液の滴定曲線
〔問〕
オ 下線部②に関して,中性付近で緩衝作用が働いている理由を,H 2 P O 4 − とリン酸水素イオン H P O 4 2 − のイオン反応式を用いて説明せよ。
カ 下線部③に関して,第二中和点での p H を小数第 1 位まで計算せよ。答えに至る過程も記せ。ただし,H P O 4 2 − のリン酸イオン P O 4 3 − への電離は考えないものとする。なお,必要があれば,25 ∘ C における水のイオン積 K w = 1.00 × 10 − 14 m o l 2 · L − 2 ,および log 10 2 = 0.301 ,log 10 3 = 0.477 ,log 10 7 = 0.845 を用いてよい。
キ 下線部④に関して,H 3 P O 4 の第一中和点 p H 5.0 付近で緩衝作用を示す緩衝液を調製するには,H 3 P O 4 の代わりにどのような電離定数の値をもつ酸を用いればよいか,理由とともに答えよ。
ク e にあてはまる数値を有効数字 2 桁で計算せよ。答えに至る過程も記せ。
ケ 下線部⑤に関して,25 ∘ C で p H が 6.7 であるリン酸緩衝液を冷やすと,p H の値は大きくなるか小さくなるかを理由とともに答えよ。ただし,水のイオン積に対する温度の影響は考えないものとする。
第1問 水を抜くと、止まっていた反応が最後まで進む 出題の意図(東大) 有機分子の構造と性質を理論的に考える力、分子の構造を三次元的に捉える力、および化学実験の過程を理論的に考察する力を問うことを意図しています。
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは、シュウ酸とエタノールからエステル(シュウ酸ジエチル)を作る実験。エステル化は可逆反応 (行きと帰りの両方が起きる反応)で、できた水が残っていると、途中で行きと帰りがつりあって止まる(平衡)。図1—2 の装置は、できた水を液だめに抜きとってフラスコにもどさない工夫で、ルシャトリエの原理(水を減らすと、水を増やす向き=エステルができる向きへ進む)により、反応が最後まで進む。
図1—2 の装置のしくみ:フラスコで沸騰したエタノール・ベンゼン・水が冷却器で液体にもどり、液だめで上層(ベンゼンとエタノール)と下層(水とエタノール)に分かれる。上層だけがあふれてフラスコにもどり、水は下層にたまったまま。だから下層の水の量で、反応がどこまで進んだかが分かる(オ)。
Ⅱ(p32 から)は糖の構造。単糖は「炭素の鎖のすべての炭素に OH が1つずつ付き、そのうち1つが C=O(アルデヒドかケトン)になったもの」。塩基性の液の中では、C=O のとなりの炭素の H が動いて、二重結合の両はしに OH が付いた不安定な形(エンジオール)を通って、別の糖に変わる。これがフェーリング液との反応のカギになる。
ア カルボキシ基 –COOH 1つと、エタノールの –OH 1つから、水が1分子とれてエステル –COO–C₂H₅ ができる。
シュウ酸 HOOC–COOH はカルボキシ基を 2 つもつので、両方をエステルにするにはエタノールが 2 分子要り、水が 2 分子できる。問題の「水和水は含めなくてよい」は、シュウ酸二水和物の水(結晶の中に入っている水)を式に書かなくてよい、という意味。可逆反応なので、矢印は両向きで書く。
答え H O O C − C O O H + 2 C 2 H 5 O H ⇄ C 2 H 5 O O C − C O O C 2 H 5 + 2 H 2 O
イ 図1—1 の装置では、蒸発した水やエタノールは冷却器で液体にもどって、すべてフラスコに落ちてくる。できた水はフラスコから出ていかない。
エステル化は可逆反応なので、水がたまっていくと、帰りの反応(エステルが水で分かれてもとにもどる加水分解)も速くなる。やがて行きと帰りの速さが同じになり、見かけ上止まる(平衡)。だから全部はエステルにならない。
デモでは、平衡定数をよく使われる 4 くらいとして、水をもどす装置では約 76% で止まり、水を抜く装置では 100% まで進むのを並べて見せている(平衡定数は問題には無い、おおよその値)。
答え エステル化は可逆反応で、生じた水がフラスコにもどって残るため、逆反応(加水分解)とつりあって平衡に達するから
ウ エステルに水酸化ナトリウムなどの塩基を加えて温めると、エステルが分かれてカルボン酸の塩とアルコールになる。これをけん化 という。行きと帰りのある加水分解と違い、できたカルボン酸がすぐ塩(イオン)になるので、もどらずに進んでしまう。
シュウ酸ジエチル C 2 H 5 O O C − C O O C 2 H 5 にはエステルの所が 2 つある。片方だけ分かれると、「片側がエステルのまま、もう片側がナトリウム塩」の物とエタノールができる。両方分かれると、シュウ酸ナトリウム N a O O C − C O O N a とエタノール。
だから生じる化合物は、エタノール・片側だけ分かれた物・両側とも分かれた物、の3つ。
答え a けん化 C H 3 C H 2 O H , C 2 H 5 O − C O − C O − O N a , N a O − C O − C O − O N a
エ 表の沸点を見ると、エタノール 78 ℃、ベンゼン 80 ℃、水 100 ℃、シュウ酸ジエチル 185 ℃。シュウ酸ジエチルだけが飛びぬけて高い。
沸点の違いを使って分けるのが蒸留(分留) 。温めると、沸点の低いエタノール・ベンゼン・水が先に蒸気になって出ていき、最後に 185 ℃ くらいで出てくるものを冷やして集めれば、純粋なシュウ酸ジエチルが液体として得られる。
答え 蒸留(分留):沸点の低いエタノール・ベンゼン・水を先に留去し、約185℃で出てくるシュウ酸ジエチルを集める
オ 下層の水が「どこから来たか」を3つに分けて数えるのがポイント。下層 52.0 mL は水とエタノールが 1:1 なので、水は 26.0 mL(= 26.0 g)。
① シュウ酸の水和水 :シュウ酸二水和物の式量は 90 + 2 × 18 = 126 。42.0 g は 42.0 126 = 1 3 mol で、水和水はその 2 倍の 2 3 mol = 12.0 g。
② エタノールにまざっていた水 :100 mL の 5.0% で 5.0 mL = 5.0 g。
③ 反応でできた水 :残りの 26.0 − 12.0 − 5.0 = 9.0 g = 9.0 18.0 = 0.500 mol。
カルボキシ基 1 つがエステルになるたびに水が 1 分子できる。カルボキシ基は全部で 1 3 × 2 = 2 3 ≈ 0.667 mol あるので
0.500 0.667 × 100
水和水を数え忘れると 100% をこえる、ありえない数が出る。「水和水は溶媒の一部として振る舞う」「エタノールの純度は 95.0%」という条件が、答えを支えている。
答え 75 % ( 26.0 − 12.0 − 5.0 18.0 ÷ 2 × 42.0 126 = 0.500 0.667 )
カ 確かめたいのは、酢酸エチルの C–O 単結合(C H 3 C O − O − C 2 H 5 のまん中の O)が、エタノールの O なのか、酢酸の O なのか。O に目印をつけて、行き先を追えばよい。
安定な同位体(放射線を出さない、重さだけ違う原子)18 O を使って、O を 18 O にかえたエタノール C 2 H 5 18 O H を用意する。これを濃硫酸のもとで、ふつうの酢酸とエステル化させる。
できた酢酸エチルと水の分子量を、質量分析(分子の重さを測る方法)で調べる。エタノールの O が酢酸エチルに入るなら、酢酸エチルはふつうより 2 重い 90 になり、水はふつうの 18 のまま。反対に、酢酸エチルが 88・水が 20 なら、エタノールの O は水のほうへ行ったことになる。
念のため:酢酸エチル全体の分子量 90 だけでは、18 O が酢酸エチルの 2 つの O(C=O の O と C–O 単結合の O)のどちらにあるかまでは区別できない(どちらにあっても 90)。「エタノールの O はエチル基に付いたまま移る。エチル基に付いている O は単結合の O だけ」という前提で読んでいる。位置まではっきり確かめたいときは、たとえば (1) できた酢酸エチルを水酸化ナトリウムでけん化する(けん化では C=O の炭素と単結合の O の間が切れる)。出てくるエタノールが 48(18 O 入り)なら、18 O は単結合の O にあった。(2) 質量分析で分子がこわれてできるかけらの重さを見る(C H 3 C O + が 43 のまま=C=O の O はふつうの O)。
答え 酸素を 18 O にしたエタノール C 2 H 5 18 O H を用意し、濃硫酸で酢酸とエステル化する。できた酢酸エチルと水の分子量を質量分析で測り、酢酸エチルが 90( 18 O を含む)・水が 18 なら確認できる
キ ここからⅡ。単糖は「炭素 n 個の鎖のすべての炭素に OH が1つずつ付いた物が、1か所だけ酸化されて C=O になった物」。
n = 3 のとき、炭素の鎖は C–C–C で、どの炭素を C=O にするかで2通り。はしの炭素を C=O にすると、アルデヒド(–CHO)になる:C H O − C H ( O H ) − C H 2 O H 。まん中の炭素を C=O にすると、ケトンになる:C H 2 O H − C O − C H 2 O H 。
不斉炭素原子(4つの違う原子や原子団が付いた炭素)を探す。アルデヒドのほうのまん中の炭素には、–CHO・–H・–OH・–CH₂OH の 4 つの違うものが付いているので、不斉炭素。ケトンのほうは、まん中が C=O で、両はしの炭素は H を 2 つもつので、不斉炭素は無い。
答え C H O − C * H ( O H ) − C H 2 O H (グリセルアルデヒド) , C H 2 O H − C O − C H 2 O H (ジヒドロキシアセトン)
ク シクロヘキサンの6つの炭素それぞれで、OH が環の面の「上」か「下」かを選べる。2 6 = 64 通りあるが、環を回したり、裏返したりして重なるものは同じ分子なので、まとめる。
「上」の OH の数で分けて数える。裏返すと上下が入れかわるので、「上が k 個」と「上が 6 − k 個」は同じ仲間。上が 0 個:1 通り。上が 1 個:1 通り。上が 2 個:となり・1 つおき・向かいの 3 通り。上が 3 個:3 つ並び・1 つおきの交互・「2 つ並び+1 つ離れ」の 3 通り。合わせて 8 通りの形がある。
このうち、鏡に映したものがどう回しても重ならないのは、「2 つ並び+1 つ離れ」の形だけ。この形は右手・左手の2つに分かれるので、鏡像異性体を別に数えると 8 + 1 種類、鏡像の組は1組。
ほかの形はどれも環の中に鏡の面をもち、自分の鏡像と重なる。
ケ 中間体 A・B は、C=O のとなりの炭素の H が O へ移ってできる、二重結合の両はしに OH が付いた形(エンジオール)。これが「酸化されやすい」ので、フェーリング液の C u 2 + に電子を渡して赤い C u 2 O を作れる、と考えられる。
実験結果1:ケトースのフルクトースも、アルドースのグルコースと同じ速さで反応する。フルクトースも、C=O(2番)のとなりの 1番の炭素に H があり、グルコースと同じ中間体 A(エンジオール)になれるから。つまり大事なのはアルデヒドかどうかではなく、「C=O のとなりの炭素に H と OH がある」こと。
実験結果2:C・D・E は、どれも C=O のとなりの炭素に OH が付いている。そのとなりの炭素の H の数は、C が 2 個、D が 1 個、E が 0 個。E は H が無いので、H が O へ移ることができず、エンジオールになれない。だから酸化されず、赤い沈殿がほとんどできない。
答え − C O − C H ( O H ) − (C=O のとなりの炭素に H と OH)。E は OH の付いた炭素に H が無く、酸化されやすいエンジオール(中間体)になれないから
コ 図1—5(iii) の投影図は、上から 1〜6 番の炭素を縦に並べ、横に出た H と OH を左右に描く。グルコースは 2番 OH 右、3番 OH 左、4番 OH 右、5番 OH 右。
フルクトースは、グルコースの 1・2 番が中間体 A を通って C=O が 2 番に移った物(1番 CH₂OH、2番 C=O)。3〜5 番はグルコースと同じ向き。
プシコースは、フルクトースから中間体 B を通ってできる。B は 2 番と 3 番のあいだに二重結合があるエンジオールで、ここで 3 番の炭素の立体の向きがいったん消える。もどるときに 3 番の H と OH が逆向きに付くと、C=O は 2 番に残ったまま、3 番の向きだけがフルクトースと逆の糖になる。これがプシコース。4・5 番はフルクトースと同じ向きのまま。
答え 投影図で上から C H 2 O H , C = O , 3・4・5 番はどれも左 H・右 OH , C H 2 O H (フルクトースの 3 番の OH だけを右に)
第2問 溶けにくさが平衡を引っぱる — クロム・銀・金 出題の意図(東大) 無機化学に関する様々な項目(無機物質の性質、酸化還元、化学平衡、結晶構造)に関する基礎的な理解力と、与えられたデータ・グラフをもとに現象の本質を見抜く力、論理的かつ総合的に考察する力を問うことを意図しています。
東大の解答例(選ぶ問題だけ) Ⅱ コ:K1 (い) K2 (え) 下の答えと全部一致
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは両性金属(酸にも強い塩基にも溶ける金属)の見分け方と、クロムの反応。ヒントは沈殿の色と結晶の形なので、教科書の無機の知識で A・B を当てるところから始まる。オでは、「沈殿して液から出ていく物があると、平衡はそれをおぎなう向きに動き続ける」という考え方が大事。
キとシは、やりとりする電子の数 だけで計算できる。酸化剤が受けとる電子の数と、還元剤が出す電子の数は必ず等しい。途中にいくつ反応がはさまっても、電子の数を順に追えばよい。
Ⅱ(p38 から)は金と銀。結晶の形、ヨウ素で金が溶ける反応、銀とアンモニアの錯イオン(金属イオンに分子やイオンがくっついた、ひとかたまりのイオン)の割合をグラフから読む問い、王水で出る沈殿、電気分解で金を取り出す時間を順に問う。
ア 両性金属の代表は、アルミニウム Al・亜鉛 Zn・スズ Sn・鉛 Pb。2 価の陽イオンになるのは Zn・Sn・Pb。
A の手がかり:硫化水素で白い 沈殿。硫化物の多くは黒っぽいが、硫化亜鉛 ZnS は白い。さらに ZnS の結晶(閃亜鉛鉱型)は、Zn と S を全部 C にかえるとダイヤモンドと同じ形になる。二クロム酸カリウムで黄色い沈殿(クロム酸亜鉛)ができるのも合う。
イ B は 2 価の陽イオン B 2 + が、酸化されて 4 価の B 4 + になれる金属。両性金属で 2 価と 4 価の両方をとるのはスズ(S n 2 + と S n 4 + )。
S n 2 + は電子を出しやすい(還元剤としてはたらく)ので、二クロム酸イオンに酸化されて S n 4 + になる。そのとき二クロム酸イオンのほうは C r 3 + (暗緑色)になる。硫化水素で灰黒色(こげ茶)の SnS ができるのも合う。
ウ 鉛は希硫酸と反応して水素を出しながら溶けはじめるが、できるのは硫酸鉛(Ⅱ) P b S O 4 。P b S O 4 は水にとても溶けにくい。
だから、できた P b S O 4 が鉛の表面にくっついて膜のようにおおい、中の鉛と希硫酸がふれあえなくなる。鉛の固体はまだ残っていても、表面がふさがれて反応が止まる。20 字程度にまとめる。
答え 鉛の表面が水に溶けにくい P b S O 4 でおおわれるから
エ 二クロム酸イオン C r 2 O 7 2 − (赤橙色)と平衡にある黄色いイオンは、クロム酸イオン。クロムの酸化数はどちらも + 6 で、酸化還元ではなく、酸・塩基の平衡。
クロム酸イオン 2 個が H + と結びついて水がとれると、二クロム酸イオンになる。Cr の数(2)、O の数(左 8、右 7 + 1 )、電荷(左 − 4 + 2 = − 2 、右 − 2 )をそろえて式にする。
酸性にする(H + を増やす)と右(赤橙色)へ、塩基性にすると左(黄色)へ動く。
答え X = C r O 4 2 − , 2 C r O 4 2 − + 2 H + ⇄ C r 2 O 7 2 − + H 2 O
オ 液の中では、二クロム酸イオンとクロム酸イオンがエの平衡にある。二クロム酸カリウムの液にも、少しだけクロム酸イオンがある。
クロム酸鉛(Ⅱ) P b C r O 4 は、とても溶解度が小さい(溶けにくい)。鉛(Ⅱ)イオンが十分にあると、少しあるクロム酸イオンがすぐに P b C r O 4 の黄色い沈殿になって、液から出ていく。
クロム酸イオンが減ると、ルシャトリエの原理でエの平衡がクロム酸イオンをつくる向きに動き、二クロム酸イオンがクロム酸イオンに変わる。それもまた沈殿する……をくり返し、最後にはクロムがほぼ全部 P b C r O 4 として沈む。赤橙色のもとが無くなるので、液はほぼ無色になる。「平衡」と「溶解度」の2語を入れてまとめる。
鉛(Ⅱ)イオンが足りないと、途中で沈殿が止まって色が残る。「十分量の鉛(Ⅱ)イオン」が無色になるための条件。
答え P b C r O 4 の溶解度がとても小さいので C r O 4 2 − が沈殿して減り、平衡が C r O 4 2 − を生じる向きに移動し続け、クロムがほぼ全部 P b C r O 4 として沈殿したから
カ 二クロム酸イオンが酸化剤としてはたらくとき、硫酸酸性で C r 3 + になる:
C r 2 O 7 2 − + 14 H + + 6 e − ⟶ 2 C r 3 + + 7 H 2 O
Cr の酸化数が + 6 から + 3 へ、2 個で 6 だけ下がるので電子 6 個を受けとる。
B 2 + は電子を 2 個出して B 4 + になる。電子の数をそろえるには B 2 + が 3 個要る。2 つの式を、電子が消えるように足しあわせる。
答え C r 2 O 7 2 − + 14 H + + 3 B 2 + ⟶ 2 C r 3 + + 3 B 4 + + 7 H 2 O
キ ヨウ素還元滴定の流れ:①過マンガン酸イオンが I − を酸化して I 2 をつくる。②その I 2 をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、I 2 が無くなるとデンプンの青が消える。
電子の数で追う。チオ硫酸イオン S 2 O 3 2 − は、1 個あたり電子 1 個を出す(2 S 2 O 3 2 − → S 4 O 6 2 − + 2 e − )。滴下した量は
2.00 × 3.40 × 10 − 3 = 6.80 × 10 − 3 m o l
で、これが I 2 を通して、もとの過マンガン酸イオンが受けとった電子の数と同じ。
過マンガン酸イオン M n O 4 − は酸性で M n 2 + になり、Mn の酸化数が + 7 から + 2 へ、電子を 5 個受けとる。だから
n M n O 4 − = 6.80 × 10 − 3 5 = 1.36 × 10 − 3 m o l
これが 3.00 mL にあったので、濃度は 1.36 × 10 − 3 3.00 × 10 − 3 mol/L。途中の I 2 の量を出さなくても、電子の数だけで一気に計算できる。
ク ここからⅡ。単位格子(結晶のくり返しの最小単位)の原子の数は、角の原子は 1 8 、面の原子は 1 2 、中の原子は 1 個と数える。
体心立方格子は 8 × 1 8 + 1 = 2 個、面心立方格子は 8 × 1 8 + 6 × 1 2 = 4 個。六方最密構造は、ふつう使う単位格子(ひし形の柱)で 2 個。4 個になるのは面心立方格子。
b:金が銀より「酸化されにくい」=陽イオンになりにくい。これを表す語はイオン化傾向。電気陰性度は結合の中で電子を引きつける強さ、電子親和力は原子が電子を受けとるときのエネルギーで、陽イオンへのなりやすさではない。
ケ 金は I 3 − に酸化されて、A u + か A u 3 + になり、まわりの I − とくっついて錯イオンになる。
C:直線形の A u + の錯イオンは、A u + の両側に I − が 1 個ずつ付いた [ A u I 2 ] − 。金 1 個が電子 1 個を出し、I 3 − 1 個が電子 2 個を受けとる(式(2))ので、金 2 個に I 3 − 1 個。I の数をそろえるのに I − を1個足す。
D:平面正方形の A u 3 + の錯イオンは、4 方向に I − が付いた [ A u I 4 ] − 。金 1 個が電子 3 個を出すので、金 2 個(電子 6 個)に I 3 − 3 個。I の数は左 9 個、右は錯イオン 2 個で 8 個なので、1 個が I − として余る。
答え C : 2 A u + I 3 − + I − ⟶ 2 [ A u I 2 ] − D : 2 A u + 3 I 3 − ⟶ 2 [ A u I 4 ] − + I −
コ ①A g + と [ A g ( N H 3 ) 2 ] + の線が交わる所(どちらも 40%)。ここでは [ A g + ] = [ [ A g ( N H 3 ) 2 ] + ] なので、式(5) の K = [ [ A g ( N H 3 ) 2 ] + ] [ A g + ] [ N H 3 ] 2 から
[ N H 3 ] 2 = 1 K ⟹ [ N H 3 ] = 1 1.11 × 10 7 ≈ 3.0 × 10 − 4 m o l / L
②そのときの [ A g ( N H 3 ) ] + は 20%。式(3) から
K 1 = [ [ A g ( N H 3 ) ] + ] [ A g + ] [ N H 3 ] = 20 40 × 3.0 × 10 − 4 ≈ 1.7 × 10 3
式(5) は式(3) と式(4) を足したものなので K = K 1 K 2 。K 2 = K K 1 = 1.11 × 10 7 1.67 × 10 3 ≈ 6.7 × 10 3 。
K 1 と K 2 の積はいつも同じなので、交わる所の位置は K だけで決まる。2 つを見分けるのは、まん中の山([ A g ( N H 3 ) ] + )の高さ。K 1 が小さいほど山は低い。
答え K 1 (い) 1.7 × 10 3 , K 2 (え) 6.7 × 10 3
サ 王水は濃塩酸を含むので、銀は溶けても塩化物イオンと結びついて、水に溶けにくい塩化銀 AgCl として沈殿する、と予想できる。これを数で確かめる。
合金の金と銀は 93.0 + 7.00 = 100.0 mg で、全部回収できたので、沈殿 E の銀は 7.00 mg で全部。銀の物質量は
7.00 × 10 − 3 107.9 ≈ 6.49 × 10 − 5 m o l
E が銀 1 個につき 1 つの単位からできているとすると、E の式量は
9.30 × 10 − 3 6.49 × 10 − 5 ≈ 143.4
143.4 − 107.9 = 35.5 で、ちょうど Cl 1 個分。硝酸銀(169.9)などとは合わない。
答え A g C l ( 9.30 m g 7.00 / 107.9 m m o l = 143.4 g / m o l = 107.9 + 35.5 )
シ 電気分解でも亜硫酸ナトリウムでも、A u 3 + を金にするのに要る電子の数は同じ。だから「亜硫酸ナトリウムが出した電子の数」がそのまま、電気分解で流すべき電子の数になる。
式(6) より、S O 3 2 − 1 個は電子 2 個を出す:
n e − = 2 × 3.00 × 10 − 4 = 6.00 × 10 − 4 m o l
電気量は 6.00 × 10 − 4 × 9.65 × 10 4 ≈ 57.9 C。電気量 = 電流 × 時間 なので、1.00 A で流す時間は 57.9 1.00 秒。
A u 3 + の量(2.00 × 10 − 4 mol)を出さなくても、電子の数だけで答えが出る。何で還元しても、要る電子の数は変わらない。
第3問 溶けた気体を追い出す・pH を保つ 出題の意図(東大) 化学における基本的な項目(気体、液体(溶液)、およびそれに関連する物理化学)に関する理解力と、それらを数式や化学反応式などを用いて論理的に考察・説明する力を問うことを意図しています。
東大の解答例(選ぶ問題だけ) Ⅰ ウ:(A) (2) (B) (3) Ⅰ エ:(2) 下の答えと全部一致
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは、水に溶けた二酸化炭素 C O 2 を追い出す(脱気)3つのやり方を比べる問題。使う道具は2つだけ。
ヘンリーの法則 :水に溶ける C O 2 の量は、上の気体の中の C O 2 の圧力(分圧)に比例する。この問題では「水 1 L・1 Pa あたり k H mol」。
理想気体の式 P V = n R T :気体の部屋にある C O 2 の量と圧力をつなぐ。
「水に残る量+気体に出た量=はじめの 6.00 mol」という勘定と、この2つを組み合わせて方程式を立てる。問題文の「1.00×10⁵ Pa・280 K で 3.00 mol が 69.8 L」を使うと、R を使わずに比で計算できる。
Ⅱ(p46 から)はリン酸 H 3 P O 4 を水酸化ナトリウムで滴定したときの pH と緩衝液(酸や塩基を少し加えても pH が変わりにくい液)。リン酸は H + を3段階で出す酸で、表3—1 の3つの電離定数を使い分ける。
ア 理想気体は、「分子どうしが引きあわない」「分子そのものの大きさ(体積)が無い」と考えた気体。実在の気体がこれに近くなる条件を考える。
温度が高いと、分子が激しく動き回るので、分子どうしの引きあう力(分子間力)はほとんど効かなくなる。圧力が低いと、同じ体積の中の分子の数が少なく、分子が占める体積は容器の体積に比べてごくわずかになり、無視できる。
答え a 高 , b 低 , c 分子間力(分子どうしが引き合う力) , d 分子自身の体積
イ 気体の部屋に出た C O 2 を x mol とする。
気体の圧力:69.8 L・280 K で 3.00 mol のとき 1.00 × 10 5 Pa なので、x mol なら
P = x 3.00 × 1.00 × 10 5 P a
水に溶けている量(ヘンリーの法則):水 100 L で
0.0600 × 10 − 5 × P × 100 = 0.0600 × 10 − 5 × x 3.00 × 10 5 × 100 = 2 x
6.00 − x = 2 x
部屋をつくっても、出た C O 2 で圧力が上がり、また溶けようとするので、全部は出ていかない。部屋を 10 倍の広さにしても、出るのは 5.0 mol まで。
ウ アルゴンを n mol 加え、全圧を 1.00 × 10 5 Pa にする。出た C O 2 を x mol とすると、気体の中の C O 2 の分圧は、全圧に物質量の割合をかけて
P C O 2 = x x + n × 1.00 × 10 5
水に溶けている量は 0.0600 × 10 − 5 × P C O 2 × 100 = 6 x x + n 。勘定の式は
6.00 − x = 6 x x + n ⟹ x 2 + n x − 6 n = 0
(A) n = 1.00 なら x 2 + x − 6 = 0 、(B) n = 3.00 なら x 2 + 3 x − 18 = 0 。どちらも因数分解でき、正の答えを選ぶ。
アルゴンは水に溶けないので、全圧を変えずに C O 2 の分圧だけを下げる役をする。入れるアルゴンが多いほど、C O 2 はよく出る。
エ 今度は体積 69.8 L のまま温度 T を上げ、圧力が 1.25 × 10 5 Pa になった所を探す。温度によって k H が変わるので、「その T での k H 」がいくつなら勘定が合うかを考える。
気体の部屋の C O 2 :280 K・1.00 × 10 5 Pa で 3.00 mol なので、T ・1.25 × 10 5 Pa では
n g a s = 3.00 × 1.25 × 280 T = 1050 T
水に溶けている量:k H を図の目盛り(× 10 − 5 )の数で書くと、k H × 1.25 × 10 5 × 10 − 5 × 100 = 125 k H 。勘定 125 k H + 1050 T = 6.00 から
k H = 0.048 − 8.4 × 1 T
これは横軸を 1 T にとると直線 になる。だから図3—2(下)が付いている。この直線を図3—2(下)に引き、曲線と交わる所を読む。たとえば 1 T = 3.2 × 10 − 3 では直線 0.021・曲線はそれより大きく、1 T = 3.0 × 10 − 3 では直線 0.023・曲線はそれより小さい。交わる所は約 319 K。
答え ( 2 ) ( k H = 0.048 − 8.4 × 1 T の直線と図3—2(下)の交点が約 319 K )
オ 中性付近(pH 7 前後)では、液に H 2 P O 4 − と H P O 4 2 − が両方たくさんある。
酸(H + )を加えると、H P O 4 2 − が受けとめる:H P O 4 2 − + H + → H 2 P O 4 − 。塩基(O H − )を加えると、H 2 P O 4 − が受けとめる:H 2 P O 4 − + O H − → H P O 4 2 − + H 2 O 。
加えた H + や O H − が液の中でほとんど自由にならないので、pH がほとんど変わらない。2つのイオンの比が少し変わるだけですむ。
答え H P O 4 2 − + H + ⟶ H 2 P O 4 − , H 2 P O 4 − + O H − ⟶ H P O 4 2 − + H 2 O :両方が多量にあり、加えた酸も塩基も受け止めるから
カ 第二中和点は、リン酸 1.00 × 10 − 4 mol に NaOH をその 2 倍(20.0 mL)加えた所で、液は N a 2 H P O 4 の液。体積は 10.0 + 20.0 = 30.0 mL なので
c = [ H P O 4 2 − ] = 1.00 × 10 − 4 30.0 × 10 − 3 = 1 300 m o l / L
H P O 4 2 − は水から H + をもらって H 2 P O 4 − にもどる(加水分解)ので、液は塩基性になる:H P O 4 2 − + H 2 O ⇌ H 2 P O 4 − + O H − 。この平衡定数は K w K a 2 。できる H 2 P O 4 − と O H − は同じ量で、H P O 4 2 − はほとんど減らないので
[ O H − ] 2 = K w K a 2 × c = 1.00 × 10 − 14 6.30 × 10 − 8 × 1 300
常用対数をとると log 10 [ O H − ] 2 = − 14 + 7.20 − ( 2 + 0.477 ) = − 9.277 なので p O H ≈ 4.64 、p H = 14 − 4.64 。
キ 緩衝液は、弱い酸 HA とその塩(A − )が両方たくさんあると働く。K a = [ H + ] [ A − ] [ H A ] から
[ H + ] = K a × [ H A ] [ A − ]
HA と A − が同じ量のとき [ H + ] = K a 、つまり p H = − log 10 K a で、このとき酸を加えても塩基を加えても受けとめる相手が一番たくさんあるので、緩衝作用が一番強い。
リン酸の第一中和点(pH 5 付近)は、H 3 P O 4 も H P O 4 2 − もほとんど無く、H 2 P O 4 − だけの所なので緩衝作用がない(K a 1 は 10 − 2.15 、K a 2 は 10 − 7.20 で、どちらも 5 から遠い)。pH 5.0 で緩衝液をつくるには、− log 10 K a が 5 くらいの弱い酸を、その塩と同じくらいまぜればよい。
答え K a ≈ 1 × 10 − 5 m o l / L ( p K a ≈ 5.0 )の酸:酸とその塩が同じ量のとき pH = p K a で、緩衝作用が一番強いから
ク [ H P O 4 2 − ] [ H 2 P O 4 − ] = K a 2 [ H + ] = 6.30 × 10 − 8 1.00 × 10 − 7 = 0.63
(H 3 P O 4 と P O 4 3 − は pH 7 ではほとんど無い。)
NaOH のはじめの 10.0 mL で、リン酸はすべて H 2 P O 4 − になる(第一中和点)。そこから加えた NaOH の分だけ H 2 P O 4 − が H P O 4 2 − に変わる。H P O 4 2 − の割合は 0.63 1 + 0.63 なので、追加の量は 10.0 × 0.63 1.63 ≈ 3.9 mL。合わせて
10.0 + 3.9 ≈ 13.9 m L
答え 14 m L ( 10 + 10 × 0.63 1.63 = 13.9 )
ケ pH 6.7 のリン酸緩衝液では、H 2 P O 4 − ⇌ H P O 4 2 − + H + の平衡が pH を決めている。問題文によると、この右向き(電離)は吸熱反応。
冷やすと、ルシャトリエの原理で平衡は熱を出す向き、つまり左へ動く。K a 2 が小さくなり、H + が H P O 4 2 − と結びついて減る。[ H + ] が小さくなるので、pH は大きくなる。
だから緩衝液は、使う温度でつくって pH を合わせる必要がある(問題文の「使用する温度を考慮した緩衝液の調製」)。
答え 大きくなる。冷やすと吸熱の電離平衡が左へ移り、 K a 2 が小さくなって [ H + ] が減るから