東大 過去問 2023年 化学|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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東京大学 第2次学力試験(前期)2023年 理科「化学」(東京大学公式サイト)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

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お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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化 学

第1問

 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。構造式は例にならって示し,鏡像異性体は区別しなくてよい。

p28a
p28b

Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。

 黒田チカ博士は日本の女性化学者のさきがけであり,天然色素の研究で顕著な業績を残した。以下では,黒田が化学構造を解明した色素成分に類似の芳香族化合物Aの構造を考える。Aは分子量272で,炭素,水素,酸素の各元素のみからなる。次の実験1~8を行い,Aの構造を決定した。

実験1:136 mg のAを完全燃焼させると,352 mg の二酸化炭素と 72.0 mg の水が生じた。

実験2:Aを亜鉛末蒸留(解説1)すると,ナフタレンが生成した。

解説1:試料を粉末状の金属亜鉛と混合して加熱・蒸留すると,主要炭素骨格に対応する芳香族炭化水素が得られる。例えば,下式に示すように,モルヒネを亜鉛末蒸留するとフェナントレンが生成する。

p28c

実験3:酸化バナジウム(Ⅴ)を触媒に用いてナフタレンを酸化すると,分子式 C8H4O3 の化合物Bと分子式 C10H6O2 の化合物Cが生成した。Cは平面分子でベンゼン環を有し,同じ化学的環境にあるために区別できない5種類の炭素原子をもつ(解説2)。なお,Aは部分構造としてCを含む。すなわち,Cの一部の水素原子を何らかの置換基にかえたものがAである。

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解説2:解説1に示したフェナントレン(分子式 C14H10)を例に考えると,分子の対称性から,同じ化学的環境にあり区別できない炭素原子が7種類ある。

実験4:Aに塩化鉄(Ⅲ)水溶液を作用させると呈色した。

実験5:Aに過剰量の無水酢酸を作用させると,アセチル基が2つ導入されたエステルDが得られた。

実験6:Dにオゾンを作用させたのちに適切な酸化的処理を行い(図1—1(a)),続いて実験5で生成したエステル結合を加水分解すると,化合物E,化合物F,コハク酸 HOOC−CH2−CH2−COOH,二酸化炭素および酢酸が生じた。この酢酸は,アセチル基に由来するものである。また,反応途中で生成する1,2-ジカルボニル化合物は,酸化的分解を受けてカルボン酸となった(図1—1(b))。一連の反応でベンゼン環は反応しなかった。

図1—1 実験6の反応の概要:(a)炭素間二重結合のオゾン分解(\mathrmR^1\sim3:炭化水素基など),(b)1,2-ジカルボニル化合物の酸化的分解(R^4,R^5:ヒドロキシ基や炭化水素基など)
図1—1 実験6の反応の概要:(a)炭素間二重結合のオゾン分解(R1~3:炭化水素基など),(b)1,2-ジカルボニル化合物の酸化的分解(R4,R5:ヒドロキシ基や炭化水素基など)

実験7:Eにヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を作用させると,黄色固体Gと酢酸ナトリウムが得られた。

実験8:Fは分子式が C8H6O6 であり,部分構造としてサリチル酸を含み,同じ化学的環境にあるために区別できない4種類の炭素原子をもつ。また,Fを加熱すると分子内脱水反応が起こり,化合物Hが得られた。

〔問〕

ア 実験1より,化合物Aの分子式を示せ。

イ 実験3より,化合物BおよびCの構造式をそれぞれ示せ。

ウ 化合物Eの構造式を示せ。

エ 化合物Hの構造式を示せ。

オ 化合物Aの構造式を示せ。

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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~サに答えよ。

 三員環から七員環のシクロアルカンのひずみエネルギーを図1—2(a)に示す。メタン分子の H−C−H がなす角は約 109∘ である(図1—2(b))。シクロプロパンの C−C−C がなす角は 109∘ より著しく小さく(図1—2(c)),ひずみエネルギーが大きい。そのため,①シクロプロパンは臭素と容易に反応し,化合物Iを生じる。

図1—2 (a)シクロアルカンの環構成炭素数と分子あたりのひずみエネルギー,(b)メタンの立体構造,(c)~(e)正多角形の内角と正四面体構造の炭素がなす理想的な角度とのずれ
図1—2 (a)シクロアルカンの環構成炭素数と分子あたりのひずみエネルギー,(b)メタンの立体構造,(c)~(e)正多角形の内角と正四面体構造の炭素がなす理想的な角度とのずれ

 シクロアルカンが平面構造であると仮定すると,内角が 109∘ からずれることにより,シクロヘキサンよりもシクロペンタンの方がひずみエネルギーが小さく,安定であると予想される(図1—2(d),(e))。しかし,実際にはシクロヘキサンが最も安定である。これは分子構造を三次元的に捉えることで説明できる。

 分子の立体構造を考える上で,図1—3に示す投影図が有用である。ブタンを例にすると,Cα と Cβ の結合軸に沿って見たとき,投影した炭素と水素がなす角はおよそ 120∘ である。②Cα,Cβ 間の単結合が回転することで異性体の一種である配座異性体を生じる。ブタンのメチル基どうしがなす角 θ が 180∘ のときをアンチ形という。Cα と Cβ の結合をアンチ形から 60∘ 回転すると置換基が重なった不安定な重なり形の配座異性体となる。さらに 60∘ 回転した配座異性体をゴーシュ形という。ゴーシュ形はメチル基どうしの反発により,アンチ形より約 4 kJ/mol 不安定である。

f1-3
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 シクロヘキサンのいす形の配座異性体J(図1—4)の各 C−C 結合の投影図を考えると,すべてにおいて CH2 どうしが a となる。また,C−C−C がなす角が 109∘ に近づくため,ひずみエネルギーをもたない。Jには環の上下に出た水素(Hb,Hy)と環の外側を向いた水素(Ha,Hx)がある。不安定なKを経て配座異性体Lへと異性化することで,水素の向きが入れ替わる。

図1—4 シクロヘキサンの環反転(いくつかの中間体は省略。一部の CH_2 は略記。)と投影図(C^\alpha は●で,C^\beta は○で示す。シクロヘキサンの残りの部分は ⌒ で略記。)
図1—4 シクロヘキサンの環反転(いくつかの中間体は省略。一部の CH2 は略記。)と投影図(Cα は●で,Cβ は○で示す。シクロヘキサンの残りの部分は ⌒ で略記。)

 ③1,2-ジメチルシクロヘキサンには立体異性体MとNがある。立体異性体Mにはいす形の配座異性体としてエネルギー的に等価なもののみが存在する。④立体異性体Nにはエネルギーの異なる2つのいす形の配座異性体がある。

〔問〕

カ 下線部①について,化合物Iの構造式を示せ。

キ 下線部②について,ブタンの配座異性体のエネルギーと角 θ との関係の模式図として相応しいものを図1—5の(1)~(4)の中から1つ選べ。なお,メチル基どうしの反発に比べ水素と水素,水素とメチル基の反発は小さい。

図1—5 ブタンのメチル基どうしがなす角 \theta とエネルギーの関係
図1—5 ブタンのメチル基どうしがなす角 θ とエネルギーの関係
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ク 空欄 a に入る語句として適切なものを以下から選べ。

  アンチ形

  重なり形

  ゴーシュ形

ケ 下線部③に関して,最も安定ないす形の配座異性体の投影図を立体異性体M,Nについてそれぞれ示せ。投影図はメチル基が結合した2つの炭素の結合軸に沿って見たものをJの投影図(図1—4)にならって図示すること。なお,CH2 とメチル基がゴーシュ形を取るときの反発は,メチル基どうしのそれと同じとみなしてよい。

コ 最も安定ないす形の配座異性体において,立体異性体M,Nのどちらが安定か選び,理由とともに答えよ。

サ 下線部④に関して,Nの最も安定ないす形の配座異性体において,2つのメチル基が占める位置を図1—6の構造式中の空欄 b ~ e から選べ。

図1—6 1,2-ジメチルシクロヘキサンの構造式
図1—6 1,2-ジメチルシクロヘキサンの構造式
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第2問

 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。

Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。

 フッ化水素 HF は,①他のハロゲン化水素とは異なる性質をもつ。また,フッ素樹脂の原料として用いられるほか,②ガラスの表面加工や半導体の製造過程における酸化被膜の処理においても重要な役割を果たす。

 気体では HF 2分子が会合し,1分子のようにふるまう二量体を形成する。かつては低濃度のフッ化水素酸(HF の水溶液)中においても,気体中と同様に二量体を形成し得ると考えられていた。しかし,③凝固点降下の実験で,低濃度のフッ化水素酸中における二量体の形成を裏付ける結果は得られていない。現在ではフッ化水素酸中において,主に以下の二つの平衡が成り立つと考えられている。

HF⇌H++F−K1=[H+][F−][HF]=7.00×10−4 mol·L−1(式1) HF+F−⇌HF2−K2=[HF2−][HF][F−]=5.00 mol−1·L(式2)

 ④これらの平衡にもとづき,[H+] と [HF] の関係を考えることができる。ここで K1,K2 は平衡定数であり,[H+],[F−],[HF],[HF2−] はそれぞれ H+,F−,HF,HF2− のモル濃度を表す。また,以下の問では水の電離は考えないものとする。

〔問〕

ア 下線部①について,HF,塩化水素 HCl,臭化水素 HBr,ヨウ化水素 HI を沸点の高いものから順に並べよ。また,沸点の順がそのようになる理由を,以下の語句を用いて簡潔に答えよ。

〔語句〕 水素結合,ファンデルワールス力,分子量

イ 下線部②について,二酸化ケイ素 SiO2 とフッ化水素酸の反応では,2価の酸であるAが生成する。SiO2 と気体のフッ化水素の反応では,正四面体形の分子Bが生成する。AとBの分子式をそれぞれ答えよ。

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ウ 下線部③について,フッ化水素酸中の二量体の形成が凝固点降下に与える影響を考える。ある濃度のフッ化水素酸中において,二量体を形成すると仮定したときに,凝固点降下の大きさは二量体を形成しないときと比べてどうなると考えられるか,理由とともに簡潔に答えよ。ただし,ここではフッ化水素酸中の HF の電離は考えないものとする。

エ 下線部④について,十分に低濃度のフッ化水素酸は弱酸としてふるまうため,式1の平衡を考えるだけでよい。式1のみを考え,pH が 3.00 のフッ化水素酸における HF の濃度 [HF] を有効数字2桁で求めよ。答えに至る過程も記せ。

オ 下線部④について,(a) 式1の平衡のみを考える場合および(b) 式1と式2の両方の平衡を考える場合における [HF] と [H+] の関係として最も適切なものを,図2—1のグラフの(1)~(5)からそれぞれ選べ。ただし二量体の形成は考えないものとする。

図2—1 フッ化水素酸における [HF] と [H^+] の関係
図2—1 フッ化水素酸における [HF] と [H+] の関係
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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~コに答えよ。

 金属アルミニウム Al および金属チタン Ti は,地殻に豊富に存在する元素からなる軽金属で,様々な分野で用いられている。

 金属 Al の主な工業的製造プロセスでは,原料として酸化アルミニウム Al2O3 を主成分とするボーキサイトが用いられる。⑤ボーキサイトに水酸化ナトリウム NaOH 水溶液を加えて高温・高圧とし,不溶物を除去する。不溶物を除去した溶液を冷却し,⑥pH を調整して水酸化アルミニウム Al(OH)3 を沈殿させ,これを 1300 ∘C 程度で熱処理することで高純度の Al2O3 を得る。最後に,Al2O3 の溶融塩(融解塩)電解により金属 Al を得る。

 金属 Ti の主な工業的製造プロセスでは,原料として酸化チタン TiO2 を主成分とする鉱石などが用いられる。ここでは,TiO2 を原料として考える。⑦TiO2 とコークスを 1000 ∘C 程度に加熱し,ここに塩素ガス Cl2 を吹き込むことで,塩化チタン TiCl4 を得る。蒸留精製した⑧TiCl4 を金属マグネシウム Mg を用いて還元することで,金属 Ti を得る。この過程で生成した⑨塩化マグネシウム MgCl2 は,溶融塩電解により,金属 Mg と Cl2 としたのち,再利用される。

 金属 Al と金属 Ti の性質の違いとして,⑩展性・延性の違いが挙げられる。金属 Al は展性・延性が高く加工性に優れる。金属 Ti は展性・延性が低く変形しにくいため,強度が要求される用途に用いられる。

〔問〕

カ 下線部⑤に関して,ボーキサイトに含まれる化合物として,Al2O3,酸化鉄 Fe2O3,二酸化ケイ素 SiO2 を考える。これらの中で,加熱下で NaOH 水溶液と反応し,溶解する化合物をすべて挙げ,各化合物と NaOH 水溶液の化学反応式を書け。

キ 下線部⑥に関して,3価の Al イオンは,溶液中では水分子 H2O あるいは水酸化物イオン OH− が配位した錯イオン [Al(H2O)m(OH)n](3−n)+(m,n は整数,m+n=6)および沈殿 Al(OH)3(固)として存在し,それらが平衡状態にあるとする。平衡状態における錯イオンの濃度の pH 依存性が図2—2のように表されるとき,錯イオンの濃度の合計が最も低くなり,Al(OH)3(固)が最も多く得られる pH を整数で答えよ。

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図2—2 pH と錯イオンの濃度の関係
図2—2 pH と錯イオンの濃度の関係

ク 下線部⑦,⑧,⑨に関して,それぞれの化学反応式を書け。また,全体としての化学反応式を書け。下線部⑦の反応では,コークスは C のみからなるものとし,CO2 まで完全に酸化されるものとする。下線部⑨の反応に関しては,溶融塩電解全体としての化学反応式を書け。

ケ 下線部⑨に関して,2価の Mg イオンの還元には,MgCl2 水溶液の電気分解ではなく,溶融塩電解が用いられる理由を簡潔に述べよ。

コ 下線部⑩に関して,結晶構造から考察する。金属原子が最も密に詰まった平面(ここでは最密充填面と呼ぶ)の数は結晶構造によって異なり,最密充填面の数が多い金属結晶ほど変形しやすい傾向がある(注)。金属 Ti の結晶構造は六方最密構造に分類されるが,理想的な六方最密構造からずれた構造をとる。ここでは,図2—3に示すような図中の矢印方向に格子が伸びた結晶構造を考える。このとき,最密充填面の数は1つとなる。一方,金属 Al は面心立方格子の結晶構造をとる(図2—4)。図2—5の(ⅰ)~(ⅲ)の中から,面心立方格子の最密充填面として最も適切なものを答えよ。また,面心立方格子における最密充填面の数を答えよ。互いに平行な面は等価であるとし,1つと数えること。

(注) 金属に力が加わるとき,金属原子層が最密充填面に沿ってすべるように移動しやすいことが知られている。

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図2—3 六方最密構造の模式図と最密充填面 球は金属原子を示す。矢印は理想的な六方最密構造からのずれの方向を示している。
図2—3 六方最密構造の模式図と最密充填面 球は金属原子を示す。矢印は理想的な六方最密構造からのずれの方向を示している。
図2—4 面心立方格子の模式図 球は金属原子を示す。
図2—4 面心立方格子の模式図 球は金属原子を示す。
図2—5 面心立方格子の最密充填面(網掛け部分)の候補
図2—5 面心立方格子の最密充填面(網掛け部分)の候補
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第3問

 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。

p40a

気体定数 R=8.31×103 Pa·L/(K·mol),アボガドロ定数 NA=6.02×1023 /mol,

円周率 π=3.14,標準状態:273 K,1.01×105 Pa

すべての気体は,理想気体としてふるまうものとする。

Ⅰ 次の先生と生徒の議論を読み,問ア~オに答えよ。

先生 アンモニア NH3 は,空気中の窒素 N2 と水素 H2 から合成されているのを知っているかい?

N2(気)+3H2(気)=2NH3(気)+92.0 kJ

 最近では,二酸化炭素を排出しないエネルギー源として注目されているよ。

生徒 授業で習いました。a の原理と呼ばれる①平衡移動の原理があって,この反応では b 圧にするほど,また,c 熱反応なので d 温にするほど,アンモニア生成の方向へ平衡が移動するのですよね。でも,反応速度を増加させるためには e 温にしなければなりません。

先生 そうだ。産業上極めて重要な化学反応だけれど,とても困難な反応なんだ。この反応を可能としているのが触媒だ。触媒は一般的に,図3—1のように,触媒反応を起こす金属と,それを支える担体とからなっているんだ。触媒を用いたアンモニア合成法は,触媒を開発した人の名前から,ハーバー・ボッシュ法とも呼ばれているんだ。ここでは,a の原理とともに,アンモニア合成法について考えてみよう。

図3—1 触媒の構造
図3—1 触媒の構造
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先生 ある触媒 1.00 g 上へ吸着した窒素の体積 V と圧力 p の関係を図3—2に示しているよ。真空状態から大気の圧力 p0 まで少しずつ窒素の圧力 p を大きくし,吸着した窒素量を標準状態における体積 V〔mL〕に換算して図に表しているんだ。窒素は触媒表面に可逆的に吸着する(図3—3左)。②触媒上に窒素分子が一層で吸着すると考えると,一分子が占有する面積が分かれば,吸着量から触媒の表面積を求めることができるね。この吸着した窒素は,圧力を下げることで完全に脱離するんだ。再度圧力を大きくして窒素を吸着させても,同じ量を吸着するんだ。

図3—2 触媒 1.00\ g への窒素の吸着体積と圧力の関係図
図3—2 触媒 1.00 g への窒素の吸着体積と圧力の関係図
図3—3 N_2(左)および H_2(右)の触媒表面への吸着(断面図)
図3—3 N2(左)および H2(右)の触媒表面への吸着(断面図)

先生 水素の方はどうなるか,知っているかい?

生徒 窒素が担体と金属のいずれにも分子のまま吸着するのに対して,水素分子は表面金属原子に対しては原子状に解離して強く吸着する(図3—3右)から,容易に脱離せず圧力に対して不可逆とみなせる吸着現象であると聞きました。

先生 そうだね。だから水素の吸着体積と圧力の関係図は,図 f で表される形になるんだ。この場合,水素を解離する金属上に,水素原子と表面金属原子が1対1で水素が吸着するから,金属だけの表面積を求めることができる。担体を含めた触媒全体の表面積が算出できる窒素とは対照的だね。

生徒 ③金属 1.00 mol に対して,水素原子が 0.100 mol しか吸着しないとすると,表面を構成している金属原子が 10 % しかないことを示すのですね。

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先生 そうだね。さて,吸着した窒素に対して触媒が果たすべき役割を考えてみよう。ハーバー・ボッシュ法に e 温が必要な理由が他に分かるかい?

生徒 触媒には g という能力が必要になり,そのために e 温が必要になります。

先生 その通り。a の原理だけではなく,触媒についても勉強になったね。

生徒 はい。私も大学で,アンモニア合成を簡単にする触媒研究に挑戦します!

〔問〕

ア 下線部①に関して,a ~ e にあてはまる語句を記せ。

イ 下線部②に関して,窒素一分子の占有面積を 0.160 nm2(1 nm=10−9 m)とし,触媒 1.00 g に対する標準状態の窒素の飽和吸着量を図3—2から読み取ると,触媒 1.00 g の表面積は何 m2 か,有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。

ウ 図 f に相当する図で最も適切なものを図3—4の(ⅰ)~(ⅲ)の中から一つ選べ。なお,吸着3回目以降の結果は2回目と同じであった。

図3—4 触媒 10.0\ g への水素の吸着体積と圧力の関係図 体積 V は,300\ K,1.01\times10^5\ Pa における換算体積である。
図3—4 触媒 10.0 g への水素の吸着体積と圧力の関係図 体積 V は,300 K,1.01×105 Pa における換算体積である。

エ 下線部③に関して,ある触媒 10.0 g 上に 300 K で水素を吸着させた。この触媒上の金属が 5.00×10−2 mol であったとして,ウで選んだ図から水素の吸着量を読み取ると,表面を構成している金属原子は何%になるか,有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。

オ g にあてはまる語句を10文字程度で答えよ。

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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~サに答えよ。

 コロイド溶液は,粒子の表面状態や大きさに依存したふるまいを示す。水酸化鉄(Ⅲ)粒子を 53.4 g/L の濃度で純水中に分散したコロイド溶液を用いて,以下の2つの実験を行った。なお,粒子は半径のそろった真球であり,実験の過程で溶解しないものとする。また,コロイド溶液の密度は粒子の濃度によらず一定で,純水の密度 1.00 g/cm3 と同じとしてよい。

実験1:粒子表面の電荷は,粒子表面のヒドロキシ基と溶液中のイオンとの可逆反応(図3—5)により,pH に応じて変化する。コロイド溶液の pH を 3.0 に調整した。このコロイド溶液を電気泳動した結果,粒子は h 極側へ移動した。また,pH=3.0 のコロイド溶液に水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加していったところ,④ある時点で沈殿を生じた。なお,粒子表面の電荷が全体として 0 となる pH(等電点)は,7.0 だった。

実験2:半透膜で仕切られたU字管の左側にコロイド溶液,右側に純水をそれぞれ 10.0 mL ずつ入れた。液面の高さの変化がなくなるまで待った結果,⑤左右の液面の高さの差 Δh〔cm〕は 1.36 cm となった(図3—6)。粒子の半径によらず,粒子の組成は Fe(OH)3,⑥粒子の単位体積当たりに含まれる鉄(Ⅲ)イオンの数は 4.00×104 mol/m3 であるものとする。これらから,粒子の半径 r1〔m〕は i m と算出される。なお,この実験では溶液中のイオンの影響は考えなくてよいものとし,コロイド溶液および純水の温度を 300 K,U字管の断面積を 1.00 cm2,大気圧 1.01×105 Pa に相当する水銀柱の高さを 76.0 cm,水銀の密度を 13.6 g/cm3 とする。

図3—5 粒子表面のヒドロキシ基とコロイド溶液中の水素イオン,水酸化物イオンの可逆反応
図3—5 粒子表面のヒドロキシ基とコロイド溶液中の水素イオン,水酸化物イオンの可逆反応
図3—6 実験2の模式図
図3—6 実験2の模式図
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〔問〕

カ h にあてはまる語句を答えよ。また,その理由を図3—5の反応にもとづいて述べよ。

キ 下線部④に関して,その理由を図3—5の反応にもとづいて述べよ。

ク 下線部⑤に関して,この結果から推定される,液面の高さの変化がなくなった後のU字管左側のコロイド溶液中の粒子のモル濃度は何 mol/L か,有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。なお,コロイド溶液は希薄溶液であり,粒子 6.02×1023 個を1モルとする。

ケ 下線部⑥に関して,粒子の半径を 1.00×10−8 m と仮定した場合の,粒子1モルあたりの質量は何 g か,有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。

コ i にあてはまる値は 1.00×10−8 よりも大きいか小さいか,理由とともに答えよ。

サ 実験2と同様の実験を,粒子の質量濃度が同じく 53.4 g/L,半径 r が r1 よりも大きい水酸化鉄(Ⅲ)コロイド溶液を用いて行ったとする。得られる Δh と r の関係として最も適切なものを図3—7の(1)~(5)の中から一つ選べ。また,その理由を簡潔に述べよ。

図3—7 r と \Delta h の関係
図3—7 r と Δh の関係