— 24 —
化 学
第1問
次の文章を読み,問ア~コに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。構造式は例にならって示せ。
二分子の -アミノ酸の脱水縮合反応で得られるジペプチドにおいて,末端アミノ基と末端カルボキシ基の間でさらに分子内脱水縮合反応が進行すると,ジケトピペラジンとよばれる環状のペプチドが得られる。ジケトピペラジン類は多くの食品に含まれ,その味に影響することが知られている。また,いくつかのジケトピペラジン類は医薬品の候補としても注目されている。
ジケトピペラジン類A,B,C,Dに関して,次の実験を行った。A,B,C,Dの構成要素となっている -アミノ酸はすべて 体である。側鎖(,)の構造は,次の①~⑧の候補から選ぶこととする。
— 25 —
実験1:A,B,C,Dそれぞれに含まれるアミド結合を塩酸中で完全に加水分解したところ,A,C,Dからは二種類の -アミノ酸が得られたが,Bからは一種類の -アミノ酸のみが得られた。
実験2:A,B,C,Dそれぞれを十分な量のナトリウムとともに加熱融解し,A,B,C,Dを分解した。エタノールを加えて残存したナトリウムを反応させた後に,水で希釈した。これらの溶液に酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加えると黒色沈殿が生じたのは,AとCの場合のみであった。
実験3:A,B,C,Dそれぞれを濃硝酸に加えて加熱すると,A,Bのみが黄色に呈色した。
実験4:A,B,C,DのうちBのみが,塩化鉄(Ⅲ)水溶液を加えると紫色に呈色した。
実験5:Aを過酸化水素水に加えると,分子間で a 結合が形成され,二量体を与えた。この結合は b 剤と反応させることで切断され,もとのAが得られた。
実験6:実験1におけるBの加水分解後の生成物を十分な量の臭素と反応させたところ,二つの臭素原子を含む化合物Eが得られた。
実験7:Cを完全燃焼させると, の二酸化炭素と の水が生じた。
実験8:Dを無水酢酸と反応させたところ,化合物Fが得られた。
実験9:D,Fそれぞれの電気泳動を行った。Dは塩基性条件下で陽極側に大きく移動したが,中性条件下ではほぼ移動しなかった。一方で,Fは塩基性条件下でも中性条件下でも陽極側に大きく移動した。
— 26 —
〔問〕
ア 下線部(i)について,エタノールとナトリウムとの反応の化学反応式を示せ。
イ 下線部(ii)の現象から推定される側鎖構造の候補を,①~⑧の中からすべて答えよ。
ウ 下線部(iii)の現象から推定される側鎖構造の候補を,①~⑧の中からすべて答えよ。
エ a,b にあてはまる語句をそれぞれ記せ。
オ A,Bの立体異性体は,それぞれいくつ存在するか答えよ。なお,立体異性体の数にA,B自身は含めない。
カ Eの構造式を示せ。
キ Cに含まれる炭素原子と水素原子の数の比を整数比で求めよ。答えに至る過程も記せ。
ク Cの構造について,①~⑧の数字で , の組み合わせを答えよ。数字の順序は問わない。
ケ Dの構造について,①~⑧の数字で , の組み合わせを答えよ。数字の順序は問わない。また,実験9の電気泳動において,Dが中性条件下でほぼ移動しなかった理由を簡潔に説明せよ。
コ Fの構造式を示せ。
— 28 —
第2問
次の文章を読み,問ア~ケに答えよ。必要があれば表2—1および表2—2に示す値を用いよ。
金属酸化物は,金属元素の種類に応じてさまざまな性質を示し,工業的には耐熱材料や触媒として有用である。表2—1は,,,, の四つの元素からなる代表的な酸化物の特徴を示している。一般に金属酸化物を得るには,金属単体を酸化する方法や 金属元素を含む化合物を加熱する方法がある。
天然に産出する金属酸化物の中には,金属の単体を製造する際の原料として用いられるものがある。たとえば, 単体は,融解した氷晶石に 純粋な を少しずつ溶かし,融解塩電解することで得られる。この融解塩電解では,用いる電解槽の内側を炭素で覆い,これを陰極とし,炭素棒を陽極としている。
表2—1 ,,, の各元素の代表的な酸化物の性質
表2—2 各元素の性質
〔問〕
ア 下線部①の例として,消石灰 の水溶液に適量の を吹き込んで得られる白色沈殿を取り出し,これを強熱して生石灰 が生じる反応があげられる。 から白色沈殿が生成する反応と,白色沈殿から が生成する反応のそれぞれについて化学反応式を示せ。
イ ,, の結晶は,いずれも図2—1に模式的に示す 型の結晶構造をもつイオン結晶である。 の単位格子の一辺の長さ(図中の )が であるとき, の単位格子の一辺の長さを有効数字2桁で求めよ。ただし, のイオン半径はどの結晶中でも同じものとする。
— 29 —
図2—1 ,, の結晶構造の模式図
ウ 物質の融点は,その物質を構成する粒子間にはたらく化学結合と深く関係する。,, の結晶のうち最も融点の高いものを推定し,化学式とともに,その理由を記せ。
エ 表に基づき, の単体を酸化して を得るときの酸化物と単体の体積比(=酸化物の体積÷単体の体積)を,有効数字2桁で求めよ。
オ 下線部②における の単体は, を含む水溶液の電気分解では得ることができない。その理由を簡潔に説明せよ。
カ 下線部③における純粋な は,天然のボーキサイトを精製することで得られる。バイヤー法とよばれる精製法では,ボーキサイトを濃水酸化ナトリウム水溶液に加熱溶解させる。その際,水酸化ナトリウムはボーキサイトに含まれる と反応する。その反応の化学反応式を示せ。
キ 問カの反応で生成する水溶液の を調整すると,錯イオン が生成しうる。 で表わせる錯イオンのうち, のときのすべての幾何異性体の立体構造を描け。ただし, と の立体構造は考慮しなくてよい。
ク 下線部④において,陽極で と が発生した。それぞれが発生する際の陽極での反応を電子 を用いた反応式で示せ。
ケ 下線部④において,陽極の炭素が 消費され,陰極で が 生成した。また,陽極では と が発生した。このとき,発生した の質量は何 か,有効数字3桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。
— 32 —
第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
気体定数
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。
濃度 の塩酸 に,気体のアンモニアを圧力 のもとで毎分 の速度で溶かした。アンモニアの導入を開始した時刻を 分とし, 分にアンモニアの供給を止めた。 分から濃度 の水酸化ナトリウム水溶液を毎分 の速度で滴下し, 分に止めた。この水溶液に a の塩化アンモニウムを溶解させたところ,水素イオン濃度は となった。
気体のアンモニアは理想気体とし,アンモニアと塩化アンモニウムはすべて水溶液に溶けるものとする。また,アンモニアの溶解による溶液の体積変化は無視できるものとし,すべての時刻において温度は で一定であり,平衡が成立しているものとする。
アンモニアは水溶液中で以下のような電離平衡にある。
この平衡における塩基の電離定数 は,
で与えられる。
— 33 —
〔問〕
ア 分における水素イオン濃度を有効数字2桁で求めよ。答えに至る過程も記せ。
イ アンモニウムイオン は,水溶液中で次の電離平衡にある。
アンモニウムイオンの電離定数 を有効数字2桁で求めよ。
ただし,水のイオン積 は, とする。
ウ 分における水素イオン濃度を有効数字2桁で求めよ。答えに至る過程も記せ。
エ 分から 分における の変化の概形として最も適当なものを図3—1の(1)~(6)のうちから選べ。
図3—1 に対する の変化
オ a にあてはまる数値を有効数字2桁で求めよ。
— 34 —
Ⅱ 次の文章を読み,問カ~コに答えよ。
メタンは,化石資源である天然ガスの主成分として産出される。天然ガスを冷却して液体にしたものは液化天然ガスとよばれ,運搬が容易であり,広く燃料として利用されている。メタンは,化学工業における重要な原料でもある。 などの触媒を使って高温でメタンと水蒸気を反応させることにより,一酸化炭素と水素が製造されている。この反応をメタンの水蒸気改質反応とよぶ。さらに,一酸化炭素と水素を, と を成分とする触媒を使って反応させることにより,メタノールが工業的に合成されている。
〔問〕
カ 一定圧力のもとで理想気体の温度を下げていくと,その体積はシャルルの法則にしたがって直線的に減少し,絶対温度 で体積は になる。横軸を絶対温度,縦軸を体積とした理想気体のグラフを図3—2に破線で示した。一方,実在気体では,臨界点より低く三重点より高い一定圧力のもとで,温度を下げていくと,分子間力のために温度 で凝縮して液体になる。さらに温度を下げて温度 に達すると,凝固し固体になる。図3—2を解答用紙に描き写し,絶対温度に対する実在気体およびその液体と固体の体積の変化を示すグラフを,理想気体との違いがわかるように同じ図の中に実線で描け。
図3—2 物質の絶対温度と体積の関係
— 35 —
キ メタンの水蒸気改質反応を化学反応式で示せ。
ク 一酸化炭素と水素からメタノールを合成する反応は,以下の式1で表すことができる。
この反応を利用したメタノールの合成が,高圧下で行われる理由を説明せよ。
ケ の密閉容器に, の一酸化炭素, の水素および触媒を封入して,ある温度に保った。式1において,平衡に達したとき, の水素が残っていた。このとき,容器内に存在する一酸化炭素およびメタノールの物質量をそれぞれ求めよ。
コ 室温で,(気)の生成熱が ,(気)の生成熱が ,(気)の燃焼熱が ,(液)の燃焼熱が ,(液)の蒸発熱が であるとき,式1で の (気)を合成するときの反応熱を求めよ。反応熱を求めるために必要な熱化学方程式を示し,答えに至る過程も記せ。さらに,式1のメタノール生成反応は,発熱反応か吸熱反応かを答えよ。
第1問 輪になったペプチドの正体さがし — 36 通りから 1 つへ
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
2つのアミノ酸がペプチド結合でつながり、さらに両はしどうしもつながって輪になった分子(ジケトピペラジン)A〜D の正体をさがす問題。輪の部分はどれも同じで、ちがうのは2本の側鎖 ・ だけ。候補は ①〜⑧ の8種類なので、組み合わせは同じものどうしもふくめて 36 通り。
候補の側鎖は、図の構造から ①システイン()、②トレオニン、③アスパラギン酸()、④チロシン(ベンゼン環に )、⑤フェニルアラニン(ベンゼン環)、⑥メチオニン()、⑦バリン、⑧リシン()の側鎖。
実験はそれぞれ「ある性質をもつ側鎖があるか・ないか」を教えてくれる。実験1:アミノ酸が1種類か2種類か。実験2:硫黄 S があるか(① と ⑥)。実験3:濃硝酸で黄色=ベンゼン環があるか(キサントプロテイン反応、④ と ⑤)。実験4:塩化鉄(Ⅲ) で紫=フェノール性の があるか(④)。これで候補をふるい落とし、残りを燃焼や電気泳動で1つに決める。
ア
ナトリウムは、アルコールの の H と入れかわって、ナトリウムエトキシドと水素になる。水と反応するときと同じ形の反応だが、水よりおだやかに進むので、残ったナトリウムを安全に片づけるのに使う。
Na 1個で H 1個を追い出し、H は2個で になるので、エタノールとナトリウムは2つずつ。
答え
イ
ナトリウムといっしょに加熱して分子をこわすと、分子の中の硫黄は硫化ナトリウム になる。水にとかすと があるので、酢酸鉛(Ⅱ) の と出会って、黒い硫化鉛(Ⅱ) が沈む。
だから黒い沈殿は「側鎖に硫黄がある」しるし。候補のうち S をふくむのは、 をもつ ①(システイン)と、 をもつ ⑥(メチオニン)。
ウ
塩化鉄(Ⅲ) 水溶液で紫色になるのは、ベンゼン環に直接 がついたフェノール性の 。
候補でこれをもつのは、チロシンの側鎖 ④ だけ。⑤ もベンゼン環をもつが が無く、② の はアルコール性なので色は出ない。
エ
A の候補をしぼる。S がある(実験2)、ベンゼン環がある(実験3)、フェノールではない(実験4)ので、① か ⑥ と ⑤ の組で、①⑤ と ⑤⑥ の2つが残る。
実験5で、過酸化水素(酸化剤)によって分子どうしがつながり二量体になった。これは 2つが酸化されて の結合(ジスルフィド結合)をつくる反応。メチオニンの にはつなぐための H が無いので、これはシステイン ① を持つ ①⑤ のほうに決まる。
ジスルフィド結合は、還元剤で H をもらうと切れて、もとの にもどる。髪のパーマは、この切る・つなぐを使っている。
オ
輪の中で側鎖がついた炭素(もとの α 炭素)は2つあり、それぞれ L 体・D 体の2通りがありうる。組み合わせは LL・LD・DL・DD の4通り。
A(①⑤)は2つの側鎖がちがうので、4通りすべてが別の物質。A 自身(LL)をのぞくと残り。
B(④④)は同じチロシンが2つなので、LD と DL は輪を裏返せば同じ分子になる。立体異性体は LL・LD・DD の3通りで、B 自身(LL)をのぞくと残り。側鎖が同じだと、1つ少なくなる。
カ
B は、実験1で1種類のアミノ酸だけになり、実験4で紫になったので、チロシン ④ が2つ(④④)。加水分解するとチロシンができる。
チロシンのベンゼン環の は、フェノールと同じく、臭素をオルト位とパラ位に導く。パラ位は がついていてふさがっているので、 のとなり(オルト位)の2か所に Br が入る。Br 2つをふくむという E の説明とも合う。
答え(チロシンのベンゼン環の、OH のとなり2か所が Br。塩酸中の形として で書いてもよい)
キ
燃やすと、C は全部 に、H は全部 になる。
C の物質量は と同じで 。H は水1分子に2個なので 。
答え
ク
C は、アミノ酸が2種類(実験1)、S がある(実験2)、ベンゼン環は無い(実験3)。① か ⑥ に、ベンゼン環の無いほかの側鎖を組み合わせた候補が 9 つ残る。
それぞれの分子式を出して、C と H の比がキの になるものをさがす。輪の部分は で、そこに2本の側鎖の原子を足す。メチオニン ⑥()とバリン ⑦()なら、合わせて で、。
となりの候補の ②⑥( の比)とは、C÷H が 1.2% しかちがわない。水の量が3けたで与えられているのは、この2つを見分けるため。 mg から予想される水は、⑥⑦ なら mg、②⑥ なら mg。2けたにするとどちらも「24 mg」なので、2けたの量では2つを見分けられない(もし水がちょうど mg と3けたで出ていたら、答えは ②⑥ になる)。
ケ
D は、アミノ酸が2種類で、S もベンゼン環も無い。ここまでで候補は 6 通り。
電気泳動は、電気をおびた分子が電極に引かれて動く実験。中性でほとんど動かないのは、分子全体の電荷がほぼ 0 だから。輪になっているので、両はしのアミノ基・カルボキシ基は無く、電荷をもてるのは側鎖だけ。
中性では、側鎖の は H⁺ をはなして 、 は H⁺ を受けとって になっている。マイナスとプラスが1つずつあれば打ち消し合う。アスパラギン酸 ③ とリシン ⑧ の組がこれに当たる。
塩基性にすると、 が H⁺ を手放して になり、マイナスだけが残るので陽極へ大きく動く。これも実験9と合う。
答え③, ⑧ 理由:中性では側鎖の が 、 が になり、分子全体の電荷がほぼ 0 になるから(輪なので両はしのアミノ基・カルボキシ基は無い)
コ
無水酢酸は、アミノ基 にアセチル基 をつけて、アミド にする(アセチル化)。D でアミノ基をもつのは、リシン ⑧ の側鎖の先だけ。
アミドになった N は、もう H⁺ を受けとってプラスになれない。そのため F では、アスパラギン酸 ③ の のマイナスだけが残り、中性でも塩基性でも陽極へ大きく動く。実験9の F のふるまいと合う。
F は、D の輪に、アスパラギン酸の側鎖 と、先がアセチル化されたリシンの側鎖がついた形になる。
答えジケトピペラジンの輪の2つの CH に、 と がついたもの(リシンの側鎖の NH がアセチル化)
第2問 金属の酸化物 — 結晶の大きさ・さびの体積・アルミニウムの電気分解
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
Mg・Al・Ca・Ba の酸化物をめぐる問題。表2—1・2—2に、イオン半径・密度・モル質量などの数字がまとまっているので、必要な数字はそこから拾う。
前半は結晶の話。MgO・CaO・BaO は NaCl 型の結晶で、単位格子の一辺の上に「陽イオン・・陽イオン」がくっついてならぶ。だから一辺は (陽イオンと陰イオンの半径の和の2倍)。陽イオンが小さいほど結晶は小さく、イオンどうしが強く引き合う。
中ほどは、アルミニウムが酸化されたときの体積の変わり方(さびがすき間なく表面をおおうかどうか)と、アルミの錯イオンの形。
後半はアルミニウムの融解塩電解(とかした塩に電気を流す方法)。陰極では が電子3個をもらって Al になり、陽極では炭素の電極が と反応して CO や になって減っていく。電子の数と炭素の数の2本の式で、CO と の量が決まる。
ア
消石灰の水溶液(石灰水)に二酸化炭素を吹きこむと、白い炭酸カルシウム が沈む。 は水にとけると酸としてはたらき、塩基の と中和して、塩と水ができる、と考えるとよい。
を強く熱すると、 が抜けて生石灰 が残る(熱分解)。石灰石から生石灰をつくる、工業でも使われている反応。
を入れすぎると、 が炭酸水素カルシウムになってとけてしまう。問題文の「適量」はそのため。
答え,
イ
NaCl 型の結晶では、単位格子の一辺の上に、陽イオン・・陽イオンが一直線にならんで接している。だから
まず MgO から の半径を出す。表の の半径 0.086 nm を使って
「 の半径はどの結晶でも同じ」なので、CaO では の半径 0.114 nm と組み合わせて、同じ式で a を出す。
「半径の足し算」は近似なので、BaO では密度から出した一辺と 3% ほどずれる。
答え,
ウ
融点が高いほど、結晶をばらばらにするのに多くのエネルギーが要る。イオン結晶では、陽イオンと陰イオンの静電気の引力(イオン結合)が強いほど融点が高い。
3つとも と のイオンなので、電荷は同じ。ちがうのは陽イオンの大きさで、 の順に大きい。陽イオンが小さいほど、イオンの中心どうしが近づき、静電気の引力が強くなる。
中心の距離は MgO 0.210 nm・CaO 0.238 nm・BaO 0.273 nm で、MgO がいちばん近い。
答え理由:どれも +2 と −2 のイオンでできていて、Mg の半径が一番小さいので陽イオンと陰イオンの中心の距離が一番短く、静電気の引力(イオン結合)が一番強いから
エ
Al 2 mol が酸化されると、 が 1 mol できる()。この量で体積をくらべる。
比が 1 より大きいので、アルミの表面にできた酸化物は、もとの金属よりふくらんで、すき間なく表面をおおう。そのため内側まで酸素が入らず、さびが進まない。同じ計算を Mg・Ca・Ba ですると、どれも 1 より小さく(0.79・0.65・0.69)、酸化物にすき間ができて酸素が入りこむ。
答え
オ
Al はイオン化傾向がとても大きい(電子を手放しやすく、一度イオンになると電子を受けとりにくい)。
をふくむ水溶液を電気分解すると、陰極では電子を受けとりやすいものから先に還元される。水(の )のほうが よりずっと電子を受けとりやすいので、陰極では水素が出るだけで、Al は出てこない。
だから水を使わず、 を氷晶石にとかした、水の無い高温の液で電気分解する。
答えAl のイオン化傾向がとても大きく、水溶液では Al より水(H)の方が先に電子を受け取って還元され、陰極で水素が出てしまうから
カ
は両性酸化物(酸とも強塩基とも反応する)。濃い水酸化ナトリウム水溶液には、テトラヒドロキシドアルミン酸イオン という錯イオンになってとける。
Al が2個あるので が2つでき、電荷をつりあわせる も2つ。原子の数は、左は と NaOH 2つで Al 2・O 8・H 8・Na 2、右も同じになる。
ボーキサイトに混ざっている鉄の酸化物などは水酸化ナトリウムにとけないので、ここでアルミだけを取り出せる。
答え
キ
なので、Al のまわりに6つの分子・イオン( と )が正八面体の頂点の位置につく。 は が2つ、 が4つの 。
正八面体の6つの頂点から、 を置く2か所を選ぶ。2か所の関係は、となり合う(あいだの角が 90°)か、向かい合う(Al をはさんで反対側、180°)の2通りしかない。となり合う選び方はどれも、回せば同じ形に重なる。向かい合う選び方も同じ。
だから幾何異性体(シス形とトランス形)は2つ。正八面体の図を2つ描き、 の位置をそれぞれ示す。
答えの正八面体で、2つの OH がとなり合う形(シス)と向かい合う形(トランス)の2つ
ク
陽極には、とけた液の中の陰イオン が引きよせられる。炭素の電極は、この と反応して CO や になり、電子を電極にわたす(酸化)。
CO には O が1個なので、C 1個と 1個が反応して電子2個が電極へ出ていく:。 には O が2個なので、 2個と反応して電子4個が出ていく:。
電子を失う(酸化される)のは炭素。酸化数で見ると、O は でも CO・ でも のままで変わらず、C が CO では 、 では になる。これが出ていく電子の数(2個・4個)と合う。
答え,
ケ
流れた電子の数を、陰極でできた Al から出す。Al 180 kg は 。Al 1個に電子3個なので、電子は 。
消費された炭素は 。CO を mol、 を mol とすると、炭素の数と、クの電子の数から
これを解いて を出し、 のモル質量 44.0 をかける。
同じ量の Al をつくるとき、全部が なら炭素は 60 kg、全部が CO なら 120 kg 要る。72.0 kg はその間なので、CO と が混ざって出ている。
答えe:, :, ,
第3問 アンモニアの pH の変化 / メタンとメタノール
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
Ⅰは、塩酸にアンモニアの気体を 40 分間とかし続け、そのあと水酸化ナトリウム水溶液を 40 分間落としていくと、pH がどう変わるかを追う問題。
いつでも使える考え方は、液の中の物質量の勘定。塩酸の は 0.18 mol。アンモニアは毎分同じ量ずつ入ってきて、まず を中和して になる。 が使いきられると、そこからは のまま残る。 と が両方ある間は緩衝液(pH が変わりにくい液)で、pH は2つの量の比で決まる。
アンモニアの量は、気体の状態方程式から出す。 で、毎分 0.20 L は
Ⅱはメタンの話。冷やしたときの体積の変わり方(実在気体)、メタンから水素をつくる反応、一酸化炭素と水素からメタノールをつくる平衡と反応熱。
ア
10 分間で入ったアンモニアは、毎分の量の10倍で約 0.080 mol。塩酸の は なので、アンモニアは全部中和されて になり、 が余っている。
余った は 。液は 2.0 L なので
も少しは を出すが、強い酸の がたくさん余っているので無視できる。
答え:,
イ
と が消えて、水のイオン積になる。だから 。
アンモニアが強い塩基であるほど( が大きいほど)、その相手の は弱い酸になる( が小さい)。
答え
ウ
40 分間で入ったアンモニアは約 0.321 mol。そのうち 0.18 mol が と反応して になり、残りの は のまま。
と が両方あるので、イの の式を について解いて使う:
同じ液の中なので、濃さの比は物質量の比と同じ。体積で割る必要はない。
答え入れた , ,
エ
時間を追って、どこで pH が急に上がるかを考える。
はじめは強い酸の塩酸で pH は低い。アンモニアが塩酸の をちょうど使いきるのは 分。ここで pH がはね上がる。そのあとは と の緩衝液になり、pH は 9 前後でゆっくりしか上がらない(ウの 40 分で約 9.15)。
40 分からは NaOH を毎分 0.010 mol 落とす。NaOH は を に変えていくので、pH はゆるやかに上がる。 0.18 mol を使いきるのは 18 分後、つまり 58 分ごろ。ここで2回目のはね上がりがあり、そのあとは NaOH が余って pH 12 前後になる。
「22 分ごろと 58 分ごろの2回はね上がり、その間は 9 前後でゆるやかに上がる」形のグラフを選ぶ。
オ
80 分までに落とした NaOH は 。このうち 0.18 mol が を に変え、0.22 mol は NaOH として余っている。液の中の は全部で 0.321 mol。
ここに塩化アンモニウム mol を入れると、まず余っている NaOH 0.22 mol と反応して、 が 0.22 mol ふえる。残りの mol が として残る。
にしたいので、ウと同じ式から
答え,
カ
理想気体は、分子の大きさも分子どうしの引き合いも無いと考えた気体。実在の気体は分子どうしが少し引き合うので、同じ温度・圧力で、理想気体より少しだけ体積が小さい。その差は、液体になる温度 に近づくほど大きくなる(引き合いが効きやすくなる)。だから より上では、破線のすぐ下を、 に近づくほど少しはなれながら下がっていく実線を描く。
で液体になると、分子どうしがくっつくので、体積はいっきに、ほぼ 0 に近い所まで真下に落ちる。メタンなら、液体の体積は沸点の気体の約 240 分の 1。
から までの液体は、温度を下げてもほとんど縮まないので、0 の近くでほぼ平ら(ほんの少しずつ減る)。 で固体になると、さらに少しだけ真下に落ち、そのあとはまた 0 の近くでほぼ平らになる。
答えT₁ より上:点線のすぐ下を通る実線(T₁ に近いほど点線から少し下にはなれる)。T₁ でほぼ 0 まで真下に落ちる(液体)。T₂〜T₁:0 の近くでほぼ平ら(少しずつ減る)。T₂ でさらに少し真下に落ちる(固体)。T₂ より下:0 の近くでほぼ平ら
キ
メタンと水蒸気から、一酸化炭素と水素ができる。C は1個なので CO が1、O は水の1個が CO に入る。H はメタン4個と水2個で6個あるので、 が3分子。
この反応でできた CO と の混合気体が、次のメタノールづくり(式1)の原料になる。
ク
式1は、左の気体分子が 個、右が1個で、進むと気体の分子の数が減る反応。
ルシャトリエの原理(平衡は、加えた変化をやわらげる向きに動く)から、圧力を高くすると、圧力を下げる向き、つまり分子の数が減る向き(右)に平衡が移る。その結果、メタノールがたくさんできる。
さらに、圧力を高くすると気体の濃さが上がるので、反応の速さも大きくなる。
答え式1 は気体の分子の数が 3 から 1 に減る反応なので、圧力を高くするとルシャトリエの原理により平衡が右に移り、メタノールが多くできるから(反応も速くなる)
ケ
式1の係数は 。反応した の量から、ほかの量を決める。
は 反応した。メタノールはその半分だけできて、CO もその半分だけ減る:
容器の体積(2 L)は、この問いの答えには使わない。
答え,
コ
与えられた熱を、熱化学方程式で書く(生成熱は単体から 1 mol、燃焼熱は 1 mol を燃やしたときに出る熱):
「全部燃やして と水にしたとき」を基準に考える(ヘスの法則)。左の を燃やすと、CO の燃焼熱 と 2つ分の の熱が出る。右の (気) を燃やすと、液体にもどす 38 と燃焼の 726 の熱が出る。
正なので発熱反応。問題の「(気)」を見落として液体のメタノールで計算すると、38 kJ ずれてしまう。
答え, , , , 、発熱反応