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物 理
第1問
図1—1のように,3個のおもりと3本の棒を互いに固定した物体の運動を考える。ただし,図1—2のように,おもりAに対して2本の棒はなめらかに回転できる。はじめ物体は,図1—1のように,おもりAとおもりBが水平な床に接するように置かれており,おもりCはおもりAの真上にある。おもりCには水平に張られた糸がつながれており,糸を図の右方向に引く力の大きさを F とする。3個のおもりの質量はいずれも m であり,棒と糸の質量は考えなくてよい。おもりAからおもりBまでの距離,およびおもりAからおもりCまでの距離はいずれも d であり,おもりの大きさは考えなくてよい。また,重力加速度の大きさを g とする。
Ⅰ まず,おもりAが床に固定されている場合を考える。
(1) 図1—1の状態において,F を徐々に大きくしていったところ,F がある大きさに達したときにおもりBが床から離れた。このときの F を求めよ。
(2) 糸を引き続けて,図1—2のように物体を傾けていくことを考える。おもりBが床から離れてから糸を引く力がした仕事の大きさを W とする。W がある大きさ W 0 を超えると,物体は倒れて,おもりCは床に衝突する。W 0 を求めよ。
Ⅱ 次に,おもりAが床に固定されていない場合を考える。図1—1のようにおもりAとおもりBは床に接している。おもりAと床との間の静止摩擦係数は μ ( μ < 1 3 ) であり,おもりBと床との間には摩擦はない。
(1) F が小さく,物体が静止しているとき,おもりBが床から受ける垂直抗力の大きさを,F を含む式で表せ。
(2) 前問Ⅱ(1)のとき,おもりAが床から受ける垂直抗力の大きさを,F を含む式で表せ。
(3) F を徐々に大きくしていったところ,F がある大きさに達したときに,おもりBが床に接したまま物体が右に動き始めた。このときの F を求めよ。
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図1—1
図1—2
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Ⅲ 最後に,おもりAとおもりBが床に接したまま,物体が右に動いている場合を考える。おもりAと床との間の動摩擦係数は μ ′ ( μ ′ < 1 3 ) であり,おもりBと床との間には摩擦はない。
(1) 図1—3のように,物体が等速直線運動をしているときの F を求めよ。
(2) 糸を引くのをやめて F = 0 にすると,物体は等加速度で減速する。このとき,図1—4に示すように,加速度は速度と逆向きであり,その大きさを a ( a > 0 ) とする。おもりBが床から受ける垂直抗力の大きさを,a を含む式で表せ。
(3) 前問Ⅲ(2)の a を求めよ。
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図1—3
図1—4
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第2問
Ⅰ 図2—1のように,真空中に直径 a ,長さ ℓ ,巻数 N のソレノイドAがある。その中心軸を x 軸にとり,原点OをソレノイドAの中心となるようにとった。x 軸は右向きを正とする。ℓ は a より十分に大きい。ソレノイドAに右から左に向けて一定の大きさ I の直流電流を流す。真空の透磁率(磁気定数)を μ 0 として以下の設問に答えよ。
(1) 原点Oでの磁束密度の大きさ B 0 を求めよ。
(2) ソレノイドAを中央で二分割して左半分 ( x < 0 ) を取り除き,図2—2のように,右から左に向けて一定の大きさ I の直流電流を流した。このとき,原点O付近の磁力線は図2—3のように表される。原点Oにおける磁束密度の大きさ B 1 を,B 0 を用いて表せ。
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図2—1
図2—2
図2—3
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Ⅱ 図2—4のように,設問Ⅰ(1)での長さ ℓ のソレノイドAを,中心軸が x 軸,左端面中心が原点Oとなるように固定し,右から左に向けて一定の大きさ I の直流電流を流す。さらに,直径 b ( b < a ) ,巻数1の円形コイルBを,位置 x = − x 0 ( x 0 > 0 ) からソレノイドA内部の位置 x = x 0 まで等速運動させる。円形コイルBの中心は常に x 軸上にあり,コイル面は x 軸に垂直である。x 0 は ℓ より十分に小さい。また,円形コイルBには紙面の手前側に端子 X B ,Y B がある。その端子間距離は十分に小さく,円形コイルBの電気抵抗と自己インダクタンスは無視できる。
(1) 端子 X B ,Y B 間に抵抗値 R の電気抵抗を接続し,円形コイルBを等速運動させた。円形コイルBを貫く磁束が短い時間 Δ t の間に Δ Φ だけ変化したとき,円形コイルBに流れる電流の大きさ I B を求めよ。
(2) 円形コイルB全体が磁場から受ける力を F とする。F は右向きを正とする。前問Ⅱ(1)と同様に端子 X B ,Y B 間に抵抗値 R の電気抵抗を接続し,円形コイルBを位置 x = − x 0 から x = x 0 まで速さ v 0 で等速運動させたとき,x と F の関係を表すグラフの概形として最も適切なものを図2—5の(あ)〜(し)から一つ選んで答えよ。
(3) 前問Ⅱ(2)において,電気抵抗の抵抗値を R から 2 R にすると,F の大きさの最大値は何倍になるか,理由とともに答えよ。
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図2—4
図2—5
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(4) 図2—6に示す素子1〜9は,抵抗値 R の電気抵抗,電気容量 C のコンデンサー,ダイオードからなる。ダイオードでは,順方向には抵抗 0 で電流が流れ,逆方向には流れないものとする。例えば素子4においては,紙面下向きには電流が流れ,上向きには流れない。
ソレノイドAに流す直流電流の向きを逆にし,左から右に向けて一定の大きさ I の直流電流を流した。ここで,円形コイルBの端子 X B ,Y B 間に素子1〜9のうち一つを選んで接続し,円形コイルBを位置 x = − x 0 から x = x 0 まで速さ v 0 で等速運動させる場合を考える。ただし,円形コイルBの端子 X B に素子の端子Xを,端子 Y B に素子の端子Yを接続するものとする。このとき,x と F の関係が,設問Ⅱ(2)と全く同じになる素子を図2—6の素子1〜9からすべて選び,番号で答えよ。
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図2—6
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Ⅲ 図2—7のように,図2—4の状態からソレノイドAを取り除き,代わりに直径 a ,巻数1の円形コイルCを固定した。円形コイルCの中心は原点Oに一致し,コイル面は x 軸に垂直である。円形コイルCに一定の大きさの直流電流を,左から見て反時計回りに流して磁場を作る。円形コイルBの端子 X B ,Y B 間に抵抗値 R の電気抵抗を接続し,円形コイルBを位置 x = − x 0 ( x 0 > 0 ) から x = x 0 まで等速運動させる。
円形コイルB全体が磁場から受ける力を F とする。F は右向きを正とする。x と F の関係を表すグラフの概形を描け。なお,F の最大値や最小値,それらをとる x の値を示す必要はない。
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図2—7
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第3問
運動する台車とピストンつき容器の中の単原子分子理想気体に関する以下の設問に答えよ。ただし,断熱変化において気体の圧力 p と体積 V についてポアソンの法則「p V 5 3 = 一定」が成り立つことを用いてよい。気体定数を R とする。台車と床との摩擦,およびピストンの質量は無視できる。ピストンつき容器の外側は真空である。台車の速度は右向きを正とする。
Ⅰ 図3—1のように,なめらかに動くピストンつきの断熱容器が水平な床に固定されており,この容器に1モルの単原子分子理想気体が封入されている。はじめ,容器内の気体の体積は V 0 ,温度は T 0 であり,ピストンはストッパーの位置で静止している。このピストンに向かって質量 m の台車を速度 v 0 で運動させる。
この台車がピストンに接した時刻を t 0 とする。時刻 t 0 の後,台車はピストンを押し込み,気体の体積が V 1 ,温度が T 1 となったところで速度が 0 となった。この時刻を t 1 とする。その後,台車はピストンに押し返されて,気体の体積が V 0 に戻った時刻 t 2 でピストンから離れた。
(1) 時刻 t 0 における台車の運動エネルギー K 0 と容器内の気体の内部エネルギー U 0 を m ,v 0 ,T 0 ,V 0 ,R のうち必要なものを用いてそれぞれ表せ。
(2) T 1 と T 0 の比 T 1 T 0 を K 0 と U 0 のみを用いて表せ。
(3) V 1 と V 0 の比 V 1 V 0 を K 0 と U 0 のみを用いて表せ。
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図3—1
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(4) 時刻 t と台車の速度 v との関係を表すグラフとして最も適切なものを図3—2の①〜⑨の中から選び,その理由も述べよ。
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図3—2
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Ⅱ 図3—3のように,なめらかに動くピストンつきの断熱容器が水平な床に固定されている。容器の中央を固定壁で仕切り,左右の領域にそれぞれ1モルの単原子分子理想気体を封入した。はじめ,左右の領域内の気体はどちらも体積が V 0 ,温度が T 0 であり,ピストンはストッパーの位置で静止している。設問Ⅰと同様に,このピストンに向かって質量 m の台車を速度 v 0 で運動させる。
台車が時刻 t 0 でピストンに接したのち,速度が 0 となった時刻を t 1 とする。このとき左の領域の気体の温度は T 1 になった。この時刻 t 1 で台車の位置を固定し,そのまま充分長い時間待ったところ,固定壁を通じた熱の移動により左右の領域の気体の温度はどちらも T 3 になった。こののち,時刻 t 3 で台車の固定を解除したところ,台車はピストンに押されて左向きに動き始め,左側の領域の気体の体積が V 0 に戻った時刻 t 4 でピストンから離れた。このときの台車の速度を v 4 とする。
ピストンが動いていた時間 t 1 − t 0 と t 4 − t 3 は充分短く,この間の固定壁を通じての熱の移動は無視できる。
(1) 台車がピストンから離れた時刻 t 4 における左右の領域の気体の温度はそれぞれ T 4 ,T 3 であった。t 4 以降の時刻における台車の運動エネルギー K 4 を R ,T 3 ,T 4 のうち必要なものを用いて表せ。
(2) 気体の温度 T 0 ,T 1 ,T 3 ,T 4 の間に成り立つ大小関係を
T A ◻ T B ◻ T C ◻ T D
の形で書け。ただし,A,B,C,Dにはそれぞれどの温度かを指定する数字(0,1,3,4)のいずれかがひとつずつ入り,各□には=(等号)または<(不等号)が入る。
(3) v 4 と v 0 の大きさの比を e = | v 4 v 0 | とする。時刻 t 0 における台車の運動エネルギー K 0 と左側の領域の気体の内部エネルギー U 0 のみを用いて e を表せ。
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図3—3
第1問 棒の三角形を上から糸で引く 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 3つのおもり A・B・C を棒で直角三角形の形に固めた物体を、上のおもり C につけた糸で横に引く問題。A と B は床にあり、C は A の真上、B は A から引く向きと反対側(図の左)に d のところにある。
使う考え方は2つだけ。力のつり合い(または運動方程式) と、A のまわりの力のモーメント(回そうとするはたらき)のつり合い 。A のまわりで考えると、A にはたらく床の力(垂直抗力・摩擦力)はモーメントを持たないので、式がとても簡単になる。
全体の筋は「上を横に引く(またはブレーキをかける)と、三角形が前の A のほうへ倒れこもうとして、A が床に強く押しつけられ、B は軽くなる 」という1つの話。Ⅰは A をくぎづけにして倒れるかどうか、Ⅱは A が床に置いてあるだけのときにすべり出す力、Ⅲはすべっている途中で糸をはなしたときのブレーキを考える。
Ⅰ(1) A は床に固定されているので、物体は A を軸に回ることしかできない。B が床から離れる瞬間は、B の垂直抗力が 0 になるときなので、A のまわりのモーメントのつり合いを考える。
糸の力 F は、A から高さ d の C に水平にかかるので、A のまわりのモーメントは F d (B を持ち上げる向き)。一方、B の重力 m g は A から横に d のところにかかり、モーメントは m g d (B を床に押しつける向き)。A と C の重力は、A を通るたての線の上にかかるので、モーメントを持たない。
F d = m g d
Ⅰ(2) 糸をゆっくり引いて傾けるとき、糸がした仕事は、物体の重力による位置エネルギー(高さのエネルギー)の増え方になる。だから「どこまで持ち上げれば、あとは勝手に倒れるか」を位置エネルギーで考える。
B が浮いてから物体が A のまわりに角度 φ だけ回ったとする。A を原点にすると、B の高さは d sin φ 、C の高さは d cos φ (A の高さは変わらない)。はじめ(φ = 0 )からの位置エネルギーの増え方は
m g d ( sin φ + cos φ − 1 )
これは φ = 45 ∘ で一番大きくなる。このとき B と C のまん中の点(2つの重心)が A の真上に来ていて、ここをこえると重力が物体を前へ倒す向きに回す。
だから、倒れるかどうかの境目の仕事は、この山のてっぺんの高さ:
W 0 = m g d ( sin 45 ∘ + cos 45 ∘ − 1 )
仕事はエネルギーなので、どんな力で引いても(強く引いても弱く引いても)境目は同じになる。
Ⅱ(1) こんどは A が床に置いてあるだけ。静止しているので、力のつり合いとモーメントのつり合いの両方が成り立つ。B の垂直抗力を N B として、A のまわりのモーメントのつり合いを立てる。
A のまわりで、B を押しつける向きに回すのは B の重力 m g (うでの長さ d )。反対向きに回すのは、糸の力 F (うでの長さ d )と、B の垂直抗力 N B (うでの長さ d )。A にかかる床の力はモーメントを持たないので
N B d + F d = m g d
上を引くほど B は軽くなる。F が m g になると N B = 0 になって B が浮く(これはⅠ(1)と同じ)。
Ⅱ(2) たて方向の力のつり合いを考える。物体全体の重力は 3 m g 、床から上向きに押す力は N A と N B だけ(糸の力は水平なのでたて方向には効かない)。
N A + N B = 3 m g
Ⅱ(1) の N B を入れると N A が求まる。B から減った分 F がそっくり A に移っていて、上を引くと前の足 A が床に強く押しつけられることが式で分かる。
Ⅱ(3) 横方向のつり合いから、A にはたらく静止摩擦力の大きさは F と同じ。すべり出すのは、これが最大摩擦力 μ N A に達したとき。すべらない条件は f ≤ μ N 。
ここで注意したいのは、N A 自体が F とともに大きくなること。Ⅱ(2) の結果を入れると、すべり出しの条件は
F = μ ( 2 m g + F )
問題の μ < 1 3 は、この F が m g より小さい、つまり B が浮く前にすべり出すための条件になっている(2 μ 1 − μ < 1 と同じ)。μ = 0.2 なら F = 0.5 m g で動き出し、A の重さが 2 m g のままと考えた 2 μ m g = 0.4 m g より強く引かないと動かない。
Ⅲ(1) 等速直線運動なので、加速度は 0。だからⅡと同じつり合いの式がそのまま使える。ちがうのは、A にはたらく摩擦が動摩擦力 μ ′ N A になることだけ。
モーメントとたて方向のつり合いから、Ⅱと同じく N A = 2 m g + F 。横方向のつり合いは
F = μ ′ ( 2 m g + F )
Ⅱ(3) と同じ形の式なので、μ を μ ′ に変えた形の答えになる。
Ⅲ(2) 糸をはなすと、物体は右向きに進みながら、左向きの加速度 a で減速する。物体といっしょに動いて見ると、3つのおもりそれぞれに、加速と逆向き(右向き、進む向き)の慣性力(加速と逆向きの見かけの力)m a がはたらいて、つり合いの問題として解ける。
A のまわりのモーメントを考えると、A と B の慣性力は床の高さにかかるのでモーメントを持たない。C の慣性力 m a だけが高さ d で右向きにかかり、これはⅡで糸が C を右に引いていたのと同じはたらきをする。つまりⅡ(1) の F を m a に置きかえればよい:
N B d + m a d = m g d
ブレーキがかかると、やはり前の A に重さが移り、B は止めて置いたとき(N B = m g )より軽くなる。ただし直前に等速で引いていた間(N B = m g − F 、F = 2 μ ′ m g 1 − μ ′ )と比べると、はなした瞬間に上を引く力が消えるので B はむしろ重くなる(μ ′ = 0.2 、m = 1 kg で 4.9 N → 8.4 N)。
Ⅲ(3) たて方向のつり合いから N A = 3 m g − N B = 2 m g + m a 。
横方向は、物体全体(質量 3 m )を左向きに減速させる力が、A にはたらく動摩擦力 μ ′ N A だけ。運動方程式は
3 m a = μ ′ ( 2 m g + m a )
もし重さが移らない(N A = 2 m g のまま)と考えると a = 2 μ ′ g 3 だが、ブレーキで A が強く押しつけられる分だけ、実際の減速は強くなる(μ ′ = 0.2 で 1.31 m/s² ではなく 1.40 m/s²)。
第2問 磁場の入り口を通りぬける小さなコイル 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 長いソレノイド(導線をつつ形にぐるぐる巻いたもの)の入り口を、小さな円いコイル B が一定の速さで通りぬける問題。B を通る磁束(面をつらぬく磁力線の量)が変わると、B に起電力(電池のような電圧)が生まれて電流が流れ、その電流が磁場から力を受ける。
使う考え方は、ファラデーの電磁誘導の法則(起電力 = 1秒あたりの磁束の変化)と、レンツの法則(誘導電流は、磁束の変化をさまたげる向きに流れる)。さらに「コイルが受ける力のする仕事 = 抵抗で出る熱」というエネルギーの関係を使うと、力の形が一気に分かる。
カギは、力が出るのは「磁束が多いところ」ではなく「磁束が変わるところ」 だということ。Ⅱのソレノイドの入り口と、Ⅲの1巻きのコイルで、この違いが力のグラフの形の違いになって出てくる。
Ⅰ(1) 十分に長いソレノイドの内部の磁場は一様で、その大きさは「1 m あたりの巻数 × 電流 × μ 0 」。
B 0 = μ 0 n I = μ 0 N ℓ I
Ⅰ(2) 長いソレノイドを原点で左右2つに分けて考える。原点の磁場 B 0 は、左半分が作る磁場と右半分が作る磁場の足し算になっている(重ね合わせ)。
原点から見ると、左半分と右半分はまったく同じ形(左右を入れかえただけ)なので、原点に作る磁場も同じ大きさ・同じ向き。2つの和が B 0 だから、片方だけならその半分になる。
ソレノイドの端では磁力線が外に広がりはじめるので、中ほどより磁場が弱くなる、という図2—3のようすとも合っている。
Ⅱ(1) ファラデーの法則から、コイル B に生まれる起電力の大きさは
V = | Δ Φ | Δ t
コイルそのものの抵抗と自己インダクタンスは無視できるので、この起電力がそのまま抵抗 R にかかる。オームの法則 I B = V R に入れると答えになる。
Ⅱ(2) 力の向きと形を、エネルギーから求める。コイル B は一定の速さ v 0 で動いているので、B が磁場から受ける力 F がする仕事は、1秒あたり F v 0 。一方、抵抗では1秒あたり V 2 R の熱が出る。この熱は、B を動かす仕事から出てくるので
F v 0 = − V 2 R
F = − v 0 R ( Δ Φ Δ x ) 2
2乗が付いているので、F はいつも 0 以下 (進む向きと逆、ブレーキ)。これはレンツの法則とも合う。
大きさは「位置が変わると磁束がどれだけ急に変わるか」の2乗で決まる。コイル B が遠く左にあるときは磁束がほぼ 0 で変わらず、ソレノイドの奥深くでは磁束がほぼ一定で変わらないので、どちらも F ≈ 0 。磁束が一番急にふえるのはソレノイドの入り口 x = 0 で、ここで力の大きさが一番大きい。入り口の前後で磁束のふえ方はほぼ左右対称なので、グラフは x = 0 を底にした左右対称の谷の形になる。これにあてはまるのが(く)。(き)・(さ)は上向き(押す力)で、レンツの法則と合わない。(し)や(け)・(こ)は x = 0 の前後で形がちがい(片側だけ、または向きが入れかわる)、入り口の前後で磁束のふえ方がほぼ対称であることと合わない。(あ)〜(か)は奥で 0 にもどらない形で、磁束が変わらない奥では電流が流れないことと合わない。
Ⅱ(3) コイル B の速さは同じなので、起電力 V = v 0 Δ Φ Δ x は R によらず同じ。抵抗を 2 R にすると、電流 V R は半分になる。
B が受ける力は、B を流れる電流が磁場から受ける力なので、電流に比例する。だから力も半分になり、最大値も半分になる。Ⅱ(2) の式 F = − v 0 R ( Δ Φ Δ x ) 2 で R が分母にあることからも分かる。
答え 1 2 倍(速さが同じなので起電力は同じ。電流が半分になり、力は電流に比例するので半分)
Ⅱ(4) まず、コイル B に流れようとする電流の向きを決める。ソレノイドの電流を逆にしたので、中の磁場は + x 向き。B が入り口に近づくと、+ x 向きの磁束がふえつづけるので、B にはそれをさまたげる向き(− x 向きの磁場を作る向き)の起電力がずっと生まれる。動いているあいだ、磁束はふえる一方なので、電流の向きは途中で入れかわらない。 図2—4の端子の位置と巻き方から読むと、この電流はコイルの中を X B から Y B へ回り、素子の中はY から X へ (図2—6で下から上へ)流れる。
設問Ⅱ(2) と全く同じ力になるのは、「この向きの電流にとって、素子が抵抗 R 1本とまったく同じにふるまう」とき。コンデンサーに電流が出入りすると、たまった電荷の分だけ電流が変わってしまうので、コンデンサーには電流が流れてはいけない。
素子1は抵抗だけなので、もちろん同じ。素子5は抵抗と、下から上へ通すダイオードの直列なので、この向きの電流はそのまま通り、ダイオードの抵抗は 0 だから抵抗だけと同じ。素子4はダイオードが逆向きで電流が流れず、力は 0 になる。素子7は抵抗と「コンデンサー+上から下へだけ通すダイオード」の並列で、下から上への電流ではコンデンサーの枝がふさがるので、抵抗だけと同じ。素子6は逆に、コンデンサーの枝に電流が入れてしまうのでちがう。素子2・3・8・9は、コンデンサーに電流が出入りする(または電流が止まる)ので、形が変わる。
ソレノイドの電流がもとの向きのままなら、同じになる素子は 1・4・6 になる。力のグラフの形は2乗なので向きによらないが、ダイオードは向きを区別するので答えが変わる。
Ⅲ ソレノイドのかわりに1巻きのコイル C を置くと、C の軸上の磁場は、中心 x = 0 で一番強く、左右に離れるほど弱くなる山の形になる。コイル B を通る磁束も、x = 0 で山になる。
F = − v 0 R ( Δ Φ Δ x ) 2 ≤ 0
で、「磁束の変わり方の急さ」の2乗で決まる。磁束の山のてっぺん x = 0 では、磁束は一番多いが、ふえも減りもしないので電流は 0、力も 0。遠くでも磁束がほとんど変わらないので 0。そのあいだ、x = 0 の手前(磁束がふえる)と先(磁束が減る)で、それぞれ力の大きさが最大になるところがある。
だからグラフは、どこでも 0 以下で、x = 0 について左右対称、x = 0 と遠くで 0、x = 0 の左右に1つずつ谷がある形になる。コイル C の半径を r = a 2 とすると、軸上の磁場は ( r 2 + x 2 ) − 3 2 に比例し、B が小さいときはその変わり方が一番急な x = ± r 2 = ± a 4 が谷の位置になる。
「磁束が多いところで力が強い」のではなく、「磁束が変わるところで力が出る」ことが、Ⅱ(谷が1つ)とⅢ(谷が2つ、真ん中は 0)の違いにそのまま出ている。
答え F = − v 0 R ( d Φ d x ) 2 ≤ 0 :左右対称で、 x = 0 と遠くで 0 、 x = 0 の左右に1つずつ谷(コイル B が小さいとき谷は x = ± a / 4 )
第3問 気体のクッションにぶつかる台車 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 熱を通さない容器に閉じこめた気体(1モルの単原子分子理想気体)を、ピストンごと台車で押しこむ問題。気体は「押すとはね返すクッション」になる。容器の外は真空、ピストンの質量も無視できるので、台車がピストンを押す仕事はそっくり気体に渡る。
使う考え方は、エネルギーの保存 (台車の運動エネルギーと気体の内部エネルギー(分子の動きのエネルギーの合計)のやりとり)と、断熱変化 (熱が出入りしない変化)のポアソンの法則 p V 5 3 = 一定。単原子分子理想気体の内部エネルギーは U = 3 2 R T (1モル)で、温度だけで決まる。
Ⅰは部屋が1つで、行きも帰りも熱が出入りしないので、台車は同じ速さで返ってくる。Ⅱは、一番押しこんだところで止めて待つあいだに、となりの部屋へ熱が逃げる。その分だけ台車は遅くなって返ってくる。熱が移ると、力学的なエネルギーが取りもどせなくなる 、というのが全体の筋。
Ⅰ(1) 気体は1モルの単原子分子理想気体なので、内部エネルギーは温度だけで決まり
U 0 = 3 2 R T 0
Ⅰ(2) 時刻 t 0 から t 1 まで、台車はピストンを押して仕事をし、そのぶん運動エネルギーが減る。ピストンは質量が無く、容器は断熱、外は真空なので、台車の運動エネルギーはすべて気体の内部エネルギーになる。t 1 で台車は止まっているので
U 1 = K 0 + U 0
内部エネルギーは温度に比例する(U = 3 2 R T )ので、温度の比は内部エネルギーの比と同じ:
T 1 T 0 = U 1 U 0
Ⅰ(3) 断熱変化なので、ポアソンの法則 p V 5 3 = 一定が使える。これを温度と体積の式に直すために、理想気体の状態方程式 p V = R T から p = R T V を入れると
T V 2 3 = 一定
V 1 V 0 = ( T 0 T 1 ) 3 2
Ⅰ(2) の温度の比を入れると答えになる。強くぶつかるほど(K 0 が大きいほど)深く押しこまれる。
Ⅰ(4) 行きと帰りの速さ :帰り(t 1 から t 2 )も断熱で、気体は行きと同じ断熱の線の上を逆にたどる。気体が体積 V 0 にもどると温度も T 0 にもどり、内部エネルギーは U 0 。増えていた K 0 はすべて台車にもどるので、台車は同じ速さ v 0 で左向きに、つまり速度 − v 0 ではなれる。同じ位置では行きと帰りで同じ圧力・同じ速さなので、グラフは t 1 を中心に点対称になる。
傾き :台車の加速度(グラフの傾き)は、運動方程式 m Δ v Δ t = − p S から、気体の圧力 p に比例する。押しこむほど体積が小さく温度が高いので圧力は大きく、傾きは一番押しこんだ t 1 で一番急。
つなぎ目 :t 0 より前と t 2 より後は力がはたらかないので速度は一定。t 0 の瞬間に、傾きは 0 から急に − p 0 S m に変わるので、グラフはそこで折れる(t 2 も同じ)。
図3—2の9つは、たての行が終わりの速さ(上の行 − v 0 、中の行 − v 0 より遅い、下の行 − v 0 より速い)、横の列が曲がり方(左の列はまっすぐ=傾き一定、まん中の列は t 0 ・t 2 で一番急で t 1 でゆるやか、右の列は t 1 で一番急)で分かれている。終わりが − v 0 で、t 1 で一番急なのは③。③は t 0 で小さく折れて曲がり始めていて、これも合う(t 0 の傾きは t 1 の傾きのおよそ 1 5.7 倍しかないので、折れ方は小さい。K 0 = U 0 のとき)。
答え ③(熱が出入りしないので行きと帰りは対称で − v 0 ではなれる。押しこむほど圧力が大きく、傾きは t 1 で一番急。 t 0 で折れる)
Ⅱ(1) t 3 から t 4 のあいだは短く、壁を通る熱の移動は無視できる。だから左の気体は断熱で膨張し、台車を押す仕事をする。容器の外は真空、ピストンは質量が無いので、左の気体がした仕事はそっくり台車の運動エネルギーになる。
t 3 では台車は止まっていて、左の気体の温度は T 3 。t 4 では T 4 に下がっている。気体の内部エネルギーの減った分が、台車の運動エネルギーになるので
K 4 = 3 2 R T 3 − 3 2 R T 4
Ⅱ(2) T 1 :押しこむあいだは熱が移らないので、Ⅰと同じく左の気体は T 1 まで上がる(T 0 < T 1 )。
T 3 :止めて待つあいだ、左(T 1 )から右(T 0 )へ熱が移る。どちらも1モルで体積は変わらないので、左が失った内部エネルギーを右がそのままもらい、最後は2つの温度がそろう:
T 3 = T 0 + T 1 2
T 4 :左の気体は、体積 V 1 ・温度 T 3 から V 0 まで断熱で膨張する。Ⅰ(3) の T V 2 3 = 一定を使うと、同じ体積の変化では温度は同じ割合で下がる。Ⅰでは T 1 から T 0 まで下がったので、その割合は T 0 T 1 。
T 4 = T 3 × T 0 T 1
T 3 < T 1 だから T 4 < T 0 。つまり、台車がはなれたあと、左の気体ははじめより冷えている。
Ⅱ(3) e 2 = K 4 K 0 なので、K 4 を K 0 と U 0 で表せばよい。Ⅱ(1) より K 4 = 3 2 R T 3 ( 1 − T 4 T 3 ) 。
Ⅱ(2) の結果を使うと、3 2 R T 3 は「左と右の内部エネルギーの平均」で
3 2 R T 3 = ( K 0 + U 0 ) + U 0 2 = K 0 + 2 U 0 2
また 1 − T 4 T 3 = 1 − T 0 T 1 = 1 − U 0 K 0 + U 0 = K 0 K 0 + U 0 。
これらをかけて K 4 を出し、K 0 でわって平方根をとると答えになる。K 0 = U 0 なら e = 3 2 ≈ 0.87 。待たずにすぐはなせば熱が移らず e = 1 にもどるので、速さが落ちたのは、待つあいだに熱が右の部屋へ逃げたためだと分かる。