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化 学
第1問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~カに答えよ。
夜空に浮かんだ火星が赤く見えるのは,火星の地表に赤鉄鉱という鉱石が多量に含まれているからである。赤鉄鉱は酸化鉄(Ⅲ) F e 2 O 3 を主成分とし,鉄が酸素や水と反応することによって生成する。2004年,米国の火星探査機オポチュニティは,火星の地表から採取した岩石の顕微鏡観察を行ない,液体の水の作用でできたと考えられる球状の赤鉄鉱を発見した。また,探査機スピリットによって火星の地表で針鉄鉱という鉱石も見出された。針鉄鉱は酸化水酸化鉄(Ⅲ) F e O ( O H ) を主成分とし,水中での化学反応により生成する。このような発見から,かつて火星には液体の水が存在し,生命誕生の機会があったと推測されている(*脚注)。
水中における鉄酸化物の生成は,以下の反応により始まる。
F e ⟶ F e 2 + + 2 e − ( 1 )
2 H 2 O + O 2 + 4 e − ⟶ 4 O H − ( 2 )
ここで,式(1)は金属鉄が鉄イオンとなって水中に溶解し,電子 e − が放出される酸化反応,式(2)は式(1)で放出された電子によって水中に溶けこんだ酸素が還元される反応を表す。次にこれらの反応の生成物から,水酸化鉄(Ⅱ) F e ( O H ) 2 が生成する。
(*脚注) 2008年,米国の探査機フェニックスは,火星の地表のすぐ下に氷が存在することを確認した。
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F e 2 + + 2 O H − ⟶ F e ( O H ) 2 ( 3 )
水酸化鉄(Ⅱ)は水中の酸素によってさらに酸化され,水酸化鉄(Ⅲ) F e ( O H ) 3 が生じる。
4 F e ( O H ) 2 + 2 H 2 O + O 2 ⟶ 4 F e ( O H ) 3 ( 4 )
最後に,①水酸化鉄(Ⅲ)の脱水反応によって,酸化水酸化鉄(Ⅲ)や酸化鉄(Ⅲ)が生成する。
〔問〕
ア F e の原子番号は26である。F e 2 O 3 において,鉄イオンの K 殻,L 殻,M 殻に含まれる電子数をそれぞれ記せ。
イ 体積 V の F e がすべて酸化されて体積 a V の F e 2 O 3 になったとき,a の値を有効数字2桁で求めよ。答に至る過程も示せ。ただし,F e と F e 2 O 3 の密度はそれぞれ 7.87 g · c m − 3 と 5.24 g · c m − 3 とする。
ウ 下線部①について,F e 2 O 3 および F e O ( O H ) が生成する反応を反応式で示せ。
エ 式(1)~(4)および問ウで求めた反応式を利用して,F e から F e O ( O H ) が生成する反応を1つの反応式で示せ。
オ 現在の火星の大気圧は 610 P a であり,その 0.13 % を酸素が占めるとされている。このような酸素分圧下で,25 ℃ の水 1.00 × 10 3 l 中に溶解する酸素の質量は何 g になるか,有効数字2桁で求めよ。答に至る過程も示せ。なお,25 ℃,酸素分圧 1.01 × 10 5 P a の下で水 1.00 l に溶ける酸素の質量は 4.06 × 10 − 2 g であり,ヘンリーの法則が成り立つものとする。
カ 問オにおいて溶解していた酸素がすべて反応したとき,生成する F e O ( O H ) の質量を有効数字2桁で求めよ。答に至る過程も示せ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問キ~コに答えよ。有効数字は2桁とし,答に至る過程も示せ。熱化学反応はすべて 25 ℃,1.01 × 10 5 P a における熱量および物質の状態を扱うこととする。
廃棄プラスチックの有効利用法の一つに,プラスチックを焼却したときに発生する熱をエネルギーとして利用する方法がある。①C n H 2 n + 2 の組成式で与えられるアルカンの燃焼熱(1 mol あたり)は炭素数 n が増すにつれて増加する。しかし,図1—1に示すように,1 g あたりに換算した燃焼熱は n の増大と共に一定値に近づく傾向がある。②C n H 2 n の組成式で与えられるシクロアルカンの場合,n ≧ 5 では 1 g あたりの燃焼熱は,n によらず 46~47 k J · g − 1 で一定である。これらのことは,n が5から12程度のアルカンやシクロアルカンを主成分とする石油系燃料と,n が極めて大きいアルカンである③ポリエチレンおよび④ポリプロピレンでは,同質量あたりの燃焼熱はほとんど変わらないことを意味する。
図1—1 炭素数 n のアルカンおよびシクロアルカンの 1 g あたりの燃焼熱(25 ℃,1.01 × 10 5 P a )
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〔問〕
キ 下線部①に関して,アルカン C n H 2 n + 2 の燃焼の熱化学方程式を書け。ただし,アルカン 1 g あたりの燃焼熱を状態によらず 46.0 k J · g − 1 とする。
ク 燃焼熱は結合エネルギーの値から近似的に求めることができる。下線部②,③に関連して,シクロオクタン C 8 H 16 およびポリエチレンそれぞれの,1 g あたりの燃焼熱を,表1—1の結合エネルギーを用いて推定せよ。ただし,ポリエチレンは図1—2に示す化学構造をもつと仮定し,その重合度 m は 10,000 とする。
表1—1 結合エネルギー
図1—2 ポリエチレンの化学構造式
ケ 下線部④のポリプロピレンの原料であるプロピレンは,以下の長鎖アルカンの分解反応によって合成される。
C n H 2 n + 2 ⟶ C H 2 = C H — C H 3 + C n − 3 H 2 n − 4
プロピレンの燃焼熱が 2.04 × 10 3 k J · m o l − 1 であるとき,この反応の反応熱を求めよ。ただし,炭素数 n と炭素数 n − 3 のアルカンの燃焼熱は問キで求めた熱化学方程式から求めよ。
コ プロピレンは,以下のプロパンの脱水素反応によっても合成できる。
C H 3 — C H 2 — C H 3 ⟶ C H 2 = C H — C H 3 + H 2
プロピレンとプロパンの燃焼熱が,それぞれ 2.04 × 10 3 k J · m o l − 1 と 2.20 × 10 3 k J · m o l − 1 であるとき,この反応の反応熱を求めよ。必要であれば,水に関する熱量として表1—2の値を用いよ。
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表1—2 水に関する熱量[ k J · m o l − 1 ]
(各熱量は圧力によらないものとする。)
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第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
log 10 2 = 0.301 ,log 10 3 = 0.477 ,log 10 5 = 0.699
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~キに答えよ。
あるガラスに含まれる金属元素を分析するために,以下の実験を行った。ただし,このガラスは,P b 2 + ,C u 2 + ,F e 2 + ,N a + を金属イオンとして含むことがわかっている。
実験1:①細粉化したガラス 1.0 g を白金るつぼにとり,50 % 硫酸 8 m l と 46 % フッ化水素酸 8 m l を白金るつぼに加えた。次にケイ素をフッ化物として揮発させるため,300 ℃ で1時間加熱した。白金るつぼを冷やし,蒸留水と希硫酸を加えたところ,白色沈殿 A を得た。沈殿をろ過した後,ろ液の全量をメスフラスコに移し,蒸留水で 50 m l に希釈した。
実験2:実験1で調製した溶液 10 m l に塩酸 10 m l を加え,酸性にした。②この溶液に 2.0 × 10 − 3 m o l の硫化水素 H 2 S を通じたところ,黒色の沈殿 C u S を 2.0 × 10 − 6 m o l 得た。沈殿をろ紙で回収した後,ろ液をビーカーに集め煮沸した。ピペットで硝酸を数滴加えた後,十分量のアンモニア水を加えたところ,赤褐色の沈殿を得た。沈殿はろ紙で集め,ろ液は以下の実験3に使用した。
実験3:円筒形のカラムに,スルホ基(− S O 3 H )をもった十分量の陽イオン交換樹脂を詰め,カラムの上から十分量の塩酸と蒸留水を流し,カラムを洗浄した。次に,③実験2で得たろ液を十分に煮沸した。このろ液を冷却した後,カラムに流し,さらに 20 m l の蒸留水をカラムに流し,溶出液を全て回収した(図2—1)。この溶出液を 1.0 × 10 − 2 m o l · l − 1 の水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ,中和するまでに 18.0 m l を要した。
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図2—1
〔問〕
ア 下線部①について,ガラスの主成分である二酸化ケイ素とフッ化水素との反応式を記せ。
イ 白色沈殿 A は何か。化学式で示せ。
ウ 下線部②について,硫化水素の全量が溶液に溶け込んだとする。このとき,溶液中に含まれる硫化水素の全量の濃度 [ H 2 S ] t o t a l は以下の式で表される。
[ H 2 S ] t o t a l = [ H 2 S ] + [ H S − ] + [ S 2 − ]
また,硫化水素は以下に示す2段階の電離平衡が成り立つ。
H 2 S ⇌ H S − + H + K a 1 = 1.0 × 10 − 7 ( m o l · l − 1 )
H S − ⇌ S 2 − + H + K a 2 = 1.0 × 10 − 14 ( m o l · l − 1 )
[ H 2 S ] t o t a l に対する [ S 2 − ] の割合 α ( = [ S 2 − ] / [ H 2 S ] t o t a l ) を,電離平衡定数 K a 1 ,K a 2 および [ H + ] を用いて表せ。答のみ記すこと。
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エ C u S と F e S の溶解度積(K s p ( C u S ) ,K s p ( F e S ) )は以下の式で表される。
K s p ( C u S ) = [ C u 2 + ] [ S 2 − ] = 4.0 × 10 − 38 ( m o l 2 · l − 2 )
K s p ( F e S ) = [ F e 2 + ] [ S 2 − ] = 1.0 × 10 − 19 ( m o l 2 · l − 2 )
溶液の pH を 1.0 から 6.0 まで変えた時,K s p ( C u S ) / α の値と K s p ( F e S ) / α の値は,それぞれどのように変化するか。横軸に pH,縦軸に log 10 ( K s p / α ) をとって,グラフを描け。答に至る過程も示せ。
オ 下線部②について,F e 2 + が溶液中に 4.0 × 10 − 4 m o l · l − 1 存在するとき,F e S が沈殿しない pH の範囲を求め,有効数字2桁で答えよ。答に至る過程も示せ。
カ 下線部③について,この操作を行う理由を30字以内で記せ。
キ ガラス 1.0 g 中に含まれるナトリウムイオンの重量(g)を有効数字2桁で求めよ。答に至る過程も示せ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問ク~コに答えよ。
元素の多くは,複数の同位体が一定の比率で混ざった状態で天然に存在する。表2—1に,天然に存在する主な元素の同位体とその存在比(%)をまとめた。これらの元素から構成される分子の質量は,各元素の同位体存在比を反映した分布を示す。例えば天然に存在する二酸化炭素分子の質量分布は,表2—2のようになる。ただし,各同位体原子の相対質量はその質量数と同じであるものとし,分子の質量はその分子を構成する各原子の相対質量の和で表されるものとする。
〔問〕
ク 銅は,63 C u と 65 C u の2つの同位体がある一定の比率で混ざった状態で天然に存在する。天然に存在する 63 C u と 65 C u の存在比(%)を有効数字2桁で求め,表2—1にならって記せ。ただし,銅の原子量は 63.5 とする。
ケ 天然の同位体比の原子で構成された硝酸銀水溶液 X がある。ここに,天然の同位体比の原子で構成された臭化ナトリウム水溶液を添加し,臭化銀を沈殿させた。沈殿した臭化銀の質量分布を表2—2にならって記せ。ただし,臭化銀はその組成式である A g B r として沈殿したものとする。
コ 問ケと同じ硝酸銀水溶液 X に,銀原子として 109 A g のみを含む 0.050 m o l · l − 1 の硝酸銀(109 A g N O 3 )水溶液 10.0 m l を添加した後,問ケと同じ臭化ナトリウム水溶液を添加し,臭化銀を沈殿させた。沈殿した臭化銀の質量分布を測定したところ,表2—3に示す結果が得られた。硝酸銀水溶液 X に含まれていた硝酸銀の物質量(mol)を有効数字2桁で求めよ。答に至る過程も示せ。
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表2—1
表2—2
表2—3
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第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~カに答えよ。構造式は例にならって解答せよ。
(構造式の例)
不斉炭素原子まわりの結合の示し方:W,C,X が紙面上にある場合,Z は紙面の手前に,Y は紙面の奥にある。
(1) 分子式 C 8 H 12 O 4 の化合物 A~D がある。化合物 A,B,D は環状構造をもち,化合物 C は環状構造をもたない。化合物 A,B の環は10個の原子で構成され(十員環),化合物 D の環は6個の原子で構成される(六員環)。化合物 A~D の中で,D のみが不斉炭素原子をもつ。
(2) 化合物 A~D に対して,それぞれ炭酸水素ナトリウム水溶液を加えたが,気体は発生しなかった。
(3) 1 mol の化合物 A~D にそれぞれ水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱したのち,室温まで冷却し,希塩酸を加えて酸性にした。その結果,化合物 A からは 2 mol の化合物 E が,化合物 B からは 1 mol の化合物 F と 1 mol の化合物 G が,化合物 C からは 1 mol の化合物 H と 2 mol の化合物 I が,化合物 D からは 1 mol の化合物 J と 1 mol の化合物 K がそれぞれ得られた。
(4) 1 mol の化合物 E にナトリウムを作用させると,1 mol の水素分子が発生した。
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(5) 化合物 F とヘキサメチレンジアミンを縮合重合させると,6,6-ナイロンが生じた。
(6) 化合物 H に臭素を作用させると,不斉炭素原子を有する化合物 L が得られた。
(7) リン酸触媒を用いて,高温高圧下でエチレンに水蒸気を作用させると,化合物 I が得られた。
(8) 化合物 J と化合物 K は,互いに光学(鏡像)異性体である。
〔問〕
ア 化合物 E の分子式を示せ。
イ 化合物 A の構造式を示せ。
ウ (5)における反応の化学反応式を示せ。
エ 化合物 B の構造式を示せ。
オ 化合物 C として考えられる立体異性体の構造式をすべて示せ。
カ 化合物 D の構造式を示せ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問キ~ケに答えよ。
炭素—炭素原子間の単結合は,一般にそれを軸として回転することができる。炭素—炭素結合回りの回転にともなって,分子の立体構造が変わり,分子のエネルギーは変化する。このとき,原子の立体的な混み具合が小さいものほどエネルギーが低く,分子は安定になる。
エタンを例としてあげる。図3—1のように,エタンの水素原子に,それぞれ H a ,H b ,H c ,H x ,H y ,H z と名前を付けて区別する。構造式 M と構造式 N は,炭素—炭素結合の回転による異性体である。立体的な混み具合と結合の回転との関係は,投影式 を用いるとわかりやすい。太矢印の方向から,結合した二つの炭素原子が重なるように投影する。H a ,H b ,H c が結合する手前の炭素原子を中心点(●)で,H x ,H y ,H z が結合する後方の炭素原子を円で描くと,構造式 M および構造式 N は,それぞれ投影式 M および投影式 N のように表せる。H a と H x ,H b と H y ,H c と H z がそれぞれ重なる投影式 M はエネルギーが高い状態を表し,原子の混み具合が小さい投影式 N はエネルギーが低い状態を表す。また,回転角 θ を投影式 M,N に示すように定義すると,θ とエネルギーの関係は,図3—2のグラフの曲線のようになる。
図3—1 (構造式の太いくさびは紙面の手前へ出た結合,破線のくさびは紙面の奥へ出た結合を表す。)
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図3—2
〔問〕
キ 図3—2における,投影式 O と投影式 P を示せ。なお,エタンの水素原子は,投影式 M や投影式 N にならって,名前を付けて区別すること。
ク ブタン(C H 3 — 𝐂 H 2 — 𝐂 H 2 — C H 3 )の太字の炭素—炭素結合回りの回転角とエネルギーの関係は,図3—3のグラフの曲線のようになる。これは,メチル基が水素原子より立体的に大きいことに関係している。太字の炭素—炭素結合に関する投影式 Q,R,S を示せ。メチル基は C H 3 ,太字の炭素上の水素原子は H で表示せよ。
図3—3
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ケ 図3—1の H a ,H x の位置にそれぞれヒドロキシ基を配置したエチレングリコールの場合,投影式 O に対応する構造に比べて,投影式 N および投影式 P に対応する構造がより安定となる。その理由を40字以内で示せ。
第1問 鉄のさび・火星の水・プラスチックの燃える熱 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、鉄が水と酸素でさびていく道すじ。式(1)〜(4)で、鉄 → F e 2 + → F e ( O H ) 2 → F e ( O H ) 3 と進み、最後に水が取れて F e O ( O H ) や F e 2 O 3 になる。いくつもの式を1本にまとめるときは、途中にだけ出てくる物(電子・F e 2 + ・O H − など)が消えるように、式を何倍かして足す 。後半は、火星のうすい大気の酸素が水にどれだけ溶けるかを、ヘンリーの法則(溶ける気体の量は、その気体の分圧に比例する)で求める。
後半Ⅱは燃焼熱。アルカン C n H 2 n + 2 は、C H 2 の単位が1つ増えるごとに燃焼熱がほぼ一定の量ずつ増える。だから 1 g あたりの燃焼熱は、n が大きくなると C H 2 1単位あたりの値に近づく。結合エネルギー(結合1 mol を切るのに要るエネルギー)で見積もるときは「切る結合」と「できる結合」を数え、プロピレンを作る反応の熱はヘスの法則(道すじによらず熱の合計は同じ)で燃焼熱の差から出す。
ア Fe は原子番号 26 で、電子は 26 個。電子配置は K 殻 2・L 殻 8・M 殻 14・N 殻 2(M 殻の 3d に 6 個、N 殻の 4s に 2 個)。
F e 2 O 3 の中の鉄は F e 3 + 。鉄が電子を失うときは、いちばん外側の N 殻(4s)の2個から先に失い、次に M 殻(3d)から1個失う。残るのは 23 個で、K 殻 2・L 殻 8・M 殻 13。
一番外側の殻から電子が取れる、という順番がかぎ。M 殻から先に取ってはいけない。
イ 鉄 V cm³ から出発して、質量 → 物質量 → F e 2 O 3 の物質量 → 質量 → 体積、と順に進む。
鉄の質量は 7.87 V g、物質量は 7.87 V 55.8 mol。鉄原子2個で F e 2 O 3 1個になるので、F e 2 O 3 はその半分。F e 2 O 3 の式量は 55.8 × 2 + 16.0 × 3 = 159.6 なので、体積は
a V = 7.87 V 55.8 × 1 2 × 159.6 5.24
さびると体積が約2倍にふくらむ。コンクリートの中の鉄筋がさびると、ふくらんでコンクリートを内側から割ってしまう理由がこれ。
答え a = 7.87 55.8 × 1 2 × 159.6 5.24 = 2.1
ウ 下線部①は、水酸化鉄(Ⅲ)から水が取れる脱水反応。
F e ( O H ) 3 1個から水1個が取れると、F e O ( O H ) になる(OH 3つのうち2つから H 2 O が1つ抜け、O が1つ残る)。
F e 2 O 3 は鉄が2個なので、F e ( O H ) 3 2個から水3個が取れる(F e 2 O 6 H 6 から H 6 O 3 を引くと F e 2 O 3 )。どちらも原子の数を左右で数えて確かめる。
答え 2 F e ( O H ) 3 ⟶ F e 2 O 3 + 3 H 2 O , F e ( O H ) 3 ⟶ F e O ( O H ) + H 2 O
エ Fe から FeO(OH) までの道すじは、(1) → (3) → (4) → ウの2つ目の式。途中にだけ出てくる物が消えるように、何倍かして足す。
鉄 4 個から始めると:式(1)を4倍(Fe 4 個が F e 2 + 4 個と電子 8 個に)。電子 8 個を使うには式(2)を2倍。F e 2 + 4 個と O H − 8 個で式(3)を4倍。できた F e ( O H ) 2 4 個で式(4)を1倍。できた F e ( O H ) 3 4 個でウの式を4倍。
全部足して、両辺に出てくる物を消すと、左に Fe 4・O 2 3(式(2)から2、式(4)から1)、水が差し引き 2、右に FeO(OH) 4 が残る。原子の数を左右で確かめると、Fe 4・O 8・H 4 でそろう。
オ 火星の大気中の酸素の分圧は 610 × 0.0013 ≈ 0.793 Pa。
ヘンリーの法則より、溶ける量は分圧に比例し、水の量にも比例する。基準(1.01 × 10 5 Pa、1.00 L で 4.06 × 10 − 2 g)からの比で
4.06 × 10 − 2 × 1.00 × 10 3 1.00 × 0.793 1.01 × 10 5
を計算する。1000 L もの水に溶けているのに、ほんの 0.3 mg ほど。
同じ 1000 L でも、地球の空気(酸素の分圧 約 21000 Pa)なら約 8.5 g 溶ける。火星の 2 万倍以上。
答え 4.06 × 10 − 2 × 10 3 × 610 × 0.0013 1.01 × 10 5 = 3.2 × 10 − 4 g
カ 溶けていた酸素の物質量は 3.19 × 10 − 4 32.0 ≈ 9.96 × 10 − 6 mol。
エでまとめた式 4 F e + 3 O 2 + 2 H 2 O → 4 F e O ( O H ) より、O 2 3 mol で FeO(OH) が 4 mol できる。FeO(OH) の式量は 55.8 + 16.0 × 2 + 1.0 = 88.8 。
9.96 × 10 − 6 × 4 3 × 88.8 g
答え 3.19 × 10 − 4 32 × 4 3 × 88.8 = 1.2 × 10 − 3 g
キ まず燃焼の反応式。C n H 2 n + 2 の C は全部 C O 2 に(n 個)、H は全部 H 2 O に(n + 1 個)なる。O の数は右辺で 2 n + ( n + 1 ) = 3 n + 1 個なので、O 2 は 3 n + 1 2 個。
熱は、1 g あたり 46.0 kJ に、1 mol の質量 12.0 n + 1.0 × ( 2 n + 2 ) = 14 n + 2 g をかける:
46.0 × ( 14 n + 2 ) = 644 n + 92 k J
熱化学方程式では、燃焼熱は右辺に+で書く。燃焼熱の基準に合わせて、水は液体とする。
答え C n H 2 n + 2 + 3 n + 1 2 O 2 = n C O 2 + ( n + 1 ) H 2 O ( 液 ) + ( 644 n + 92 ) k J
ク 結合エネルギーで燃焼熱を見積もるときは、(できる結合のエネルギーの合計)−(切る結合のエネルギーの合計)。C O 2 の C=O、H 2 O の O−H も、すべて気体として数える。
シクロオクタン C 8 H 16 は、輪なので C H 2 8 個が C−C 8 本でつながっている。C H 2 1 単位あたりで考えると、切るのは C−C 1 本(370)、C−H 2 本(820)、O 2 1.5 個(750)で合計 1940 kJ。できるのは C O 2 の C=O 2 本(1600)と H 2 O の O−H 2 本(920)で 2520 kJ。差の 580 kJ が C H 2 1 単位(14 g)あたりの熱なので、580 ÷ 14 ≈ 41 kJ/g。
ポリエチレン H − ( C H 2 − C H 2 ) m − H は、C H 2 が 2 m 個の鎖で、両端の H 2 個だけがちがう。同じように数えると、1 mol あたり 1160 m + 220 kJ、質量は 28 m + 2 g。m = 10000 では端の分はほとんど効かず、やはり C H 2 1 単位あたりの値とほぼ同じになる。
どちらも同じ値になるのは、どちらも「C H 2 のくり返し」でできているから。表の結合エネルギーは水を気体として数えているので、図1—1 の値(水は液体)より少し小さく出る。
答え シクロオクタン 41 k J / g , ポリエチレン 41 k J / g
ケ 反応熱は、ヘスの法則で燃焼熱から出せる:(反応熱)=(左辺の物の燃焼熱の合計)−(右辺の物の燃焼熱の合計)。左辺も右辺も燃やせば同じ C O 2 と水になるので、その差が反応で出入りした熱。
キの式より、C n H 2 n + 2 の燃焼熱は 644 n + 92 、右辺のアルカン C n − 3 H 2 n − 4 は 644 ( n − 3 ) + 92 。
( 644 n + 92 ) − 2040 − ( 644 ( n − 3 ) + 92 ) = 644 × 3 − 2040
n が消えて、1932 − 2040 。負なので吸熱反応。
n によらないのは、長い鎖から C H 2 3 つ分をプロピレンとして切り出すだけで、残りの鎖の燃焼熱は同じ分だけ差し引かれるから。
答え − 1.1 × 10 2 k J / m o l ( 108 kJ の吸熱。 3 × 644 − 2040 )
コ ケと同じく、(左辺の燃焼熱)−(右辺の燃焼熱の合計)。右辺にはプロピレンだけでなく H 2 もあるので、H 2 の燃焼熱も必要。
H 2 の燃焼熱は、燃焼熱の基準に合わせて「25 ℃ で液体の水ができる」熱。表1—2 の水(気体)の生成熱 242 kJ に、25 ℃ の蒸発熱 44.3 kJ を足して 286.3 kJ。
2200 − 2040 − 286.3 ≈ − 126 k J
負なので吸熱。表の 100 ℃ の蒸発熱や融解熱は使わない(25 ℃ の話なので)。水を気体のまま 242 で計算すると −82 kJ になってしまう。
答え − 1.3 × 10 2 k J / m o l ( 2200 − 2040 − ( 242 + 44.3 ) = − 126 )
第2問 ガラスの中の金属をより分ける・同位体で数える 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、ガラスにふくまれる4つの金属イオン(P b 2 + ・C u 2 + ・F e 2 + ・N a + )を、1つずつ沈殿にして取りのぞき、最後に残った N a + を数える話。流れは、実験1で Pb を硫酸塩に、実験2で Cu を酸性での硫化物に、Fe を水酸化物に、実験3で Na⁺ を陽イオン交換樹脂で同じ数の H + に変えて、NaOH で滴定する。
計算の中心は、硫化水素の電離平衡と溶解度積。硫化物が沈殿するのは、[ 金 属 イ オ ン ] [ S 2 − ] が溶解度積 K s p をこえたとき。S 2 − の濃度は pH で大きく変わる(酸性ほど少ない)ので、pH を調節すると、溶解度積のとても小さい CuS だけを沈めて、FeS は沈めない、ということができる。
後半Ⅱは同位体。銀も臭素も、重さのちがう2種類の原子が半分ずつ混ざっているので、AgBr の重さは3通りに分かれる。重さのわかった銀(109 A g だけ)を足すと分布がずれ、そのずれ方から、もとの銀の量が逆算できる(同位体希釈法)。
ア ガラスの主成分の二酸化ケイ素は、ふつうの酸には溶けないが、フッ化水素とは反応して、気体の四フッ化ケイ素になる。
S i O 2 + 4 H F ⟶ S i F 4 + 2 H 2 O
S i F 4 は気体なので、加熱すると飛んでいく。これで、ガラスの骨組みのケイ素を取りのぞき、金属イオンだけを残せる。ガラスを HF で溶かす(くもりガラスをつくる)のと同じ反応。
イ 硫酸を加えているので、液には S O 4 2 − がたくさんある。4つの金属イオンのうち、硫酸イオンと水に溶けにくい塩をつくるのは P b 2 + だけ。白い硫酸鉛(Ⅱ)が沈殿する。
C u 2 + ・F e 2 + ・N a + の硫酸塩は水に溶けるので、ろ液に残る。
ウ 電離定数の式から、[ H 2 S ] と [ H S − ] を [ S 2 − ] で表す。
K a 2 = [ S 2 − ] [ H + ] [ H S − ] より [ H S − ] = [ H + ] [ S 2 − ] K a 2
K a 1 = [ H S − ] [ H + ] [ H 2 S ] より [ H 2 S ] = [ H + ] 2 [ S 2 − ] K a 1 K a 2
3つを足して [ H 2 S ] t o t a l をつくり、[ S 2 − ] で割る。分子と分母に K a 1 K a 2 をかけると答えの形になる。
分母の3つの項は、それぞれ H 2 S ・H S − ・S 2 − の割合に対応している。酸性で [ H + ] が大きいと分母の [ H + ] 2 がいちばん大きく、S 2 − はほんのわずかしかない。
答え α = K a 1 K a 2 [ H + ] 2 + K a 1 [ H + ] + K a 1 K a 2
エ pH 1.0〜6.0 では [ H + ] は 10 − 1 〜10 − 6 で、K a 1 = 10 − 7 よりずっと大きい。だからウの分母は [ H + ] 2 だけ残して
α ≈ K a 1 K a 2 [ H + ] 2 = 10 − 21 [ H + ] 2
log 10 K s p α = log 10 K s p + 21 + 2 log 10 [ H + ] = log 10 K s p + 21 − 2 p H
CuS は log 10 ( 4.0 × 10 − 38 ) = − 37.4 なので − 16.4 − 2 p H 、FeS は − 19 + 21 = 2.0 なので 2.0 − 2 p H 。
どちらも傾き −2 の直線で、平行。pH 1.0 から 6.0 で、CuS は −18.4 から −28.4、FeS は 0 から −10 まで下がる。2本の差は溶解度積の比で、いつも約 18.4。
K s p α は「その金属イオンと [ H 2 S ] t o t a l のかけ算が、これをこえたら沈殿する」という境目。pH を上げると境目が下がって、沈殿しやすくなる。
答え α ≈ K a 1 K a 2 [ H + ] 2 より log 10 K s p ( C u S ) α = − 16.4 − 2 p H ( − 18.4 → − 28.4 ) , log 10 K s p ( F e S ) α = 2.0 − 2 p H ( 0 → − 10 ) の傾き − 2 の平行な直線
オ 実験2の液は、実験1の液 10 mL と塩酸 10 mL で 20 mL。硫化水素 2.0 × 10 − 3 mol が全部溶けるので、[ H 2 S ] t o t a l = 0.10 mol/L。
FeS が沈殿しない条件は [ F e 2 + ] [ S 2 − ] < K s p ( F e S ) 。[ S 2 − ] = α × 0.10 を入れると
4.0 × 10 − 4 × 0.10 × 10 − 21 [ H + ] 2 < 1.0 × 10 − 19
整理して [ H + ] 2 > 4.0 × 10 − 7 、[ H + ] > 2 × 10 − 3.5 。pH にすると p H < 3.5 − log 10 2 。
この範囲なら、Cu²⁺ は CuS として沈むが、Fe²⁺ は液に残る。エのグラフで、FeS の線が液の濃さの横線より上にある範囲、と読んでもよい。
答え [ H 2 S ] t o t a l = 0.10 m o l / L より [ H + ] 2 > 4.0 × 10 − 7 , p H < 3.2
カ 実験2では、Fe を水酸化物として沈めるために十分な量のアンモニア水を加えている。ろ液には、使われなかったアンモニアが残っている。
陽イオン交換樹脂は、流した液の陽イオンを全部 H + に取りかえる。アンモニア(塩基)が残っていると、それが H⁺ を中和したり、アンモニウムイオンとして樹脂で H⁺ に変わったりして、滴定の量が N a + の数とずれてしまう。
煮沸してアンモニアを追い出しておけば、樹脂で H⁺ に変わるのは N a + だけになり、滴定した H + の数=N a + の数になる。
ただし厳密には、煮沸で飛んでいくのは気体になれるアンモニア N H 3 で、塩酸などの酸と中和してできたアンモニウムイオン N H 4 + (塩化アンモニウムなど)は、煮沸だけでは全部はなくならない。残った N H 4 + は樹脂で H + に変わるので、その分だけ滴定の量が多くなる(1×10⁻⁴ mol 残れば、0.01 mol/L の NaOH が 10.0 mL 余分に要る)。この問題は「煮沸でアンモニア分が除かれ、滴定に効かない」ことを前提にしているので、キはその前提で答える。
答え 過剰のアンモニアを除き、Na + だけを H + と交換させるため。
キ 滴定に使った NaOH は 1.0 × 10 − 2 × 18.0 1000 = 1.8 × 10 − 4 mol。これと同じ物質量の H + が溶出液にあり、それは樹脂で取りかえられた N a + と同じ物質量。
この N a + は、実験1でつくった 50 mL のうちの 10 mL の分。ガラス 1.0 g 全体では5倍:
1.8 × 10 − 4 × 50 10 × 23.0 g
を計算する。10 mL だけ取り分けたことを忘れて5倍しないと、答えが 1/5 になる。
答え 1.0 × 10 − 2 × 18.0 1000 × 50 10 × 23.0 = 2.1 × 10 − 2 g
ク 原子量は、同位体の相対質量を存在比で平均したもの。63 C u の割合を p とすると
63 p + 65 ( 1 − p ) = 63.5
これを解くと 65 − 2 p = 63.5 、p = 0.75 。63.5 が 63 と 65 の間を 1:3 に分ける位置にあるので、軽いほうが 3 倍多い。表2—1 にならって、同位体と存在比を並べて書く。
ケ 表2—1 より、Ag は 107 A g と 109 A g が 50% ずつ、Br は 79 B r と 81 B r が 50% ずつ。AgBr の組み合わせと質量は
107 A g 79 B r :186(0.5 × 0.5 = 25 % )
107 A g 81 B r と 109 A g 79 B r :どちらも 188(25 % + 25 % = 50 % )
質量 188 には、2通りの組み合わせが重なる。コイン2枚を投げて表の数を数えるのと同じ分け方。
答え 質量 186 : 25 % , 188 : 50 % , 190 : 25 %
コ X の中の銀を x mol とする。その半分の 0.5 x mol が 107 A g 。足した 109 A g は 0.050 × 10.0 1000 = 5.0 × 10 − 4 mol。
混ぜたあとの銀のうち、107 A g の割合は 0.5 x x + 5.0 × 10 − 4 。質量 186 の AgBr(107 A g 79 B r )の割合は、これに 79 B r の割合 0.5 をかけたもので、表2—3 ではそれが 20%:
0.5 x x + 5.0 × 10 − 4 × 0.5 = 0.20
これを解くと 0.5 x = 0.4 x + 2.0 × 10 − 4 。
確かめ:このとき 109 A g の割合は 0.6 なので、190(109 A g 81 B r )は 0.6 × 0.5 = 30 % 、188 は残りの 50% で、表2—3 とすべて合う。重さの分かった 109 A g を「目じるし」として足し、どれだけうすまったかで、もとの量を知る方法。
答え 0.5 x x + 5.0 × 10 − 4 × 0.5 = 0.20 より x = 2.0 × 10 − 3 m o l
第3問 同じ C₈H₁₂O₄ から形をしぼる・結合を回して見る 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、同じ分子式 C 8 H 12 O 4 の4つの化合物 A〜D の構造を決める。条件(2)で炭酸水素ナトリウムと反応しない(COOH が無い)、条件(3)で水酸化ナトリウムで加水分解される、ことから、4つともエステル。だから加水分解でできた物(カルボン酸とアルコール、またはヒドロキシ酸)を先に決め、それをエステル結合でつなぎ直す のが筋。
環の大きさ(十員環・六員環)と、不斉炭素の有無、できた物どうしが鏡像かどうか、が形を1つにしぼる手がかり。エステルの輪は「カルボン酸の C(=O) と、アルコールの O」が交互につながってできる。
後半Ⅱは、C−C 単結合を軸にした回転。前から見た投影式(手前の炭素を点、奥の炭素を円で描く)で、原子どうしが重なる(混み合う)ほどエネルギーが高い。回転角 θ は、図3—1 のとおり、奥の炭素の H x が手前の H a から時計回りに回った角度。
ア (3)より A 1 mol から E が 2 mol できる。A が E 2分子のエステルなら、エステル結合2本を切るので水が2分子入る:
C 8 H 12 O 4 + 2 H 2 O ⟶ 2 E
原子の数を2で割ると E の分子式になる(C 4・H 8・O 3)。
(4)より、E 1 mol でナトリウムから H 2 が 1 mol 出るので、E は O−H を2つ持つ(OH 2つで H 2 1つ)。1分子で COOH とアルコールの OH を1つずつ持つヒドロキシ酸と分かる。
答え C 4 H 8 O 3 ( H O − C H 2 C H 2 C H 2 − C O O H )
イ E は COOH と OH を1つずつ持つ炭素4個の化合物。E 2分子が、互いの COOH と OH でエステル結合を2本つくって輪になったのが A。
輪の原子は、E 1分子あたり「C(=O)・炭素の鎖・O」。これが2回くり返して十員環(10個)になるには、E 1分子から輪に入る原子が5個、つまり C(=O) 1・C H 2 3・O 1。だから E は炭素の鎖がまっすぐで、COOH と反対の端に OH がある H O − C H 2 C H 2 C H 2 − C O O H (4-ヒドロキシブタン酸)。
OH が COOH に近い炭素にあったり、炭素の鎖が枝分かれしていたりすると、輪に入る炭素が減って輪が十員環より小さくなる(六員環や八員環)。だから十員環という条件で全部除ける。不斉炭素ができるかどうかは候補によってちがう:2-ヒドロキシブタン酸や 3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸は不斉炭素を持つが、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸 ( C H 3 ) 2 C ( O H ) C O O H は同じ C H 3 が2個ついているので不斉炭素を持たない。除く決め手は輪の大きさのほう。
答え 十員環: − O − C H 2 C H 2 C H 2 − C ( = O ) − O − C H 2 C H 2 C H 2 − C ( = O ) − (両はしがつながった輪)
ウ 6,6-ナイロンは、アジピン酸(炭素6個のジカルボン酸)とヘキサメチレンジアミン(炭素6個のジアミン)の縮合重合でできる。だから F はアジピン酸 H O O C ( C H 2 ) 4 C O O H 。
アミド結合 −CO−NH− が1本できるたびに水が1分子取れる。くり返し単位1つにアミド結合が2本ある(COOH 2つと N H 2 2つ)ので、n 単位で水は 2 n 分子。原子の数を左右で数えて確かめる。
答え n H O O C ( C H 2 ) 4 C O O H + n H 2 N ( C H 2 ) 6 N H 2 ⟶ [ C O ( C H 2 ) 4 C O − N H ( C H 2 ) 6 N H ] n + 2 n H 2 O
エ B から F(アジピン酸 C 6 H 10 O 4 )と G が1 mol ずつできる。C 8 H 12 O 4 + 2 H 2 O − C 6 H 10 O 4 = C 2 H 6 O 2 なので、G はエチレングリコール H O − C H 2 C H 2 − O H 。
B は、アジピン酸の COOH 2つと、エチレングリコールの OH 2つが、それぞれエステル結合をつくって輪になったもの。輪の原子を数えると、C(=O)・C H 2 4個・C(=O)・O・C H 2 2個・O で10個、十員環になる。
答え 十員環: − C ( = O ) ( C H 2 ) 4 C ( = O ) − O − C H 2 C H 2 − O − (両はしがつながった輪)
オ (7)のエチレンに水を付加する反応でできる I はエタノール。C 1 mol から H 1 mol とエタノール 2 mol ができるので、C はジカルボン酸 H のジエチルエステル。H の分子式は C 8 H 12 O 4 + 2 H 2 O − 2 C 2 H 6 O = C 4 H 4 O 4 。
C 4 H 4 O 4 のジカルボン酸で C=C を持つものは、H O O C − C H = C H − C O O H (マレイン酸・フマル酸)と、C H 2 = C ( C O O H ) 2 (メチレンマロン酸)。
(6)で、臭素を付加すると不斉炭素ができる。H O O C − C H = C H − C O O H なら H O O C − C H B r − C H B r − C O O H で、2つの炭素がどちらも H・Br・COOH・残りの部分の4つとつながり、不斉炭素になる。C H 2 = C ( C O O H ) 2 では COOH が2つ同じ炭素につくので不斉炭素にならない。だから H はブテン二酸。
C=C のまわりにはシス形(マレイン酸)とトランス形(フマル酸)があるので、C として考えられるのはそのジエチルエステル2つ。「すべて」とあるので両方描く。
答え マレイン酸ジエチル(シス)と フマル酸ジエチル(トランス): C 2 H 5 O O C − C H = C H − C O O C 2 H 5
カ D から J と K が 1 mol ずつでき、J と K は鏡像異性体(分子式は同じ)。だから J と K は同じ構造式のヒドロキシ酸で、分子式は A のときと同じく C 4 H 8 O 3 。D はその2分子の環状エステル。
輪が六員環なので、ヒドロキシ酸1分子から輪に入る原子は3個(C(=O)・炭素1個・O)。つまり OH は COOH のとなりの炭素についている:C H 3 C H 2 − C H ( O H ) − C O O H (2-ヒドロキシブタン酸)。この OH のついた炭素は不斉炭素。
加水分解で鏡像の2つ(R と S)ができるので、D の中の2つの不斉炭素は、互いに鏡像の立体配置をもつ。六員環を平らに描くと、2つのエチル基が環の表と裏に1つずつ出る形(一方をくさび、一方を破線)。同じ側に出ると、加水分解で同じ物が 2 mol できてしまい、(8)に合わない。
答え 六員環: − O − C H ( C 2 H 5 ) − C ( = O ) − O − C H ( C 2 H 5 ) − C ( = O ) − で、2つのエチル基が環の表と裏(一方くさび・一方点線)
キ 図3—1 の投影式では、手前の H a が真上、H b が右下、H c が左下(120° ずつ)。奥の3つは H x ・H y ・H z の順に時計回りに 120° ずつならび、θ は H x が真上から時計回りに回った角度。
手前の3つは動かさず、奥の3つを時計回りに回す。H x は θ 、H y は θ + 120 ∘ 、H z は θ + 240 ∘ の位置にくる。
O(θ = 180 ∘ ):H x が真下、H y が 300 ∘ (左上)、H z が 60 ∘ (右上)。
P(θ = 300 ∘ ):H x が左上、H y が右上、H z が真下。
どちらも手前と奥の H がたがいちがいになった(ねじれた)形で、図3—2 のエネルギーの谷にあたる。エタンは H がすべて同じなので、N・O・P は区別できるが、エネルギーは同じ。
答え O:手前 H a 上・ H b 右下・ H c 左下、奥 H z 右上・ H x 下・ H y 左上。P:奥 H x 左上・ H y 右上・ H z 下(手前は同じ)
ク ブタンの太字の C−C 結合を軸にすると、手前の炭素にも奥の炭素にも、C H 3 1個と H 2個がつく。メチル基は H より大きいので、2つの C H 3 が近いほど混み合ってエネルギーが高い。
図3—3 でエネルギーが最も高い Q(θ = 0 ∘ ):手前と奥の C H 3 がちょうど重なる形(どちらも真上)。H どうしも重なる。
R(θ = 60 ∘ ):たがいちがいの形で、奥の C H 3 が手前の C H 3 のとなり(60° 回った右上)。谷だが、C H 3 どうしがやや近いので、S より少し高い。
S(θ = 180 ∘ ):たがいちがいの形で、奥の C H 3 が真下、手前の C H 3 の正反対。C H 3 どうしがいちばん遠く、エネルギーが最も低い。
投影式は、手前の C H 3 を真上に置き、残りの手前・奥の位置に H を書く。
答え Q:CH 3 どうしが重なる(手前・奥とも上)。R:奥の CH 3 が 60° 回った右上。S:奥の CH 3 が真下(手前の CH 3 の反対)。残りは H
ケ エチレングリコールでは、図3—1 の H a と H x の位置が OH。O(θ = 180 ∘ )では2つの OH が正反対、N(60 ∘ )と P(300 ∘ )では OH どうしがとなり合う位置にある。
混み合いだけで考えると、ブタンと同じく OH が遠い O がいちばん安定なはず。それなのに N・P のほうが安定なのは、OH どうしが近いときだけ、一方の O−H の H が、もう一方の O の非共有電子対に引きつけられて、分子の中で水素結合ができるから。その引き合いが、混み合いの損よりも大きい。
答え 二つのヒドロキシ基が近づき、分子内で水素結合をつくって安定化するから。