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化 学
第1問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。
塩化ナトリウム(N a C l )は,ナトリウムイオン(N a + )と塩化物イオン(C l − )が静電気的引力により結びついたイオン結晶である。強いイオン結合で結びついた N a C l 結晶ではあるが,①極性溶媒である水に入れるとその結合は切れ,N a + と C l − に電離して水和イオンとなり,溶解する。
1気圧のもとで,純水は 0 ℃ で凍るが,N a C l を水に溶かすと,凝固し始める温度は 0 ℃ 以下になる。このような現象を凝固点降下と呼ぶ。凝固点は冷却曲線を調べることにより知ることができる。例えば,純水をゆっくり冷やしていくと 0 ℃ で氷が析出し始め,すべて氷になるまで 0 ℃ のままである。従って,冷却曲線は,図1—1のように 0 ℃ においてある時間一定となる。
今,ある濃度の N a C l 水溶液をゆっくり冷やしたときの冷却曲線が,図1—2のようになったとする。溶液が十分希薄であるとすると,凝固点降下度から,この N a C l 水溶液の濃度(質量パーセント)は a %と見積もられる。
N a C l は,30 ℃ では濃度 27 % まで水に溶ける。30 ℃ で色々な濃度の N a C l 水溶液を準備し,冷却曲線を調べた。その結果,凝固点は,濃度が低い水溶液を用いた実験では濃度に比例して降下し,濃度が高くなると比例関係からずれてさらに降下するようになった。しかしながら,②凝固点は,濃度 23 % の水溶液で最も低い温度に達したのち,それ以上の濃度の水溶液では変化しなくなった。
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図1—1
図1—2
〔問〕
ア 下線部①について,水分子 H 2 O の形状と電荷の偏りを図示せよ。
イ 下線部①について,水溶液中で N a + は水分子とどのように結びついて存在しているか,1~2行程度で説明せよ。
ウ a を有効数字2桁で求めよ。求める過程も記せ。ただし,水のモル凝固点降下は 1.85 K · k g / m o l とする。
エ 図1—2に示す冷却曲線において,A点(-3 ℃)とB点(-21 ℃)の間で冷却曲線が右下がりになる理由を,この間で起きている状態の変化に基づいて1~2行程度で述べよ。
オ 下線部②について,最も低い凝固点は何℃か。その理由とともに1~2行程度で答えよ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~ケに答えよ。
合成高分子であるポリスチレン(PS)はスチレンの重合により合成される。重合開始剤を加え,全てのスチレンを連鎖的に反応させた後に,片方の末端に官能基 X を導入した P S – X を合成した。
P S – X のトルエン溶液では,官能基間の会合により,2分子の P S – X からなる会合体 ( P S – X ) 2 が生成し,単分子である P S – X との間に(1)式の平衡が成立する。27 ℃ における平衡定数は K = 0.25 L / m o l である。
2 P S – X ⇌ ( P S – X ) 2 ( 1 )
P S – X の分子量を決定するために以下の実験を行った。10 g の P S – X をトルエンに溶解し,1 L の溶液とした。この溶液を,溶媒のみを通す半透膜で隔てられた容器の左側に入れ,右側には液面が同じ高さになるようにトルエンを入れた(図1—3)。十分な時間の経過後,b の液面が高くなって安定した。この液面差をゼロにするために必要な圧力は浸透圧と呼ばれる。③温度 27 ℃ において測定された浸透圧は 1.2 × 10 3 P a であった。
図1—3
(注) P S – X は全て同じ分子量であり,トルエンに完全に溶解し,官能基は解離せず,分子間の2分子会合にのみ寄与するものとする。必要ならば,次の値を用いよ。
気体定数 R ≒ 8.3 × 10 3 P a · L / ( K · m o l ) ,2 ≒ 1.41 ,3 ≒ 1.73 ,5 ≒ 2.24
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〔問〕
カ b に適切な語句を入れよ。
キ 濃度 10 g / L のスチレンのトルエン溶液の浸透圧は 27 ℃ で 2.4 × 10 5 P a であった。重量濃度が同じであるにもかかわらず,下線部③の P S – X 溶液の浸透圧の方がはるかに小さい理由を1~2行程度で述べよ。
ク 27 ℃ において(1)式の平衡が成立した時,会合前の P S – X 1モルに対して会合体 ( P S – X ) 2 が何モル形成されるかを有効数字2桁で答えよ。解答に至る過程も示せ。
ケ 問クの結果に基づいて,P S – X の分子量を有効数字2桁で答えよ。解答に至る過程も示せ。
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第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。なお,文中のエネルギーは,いずれも 25 ℃,1気圧(1.013 × 10 5 P a )における値の絶対値とする。
2 ≒ 1.41 ,3 ≒ 1.73 ,アボガドロ定数:6.02 × 10 23 / m o l
イオン結晶は,陽イオンと陰イオンのイオン結合によりできている。イオンの半径は,イオン結晶の単位格子の大きさとイオンの充填様式から計算できる。図2—1に代表的なイオン結晶である塩化ナトリウム(N a C l ),塩化セシウム(C s C l )の結晶構造を示す。N a C l ,C s C l の単位格子は立方体であり,その1辺の長さはそれぞれ,0.564 n m ,0.402 n m である。
ある結晶がイオン結晶であることは,結晶の格子エネルギー(イオン結合をすべて切断し,イオンを互いに遠く離して静電気的な力を及ぼしあわない状態にするのに必要なエネルギー)の理論値 U A と,図2—2より熱化学的に求められる実験値 U B がよく一致することにより示される。図2—2に示す C s C l の U B は,C s C l (固体)の生成熱(433 k J / m o l ),C s (固体)の昇華熱(79 k J / m o l ),C s (気体)の第一イオン化エネルギー(376 k J / m o l ),C l 2 (気体)の結合エネルギー(242 k J / m o l ),C l (気体)の電子親和力(354 k J / m o l )により,ヘスの法則を用いて熱化学的に求めることができる。
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図2—1 (a) N a C l ,(b) C s C l の単位格子
図2—2 C s C l の格子エネルギーの実験値 U B を求めるための熱化学的関係
〔問〕
ア セシウムイオン(C s + )の半径は 0.181 n m である。図2—1を用いてナトリウムイオン(N a + )の半径を計算せよ。ただし,図2—1(a),図2—1(b)の塩化物イオン(C l − )の半径の値は同じとする。
イ 金属ナトリウム(N a )の密度は 1.00 g / c m 3 であり,体心立方格子をとる。N a の金属結合半径と N a + の半径はどちらが小さいか,計算式を示して答えよ。
ウ N a の金属結合半径と N a + の半径に差が生じる理由を40字以内で述べよ。
エ 図2—2に示す U B (k J / m o l )を計算せよ。計算の過程も示せ。
オ イオン結晶のなかでも,周期表の両端の元素からできている N a C l や C s C l では,U A と U B の値がよく一致する。一方,塩化銀(A g C l )では U A と比較して U B が大きく異なる。この理由を40字以内で述べよ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~サに答えよ。
配位子が金属イオンに結合した構造を持つ化合物を錯体と呼び,イオン性の錯体は錯イオン,その塩は錯塩と呼ばれる。錯体は金属イオンの種類,配位子に依存して,図2—3のように①様々な構造(α ~δ )を形成できる。1893年にウェルナーは,②コバルト化合物を詳細に調べ,現在の錯体化学の基礎となる“配位説”を提唱した。
図2—3 様々な錯体の構造(それぞれの錯体の配位子は1種類とは限らない)
“配位説”以降,様々な錯体が発見されている。例えば,ヒトの血液中では,ヘモグロビンの a 錯体が酸素を運搬する役割を担っており,a の不足により貧血となる。人工的に合成された錯体は,エレクトロニクス材料,③抗がん剤などの様々な分野で用いられている。硬水の軟化,水の硬度測定などは,金属イオンと1対1で錯体を生成しやすい④エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(図2—4)のナトリウム塩を用いて行われている。有用物質合成に利用されている錯体は,触媒として働いて,反応の b を減少させることで反応速度を増加させる。このように錯体は,現在の我々の生活に非常に密着した化合物群となっている。
図2—4 EDTA の分子構造
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〔問〕
カ 下線部①の例として,構造(α ,γ )を持つアンミン錯体を形成する金属イオンを,Z n 2 + ,C u 2 + ,N a + ,A g + ,M g 2 + の中からそれぞれ1つずつ選べ。
キ 下線部②の化合物の代表例は,4つのアンモニア分子,2つの塩化物イオンを配位子として有する [ C o ( N H 3 ) 4 C l 2 ] + である。この錯体は八面体構造(δ )をとり,2つの幾何異性体が存在する。それらの分子構造を描け。
ク a に入る金属の元素記号を答えよ。
ケ 2つのアンモニア分子,2つの塩化物イオンを配位子として有する白金イオン(P t 2 + )の錯体は構造(β )を有し,その幾何異性体の1種は下線部③として利用されている。この白金錯体において考えられる幾何異性体の分子構造を全て描け。
コ 下線部④の EDTA 溶液と EDTA がカルシウムイオン(C a 2 + )へ配位すると色が変化する指示薬を用いて滴定を行い,C a 2 + 溶液 0.10 L の濃度を測定した。0.010 m o l / L の EDTA 溶液を 5.0 m L 滴下することで反応が終了し,溶液の色が変化した。この溶液における C a 2 + 濃度を求めよ。ただし,C a 2 + へ EDTA が配位した C a – E D T A 錯体の生成定数 K = [ C a – E D T A ] / ( [ E D T A ] [ C a 2 + ] ) は 3.9 × 10 10 L / m o l であり,pH の変化,C a 2 + 溶液中の陰イオンの効果は考慮しなくても良い。
サ b に入る語句を答えよ。
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第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用い,構造式は例にならって示せ。29ページと31ページの構造式では,不斉炭素原子を省略して表記してある。
(構造式の例)
不斉炭素原子まわりの結合の示し方:
W,C,X は紙面上にあり,Z は紙面の手前に,Y は紙面の奥にある。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。
L–チロキシン(分子量 777)は甲状腺が産生する甲状腺ホルモンの一種であり,工業的に合成された L–チロキシンが薬として処方されている。
図3—1に,L–チロキシンを合成する経路の一つを示す。L–チロシン(分子量 181)を出発物質として反応1により官能基 X 1 を持つ化合物 A を合成する。次に反応2により化合物 B を合成し,これを反応3により化合物 C に変換する。さらに反応4を経て化合物 D を合成し,これを反応5により化合物 E に変換する。次に,反応6により化合物 F を合成する。反応7において,官能基 X 3 はヨウ素に置換され,化合物 G が生成し,同時に窒素ガスが発生する。さらに2つの反応を経て目的の化合物である L–チロキシンが合成される。
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図3—1 L–チロキシンの合成
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〔問〕
ア 反応1,反応2,反応3,反応5,反応6で使用する試薬として最も適切なものを下記の(1)~(16)から,それぞれ一つ選べ。
(1) メタノール,塩化水素
(2) 濃塩酸,過マンガン酸カリウム
(3) 濃硝酸,濃硫酸
(4) 水酸化ナトリウム,無水酢酸
(5) 塩化ナトリウム,濃硫酸
(6) 酸素,触媒
(7) 亜硝酸ナトリウム,濃硫酸
(8) 水素,触媒
(9) エタノール,塩化水素
(10) 濃塩酸,濃硫酸
(11) 塩素,触媒
(12) 水酸化ナトリウム,酢酸
(13) 濃塩酸,酢酸
(14) 濃塩酸,無水酢酸
(15) 炭酸水素ナトリウム,酢酸
(16) メタノール,水酸化ナトリウム
イ 反応4において化合物 C と化合物 D の混合物が得られた。ここから未反応の化合物 C を除き化合物 D を得る目的で抽出操作を行った。この操作として最も適当なものを下記の(1)~(4)から一つ選べ。
(1) 水酸化ナトリウム水溶液とクロロホルムで分液操作を行い水層を回収する。
(2) 水酸化ナトリウム水溶液とクロロホルムで分液操作を行い有機層を回収する。
(3) 希塩酸とクロロホルムで分液操作を行い水層を回収する。
(4) 希塩酸とクロロホルムで分液操作を行い有機層を回収する。
ウ 有機合成反応では反応が完全には進行しないことも多く,例えば反応2において
収率 ( % ) = 得られた化合物 B の物質量 化合物 A の物質量 × 100
として合成の効率を評価する。図3—1で示した9つの反応の収率がいずれも 70 % であると仮定して,5.43 k g の L–チロシンを用いて合成を行った場合に得られる L–チロキシンの重量を有効数字2桁で求めよ。
エ 合成した L–チロキシンを同定するために燃焼法により元素分析を行った。62 m g の L–チロキシンを完全燃焼したときに発生する二酸化炭素の重量を有効数字2桁で求めよ。
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オ 合成した L–チロキシンを精密に分析したところ微量の D–チロキシン(L–チロキシンの鏡像異性体)が混入していることが分かった。この構造式として適当なものを下記の(1)~(8)から選べ。
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Ⅱ 炭素数3の有機化合物は,ポリマーの原料として極めて重要である。次の文章を読み,問カ~サに答えよ。
(実験1) 化合物 H は炭素数3で分子量 42 の常温・常圧で気体の化合物であり,炭素原子と水素原子のみからなっている。この化合物 H を重合反応させると熱可塑性を持つポリマー X を得ることができた。一方で,化合物 H を触媒存在下で酸素によって酸化すると,分子量 72 の化合物 I (沸点 141 ℃)が得られた。化合物 I は炭酸水素ナトリウムと反応して水溶性の塩 J を生じた。また,化合物 I をメタノールと反応させると化合物 K (沸点 80 ℃)と水が生じた。なお,化合物 H,I,J,K は臭素と反応しうる部分構造を有する。
(実験2) 化合物 J に架橋剤を加えて重合を行うと,網目構造をもつポリマー Y が得られた。①このポリマー Y に水を加えると,吸水して膨らんだ。さらに,②これを塩化カルシウム水溶液に浸漬すると,体積が小さくなった。
(実験3) 分子式 C 3 H 6 O 3 を有する化合物 L は酵素によるグルコースの分解反応によって得られる。この化合物は不斉炭素原子を有しており,炭酸水素ナトリウムと反応して水溶性の塩を生じた。化合物 L を脱水縮合すると分子式 C 6 H 8 O 4 の化合物 M が得られた。さらに化合物 M を重合するとポリマー Z が得られた。
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〔問〕
カ 化合物 I の構造式を示せ。
キ 化合物 K の構造式を示せ。また,化合物 I と化合物 K の沸点が大きく異なる理由を25字以内で述べよ。
ク 下線部①の理由を下記の選択肢から選べ。
(1) ポリマーの官能基間の静電引力
(2) ポリマーの官能基の水和
(3) ポリマーの官能基の凝集
(4) ポリマーの重合度の上昇
(5) ポリマー外へのナトリウムイオンの移動
ケ 下線部②の理由を25字以内で述べよ。
コ 化合物 M の構造式を示せ。ただし,立体異性体は考慮しなくてよい。
サ 実験3で得られるポリマー Z は,実験1で得られるポリマー X よりも土壌中で容易に低分子量の化合物に変換される。この理由を下記の選択肢から選べ。
(1) 揮発しやすいため
(2) 還元されやすいため
(3) 加水分解されやすいため
(4) 再重合しやすいため
(5) 脱水反応を起こしやすいため
第1問 食塩水が凍るまで・大きな分子の浸透圧 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは食塩水。食塩が水に溶けるしくみ(水和:イオンが水分子にかこまれること)と、食塩水を冷やしたときの温度の変わり方(冷却曲線)を読む。純水は 0 ℃ で凍りきるまで温度が一定だが、食塩水は凍り始めてからも温度が下がり続け、−21 ℃ でやっと一定になる。その理由は「凍るのは水だけで、残った液がだんだん濃くなる 」こと。
凝固点降下(溶かすと凍る温度が下がること)の大きさは、溶けている粒の数で決まる:Δ T = K f m (m は質量モル濃度、水 1 kg あたりの粒の mol)。NaCl は N a + と C l − に分かれるので、粒の数は2倍になる。
後半Ⅱは浸透圧。浸透圧も粒の数(モル濃度)で決まる:Π = c R T 。高分子は1個がとても重いので、同じ重さを溶かしても粒の数が少ない。さらに PS-X は2個ずつくっつく(会合する)ので、くっついた分だけ粒が減る。その分を平衡定数で直して、分子量を出す。
ア 水分子は、O を頂点に2つの H が折れ曲がってつながった形(H−O−H の角度は約 104.5°)。O は H より電子を引きつける力(電気陰性度)が強いので、共有電子対が O の側に寄る。O は少しマイナス(δ − )、2つの H は少しプラス(δ + )にかたよる。
まっすぐな形だと、2本の O−H のかたよりが正反対を向いて打ち消しあう。折れ曲がっているから打ち消されず、水は分子全体として極性(電気のかたより)をもつ。デモで角度を 180° にすると、かたよりは 0 になる。
答え H–O–H が約 104.5 ∘ に折れ曲がった形。O が δ − 、2つの H が δ + (O 側がマイナス、H 側がプラスにかたよる)
イ N a + はプラスのイオンなので、水分子の少しマイナスな O の側を引きつける。N a + のまわりを数個の水分子が、O を N a + に向けてとり囲んでいる。これが水和。
逆に C l − のまわりでは、水分子は少しプラスの H を向けてとり囲む。水和でイオンが安定になるので、強いイオン結合でも切れて溶ける。
答え N a + のまわりを数個の水分子が、マイナスにかたよった O 原子を N a + に向けて静電気の力で取り囲んでいる(水和)
ウ 図1—2 で凍り始める温度(A点)は −3 ℃、つまり凝固点降下度は 3 K。
NaCl は溶けると N a + と C l − の2個の粒になるので、NaCl の質量モル濃度を m とすると
Δ T = 1.85 × 2 m = 3 ⟹ m = 3 2 × 1.85 ≈ 0.811 m o l / k g
水 1000 g に NaCl(式量 58.5)が 0.811 × 58.5 ≈ 47.4 g 溶けている。質量パーセントは、溶液全体(水+塩)に対する塩の割合なので
47.4 1000 + 47.4 × 100 ≈ 4.5 %
答え Δ T = 2 K f m ⇒ m = 3 2 × 1.85 = 0.811 m o l / k g , 0.811 × 58.5 1000 + 0.811 × 58.5 × 100 = 4.5 %
エ A点で凍り始めたときに出てくるのは、純粋な水の氷だけ(食塩は氷の中に入らない)。水だけが氷として抜けていくので、残った液の中の食塩の濃さは上がっていく。
濃くなると、その液の凝固点はさらに下がる。だから、凍りながら温度が少しずつ下がり続け、冷却曲線は右下がりになる。
純水の曲線が平らなのは、凍っても残りの液の中身が変わらないから。食塩水では凍るたびに中身が変わる、というちがい。
答え A〜B では純粋な氷だけが出てくるので、残った溶液の濃度が上がり続け、凝固点がさらに下がり続けるから
オ 右下がりの部分で液が濃くなっていき、濃さが 23% になったところ(B点、−21 ℃)で、氷と食塩(二水和物 N a C l · 2 H 2 O )が、液と同じ割合でいっしょに固まり始める。液と同じ割合で固まるので、残った液の濃さはもう変わらない。だから温度も −21 ℃ のまま一定になり、全部固まるまで続く。
23% より濃い液では、冷やすと先に塩の方が出てきて液がうすくなり、やはり 23% になったところで −21 ℃ でいっしょに固まる。どちらから来ても行き着くのは同じ −21 ℃ で、これより低い凝固点はない。
問題文の「濃度が高くなると比例関係からずれてさらに降下」も大事。23% の液を Δ T = 2 K f m で計算すると約 19 K しか下がらず、実際の 21 K とずれる。ウで「十分希薄」としたのは、この式が使える範囲だから。
答え − 21 ∘ C 。23 \% の溶液は −21 ℃ で氷と塩(NaCl・2H 2 O)が同時に同じ割合で固まり濃度が変わらない。それより濃い溶液は先に塩が出て 23 \% になってから −21 ℃ で固まるから
カ 半透膜は溶媒(トルエン)だけを通す。溶媒は、うすい側(右の純トルエン)から濃い側(左の PS-X 溶液)へ、濃さを同じにしようとして移っていく。
左側に溶媒が入ってくるので、左側の液面が高くなる。液面の差がつくる圧力が、溶媒の入ろうとする力とつり合ったところで止まる。この差をゼロにするために左にかける圧力が浸透圧。
キ 浸透圧は Π = c R T で、c は溶けている粒のモル濃度。何の粒かによらず、粒の数だけで決まる。
スチレン(分子量 104)と PS-X は、同じ 10 g/L でも、1粒の重さがまったくちがう。PS-X はスチレンが何百個もつながった高分子で1粒がとても重いので、同じ重さに入っている粒の数(mol)がはるかに少ない。だから浸透圧がはるかに小さい。
実際、浸透圧の比は 2.4 × 10 5 1.2 × 10 3 = 200 で、粒の数の比、つまり分子量の比がおよそ 200 倍ということになる。
答え PS–X は分子量がとても大きいので、同じ重さの濃度でも溶けている粒の数(モル濃度)がはるかに少なく、浸透圧は粒のモル濃度に比例するから
ク 浸透圧から、溶けている粒(PS-X 単体と会合体を合わせた数)のモル濃度を出す:
c = Π R T = 1.2 × 10 3 8.3 × 10 3 × 300 ≈ 4.82 × 10 − 4 m o l / L
平衡のときの PS-X 単体の濃度を x とすると、会合体の濃度は平衡定数の式 K = [ ( P S – X ) 2 ] x 2 より K x 2 。粒の合計は
x + K x 2 = 4.82 × 10 − 4
K = 0.25 L/mol はとても小さいので、K x 2 は x よりずっと小さく、x ≈ 4.82 × 10 − 4 としてよい。すると会合体は K x 2 = 0.25 × ( 4.82 × 10 − 4 ) 2 ≈ 5.8 × 10 − 8 mol/L。
会合前の PS-X は、単体 x と会合体の中の 2 K x 2 を合わせて x + 2 K x 2 ≈ 4.82 × 10 − 4 mol/L。1 mol あたりに直すには、会合体の量をこれで割る。ほとんど(約1万分の1しか)くっついていない、という結果になる。
答え Π R T = 1.2 × 10 3 8.3 × 10 3 × 300 = 4.82 × 10 − 4 m o l / L = x + K x 2 , K x 2 = 5.8 × 10 − 8 ⇒ K x 2 x + 2 K x 2 = 1.2 × 10 − 4 m o l
ケ クで出した「会合前の PS-X の濃度」x + 2 K x 2 ≈ 4.82 × 10 − 4 mol/L が、1 L に溶かした 10 g の PS-X の物質量。分子量は
M = 10 4.82 × 10 − 4 ≈ 2.07 × 10 4
会合がほとんど起きていないので、会合を無視して計算しても同じ値になる。
デモで K を大きくすると、くっつく割合が増えて粒が減り、会合を無視すると分子量を大きく見積もりすぎるようになる(K = 10 4 なら 6 割も大きすぎる)。この問題の K = 0.25 では、会合の影響は答えの桁に出てこない。
答え C = x + 2 K x 2 = 4.82 × 10 − 4 m o l / L , M = 10 4.82 × 10 − 4 = 2.1 × 10 4
第2問 イオンの大きさ・格子エネルギー・錯体の形 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、イオン結晶の大きさとエネルギー。単位格子(結晶のくり返しの最小の箱)の中で、陽イオンと陰イオンがどの線の上でふれあっているか を見つければ、辺の長さからイオンの半径が出る。NaCl 型は辺の上で、CsCl 型は立方体の対角線(体の対角線)の上でふれあう。2つの結晶で C l − の半径が同じ、という条件で2つの結晶がつながる。
後半のエネルギーは、格子エネルギー(結晶をばらばらのイオンにするエネルギー)を、ヘスの法則(道すじによらず熱の合計は同じ)で階段を1段ずつ足して出す。計算で出す理論値と合わない AgCl から、「完全なイオン結合ではない結晶」があることを読む。
Ⅱは錯体(金属イオンに配位子が結合したもの)の形。直線(α)・平面の四角(β)・正四面体(γ)・八面体(δ)のどれになるかは金属イオンで決まる。形が分かれば、「配位子の並べ方が何通りあるか」(幾何異性体)も決まる。最後は EDTA で C a 2 + をはかるキレート滴定。
ア CsCl(図2—1(b))は、立方体の中心に C s + 、頂点に C l − がある。いちばん近い C s + と C l − は、立方体の対角線(長さ 3 a )の上でふれあっていて、対角線はちょうど「C l − の半径+C s + の直径+C l − の半径」:
3 × 0.402 = 2 ( 0.181 + r C l ) ⟹ r C l = 1.73 × 0.402 2 − 0.181 ≈ 0.167 n m
NaCl(図2—1(a))は、辺の上に N a + と C l − が交互にならび、辺の長さ a が「N a + の直径+C l − の直径」:
0.564 = 2 ( r N a + 0.167 )
これを解く。C l − の半径が2つの結晶で同じ、という条件が2つの式をつないでいる。
答え r ( C l − ) = 3 × 0.402 2 − 0.181 = 0.167 , r ( N a + ) = 0.564 2 − 0.167 = 0.115 n m
イ 体心立方格子は、立方体の頂点8つ(1つあたり 1 8 )と中心1つで、単位格子の中に原子が2個。密度の式を立てる:
1.00 = 2 × 23.0 / ( 6.02 × 10 23 ) a 3
これから a 3 ≈ 7.64 × 10 − 23 c m 3 、a ≈ 4.24 × 10 − 8 cm(0.424 nm)。
体心立方格子で原子がふれあうのは、体の対角線の上(頂点・中心・頂点)。対角線 3 a が半径の4つ分なので
r = 3 4 a = 1.73 × 0.424 4 ≈ 0.184 n m
アの N a + の 0.115 nm と比べると、N a + のほうがずっと小さい(6 割ほど)。
答え a 3 = 2 × 23.0 6.02 × 10 23 × 1.00 ⇒ a = 4.24 × 10 − 8 c m , r = 3 4 a = 0.184 n m > 0.115 n m → Na + の方が小さい
ウ Na の電子配置は K 殻 2・L 殻 8・M 殻 1。金属の Na はいちばん外側の M 殻に電子が1個あり、原子の大きさはこの M 殻で決まる。
N a + はその M 殻の電子を失い、いちばん外側が L 殻になる。電子の殻が1つ内側になるうえ、陽子 11 個に対して電子が 10 個に減るので、1個1個の電子がより強く核に引きつけられる。だからぐっと小さくなる。
答え Na + は最外殻の M 殻の電子を失い電子殻が1つ減るうえ核の引力も強まるため(36字)
エ 図2—2 の階段を、固体の CsCl からばらばらのイオンまで、2通りの道で考える。
道1:CsCl(固) → C s + (気)+C l − (気)。これが U B (吸熱)。
道2:まず CsCl(固) を成分の単体にもどす(生成熱の逆で 433 kJ 吸熱)。Cs(固) を気体にする(昇華熱 79)。Cs(気) から電子を取る(イオン化エネルギー 376)。1 2 C l 2 を Cl 原子にする(結合エネルギーの半分 121)。Cl 原子が電子を受け取る(電子親和力 354 は発熱なので引く)。
U B = 433 + 79 + 376 + 242 2 − 354
C l 2 は1分子から Cl が2個できるので、1 mol の Cl に必要なのは結合エネルギーの半分。
答え U B = 433 + 79 + 376 + 242 2 − 354 = 655 k J / m o l
オ 理論値 U A は、イオンを「プラスとマイナスの点の電荷」として、静電気の力だけで計算した値。NaCl や CsCl は、周期表の左はし(アルカリ金属)と右はし(ハロゲン)の組で、電気陰性度(電子を引きつける強さ)の差が大きく、ほぼ完全なイオン結合なので、この計算がよく合う(差は数 %)。
Ag と Cl は電気陰性度の差が比較的小さく、電子が完全には移りきらずに2つの原子に共有される部分が残る。つまり結合に共有結合の性質が混ざる。そのぶん、点の電荷だけの計算より結合が強くなり、実験値 U B が大きくずれる(計算では約 16 %)。AgCl が水に溶けにくいのも、この共有結合性と関係がある。
答え Ag と Cl は電気陰性度の差が小さく、結合に共有結合性が加わるから(32字)
カ アンミン錯体(アンモニアが配位した錯体)の形は、金属イオンごとに決まっている。
A g + :アンモニア2個で直線形 [ A g ( N H 3 ) 2 ] + → α。
Z n 2 + :4個で正四面体形 [ Z n ( N H 3 ) 4 ] 2 + → γ。
C u 2 + も4個だが、平面の四角形 [ C u ( N H 3 ) 4 ] 2 + (β)になる。N a + ・M g 2 + はアンミン錯体をつくらない。
キ 八面体の6つの頂点に、N H 3 4個と C l − 2個を置く。形を回して重なるものは同じとみなすと、2つの C l − の関係は2通りしかない。
となり合う(金属をはさんで 90° の位置):シス形。
向かい合う(金属をはさんで 180°、一直線の位置):トランス形。
八面体のどの頂点も同じ立場なので、1つ目の C l − をどこに置いても、2つ目は「となり(4か所)」か「向かい(1か所)」のどちらかになる。図は八面体を描き、C l の位置だけ変えて2つ並べる。
答え 八面体の6つの頂点のうち、2つの Cl − がとなり合う(シス形)と、向かい合う(トランス形)の2つ。残り4つの頂点は NH 3
ク ヘモグロビンは、ヘムという鉄の錯体を持ち、その F e 2 + に酸素分子が配位して運ばれる。鉄が足りないとヘモグロビンが十分につくれず、貧血になる。
ケ 平面の四角形(β)の4つの頂点に、N H 3 2個と C l − 2個を置く。2つの C l − が、となり合う頂点にあるシス形と、対角の頂点にあるトランス形の2通り。
シス形が抗がん剤のシスプラチン。もし正四面体(γ)なら、どの2つの頂点もすべてとなり合うので異性体は1つしかない。異性体が2つある、ということが、この錯体が平面の四角形である証拠になる。
答え 平面の四角で、2つの Cl − がとなり合うシス形(抗がん剤シスプラチン)と、向かい合うトランス形の2つ
コ EDTA は C a 2 + と 1:1 で錯体をつくる。滴下した EDTA の物質量は 0.010 × 5.0 × 10 − 3 = 5.0 × 10 − 5 mol。これと同じ物質量の C a 2 + が 0.10 L に入っていたので、濃度は物質量を 0.10 L で割る。
生成定数 K = 3.9 × 10 10 L/mol がとても大きいのは、反応がほぼ完全に進む(加えた EDTA がほぼ全部 C a 2 + とくっつく)ことの保証。終点で錯体にならずに残る C a 2 + は約 1 × 10 − 7 mol/L で、全体の 0.02% ほどしかない。だから1:1の量の関係だけで、もとの C a 2 + の濃度が求まる。
答え 0.010 × 5.0 × 10 − 3 0.10 = 5.0 × 10 − 4 m o l / L
サ 触媒は、反応の途中で越える山(活性化エネルギー)の低い別の道すじをつくる。山が低くなると、越えられる粒子の割合が増えるので、反応が速くなる。
触媒は反応の前後で変化せず、反応熱(出発と到着の差)も変えない。
第3問 チロキシンの合成・鏡の中の分子・炭素3つの化合物 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、アミノ酸のチロシンから甲状腺ホルモンのチロキシンを、9回の反応でつくる道すじ(図3—1)。各段で構造のどこが変わったか を前後の構造式で見くらべれば、使う試薬が決まる。変わった所を追うと:ベンゼン環に X 1 が2つつく → アミノ基が N H − C O − C H 3 になる → COOH がエチルエステルになる → OH にもう1つのベンゼン環がつく → X 1 が X 2 に → X 3 に → ヨウ素に(窒素ガスが出る)。
X 3 がヨウ素に置きかわって N 2 が出るので、X 3 はジアゾニウム基 − N 2 + 。そこから逆にたどると X 2 はアミノ基 − N H 2 、X 1 はニトロ基 − N O 2 と決まる。後ろから読むのがこつ。
後半Ⅱは炭素3個の化合物(プロペン・アクリル酸・乳酸)と、それぞれからできるポリマー。分子量と「炭酸水素ナトリウムと反応する(=カルボン酸)」「臭素と反応する(=C=C がある)」の条件から、構造をしぼる。
ア 反応1:チロシンのベンゼン環の OH のとなり2か所にニトロ基 − N O 2 がつく。ニトロ化なので、濃硝酸と濃硫酸 (3)。
反応2:アミノ基 − N H 2 が − N H − C O − C H 3 (アセチル化)になる。無水酢酸を使う。アミノ基は酸性の液では − N H 3 + になって反応しないので、塩基性(水酸化ナトリウム)で行う (4)。(14) の濃塩酸と無水酢酸ではうまくいかない。
反応3:−COOH がエチルエステル − C O O − C H 2 C H 3 になる。エタノールと酸の触媒(塩化水素)(9)。
反応5:ニトロ基 − N O 2 をアミノ基 − N H 2 に還元する。水素と触媒 (8)。
反応6:アミノ基をジアゾニウム基 − N 2 + にするジアゾ化。亜硝酸ナトリウムと酸 (7)。これが反応7でヨウ素に置きかわり、N 2 が出ていく。
答え 反応1 (3)、反応2 (4)、反応3 (9)、反応5 (8)、反応6 (7)
イ C と D のちがいは、ベンゼン環の OH。C は OH(フェノール性の OH)が残っていて、D はそこにもう1つのベンゼン環が O でつながり、OH が無い。
フェノールは弱い酸で、水酸化ナトリウムと反応して塩(ナトリウムフェノキシド)になり、水に溶ける。C はさらに OH のとなりに電子を強く引くニトロ基が2つあるので、ふつうのフェノールより酸性が強く、確実に塩になる。
だから水酸化ナトリウム水溶液とクロロホルムで振ると、C は塩になって水層へ、OH の無い D は有機層(クロロホルム)に残る。ほしいのは D なので、有機層を回収する。
希塩酸では C も D も変わらない(アミノ基はアセチル化されていて塩基性を失っている)ので、分けられない。
ウ チロシン 5.43 kg の物質量は 5.43 × 10 3 181 = 30.0 mol。
1回の反応ごとに 70% が次へ進むので、9回で 0.70 9 ≈ 0.0404 、つまり約 4% しか残らない。できるチロキシンは
30.0 × 0.70 9 m o l × 777 g / m o l
を計算する。図では反応8と9は矢印2本で、数え忘れやすい。反応は全部で9回。
1回ずつは 70% でも、9回つなぐと 4% になる。デモで収率を 90% にすると 9 回で 39% 残り、長い合成では1回の収率を少し上げることが大きく効く。
答え 5.43 × 10 3 181 × 0.70 9 × 777 = 9.4 × 10 2 g
エ チロキシン(C 15 H 11 I 4 N O 4 、分子量 777)1分子には炭素が15個あり、燃やすと全部が C O 2 になる。
62 mg の物質量は 62 777 ≈ 0.0798 mmol。できる C O 2 はその15倍で、1 mol が 44 g なので
62 777 × 15 × 44 m g
ヨウ素4個が重さの約 65% をしめるので、同じ重さの炭化水素とくらべると、出る C O 2 はずっと少ない。
オ D-チロキシンは、図3—1 の L-チロキシンを鏡に映した形。不斉炭素のまわりの4つ(H・N H 2 ・COOH・C H 2 −環)の立体的な並び方が、鏡に映した関係になっているものを選ぶ。
見くらべ方:選択肢の絵を回して、不斉炭素の H を奥(破線)に向ける。そこから手前の3つ、N H 2 → COOH → C H 2 の順にたどったとき、右回りか左回りかを読む。L 体(図3—1 の形)とこの回る向きが逆なら D 体。
注意:絵を紙の上でくるっと回すだけなら、同じ分子のまま。H が手前(くさび)に描かれている絵は、回る向きを読んだあとで逆にすればよい(反対側から見ていることになるから)。H が紙の上(ふつうの線)に描かれている絵は、そのまま逆にするだけでは正しくならないことがある。そのときは、まず H と奥(破線)に描かれた置換基を入れかえた絵を考える。入れかえた絵では H が奥にあるので、ふつうに回る向きを読む。2つを入れかえると鏡に映した形(逆の型)になっているので、最後にその向きを逆にする。また、絵を左右にひっくり返すと、鏡に映したことになって L と D が入れかわる。これで8つを1つずつ読むと、D 体は1つだけ。
カ H は炭素と水素だけで分子量 42、炭素3個なので C 3 H 6 。重合してポリマー X(ポリプロピレン)になるので、C=C を持つプロペン C H 2 = C H − C H 3 。
H を酸素で酸化してできる I は分子量 72。炭素3個で分子量 72 になる分子式は C 3 H 4 O 2 だけ。炭酸水素ナトリウムと反応する(=カルボン酸、COOH を持つ)ことと、臭素と反応する(=C=C を持つ)ことから、プロペンの C H 3 が COOH に変わったアクリル酸と決まる。
キ I(アクリル酸)とメタノールが反応して水が取れるので、エステル化。C H 2 = C H − C O O H の −COOH が − C O O − C H 3 になったアクリル酸メチル(分子量 86)。
沸点の理由:分子量は K(86)のほうが I(72)より大きいのに、沸点は I(141 ℃)のほうがずっと高い。I はカルボキシ基の O−H が、となりの分子の C=O と水素結合(分子どうしの強い引き合い)をつくる。K は O−H を持たないので水素結合をつくれない。分子どうしを引きはなすのに必要なエネルギーが、I のほうがずっと大きい。
答え C H 2 = C H − C O O − C H 3 。理由:I はカルボキシ基間で水素結合するが K はしないため(24字)
ク J は、アクリル酸を炭酸水素ナトリウムで中和したアクリル酸ナトリウム。これを架橋剤(鎖どうしをところどころつなぐもの)と重合させた Y は、網目状のポリアクリル酸ナトリウムで、紙おむつなどに使われる吸水性のポリマー。
水を加えると、− C O O N a が − C O O − と N a + に分かれ、− C O O − に水分子がたくさん引きつけられる(水和)。網目の中のイオンの濃さが高いので、浸透圧で水がどんどん入り、網目が広がってふくらむ。
ほかの選択肢:網目どうしの引き合いや凝集は、逆に縮める向き((1)(3)×)。重合度はもう変わらない((4)×)。
ケ C a 2 + は +2 の電荷をもつので、2つの − C O O − を同時に引きつけて、鎖と鎖(または同じ鎖の離れた所どうし)をつないでしまう。網目のつなぎ目が増えて、網目がきゅっと縮む。
そのうえ、− C O O − が C a 2 + とくっつくと水和も弱まるので、中の水が出ていき、体積が小さくなる。
答え Ca 2 + が COO − 間を架橋し網目が縮むため(21字)
コ L は C 3 H 6 O 3 で、グルコースの分解(乳酸発酵)でできる。炭酸水素ナトリウムと反応する(COOH あり)、不斉炭素をもつことから、乳酸 C H 3 − C H ( O H ) − C O O H 。
M は C 6 H 8 O 4 で、乳酸2分子(C 6 H 12 O 6 )から水が2分子取れた形。1分子の OH ともう1分子の COOH、その逆の COOH と OH、と2か所でエステル結合をつくると、6つの原子の輪(六員環)ができる。これが M(ラクチド)。
輪は − O − C H ( C H 3 ) − C O − O − C H ( C H 3 ) − C O − が一周した形。輪が開いてつながっていくとポリ乳酸 Z になる。
答え 6員環: − O − C H ( C H 3 ) − C O − O − C H ( C H 3 ) − C O − (乳酸2分子がエステル結合で輪になったラクチド)
サ X(ポリプロピレン)は、炭素と炭素の結合だけでつながった鎖で、水とも微生物とも反応しにくい。
Z(ポリ乳酸)は、エステル結合 −CO−O− でつながった鎖。エステル結合は水で切れる(加水分解される)。土の中の水分や微生物の酵素で、エステル結合が切れて乳酸にもどっていくので、低分子の化合物に分解されやすい。