— 18 —
化 学
第1問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
log 10 2 = 0.30 , log 10 3 = 0.48 , log 10 5 = 0.70
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~カに答えよ。
市販の水酸化ナトリウムは白色の小球状をしており,①湿った空気中に置いておくとその表面が濡れてくる。また空気中で速やかに二酸化炭素を吸収する。
日本薬局方によれば 1 m o l · L − 1 水酸化ナトリウム水溶液を調製する場合は,以下のような手順で行うこととされている。
「水酸化ナトリウム約 42 g を量り水 950 m L に溶かす。これに②水酸化バリウム8水和物飽和水溶液を沈殿がもはや生じなくなるまで滴下し,よく混ぜて密栓し,24時間放置した後ろ過する。このろ液の濃度を次のような操作で決定する。乾燥したアミド硫酸 1.5 g 前後を精密に量り,新たに煮沸して冷却した水 25 m L に溶かす。これを上記の水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。」
③上記の手順で調製した水酸化ナトリウム水溶液を用いて,濃度不明の酢酸水溶液 100 m L を適当なpH指示薬を用いて滴定したところ,20 m L で中和点に達することがわかった。
(注) アミド硫酸は右の構造式をもつ一価の酸である。
— 19 —
〔問〕
ア 下線部①の現象を何と呼ぶか。
イ 下線部②について,沈殿が生じる化学反応式を書き,なぜこのような操作が必要なのか50字から100字程度で記せ。
ウ アミド硫酸 1.444 g を秤量して,問題文に示された手順に従い滴定したところ水酸化ナトリウム水溶液は 15.20 m L 必要であった。調製した水酸化ナトリウム水溶液の濃度を有効数字3桁で求めよ。
エ 下線部③について,水酸化ナトリウム水溶液 10 m L を滴下した時点でのpHを求めよ。ただし酢酸の電離定数を 1.8 × 10 − 5 m o l · L − 1 とする。
オ 電離定数 4.0 × 10 − 4 m o l · L − 1 をもつ弱酸型のpH指示薬Xがある。Xの分子式をHAと表すと溶液中では下式のように電離している。
H A ⇌ H + + A −
H A ,A − の濃度比が0.1以上10以下の範囲にあるときに色調の変化が肉眼でわかると仮定する。このpH指示薬Xの色調の変化が肉眼でわかるpHの値の範囲を有効数字2桁で求めよ。
カ 下線部③で記した滴定にpH指示薬Xを用いることが適当かどうか,オの結果をもとにして理由とともに50字から100字程度で記せ。
— 20 —
Ⅱ 次の文章を読み,問キ~サに答えよ。
ファントホッフは,図1—1に示すような仮想的な反応箱中での気体分子の化学反応を理論的に考察し,④気体反応の濃度平衡定数が温度のみに依存することを示した。
ファントホッフの考察に関連して,以下に(1)式で表される気体分子の反応を例として,反応箱への気体分子の出し入れ操作を説明する。ここで,A,BおよびCは3種類の異なる分子の化学式を表す。ただし,反応(1)は反応箱中でのみ進行するものとする。また,気体は理想気体とみなせるものとする。
A + 2 B ⇌ 2 C ( 1 )
反応箱中には分子A,BおよびCの混合気体が含まれており,反応箱とシリンダは一定温度 T 〔 K 〕 に保たれている。反応箱に装備されている半透膜Aは分子Aのみを通し,半透膜の両側(シリンダ側と反応箱側)における分子Aの示す分圧が等しくなると,見かけ上,半透膜Aを通る分子Aの移動はなくなる。ここで,半透膜Aの両側における分子Aの分圧の差は速やかに解消されるものとする。半透膜B,Cの分子B,分子Cに対する動作もそれぞれ同様であるとする。
図1—1 ファントホッフの反応箱
以下に示すような手順によって,左側の2つのシリンダAおよびB内の気体を反応箱に導入し,反応箱から右側のシリンダC内へ気体を移すことを考える(図1—2)。
— 21 —
準備 図1—2(a)に示された状態を始めの状態とする。すなわち,シリンダAおよびB内にはそれぞれ 1 m o l の分子Aと 2 m o l の分子Bが含まれており,シリンダCの体積はゼロである。このとき,シリンダAおよびB内にある分子と反応箱中にある分子はそれぞれ半透膜の両側で同じ分圧を示しており,反応箱中では(1)式で表される反応は平衡状態となっている。⑤ここで,シリンダA,Bの体積はそれぞれ V A ,V B 〔 L 〕 であり,濃度平衡定数は K であった。
操作1 左側の2つのピストンを押し込んで,シリンダAおよびB内の気体を全て反応箱に移動させる(図1—2(b))。なお,反応箱中での反応は十分に遅く,この操作の直後では,反応箱中の混合気体は平衡状態にはないものとする。
操作2 反応箱中の混合気体が平衡状態となるのを待ってから,右側のピストンを引き出してシリンダC内に 2 m o l の分子Cを取り込む(図1—2(c))。この間,ピストンは非常にゆっくりと動かされており,シリンダの体積が変化しているにもかかわらず,反応箱中の混合気体は平衡状態に保たれているとする。
— 22 —
図1—2 反応箱の状態
— 23 —
〔問〕
キ 下線部④に関連して,化学反応が化学平衡の状態にあるとき,反応物質の濃度と生成物質の濃度との間には,温度が一定ならば一定の数量関係がある。この法則名を記せ。
ク 操作1の終了後,十分長い時間が経過すると反応箱中の混合気体は平衡状態になる。(1)式で表される反応はどちら向きに進行したか,判断理由となる原理の名称とともに50字から100字程度で記せ。
ケ 操作2が終了したとき,反応箱中の混合気体は平衡状態となっている。反応箱中の混合気体の平衡は,始めの状態と操作2の後ではどのような関係にあるか,下記の選択肢(ⅰ)~(ⅲ)の中から適切なものを選べ。また,それが適切であると考えた理由を50字から100字程度で記せ。
図1—2(a)と比べると,図1—2(c)における平衡混合気体では,式(1)において,
(ⅰ) 平衡が左に移動している。
(ⅱ) 平衡がどちら側にも移動していない。
(ⅲ) 平衡が右に移動している。
コ 下線部⑤で与えられているシリンダの体積 V A ,V B および濃度平衡定数 K を使って,操作2が終了したときのシリンダCの体積 V C を表せ。答に至る計算過程も記せ。
サ (1)式で表される反応が反応箱中で平衡状態に達した後,温度を上昇させると反応は左向きに進行して新たな平衡状態に達した。右向きの反応を正反応とするとき,正反応は吸熱反応であるか発熱反応であるか,50字以内の理由とともに記せ。
— 24 —
第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
C u の原子量 63.5
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~カに答えよ。
レアメタルや貴金属等はさまざまな製品に幅広く用いられており,それらの希少性・重要性から多くのリサイクル技術が開発されている。通常,製品には複数の金属が混在しており,目的とする金属を回収するには,溶解,沈殿,溶媒抽出,電解精錬など複数の化学操作が用いられる。
まず溶解と沈殿の例として,金と銀を含む固体(固体A)からの金と銀の回収を考える。最初に固体Aに濃硝酸を加えてろ過する。このろ液に少量のアンモニア水を加えると,褐色を呈する a の沈殿が生じ,一方の金属を回収することができる。また,このろ過操作で残った固体を取り出して,2種類の酸 b と c を加えて再びろ過すると,もう一方の金属が溶解したろ液を得ることができる。
金属の純度をさらに高めるために,溶媒抽出法が用いられる。溶媒抽出法では,混ざり合わない2つの液体,例えば水と極性の小さい有機溶媒を振り混ぜて目的成分を一方の液相に抽出する。特に金属の抽出操作では,キレート剤を用いる。キレート剤とは1つの分子中に金属イオンへ配位できる原子を2つ以上持つ試薬である。
— 25 —
例として,キレート剤である8-キノリノール(HQと表記)によるインジウムイオン(I n 3 + )の抽出を考える。HQは,水層と有機層に分配し,あるpH条件では図2—1のように水層において一価の酸として働き,Q − と H + に電離する。
図2—1 HQの電離平衡
また,分配の平衡定数 K 2 は有機層および水層におけるHQ濃度 [ H Q ] 有機層 および [ H Q ] 水層 を用いて K 2 = [ H Q ] 有機層 / [ H Q ] 水層 と表すことができる。以上の条件のもと,有機層へ溶解させたHQは水層へ移動して,①I n 3 + と錯体を形成して全体として無電荷となり,有機層へ抽出される。このとき,I n 3 + に配位する原子の数は6である。
純度の向上には電解精錬も用いられる。ここでは銅の電解精錬を考える。純度が低い粗銅で構成される陽極(アルミニウム,銀,鉄を含む)と,純銅で構成される陰極とを体積 2.0 L の硫酸銅(Ⅱ)水溶液に入れて,0.30 V で電気分解を行う。その結果,②陽極の質量は 112.0 g 減少して,陰極の質量は 110.0 g 増加した。また,水溶液中の硫酸銅(Ⅱ)の濃度は 0.020 m o l · L − 1 減少した。③このとき,陽極の下に陽極泥と呼ばれる沈殿が生じた。
— 26 —
〔問〕
ア a にあてはまる化学式と b ,c にあてはまる物質名を記せ。
イ a の沈殿に過剰のアンモニア水を加えるとイオンとして溶解する。このイオンの化学式を記せ。
ウ I n 3 + が存在しないとき,HQの有機層への分配の程度を表す分配比 D = [ H Q ] 有機層 / ( [ H Q ] 水層 + [ Q − ] 水層 ) を,水層における水素イオン濃度 [ H + ] 水層 ,および K 1 ,K 2 を用いて表せ。
エ 下線部①に関して,生成する錯体の構造を記せ。なお,I n 3 + と配位結合する原子については,その原子と I n 3 + を点線で結び配位結合していることを明示すること。立体構造を表記する必要はない。
オ 下線部③に関して,陽極泥を構成する金属元素を沈殿した理由とともに記せ。
カ 下線部②に関して,陽極の減少量 112.0 g のうち銅以外の重量を有効数字2桁で求めよ。ただし,水溶液の体積変化は無視できるものとする。
— 28 —
Ⅱ 元素に関する以下の文章を読み,問キ~シに答えよ。
元素を太陽系における物質量が大きい順に並べると,水素,d ,酸素,炭素,窒素となる。d は第 e 族元素に属し,イオン化エネルギーが全ての元素の中で最も大きい。一方,酸素のイオン化エネルギーは,第2周期元素の平均値に近い。酸素の同素体であるオゾンは,成層圏で太陽からの紫外線を吸収し,地球表層の生物を紫外線の有害な作用から保護している。生物や化石燃料の主要構成元素である炭素の同位体のうち,質量数 f の同位体は,半減期(半分が放射壊変して別の同位体に変化するのに要する時間)が5730年の放射性同位体で,考古学試料などの年代測定に用いられている。大気中の二酸化炭素に含まれる放射性炭素の比率はほぼ一定であるが,④地球に到達する宇宙線強度の変化,化石燃料の使用,1945年以降の核実験の影響などによって変動してきた。窒素は空気の約8割を占め,アミノ酸をはじめとする多くの生体物質に含まれており,生命活動を支える重要な元素の1つである。
〔問〕
キ d にあてはまる元素名と e ,f にあてはまる数値を記せ。
ク 第 e 族,第3周期の元素は,80 K 以下の低温で面心立方格子の結晶となり,その単位格子の1辺の長さは 0.526 n m である。この結晶における原子間距離(最近接の二つの原子間の距離)を有効数字2桁で求めよ。ただし単位格子の中には4個の原子があるものとする。計算の過程も記せ。必要ならば以下の値を用いよ。2 = 1.41 ,3 = 1.73 ,5 = 2.24
ケ クで述べたように,第 e 族,第3周期の元素の結晶は低温条件でなければ存在できないが,同じく第3周期に属する塩素を含む K C l は室温でも安定に結晶が存在できる。その理由を両者の結合の性質に着目して50字から100字程度で記せ。
— 29 —
コ 標準状態で 44.8 L の空気(モル分率0.20の酸素を含む)に紫外線を照射したところ,オゾンが生成した。反応後の気体の体積は,反応前と比べて標準状態で 1.4 L 減少していた。反応後の気体に含まれているオゾンのモル分率を有効数字2桁で求めよ。計算の過程も記せ。ただし,紫外線の照射によって起こる反応はオゾンの生成のみと考える。
サ 下線部④の影響により,大気中の二酸化炭素に含まれる放射性炭素の比率は変動してきた。宇宙線強度の増加,および化石燃料の使用は,放射性炭素の比率を増加させるか,減少させるか。それぞれについて記せ。
シ 一般的に分子の形は,共有電子対,非共有電子対,不対電子の間の静電的な反発などの効果を反映して決まる。たとえば水分子は,2つの非共有電子対と2つの O − H 結合の共有電子対との反発により,非共有電子対を含めて考えれば正四面体に近い形状になるため折れ曲がった分子構造をとる。これらをふまえて,以下の選択肢(1)~(4)から,分子またはイオン全体として極性をもつものを全て選び,その番号を記せ。
(1) 二酸化窒素
(2) 四酸化二窒素
(3) 三フッ化窒素
(4) アンモニウムイオン
— 30 —
第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ 次の文章を読み,航空宇宙・エレクトロニクス分野で重要な役割を果たしているポリマーPに関する問ア~カに答えよ。
ポリマーPは,以下に示す実験1~3により,モノマーM1とM2を原料として合成される。その反応の流れを図3—1にまとめた。
図3—1 実験1~3のまとめ
実験1:モノマーM1の合成
モノマーM1は,テトラメチルベンゼンの位置異性体の1つである化合物Aを出発原料として,二段階で合成される。化合物Aの溶液に過マンガン酸カリウムを加えて 40 ℃ で数時間反応させたのち,反応過程で生成した酸化マンガンの沈殿をろ過により除去してから,ろ液を酸性にすることにより,化合物Bが得られる。これを減圧下で 200 ℃ に加熱すると,2分子の水を失って,モノマーM1が生成する。
モノマーM1は,以下の性質を示す。すなわち,モノマーM1に2分子のエタノールを付加させると互いに異性体の関係にある化合物Cと化合物Dを与える。
実験2:モノマーM2の合成
モノマーM2は,図3—2に示す化合物Eを塩化アンモニウム水溶液中で鉄粉を用いて還元することにより合成できる。この反応ではモノマーM2の塩酸塩と鉄の酸化物が生成する。鉄の酸化物の沈殿をろ過により除去したのち,ろ液に濃アンモニア水溶液を加えると,モノマーM2の結晶が析出する。
— 31 —
図3—2 化合物Eの構造式
実験3:ポリマーPの合成
モノマーM1の溶液に等モル量のモノマーM2をゆっくり加えて室温で重合させる。ついで,この重合生成物を 230 ℃ に加熱すると,さらに縮合反応により水が失われてポリマーPが生成する。なお,ポリマーPに含まれる窒素原子に水素原子は結合していない(ただし,ポリマーの末端部を除く)。
〔問〕
ア テトラメチルベンゼンと呼ばれる化合物に,位置異性体はいくつあるか。
イ 化合物Aの構造式を記せ。
ウ 化合物CとDの構造式を記せ。
エ モノマーM1とモノマーM2の構造式を記せ。
オ 下記の選択肢(1)~(5)から,モノマーM2の性質として適切なものを1つ選べ。
(1) 水酸化ナトリウムと反応してナトリウム塩となる
(2) 硫酸酸性二クロム酸カリウム水溶液で還元される
(3) 次亜塩素酸カルシウム水溶液で酸化される
(4) ヨードホルム反応を示す
(5) フェーリング反応を示す
カ ポリマーPの構造式を記せ。なお,ポリマーの構造式は以下の例にならって繰り返し単位を記すこと。
— 32 —
Ⅱ 今をさかのぼること百年ほど前,東京大学にゆかりのある化学者が,生命現象を化学の視点から理解することに重要な寄与をした。次の文1と文2を読み,問キ~スに答えよ。
〔文1〕 池田菊苗は昆布のうま味成分がL-グルタミン酸ナトリウムであることを明らかにし,味覚の1つとして「うま味」を提唱した。L-グルタミン酸(アミノ酸F)は,小麦に含まれるタンパク質を加水分解することで得られるアミノ酸混合物から分離精製することができる。この方法として,アミノ酸の側鎖の構造を反映して変化する a の違いを利用する電気泳動や,溶質とイオン交換樹脂の相互作用を利用するクロマトグラフィーなどがある。アミノ酸Fをアミノ酸混合物から精製する2つの実験を行った。
実験4:図3—3に示すアミノ酸F,G,Hの混合物からアミノ酸Fを分離するためにpH b の緩衝液を用いて電気泳動を行ったところ,アミノ酸Fのみが c 側へと移動した。
実験5:図3—4に示すように,スルホ基をもつポリスチレン樹脂(イオン交換樹脂)を円筒形のカラムにつめ,アミノ酸F,G,Hの混合物の希塩酸水溶液(pH 2.0)を流した(操作1)。ついで,pH 4.0の緩衝液(操作2),pH 7.0の緩衝液(操作3),pH 11.0の緩衝液(操作4)を順に流し,それぞれの操作における溶出液を三角フラスコA~Cに集めた。フラスコの内容物を分析するとアミノ酸Fはある1つの三角フラスコにだけ含まれていた。
— 33 —
図3—3 L-グルタミン酸(アミノ酸F)およびアミノ酸G,Hの構造式(この表記法において,不斉炭素原子に結合したHは紙面の奥に,N H 2 は紙面の手前にある)
図3—4 イオン交換樹脂を用いたアミノ酸の分離
— 34 —
〔文2〕 高峰譲吉と上中啓三は,血圧を上げるなどの強い生理作用を示すホルモンであるアドレナリンの結晶化に世界で初めて成功し,医薬品として世に出した。アドレナリンはL-チロシンから4段階の化学反応(反応1~反応4)を経て体内で合成され,副腎髄質から分泌される。これらの化学反応はそれぞれ酵素E1~酵素E4によって促進され,図3—5に示すように,化合物I,J,Kを経てアドレナリンが合成される。なお,化合物I,J,Kのうち少なくとも1つは不斉炭素原子を持たない。また,酵素E2による反応2では,化合物Jに加えて d が生成する。
図3—5 生体内におけるアドレナリンの合成経路
〔問〕
キ a にあてはまる適切な用語を記せ。
ク b および c にあてはまる適切な数字および用語の組み合わせを,下記の選択肢(1)~(6)の中から選べ。
— 35 —
ケ 下線部に関して,実験5における操作1を行った後に,アミノ酸Fがイオン交換樹脂に吸着している様子を構造式で示せ。なお,イオン交換樹脂の構造式は下記のようにベンゼン環とスルホ基だけを示せばよい。また,アミノ酸の立体構造を表記する必要はない。
コ 三角フラスコBおよび三角フラスコCに含まれるアミノ酸の記号をそれぞれ記せ。なお,アミノ酸が含まれない場合には「無」と解答すること。
サ 酵素E1および酵素E3の役割は何か。それぞれについて,下記の選択肢(1)~(6)の中から適切なものを選べ。
(1) 第二級アルコールを生成する
(2) エーテル結合を生成する
(3) カルボキシル基を還元する
(4) カルボキシル基を酸化する
(5) ベンゼン環を酸化する
(6) アミノ基を酸化する
シ d にあてはまる化合物名を記せ。
ス 化合物I,J,Kのうち不斉炭素原子を持たないものはどれか。該当する化合物すべてについて,記号とともに構造式を記せ。
第1問 中和滴定の液をつくる・はかる / ファントホッフの箱 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、中和滴定に使う水酸化ナトリウム水溶液を「正しくつくって、正しく濃さを決める」話。水酸化ナトリウムは空気中の水や二酸化炭素を吸うので、はかった重さどおりの濃さにはならない。だから、①混ざった炭酸を取りのぞき、②重さを正確にはかれる酸(アミド硫酸)で濃さを決め、③その液で酢酸を滴定する、という順になっている。後半は、滴定の途中の pH と、指示薬(色で pH を知らせる物質)の選び方。
後半Ⅱは、ファントホッフの「反応箱」。1種類の分子だけを通す膜で、箱と3本のシリンダがつながっている。膜の両側で分圧(その気体だけの圧力)がそろうので、シリンダの中の濃さは、いつも箱の中の同じ分子の濃さと等しい。これが計算のかぎ。
使う考え方は、平衡定数 K = [ C ] 2 [ A ] [ B ] 2 が温度だけで決まること(化学平衡の法則)と、ルシャトリエの原理(平衡は加えられた変化をやわらげる向きに移る)。
ア 固体が空気中の水蒸気を吸って、その水に自分が溶けてしまう現象。水酸化ナトリウムは水をとても強く引きつけるので、湿った空気中に置くと表面がぬれてくる。
この性質のせいで、水酸化ナトリウムの固体をはかっても、水を吸った分だけ重さが正しくない。これが、あとで濃さを別の方法で決め直す理由の1つ。
イ 水酸化ナトリウムは空気中の二酸化炭素を吸って、一部が炭酸ナトリウムになっている:2 N a O H + C O 2 → N a 2 C O 3 + H 2 O 。
ここに水酸化バリウムを加えると、炭酸イオンがバリウムイオンと水に溶けにくい炭酸バリウムをつくって沈む。かわりに水酸化物イオンが液に残るので、液は NaOH だけになる。「沈殿がもはや生じなくなるまで」は、炭酸イオンを残らず沈めるため。
なぜ炭酸が混ざっていると困るのか。炭酸イオン C O 3 2 − は、H + を1つ受け取って H C O 3 − に、さらにもう1つ受け取って H 2 C O 3 になる、と2段階で中和される。どこまで中和されたところで止めるかは、使う指示薬の色が変わる pH で変わる。だから同じ液でも、指示薬によって「必要な量」=「濃さ」がちがって出てしまう。デモでは、Na の 10% が炭酸ナトリウムのとき、pH 4 まで中和する量と pH 9 までの量が約 5.6% ちがう。
答え N a 2 C O 3 + B a ( O H ) 2 ⟶ B a C O 3 ↓ + 2 N a O H 理由:空気の CO 2 を吸ってできた炭酸ナトリウムが混ざっていると、炭酸イオンは 2 段階で中和されるため、使う指示薬(止める pH)によって要る量が変わり、濃さが正しく決まらない。沈殿にして取りのぞき、NaOH だけの液にするため。
ウ アミド硫酸 H S O 3 N H 2 は1価の酸なので、NaOH と 1:1 で中和する。分子量は 1.0 + 32.1 + 16.0 × 3 + 14.0 + 1.0 × 2 = 97.1 。
アミド硫酸の物質量:1.444 97.1 = 1.487 × 10 − 2 mol。
これと同じ物質量の NaOH が 15.20 mL に入っていたので
c = 1.487 × 10 − 2 m o l 15.20 × 10 − 3 L ≈ 0.978 m o l / L
はじめに「約 42 g を 950 mL」で 1 mol/L をねらったが、実際は少しうすい。重さでは濃さが決まらないので、こうして決め直す。
エ 中和点まで 20 mL なので、10 mL はちょうど半分を中和したところ。酢酸の半分が酢酸イオン(酢酸ナトリウム)になり、半分は酢酸のまま残っている:[ C H 3 C O O H ] = [ C H 3 C O O − ] 。
K a = [ C H 3 C O O − ] [ H + ] [ C H 3 C O O H ]
に、分子と分母の2つの濃さが等しいことを入れると、[ H + ] = K a 。つまり p H = − log 10 K a 。
− log 10 ( 1.8 × 10 − 5 ) = 5 − log 10 1.8 。log 10 1.8 = log 10 2 × 9 10 = 0.30 + 0.96 − 1 = 0.26 なので、pH は約 4.74。酢酸と酢酸イオンが同じくらいある液は、酸や塩基を少し加えても pH が変わりにくい(緩衝液)。
答え 4.7 ( pH = − log 10 ( 1.8 × 10 − 5 ) = 4.74 )
オ 指示薬 X の電離定数の式を、pH の形に書きかえる:
p H = − log 10 K + log 10 [ A − ] [ H A ]
− log 10 ( 4.0 × 10 − 4 ) = 4 − 2 log 10 2 = 4 − 0.60 = 3.40 。
濃度の比が 0.1 から 10 のあいだなので、log 10 の項は − 1 から + 1 。pH の範囲は 3.40 ± 1 、有効数字2桁で書く。
色が変わって見えるのは、2つの形の片方が他方の10倍をこえないあいだ。この幅がどこにあるかは、指示薬の電離定数で決まる。
カ 酢酸を NaOH で中和しきった中和点では、液は酢酸ナトリウム水溶液。酢酸イオンが水と反応して(加水分解して)O H − を少しつくるので、中和点の pH は約 9 の弱い塩基性になる。滴定の曲線は、この pH 9 あたりで急に立ち上がる。
X の色が変わるのは pH 2.4〜4.4 で、中和点よりずっと酸性の側。計算すると、X が変わり終わる pH 4.4 には NaOH 約 6.2 mL(中和の約 3 割)で届いてしまい、中和点の 20 mL では色の変化が何も起きない。
だから X は中和点を知らせられない。この滴定には、pH 8〜10 で色が変わるフェノールフタレインのような指示薬が向く。
答え 適当でない。中和点では酢酸ナトリウムが加水分解して pH は約 9 の弱い塩基性になるが、X は pH 2.4〜4.4 で色が変わるので、中和点よりずっと前(中和の約 3 割)で変わり終わり、中和点がわからない。
キ K = [ C ] 2 [ A ] [ B ] 2
の値がいつも同じになる。反応物と生成物の濃さの間に成り立つこの決まりを、化学平衡の法則(質量作用の法則)と呼ぶ。下線部④の「温度のみに依存する」は、この K が温度だけで決まることを言っている。
ク 操作1で、A と B を箱に押しこむ。箱の中の A と B の濃さが急に増え、平衡がくずれる。
ルシャトリエの原理より、平衡は増えた A と B を減らす向き、つまり A と B が反応して C ができる向き(右向き)に移る。
式で見ても同じ:押しこんだ直後は [ C ] 2 [ A ] [ B ] 2 が K より小さくなっているので、分子の C が増え、分母の A・B が減る向きに反応が進む。
答え 右向き。ルシャトリエの原理:A と B を加えると、その濃度を減らす向き(A と B が反応して C ができる向き)に平衡が移る。
ケ はじめの状態と比べて、箱に出し入れしたものの合計を数える。入れたのは A 1 mol と B 2 mol、取り出したのは C 2 mol。
これは反応式 A + 2 B → 2 C の係数とちょうど同じ比。つまり、入れた A と B が全部反応して C 2 mol になり、それを取り出したのと同じことで、箱の中の A・B・C の物質量ははじめと変わらない。箱の体積と温度も同じなので、濃さもはじめと同じ。
だから平衡はどちらにも移っていない。デモで取り出す C を 1 mol にすると、箱の中は右に移ったままで止まる。「もとにもどる」のは、係数どおりの量を出し入れしたときだけ。
答え ( ⅱ ) 理由:入れた A 1 mol・B 2 mol と取り出した C 2 mol は反応式の係数どおりなので、箱の中の各物質の量ははじめと同じ。温度も体積も同じなので濃度も同じで、平衡は移動していない。
コ はじめの状態では、シリンダ A の A 1 mol(体積 V A )と箱の中の A は同じ濃さなので [ A ] = 1 V A 。同じく [ B ] = 2 V B 。
ケより、操作2の後の箱の中の濃さも、はじめと同じ。シリンダ C の中の C の濃さは箱の中の C と等しく、そこに 2 mol が入っているので [ C ] = 2 V C 。
K = ( 2 / V C ) 2 ( 1 / V A ) ( 2 / V B ) 2 = V A V B 2 V C 2
これを V C について解く。箱そのものの体積は答えに入ってこない(箱の中の量が変わっても、濃さは同じだから)。
答え [ A ] = 1 V A , [ B ] = 2 V B , [ C ] = K [ A ] [ B ] 2 = 2 V B K V A , V C = 2 [ C ] = V B V A K
サ ルシャトリエの原理より、温度を上げると、平衡は熱を吸収する向き(吸熱反応の向き)に移る。
温度を上げたら左向きに進んだので、左向きが吸熱。だから右向き(正反応)はその逆で、発熱反応。
答え 発熱反応。温度を上げると吸熱の向きに平衡が移る(ルシャトリエの原理)。左へ進んだので左向きが吸熱、右向き(正反応)は発熱。
第2問 金属を取り出す・元素のすがた 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、混ざった金属から目的の金属だけを取り出す方法を3つ。金と銀を「酸に溶けるか」で分ける方法、8-キノリノールというキレート剤(1つの分子の2か所以上で金属イオンをつかむ試薬)でインジウムを有機溶媒へ抜き出す方法(溶媒抽出)、そして銅の電解精錬。電解精錬の計算は、陽極で溶けたもの・陰極に出たもの・液の中で増減したもの を、電子の数でつなげて考える。
後半Ⅱは元素いろいろ。ヘリウムとアルゴン(貴ガス)、面心立方格子の原子間距離、オゾンができて体積が減る計算、炭素14(放射性の炭素)による年代測定、分子の形と極性(電気のかたより)。
ア 濃硝酸には銀は溶けるが、金は溶けない。ろ液には A g + が入っている。ここに少量のアンモニア水を加えると、液が弱い塩基性になって A g + が O H − と反応し、褐色の酸化銀が沈む:
2 A g + + 2 O H − ⟶ A g 2 O + H 2 O
(水酸化銀 AgOH はすぐ水を失って A g 2 O になる。)
ろ過で残った固体は金。金は硝酸にも塩酸にも溶けないが、濃塩酸と濃硝酸を 3:1 で混ぜた王水には溶ける。だから b・c は濃塩酸と濃硝酸。
答え a : A g 2 O , b , c : 濃塩酸・濃硝酸(王水)
イ 酸化銀にアンモニア水をたくさん加えると、A g + にアンモニア分子が2個配位(非共有電子対で結合)した錯イオンができて、無色の液になって溶ける。
A g + の配位数は 2 で、直線形のジアンミン銀(Ⅰ)イオン。銀鏡反応に使うアンモニア性硝酸銀水溶液の中身もこのイオン。
ウ 分配比 D の分母の [ Q − ] 水層 と、分子の [ H Q ] 有機層 を、どちらも [ H Q ] 水層 で表して消していく。
電離定数(図2—1)より K 1 = [ Q − ] [ H + ] [ H Q ] (どれも水層)なので、[ Q − ] 水層 = K 1 [ H Q ] 水層 [ H + ] 水層 。
D = K 2 [ H Q ] 水層 [ H Q ] 水層 + K 1 [ H Q ] 水層 [ H + ] 水層
[ H Q ] 水層 が約分で消え、分子と分母に [ H + ] 水層 をかけると答えの形になる。
塩基性にして [ H + ] を小さくすると、HQ が Q − (イオン)になって水層にとどまり、有機層へ行きにくくなる(D が小さくなる)。イオンは水に、電荷のない分子は有機溶媒に溶けやすい。
エ Q − は、O⁻ の酸素と、環の中の窒素(非共有電子対を持つ)の2か所で金属イオンをつかめる。I n 3 + に配位する原子の数は 6 なので、Q − は 3 個(3 × 2 = 6 )。
電荷は + 3 + ( − 1 ) × 3 = 0 で、問題文の「全体として無電荷」と合う。電荷が無いので有機層に溶けて抽出される。
構造式は、In を中心に 8-キノリノールの骨格(ベンゼン環とピリジン環がくっついた形)を3つ置き、それぞれの O と N から In へ点線を引く。O と N と In で5つの原子の輪(五員環)ができる。
答え In 3 + を中心に 3 個の 8-キノリノラートイオン(Q − )がつき、それぞれの O − と環の N の 2 か所が In と点線(配位結合)で結ばれた構造(In(Q) 3 、配位数 6、電荷 0)
オ 粗銅に入っている金属を、イオン化傾向(陽イオンへのなりやすさ)の順にならべると Al > Fe > Cu > Ag。
陽極では、銅よりイオン化傾向が大きい Al と Fe は、銅といっしょに酸化されて陽イオンとして液に溶け出す。銅よりイオン化傾向が小さい Ag は、0.30 V という低い電圧では酸化されず、まわりの銅が溶けると単体のまま陽極からはがれて下に落ちる。これが陽極泥。
陰極では、液の中でいちばん還元されやすい C u 2 + だけが銅として出る。A l 3 + ・F e 2 + は還元されずに液に残る。だから陰極の銅は純度が高い。
答え 銀(Ag)。銅よりイオン化傾向が小さいので、0.30 V の電圧では陽極で酸化されず(溶けず)、単体のまま陽極の下に落ちる。
カ 陰極に出た銅:110.0 63.5 = 1.732 mol。この銅は、陽極から溶け出した銅と、液の中にもともとあった C u 2 + の両方から来ている。
液の硫酸銅(Ⅱ)は 0.020 × 2.0 = 0.040 mol 減った。つまり陰極の銅のうち 0.040 mol は液から来た分で、陽極から溶けた銅は 1.732 − 0.040 = 1.692 mol。
陽極から溶けた銅の質量:1.692 × 63.5 = 107.5 g。陽極の減り 112.0 g のうち、残りが銅以外(溶けた Al・Fe と、陽極泥になった Ag):
112.0 − 107.5 ≈ 4.5 g
単に「陽極の減り − 陰極の増え = 2.0 g」とすると半分以下になってまちがう。Al や Fe が溶けるときに出した電子のぶん、陽極の銅は溶けずにすみ、そのかわり液の銅が陰極に出ている。液の濃さの減りが、そのずれを教えてくれる。
答え 4.5 g ( 112.0 − 63.5 × ( 110.0 63.5 − 0.020 × 2.0 ) = 4.54 )
キ 太陽系で2番目に多く、イオン化エネルギー(電子を1個取るのに必要なエネルギー)が全元素で最大なのはヘリウム。ヘリウムは貴ガスで、周期表の 18 族。
炭素の同位体(陽子の数が同じで中性子の数がちがう原子)のうち、半減期 5730 年の放射性のものは炭素14(陽子 6・中性子 8)。ふつうの炭素は炭素12。
ク 18 族・第3周期の元素はアルゴン。面心立方格子では、立方体の頂点と各面のまん中に原子がある。
いちばん近い2つの原子は、1つの面の頂点と、その面のまん中の原子。その距離は面の対角線(長さ 2 a )の半分:
d = 2 2 a = 1.41 × 0.526 2 ≈ 0.371 n m
有効数字2桁にまるめる。1つの原子のまわりに、この距離の仲間が 12 個ある、いちばんぎっしり詰まったならび方の1つ。
答え 2 2 a = 1.41 × 0.526 2 = 0.37 n m
ケ アルゴンは貴ガスで、電子配置が閉じていて(最外殻がうまっていて)ほかの原子と共有結合をつくらない。原子どうしを結びつけるのは、弱いファンデルワールス力(分子間力)だけ。だから、熱運動がとても弱い低温(80 K 以下)でしか結晶になれない。
KCl は、K + と C l − が強い静電気の力(クーロン力)で引き合うイオン結合の結晶。結びつきがずっと強いので、室温でも結晶のまま安定。同じ第3周期の元素でも、結合の種類で強さが大きくちがう。
答え アルゴンは貴ガスで、原子どうしは弱いファンデルワールス力(分子間力)でしか結びつかないので低温でしか結晶にならない。KCl は K + と Cl − が強い静電気の力で引き合うイオン結合の結晶なので、室温でも安定。
コ 3 O 2 ⟶ 2 O 3
分子が3個から2個になるので、オゾンが 2 mol できるたびに、気体全体は 1 mol 減る。
減った体積は 1.4 L で、標準状態では 1.4 22.4 = 0.0625 mol。だからできたオゾンは 0.0625 × 2 = 0.125 mol。
はじめの空気は 44.8 22.4 = 2.00 mol、反応後の気体は 2.00 − 0.0625 = 1.9375 mol。オゾンのモル分率は
0.125 1.9375 ≈ 0.0645
有効数字2桁で書く。分母を「反応前の 2.00 mol」にしないように注意。
答え 0.065 ( 減った 1.4 / 22.4 = 0.0625 m o l 、O 3 = 0.125 m o l 、全体 1.9375 m o l )
サ 炭素14 は、上空で宇宙線がつくった中性子が窒素14 にぶつかってできる(14 N + n → 14 C + p )。宇宙線が強くなると、炭素14 のでき方が増えるので、大気中の割合は増える。
化石燃料(石炭・石油)は、何百万年も前の生物からできていて、そのあいだに炭素14 は壊れてほぼ無くなっている。これを燃やして出る C O 2 には炭素14 が入っていないので、大気中の C O 2 がうすめられ、炭素14 の割合は減る。
割合がずれると年代測定もずれる。デモでは、化石燃料の炭素が 10% 混ざった大気で育った木は、約 870 年古く見える。
答え 宇宙線強度の増加:増加させる。化石燃料の使用:減少させる。
シ 分子全体の極性は、結合1本ずつのかたよりを、向きもこめて足し合わせて決まる。形が対称で打ち消しあえば極性は無い。
(1) 二酸化窒素 N O 2 :N に不対電子が1個あり、この電子も N のまわりに場所をとるので、まっすぐ(180°)にはならず折れ曲がった形になる。ただし電子1個の反発は電子対より弱いので、角度は 120° より開いて約 134°。かたよりが打ち消されず、極性がある。
(2) 四酸化二窒素 N 2 O 4 :N O 2 2つが N どうしでつながった平らで左右対称の形。打ち消しあって極性は無い。
(3) 三フッ化窒素 N F 3 :N に非共有電子対が1組あり、アンモニアと同じ三角すいの形。極性がある。
(4) アンモニウムイオン N H 4 + :4本の N−H が正四面体の形にならび、完全に打ち消しあう。イオンとしての電荷はあるが、かたより(極性)は無い。
第3問 航空宇宙のポリマー / うま味とアドレナリン 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、熱に強いポリマー P(ポリイミド)を、2つのモノマーからつくる話。M1 は、テトラメチルベンゼンのメチル基を全部 −COOH に酸化し、となりどうしの −COOH から水を取って酸無水物(−CO−O−CO− の輪)にしたもの。M2 は、図3—2 のジニトロ化合物(ベンゼン環2つが O でつながり、両はしに N O 2 )を還元してできるジアミン。
構造を決めるかぎは「となりどうしの COOH の組が2組つくれるか 」と「エタノールを付けたときに異性体がいくつできるか 」。ベンゼン環の6つの位置に置き方を書き出し、回したり裏返したりして同じになるものをまとめて数える。
後半Ⅱはアミノ酸。アミノ酸は、液の pH によって +・0・− のどれにもなれる。電荷が 0 になる pH(等電点)より酸性側では+、塩基性側では−になる。これを使って、電気泳動(電圧をかけて動かす)とイオン交換樹脂でアミノ酸を分ける。最後はチロシンからアドレナリンができる4段の反応を、分子式の差から読む。
ア ベンゼン環の6つの位置のうち4つがメチル基、2つが H。H の2つの位置関係で数えるほうが簡単で、キシレン(ジメチルベンゼン)と同じく、となり(1,2)・1つおき(1,3)・向かい(1,4)の3通り。
メチル基で書くと、1,2,3,4-、1,2,3,5-、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン。
イ A を酸化すると、メチル基4つが全部 −COOH になった B ができる。B を加熱すると「2分子の水を失って」M1 になるので、となりどうしの −COOH の組が2組、重ならずにつくれる必要がある(組1つから水1分子が取れて酸無水物の輪になる)。
1,2,3,5- の形は、となりの組が1組しかつくれないので×。残るのは 1,2,3,4- と 1,2,4,5-。
どちらかを決めるのが「エタノール2分子を付けると、異性体の C と D の2つができる」という条件(ウ)。1,2,3,4- だと異性体が3種類できてしまうので、A は 1,2,4,5- に決まる。
答え 1,2,4,5-テトラメチルベンゼン(ベンゼン環の 1・2・4・5 の位置に CH 3 )
ウ 酸無水物の輪 −CO−O−CO− にエタノールが付くと、輪が開いて、一方の C がエステル − C O O C 2 H 5 、もう一方が −COOH になる。M1 には輪が2つ(1,2 の位置と 4,5 の位置)あるので、それぞれの輪で「どちら側がエステルになるか」を選ぶ。
組み合わせは (1,4)・(1,5)・(2,4)・(2,5) の4通り(数字はエステルになる位置)。ところが、分子を回すと (1,4) と (2,5) は同じ形(エステルが向かい合う)、(1,5) と (2,4) も同じ形(エステルが1つおき)。だから異性体は2種類で、これが C と D。
同じことを 1,2,3,4- 由来の酸無水物でやると 3 種類になる。問題文の「C と D」の2つという数が、A をしぼる決め手になっている。
答え ベンゼン環の 1・2・4・5 に置換基。C:COOC 2 H 5 が 1 と 4(向かい合う)、COOH が 2 と 5。D:COOC 2 H 5 が 1 と 5(1 つおき)、COOH が 2 と 4
エ M1:1,2,4,5- の位置の −COOH が、1,2 と 4,5 でそれぞれ酸無水物の五員環(−CO−O−CO− とベンゼン環の2つの炭素)をつくったもの。分子式は C 10 H 2 O 6 (ピロメリット酸二無水物)。
M2:図3—2 の化合物 E の2つのニトロ基 − N O 2 を、鉄で還元してアミノ基 − N H 2 にしたもの。塩酸塩として得られるので、濃アンモニア水で塩基性にして、もとのアミンにもどして結晶にする。ベンゼン環2つが O でつながり、それぞれの向かい側(パラ位)に N H 2 がついた形。
答え M1:ピロメリット酸二無水物(ベンゼン環の 1,2 と 4,5 に –CO–O–CO– の五員環が 2 つ)。M2:H 2 N–C 6 H 4 –O–C 6 H 4 –NH 2 (4,4'-ジアミノジフェニルエーテル)
オ M2 はアニリンと同じ芳香族アミン(ベンゼン環に直接 N H 2 がついたもの)。アニリンは、さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)の水溶液で酸化されて赤紫色になる。M2 も同じように酸化される。
ほかの選択肢:アミンは塩基なので NaOH とは塩をつくらない((1)×)。二クロム酸カリウムは酸化剤なので、相手は「酸化される」((2) の「還元される」は×)。ヨードホルム反応は C H 3 C O − などの形、フェーリング反応はアルデヒド基が必要で、M2 にはどちらも無い((4)(5)×)。
カ 実験3の1段目(室温):M2 の − N H 2 が M1 の酸無水物の輪を開いて、アミド結合 −CO−NH− と −COOH ができる。これで M1 と M2 が交互につながった鎖になる。
2段目(230 ℃):となりにある −CO−NH− と −COOH から、さらに水が1分子取れて、N を含む五員環(イミド:−CO−N−CO−)に閉じる。問題文の「N に H が結合していない」は、この輪ができたことを言っている。
だから繰り返し単位は、M1 のベンゼン環の両側にイミドの五員環が1つずつあり、その N が M2 の − C 6 H 4 − O − C 6 H 4 − とつながった形。原子の数は M1+M2 から水2分子を引いて C 22 H 10 N 2 O 5 になる。輪がたくさんつながった硬い骨組みなので、熱に強い。
答え 繰り返し単位:M1 由来のベンゼン環(C 6 H 2 )の両側にイミドの五員環(–CO–N–CO–)が 1 つずつあり、その N が M2 由来の –C 6 H 4 –O–C 6 H 4 – とつながる。[ ] n で囲む(C 22 H 10 N 2 O 5 )
キ アミノ酸は − N H 2 (塩基)と − C O O H (酸)を持ち、液の pH で電荷が変わる。側鎖に酸の −COOH があるか(グルタミン酸)、塩基の − N H 2 があるか(リシン)で、電荷が 0 になる pH が変わる。
電荷の合計が 0 になる pH を等電点という。電気泳動で動く向きは、液の pH が等電点より低いか高いかで決まる。
ク 図3—3 の F はグルタミン酸(側鎖に COOH)、G はリシン(側鎖に N H 2 )、H はセリン(側鎖に OH で、酸でも塩基でもない)。等電点のおおよその値は F 約 3.2、H 約 5.7、G 約 9.7。
F だけを動かすには、F の等電点より高く、H・G の等電点より低い pH を選ぶ。選択肢の中では pH 4.0。このとき F は−の電荷をもち、H・G は+(H はほぼ 0)。
−の電荷をもつ F は、+の電極である陽極の側へ動く。pH 7.0 にすると H もわずかに−になって陽極側へ動き、「F だけ」にならない。
ケ 操作1の液は pH 2.0 で、F の等電点(約 3.2)よりずっと酸性。アミノ基は H + を受け取って − N H 3 + 、2つのカルボキシ基はほぼ −COOH のまま。F は全体として+の電荷をもつ。
イオン交換樹脂のスルホ基 − S O 3 H は強い酸なので、pH 2.0 でも − S O 3 − になっている。+の F の − N H 3 + と、樹脂の − S O 3 − が静電気の力で引き合って、F は樹脂にくっつく。
構造式では、樹脂のベンゼン環の − S O 3 − と、+ H 3 N − C H ( C O O H ) − C H 2 − C H 2 − C O O H を向かい合わせて書く。
答え 樹脂の –SO 3 − ⋯ + H 3 N–CH(COOH)–CH 2 –CH 2 –COOH(アミノ基が H + を受け取って陽イオンになり、スルホ基の陰イオンと引き合う)
コ 操作1(pH 2.0)では、F・G・H は全部+になって樹脂にくっつく。そのあと pH を上げていくと、等電点をこえたアミノ酸から順に+でなくなり、樹脂からはなれて流れ出す。
pH 4.0(操作2、フラスコ A):等電点 3.2 の F が−になって出る。H(5.7)・G(9.7)はまだ+で残る。
pH 7.0(操作3、フラスコ B):等電点 5.7 の H が出る。
pH 11.0(操作4、フラスコ C):等電点 9.7 の G が出る。
F が1つのフラスコ(A)にだけ入っていた、という問題文とも合う。等電点の低い順に、酸性の液で先に流れ出る。
サ 分子式の差で、各段で何が起きたかを読む。チロシンは C 9 H 11 N O 3 。
反応1(E1):I は C 9 H 11 N O 4 で、O が1つ増えただけ。アドレナリンはベンゼン環に OH が2つあるので、ここでベンゼン環に OH が1つ増えた(ベンゼン環が酸化された)と読める。だから E1 は (5)。
反応3(E3):J(C 8 H 11 N O 2 )から K(C 8 H 11 N O 3 )で、また O が1つ増える。アドレナリンでは、ベンゼン環のとなりの炭素に OH がついて、C 原子2つ(ベンゼン環と C H 2 )と結合した炭素に OH がある。これは第二級アルコール。だから E3 は (1)。
最後の反応4(E4)は、N H 2 にメチル基が1つついて N H − C H 3 になる段(C と H が1つずつ・2つずつ増える)。
シ 反応2で、I(C 9 H 11 N O 4 )から J(C 8 H 11 N O 2 )へ、C が1つと O が2つ減っている。差は C O 2 ちょうど。
アミノ酸の −COOH が C O 2 として取れる反応(脱炭酸)で、あとには − C H 2 − N H 2 が残る。
ス 不斉炭素原子は、4つの異なる原子や原子団と結合した炭素。
I(ドーパ):チロシンと同じく、COOH・N H 2 ・H・C H 2 −環 の4つがつく炭素があり、不斉炭素をもつ。
J(ドーパミン):反応2で COOH が取れたので、その炭素には N H 2 ・H・H・C H 2 がつく。H が2つあるので不斉ではない。ほかの炭素も C H 2 か環の炭素で、不斉炭素は無い。
K(ノルアドレナリン):反応3で環のとなりの C H 2 に OH がつき、その炭素が OH・H・環・C H 2 N H 2 の4つとつながるので、新しく不斉炭素になる。
だから不斉炭素をもたないのは J だけ。構造式は、ベンゼン環の 3・4 の位置に OH が2つ、1 の位置に − C H 2 − C H 2 − N H 2 。不斉炭素が反応2で消え、反応3で別の場所にまた生まれる、という流れになっている。
答え J:(HO) 2 C 6 H 3 –CH 2 –CH 2 –NH 2 (3,4-ジヒドロキシフェニル基、ドーパミン)