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化 学
第1問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。構造式は例にならって示せ。
(構造式の例)
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~カに答えよ。
天然化合物Aは,分子量286で,炭素,水素,酸素の各原子のみからなる。71.5 m g のAを完全燃焼させると,143 m g の二酸化炭素と,40.5 m g の水が生じた。Aを加水分解すると,等しい物質量の化合物Bと化合物Cが得られた。① Bの水溶液をフェーリング液に加えて加熱すると赤色沈殿が生じたが,Aの水溶液では生じなかった。Cに塩化鉄(Ⅲ)水溶液を加えると特有の呈色反応を示したが,Aでは示さなかった。
セルロースやデンプンは,多数のBが縮合重合してできた多糖である。セルロースを酵素セルラーゼにより加水分解して得られるセロビオースと,デンプンを酵素アミラーゼにより加水分解して得られるマルトースは,上の構造式の例(左側)に示したスクロースと同じ分子式で表される二糖の化合物である。
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これらの二糖は酵素X,または,酵素Yによって単糖に加水分解できる。Xはセロビオースを,Yはマルトースを加水分解して,いずれにおいてもBのみを生成したが,Xはマルトースを,Yはセロビオースを加水分解できなかった。スクロースはXにより加水分解されなかったが,Yにより加水分解され,等しい物質量のBと化合物Dが生成した。AはXにより加水分解され,BとCが生成したが,Yによる加水分解は起こらなかった。
Cを酸化することにより化合物Eが得られた。Eは分子内で水素結合を形成した構造を持ち,Eに炭酸水素ナトリウム水溶液を加えると二酸化炭素が発生した。Eと無水酢酸に濃硫酸を加えて反応させると,解熱鎮痛剤として用いられる化合物Fが得られた。
〔問〕
ア 化合物Aの分子式を示せ。
イ 化合物B,D,Fの名称を記せ。
ウ 化合物Bには鎖状構造と六員環構造が存在する。それぞれの構造における不斉炭素原子の数を答えよ。
エ セロビオース,マルトース,スクロースの中で,下線部①で示した反応により赤色沈殿を生じる化合物をすべて答えよ。また,その理由を述べよ。
オ 化合物Cの構造式を示せ。
カ 化合物Aの構造式を示せ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問キ~サに答えよ。
セルロースは地球上に最も多く存在する有機化合物であり,石油資源に頼らない次世代の化学工業を担う重要化合物と考えられている。セルロースを濃硫酸中で加熱すると,最終的に糖ではない化合物Gが主として得られる。Gは炭素,水素,酸素の各原子のみからなり,バイオ燃料,生分解性高分子,医薬品合成の原料として広く利用可能である。Gを生分解性高分子Hなどの化合物に変換するため,以下の実験1~3を行った。
実験1:水中でアセトンに過剰量の水酸化ナトリウムとヨウ素を反応させると,特有の臭気を有する黄色の化合物Iが沈殿し,反応液中に酢酸ナトリウムが検出された。アセトンの代わりにGを用いて同じ条件で反応させたところ,Iが沈殿した。続いて,Iを除いた反応液を塩酸を用いて酸性にすると,ともに直鎖状化合物であるJとKの混合物が得られた。分子式を比較するとJとKの炭素原子の数は,いずれもGより一つ少なかった。Kは不斉炭素原子を有していたが,Jは有していなかった。58.0 m g のGを水に溶かし,0.200 m o l / L の炭酸水素ナトリウム水溶液で滴定したところ,2.50 m L で中和点に達した。一方,67.0 m g のKを水に溶かし,0.200 m o l / L の炭酸水素ナトリウム水溶液で滴定したところ,5.00 m L で中和点に達した。
実験2:Jとエチレングリコール(1,2-エタンジオール)を混合して縮合重合させたところ,物質量 1 : 1 の比でエステル結合を形成しながら共重合し,平均重合度100,平均分子量 1.44 × 10 4 の高分子Hが得られた。
実験3:Kを加熱すると分子内で一分子の水が脱離し,化合物Lが得られた。Lに光照射すると,その幾何異性体Mが生成した。LとMはともに臭素と反応した。LとMをそれぞれ,より高温で長時間加熱すると,Mのみ分子内で脱水反応が起こり,化合物Nを与えた。
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〔問〕
キ 化合物Iの分子式を示せ。
ク 実験2の結果から,化合物Jの分子量を求めよ。
ケ 下の例にならい,高分子Hの構造式を示せ。
コ 化合物K,L,Nの構造式をそれぞれ示せ。ただし,鏡像異性体は考慮しなくてよい。
サ 化合物Gの構造式を答えよ。
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第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
アボガドロ定数 N A = 6.02 × 10 23 / m o l
2 = 1.41 ,3 = 1.73
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~カに答えよ。
空気は N 2 と O 2 を主成分とし,微量の希ガス(貴ガス)や H 2 O (水蒸気),C O 2 などを含んでいる。レイリーとラムゼーは,① 空気から O 2 ,H 2 O ,C O 2 を除去して得た気体の密度が ② 化学反応で得た純粋な N 2 の密度より大きいことに着目し,A r を発見した。
空気中の C O 2 は,緑色植物の光合成によって還元され,糖類に変換される。この反応に着想を得て,③ 光エネルギーによって C O 2 を C H 3 O H や H C O O H などの有用な化合物に変換する人工光合成の研究が行われている。
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〔問〕
ア 希ガスに関する以下の(1)~(5)の記述から,正しいものをすべて選べ。
(1) H e を除く希ガス原子は8個の価電子をもつ。
(2) 希ガスは,放電管に封入して高電圧をかけると,元素ごとに特有の色に発光する。
(3) H e は,全ての原子のうちで最も大きな第1イオン化エネルギーをもつ。
(4) K r 原子の電子数はヨウ化物イオン I − の電子数と等しい。
(5) A r は,H C l より分子量が大きいため,H C l よりも沸点が高い。
イ 空気に対して,以下の一連の操作を,操作1→操作2→操作3の順で行い,下線部①の気体を得た。各操作において除去された物質をそれぞれ答えよ。ただし,空気は N 2 ,O 2 ,A r ,H 2 O ,C O 2 の混合気体であるとする。
操作1:N a O H 水溶液に通じる
操作2:赤熱した C u が入った容器に通じる
操作3:濃硫酸に通じる
ウ 問イの実験で得た気体は,同じ温度と圧力の純粋な N 2 よりも密度が 0.476 % 大きかった。問イの実験で得た気体中の A r の体積百分率,および,実験に用いた空気中の A r の体積百分率はそれぞれ何%か,有効数字2桁で答えよ。ただし,空気中の N 2 の体積百分率は 78.0 % とする。
エ 問イの実験で,赤熱した C u の代わりに赤熱した F e を用いると,一連の操作後に得られた気体の密度が,赤熱した C u を用いた場合よりも小さくなった。その理由を,化学反応式を用いて簡潔に説明せよ。
オ 下線部②について,N H 4 N O 2 水溶液を加熱すると N 2 が得られる。この反応の化学反応式を記せ。また,反応の前後における窒素原子の酸化数を答えよ。
カ 下線部③について,C O 2 と H 2 O から H C O O H と O 2 が生成する反応を考える。この反応は,C O 2 の還元反応と H 2 O の酸化反応の組み合わせとして理解できる。それぞれの反応を電子 e − を用いた反応式で示せ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問キ~コに答えよ。
④ 多くの分子やイオンの立体構造は,電子対間の静電気的な反発を考えると理解できる。例えば,C H 4 分子は,炭素原子のまわりにある四つの共有電子対間の反発が最小になるように,正四面体形となる。同様に,H 2 O 分子は,酸素原子のまわりにある四つの電子対(二つの共有電子対と二つの非共有電子対)間の反発によって,折れ線形となる。電子対間の反発を考えるときは,二重結合や三重結合を形成する電子対を一つの組として取り扱う。例えば,C O 2 分子は,炭素原子のまわりにある二組の共有電子対(二つの C = O 結合)間の反発によって,直線形となる。
多数の分子が分子間力によって引き合い,規則的に配列した固体を分子結晶とよぶ。例えば,C O 2 は低温で図2—1に示す立方体を単位格子とする結晶となる。図2—1の結晶中で,C O 2 分子の炭素原子は単位格子の各頂点および各面の中心に位置し,⑤ 酸素原子は隣接する C O 2 分子の炭素原子に近づくように位置している。
図2—1 (左)C O 2 の結晶構造の模式図。(右)分子の大きさを考慮して描いた C O 2 の結晶構造。
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〔問〕
キ いずれも鎖状の H C N 分子および亜硝酸イオン N O 2 − について,最も安定な電子配置(各原子が希ガス原子と同じ電子配置)をとるときの電子式を以下の例にならって示せ。等価な電子式が複数存在する場合は,いずれか一つ答えよ。
ク 下線部④の考え方に基づいて,以下にあげる鎖状の分子およびイオンから,最も安定な電子配置における立体構造が直線形となるものをすべて選べ。
H C N N O 2 − N O 2 + O 3 N 3 −
ケ 図2—1に示す C O 2 の結晶について,最も近くにある二つの炭素原子の中心間の距離が 0.40 n m であるとする。このとき,C O 2 の結晶の密度は何 g / c m 3 か,有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。
コ 下線部⑤について,C O 2 の結晶中で,隣り合う C O 2 分子の炭素原子と酸素原子が近づく理由を,電気陰性度に着目して説明せよ。
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第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
気体定数 R = 8.31 × 10 3 P a · L / ( K · m o l )
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。
アメリカやアフリカにある塩湖の泥中に存在するトロナ鉱石は,主に炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水和水からなり,炭酸ナトリウムを工業的に製造するための原料や洗剤として用いられる。
① トロナ鉱石 4.52 g を 25 ∘ C の水に溶かし,容量を 200 m L とした。この水溶液にフェノールフタレインを加えてから,1.00 m o l / L の塩酸で滴定したところ,変色するまでに 20.0 m L の滴下が必要であった(第一反応)。次に,メチルオレンジを加えてから滴定を続けたところ,変色するまでにさらに 40.0 m L の塩酸の滴下が必要であった(第二反応)。以上の滴定において,大気中の二酸化炭素の影響は無視してよいものとする。また,ここで用いたトロナ鉱石は炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水和水のみからなるものとする。
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〔問〕
ア 第一反応および第二反応の化学反応式をそれぞれ記せ。
イ 第一反応の終点における p H は,0.10 m o l / L の炭酸水素ナトリウム水溶液と同じ p H を示した。この p H を求めたい。炭酸水素ナトリウム水溶液に関する以下の文章中の a ~ e にあてはまる式,f にあてはまる数値を答えよ。ただし,水溶液中のイオンや化合物の濃度は,例えば [ N a + ] ,[ H 2 C O 3 ] などと表すものとする。
炭酸の二段階電離平衡を表す式とその電離定数は
H 2 C O 3 ⇌ H + + H C O 3 − K 1 = a
H C O 3 − ⇌ H + + C O 3 2 − K 2 = b
である。ただし,25 ∘ C において,log 10 K 1 = − 6.35 ,log 10 K 2 = − 10.33 である。
炭酸水素ナトリウム水溶液中の物質量の関係から
[ N a + ] = c
の等式が成立する。また,水溶液が電気的に中性であることから
d
の等式が成立する。以上の式を,[ H + ] と [ O H − ] が [ N a + ] に比べて十分小さいことに注意して整理すると,[ H + ] は K 1 ,K 2 を用いて,
[ H + ] = e
と表される。よって,求める p H は f となる。
ウ 下線部①のトロナ鉱石に含まれる炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,水和水の物質量の比を求めよ。
エ 下線部①の水溶液の p H を求めよ。
オ 健康なヒトの血液は中性に近い p H に保たれている。この作用は,二酸化炭素が血液中の水に溶けて電離が起こることによる。血液に酸(H + )を微量加えた場合と塩基(O H − )を微量加えた場合のそれぞれについて,血液の p H が一定に保たれる理由を,イオン反応式を用いて簡潔に説明せよ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~コに答えよ。
火山活動は,高温高圧の地下深部で溶融した岩石(マグマ)が上昇することで引き起こされる。マグマは地下深部では液体であるが,上昇して圧力が下がると,② マグマ中の揮発性成分が気体(火山ガス)になり,マグマは液体と気体の混合物となる(図3—1)。このとき,③ マグマのみかけの密度は,気体ができる前のマグマの密度より小さくなる。この密度減少がマグマの急激な上昇と爆発的噴火を引き起こす。
図3—1 火山活動の模式図
火山ガスの一部は,マグマから分離して地中の割れ目などを通って上昇し,地表で噴気として放出される(図3—1)。火山ガスの組成(成分とモル分率)は,マグマから分離した時点で表3—1に示すとおりであり,上昇とともに式1の平衡が移動することで変化するものとする。噴気の放出口では,単体の硫黄の析出がしばしば観察される。その理由の一つとして,④ 式1において,ほぼ正反応のみが進行することが考えられる。
S O 2 ( 気 ) + 3 H 2 ( 気 ) ⇌ H 2 S ( 気 ) + 2 H 2 O ( 気 ) ( 式 1 )
表3—1 火山ガスの組成
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〔問〕
カ 下線部②に関して,地中の深さ 3 k m 付近でマグマの質量の 1.00 % に相当する H 2 O のみが気体になる場合を考える。1.00 L のマグマから生じた H 2 O (気)の体積を有効数字2桁で求めよ。答えに至る過程も記せ。ただし,このときの圧力は 8.00 × 10 7 P a ,温度は 1047 ∘ C ,H 2 O (気)ができる前のマグマの密度は 2.40 × 10 3 g / L とし,H 2 O (気)は理想気体とみなしてよいものとする。
キ 下線部③に関して,問カの条件で液体と気体の混合物となったマグマのみかけの密度は,気体ができる前のマグマの密度の何倍か,有効数字2桁で求めよ。ただし,液体と気体からなるマグマのみかけの密度は,(液体の質量+気体の質量)/(液体の体積+気体の体積)で表される。また,気体が生じたときの液体の体積変化は無視できるものとする。
ク 式1の正反応の常温常圧における反応熱は正の値をもつ。必要な熱化学方程式を記し,この値を求めよ。常温常圧における S O 2 (気),H 2 S (気),H 2 O (液)の生成熱は,それぞれ 296.9 k J / m o l ,20.2 k J / m o l ,285.8 k J / m o l とし,H 2 O (液)の蒸発熱は 44.0 k J / m o l とする。
ケ 式1の平衡の移動に関する以下の文章中の g ~ j にあてはまる語句を答えよ。ただし,h と j には「正」または「逆」のいずれかを答えよ。
圧力一定で温度が下がると,一般に g 反応の方向に平衡が移動するため,式1の h 反応がより進行する。また,温度一定で圧力が下がると,一般に気体分子の総数を i させる方向に平衡が移動するため,式1の j 反応がより進行する。
コ 下線部④の結果として,なぜ単体の硫黄を析出する反応が起こるのか,表3—1に示した成分のモル分率を参考にして,簡潔に述べよ。ただし,「その他」の成分は考慮しなくてよい。また,この硫黄が析出する反応の化学反応式を記せ。
第1問 糖と、セルロースからできる物 — 数と手がかりで形をしぼる 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは、天然の化合物 A の形を決める問題。流れは「燃やした量と分子量で分子式 → 加水分解で2つの部品 B・C に分ける → 部品の正体 → 部品のつなぎ方」。
部品の1つ B はブドウ糖(グルコース)。つなぎ方の手がかりは2種類の酵素で、酵素はつなぎ目の形(α か β か)を見分けて、合う形しか切れない 。二糖が切れる・切れないの結果から、X と Y がどちらの形を切る酵素かを読みとり、それを A に当てはめる。
Ⅱは、セルロースからできる化合物 G を、ヨードホルム反応で2つの酸 J・K に分け、滴定(何価の酸か・分子量)と高分子の分子量、加熱と光で起きる形の変化から、それぞれの形を決める問題。
どちらも、「数(分子量・何価か・炭素の数)でしぼる」と「反応のくせで形を決める」の組み合わせで進む。
ア 燃やすと、C は全部 C O 2 に、H は全部 H 2 O になる。それぞれの中の C と H の質量を取り出す:
C : 143 × 12 44 = 39 m g H : 40.5 × 2.0 18 = 4.5 m g
残りが O で、71.5 − 39 − 4.5 = 28 m g 。
A は 71.5 ÷ 286 = 0.250 m m o l だったので、A 1個あたりの原子の数は
C : 39 / 12 0.250 = 13 H : 4.5 / 1.0 0.250 = 18 O : 28 / 16 0.250 = 7
燃やした量からは原子の数の比しか分からない。「分子量 286」があるので、ちょうど何個ずつかまで決まる。
イ B:デンプンもセルロースも B がたくさんつながったもので、B の水溶液はフェーリング液を還元する。B はブドウ糖(グルコース)。
D:スクロースは、ブドウ糖と果糖(フルクトース)がつながった二糖。Y で切るとブドウ糖(B)と D が同じ量できるので、D は果糖。
F:C を酸化した E は、N a H C O 3 で C O 2 を出す(カルボン酸)、分子の中で水素結合をつくる(− O H と − C O O H がとなりあう)。無水酢酸で − O H をアセチル化してできる解熱鎮痛剤は、アセチルサリチル酸(アスピリン)。E はサリチル酸。
答え B グルコース(ブドウ糖) 、 D フルクトース(果糖) 、 F アセチルサリチル酸
ウ 鎖状のブドウ糖は C H O − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C H 2 O H 。1番の炭素(C H O )は O と二重結合でつながっていて、手の先は H・O・2番の炭素の3つしかない(平らな形で、4つのちがうものが立体的につく形にならない)。6番の炭素(C H 2 O H )には H が2つついている。どちらも不斉炭素ではない。2〜5番の4つが不斉炭素。
六員環になると、5番の炭素の − O H の O が1番の炭素とつながる。1番の炭素には H・O H ・環の O・2番の炭素の4つがちがうものとしてつき、新しく不斉炭素になる 。だから環では1つふえる。
α 型と β 型は、この新しくできた1番の炭素の − O H の向きのちがい。
エ フェーリング液を還元して赤い沈殿(C u 2 O )をつくるには、水の中で環が開いてアルデヒド基 (− C H O )が出てこなければならない。ブドウ糖の環が開けるのは、1番の炭素(− O H と環の O が両方ついた所、ヘミアセタール構造)が、ほかの糖とのつなぎ目に使われずに残っているとき。
セロビオース(β でつながる)とマルトース(α でつながる)は、どちらも「片方の1番の炭素」ともう片方の4番の炭素でつながっている。4番の側の糖の1番の炭素は空いているので、そこから環が開く。
スクロースは、ブドウ糖の1番と果糖の2番(果糖で環を開くのに必要な所)どうしでつながっているので、どちらの環も開けない。だから赤い沈殿ができない。
答え セロビオース、マルトース。どちらも片方のグルコースの 1 位の炭素(ヘミアセタール構造)が結合に使われずに残っていて、水溶液中で環が開いてアルデヒド基(ホルミル基)ができるから。スクロースはグルコースの 1 位とフルクトースの 2 位どうしで結合しているので環が開けない
オ E はサリチル酸(ベンゼン環のとなりどうし=オルト位に − O H と − C O O H )。C は酸化されて E になったので、E の − C O O H は、C では酸化される前の形(第一級アルコール − C H 2 O H )だったと考えられる。
C は塩化鉄(Ⅲ) で色がつくので、フェノール性の − O H (ベンゼン環に直接ついた − O H )をもっている。これはそのまま E にも残る。
原子の数でも確かめる。C 13 H 18 O 7 に水を1つ足して、ブドウ糖 C 6 H 12 O 6 を引くと、C は C 7 H 8 O 2 。オルト位に − O H と − C H 2 O H をもつベンゼン環の化学式と合う。
答え ベンゼン環のオルト位に − O H と − C H 2 O H (サリチルアルコール、 o -HO-C 6 H 4 -CH 2 OH)
カ まず酵素の性質を決める。X はセロビオース(β でつながる)を切り、マルトース(α)を切れない。Y はその反対で、α のつなぎ目のスクロースも切れる。だから X は β のつなぎ目、Y は α のつなぎ目だけを切る 。A は X だけで切れるので、A のブドウ糖は β でつながっている。
次に、どこでつながっているか。A はフェーリング液を還元しないので、ブドウ糖の1番の炭素はつなぎ目に使われている。A は塩化鉄(Ⅲ) で色がつかないので、C のフェノール性の − O H もつなぎ目に使われている。
だから A は、β-グルコースの1番の炭素と、C のフェノールの O がつながったもの。− C H 2 O H はそのまま残る。ヤナギの皮にふくまれるサリシンという物質で、昔からの解熱の薬がアスピリンにつながった話の出発点になっている。
答え β-グルコース(六員環)の 1 位の炭素が O を介して C のベンゼン環(フェノール性 OH の位置)に結合したもの(サリシン)。オルト位に − C H 2 O H
キ ヨードホルム反応は、C H 3 C O − の形をもつ物質に、ヨウ素と水酸化ナトリウムを加えると起きる。C H 3 の H が3つとも I に置きかわり、そこで切れて、黄色いヨードホルムが沈む。残りはカルボン酸の塩になる(アセトンなら酢酸ナトリウム)。
特有のにおいをもつ黄色の沈殿 I は、このヨードホルム。
ク H は、J とエチレングリコール H O − C H 2 C H 2 − O H (分子量 62)が 1:1 で、エステル結合をつくりながら交互につながった高分子。エステル結合が1つできるごとに水が1分子とれる。
くり返しの1単位(J 1個+エチレングリコール1個)では、つなぎ目が2つできて水が2分子とれるので、1単位の式量は
M J + 62 − 2 × 18
平均重合度 100 で平均分子量 1.44 × 10 4 なので、1単位は 144 。これから M J が出る。
高分子の両はしの H と OH(合わせて 18)はここでは無視している。重合度が 100 もあれば、その影響は小さい。
ケ J は分子量 118 で、G より炭素が1つ少なく(G が炭素5個ならば4個)、エチレングリコールとエステルをつくるので両はしに − C O O H をもつ。炭素4個で両はしが − C O O H 、不斉炭素なし、分子量 118 に合うのはコハク酸 H O O C − C H 2 − C H 2 − C O O H 。
コハク酸の − C O O H とエチレングリコールの − O H から水がとれて − C O − O − ができる。これを交互にならべたものを、例にならってくり返しの単位でかっこにくくって書く。
答え [ − C O − C H 2 − C H 2 − C O − O − C H 2 − C H 2 − O − ] n
コ K:67.0 mg の K を中和するのに N a H C O 3 が 0.200 × 5.00 = 1.00 m m o l 要った。K が1価の酸だとすると分子量は 67 で、炭素4個の酸にはなれない(C だけで 48、− C O O H で 45)。だから 2価の酸 で、分子量は
67.0 1.00 / 2 = 134
炭素4個・− C O O H 2つ・不斉炭素あり・分子量 134 から、コハク酸の C H 2 の H 1つを − O H にかえたリンゴ酸になる。
L・M:K を熱すると、− O H ととなりの H が水として抜けて C = C ができる(臭素と反応するのはこのため)。H O O C − C H = C H − C O O H にはシス形とトランス形がある。シス形は2つの − C O O H が同じ側にあって近いので、加熱すると分子の中で水がとれて環(酸無水物)になれる。トランス形は遠くてなれない。
さらに熱すると M だけが脱水したので、M がシス形(マレイン酸)、L がトランス形(フマル酸) 。N は、マレイン酸から水がとれた無水マレイン酸(五員環)。
答え K : H O O C − C H ( O H ) − C H 2 − C O O H (リンゴ酸) , L : トランス形の H O O C − C H = C H − C O O H (フマル酸) , N : 無水マレイン酸( C H = C H の両はしの C=O が O でつながった五員環)
サ G は 58.0 mg を中和するのに N a H C O 3 が 0.200 × 2.50 = 0.500 m m o l 要った。1価の酸だとすると分子量は 58.0 ÷ 0.500 = 116 。
G はヨードホルム反応をするので C H 3 C O − をもち、反応で炭素が1つ(ヨードホルムになる C)減って J・K になる。C H 3 C O − の C H 3 がとれた所は − C O O H になる。J(コハク酸)の片方の − C O O H を C H 3 C O − にもどすと
C H 3 − C O − C H 2 − C H 2 − C O O H
で、炭素5個・分子量 116、1価の酸。すべての手がかりと合う。これはレブリン酸と呼ばれ、セルロースから作れる原料物質として注目されている。
答え C H 3 − C O − C H 2 − C H 2 − C O O H (レブリン酸)
第2問 アルゴンの発見と、分子の形・結晶 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは、アルゴンが見つかった実験の話。空気から O 2 ・H 2 O ・C O 2 を取りのぞけば N 2 だけが残るはずなのに、化学反応で作った純粋な N 2 よりわずかに重かった (0.476%)。この小さな差から、まだ知られていなかった重い気体(Ar)がまざっていることに気づいた。
気体の密度は、同じ温度・圧力なら平均の分子量に比例する。「N₂(28)に重い Ar(39.9)が少しまざると、平均がどれだけ上がるか」を逆に解けば、Ar の割合が出る。
後半は酸化数(原子がもっている電子の多い・少ないを表す数)と、電子のやりとりで書く反応式(半反応式)。
Ⅱは、電子対どうしの反発で分子の形を考える方法(電子対は、たがいにできるだけ遠くはなれる向きに広がる)と、C O 2 の結晶(面心立方格子)の密度、それに分子の中の電気のかたよりの話。
ア (1) 貴ガスは、ほかの原子と結合をつくらないので、高校の決まりでは価電子(結合に使う電子)の数を 0 とする。最も外側の電子は8個だが、価電子が8個というのは誤り。
(2) ネオンサインのように、放電管の中で元素ごとに決まった色に光る。正しい。
(3) 第1イオン化エネルギー(電子を1個とるのに要るエネルギー)は、原子の中で He がいちばん大きい。正しい。
(4) Kr の電子は 36 個。I は原子番号 53 なので I − は 54 個。等しくない。I⁻ と同じ電子数なのは、同じ周期の貴ガスの Xe。
(5) 分子量は Ar(39.9)のほうが HCl(36.5)より大きいが、HCl は極性分子(電気のかたよりがある分子)で、分子どうしが引き合う力が強い。沸点は HCl のほうが高い。
イ それぞれの入れ物で、何が反応して取りのぞかれるかを考える。
操作1:NaOH 水溶液は塩基なので、酸性の気体 C O 2 を吸収する(C O 2 + 2 N a O H → N a 2 C O 3 + H 2 O )。ただし水溶液に通すので、出てくる気体には水蒸気がまざる。
操作2:赤熱した銅は、O 2 と反応して酸化銅(Ⅱ) になる(2 C u + O 2 → 2 C u O )。
操作3:濃硫酸は水を強く吸う(乾燥剤)ので、H 2 O がのぞかれる。水をいちばん最後にのぞくのは、操作1で水蒸気がまた入ってしまうから。
ウ 残った気体は N 2 と Ar だけ。Ar の体積の割合(=物質量の割合)を x とすると、平均の分子量は 28 ( 1 − x ) + 39.9 x 。これが N 2 の 1.00476 倍なので
28 ( 1 − x ) + 39.9 x = 28 × 1.00476
11.9 x = 28 × 0.00476
空気の中では、Ar と N 2 の比は同じまま、N 2 が 78.0 % 。だから空気中の Ar は
78.0 × x 1 − x %
Ar が 100 個に1個ほどまざるだけで、0.5% 重くなる。レイリーはこの小さな差を見のがさなかった。
エ 銅は O 2 としか反応しないが、赤熱した鉄は水蒸気とも反応して水素を出す:
3 F e + 4 H 2 O ⟶ F e 3 O 4 + 4 H 2
操作1の NaOH 水溶液を通ったときに、気体に水蒸気がまざっている。これが操作2の鉄と反応して H 2 になる。H 2 は濃硫酸には吸われないので、最後まで残る。
H 2 の分子量は 2 で、N 2 (28)よりずっと小さい。少しでもまざると平均の分子量が下がり、密度が小さくなる。
答え 3 F e + 4 H 2 O ⟶ F e 3 O 4 + 4 H 2 。NaOH 水溶液を通したときに入った水蒸気が赤熱した Fe と反応して H 2 ができ、 H 2 は濃硫酸で除かれずに残る。 H 2 は分子量がとても小さいので密度が小さくなる
オ 亜硝酸アンモニウム N H 4 N O 2 を熱すると、N 2 と水ができる。N は2個、H は4個、O は2個なので、N 2 が1・H 2 O が2で原子の数がそろう。
酸化数は、H を + 1 、O を − 2 として、イオンの電荷に合うように決める。N H 4 + では x + 4 = + 1 で x = − 3 。N O 2 − では x − 4 = − 1 で x = + 3 。単体の N 2 では 0。
− 3 の N が電子を3個わたし、+ 3 の N がそれを受けとって、どちらも 0 になる。1つの物質の中で、酸化と還元が同時に起きている。
答え N H 4 N O 2 ⟶ N 2 + 2 H 2 O 。N の酸化数: N H 4 + 中 − 3 、 N O 2 − 中 + 3 → N 2 中 0
カ 還元(電子を受けとる):C O 2 の C の酸化数は + 4 、H C O O H では + 2 。C が電子を2個受けとる。O の数はどちらも2なので、H を H + で2個足すと、原子の数と電荷がそろう:
C O 2 + 2 H + + 2 e −
酸化(電子をわたす):水の O(− 2 )が O 2 (0)になる。O 2 1個には O が2個いるので水が2個要り、H は H + として4個出てくる。電荷をそろえるには電子が4個出ていく。
人工光合成では、光のエネルギーを使って、水から取り出した電子を C O 2 にわたしている。
答え 還元: C O 2 + 2 H + + 2 e − ⟶ H C O O H 酸化: 2 H 2 O ⟶ O 2 + 4 H + + 4 e −
キ 電子式は、まず価電子(いちばん外側の電子)の合計を数え、各原子のまわりが8個(H は2個)になるように配る。
H C N :価電子は H 1・C 4・N 5 で 10 個。H と C の間に共有電子対1組。C のまわりを8個にするには、C と N の間に3組(三重結合)。N には残りの1組が非共有電子対(結合に使われていない電子のペア)として残る。
N O 2 − :価電子は N 5・O 6×2 に、マイナスの電荷の分の1個を足して 18 個。O=N−O のように、N と片方の O は二重結合、もう片方の O とは単結合にすると、どの原子のまわりも8個になる。N には非共有電子対が1組、二重結合の O に2組、単結合の O に3組。全体を [ ] でかこみ、右上に − をつける。二重結合をどちらの O にしても同じ(等価な電子式)。
答え H C N :H と C の間に共有電子対 1 組、C と N の間に 3 組、N に非共有電子対 1 組(H:C:::N:)。 N O 2 − :O=N−O − の形で、N に非共有電子対 1 組、二重結合の O に 2 組、単結合の O に 3 組(全体を [ ] でかこみ −)
ク 形は、真ん中の原子のまわりにある「電子対の組」の数で決まる。二重結合・三重結合は1組と数え、非共有電子対も1組と数える。組が2つなら反対向きに広がって直線形、3つなら平面の三角形の向き(120°)で、そのうち1つが非共有電子対なら折れ線形。
H C N :C のまわりは単結合と三重結合で2組 → 直線形。
N O 2 − :キで見たとおり N に非共有電子対が1組あり、全部で3組 → 折れ線形。O 3 も同じく3組で折れ線形。
N O 2 + :価電子は 16 個で、O=N=O と二重結合2つにすると N に非共有電子対が残らず2組 → 直線形。N 3 − も価電子 16 個で、N=N=N の2組 → 直線形(C O 2 と同じ形)。
N O 2 + と N O 2 − は電子2個しかちがわないが、その2個が非共有電子対になって、直線形が折れ線形に変わる。
ケ C は立方体の頂点と面の中心にあるので、面心立方格子。単位格子の中の分子の数は
8 × 1 8 + 6 × 1 2 = 4
いちばん近い2つの C は、頂点と、となりの面の中心。その距離は面の対角線(2 a )の半分なので
2 2 a = 0.40 n m ⟹ a = 0.40 × 2 n m
密度は「単位格子の中の質量 ÷ 単位格子の体積」。C O 2 1個の質量は 44.0 6.02 × 10 23 g 、1 n m = 10 − 7 c m に直して計算する:
ρ = 4 × 44.0 6.02 × 10 23 × ( 0.564 × 10 − 7 ) 3
同じいちばん近い距離でも、面心立方はすきまが少なく、単純立方の 2 倍つまっている。
答え a = 0.40 × 2 = 0.564 n m , ρ = 4 × 44.0 6.02 × 10 23 × ( 0.564 × 10 − 7 ) 3 ≈ 1.6 g / c m 3
コ O は C より電気陰性度(電子を引きよせる強さ)が大きい。だから C=O 結合の電子は O のほうにかたより、C はわずかに正、O はわずかに負 の電気をおびている。
C O 2 は直線形なので、分子全体では2つのかたよりが打ち消し合い、極性はない。それでも、分子の中の場所ごとには電気のかたよりが残っている。
となりの分子どうしでは、負の O と正の C が静電気の力で引き合う。そのため結晶の中では、O が、となりの分子の C に近づく向きに分子がならぶ。
答え O の電気陰性度は C より大きいので、C=O 結合の C はわずかに正、O はわずかに負に帯電している。分子全体では打ち消し合っていても、となりの分子の O(負)と C(正)が静電気的に引き合うので近づく
第3問 トロナ鉱石の滴定と、マグマ・火山ガス 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは、トロナ鉱石(炭酸ナトリウム N a 2 C O 3 ・炭酸水素ナトリウム N a H C O 3 ・水和水の混ざったもの)を塩酸で滴定する問題。炭酸イオン C O 3 2 − は H + を2段階で 受けとる:まず C O 3 2 − → H C O 3 − (第一反応、フェノールフタレインの色が消える所まで)、次に H C O 3 − → H 2 O + C O 2 (第二反応、メチルオレンジの色が変わる所まで)。
2つの区間の塩酸の量をくらべると、はじめに C O 3 2 − と H C O 3 − がいくつずつあったかが分かる。後半は、炭酸の電離平衡の式から pH を出す計算と、血液の pH が変わりにくいしくみ(緩衝作用)。
Ⅱは火山の話。マグマが上がって圧力が下がると、中の水が気体になって体積がふくらみ、みかけの密度が下がる(だから急に上がって噴火する)。火山ガスの中では S O 2 + 3 H 2 ⇌ H 2 S + 2 H 2 O の平衡が冷えるにつれて右へ動き、最後に硫黄が出てくる。
ア 第一反応:N a 2 C O 3 の C O 3 2 − が H + を1つ受けとって H C O 3 − になる。N a H C O 3 と N a C l ができる。この終わりの液は弱い塩基性で、フェノールフタレインの赤い色が消えるのがここ。
第二反応:H C O 3 − がもう1つ H + を受けとって炭酸 H 2 C O 3 になり、これが水と二酸化炭素に分かれる。液は弱い酸性になり、メチルオレンジの色が変わる。
C O 3 2 − は H C O 3 − より H + を強く引きつけるので、第一反応が全部終わってから第二反応が始まる。
答え 第一: N a 2 C O 3 + H C l ⟶ N a H C O 3 + N a C l 第二: N a H C O 3 + H C l ⟶ N a C l + H 2 O + C O 2
イ a 電離定数は、「右側(電離してできたもの)の濃さのかけ算 ÷ 左側(電離する前)の濃さ」。1段目は H 2 C O 3 から H + と H C O 3 − ができる反応なので、その形で書く。
log 10 K 1 = − 6.35 なので K 1 = 10 − 6.35 。1段目の H + は、2段目よりずっと出やすい。
イ b 2段目は、H C O 3 − から H + と C O 3 2 − ができる反応。同じように「右側のかけ算 ÷ 左側」で書く。
K 2 = 10 − 10.33 で、K 1 の約1万分の1。マイナスの電荷をもつ H C O 3 − からは、H + がはなれにくい。
イ c N a H C O 3 を水にとかすと、Na と炭酸の仲間(C をふくむもの)は1:1 で入っている。炭酸の仲間は液の中で H 2 C O 3 ・H C O 3 − ・C O 3 2 − の3つの形に分かれているが、C の合計は N a + と同じ。だから [ N a + ] は、3つの形の濃さの合計に等しい(物質量の保存)。
答え [ H 2 C O 3 ] + [ H C O 3 − ] + [ C O 3 2 − ]
イ d 液全体では、プラスの電荷とマイナスの電荷の量が等しい。プラスのイオンは N a + と H + 。マイナスのイオンは H C O 3 − 、C O 3 2 − 、O H − 。
C O 3 2 − は1個でマイナス2つ分の電荷をもつので、濃さに 2 をかけて足すのがポイント。
答え [ N a + ] + [ H + ] = [ H C O 3 − ] + 2 [ C O 3 2 − ] + [ O H − ]
イ e イ c とイ d の式から [ N a + ] を消す。[ H + ] と [ O H − ] は小さいので落とすと
[ H 2 C O 3 ] + [ H C O 3 − ] + [ C O 3 2 − ] = [ H C O 3 − ] + 2 [ C O 3 2 − ]
[ H 2 C O 3 ] = [ C O 3 2 − ]
つまり、H C O 3 − が H + を受けとる分(H 2 C O 3 になる)と、H + をはなす分(C O 3 2 − になる)が同じ。
K 1 と K 2 の式を使って、この両側を [ H C O 3 − ] で書きなおすと
[ H + ] [ H C O 3 − ] K 1 = K 2 [ H C O 3 − ] [ H + ]
イ f p H = − log 10 [ H + ] = 6.35 + 10.33 2
N a H C O 3 の液の pH は、濃さに関係なく p K 1 と p K 2 のちょうど真ん中になる。
ただし、これは「[ H + ] と [ O H − ] が [ N a + ] よりずっと小さい」ときの話。0.001 m o l / L までうすめると 8.30、0.0001 m o l / L では 8.09 と、真ん中から外れていく。
ウ 第一反応の 20.0 mL で H + を 1.00 × 20.0 = 20.0 m m o l 使った。これは C O 3 2 − を H C O 3 − にするための分なので、N a 2 C O 3 は 20.0 m m o l 。
第二反応の 40.0 mL(40.0 m m o l )は、液の中の H C O 3 − 全部を中和した分。そのうち 20.0 m m o l は第一反応でできたもの。残りの 20.0 m m o l が、はじめから入っていた N a H C O 3 。
水和水は質量の残りから出す。N a 2 C O 3 (式量 106)が 2.12 g 、N a H C O 3 (式量 84)が 1.68 g で、合計 3.80 g 。残りの 4.52 − 3.80 = 0.72 g が水で、0.72 ÷ 18 = 0.040 m o l 。これで3つの物質量の比が出る。
答え N a 2 C O 3 : N a H C O 3 : H 2 O = 1 : 1 : 2
エ はじめの液には、ウのとおり C O 3 2 − と H C O 3 − が同じ量 ずつ入っている。K 2 の式を [ H + ] について解くと
[ H + ] = K 2 × [ H C O 3 − ] [ C O 3 2 − ]
2つが同じなので [ H + ] = K 2 、pH は p K 2 にそのまま等しい。
弱酸とその塩が同じ量ずつある液は、緩衝液(pH が変わりにくい液)になっている。滴定曲線では、塩酸を入れる前(0 mL)の点がこの pH。
第一反応の半分(塩酸 10.0 mmol)の所では、C O 3 2 − 10.0・H C O 3 − 30.0 mmol なので p H = 10.33 + log 10 10.0 30.0 ≈ 9.85 で、はじめより低い。N a 2 C O 3 だけの液を滴定したときは第一反応の半分で p K 2 になるが、この液ははじめから H C O 3 − も入っているので、そうはならない。
オ 血液には、C O 2 (水にとけて H 2 C O 3 の形)と H C O 3 − が両方ある。この2つがペアで緩衝液になっている。
酸(H + )を加えると、H C O 3 − が H + を受けとって H 2 O と C O 2 になる。加えた H + は液の中に残らない。
塩基(O H − )を加えると、C O 2 が O H − と反応して H C O 3 − になる。加えた O H − は液の中に残らない。
どちらの場合も、変わるのは [ H C O 3 − ] と [ C O 2 ] の比が少しだけ。pH はこの比で決まる(エの式と同じ形)ので、ほとんど変わらない。水なら pH 7.00 が 3.00 まで下がる量の酸を入れても、血液のかわりの液では 0.3 ほどしか下がらない。さらに体は息で C O 2 を出して量を保つので、実際の動きは 0.02 ほどになる。
答え 酸: H + + H C O 3 − ⟶ H 2 O + C O 2 (加えた H + が HCO 3 − と反応して消える) 塩基: O H − + C O 2 ⟶ H C O 3 − (加えた OH − が CO 2 (H 2 CO 3 )と反応して消える)。どちらも [HCO 3 − ]/[CO 2 ] の比が少し変わるだけなので pH はほとんど変わらない
カ マグマ 1.00 L の質量は 2.40 × 10 3 g 。その 1.00 % が水なので 24.0 g 、物質量は
n = 24.0 18.0 = 1.33 m o l
温度を絶対温度に直すと 1047 + 273 = 1320 K 。理想気体の状態方程式 p V = n R T から
V = n R T p = 1.33 × 8.31 × 10 3 × 1320 8.00 × 10 7
地下 3 km は大気の約 800 倍の圧力なので、水蒸気はぎゅっと縮んでいて、マグマの体積の2割にもならない。
答え n = 2.40 × 10 3 × 0.0100 18.0 = 1.33 m o l , V = n R T P = 1.33 × 8.31 × 10 3 × 1320 8.00 × 10 7 ≈ 0.18 L
キ 水が気体になっても、全体の質量は変わらない(2.40 × 10 3 g のまま)。変わるのは体積で、液体の 1.00 L に、カの気体の体積が足される。
みかけの密度は「質量 ÷ 体積」なので、はじめの密度との比は
2.40 × 10 3 / ( 1.00 + 0.183 ) 2.40 × 10 3 / 1.00 = 1.00 1.00 + 0.183
浅くなって圧力が下がるほど、同じ量の水蒸気でも体積が大きくなり、みかけの密度はどんどん下がる。たとえば 1.0 × 10 6 P a まで上がると水蒸気は 14.6 L になり、密度ははじめの 0.064 倍。これが一気に上がって爆発する理由。
ク 生成熱から、4本の熱化学方程式を書く(単体から 1 mol できるときに出る熱):
S (固) + O 2 (気) = S O 2 (気) + 296.9 k J
H 2 (気) + S (固) = H 2 S (気) + 20.2 k J
H 2 (気) + 1 2 O 2 (気) = H 2 O (液) + 285.8 k J
H 2 O (液) = H 2 O (気) − 44.0 k J
式1は気体の水ができるので、水の生成熱は 285.8 − 44.0 = 241.8 k J / m o l (気体)として使う。
反応熱は「できたものの生成熱の合計 − 反応するものの生成熱の合計」(単体の H 2 は 0):
Q = ( 20.2 + 2 × 241.8 ) − 296.9
答え S (固) + O 2 = S O 2 (気) + 296.9 k J , H 2 + S (固) = H 2 S (気) + 20.2 k J , H 2 + 1 2 O 2 = H 2 O (液) + 285.8 k J , H 2 O (液) = H 2 O (気) − 44.0 k J ⇒ 206.9 k J / m o l
ケ ルシャトリエの原理(平衡は、加えた変化をやわらげる向きに動く)を使う。
温度を下げると、熱を出す向き、つまり発熱 反応の向きに動く。クで式1の正反応は発熱(反応熱が正)なので、正 反応が進む。
圧力を下げると、気体の分子の数を増加 させる向きに動く。式1は左が 1 + 3 = 4 分子、右が 1 + 2 = 3 分子で、正反応は分子を減らす。だから逆 反応が進む。
火山ガスは上がってくるあいだに冷えるし圧力も下がり、この2つは逆の向きにはたらく。下線部④のように正反応が進むのは、冷えるほうが効いているから。おおよその値で計算すると、1気圧・1047 ℃ では式1は逆向きに進み、400 ℃ まで冷えると H 2 の 99% 以上が反応する。
コ 式1では、S O 2 1分子に H 2 が3分子要る。表3—1では H 2 が 0.45% しかなく、S O 2 (0.87%)の3倍の 2.61% よりずっと少ない。だから正反応が進むと、H 2 が先になくなり 、S O 2 は使いきられずにたくさん残る。
そのかわり、正反応で H 2 S がふえる。噴気の出口では、残った S O 2 とふえた H 2 S が出会って反応し、単体の硫黄が出る。
S O 2 の S は酸化数 + 4 、H 2 S の S は − 2 。S O 2 1分子が電子を4個受けとり、H 2 S 1分子が2個わたすので、S O 2 1 に H 2 S 2 で反応し、S は全部 0(単体)になる。
もし H 2 が S O 2 の3倍より多ければ、S O 2 がほぼなくなって、硫黄はほとんどできない。
答え 正反応が進むと H 2 が使われるが、H 2 (0.45\%)は SO 2 の 3 倍(2.61\%)より少ないので H 2 が先になくなり、SO 2 が多く残る。一方 H 2 S は増える。残った SO 2 と増えた H 2 S が反応して硫黄が出る: S O 2 + 2 H 2 S ⟶ 3 S + 2 H 2 O