— 24 —
化 学
第1問
次の文章を読み,問ア~ケに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。構造式を示す場合は,例にならって,不斉炭素原子上の置換様式(紙面の上下)を特定しない構造式で示すこと。
フェノールでは,様々な置換反応がベンゼン環上の特定の位置で起こりやすい。この置換反応は,多様な医薬品や合成樹脂を合成する際に利用される。そこで,フェノールから下記の化合物A,B,CおよびDを経由して,医薬品と関連する化合物Eを合成する計画を立て,以下の実験1~8を行った。
実験1:フェノールに,希硝酸を作用させると,互いに同じ分子式を持つAと化合物Fの混合物が得られた。この混合物から,AとFを分離した。
— 25 —
実験2:フェノールに,濃硝酸と濃硫酸の混合物を加えて加熱し,十分に反応させると,化合物Gが得られた。AおよびFを,それぞれ同条件で反応させても,Gが得られた。
実験3:Aを濃塩酸中で鉄と処理した。その後,炭酸水素ナトリウム水溶液を加えたところ,二酸化炭素が気体として発生しBが得られた。
実験4:Bに,水溶液中でXを作用させるとCが得られた。
実験5:Bに,希硫酸中でXを作用させると,Cと異なる化合物Hが得られた。Hは,塩化鉄(Ⅲ)水溶液で呈色しなかった。
実験6:Hに,Yの水溶液を作用させた後に,希硫酸を加えたところ,Cと酢酸が得られた。Cと酢酸の物質量の比は, であった。
実験7:Cに,ニッケルを触媒としてZを作用させると,Dが得られたが,未反応のCも残った。そこでCとDの混合物のエーテル溶液を分液ロートに移し,Yの水溶液を加えてよく振った。水層とエーテル層を分離した後に,エーテル層を濃縮してDを得た。
実験8:Dに,硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液を作用させると,目的とするEが得られた。
フェノールとホルムアルデヒドの重合反応により,電気絶縁性に優れるフェノール樹脂が合成できる。塩基性触媒存在下にて処理すると,フェノールとホルムアルデヒドは,付加反応と縮合反応を連続的に起こし,フェノールの特定の位置が置換されたレゾールが生成する。レゾールを加熱すると,フェノール樹脂が得られる。これに関連する以下の実験9~11を行った。
実験9:フェノールとホルムアルデヒドを物質量の比 で重合し,さらに加熱すると,フェノール樹脂が得られた。
実験10:実験9で得られたフェノール樹脂を完全燃焼させたところ,水と二酸化炭素が生成した。
実験11:示性式 で表されるクレゾールは,三種類の異性体を持つ。塩基性触媒存在下,クレゾールとホルムアルデヒドの重合反応により三種類のクレゾールに対応する生成物を得た。三種類の生成物をそれぞれ加熱すると,一つの生成物のみがフェノール樹脂と同様の硬い樹脂になった。
— 26 —
〔問〕
ア 化合物Aの構造式を示せ。
イ 化合物Gの構造式を示せ。
ウ 化合物Hの構造式を示せ。
エ 化合物Dの構造式を示せ。また,Dには立体異性体が,いくつ存在しうるか答えよ。
オ X,YおよびZの物質名をそれぞれ書け。
カ 実験7の分液操作でCとDが分離できる理由を述べよ。
キ 下線部①のレゾールの例としてフェノール2分子とホルムアルデヒド1分子の反応において得られる化合物Iがある。Iは,2分子のフェノールのベンゼン環がメチレン基(——)によってつながれた構造を持つ。Iの構造式をすべて示せ。
ク 実験10において生成した水に対する二酸化炭素の重量比を有効数字2桁で求めよ。なお,実験9においては,反応が完全に進行したものとする。
ケ 実験11において硬い樹脂を与えるクレゾールの異性体の構造式を示し,それが硬化した理由および他の異性体が硬化しなかった理由を述べよ。
— 28 —
第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
ファラデー定数
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。
リン酸カルシウムを含む鉱石に,コークスを混ぜて強熱すると の分子式で表される黄リン(白リンとも呼ばれる)が得られる。黄リンを空気中で燃焼させると白色の十酸化四リンが得られる。十酸化四リンは,強い吸湿性を持ち乾燥剤や脱水剤に利用され,水と十分に反応するとリン酸になる。リン酸は,図2—1に示したように,水素–酸素燃料電池の電解質として使われる。
図2—1 リン酸電解質を用いた水素–酸素燃料電池の模式図
— 29 —
〔問〕
ア 下線部①の反応は以下の化学反応式で表される。
上記の反応は,十酸化四リンを生成する第一段階の反応と,十酸化四リンと炭素の間の第二段階の反応の組み合わせとして理解できる。それぞれの反応の化学反応式を示せ。
イ 下図は,無極性分子の十酸化四リンの分子構造の一部を立体的に示したものである。この構造を解答用紙に描き写し,他の必要となる構造を描き加えることで分子構造を完成させよ。
ウ 図2—1の電極Aと電極Bでのそれぞれの反応を電子 を用いた反応式で示せ。また,正極となる電極は電極Aと電極Bのどちらであるかを答えよ。
エ 図2—1の燃料電池を電圧 において,10時間作動させたところ, の水が排出された。このとき,電池から供給された電力量は何 か,有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。なお, である。
オ 燃料電池の性能を評価する指標の一つに,発電効率が用いられる。発電効率は,燃料に用いた物質の燃焼熱のうち,何%を電力量に変換できたかを示す指標である。図2—1の燃料電池が作動する際の反応は,全体として,水素の燃焼反応として捉えることができ,水素の燃焼熱は である。問エの電池作動時の発電効率は何%か,有効数字2桁で答えよ。
— 30 —
Ⅱ 次の文章を読み,問カ~サに答えよ。
ある黄銅鉱から得られた試料Cは, を主成分とし,不純物としてニッケルおよび金を含んでいた。この試料Cから銅と鉄を精製するため,以下の実験を行った。
実験1:試料Cを酸素とともに強熱すると気体Dが発生し,硫黄を含まない固体Eが得られた。気体Dは水に溶解することで,亜硫酸水溶液として除去した。
実験2:固体Eをさらに強熱すると融解し,上下二層に分離した。上層からは金属酸化物の混合物である固体Fが,下層からは金属の混合物である固体Gが得られた。固体Fにニッケルおよび金は含まれなかった。
実験3:固体Fを希硝酸中で加熱すると, イオンと イオンを含む水溶液Hが得られた。
実験4:水溶液Hに過剰量の塩基性水溶液Xを加えると,銅を含まない赤褐色の固体Iが得られた。
実験5:固体Iを強熱すると が得られた。この得られた をメタンの存在下で強熱したところ,純粋な鉄が得られた。
実験6:固体Gを陽極,黒鉛を陰極として,硫酸銅(Ⅱ)水溶液中で電解精錬を行ったところ,陰極側で純粋な銅が得られた。
— 31 —
〔問〕
カ 気体Dの化学式を答えよ。
キ 実験3の水溶液Hに適切な金属を加えることで イオンのみを還元できる。以下の金属のうち,この方法に適さない金属が一つある。その金属を答え,用いることができない理由を二つ述べよ。
ニッケル スズ 鉛 カリウム
ク 実験4の水溶液Xとして適切な溶液の名称を答えよ。
ケ 固体Iの化学式を答えよ。
コ 下線部②では,鉄のほかに二酸化炭素と水が生成した。 の鉄を得るのにメタンは何 必要か,有効数字2桁で答えよ。
サ 実験6の電解精錬において, の硫酸銅(Ⅱ)水溶液中, の電気量を与えた。固体G中の銅,ニッケル,金の物質量の比は, であり,陽極に用いた固体G中の物質量の比は電解精錬前後で変わらなかった。電解精錬後の水溶液のニッケル濃度は何 か,有効数字3桁で答えよ。与えられた電気量は,全て金属の酸化還元反応に用いられ,水溶液の体積および温度は電解精錬前後で変わらないものとする。
— 34 —
第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。
酸化還元滴定を行うために以下の溶液を調製した。
溶液A: のチオ硫酸ナトリウム()水溶液。
溶液B:ある物質量のヨウ化カリウム()とヨウ素()を水に溶かして とした水溶液。
次に以下の実験を行った。
実験1:溶液Bから を取り,水を加えて希釈し とした。ここから を取り,これに溶液Aを滴下した。溶液が淡黄色になったところでデンプン溶液を数滴加えると,溶液は青紫色になった。さらに,溶液Aを滴下し,溶液が無色になったところで,滴下をやめた。滴下した溶液Aの全量は, であった。
実験2:少量の硫化鉄(Ⅱ)に希硫酸をゆっくり加えて,気体Cを発生させた。溶液Bから を取り,この溶液に気体Cをゆっくり通して,反応させた。この溶液に水を加えて希釈し とした。ここから を取り,これに溶液Aを滴下した。溶液が淡黄色になったところでデンプン溶液を数滴加えると,溶液は青紫色になった。さらに溶液Aを滴下し,溶液が無色になったところで,滴下をやめた。滴下した溶液Aの全量は, であった。
— 35 —
〔問〕
ア 実験1,2では,ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムが反応し,テトラチオン酸ナトリウム()が生じる。この化学反応式を記せ。
イ 実験2で気体Cとヨウ素との間で起こる反応を化学反応式で記せ。また,反応の前後で酸化数が変化したすべての元素を反応の前後の酸化数とともに記せ。
ウ 溶液Bを調製するときに溶かしたヨウ素の物質量は何 か,有効数字3桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。
エ 実験2で反応した気体Cの物質量は何 か,有効数字3桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。
オ 各滴定に用いたビュレットの最小目盛りは であり,滴下した溶液の量には, 以内の誤差があるとする。このビュレットを用いた場合,実験に用いる各溶液の濃度を変えると,求められる気体Cの物質量の誤差の範囲に影響が及ぶことがある。以下に挙げた(1)~(4)の中で,求められる気体Cの物質量の誤差の範囲が最も狭くなるものを選び,その理由を述べよ。
(1) 溶液Aのチオ硫酸ナトリウムの濃度を2倍にする。
(2) 溶液Aのチオ硫酸ナトリウムの濃度を0.5倍にする。
(3) 溶液Bのヨウ素の濃度を2倍にする。
(4) 溶液Bのヨウ素の濃度を0.5倍にする。
— 36 —
Ⅱ 次の文章を読み,問カ~シに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
,
二種類の陽イオン , と一種類の陰イオン からなるイオン結晶には,図3—1に示す結晶構造をもつものがある。この結晶構造では,一辺の長さが の立方体単位格子の中心に が,頂点に が位置し, は立方体のすべての辺の中点にある。
図3—1 ,, からなるイオン結晶の構造
〔問〕
カ 図3—1に示すイオン結晶の組成式を ,, を用いて表せ。
キ および の配位数をそれぞれ答えよ。
ク 図3—1の結晶構造において, と をすべて原子 に置き換え,すべての を取り除いたとする。このとき, の配列は何と呼ばれるか答えよ。
ケ 図3—1の結晶構造において, と をすべて陰イオン に置き換え,単位格子のすべての面の中心に新たに を付け加えたとする。このときに得られるイオン結晶の組成式を, と を用いて表せ。また,この構造をもつ物質を一つ答えよ。
— 37 —
コ 図3—1の結晶構造をもつ代表的な物質として, が , が , が であるチタン酸ストロンチウムがある。その単位格子の一辺は である。イオン半径 をもつ と, および が接していると仮定して,各陽イオンの半径は何 か,小数第3位まで求めよ。
サ 図3—1の結晶構造をもつイオン結晶の安定性には,構成イオンの価数の組み合わせが重要である。 を とし,表3—1にある と表3—2にある からそれぞれ一つを選んでイオン結晶を作るとする。価数の観点から安定な と の組み合わせをすべて答えよ。
表3—1 のイオン半径
表3—2 のイオン半径
シ 図3—1の結晶構造をもつイオン結晶の安定性には,構成イオンの相対的な大きさも重要となる。その尺度として,以下のパラメータ を用いることとする。
ここで,,, は,それぞれ ,, のイオン半径である。 が のとき,問サで選択した と の組み合わせの中で,パラメータ の値に基づき,最も安定と予想されるものを答えよ。また,その理由を記せ。
第1問 フェノールから薬と樹脂 — つく場所で決まる
出題の意図(東大) 化学は、私たちの身の回りに存在する、様々な物質を理解するための基礎をなす科目です。また、物質を理解することが、科学分野全般の基盤となることから、化学はときに「セントラルサイエンス」と呼ばれています。物質を理解するためには、化学に関する基本的知識を身につけるとともに、それらを論理的に組み合わせ、総合的に理解し、さらに表現することが重要です。「化学」に関する出題では、受験する皆さんの、化学に関する基礎的な能力を判断するための問題が設定されます。本年度の出題でとくに注目した点は以下のとおりです:1)物質の性質、化学結合や化学反応の本質を見抜く能力(第1問、第2問、第3問)2)化学結合から構成される構造の本質を見抜く能力(第1問、第2問、第3問)3)化学の諸原理に基づいて論理的かつ柔軟に思考し、物質の本質を包括的かつ発展的に捉える能力(第2問、第3問)4)化学現象の総合的理解力と表現力(第1問、第2問)
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
フェノールから出発して、置換基を1つずつつけかえながら、薬に関係する化合物 E(4-アセトアミドシクロヘキサノン、図に構造がある)まで作る問題。E の形が図で分かっているので、ゴールから逆にたどると途中の A〜D が決まりやすい。
いちばん大事な性質は、フェノールの が、次に来る置換基をオルト位(となり)とパラ位(向かい)へ導くこと。E では2つの置換基が環の向かい合う位置(パラ)にあるので、A もパラの形を選ぶ。
使う反応は教科書どおり:ニトロ化、鉄(またはスズ)と塩酸でのニトロ基の還元、無水酢酸でのアセチル化、エステルの加水分解、ベンゼン環への水素の付加、二クロム酸カリウムでの酸化。塩化鉄(Ⅲ) で色が出るかどうかは、フェノール性の (ベンゼン環に直接ついた )が残っているかの目じるし。
後半はフェノール樹脂。フェノールの「手」(ホルムアルデヒドがつける場所)はオルト2か所とパラ1か所の3つで、手が3つあるから立体の網目になって硬くなる、という数の話。
ア
フェノールに希硝酸を作用させると、 に導かれて、オルト位かパラ位にニトロ基 が1つつく。A と F は同じ分子式で、o-ニトロフェノールと p-ニトロフェノールの2つ。
どちらが A かは、ゴールの E で決まる。E はシクロヘキサン環の向かい合う炭素(1位と4位)に置換基があるので、もとのベンゼン環でもパラの関係。だから A は p-ニトロフェノール、F は o-ニトロフェノール。
答え(OH と NO がパラの位置:p-ニトロフェノール)
イ
濃硝酸と濃硫酸(混酸)で加熱して十分に反応させると、フェノールの が導く場所(オルト2か所とパラ1か所)が全部ニトロ化される。
A(パラにニトロ基)や F(オルトにニトロ基)から始めても、残りの場所がニトロ化されて同じ G になる。これは G の3つのニトロ基が、ちょうどオルト・オルト・パラの位置にあることと合っている。G はピクリン酸と呼ばれる。
答え2,4,6-トリニトロフェノール(ピクリン酸):OH の両どなりとパラに NO
ウ
B は、A のニトロ基を鉄と塩酸で還元したもの。塩酸の中ではアミノ基が塩()になっているので、炭酸水素ナトリウムで塩酸を中和して( が出る)、p-アミノフェノールを取り出す。
X は無水酢酸(オで確かめる)。水溶液中(実験4)では、反応しやすいアミノ基だけがアセチル化されて C になる。希硫酸の中(実験5)では、 もアセチル化されてエステルになる。H は塩化鉄(Ⅲ) で色が出ないので、フェノール性の が残っていない。つまり と の両方がアセチル化された形。
実験6で確かめる:水酸化ナトリウムで加水分解すると、エステル()はアミド()より分解されやすいので、エステルだけが切れて C と酢酸が 1:1 でできる。
答え(パラの位置。OH と NH の両方がアセチル化)
エ
C(p-アセトアミドフェノール)のベンゼン環に、ニッケルを触媒に水素を付加すると、ベンゼン環がシクロヘキサン環になる。 はフェノール性からアルコール性(第二級アルコール)に変わる。これが D。実験8で第二級アルコールが酸化されてケトン E になるのとも合う。
立体異性体を数える。環の1位()と4位()は、環を左右どちら回りにたどっても同じ並びになるので、不斉炭素ではない。それでも環をつくる結合はくるりと回転できないので、2つの置換基が環の同じ側(シス)か反対側(トランス)かで別の物質になる。
パラの位置なので、鏡に映した形は元の形と重なり、鏡像の組はできない。もし A の代わりにオルトの F から同じ道すじで作ると、不斉炭素が2つになり、立体異性体は4つになる。
答え(4-アセトアミドシクロヘキサノール)、立体異性体は 2 つ(シスとトランス)
オ
X:B の や にアセチル基 をつけたので、アセチル化の試薬の無水酢酸。
Y:実験6ではエステルを加水分解(けん化)し、実験7ではフェノールを塩にして水層に移した。どちらも塩基のはたらきで、水酸化ナトリウム。
Z:ニッケルを触媒にベンゼン環に付加させたので、水素。
カ
C はフェノール性の をもつ。フェノールは弱い酸なので、水酸化ナトリウムと中和して塩(ナトリウムフェノキシド型、)になる。イオンになると水にとけやすく、エーテルにはとけにくいので、C は水層へ移る。
D の は、ベンゼン環ではなくシクロヘキサン環についたアルコール性の 。アルコールは水よりも弱い酸で、水酸化ナトリウムとは反応しない。D は塩にならず、エーテル層に残る。
同じ でも、ベンゼン環についているかどうかで酸の強さが大きくちがう。それを使って2つを分ける。なお、炭酸水素ナトリウムはフェノールと反応するには弱すぎて、この分け方には使えない。
答えC はフェノール性の OH をもち、水酸化ナトリウムと塩をつくって水層へ移る。D の OH はアルコール性で水酸化ナトリウムと反応せず、D はエーテル層に残る
キ
ホルムアルデヒドはメチレン基 の橋になって、2つのフェノールのベンゼン環をつなぐ。橋がつくのは、フェノールの が導く場所、つまりオルト位かパラ位。
片方のフェノールのつなぎ目がオルトかパラか、もう片方もオルトかパラか、で組み合わせを作る。「オルトとパラ」と「パラとオルト」は裏返せば同じ物質なので、「オルトとオルト」「オルトとパラ」「パラとパラ」の3通り。
答えで、CH が OH から見て オルトとオルト・オルトとパラ・パラとパラ の 3 つ
ク
「反応が完全に進んだ」ので、フェノールの手(オルト2・パラ1、合わせて3つ)は全部 の橋でつながっている。フェノール2個の手は6つで、橋1本が手を2つ使うので、橋はちょうど3本。ホルムアルデヒド3分子がぴったり全部使われる(2:3 はそのための比)。
橋が1本できるごとに、フェノールの H 2個とホルムアルデヒドの O から水が1分子とれる。だから樹脂の組成は
の割合。これを燃やすと、C 15個から 15分子、H 12個から 6分子ができる。重さの比は
答え樹脂は の割合
ケ
クレゾールは、フェノールの環にメチル基 が1つついたもの。 がどこにあるかで、フェノール樹脂の手( から見てオルト2か所とパラ1か所)がふさがるかどうかが決まる。
o-クレゾールは がオルトの1か所を、p-クレゾールはパラの1か所をふさぐので、手は2つだけ。手が2つだと、1本の鎖のようにしかつながれず、枝分かれがない。だから加熱しても立体の網目にならず、硬くならない。
m-クレゾールは が から見てメタ(1つとび)の位置にあり、オルト2か所とパラ1か所がすべて空いている。手が3つあるので、フェノールと同じように枝分かれして、立体の網目になり硬い樹脂になる。
手が3つあると、手の半分ほどが使われたところで、急に全体がつながった網目ができる。手が2つでは、どれだけ反応させても網目は 0 のまま。
答えm-クレゾール(3-メチルフェノール)。OH のオルト 2 か所とパラ 1 か所の 3 か所が空いていて、CH の橋で立体の網目になるので硬くなる。o-・p-クレゾールは CH がそのうち 1 か所をふさぎ、つながる場所が 2 か所だけなので鎖状にしかならず硬くならない
第2問 リン・燃料電池・銅と鉄 — 電子の数で全部決まる
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
Ⅰはリンの話。リン酸カルシウムからコークス(炭素)で黄リン を取り出す反応を2段に分けて考え、十酸化四リン の形を描き、リン酸を電解質(イオンを運ぶ液)にした水素–酸素燃料電池の計算をする。
燃料電池の計算の軸は、電子の数。水 1 分子ができるごとに電子が 2 個、導線を流れる。流れた電子の物質量にファラデー定数をかけると電気量(C)、それに電圧をかけると電力量(J)になる。
Ⅱは、黄銅鉱 から銅と鉄を取り出す実験。ここでも決め手はイオンへのなりやすさ(イオン化傾向)と電子の数。どの金属なら銅だけを出せるか、メタンがどれだけ要るか、電解精錬で水の中にニッケルがどれだけたまるか、を順に考える。
ア
全体の反応式を「リン酸カルシウムがこわれて ができる段」と「 を炭素が還元する段」に分ける。
第一段階: 2つには Ca 6・P 4・O 16 がある。Ca は 6つになって O を6個使い、残りの P 4・O 10 がちょうど になる。炭素はまだ出てこない。
第二段階: の O 10個を、炭素 10個が CO として引きぬき、 が残る。
2つの式を足すと、 が消えて、問題の全体の式にもどることを確かめる。
答え,
イ
は、黄リン (P 4つが正四面体の頂点にならんだ形)が土台になっている。
正四面体には辺が6本ある。その辺ごとに、P と P の間に O が1つずつ入って P−O−P の橋をつくる(O 6個)。これで各 P は3本の結合をもつ。さらに各 P から、正四面体の外向きに O が1つずつ二重結合でつく(O 4個)。合わせて O は 10 個。
問題文に「無極性分子」とある。外向きの P=O は4本とも同じ形で、正四面体の中心から見て4つの頂点の向きを向いているので、たがいに打ち消し合う。これが無極性であることと合っている。図の一部に、残りの P−O−P の橋と外向きの O を描き足して完成させる。
答えP 4 個が正四面体の頂点、6 本の辺ごとに P–O–P の橋(O 6 個)、各 P から外向きに P=O(O 4 個)
ウ
燃料電池では、水素が電子をわたし(酸化)、酸素が電子を受けとる(還元)。電子を受けとる側、つまり電子が流れこむ側が正極。
電解質がリン酸(酸性)なので、イオンとして動くのは 。水素側の電極では が電子を2個はなして 2つになる。 はリン酸の中を通って酸素側へ行き、酸素側の電極で が電子4個と 4つを受けとって水になる。
図2—1では、酸素が送られるのは電極 A の側、水素は電極 B の側。電子は導線を B から A へ流れ、 もリン酸の中を B から A へ動く。電子が流れこむ A が正極。
答えA:, B:, 正極は A
エ
出てきた水から、流れた電子の数を出す。水 90 kg は
酸素側の式から、水 1 mol ができるごとに電子が 2 mol 流れるので、電子は 。
電気量は電子の物質量 × ファラデー定数、電力量は電気量 × 電圧:
10時間という時間は、この計算には使わない(電子の数が水の量で決まっているから)。
答え,
オ
燃料の水素は、水と同じ物質量 使われた( 1つから水1つ)。これを燃やしたときの熱は
発電効率は「電力量 ÷ 燃焼熱 × 100」。エの電力量をこれで割る。
式を整理すると、電子 2 mol あたりで「」と「286 kJ」をくらべているので、効率は電圧だけで決まり、()と同じになる。動かした時間や水の量には関係しない。
答え
カ
黄銅鉱 の硫黄は、酸素とともに強く熱すると燃えて二酸化硫黄になる。二酸化硫黄は水にとけて亜硫酸 になるので、「亜硫酸水溶液として除去した」と話が合う。
キ
ここでの「 のみを還元」は、金属として出てくるのが銅だけ(銅だけを取り出せる)という意味で読む。そのためには、加える金属が銅よりイオンになりやすく( に電子をわたして銅を出せる)、しかも鉄よりはイオンになりにくい(鉄のイオンを金属の鉄にまではしない)ことが必要。イオン化傾向の順は
ニッケル・スズ・鉛は Fe と Cu の間にあるので使える。
ただし H の鉄は で、 を にする反応(例:)は、ニッケル・スズ・鉛でも起こりうる。だから「鉄のイオンに電子を一切わたさない」わけではない。それでも鉄は金属としては出てこないので、銅だけを取り出すことはできる。
カリウムは、この列のずっと上。理由の1つ目:水と激しく反応して と KOH になってしまい、 を還元する前に水に使われる(できた で、金属の水酸化物の沈殿もできる)。2つ目:鉄よりもずっとイオンになりやすいので、鉄のイオンを金属の鉄まで還元してしまい、銅だけを取り出すことができない。
答えカリウム。①水と激しく反応して H と KOH になり、Cu を還元する前に水に使われる(できた OH で水酸化物も沈殿する)。②鉄よりイオン化傾向が大きく、鉄のイオンまで還元してしまう
ク
と を分けて、銅を含まない赤褐色の固体を得たい。塩基性の液を加えると、どちらも最初は水酸化物の沈殿になる。
アンモニア水を多めに加えると、 はアンモニアと錯イオン(金属イオンに分子がくっついたイオン) をつくって、深い青色の液にとける。鉄の水酸化物はアンモニアとは錯イオンをつくらないので、沈殿のまま残る。
水酸化ナトリウム水溶液では、 もとけずに残るので、銅がまざってしまう。
ケ
液の中の鉄は 。これが と結びついてできる赤褐色の沈殿が固体 I。電荷 に 3つがつりあう。
実験5で、これを強く熱すると水が抜けて になる、という流れとも合う。
コ
反応式は、原子の数を合わせて作ってもよいが、電子の数で考えると速い。
の Fe は酸化数 で、鉄1 mol を取り出すには電子が 3 mol 要る。メタン の C は で、 になると 、つまりメタン 1 mol は電子を 8 mol わたす(H は のまま水になる)。
反応式 でも、Fe 8 に 3 の比になっている。
もし炭素が CO で止まるなら、メタン 1 mol がわたす電子は 6 mol になり、要るメタンは 0.50 mol にふえる。「二酸化炭素と水が生成した」がこの比を決めている。
答え
サ
電解精錬では、陽極の固体 G がとけて、陰極に純粋な銅がつく。陽極では、Cu と Ni は電子を2個ずつわたして ・ として水にとける。金はイオンになりにくいのでとけず、陽極の下に落ちる(陽極泥)。
陽極からとけた Cu と Ni の合計は、その半分の 。
「陽極の組成が変わらない」ので、Cu と Ni は の比でとけている。とけた金属のうち Ni の割合は 。
陰極では、イオン化傾向の小さい だけが銅になり、 は水の中にたまっていく。液は 1.00 L なので、たまった Ni の物質量にモル質量 58.7 をかけたものが、そのまま g/L の濃さになる。
答え
第3問 ヨウ素の滴定とペロブスカイト — 引き算と大きさ合わせ
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
Ⅰは、ヨウ素の量をチオ硫酸ナトリウムではかる滴定(ヨウ素滴定)。ヨウ素 が残っている間は液が黄色〜褐色で、デンプンを入れると青紫色になる。色が消えた所で、ヨウ素がちょうどなくなった。
筋は引き算。実験1では溶液 B のヨウ素をそのままはかり、実験2では硫化水素を通してヨウ素の一部を使わせてからはかる。2回の滴下量の差が、硫化水素に使われたヨウ素の分になる。
どちらの実験も「B を 250 mL とって 1.00 L にうすめ、そこから 100 mL をはかる」ので、はかったのは B 250 mL の 。はかった量を10倍すると B 250 mL の分、さらに4倍すると B 1.00 L の分になる。
Ⅱは、立方体の中心・頂点・辺の中点にイオンがならぶ結晶(ペロブスカイト形)。粒の数え方(頂点は 、辺は 、面は 、中心は1)と、まわりの粒までの距離から、組成・配位数・イオンの大きさを考える。
ア
ヨウ素 は電子を受けとって 2つになる(還元される)。チオ硫酸イオン は2つがつながってテトラチオン酸イオン になり、そのとき電子を2個わたす。
電子の数から、 1つに 2つが反応する。Na も合わせると、 が2つと が1つできる。
この「」が、以下の計算のすべての土台になる。
答え
イ
気体 C は、硫化鉄(Ⅱ) に希硫酸を加えて出てくる硫化水素 。
は還元剤で、ヨウ素に電子をわたして自分は硫黄 S になる(液が白くにごる)。ヨウ素は になる。 1つが電子2個をわたし、 1つが電子2個を受けとるので、1:1 で反応する。
酸化数は H を として決める。 の S は で、単体の S は 0。 の I は 0 で、 の I は 。H は のまま変わらない。
答え; ,
ウ
アの 1:2 の関係から、はかった 100 mL の中のヨウ素はその半分。
100 mL は、B 250 mL をうすめた 1.00 L の なので、10倍すると B 250 mL の中のヨウ素。B は 1.00 L つくったので、さらに4倍すると、B をつくるときに溶かしたヨウ素の物質量になる:
答え
エ
実験2では、B 250 mL のヨウ素の一部が に使われ、残りを滴定した。使われた分は、実験1と実験2の滴下量の差からわかる:
( はアの 1:2、10 は 100 mL から B 250 mL の分に直すため。)
イのとおり と は 1:1 で反応するので、この値がそのまま反応した の物質量になる。
この方法は、B のヨウ素が より多く、反応のあとにも残っていることが前提。ヨウ素が先に使いきられると、実験2の滴下量は 0 になり、 の量ははかれない。
答え
オ
の量は、エの式のとおり「(実験1の滴下量 − 実験2の滴下量) × A の濃さ」に比例する。ビュレットの読みの誤差(1回あたり )は、滴下量の差にそのまま入り、それに A の濃さがかけられる。
(2) A を 0.5 倍にうすめると、同じ量のヨウ素に対して滴下量は2倍になる。読みの誤差は のままなので、 に直した誤差は半分になる。(1) A を濃くすると逆に2倍になる。
(3)(4) B のヨウ素の濃さを変えると、2回の滴下量はどちらも同じだけずれるが、差は の量で決まっていて変わらない。A の濃さも同じなので、誤差の幅も変わらない。
滴下量をふやして、1目盛りの読みの誤差を相対的に小さくするのがこつ。ただし、うすくしすぎるとビュレット1本分(50 mL)に入りきらなくなる。
答えHS は(実験1 − 実験2 の滴下量)× A の濃さで決まり、読みの誤差(±0.05 mL が 2 回)から来る幅は A の濃さに比例する。A を 0.5 倍にすると幅が半分。B のヨウ素を変えても差の誤差は変わらない
カ
単位格子の中の粒を、「その場所がいくつの単位格子で分け合われているか」で数える。
は中心に1個で、そのまま1個。 は頂点に8個で、頂点は8つの単位格子で分け合うので 個。X は辺の中点に12個で、辺は4つの単位格子で分け合うので 個。
キ
配位数は、いちばん近くにいる相手(反対の電荷のイオン X)の数。
(中心)から辺の中点までの距離は、どの辺でも同じ 。辺は12本あるので、12個の X に同じ距離で囲まれている。
(頂点)からいちばん近い X は、その頂点から出ている辺の中点で、距離は 。1つの頂点には、となりの単位格子の分もふくめて、上下・左右・前後の6本の辺が集まっているので、6個。
大きい は X 12個にゆったり囲まれ、小さい は X 6個(正八面体の形)にぴったり囲まれる。
ク
を取り除き、中心と辺の中点に Y がある形を考える。
全体を 方向に だけずらして見る。すると、辺の中点 が新しい頂点に、中心 が新しい面の中心 に重なり、ほかの点も同じように頂点と面の中心にぴったり重なる。
頂点と面の中心に粒がある並び方は、面心立方格子。Y の数も、中心1+辺3=4個で、面心立方格子の単位格子の粒の数4と合う。
ケ
ク と同じく、 と X の場所(中心と辺の中点)をまとめて Z にすると、Z は4個。 は頂点に加えて面の中心にもおくので、 個。 と Z が 4:4 なので 1:1。
は頂点と面の中心(面心立方格子)、Z はそれを ずらした位置(これも面心立方格子)。2つの面心立方格子が半分ずれて重なった形は、塩化ナトリウムの結晶と同じ。どちらのイオンも、反対のイオン6個に囲まれている。
コ
イオンが接しているので、「中心どうしの距離 = 2つの半径の和」。
(中心)と (辺の中点)の距離は、キで見たとおり :
小数第3位まで答えるので、計算の順番に気をつける。 を使って「」とすると 0.136 だが、「」とすると 0.137 になってしまう。
は で、ちょうど四捨五入の境目。四捨五入して 0.056 とするが、切り捨てなら 0.055 になる所なので、答えを書くときは注意する。
答え,
サ
組成は で、 3つの電荷は 。結晶全体の電荷が 0 になるには、 と の価数の合計が でなければならない。
表3—1 の と表3—2 の の組み合わせをすべてためし、価数の和が6になるものを選ぶ。、、 の3通りがある。
答え と , と , と
シ
まず、すべてのイオンがちょうど接している「理想の形」で がいくつになるかを考える。A と X が接すると 、B と X が接すると 。だから
が より大きいと、 が小さすぎて のまわりにすき間ができる。小さいと、 が小さすぎて のまわりにすき間ができる。どちらも結晶が不安定になる。
サの3組で を計算すると、 は約 1.29、 は約 1.61、 は約 1.35。 にいちばん近い組を選ぶ。
答え と 。全部のイオンがちょうど接すると A–X = 、B–X = で 。u がこれにいちばん近い(CaZrO、CsTaO)