東大 過去問 2025年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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このページの出典

東京大学 第2次学力試験(前期)2025年 理科「生物」(東京大学公式サイト)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

修正履歴

お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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生 物

第1問

 次の文1〜4を読み,問A〜Jに答えよ。

[文1]

 線虫 Caenorhabditis elegans は遺伝学や神経科学の分野でよく用いられるモデル生物である。体は小さく透明で,大腸菌をえさとして容易に飼育できる。302個ある神経細胞のそれぞれに名前が付けられている。また,さまざまな遺伝子の変異体を実験に用いることや,外部から遺伝子を導入して特定の神経細胞で発現させることも容易である。こうした利点をいかして,神経系の機能に重要な遺伝子についてさかんに調べられてきた。

 線虫は特定の味覚物質や匂い物質,温度などに誘引される走性行動を示す。中でも塩(NaCl)に対する走性行動(塩走性)について詳しく調べられている。線虫はえさとともに感じた周囲の塩濃度を記憶し,塩濃度の勾配がある寒天プレートに置かれると,記憶した塩濃度の領域に誘引される。また,えさがない培地で条件付けされると,そのとき感じていた塩濃度を忌避するようになる。

実験1 線虫は通常50 mM NaCl,えさありの培地で飼育されている。ここで mM はミリ mol/L を表す。飼育時と同じ50 mM NaCl,えさありの培地で条件付けされた野生型の線虫を,図1—1のような塩濃度勾配のあるプレートにおくと,塩濃度が50 mM 付近である中央区画に集まる誘引行動を示した。一方,50 mM NaCl,えさなしの培地で条件づけされた野生型の線虫は,中央区画を避ける忌避行動を示した(図1—2と図1—3)。ただし,中央区画への集合率は,以下の式によって計算した。

(中央区画への集合率)=(中央区画の線虫の数)(プレート全体の線虫の数)
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図1—1 寒天プレートの塩濃度勾配
図1—1 寒天プレートの塩濃度勾配
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図1—2 条件付けと塩走性
図1—2 条件付けと塩走性

(左) 50 mM NaCl,えさありで条件付けした場合の塩走性

(右) 50 mM NaCl,えさなしで条件付けした場合の塩走性

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図1—3 飼育環境と塩走性 (中央区画への集合率)
図1—3 飼育環境と塩走性 (中央区画への集合率)

[文2]

 線虫が塩走性行動を示すには,神経細胞 A が NaCl を受容することが必要である。遺伝子 G は神経細胞 A でのみ発現しており,NaCl の受容に必要である。遺伝子 G を全身で欠損した変異体は,塩濃度勾配のある寒天プレート上では,塩濃度によらず均一に分布する。また,ある遺伝子 D は神経細胞 A を含むいくつかの神経細胞で発現している。この遺伝子 D の機能を調べるため,以下の実験では,さまざまな遺伝子型の線虫を50 mM NaCl,えさなしで条件付けして,塩に関する忌避行動を調べた。

実験2 遺伝子 D や遺伝子 G が全身で欠損した変異体を用いて,塩に関する忌避行動を調べたところ,図1—4のような結果を得た。

図1—4 遺伝子 D や遺伝子 G の欠損が忌避行動に与える影響
図1—4 遺伝子 D や遺伝子 G の欠損が忌避行動に与える影響
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[文3]

 遺伝子はゲノム DNA を鋳型として RNA へ転写されたあと,スプライシングを受けて成熟したメッセンジャー RNA(mRNA)となり,タンパク質に翻訳される。一方,mRNA を鋳型として DNA へ 1 することで,complementary DNA(cDNA:mRNA と相補的な配列を持つ1本鎖 DNA,あるいはこれを元に作製した2本鎖 DNA のこと)が得られる。特定の細胞で転写を誘導する配列を含むゲノム DNA を cDNA につないで,線虫に導入すると,特定の細胞で遺伝子を強制的に発現させることができる。

 遺伝子 D はある(ア)ペプチドホルモンの受容体 D をコードしている。遺伝子 D からは 2 によって2種類の mRNA が生じることが知られていた。これらの mRNA から翻訳されるタンパク質をそれぞれアイソフォーム1およびアイソフォーム2とする。これらのタンパク質の構造を図1—5に示す。

 受容体 D アイソフォーム1は二量体を形成しており,ペプチドホルモンと結合すると,酵素 E を活性化する。活性化された酵素 E はシグナル分子を生成して細胞内に情報を伝える。

 受容体 D アイソフォーム2も二量体を形成しており,ペプチドホルモンと結合するが,(イ)細胞膜を貫通する部位や酵素 E と相互作用する部位が欠失しており,細胞膜上に固定されていない。

図1—5 受容体Dのアイソフォームの構造
図1—5 受容体Dのアイソフォームの構造
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実験3 受容体 D のアイソフォーム1の cDNA を遺伝子 D の欠損変異体へ導入して様々な神経細胞で発現させ,塩に関する忌避行動を観察したところ,図1—6のような結果を得た。

図1—6 受容体Dアイソフォーム1が忌避行動に与える影響
図1—6 受容体Dアイソフォーム1が忌避行動に与える影響

実験4 野生型の線虫から mRNA を抽出して 1 し,様々な遺伝子に由来する cDNA が含まれた cDNA ライブラリーを作製した。さらに遺伝子 D に由来する cDNA の全長をポリメラーゼ連鎖反応法(PCR 法)で増幅したところ,(ウ)アイソフォーム1の cDNA と未知のアイソフォームの cDNA の混合物が得られた。新たに見つかったアイソフォームをアイソフォーム3とした。受容体 D アイソフォーム3の構造はアイソフォーム1とほぼ同じだが,アイソフォーム3の cDNA の塩基配列を解読したところ,2 によって,アイソフォーム1と共通のエキソンの間に,アイソフォーム3に特異的なエキソンが挿入されていることがわかった。

実験5 受容体 D のアイソフォーム3の cDNA を遺伝子 D の欠損変異体へ導入して様々な神経細胞で発現させ,塩に関する忌避行動を観察したところ,図1—7のような結果を得た。

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図1—7 受容体Dアイソフォーム3が忌避行動に与える影響
図1—7 受容体Dアイソフォーム3が忌避行動に与える影響

[文4]

 遺伝子 D のアイソフォーム3の cDNA で新たに見つかったエキソンがコードするアミノ酸配列は,別のタンパク質 C と結合する部位を含んでいた(図1—8)。遺伝子 C がコードするこのタンパク質 C は,微小管を介した細胞内の物質輸送にかかわるキネシンタンパク質と結合する部位を持ち,様々な分子を同一細胞の別の場所へ輸送していることが知られている。受容体 D のアイソフォーム3は,特異的なエキソンに対応する部位を介してタンパク質 C と結合し,キネシンによって同一細胞の別の場所へ輸送されている可能性があると考えられた。

図1—8 受容体Dアイソフォーム3の構造
図1—8 受容体Dアイソフォーム3の構造

アイソフォーム3の斜線部は特異的なエキソンに対応する部位を示す。

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[問]

A 実験2について。図1—4の結果から,遺伝子 D のはたらきについてどのようなことが推測できるか。最も適切なものを以下の(1)〜(3)から1つ選べ。

(1) 遺伝子 D は NaCl の受容に必要である。

(2) 遺伝子 D はえさの情報に基づく忌避行動の調整に必要である。

(3) 遺伝子 D は線虫が移動するための筋肉を動かすのに必要である。

B 文中の 1 と 2 に入る最も適当な用語を答えよ。

C 下線部(ア)について。ペプチドホルモンの例として最も適切なものを以下の(1)〜(4)から1つ選べ。

(1) アンドロゲン

(2) インスリン

(3) グリコーゲン

(4) グルタミン

D 遺伝子 D は寿命の制御に関わっていることが知られている。野生型の線虫と遺伝子 D を欠損した線虫の寿命を調べたところ,それぞれ図1—9の(い),(う)のようになった。また遺伝子 D を欠損した線虫に受容体 D のアイソフォーム1を発現させると,寿命は図1—9の(い)のようになった。また野生型の線虫に酵素 E を大量に発現させると,寿命は図1—9の(あ)のようになった。一方,野生型の線虫に受容体 D のアイソフォーム2を大量に発現させると,寿命は図1—9の(う)のようになった。受容体 D のアイソフォーム2を大量に発現させたとき,このような結果が得られたのはなぜか。下線部(イ)をふまえて2行以内で記せ。

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図1—9 遺伝子 D と寿命の関連
図1—9 遺伝子 D と寿命の関連

E 問 D の結果をふまえると,遺伝子 D は寿命をどのように制御しうると考えられるか。最も適切なものを以下の(1)〜(3)から1つ選べ。

(1) 遺伝子 D は寿命を延長する方向にはたらく。

(2) 遺伝子 D は寿命を短縮する方向にはたらく。

(3) 遺伝子 D は寿命の延長と短縮の両方にはたらく。

F 下線部(ウ)について。遺伝子 D のゲノム構造は図1—10のようになっている。受容体 D のアイソフォーム1の cDNA とアイソフォーム3の cDNA の混合物に対して,図1—10に示したプライマー(1)〜(7)を組み合わせて PCR 法で増幅し,電気泳動法で分離したところ,図1—11のような結果が得られた。アイソフォーム3に特異的なエキソンはどの領域にあるか。図1—10の(あ)〜(え)から1つ選べ。

図1—10 遺伝子 D 領域のゲノム構造
図1—10 遺伝子 D 領域のゲノム構造

白い四角は遺伝子 D のエキソンを示す。矢印はプライマーの位置と5′末端から3′末端への向きを示す。

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図1—11 電気泳動法による分離の結果
図1—11 電気泳動法による分離の結果

G 実験3〜5について。図1—6および図1—7の結果から,忌避行動における受容体 D の各アイソフォームのはたらきに関してどのようなことが推測できるか。2行程度で記せ。ただし実験3と実験5において,導入した遺伝子の発現量の影響は考えないものとする。

H 受容体 D のアイソフォーム3がどこに輸送されるか,線虫を生きたまま顕微鏡で観察することで確かめたい。どのような工夫をして何を観察すればよいか。2行程度で記せ。

I 受容体 D が同一細胞の別の場所へ輸送されることが忌避行動にとって必要であることを確かめたい。どの遺伝子の欠損変異体を用いて何を観察すればよいか。1行程度で記せ。ただし微小管やキネシンの欠損変異体は生存できないため観察に使えないものとする。

J 一連の実験から,受容体 D のアイソフォーム1とアイソフォーム3は,線虫の忌避行動におけるはたらきが異なることが示された。受容体 D が同一細胞の別の場所へ輸送されることがこの違いを生みだしていることを,アイソフォーム1を用いて確かめたい。どのような工夫をして何を観察すればよいか。2行程度で記せ。

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第2問

 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。

Ⅰ 次の文章を読み,問A〜Dに答えよ。

 被子植物では,同じ花の中にめしべとおしべの両方が存在する両性花をつける種が8割以上を占める。多くの動物のように個体ごとに雌雄が分かれている場合に比べ,より多くの交配の機会を得られることが両性花の利点である。しかし,両性花では同じ花,あるいは同じ個体の中で受粉が起きやすく,(ア)自家受粉によってできた子孫の生存率や繁殖力が低下することがある。そのため,両性花をつける植物には,同じ個体の花粉がめしべに受粉しても花粉管の伸長が妨げられる自家不和合性と呼ばれるしくみをもつものが多い。一方,被子植物の中には,雌花または雄花のように,どちらかの性に特化した花をつけるものも存在する。雌花や雄花のことを単性花といい,1つの個体が雌花と雄花をつける場合を雌雄同株,集団内に雌花のみをつける個体と雄花のみをつける個体が存在する場合を雌雄異株という。単性花には,雌雄同株の場合は同じ花の中での,雌雄異株の場合は同じ個体の中での受粉を回避できる利点がある。

 アスパラガスやキウイフルーツは雌雄異株の植物であり,個体の性は性染色体によって決定される。一方,トウモロコシやメロンは雌雄同株であり,性染色体はもたない。雌雄同株の植物において,雌花と雄花はどのように作られるのだろうか。メロンでは,めしべとおしべの分化に G,M,A の3つの遺伝子が関与することがわかっており,それらは図2—1のようなはたらきをもつ。G 遺伝子と M 遺伝子はそれぞれめしべとおしべの形成を阻害し,G 遺伝子はさらに M 遺伝子のはたらきを抑制する。また,G 遺伝子のはたらきは植物ホルモンの(イ)エチレンによって抑制され,A 遺伝子はエチレンの合成を促進することで G 遺伝子のはたらきを抑制する。そのため,個体内で A 遺伝子が発現している部位では G 遺伝子のはたらきが抑制されて雌花ができ,A 遺伝子が発現していない部位では G 遺伝子が活発にはたらき雄花が作られると考えられている。また,M 遺伝子のはたらきが欠損した変異体では両性花が作られることがある。

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図2—1 メロンにおける G,M,A 遺伝子のはたらき
図2—1 メロンにおける G,M,A 遺伝子のはたらき

⟂ の記号は抑制を表し,点線はその抑制が起きていないことを表す。発現していない遺伝子,はたらきが欠損している遺伝子,形成が阻害されているめしべとおしべを細字で示してある。

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表2—1 メロンの花に関する表現型と遺伝子型
表2—1 メロンの花に関する表現型と遺伝子型

大文字,小文字はそれぞれ顕性,潜性の対立遺伝子(アレル)を表す。表中の「—」は,いずれの対立遺伝子の場合も同じ表現型が観察されたことを示す。

 G,M,A の3つの遺伝子のはたらきをさまざまな組み合わせで欠損させた変異体を作出したところ,花の性について異なる表現型をもつ植物が得られた。表2—1はそれぞれの表現型をもつ植物の遺伝子型をまとめたものである。

 表2—1の結果をふまえ,1 遺伝子が顕性ホモ接合,2 遺伝子と 3 遺伝子が潜性ホモ接合である雌株と,4 遺伝子が顕性ホモ接合,5 遺伝子がヘテロ接合,6 遺伝子が潜性ホモ接合である雄株を交配させたところ,雌株と雄株が1:1の割合で出現する人工的な雌雄異株の植物を作ることに成功した。

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[問]

A 下線部(ア)について。子孫の生存率や繁殖力の低下(近交弱勢)がなぜ起こるかを1行程度で答えよ。

B 下線部(イ)について。エチレンに関する記述として正しいものを以下の選択肢(1)〜(4)から全て選べ。

(1) セルロース繊維の並び方を制御し,成長軸方向への伸長を促進する。

(2) ブドウやイチゴなど,収穫後に成熟が進まない果実では生成されない。

(3) 離層が関わる器官の脱離においてオーキシンと反対のはたらきをもつ。

(4) 物理的接触のない植物間でも作用することがある。

C 表2—1の あ,い,う それぞれに入る花の性を以下の選択肢から選んで答えよ。該当するものが複数ある場合は全てを選ぶこと。

[選択肢] 両性花,雌花,雄花

D 文中の 1 〜 6 それぞれに入る遺伝子名を G,M,A から1つずつ選んで答えよ。

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Ⅱ 次の文1,文2を読み,問E〜Iに答えよ。

[文1]

 単性花の進化には,細胞核の遺伝子のはたらきだけでなく,ミトコンドリアが関わることもある。植物細胞において,DNA は主に細胞核に存在するが,葉緑体やミトコンドリアにも DNA は存在し,さまざまなはたらきをもつ遺伝子をコードしている。細胞核の DNA 上の遺伝子は基本的にメンデルの法則に従って次世代に伝わるが,葉緑体やミトコンドリアの DNA は多くの場合,卵細胞に含まれるもののみが次世代に伝わる。このような遺伝様式を母性遺伝と呼ぶ。

 (ウ)自然界に見られるさまざまな植物で,ミトコンドリアに雄性不稔遺伝子が存在することがあり,ミトコンドリアにこの遺伝子が存在する個体では正常な花粉が作られず,全ての花が機能的には雌花になる。一方,個体によっては,雄性不稔遺伝子のはたらきを抑えて正常に花粉を作らせる稔性回復遺伝子を細胞核にもつことがあり,稔性回復遺伝子がはたらいている個体では,ミトコンドリアに雄性不稔遺伝子が存在していたとしても正常な花粉が作られる。

 日本各地の海岸沿いに自生するアブラナ科のハマダイコンは,ミトコンドリアの雄性不稔遺伝子のはたらきによって,雌花のみをつける個体(雌株)と両性花のみをつける個体(両性株)が集団中に存在する植物の一つである。九州北部沿岸の各ハマダイコン集団で,集団中の雌株の割合と,ミトコンドリアに雄性不稔遺伝子をもつ個体の割合を調べたところ,図2—2の結果を得た。

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図2—2 九州北部沿岸における各ハマダイコン集団の雌株の割合(A)と雄性不稔遺伝子をもつ個体の割合(B)
図2—2 九州北部沿岸における各ハマダイコン集団の雌株の割合(A)と雄性不稔遺伝子をもつ個体の割合(B)

(A)では,雌株の割合が0の集団を白色,0より大きく0.1未満の集団を灰色,0.1以上(0.21が最大)の集団を黒色の円で示す。(B)では,個体の割合を円グラフで示す。

[文2]

 ハマダイコンのように,同じ集団中に雌株と両性株が共存する植物は多いが,雄株と両性株が共存する植物種は極めて少ない。両性株に比べ,雄株は花粉を通じてしか次世代に遺伝子を残せない点で不利であるため,両性株の集団に雄株が生じても雄株は集団中に広まりにくいと考えられている。(エ)モクセイ科のフィリレア・アングスティフォリアは,被子植物では例外的に雄株と両性株が集団中で安定的に維持されている。この植物でどのように集団中に雄株と両性株が維持されるのかを調べるため,以下の実験1〜2を行った。

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実験1 両性株6個体(H1〜H6とする)を選び,それぞれの個体の花粉を,同じ個体の花,および異なる個体の花に授粉する操作を全ての個体の組み合わせで行った。授粉から24時間後,花を採取して花粉管を染色する試薬でめしべを処理し,顕微鏡で観察することにより,めしべの中で花粉管が伸長したかどうかを確認した。また,雄株3個体(M1〜M3とする)の花粉を,上記の両性株6個体の花に授粉し,花粉管の伸長を同様に観察した。実験に用いる花は,組み合わせごとに異なるものを使用し,また,授粉を行う時点でめしべに他の花粉がついてないことを確認した。この実験から,表2—2の結果を得た。

表2—2 授粉実験の結果
表2—2 授粉実験の結果

表中の○で示されている個体の組み合わせにおいては花粉管が伸長したが,空欄の組み合わせでは花粉管が伸長しなかった。

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実験2 実験1の結果から,フィリレア・アングスティフォリアの両性株には,個体 H1のめしべ上で花粉管が伸長せず個体 H1と交配ができない個体と,正常に花粉管が伸長して交配可能な個体があることがわかったため,それぞれの表現型を Ha,Hb とした。そこで,両性株と雄株の遺伝様式を調べるため,実験1と同じ個体を用いていくつかの組み合わせで授粉実験を行い,得られた種子を育てて花の性を確認した。花が両性花だった場合は,その花の花粉を個体 H1の花に授粉し,花粉管の伸長を観察して表現型が Ha,Hb のどちらであるかを確認した。この実験から,表2—3の結果を得た。

表2—3 授粉実験によって得られた種子から育てた個体の表現型
表2—3 授粉実験によって得られた種子から育てた個体の表現型

表中の空欄の組み合わせでは授粉実験で種子が得られなかった。

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[問]

E 下線部(ウ)について。雄性不稔遺伝子は細胞核に生じる場合もあるが,自然界では細胞核に生じた場合よりもミトコンドリアに生じた場合の方が集団中に広まりやすい。その理由を,ミトコンドリアの遺伝子が母性遺伝することに着目して2行程度で答えよ。

F 図2—2の結果から言えることとして正しいものを以下の(1)〜(4)から全て選べ。

(1) 両性株に,雄性不稔遺伝子をもたない個体と,雄性不稔遺伝子をもつが稔性回復遺伝子のはたらきで両性花をつける個体の2通りが存在する集団がある。

(2) 雄性不稔遺伝子をもつ個体の割合が高い集団の方が,低い集団よりも常に雌株の割合が高い。

(3) 稔性回復遺伝子がはたらいている個体の割合が,雌株の割合よりも高い集団がある。

(4) 稔性回復遺伝子がはたらいている個体だけからなる集団がある。

G 下線部(エ)について。雄株は花粉を通じてしか次世代に遺伝子を残せない点で両性株よりも不利であるが,同じ集団中に雄株と両性株が維持されていることを考慮すると,雄株には何らかの繁殖上の有利性があると考えられる。フィリレア・アングスティフォリアにおいて,雄株が両性株に対してどのような点で有利だと考えられるか,実験1の結果から読み取れることを3行程度で説明せよ。

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H 実験2における両性株と雄株の出現パターンは,雄株の性質をもたらす遺伝子座 B を仮定することで説明ができる。遺伝子座 B の2つの対立遺伝子を B,b とし,B が b に対して顕性であるとき,雄株と両性株それぞれの遺伝子座 B の遺伝子型を以下の選択肢から選んで答えよ。ただし,雄株の花粉が両性株 H4に受粉して両性株ができたとしてもそれらは全て致死になると仮定する。

[選択肢] BB,Bb,bb

I 実験2における両性株 Ha と両性株 Hb の出現パターンは,交配可能性を決定する遺伝子座 F を仮定することで説明ができる。両性株同士が交配するとき,同じ表現型をもたらす遺伝子型をもつ個体の間では花粉管の伸長が阻害され,異なる表現型をもたらす遺伝子型をもつ個体の間でのみ花粉管が伸長する。遺伝子座 F における2つの対立遺伝子を F,f とし,F が f に対して顕性であるとき,表現型が Ha の両性株,表現型が Hb の両性株,雄株 M1,雄株 M2,雄株 M3それぞれの遺伝子座 F の遺伝子型を以下の選択肢から選んで答えよ。ただし,雄株の花粉が両性株 H4に受粉して両性株ができたとしてもそれらは全て致死になると仮定する。

[選択肢] FF,Ff,ff

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第3問

 次の文章を読み,問A〜Kに答えよ。

 異なる2種の生物が同所的に生息している状態において,食物や生活空間をめぐって種間競争が生じることがある。これら2種の生態的地位(ニッチ)が重複する場合は,同じ場所において2種は共存できないことがある。これを 1 と言う。一方,(ア)生態的地位が完全には重複せず,生活空間や食物を分かつことができる場合には,2種は共存し続けることができる。野外で 1 が起こっているかどうかを調べるため,系統的に近い淡水魚の分布と食物を河川で調査した。

 河川に生息する淡水魚は,上流から下流に沿って優占する種が異なることがある。ある河川区間Ⅰで同じ食物を利用する生態的地位の近い2種の分布を調べたところ,種Aは下流,種Bは上流に偏って分布した(図3—1)。水温や流速などの物理的環境が上流と下流では異なるので,2種は生活上の要求が異なる可能性もある。一方,2種は生態的地位の重複が大きいため,種間競争が作用して分布のパターンに違いが生じた可能性も考えられた。

 種Aは生活史の一部を海で過ごす通し回遊魚と呼ばれる種であり,産卵する雌はその年に海から遡上する。そのため,河川にダムが建設されて海から遡れなくなると,ダムの上流域では種Aは個体群を維持することができず絶滅する。ダムの建設で種Aが絶滅した河川区間Ⅱにおいて,種Bの個体群密度を調べたところ,種Bは上流から下流まで広く分布した(図3—1)。

 一方,複数のダムが建設されている別の河川において,種Bの遺伝的多様性を調べたところ,(イ)ダム上流域に分断化された種Bの局所個体群では遺伝的多様性の低下が生じており,絶滅リスクの高まりが懸念された(図3—2)。さらに,(ウ)ダム上流域の生態系にも様々な変化が生じると考えられた。

 生態的地位が近い2種が 1 を回避して共存している場合もある。(エ)種Bまたは種Cが単独で生息する河川では,いずれの種も表層を流下する陸生昆虫を食べていた。一方,種Bと種Cが共存する河川では,表層の食物の供給量が多い時期には両種ともに同じ表層の食物を食べ,表層の食物の供給量が少ない時期には同種・異種を問わず個体間で表層の食物をめぐる競争が強まった。そして,種Cは底層の水生昆虫を多く食べるようになった。また,単独域と共存域の種Cの顎を比較すると,共存域の種Cの顎は底層の食物を食べやすい形態に変化していた(図3—3)。このような形態の適応進化は 2 と呼ばれ,他の生物に対して適応した現象の一例である。

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図3—1 ある河川における優占種の分布(模式図)
図3—1 ある河川における優占種の分布(模式図)
図3—2 ある河川における種Bの遺伝的多様性
図3—2 ある河川における種Bの遺伝的多様性

4つのダムがある河川の5地点(矢印)で種Bを各50個体採集し,ある遺伝子座におけるヘテロ接合体の割合と対立遺伝子数(アレル数)を調べた結果(数値の意味は図中右下の枠内のとおり)。

図3—3 単独域と共存域における顎の形態
図3—3 単独域と共存域における顎の形態
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〔問〕

A 文中の 1 と 2 に入る用語をそれぞれ記せ。

B 1 の現象が野外調査で観察されているが,その説明として最も適切なものを以下の選択肢の中から1つ選べ。

(1) 種Bは上流の低い水温に適応しているのに対し,種Aは下流の高い水温に適応していると考えられる。

(2) 種Aが生息できない場合は種Bが下流まで分布を広げたことから,種Bの分布には種Aの存在が影響すると考えられる。

(3) 種Bは種Aよりも広範囲の環境条件に適応し,種間競争においても優位であり,河川全体で分布域を広げたと考えられる。

(4) 種Aは生活史の一部を海で過ごす通し回遊魚であるため,遡上できないダムの上流域では個体群を維持することができずに絶滅したと考えられる。

C 生態的地位が近い複数の種が共存するしくみとして,下線部(ア)の生活空間や食物の分割のほかに,どのようなものが考えられるか,以下から適切なものを全て選べ。

(1) ある生態系内の食物網における上位の捕食者が,複数種の共存を維持する効果をもつ。

(2) 個体群が隔離されることにより,異なる遺伝子型を持つ個体どうしが交配するという異系交配による同所的種分化が生じ,複数種の共存が進行する。

(3) 自然選択による適応進化のプロセスによって,それぞれの種が保存されるように生物は進化するため,複数種の共存が促進される。

(4) 自然界には大雨による河川の増水など生物の生存に影響する自然現象があり,このようなかく乱がある頻度で生じることで複数種の共存が促進される。

(5) 放射線やある種の化学物質が多い環境では,突然変異と適応放散に伴う種分化がある頻度で生じるようになり,複数種の共存が促進される。

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D 図3—2の調査結果と下線部(イ)について論じた以下の文の 3 〜 5 にあてはまる適切な語句を選択肢の中から選べ。また,X に入る用語を記せ。

 建設されてから約30年経過したダムの上流域に孤立した局所個体群は,下流域と比べて遺伝的多様性が低い傾向が認められた。本来,種Bは河川間で移動による 3 があったと考えられるが,ダム上流では X という偶然による遺伝子頻度の変化によって,ある特定の遺伝子型に固定されやすくなり,遺伝的多様性が低下したと考えられた。4 集団ほど X の影響が大きくなるため,4 河川ほど遺伝的多様性が低かったと考えられた。さらに,個体数が少ない場合,偶然にほとんどの個体の性が雄になるといった 5 によっても個体数が減少するリスクがあり,X の効果を加速させると考えられる。

[選択肢] 小さい,大きい,中規模な,遺伝子浸透,遺伝子平衡,遺伝的交流,遺伝子重複,自己複製系の確率性,人口学的な確率性,環境の確率性,カタストロフ的事象,表現型可塑性,環境形成作用,環境性決定

E 表3—1を説明した以下の文の 6 〜 9 に入る数値を記せ。ただし,8 と 9 はそれぞれ有効数字2桁で記せ。

 ダム上流とダム下流で種Bを各50個体採集し,ある遺伝子座の対立遺伝子を調べた。その結果,全体で 6 つの対立遺伝子が確認され,ダム上流から 7 つの対立遺伝子が見つかった。これら2つの地点間でヘテロ接合をもつ個体の割合を計算すると,ダム上流のヘテロ接合の個体の割合は 8 で,ダム下流のヘテロ接合の個体の割合は 9 であった。このような対立遺伝子数やヘテロ接合体の割合は,遺伝的多様性の指標となる。

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表3—1 ダム上流とダム下流で採集された種Bの遺伝子型ごとの個体数
表3—1 ダム上流とダム下流で採集された種Bの遺伝子型ごとの個体数

F 下線部(イ)について。遺伝的多様性が低下すると個体群の絶滅リスクが高まる理由について,以下の用語のうち一つのみを用いて2行程度で述べよ。選んだ用語は複数回用いても構わない。

[用語] 種多様性,適応放散,環境

G 下線部(ウ)について。ダム上流で種Aのような海から遡る通し回遊魚が不在になることで生じる可能性のある生態系の変化を述べた以下の文章について,誤りがある記述を全て選べ。

(1) 通し回遊魚に含まれる栄養物質の供給がなくなり,河川周辺の総生産量が減少する。

(2) 通し回遊魚を食物としていた鳥類が,ダム上流域に飛来しなくなる。

(3) 通し回遊魚から河川水に溶けだす DNA が失われるため,食物連鎖を通して遺伝的多様性が低下する。

(4) ダム上流域に残った種に対して,新たな自然選択が作用して進化が生じる。

(5) ダム上流域に空いた生態的地位が形成されるため,外来生物の魚類が持ち込まれると定着しやすい。

(6) 生物量が多いためにキーストーン種であった通し回遊魚が不在になり,生物群集が単純化する。

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H 下線部(ウ)について。調査した河川には寿命が最大100年に達しうる二枚貝の種Dが生息した。この二枚貝は,幼生期に種Aの稚魚(0歳)の鰓のみに寄生し,1〜2ヵ月間寄生した後に,川床に着底する。図3—1の河川区間Ⅰと河川区間Ⅱにおいてこの二枚貝の齢構成を調べたとき,河川区間Ⅰの年齢ピラミッドが図3—4であった場合,河川区間Ⅱで想定される年齢ピラミッドを図示せよ。ただし,河川区間Ⅰと河川区間Ⅱにおいて二枚貝の生存率に違いは無く,この河川にダムが建設されたのは約30年前であった。作図はフリーハンドで行い,縦軸と横軸の目盛りとラベルは図3—4と同じにすること。

図3—4 河川区間Ⅰにおける二枚貝(種D)の年齢ピラミッド
図3—4 河川区間Ⅰにおける二枚貝(種D)の年齢ピラミッド

横軸は各年齢の個体数を示し,グラフの値は雌雄別に各年齢の個体数の最大値を1とした相対値で示す。

I 図3—4の年齢ピラミッドに関連する記述として最も適切なものを,以下の選択肢の中から1つ選べ。

(1) 若齢時ほど死亡率が低い。

(2) 各年齢の死亡率がほぼ一定である。

(3) 若齢時ほど死亡率が高い。

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J 下線部(エ)の観察から推察されることについて述べた以下の(1)〜(4)のそれぞれについて,正しいなら「○」を,誤っているなら「×」を記せ。

解答例:(1)—○,(2)—×,(3)—○,(4)—×

(1) 共存域において2種が利用している食物の重複が大きいときは,種間を含む個体間の競争が強いと考えられる。

(2) 共存域において2種が利用している食物の重複が小さいときは,種間を含む個体間の競争が弱いと考えられる。

(3) 共存域において食物が十分にあるときは,生態的地位が近い2種は同じ食物を利用すると考えられる。

(4) 共存域において食物が少ないときは,生態的地位が近い2種は異なる食物を利用すると考えられる。

K 淡水魚の種Cが生息する河川に図3—5の左側のようなビニールハウス型のカバーを設置し,陸上から供給される陸生昆虫を遮断する野外操作実験をおこなった。自然区(対照区)とビニールハウス区で,藻類食者の水生昆虫と河川内の藻類の生物量を調べると,図3—5の右側のような間接効果を示す結果が得られた。

 なぜ,自然区とビニールハウス区の間で,水生昆虫と藻類の生物量に違いが生じたのかを3行程度で説明せよ。なお,ビニールハウスの影響は陸生昆虫を遮断する以外に無く,種Cは自然区とビニールハウス区にそれぞれ同じ個体群密度で生息した。

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図3—5 ビニールハウス区の図と写真(左),自然区とビニールハウス区における水生昆虫の生物量(右上),および河川内の藻類の生物量(右下)
図3—5 ビニールハウス区の図と写真(左),自然区とビニールハウス区における水生昆虫の生物量(右上),および河川内の藻類の生物量(右下)

ビニールハウス区では,河川を覆うようにビニールハウスが設置され,樹木などから落下してくる陸生昆虫の供給が遮断された。