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化 学
第1問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
気体定数 R = 8.3 × 10 3 P a · L · K − 1 · m o l − 1
二酸化炭素(C O 2 )は人間の生活において身近な気体であり,炭酸飲料や入浴剤など多くの場面で登場する。これらには,C O 2 気体の水に対する高い溶解度が活かされている。また,ドライアイス(C O 2 固体)も冷却剤として広く利用されている。これは,ドライアイスが低温であるだけでなく,液体になることなく空気中に拡散する(昇華する)という便利な性質によるところが大きい。
C O 2 など大気圧下で昇華する固体の多くは分子性結晶であり,その分子間力のうちの主な引力は a 力である。C O 2 分子のCとOの間は b 重結合で結ばれており,OCO結合角は c 度である。ドライアイスの蒸気圧が一酸化炭素(C O )固体の蒸気圧よりはるかに低い主な理由は,C O の極性が小さいことに加え,a 力は d が大きいほど大きくなるからである。
C O 2 の性質を調べるため,図1—1に示す実験装置を考えよう。温度 − 196 ℃ ,容積 0.50 L の容器Aには質量 2.7 g のドライアイスのみが,温度 0 ℃ ,容積 0.50 L の容器Bには 0.25 L の水のみが入っている。2つの容器は細い管でつながれており,その間にはバルブがある。最初の状態では,バルブは閉じている。バルブ,圧力計および管内部の体積は無視できるものとする。
図1—2は C O 2 の状態図である。なお,以下の問では,気体は全て理想気体とし,気体の圧力と液体への溶解度の関係については,ヘンリーの法則が成り立つものとする。
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図1—1 実験装置
図1—2 C O 2 の状態図
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〔問〕
ア 空欄 a ~ d に当てはまる言葉や数字を答えよ。
イ 図1—2において,圧力 1.0 × 10 5 P a でドライアイスが昇華する温度は何 ℃ か,また,C O 2 の液体が生成する最低の圧力は何 P a か,それぞれ有効数字2桁で答えよ。
ウ 容器Aを問イの昇華温度に上げたとき,容器A内のドライアイスの質量は何 g か,有効数字2桁で答えよ。ただし,ドライアイスの体積は無視してよい。
エ 容器Aの温度を問ウの温度からさらに上げていくと,ある温度でドライアイスがすべて昇華して気体になった。そのときの温度は何 ℃ か,有効数字2桁で答えよ。さらに温度を上げ,容器が 0 ℃ になったとき,容器内の圧力は何 P a か,有効数字2桁で答えよ。
オ 問エの操作が終了した状態でバルブを開けると,C O 2 気体は容器Bに流れ込み,水に溶け込んでいく。十分に時間が経ち平衡状態に達したとき,水に溶け込んだ C O 2 の物質量は何 m o l か,また容器内の圧力は何 P a か,それぞれ有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。ただし,0 ℃ における 1.0 × 10 5 P a の C O 2 気体の水に対する溶解度は 0.080 m o l · L − 1 とする。また,0 ℃ における水の蒸気圧は無視してよい。
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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~コに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
log 10 2 = 0.30 ,log 10 2.7 = 0.43 ,log 10 3 = 0.48
弱酸とその塩,または弱塩基とその塩を含む溶液は,少量の強酸や強塩基を加えてもpHがごくわずかしか変化しない。このような作用を緩衝作用と言い,私たちの血液や細胞内のpHを一定に保つという重要な役割を果たしている。ここでは,酢酸水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えたときのpHを求めることにより,緩衝作用を検証しよう。ただし,全ての実験は 25 ℃ で行い,溶液の混合による体積変化は無視できるものとする。
酢酸は水溶液中でその一部だけが電離しており,電離していない分子と電離によって生じたイオンの間に,以下に示す電離平衡が成り立っている。
C H 3 C O O H ⇌ C H 3 C O O − + H +
酢酸の電離定数を K a とする。また,酢酸水溶液のモル濃度を c ,電離度を α とすると,c と α を用いて,K a = e と表される。酢酸の電離度は1に比べて十分小さいので,1 − α ≒ 1 と近似すると,c と K a を用いて,H + のモル濃度は [ H + ] = f と表される。
まず,①溶液A(0.10 m o l · L − 1 の酢酸水溶液)をビーカーにとり,pHを測定した。次に,1000 m L の溶液Aに,500 m L の溶液B(0.10 m o l · L − 1 の水酸化ナトリウム水溶液)を加えた。②この混合溶液をCとし,pHを測定した。このとき,酢酸ナトリウムは,以下のように,ほぼ完全に電離している。
C H 3 C O O N a ⟶ C H 3 C O O − + N a +
次に,③1500 m L の溶液Cに,10 m L の溶液D(1.0 m o l · L − 1 の水酸化ナトリウム水溶液)を加え,pHを測定した。その結果,pHに大きな変動はなく,緩衝作用が確認された。
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一方,④1000 m L の溶液Aに,1000 m L の溶液Bを加えて中和反応を行った。このとき,溶液は中性にはならず,塩基性を示した。これは,以下に示すように,酢酸イオンの一部と水が反応して O H − が生じるためである。
C H 3 C O O − + H 2 O ⇌ C H 3 C O O H + O H −
〔問〕
カ 空欄 e ,f に入る適切な式を記せ。
キ 下線部①に関して,溶液AのpHを有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。ただし,25 ℃ における酢酸の電離定数を K a = 2.7 × 10 − 5 m o l · L − 1 とする。
ク 下線部②に関して,溶液CのpHを有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。
ケ 下線部③に関して,このときのpHを有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。
コ 下線部④に関して,このときのpHを有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記せ。ただし,水と反応して生成する酢酸の量は,酢酸イオンの量と比べて,きわめて少ないものとする。また,水のイオン積を K w = 1.0 × 10 − 14 m o l 2 · L − 2 とする。
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第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~カに答えよ。
2価の銅イオン(C u 2 + )を含む水溶液にヨウ化物イオンを加えると C u + に還元され,固体が沈殿する。たとえば,①硫酸銅(Ⅱ)水溶液に十分な量のヨウ化カリウム水溶液を加えると,白色のヨウ化銅(Ⅰ)の沈殿とヨウ素(I 2 )が生じる。注1)生じたヨウ素の量を,チオ硫酸ナトリウム(N a 2 S 2 O 3 )などを用いて滴定すれば,もとの硫酸銅水溶液の濃度を決定できる。
一方,固体中の銅は + 1 や + 2 など様々な価数をとりうる。水溶液中と同様の反応を,銅を含む固体の化合物に適用すると,固体中に含まれる銅の量を決定できる。
これらを踏まえて,以下の実験1~5を行った。
実験1:固体の酸化銅(Ⅱ)に十分な量のヨウ化カリウム水溶液を加え,さらに塩酸を加えると,酸化銅(Ⅱ)は白色の沈殿へと変化した。ここにデンプン溶液を加えたところ,溶液は紫色になった。
実験2:固体の酸化銅(Ⅰ)に十分な量のヨウ化カリウム水溶液を加え,さらに塩酸を加えると,酸化銅(Ⅰ)は白色の沈殿へと変化した。ここにデンプン溶液を加えたところ,溶液の色に変化は見られなかった。
実験3:銅の粉末を空気中で徐々に加熱しながら質量変化を測定したところ,図2—1のようになった。ある温度 T 1 を越えたところで質量は増加しはじめ,②その後一定となった。さらに温度を上げると,温度 T 2 で質量は減少しはじめた。その後加熱をやめて急冷し,固体Aを得た。Aの質量は 0.30 g であった。
実験4:ヨウ素 0.115 g に十分な量のヨウ化カリウム水溶液を加え,この溶液中のヨウ素を 0.10 m o l · L − 1 のチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定したところ,9.0 m L で終点に達した。
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実験5:Aに十分な量のヨウ化カリウム水溶液を加え,さらに③塩酸を加えると,Aは白色の沈殿へと変化し,溶液の色は褐色となった。④この溶液中のヨウ素を 0.10 m o l · L − 1 のチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定したところ,24.0 m L で終点に達した。
注1)生じたヨウ素は,ヨウ化カリウム水溶液に三ヨウ化物イオンとなって溶ける。
図2—1 銅の粉末を加熱した時の質量変化
〔問〕
ア 下線部①の化学反応式を記せ。
イ 下線部②でどのような物質が生じているか。化学式を記せ。
ウ 固体A中に含まれる物質は何か。また,そのように考えた理由を30字程度で述べよ。
エ 下線部③で,塩酸の代わりに硝酸を用いるのは適切でない。この理由を30字程度で説明せよ。
オ 下線部④で,溶液中に含まれるヨウ素(I 2 )の物質量は何 m o l か。有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記すこと。
カ 固体Aの中に含まれる銅の含有率(質量パーセント)を有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記すこと。
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Ⅱ 次の文章を読み,問キ~シに答えよ。
ハロゲンの単体は⑤酸化力を有するため種々の金属と反応し,対応するハロゲン化物が生成する。また,ハロゲンの単体は H 2 とも反応し,ハロゲン化水素(H F ,H C l ,H B r ,H I )が生成する。⑥ハロゲン化水素の沸点の序列は,H F ( 19.5 ℃ ) > H I ( − 35.1 ℃ ) > H B r ( − 67.1 ℃ ) > H C l ( − 85.1 ℃ ) である。
フッ素は,天然には蛍石や氷晶石など,フッ化物イオンとして存在する。⑦F 2 は水と激しく反応する。
C l 2 は,工業的には塩化ナトリウムの電気分解などにより製造される。C l 2 が初めて作られたのは,⑧酸化マンガン(Ⅳ)と濃塩酸の反応による(図2—2)。
B r 2 は,工業的には酸性溶液中で C l 2 による臭化物イオンの酸化によって製造される。B r 2 は種々の⑨有機化合物の臭素化剤として用いられるが,B r 2 の取り扱いにくさが問題として挙げられる。そのため,適切な条件下で O 2 が臭化物イオンを B r 2 に酸化できることを利用して,反応中に B r 2 を発生させる臭素化法が開発されている。
I 2 も C l 2 によるヨウ化物イオンの酸化によって製造される。I 2 は,有機化合物中の特定の官能基の検出,様々な滴定,⑩水分の定量などに用いられる。我が国は,ヨウ素の生産量,輸出量ともに世界第二位である。
〔問〕
キ 下線部⑤に関して,O 2 や S などの単体も酸化力を有する。O 2 ,S ,F 2 ,I 2 を酸化力が強い順に並べよ。
ク 下線部⑥に関して,H F の沸点が他のハロゲン化水素の沸点に比べて高い理由を20字程度で説明せよ。
ケ 下線部⑦の化学反応式を記せ。
コ 下線部⑧の化学反応式を記せ。また,図2—2のような装置で純粋な C l 2 を得たいときに,どのような精製装置,捕集装置(捕集方法)を用いるのが適切かを簡潔に説明せよ。精製装置に関しては,何をどのように除去するかを明確に記すこと。
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サ 下線部⑨に関して,臭素化反応は有機化合物の不飽和度の決定にも利用される。二重結合を含む炭素数20の直鎖の炭化水素が 10.0 g ある。この炭化水素に B r 2 を反応させると,質量が 33.3 g になった。すべての二重結合が B r 2 と反応したとして,この炭化水素1分子に含まれる二重結合の数を整数で答えよ。答えに至る過程も記すこと。
シ 下線部⑩に関して,式(1)の反応が速やかに,かつ完全に進行することが知られている。注2)
I 2 + S O 2 + C H 3 O H + H 2 O ⟶ 2 H I + H S O 4 C H 3 ( 1 )
この反応を利用して,購入したエタノール中に含まれる水分の定量を以下のように行った。
ビーカーに,十分な量のヨウ化物イオン,S O 2 を含むメタノール 90.0 m L および購入したエタノール 10.0 m L を加えた。この溶液に陽極,陰極を浸し,100 m A の電流を120秒間流したところで,溶液に I 2 特有の色が観測された。一方,購入したエタノールを加えずに実験を行ったところ,電流を流し始めた直後に I 2 の色が観測された。購入したエタノール中の含水率(質量パーセント)を有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も記すこと。ただし,陽極では,ヨウ化物イオンの酸化反応以外は起こらないものとする。陰極での反応は考えなくてよい。購入したエタノールの密度は 0.789 g · m L − 1 とする。ファラデー定数は F = 9.65 × 10 4 C · m o l − 1 とする。
注2)反応を効率よく進行させるためには塩基が必要であるが,酸化・還元反応に直接関わらないので,塩基を式(1)から除いて簡略化してある。
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図2—2 実験室での C l 2 の製造装置
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第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用い,構造式は例にならって示せ。
(構造式の例)
Ⅰ 次の反応1,反応2に関する記述を読み,問ア~カに答えよ。なお,本問では反応中に炭素骨格が変化したり,二重結合の位置が移動する反応は起こらないものとする。
〔反応1〕 濃硫酸を高温に加熱して,エタノールを加えると,分子内脱水反応によりエチレンが発生する。この例のように隣接する二つの炭素原子から水分子が脱離する反応は,温度条件などに違いはあるものの,多くのアルコールで行うことができ,二重結合を持つ化合物の合成法の一つである(式(1))。
〔反応2〕 一般に,炭素原子間の二重結合は硫酸酸性の過マンガン酸カリウムにより切断され,カルボニル化合物を与える。さらに,生成した有機化合物中にアルデヒド基が含まれる場合は,すべてカルボキシ基に酸化される。反応例を以下に示す(式(2))。
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〔問〕
ア 次に示すアルコールを用いて,反応1によりアルケンの合成を行う場合,生成する可能性のあるすべてのアルケンの構造式を示せ。立体異性体については考慮する必要はない。
イ 問アの反応により得られたアルケンの混合物をそのまま原料として用いて,さらに反応2により二重結合の切断を行う場合,生成する可能性のあるすべての有機化合物の構造式を示せ。炭酸および二酸化炭素は有機化合物とはみなさない。
ウ 硫酸酸性の過マンガン酸塩は基本的に式(3)に従った酸化反応を起こす。しかしながら,実際に酸化反応の実験を行うと,式(4)に示すように4価のマンガンの段階で反応が止まってしまう場合がある。このため,式(3)で計算した理論量の過マンガン酸塩を反応に用いた場合は反応が完結しないこともある。
M n O 4 − + 5 e − + 8 H + ⟶ M n 2 + + 4 H 2 O ( 3 )
M n O 4 − + 3 e − + 4 H + ⟶ M n O 2 + 2 H 2 O ( 4 )
下記のアルケン(分子式 C 13 H 26 )27.3 g を用いて,反応2の操作を行う際に,全体の 25.0 % の過マンガン酸カリウムが式(4)の反応を起こし,残りは式(3)に従って反応するものと仮定する。この場合,反応に必要な最小限の過マンガン酸カリウムの量は何 g か。有効数字2桁で答えよ。答えに至る過程も示すこと。
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エ 問ウの反応を行うと,カルボン酸とケトンが生成する。これらを分液操作により分離し,それぞれ蒸留操作により精製を行いたい。反応混合物から2種類の生成物を,それぞれ蒸留前の粗生成物として得るまでの分離操作について,簡潔に説明せよ。
オ C 7 H 16 O の分子式を持つ第三級アルコールAを用いて,反応1によるアルケンの合成を行い,さらに得られたすべての有機化合物を用いて,反応2の操作を行った。生成したすべての有機化合物の調査を行ったところ,ケトンのみが得られていることがわかった。化合物Aの構造として考え得る構造式をすべて示せ。立体異性体については考慮する必要はない。
カ 二重結合を一つ持つ炭化水素Bを用いて,反応2の操作を行い,生成したすべての有機化合物の調査を行ったところ,1種類のケトンのみが得られていることがわかった。その生成物中のカルボニル基をアルコールに還元した後,反応1の操作により,二重結合を導入した。さらに得られたすべての有機化合物を用いて,ふたたび反応2の操作により,二重結合を切断したところ,1種類の有機化合物のみが生成し,これはナイロン66(6,6-ナイロン)の合成原料のジカルボン酸と同じ化合物であった。化合物Bの構造として考え得る構造式をすべて示せ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問キ~シに答えよ。
単結合はその結合を軸として自由に回転できるが,通常,二重結合は回転できない。しかし,光をあてると二重結合が回転する場合がある。たとえば,式(5)のようにトランス-スチルベンに紫外光をあてると,シス-スチルベンへ変化する。
トランス-スチルベンの − C H = C H − を − N = N − で置き換えた化合物である①トランス-アゾベンゼンに紫外光をあてると,式(6)のようにシス-アゾベンゼンへ変化する。アゾベンゼンのシス形に可視光をあてるか,加熱すると,トランス形に戻る。②光をあててトランス形からシス形に変化させると,分子全体の形だけでなく,極性も変化する。分子全体の極性は,③ベンゼン環に置換基を導入することでも変化する。
アゾ化合物はDVD-Rの記録層用途の色素や,繊維を染色する染料として使用される。染料の一種であるオレンジⅡは,式(7)のようにスルファニル酸と2-ナフトールを出発物質として合成される。
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式(8)のようにオレンジⅡを還元すると,スルファニル酸ナトリウムと化合物Cが生成する。化合物Cに大量の無水酢酸を反応させると,分子式 C 14 H 13 N O 3 の化合物Dが得られる。
〔問〕
キ 下線部②に関して,アゾベンゼンのトランス形とシス形のうち,より極性が高い方の異性体がどちらであるかを30字程度の理由とともに記せ。
ク 下線部③に関して,トランス-アゾベンゼンの任意の二つの水素原子を塩素原子に置き換えた化合物を考える。その化合物で下線部①の反応が進んだ場合,反応の前後で二つの塩素原子の間の距離が変化しないものは何通りあるかを記せ。ただし,− N = N − 部分以外の構造変化は起こらないものとする。
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ケ 式(7)にしたがって,スルファニル酸(分子量173.1)3.98 g と2-ナフトール(分子量144.0)2.88 g を出発物質として,オレンジⅡ(分子量350.1)を合成したところ,4.83 g が得られた。オレンジⅡの収率を有効数字2桁で答えよ。ただし,オレンジⅡの収率は次の式で求められるものとし,理論上得られるオレンジⅡの物質量とは,いずれかの出発物質が完全に消失するまで反応が進行する場合に,生成し得るオレンジⅡの最大の物質量であるものとする。なお,無機試薬は反応に十分な量を使用したものとする。
収率 ( % ) = 実際に得られたオレンジⅡの物質量 理論上得られるオレンジⅡの物質量 × 100
コ 式(7)の反応の実験操作で,反応溶液を濃塩酸と混ぜるときにあらかじめ氷を加えて冷却する。ここで,温度を上げると,収率を低下させる反応が起こる可能性がある。構造式を用いて,その反応を化学反応式で示せ。
サ 化合物Cと化合物Dの構造式をそれぞれ示せ。
シ 式(7)の反応の実験を行い,報告書(レポート)を作成した。報告書を作成する上で明らかに不適切なものを次の(1)~(5)から二つ選べ。
(1) 実験手順書で指示された薬品の質量と実際に使用した質量が違ったので,指示された質量で計算した収率を記載した。
(2) 反応溶液を濃塩酸と混ぜるときに実験手順書には1回で加えるように書かれていたが,実際には2回に分けて加えたので,実際に行った実験操作を記載した。
(3) 固体の析出や気体の発生などの反応の様子について,実験ノートをもとに観察結果を記載した。
(4) オレンジⅡの収率を計算したところ 110 % になったが,収率は最大で 100 % であるべきなので,収率は 100 % であったと記載した。
(5) 観察された色の変化や気体の発生について実験前に立てた仮説と比較し,考察を記載した。
第1問 ドライアイスの圧力と、酢酸の pH 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは、閉じた容器にドライアイスを入れて温めていく問題。道具は C O 2 の状態図 (温度と圧力で、固体・液体・気体のどれになるかを表した図)。
筋は2つの場面の切りかえ。固体が残っている間 は、容器の中の気体の圧力は、状態図の昇華の線(固体と気体の境目)の上にしばられる。温めると線にそって圧力が上がり、そのぶん固体が気体になる。固体がなくなったあと は、気体の量が決まるので、ふつうの気体として P = n R T V で圧力が上がる。最後に水の入った容器とつなぎ、ヘンリーの法則(気体が水にとける量は、その気体の圧力に比例する)でとける量を出す。
Ⅱは、酢酸に水酸化ナトリウムを少しずつ加えたときの pH を、4つの場面(酢酸だけ・半分中和・さらに少し足す・ちょうど中和)で求めて、緩衝作用(pH が変わりにくいはたらき)を確かめる問題。半分中和したところでは酢酸と酢酸イオンが同じ量あり、pH は2つの量の比だけで決まる。
ア ドライアイスは C O 2 分子が集まった分子結晶で、分子どうしを結びつけている主な引力は、ファンデルワールス力 (すべての分子のあいだにはたらく弱い引力)。
C O 2 は O=C=O の形で、C と O は二 重結合。電子対の組が C のまわりに2つなので、反対向きに広がって一直線になり、結合角は 180 度。
CO 固体のほうがずっと蒸気圧が高い(気体になりやすい)理由は、CO の極性が小さいことに加えて、ファンデルワールス力が分子量 (分子の大きさ)が大きいほど強いから。CO は 28、C O 2 は 44 で、C O 2 のほうが強く引き合う。
答え a ファンデルワールス(分子間)、b 二、c 180、d 分子量(分子の大きさ)
イ 状態図で、圧力 1.0 × 10 5 P a の横線が、昇華の線(固体と気体の境目)と交わる点の温度を読む。約 − 78 ∘ C (− 78.5 前後で、2けたにすると − 78 。− 79 と読んでも読みの幅の中)。
液体ができる最低の圧力は、固体・液体・気体の3つの線が集まる三重点 の圧力。これより低い圧力では、温めても液体にならずに昇華する。図の三重点は − 56 ∘ C ・約 5.1 × 10 5 P a 。
ふだんの空気の圧力(約 1.0 × 10 5 P a )は三重点の圧力より低いので、ドライアイスは液体にならずに、そのまま気体になる。
答え − 78 ∘ C (図の読みは −78.5 前後。−79 でも読みの幅の中) , 5.1 × 10 5 P a
ウ − 78 ∘ C に温めると、固体が残っている限り、容器の中の C O 2 の気体の圧力は、昇華の線の上の 1.0 × 10 5 P a になる。
そのときの気体の物質量は、− 78 ∘ C = 195 K として
n = P V R T = 1.0 × 10 5 × 0.50 8.3 × 10 3 × 195 ≈ 3.1 × 10 − 2 m o l
ドライアイスは全部で 2.7 g なので、気体にならずに固体のまま残っているのは、その差。
エ さらに温めると、昇華の線にそって圧力が上がり、固体がどんどん気体になる。全部が気体になったとき、気体の物質量は 2.7 44 ≈ 6.1 × 10 − 2 m o l 。
全部が気体なら、圧力は P = n R T V で、温度に比例する直線になる。この直線を状態図に描き入れ、昇華の線と交わる点を読む。そこが「ちょうど固体がなくなった」温度で、約 − 70 ∘ C 。
そのあとは固体が無いので、気体の量はもう変わらない。0 ∘ C = 273 K での圧力は
P = 6.14 × 10 − 2 × 8.3 × 10 3 × 273 0.50
ドライアイスがもっと多いと(この容器で 6.22 g より多いと)、全部が気体になる前に三重点に着いて液体ができてしまう。2.7 g は液体ができない量になっている。
オ バルブを開けると、C O 2 は容器 B に流れこみ、一部が水にとける。気体が入れる体積は、容器 A の 0.50 L と、容器 B の水の上の 0.25 L で、合わせて 0.75 L。温度は 0 ∘ C 。
落ち着いたときの圧力を P とする。気体として残る量と、水にとけた量(ヘンリーの法則で圧力に比例)は
気体 : P × 0.75 8.3 × 10 3 × 273 とけた量 : 0.080 × P 1.0 × 10 5 × 0.25
この2つの合計が、はじめの 6.14 × 10 − 2 m o l に等しい。この式から P を出し、とけた量の式に入れる。
もし水にとけなければ、体積が広がるだけで圧力は 1.85 × 10 5 P a になるはず。とける分だけ、それより低いところで落ち着く。
答え 2.3 × 10 − 2 m o l , 1.2 × 10 5 P a
カ 酢酸の濃さ c のうち、割合 α が電離すると、[ C H 3 C O O − ] = [ H + ] = c α 、残った酢酸は c ( 1 − α ) 。これを電離定数の式に入れる:
K a = [ C H 3 C O O − ] [ H + ] [ C H 3 C O O H ] = c α · c α c ( 1 − α )
1 − α ≈ 1 とすると K a ≈ c α 2 、つまり α = K a / c 。[ H + ] = c α にこれを入れると、c と K a だけの式になる。
この近似は電離度が小さいときだけ使える。0.10 m o l / L の酢酸では電離度は 1.6% ほどで、十分に小さい。
キ カの式に c = 0.10 、K a = 2.7 × 10 − 5 を入れる:
[ H + ] = 0.10 × 2.7 × 10 − 5 = 2.7 × 10 − 6
pH は − log 10 [ H + ] なので、ルートは 1 2 倍になる:
p H = − 1 2 log 10 ( 2.7 × 10 − 6 ) = − 1 2 ( 0.43 − 6 )
ク 酢酸 0.10 mol(1000 mL)に NaOH 0.050 mol(500 mL)を加えると、酢酸の半分が中和される。液の中には、酢酸 0.050 mol と酢酸イオン 0.050 mol が同じ量 ある。
[ H + ] = K a × [ C H 3 C O O H ] [ C H 3 C O O − ]
2つが同じなので [ H + ] = K a 、つまり p H = − log 10 ( 2.7 × 10 − 5 ) = 5 − 0.43 。
酢酸を何倍にうすめても、比が同じならこの pH は変わらない。濃さではなく、比だけで決まる。
ケ 溶液 C に NaOH を 1.0 × 10 1000 = 0.010 m o l 加える。この O H − は酢酸と中和して、酢酸を 0.010 mol 減らし、酢酸イオンを 0.010 mol ふやす。酢酸 0.040 mol、酢酸イオン 0.060 mol になる。
[ H + ] = 2.7 × 10 − 5 × 0.040 0.060 = 1.8 × 10 − 5
log 10 1.8 = log 10 2 + 2 log 10 3 − 1 を使って pH にする。
丸めの注意:同じ与えられた値でも、p K a + log 10 3 2 = 4.57 + 0.18 = 4.75 の順に使うと、問題の指定の2けたで 4.8 になってしまう。問題が log 10 1.8 の形になるよう値を与えているので、[ H + ] = 1.8 × 10 − 5 を先に出して 5 − 0.26 = 4.74 とする(正確な値も 4.745 で 4.7)。
pH は 4.57 から 4.74 へと、0.2 ほどしか変わらない。同じ量の NaOH を水 1500 mL に入れると、pH は 7 から約 11.8 まではね上がる。加えた O H − を酢酸が引き受けてくれるのが緩衝作用。
コ 酢酸 0.10 mol と NaOH 0.10 mol でちょうど中和し、液 2000 mL に酢酸ナトリウムが 0.10 mol、つまり c = 0.050 m o l / L ある。酢酸イオンの一部が水と反応して O H − を出すので、液は塩基性になる。
この反応の平衡定数は K h = [ C H 3 C O O H ] [ O H − ] [ C H 3 C O O − ] = K w K a (分子と分母に [ H + ] をかけると出てくる)。生じる酢酸と O H − は同じ量で、酢酸イオンはほとんど減らないので
[ O H − ] = c K h = c K w K a
[ H + ] = K w K a c = 1.0 × 10 − 14 × 2.7 × 10 − 5 0.050 = 5.4 × 10 − 18
log 10 5.4 = log 10 2 + log 10 2.7 を使って pH にする。中和点でも中性(pH 7)にはならない。
第2問 銅の酸化物をヨウ素で数える・ハロゲン 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは、銅の酸化物にふくまれる銅の量を、ヨウ素を使って数える問題。カギになる性質は1つ:C u 2 + はヨウ化物イオン I − から電子をうばって C u + になり、そのときヨウ素 I 2 を出す 。C u + はもう電子をうばわないので、ヨウ素を出さない。
だから、酸化銅(Ⅱ) C u O (銅が + 2 )はヨウ素を出し、酸化銅(Ⅰ) C u 2 O (銅が + 1 )は出さない(実験1・2)。出たヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定すれば、C u O の量が分かる。それと固体の質量を組み合わせると、残りの C u 2 O の量も決まる。
Ⅱは、ハロゲンの性質(酸化力の強さ・沸点・フッ素と水・塩素のつくり方と集め方)と、臭素やヨウ素を「数える道具」として使う計算。臭素は二重結合1つに1分子つくので二重結合の数が、ヨウ素は水1分子と1分子反応するので水の量が分かる。
ア C u 2 + が I − から電子を1個もらって C u + になり、I − と結びついて白い C u I が沈む。電子を出した I − は2個で I 2 になる。
電子の数で合わせる。C u 2 + 2個が電子を2個受けとり、それをわたした I − 2個が I 2 1個になる。さらに C u I 2個をつくるのに I − が2個要るので、KI は合わせて4。残った K + と S O 4 2 − が K 2 S O 4 2つになる。
「C u 2 + 2個からヨウ素 1個」がこの問題の数え方の土台。
答え 2 C u S O 4 + 4 K I ⟶ 2 C u I + I 2 + 2 K 2 S O 4
イ 銅の粉を空気中で熱すると、T 1 から酸素と結びついて質量がふえはじめる。やがて全部が酸化されると、それ以上ふえずに一定になる。
空気中でふつうに熱したときにできるのは、黒い酸化銅(Ⅱ)。
ウ T 2 より高い温度では、酸化銅(Ⅱ) が酸素を手放して酸化銅(Ⅰ) に変わる(4 C u O → 2 C u 2 O + O 2 )。酸素が抜けるので、質量が減りはじめる。
その途中で熱するのをやめて急に冷やしたので、全部が C u 2 O に変わる前で止まっている。A には、まだ変わっていない C u O と、変わった C u 2 O の両方がふくまれる。
実験5でも、A から褐色のヨウ素が出た(C u O がある)。もし全部 C u 2 O なら、ヨウ素は出なかったはず。
答え C u O , C u 2 O (T₂ より上で CuO の一部が O₂ を出して Cu₂O になり、途中で急冷したから)
エ 塩酸は酸化力の無い酸で、固体をとかして C u 2 + を出すためだけにはたらく。
硝酸は、それ自体が強い酸化剤。I − を酸化してヨウ素にしたり、C u + (CuI や C u 2 O )を C u 2 + に酸化したりしてしまう。そうすると、C u O から出たのではないヨウ素まで余分にできて、滴定の値が大きくなる。ヨウ素の量が「C u O の量」を正しく表さなくなる。
答え 硝酸は酸化力があり、I⁻ や Cu⁺ を酸化して I₂ の量が変わってしまうから
オ まず、ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムが何対何で反応するかを実験4で確かめる。ヨウ素 0.115 g は 0.115 254 = 4.53 × 10 − 4 m o l 、チオ硫酸ナトリウムは 0.10 × 9.0 1000 = 9.0 × 10 − 4 m o l で、ちょうど 1:2 。
0.10 × 24.0 1000 = 2.4 × 10 − 3 m o l
カ アの「C u 2 + 2個からヨウ素1個」から、A の中の C u O はヨウ素の2倍で 2.4 × 10 − 3 m o l 。質量は 79.5 × 2.4 × 10 − 3 ≈ 0.191 g 。
A は 0.30 g なので、残りの 0.30 − 0.191 = 0.109 g が C u 2 O (式量 143)。物質量は 0.109 143 ≈ 7.6 × 10 − 4 m o l で、その中の銅は2倍。
銅の合計は、C u O の分と C u 2 O の分を足して
2.4 × 10 − 3 + 2 × 7.6 × 10 − 4 ≈ 3.93 × 10 − 3 m o l
これに 63.5 をかけて銅の質量にし、0.30 g で割る。
滴定だけでも、質量だけでも答えは決まらない。全部が C u O なら銅は 79.9%、全部が C u 2 O なら 88.8% で、2つの情報を合わせてはじめてその間のどこかが決まる。
キ 酸化力が強いほど、相手から電子をうばいやすい。「A が B のイオンから電子をうばって B の単体を出せる」なら、A のほうが酸化力が強い。
F 2 は、すべての単体の中でいちばん酸化力が強い(ケのとおり、水からさえ電子をうばって酸素を出す)。O 2 は、ヨウ化物イオンを酸化してヨウ素を出せる(空気中でヨウ化カリウム水溶液が黄色くなる)ので O 2 > I 2 。I 2 は、硫化水素から硫黄を出せる(H 2 S + I 2 → S + 2 H I )ので I 2 > S 。
ク ふつう、分子量が大きいほど分子どうしの引力(ファンデルワールス力)が強く、沸点は高い。HCl・HBr・HI はこの順で沸点が上がっていて、その並びをそのまま HF にのばすと − 96 ∘ C くらいのはず。
ところが HF は 19.5 ℃ と、とびぬけて高い。F は電気陰性度(電子を引きよせる強さ)がとても大きく、H−F の H が別の分子の F に強く引かれる。この水素結合 で分子どうしがつながっているので、ばらばらにするのに多くのエネルギーが要る。水が分子量のわりに沸点が高いのと同じしくみ。
ケ F 2 は酸化力がとても強く、水の O(酸化数 − 2 )から電子をうばって O 2 (0)にしてしまう。F は電子を受けとって H F (− 1 )になる。
電子の数で合わせる。O 2 1個ができるには O 2個が電子を合わせて4個出し、F 2 1個は電子を2個受けとるので、F 2 2個・水2個。H は水の4個が HF 4個に入る。
塩素やヨウ素は水とこうははげしく反応しない。フッ素だけが水を酸化して酸素を出す。
コ 酸化マンガン(Ⅳ) の Mn(+ 4 )が、塩化物イオンから電子を2個うばって M n 2 + になり、Cl は C l 2 になる。HCl 4つのうち、C l 2 になるのは2つ分で、残り2つは M n C l 2 の Cl になる(半分しか C l 2 にならない)。O 2個は水2分子になる。
出てくる気体には、濃塩酸から出た塩化水素 と、水蒸気 が混ざっている。まず水に通して、水によくとける HCl を取りのぞく(塩素はあまりとけない)。次に濃硫酸に通して、水蒸気を取りのぞく(乾燥)。順番を逆にすると、水を通ったときにまた水蒸気が入ってしまう。
塩素は空気より重く(分子量 71)、水にとけるので、びんの下からためる下方置換 で集める。
答え M n O 2 + 4 H C l ⟶ M n C l 2 + C l 2 + 2 H 2 O 。水に通して HCl を、次に濃硫酸に通して水蒸気を除き、下方置換で集める
サ 二重結合1つに B r 2 が1分子つく(付加)。二重結合の数を n とすると、炭素20個のくさり状の炭化水素は、二重結合1つごとに H が2個少ないので C 20 H 42 − 2 n 。分子量は 282 − 2 n 。
ふえた質量 33.3 − 10.0 = 23.3 g は、ついた臭素の質量。炭化水素 1 mol に B r 2 (分子量 160)が n mol つくので
10.0 282 − 2 n × 160 n = 23.3
二重結合が1つちがうと質量は 6 g ほどちがうので、33.3 g ならはっきり1つに決まる。
シ 陽極では、ヨウ化物イオンが電子をわたしてヨウ素になる(2 I − → I 2 + 2 e − )。電気を流すと、流した電子の半分の物質量のヨウ素ができる。
できたヨウ素は、式(1)ですぐに水と 1:1 で反応して消える。水が残っているあいだは色がつかず、水がなくなった瞬間からヨウ素がたまって色が出る。エタノールを入れないとすぐに色が出たので、メタノールなどの水は無視できて、120 秒で使われた水はすべて購入したエタノールの中の水。
流した電気量は 0.100 × 120 = 12.0 C 、電子は 12.0 9.65 × 10 4 ≈ 1.24 × 10 − 4 m o l 。ヨウ素と水はその半分の 6.22 × 10 − 5 m o l 。水の質量は 18.0 をかけて約 1.12 × 10 − 3 g 。
エタノール 10.0 mL の質量は 10.0 × 0.789 = 7.89 g 。これで割って 100 をかける。電流と時間から水の量をはかれるので、ほんのわずかな水でも正確に数えられる。
第3問 二重結合を作って、切って、しぼりこむ 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは、2つの反応を組み合わせて使う問題。反応1 :アルコールの − O H と、となりの炭素の H を水としてとり、二重結合をつくる。となりの炭素が何種類かあれば、それぞれの向きに二重結合ができる。反応2 :過マンガン酸カリウムで二重結合を切り、切れたそれぞれの炭素を C = O にする。
反応2で何ができるかは、二重結合の炭素に H がいくつついていたかで決まる。H が無い炭素(R 2 C = )はケトン になる。H が1つの炭素(R C H = )はアルデヒドになり、さらに酸化されてカルボン酸 になる。H が2つの端の炭素(= C H 2 )は、ギ酸を通りこして二酸化炭素 まで酸化される。問題では、炭酸や二酸化炭素は有機化合物に数えない。
この「H の数 → できるもの」の対応を使って、できるものを予想したり、できたものから元の形をしぼりこんだりする。
Ⅱは、アゾベンゼン(− N = N − で2つのベンゼン環をつないだ分子)が光でトランス形とシス形を行き来する話と、アゾ染料オレンジⅡのつくり方・収率・実験の報告の書き方。
ア 図のアルコールは、− O H が炭素のくさりの2番目についた 2-ペンタノール C H 3 − C H ( O H ) − C H 2 C H 2 C H 3 。− O H のついた炭素のとなりは、片側が C H 3 (1番)、反対側が C H 2 (3番)。
1番の炭素の H がとれると、1番と2番の間に二重結合ができる。3番の炭素の H がとれると、2番と3番の間に二重結合ができる。この2つの向きがあるので、アルケンは2種類できる(シス・トランスは考えなくてよい)。
答え C H 2 = C H − C H 2 C H 2 C H 3 , C H 3 − C H = C H − C H 2 C H 3
イ アでできた2つのアルケンを、それぞれ反応2で切る。
1-ペンテン(C H 2 = C H − …):端の = C H 2 は二酸化炭素まで行くので有機化合物にはならない。もう一方の = C H − C H 2 C H 2 C H 3 は H が1つなので、カルボン酸(炭素4個)になる。
2-ペンテン(C H 3 − C H = C H − C H 2 C H 3 ):二重結合の炭素はどちらも H が1つなので、両側ともカルボン酸になる。左は炭素2個、右は炭素3個のカルボン酸。
答え C H 3 C H 2 C H 2 C O O H , C H 3 C O O H , C H 3 C H 2 C O O H
ウ まず反応するアルケンの量。C 13 H 26 の分子量は 182 なので、27.3 g は 0.150 m o l 。
次に、アルケン1分子が過マンガン酸カリウムにわたす電子の数を、炭素の酸化数の変化で数える。二重結合の炭素のうち、H が1つの側はカルボン酸になり、酸化数が − 1 から + 3 へ(電子4個)。H の無い側はケトンになり、0 から + 2 へ(電子2個)。合わせて1分子で電子6個、全体で 0.150 × 6 = 0.900 m o l 。
過マンガン酸カリウムは、75.0% が式(3)で電子を5個、25.0% が式(4)で3個しか受けとらないので、1個あたり平均
0.750 × 5 + 0.250 × 3 = 4.5 個
要る量は 0.900 4.5 m o l で、式量 158 をかけて g にする。
もし全部が式(3)で進むと考えて 28.4 g しか用意しないと、25% が式(4)で止まっただけで 3.2 g 足りなくなる。「反応が完結しないこともある」はこのこと。
エ できたのはカルボン酸とケトン。ちがいは、カルボン酸だけが酸であること。
反応した液から有機物をジエチルエーテルなどに移し、分液ロートで炭酸水素ナトリウム水溶液(または水酸化ナトリウム水溶液)と振る。カルボン酸は塩(− C O O − N a + )になって水の層へ移り、ケトンは酸でも塩基でもないのでエーテルの層に残る。
エーテルの層は、エーテルを蒸発させればケトンが残る。水の層は、塩酸を加えて強い酸にすると、カルボン酸が塩からもとの形にもどって水にとけにくくなる。これを新しいエーテルで抜き出し、エーテルを蒸発させればカルボン酸が得られる。
答え ジエチルエーテルなどと NaHCO₃ 水溶液(か NaOH 水溶液)で振ると、カルボン酸は塩になって水の層へ、ケトンはエーテルの層に残る。エーテルの層からエーテルを蒸発させてケトンを、水の層に塩酸を加えて酸にもどし、エーテルで抜き出して蒸発させてカルボン酸を得る
オ 第三級アルコール(− O H のついた炭素に H が無い)では、− O H の炭素そのものは二重結合の片側になると必ず「H の無い炭素」なので、ケトンになる。問題は、反対側(となりの炭素)が何になるか。
となりの炭素が C H 2 だと、H が1つ残る二重結合になって、カルボン酸ができてしまう。だから、H をもつとなりの炭素は、C H 3 (二重結合の端 = C H 2 になり、二酸化炭素になる)か、C H (H が残らずケトンになる)でなければならない。H の無い炭素(第四級)なら、そちらへは二重結合ができないので問題ない。
C 7 H 16 O で − O H の炭素に3つの枝をつけ、すべての枝がこの条件を満たすものをさがす。2本がメチル基なら、3本目は炭素4個で、となりの炭素が CH の sec-ブチル基か、C の tert-ブチル基。メチル基が1本以下だと、炭素が足りなくなるか、C H 2 のとなりが出てしまう。
「二酸化炭素は有機化合物とみなさない」という約束が、この答えを成り立たせている。もし二酸化炭素も数えると、条件に合うアルコールは無くなる。
答え ( C H 3 ) 2 C ( O H ) − C H ( C H 3 ) C H 2 C H 3 , ( C H 3 ) 2 C ( O H ) − C ( C H 3 ) 3
カ 後ろから考える。最後にできたナイロン66の原料のジカルボン酸は、アジピン酸 H O O C − ( C H 2 ) 4 − C O O H 。1種類のアルケンを切ってこれだけができるのは、環の中に二重結合が1つあるシクロヘキセン(環が開いて、両はしがカルボン酸になる)。
シクロヘキセンは、シクロヘキサノールから水をとってできる(どちら向きにとっても同じシクロヘキセン)。シクロヘキサノールはシクロヘキサノン(ケトン)を還元したもの。だから、B を反応2で切ってできた1種類のケトンは、シクロヘキサノン。
B は、シクロヘキサンの環の炭素1つが、環の外に二重結合をもつ形 C 6 H 10 = X 。X の側からはシクロヘキサノン以外の有機化合物ができてはいけない。X が C H 2 なら二酸化炭素になって数えない。X がもう1つのシクロヘキサンの環なら、切ると両側ともシクロヘキサノンになる。この2つが条件に合う。
答え メチレンシクロヘキサン C 6 H 10 = C H 2 と、シクロヘキシリデンシクロヘキサン C 6 H 10 = C 6 H 10
キ 極性は、分子の中の電気のかたよりが打ち消されずに残っているかどうか。C−N 結合は、C と N の電気陰性度(電子を引きよせる強さ)のちがいで、少しかたよっている。
トランス形は、2つのベンゼン環が N=N をはさんで反対側にあり、分子が点対称の形。2つの C−N 結合のかたよりは逆向きになって、ちょうど打ち消し合う。
シス形は、2つのベンゼン環が同じ側を向いた折れた形。2つのかたよりが同じ側を向くので打ち消されず、分子全体にかたよりが残る。だからシス形のほうが極性が高い。
答え シス形。トランス形は2つの C–N 結合の極性が逆向きで打ち消し合うが、シス形は同じ側を向いて打ち消されないから
ク トランス形からシス形になるとき、形が変わるのは − N = N − の部分だけで、2つのベンゼン環はそれぞれ形を保ったまま、たがいの位置関係が変わる。
だから、2つの Cl が同じベンゼン環の上 にあれば、その2つの距離は変わらない。別々の環にあると、環どうしの位置が変わるので距離も変わる。
1つの環で H を置きかえられる場所は、N がついた炭素から見て 2〜6 の5か所。そこから2か所を選び、裏返すと同じになるもの(2 と 6、3 と 5 は同じ種類)をまとめて数える:
( 2 , 3 ) ( 2 , 4 ) ( 2 , 5 ) ( 2 , 6 ) ( 3 , 4 ) ( 3 , 5 )
ケ スルファニル酸 : 3.98 173.1 ≈ 0.0230 m o l 2-ナフトール : 2.88 144.0 = 0.0200 m o l
オレンジⅡは両方から1つずつでできるので、少ないほうの 2-ナフトールが先になくなる。理論上得られるのは 0.0200 m o l 。
実際に得られたのは 4.83 350.1 ≈ 0.0138 m o l 。これを理論量で割って 100 をかける。
多いほうの原料で計算すると、収率を小さく見まちがえる。先に使いきる原料(限定する原料)で計算するのがポイント。
コ 式(7)の途中では、スルファニル酸がジアゾ化されてジアゾニウム塩になっている。ジアゾニウム塩は熱に弱く、温度が上がると水と反応して窒素 N 2 を出し、フェノール(ベンゼン環に − O H )に変わってしまう。
こうなると、2-ナフトールとカップリングしてオレンジⅡになるはずのジアゾニウム塩が減るので、収率が下がる。だから氷で冷やしながら操作する。
反応式は、スルホ基 − S O 3 H のついたベンゼンジアゾニウム塩化物と水から、− S O 3 H のついたフェノール・N 2 ・H C l ができる形。
答え H O 3 S − C 6 H 4 − N 2 + C l − + H 2 O ⟶ H O 3 S − C 6 H 4 − O H + N 2 + H C l (ジアゾニウム塩が分解してフェノールになる)
サ 式(8)でオレンジⅡを還元すると、− N = N − が切れて、両側がアミノ基 − N H 2 になる。スルファニル酸の側はスルファニル酸ナトリウムにもどり、2-ナフトールの側は、アゾ基がついていた場所(1位)に − N H 2 をもつ 1-アミノ-2-ナフトールになる。これが C(C 10 H 9 N O )。
大量の無水酢酸は、− N H 2 も − O H もアセチル化する。アセチル基を1つつけるごとに C 2 H 2 O ふえるので、2つつけると
C 10 H 9 N O + 2 × C 2 H 2 O = C 14 H 13 N O 3
で、D の分子式と合う。1つだけなら C 12 H 11 N O 2 で合わない。D は、1位が − N H C O C H 3 (アミド)、2位が − O C O C H 3 (エステル)になった形。
答え C:1-アミノ-2-ナフトール(ナフタレンの 1 位に NH₂、2 位に OH)、D:NH₂ と OH の両方がアセチル化されたもの(1 位に NHCOCH₃、2 位に OCOCH₃)
シ 報告書には、実際に行ったこと と実際に得られた結果 を、そのまま書く。
(1) 実際に使った量とちがう「指示された量」で収率を計算すると、事実とちがう数字になる。実際に使った量で計算しなければならない。
(4) 収率が 100% をこえたのは、生成物に水や不純物が残っているなど、何か理由があるはず。その数字を 100% に書きかえるのは、結果をつくりかえることになる。110% のまま書いて、その理由を考察するのが正しい。
(2) の実際の操作を書く、(3) のノートにもとづく観察を書く、(5) の仮説とくらべて考察する、はどれも適切。