東大 過去問 2014年 化学|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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東京大学 第2次学力試験(前期)2014年 理科「化学」(東京大学がかつて公開したPDFの Internet Archive 保存版)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

修正履歴

お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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化 学

第1問

次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。

Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。

p18a
p18b

アボガドロ定数 NA=6.0×1023mol−1

1mol の水素ガス H2 の燃焼反応は,下記の熱化学方程式(1)で与えられる。

H2(気)+12O2(気)=H2O(液)+286kJ(1)

 この反応は,石炭や石油等の化石燃料を燃焼させたときに発生する二酸化炭素や窒素酸化物を出さないので,水素ガスは地球に優しい燃料の候補として注目されている。

 また,水素ガスは質量あたりの燃焼エネルギーがあらゆる物質の中で最大である。石炭,石油が燃えて二酸化炭素と水になるとき,質量 1g あたりの燃焼エネルギーは,それぞれ約 30kJ,約 46kJ である。それに対して,水素ガスの質量 1g あたりの燃焼エネルギーは a kJ である。

 これらの理由から,水素ガスを自動車等の燃料に使うという魅力的な見通しが生まれる。しかし,水素ガスが燃料として一般的に利用されるためには克服しなければならない問題がいくつかある。まずは,十分な量の水素ガスをどうすれば確保できるかという問題である。地球上に水素は大量に存在するが,ほぼすべての水素は化合物に組み込まれていて,水素ガスとしてはほとんど存在しない。したがって,燃料に使う水素ガスを得るには,水素を含む化合物から水素ガスを製造する必要がある。燃料に使う水素ガスは,主に,天然ガスの主成分であるメタン CH4 と水蒸気 H2O の反応により製造されている。その反応は,下記の熱化学方程式(2)で与えられる。

— 19 —
CH4(気)+2H2O(気)=4H2(気)+CO2(気)−165kJ(2)

 しかし,この水素ガス製造法は化石燃料に依存しており,二酸化炭素の発生を抑えることにはならない。そのため化石燃料を用いずに水素ガスを効率的に製造する方法の研究開発が続けられている。

 克服しなければならないもう一つの問題は,水素の貯蔵と輸送に関してである。室温の1気圧下では,水素ガスの体積は質量 1g あたり約 12L にもなる。体積を減らすために加圧すると肉厚の金属容器が必要となり,その質量のために,質量あたりの燃焼エネルギーが高いという水素ガスの利点が失われる。体積を減らす他の方法として,水素ガスを金属と反応させて化合物を作る方法がある。たとえば,水素ガスと金属リチウム Li を反応させて①固体の LiH を作ると,その体積は水素の質量 1g あたり,わずか b mL になる。その化学反応式は式(3)で与えられる。

H2+2Li⟶2LiH(3)

 生成した LiH を水と反応させると水素ガスが生成し,これを燃料に使うことができる。水素貯蔵の効率を上げるために,様々な水素化合物に関する研究が続けられている。

— 20 —

〔問〕

ア 熱化学方程式(1)から a の値を有効数字2桁で求めよ。

イ 表に示した結合エネルギーを用いて,水素ガスの質量 1g あたりの燃焼エネルギーを有効数字2桁で求めよ。求めた値が上記アで求めた a の値と一致するか否かを答えよ。また,その理由を40字程度で述べよ。

ウ 熱化学方程式(2)の反応を用いてメタンから水素ガスを製造し,その水素ガスを燃焼してエネルギーを得る場合,メタンの質量 1g あたり何 kJ の燃焼エネルギーが得られるか。有効数字2桁で求めよ。ただし,水の蒸発熱は 44kJ·mol−1 とする。

エ Li 原子の最外殻電子に働く原子核の正電荷は,他の電子の電荷で打ち消されて,近似的に +1 と考えられる。下線部①の固体の LiH 中では,Li 原子と H 原子の間に電荷の偏りが起きている。どちらの原子に負電荷が偏るか答えよ。また,その理由を,Li 原子と H 原子の電子配置に基づいて,40字程度で述べよ。

オ b の値を有効数字2桁で求めよ。ただし,LiH の結晶構造は,図1—1に示す塩化ナトリウム型構造をとり,隣り合う Li 原子と H 原子の距離は 0.20nm とする。

図1—1 塩化ナトリウム型構造
図1—1 塩化ナトリウム型構造
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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~サに答えよ。

 化学反応式が一見して単純であっても,複数の反応によって反応物が生成物へ変化する場合がある。例えば,気体の水素分子 H2 と気体のヨウ素分子 I2 から気体のヨウ化水素分子 HI が生成する次の反応を考えよう。

H2+I2⟶k12HI(4)

 ここで k1 は反応速度定数である。この反応は 600K 以上の高温において進行し,9kJ·mol−1 の発熱反応である。反応(4)では逆反応は考慮しなくてよい。また,HI の生成速度 vHI は次式で表されるように,H2 のモル濃度 [H2] と I2 のモル濃度 [I2] の積に比例することが実験事実として知られている。

vHI=k1[H2][I2](5)

 (5)式が成り立つことから,一見すると H2 と I2 が衝突し,反応(4)が進行するように見える。しかし,次の二つの反応の組み合わせによって HI が生成する説が有力である。

I2⇌2I(6) H2+2I⟶k22HI(7)

ここで k2 は反応速度定数である。ヨウ素原子 I は気体として存在し,反応(6)では平衡が成立している。反応(7)では逆反応は考慮しなくてよい。また,H2 はほとんど解離しないものとする。反応(6)の正反応は,150kJ·mol−1 の c 反応であり,平衡定数は,

K=[I]2[I2](8)

で表される。[I] は I のモル濃度である。

— 23 —

 反応(6)で生成した I は,H2 と衝突し,②エネルギーの高い中間状態を経由して,反応(7)に従って HI が生成する。反応(7)による HI の生成速度 vHI は,

vHI=k2[H2][I]2(9)

で表される。③反応(6)の正反応,逆反応の速度が反応(7)に比べて圧倒的に速く,常に平衡が成立しているとする。このとき,HI の生成速度 vHI は,[H2] と [I2] の積に比例し,実験事実と合致する。

 この例から分かるように,単純な化学反応式で記述される化学反応でも,実際に起きている過程は複雑な場合がある。

〔問〕

カ 空欄 c に当てはまる語句は吸熱か発熱か答えよ。その理由を30~50字程度で記せ。

キ 反応(6)において,圧力一定で温度を上昇させたとき,平衡はどちらに移動するか答えよ。その理由を40~80字程度で記せ。

ク 下線部②は何と呼ばれる状態か答えよ。

ケ 反応(7)の反応熱は何 kJ·mol−1 か,有効数字3桁で答えよ。

コ 下線部③において,反応(7)の反応速度が [H2] と [I2] の積に比例することを示せ。また,k1,k2,K の間に成り立つ関係式を記せ。

サ 反応(6)の正反応・逆反応の速度よりも,反応(7)の反応速度の方が圧倒的に速いとしよう。このとき,HI の生成速度は [H2] と [I2] に対してどのような依存性をもつか。例えば,[H2][I2]2 に比例する,のように答えよ。

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第2問

次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。

p24a

Ⅰ 次の文章を読み,問ア~キに答えよ。

 クロム化合物は,ギリシャ語の色(クロマ)が語源であるように酸化数や構造によって様々な色を呈する。①二クロム酸カリウムを水に溶かし,水酸化カリウムを用いて溶液を塩基性にすると溶液は黄色になり,この溶液を希硫酸を用いて酸性にすると赤橙色になる。酸化数が +6 のクロム化合物は,有機化合物に対する酸化剤としてよく用いられる。

 マンガン化合物は,幅広い酸化数をとり得る。酸化マンガン(Ⅳ)は,過酸化水素を水と酸素に分解する優れた触媒である。過マンガン酸カリウムは,強力な酸化作用を有し,その水溶液は特徴的な赤紫色を呈することから,酸化還元滴定によく用いられる。

 これらを踏まえて,以下の実験1~3をおこなった。

実験1:ある濃度の二クロム酸カリウムの希硫酸溶液 2.0mL と2-プロパノール 2.0mL を試験管に入れた。図2—1のように試験管に誘導管をつけて,この溶液を 65~70℃ に加熱したところ,溶液の色が緑色に変化した。反応終了時に,氷水で冷やされた試験管には②反応生成物である無色透明の液体が 0.30g 溜まった。

実験2:ある温度で 3.0%(質量パーセント)の過酸化水素水 1.0mL に粉末の酸化マンガン(Ⅳ)10mg を加えると,過酸化水素は完全に分解し,過酸化水素 1.0mol あたり 98kJ の反応熱が観測された。

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実験3:硫化鉄(Ⅱ)と書かれた試薬瓶に入っている試薬中の硫化鉄(Ⅱ)の純度を求めるために以下の実験をおこなった。過マンガン酸カリウム 1.6g を希硫酸 20mL に溶かし,水を用いて 25mL に希釈した。瓶の中の試薬 1.0g を希硫酸 100mL に加えると,③気体が発生し,試薬はすべて溶解した。④この溶液を十分に煮沸した後,調製した⑤過マンガン酸カリウム溶液で滴定したところ,5.4mL 滴下したところで終点に達した。

図2—1 実験1の反応装置
図2—1 実験1の反応装置
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〔問〕

ア 下線部①の化学反応式を記せ。

イ 下線部②の化合物の構造式を記せ。

ウ 実験1で用いた二クロム酸カリウム溶液の濃度は何 mol·L−1 か。有効数字2桁で答えよ。下線部②の化合物が生成する反応の化学反応式および答えに至る過程も記すこと。ただし,氷水で冷やされた試験管には下線部②の化合物のみが溜まったとする。

エ 実験2の反応を酸化マンガン(Ⅳ)20mg を用いておこなう場合,過酸化水素 1.0mol あたり何 kJ の反応熱が観測されるか。有効数字2桁で答えよ。

オ 下線部③の気体の化学式を記せ。また,その気体の特徴として正しいものを下記の選択肢(1)~(6)の中からすべて選べ。

(1) 水溶液は弱酸性を示す。

(2) 水溶液は弱アルカリ性を示す。

(3) 下方置換で捕集できる。

(4) 上方置換で捕集できる。

(5) 黄緑色の気体である。

(6) 褐色の気体である。

カ 下線部④に関して,溶液を煮沸せずに滴定すると,硫化鉄(Ⅱ)の純度の実験値が 100%(質量パーセント)を超えてしまった。この理由を40~60字程度で説明せよ。

キ 実験3の結果から,試薬中の硫化鉄(Ⅱ)の純度(質量パーセント)を有効数字2桁で求めよ。下線部⑤の反応の化学反応式および答えに至る過程も記すこと。ただし,試薬に含まれる不純物は,過マンガン酸カリウムとは反応しないものとする。

— 28 —

Ⅱ 次の文章を読み,問ク~セに答えよ。

 アルカリ金属は a が大きく,常温で激しく水と反応する。一方,銅や銀は a が小さいため,水と反応しないが,b の大きい硝酸を用いると⑥一酸化窒素を発生し溶ける。また,アルカリ金属 M はハロゲン X2 と反応し,ハロゲン化物 MX を生成する。MX の水に対する溶解度はアルカリ金属イオン M+ とハロゲン化物イオン X− のイオン半径の大きさと関係がある。MX の水への溶解は次の熱化学方程式(1)で表される。

MX(固)+aq=M+aq+X−aq+Q(1)

MX の溶解熱 Q が大きい程,MX の溶解度は高い。ここで,MX の溶解の過程を MX のイオン化と水和に分けて,次のように考える。

 固体の MX(固)が気相のイオン M+(気)と X−(気)へイオン化するときの熱化学方程式は式(2)で表される。

MX(固)=M+(気)+X−(気)+Qイオン化注)(2)

 M+(気)と X−(気)の間には静電気的な引力が働き,イオン化熱 Qイオン化注) は負で,Qイオン化 の大きさはイオン間の距離に反比例する。そこで,Qイオン化 と M+ のイオン半径 rM,X− のイオン半径 rX との間に,近似的に式(3)が成り立つとする。

Qイオン化=−αrM+rX(αは正の定数)(3)

つづいて,M+(気),X−(気)の水和はそれぞれ熱化学方程式(4)と(5)で表される。

M+(気)+aq=M+aq+QM(4) X−(気)+aq=X−aq+QX(5)

QM および QX は正で,イオン半径が小さいほど大きい。水和熱 Q水和 は QM と QX の和で表される。そこで,Q水和 と M+ のイオン半径 rM,X− のイオン半径 rX との間に,近似的に式(6)が成り立つとする。

Q水和=QM+QX=β(1rM+1rX)(βは正の定数)(6)

MX の溶解熱 Q におよぼす Qイオン化 と Q水和 の効果を考えると,Qイオン化 の絶対値が c ほど,また Q水和 が d ほど,MX の溶解度は高くなる。

 ここで,陽イオンが同じで陰イオンの異なる2種類のアルカリ金属のハロゲン化物,塩A,Bについて考える。Aの陰イオン半径は陽イオン半径と等しく(rX=rM),Bの陰イオン半径は陽イオン半径の半分である(rX=0.5rM)。Bの Qイオン化 からAの Qイオン化 を差し引くと e となり,一方,Bの Q水和 からAの Q水和 を差し引くと f となる。したがって,陰イオン半径が変わると,Qイオン化 と Q水和 の変化の度合いが異なり,MX の溶解熱が変化する。このため,陰イオン半径の異なる MX について水に対する溶解度の違いを推測することができる。

— 29 —

注) Qイオン化 には固体の MX(固)が気体の MX(気)へ変化する昇華熱が含まれる。

〔問〕

ク 空欄 a,b それぞれにあてはまる適切な用語を選択肢(1)~(6)の中から選びその番号を記せ。

(1) 酸 性

(2) 塩基性

(3) イオン化傾向

(4) 酸化力

(5) 電気陰性度

(6) 原子半径

ケ 下線部⑥に関して,銅と希硝酸との化学反応式を記せ。

コ 空欄 c,d それぞれにあてはまる適切な語を選択肢(1)および(2)から選びその番号を記せ。

(1) 大きい

(2) 小さい

サ 空欄 e,f それぞれにあてはまる式を α,β,rM を用いて記せ。

シ NaF のイオン化熱 QNaF,Na+ イオンおよび F− イオンの水和熱 QNa,QF,イオン半径 rNa,rF を以下に示す。NaF について式(3)および(6)の定数 α,β を有効数字2桁で求めよ。

p29a

ス シで求めた α,β を用い,塩Aと塩Bのどちらの溶解度が高いか答えよ。また,その理由を Qイオン化 と Q水和 の絶対値の変化量を比較し50字程度で述べよ。

セ ハロゲン化物イオンのイオン半径を以下に示す。リチウムイオンのイオン半径は 0.09nm である。ハロゲン化リチウムについて,溶解度が最も高いと考えられる塩と溶解度が最も低いと考えられる塩の化学式をそれぞれ記せ。

p29b
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第3問

次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。

p30a

Ⅰ 次の文章を読み,問ア~キに答えよ。

〔文1〕 天然に存在するグルコースのほとんどは,D型である。図3—1に示すとおり,炭素❶についたヒドロキシ基(以下,❶OH基と呼ぶ)が六員環をはさんで炭素❻の反対側にあるD-グルコースは,α-D-グルコースと呼ばれる。α-D-グルコースを水に溶かすと,①α-D-グルコースとは異なる環状分子や鎖状分子を含む平衡混合物として存在する。

図3—1 \alpha-D-グルコース水溶液中の平衡混合物(簡略化のため,環を構成するC原子は省略してある)
図3—1 α-D-グルコース水溶液中の平衡混合物(簡略化のため,環を構成するC原子は省略してある)

〔文2〕 図3—2に示すとおり,ポリマー分子P1は,5個の α-D-グルコース(A~E)間で❶OH基と❹OH基どうしが脱水縮合して生じる α-グリコシド結合か,または,❶OH基と❻OH基どうしが脱水縮合して生じる α-グリコシド結合により五糖の単量体を構成し,その単量体が n 個重合した構造をもつ。

— 31 —
図3—2 ポリマー分子P1の構造
図3—2 ポリマー分子P1の構造

〔問〕

ア 下線部①の環状分子に該当する糖を表している構造式を(1)~(6)からすべて選び,番号で記せ。

p31a

イ α-D-グルコース水溶液をアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させると,銀が析出するが,一般的な脂肪族アルデヒドをアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させる場合と比べて銀の析出速度が遅い。その理由を30字程度で記せ。

— 32 —

ウ 上記イの反応後,α-D-グルコースはどのような化合物に変換されるか,構造式を記せ。ただし,反応溶液はアルカリ性であることを考慮せよ。

エ α-D-グルコース水溶液中の六員環構造をもつ分子どうしが脱水縮合した以下の二糖(1)~(6)のうち,還元作用を示さないものをすべて選び,番号で記せ。

p32a

オ 酵素Qは,α-D-グルコースどうしの❶OH基と❻OH基間で生じた α-グリコシド結合のみを加水分解する。酵素Qを用いてポリマー分子P1(重合度 n)内に存在する❶OH基と❻OH基間で生じた α-グリコシド結合をすべて加水分解した場合の化学反応式を記せ。ただし,ポリマー分子P1の分子式は (C30H50O25)n と表記し,重合部分の両末端は化学反応式に反映させなくてよいものとする。

— 33 —

カ α-D-グルコースを十分量のアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させると,1mol の α-D-グルコースあたり 2mol の銀が析出する。8.1g のポリマー分子P1を酵素Qと反応させて,P1分子内に存在する❶OH基と❻OH基間で生じた α-グリコシド結合をすべて加水分解した後,酵素Qを除いてから十分量のアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させた。その結果,析出する銀の重量を有効数字2桁で記せ。ただし,重合部分の末端の反応は考慮しなくてよいものとし,また,ポリマー分子P1の分子量として 810n を用いよ。

キ α-D-グルコースで五糖を構成する際の異性体の数について考える。下記の3条件をすべて満たす異性体の数は全部でいくつあるか記せ。なお,ポリマー分子P1を構成する単量体も3条件を満たしており,異性体の数に含まれる。

条件1:下図に示す三糖(A—B—C)の部分構造をもつ。

条件2:残り2個の α-D-グルコースは,A,Bのいずれに対しても脱水縮合していない。

条件3:縮合の様式はすべて,❶OH基と❹OH基間で生じる α-グリコシド結合か,または,❶OH基と❻OH基間で生じる α-グリコシド結合のいずれかである。

p33a
— 34 —

Ⅱ 次の文章を読み,問ク~ソに答えよ。

〔文3〕 ナイロン66(6,6-ナイロン)は,ジカルボン酸XとジアミンYの縮合重合によって得られる。実験室でナイロン66をつくる場合には,Xの代わりに酸塩化物注)Zを使うと加熱や加圧が不要となり,以下の操作(ⅰ)~(ⅲ)を行うことで簡単に合成することができる。

(ⅰ) ビーカーに溶媒S1を入れ,化合物Zを溶かす。

(ⅱ) 別のビーカーに溶媒S2を入れ,②水酸化ナトリウムと化合物Yを溶かす。

(ⅲ) (ⅰ)で調製した溶液に(ⅱ)で調製した溶液を静かに注ぐと,(ⅱ)の溶液が上層となり,2つの液の境界面にナイロン66の薄膜が生成する。これをピンセットでつまんで引き上げ,試験管などに巻き付けて,ナイロン66の繊維を得る。

 一方,工業的にはXとYを直接縮合重合してナイロン66を合成する。実用のために力学的強度を上げるには,ポリマーの重合度を十分に高くする必要がある。③重合度の高いナイロン66を工業的に生産するには,XとYの物質量の比が重要である。そのため,まず最初に,物質量の等しいXとYからなる塩を作る。その後,270℃ 程度にまで加熱して,溶融状態で脱水縮合反応を進行させ,ナイロン66を得る。

〔文4〕 2-アミノプロパン (CH3)2CHNH2 にアクリル酸の酸塩化物注)を加えて反応させるとモノマーMが得られる。さらにMを重合させることでポリマーP2が得られる。P2はある温度以下では水に溶解し,その溶液は透明である。しかし,ある温度以上に加熱すると水に不溶となり,透明な溶液は白濁する。この現象は可逆的で,冷却すると再び透明な溶液に戻る。2-アミノプロパンの代わりにアミノメタン CH3NH2 を用いた場合はこのような性質を示さない。低温領域においては,P2の構造中で親水性の a 結合部位が水分子と水素結合を形成することでP2は水に溶解する。一方,高温領域では水分子がP2から遊離し不溶となる。P2中に存在する b 基の疎水性がこの不溶化に大きく寄与している。このように,P2は温度に応答する“賢い”高分子であり,環境や再生医療の分野などで様々な機能性材料として応用する研究が盛んに行われている。

— 35 —

注) 酸塩化物:ここでは,カルボン酸の −COOH を −COCl に置換した化合物をさす。

〔問〕

ク Zの構造式をすべての価標を省略せずに記せ。

ケ 下線部②について,水酸化ナトリウムを加える理由として最も適当なものを下記の選択肢より1つ選べ。

(1) カルボキシ基を中和することで縮合を加速する。

(2) 縮合速度を抑えることで重合度の高いポリマーを合成する。

(3) 縮合速度を抑えることでポリマーの強度を適切に調整する。

(4) 塩化水素を中和することで縮合速度が低下することを防ぐ。

(5) 酸塩化物をカルボン酸に加水分解することで縮合を加速する。

(6) 水酸化ナトリウムの溶解熱を利用して縮合を加速する。

コ S1とS2の組み合わせとして最も適当なものを1つ選べ。

(1) S1:ジクロロメタン,S2:水

(2) S1:水,S2:ジクロロメタン

(3) S1:アセトン,S2:水

(4) S1:水,S2:アセトン

(5) S1:ジエチルエーテル,S2:水

(6) S1:水,S2:ジエチルエーテル

(7) S1:エタノール,S2:ジエチルエーテル

(8) S1:ジエチルエーテル,S2:エタノール

サ 下線部③について,XとYの物質量が等しくない場合を考える。最初に存在していたXとYがもつカルボキシ基とアミノ基の総数をそれぞれ Nx,Ny とする。ここで Nx/Ny=r(0<r<1) とする。カルボキシ基がすべて反応したとき,反応後の全分子数を Nx と r を用いて表せ。

— 36 —

シ 合成したナイロン66の重合度の平均値(平均重合度)は,(最初の全分子数)/(反応後の全分子数)で計算できるものとする。サの条件において,平均重合度を r を用いて表せ。

ス サの条件において,カルボキシ基がすべて反応したときの平均重合度を200以上にしたい。そのためには,重合開始時においてXの物質量に対するYの物質量の過剰分を何 % 以下に抑える必要があるか。有効数字2桁で求めよ。

セ P2の構造式を記せ。なお,ポリマーの構造式は以下の例にならって繰り返し単位を記すこと。

p36a

ソ 空欄 a,b にあてはまる最も適切な語句をそれぞれ記せ。