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化 学
第1問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~オに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
アボガドロ定数 N A = 6.0 × 10 23 m o l − 1
1 m o l の水素ガス H 2 の燃焼反応は,下記の熱化学方程式(1)で与えられる。
H 2 ( 気 ) + 1 2 O 2 ( 気 ) = H 2 O ( 液 ) + 286 k J ( 1 )
この反応は,石炭や石油等の化石燃料を燃焼させたときに発生する二酸化炭素や窒素酸化物を出さないので,水素ガスは地球に優しい燃料の候補として注目されている。
また,水素ガスは質量あたりの燃焼エネルギーがあらゆる物質の中で最大である。石炭,石油が燃えて二酸化炭素と水になるとき,質量 1 g あたりの燃焼エネルギーは,それぞれ約 30 k J ,約 46 k J である。それに対して,水素ガスの質量 1 g あたりの燃焼エネルギーは a k J である。
これらの理由から,水素ガスを自動車等の燃料に使うという魅力的な見通しが生まれる。しかし,水素ガスが燃料として一般的に利用されるためには克服しなければならない問題がいくつかある。まずは,十分な量の水素ガスをどうすれば確保できるかという問題である。地球上に水素は大量に存在するが,ほぼすべての水素は化合物に組み込まれていて,水素ガスとしてはほとんど存在しない。したがって,燃料に使う水素ガスを得るには,水素を含む化合物から水素ガスを製造する必要がある。燃料に使う水素ガスは,主に,天然ガスの主成分であるメタン C H 4 と水蒸気 H 2 O の反応により製造されている。その反応は,下記の熱化学方程式(2)で与えられる。
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C H 4 ( 気 ) + 2 H 2 O ( 気 ) = 4 H 2 ( 気 ) + C O 2 ( 気 ) − 165 k J ( 2 )
しかし,この水素ガス製造法は化石燃料に依存しており,二酸化炭素の発生を抑えることにはならない。そのため化石燃料を用いずに水素ガスを効率的に製造する方法の研究開発が続けられている。
克服しなければならないもう一つの問題は,水素の貯蔵と輸送に関してである。室温の1気圧下では,水素ガスの体積は質量 1 g あたり約 12 L にもなる。体積を減らすために加圧すると肉厚の金属容器が必要となり,その質量のために,質量あたりの燃焼エネルギーが高いという水素ガスの利点が失われる。体積を減らす他の方法として,水素ガスを金属と反応させて化合物を作る方法がある。たとえば,水素ガスと金属リチウム L i を反応させて①固体の L i H を作ると,その体積は水素の質量 1 g あたり,わずか b m L になる。その化学反応式は式(3)で与えられる。
H 2 + 2 L i ⟶ 2 L i H ( 3 )
生成した L i H を水と反応させると水素ガスが生成し,これを燃料に使うことができる。水素貯蔵の効率を上げるために,様々な水素化合物に関する研究が続けられている。
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〔問〕
ア 熱化学方程式(1)から a の値を有効数字2桁で求めよ。
イ 表に示した結合エネルギーを用いて,水素ガスの質量 1 g あたりの燃焼エネルギーを有効数字2桁で求めよ。求めた値が上記アで求めた a の値と一致するか否かを答えよ。また,その理由を40字程度で述べよ。
ウ 熱化学方程式(2)の反応を用いてメタンから水素ガスを製造し,その水素ガスを燃焼してエネルギーを得る場合,メタンの質量 1 g あたり何 k J の燃焼エネルギーが得られるか。有効数字2桁で求めよ。ただし,水の蒸発熱は 44 k J · m o l − 1 とする。
エ L i 原子の最外殻電子に働く原子核の正電荷は,他の電子の電荷で打ち消されて,近似的に + 1 と考えられる。下線部①の固体の L i H 中では,L i 原子と H 原子の間に電荷の偏りが起きている。どちらの原子に負電荷が偏るか答えよ。また,その理由を,L i 原子と H 原子の電子配置に基づいて,40字程度で述べよ。
オ b の値を有効数字2桁で求めよ。ただし,L i H の結晶構造は,図1—1に示す塩化ナトリウム型構造をとり,隣り合う L i 原子と H 原子の距離は 0.20 n m とする。
図1—1 塩化ナトリウム型構造
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Ⅱ 次の文章を読み,問カ~サに答えよ。
化学反応式が一見して単純であっても,複数の反応によって反応物が生成物へ変化する場合がある。例えば,気体の水素分子 H 2 と気体のヨウ素分子 I 2 から気体のヨウ化水素分子 H I が生成する次の反応を考えよう。
H 2 + I 2 ⟶ k 1 2 H I ( 4 )
ここで k 1 は反応速度定数である。この反応は 600 K 以上の高温において進行し,9 k J · m o l − 1 の発熱反応である。反応(4)では逆反応は考慮しなくてよい。また,H I の生成速度 v H I は次式で表されるように,H 2 のモル濃度 [ H 2 ] と I 2 のモル濃度 [ I 2 ] の積に比例することが実験事実として知られている。
v H I = k 1 [ H 2 ] [ I 2 ] ( 5 )
(5)式が成り立つことから,一見すると H 2 と I 2 が衝突し,反応(4)が進行するように見える。しかし,次の二つの反応の組み合わせによって H I が生成する説が有力である。
I 2 ⇌ 2 I ( 6 )
H 2 + 2 I ⟶ k 2 2 H I ( 7 )
ここで k 2 は反応速度定数である。ヨウ素原子 I は気体として存在し,反応(6)では平衡が成立している。反応(7)では逆反応は考慮しなくてよい。また,H 2 はほとんど解離しないものとする。反応(6)の正反応は,150 k J · m o l − 1 の c 反応であり,平衡定数は,
K = [ I ] 2 [ I 2 ] ( 8 )
で表される。[ I ] は I のモル濃度である。
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反応(6)で生成した I は,H 2 と衝突し,②エネルギーの高い中間状態を経由して,反応(7)に従って H I が生成する。反応(7)による H I の生成速度 v H I は,
v H I = k 2 [ H 2 ] [ I ] 2 ( 9 )
で表される。③反応(6)の正反応,逆反応の速度が反応(7)に比べて圧倒的に速く,常に平衡が成立しているとする。このとき,H I の生成速度 v H I は,[ H 2 ] と [ I 2 ] の積に比例し,実験事実と合致する。
この例から分かるように,単純な化学反応式で記述される化学反応でも,実際に起きている過程は複雑な場合がある。
〔問〕
カ 空欄 c に当てはまる語句は吸熱か発熱か答えよ。その理由を30~50字程度で記せ。
キ 反応(6)において,圧力一定で温度を上昇させたとき,平衡はどちらに移動するか答えよ。その理由を40~80字程度で記せ。
ク 下線部②は何と呼ばれる状態か答えよ。
ケ 反応(7)の反応熱は何 k J · m o l − 1 か,有効数字3桁で答えよ。
コ 下線部③において,反応(7)の反応速度が [ H 2 ] と [ I 2 ] の積に比例することを示せ。また,k 1 ,k 2 ,K の間に成り立つ関係式を記せ。
サ 反応(6)の正反応・逆反応の速度よりも,反応(7)の反応速度の方が圧倒的に速いとしよう。このとき,H I の生成速度は [ H 2 ] と [ I 2 ] に対してどのような依存性をもつか。例えば,[ H 2 ] [ I 2 ] 2 に比例する,のように答えよ。
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第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~キに答えよ。
クロム化合物は,ギリシャ語の色(クロマ)が語源であるように酸化数や構造によって様々な色を呈する。①二クロム酸カリウムを水に溶かし,水酸化カリウムを用いて溶液を塩基性にすると溶液は黄色になり,この溶液を希硫酸を用いて酸性にすると赤橙色になる。酸化数が + 6 のクロム化合物は,有機化合物に対する酸化剤としてよく用いられる。
マンガン化合物は,幅広い酸化数をとり得る。酸化マンガン(Ⅳ)は,過酸化水素を水と酸素に分解する優れた触媒である。過マンガン酸カリウムは,強力な酸化作用を有し,その水溶液は特徴的な赤紫色を呈することから,酸化還元滴定によく用いられる。
これらを踏まえて,以下の実験1~3をおこなった。
実験1:ある濃度の二クロム酸カリウムの希硫酸溶液 2.0 m L と2-プロパノール 2.0 m L を試験管に入れた。図2—1のように試験管に誘導管をつけて,この溶液を 65 ~ 70 ℃ に加熱したところ,溶液の色が緑色に変化した。反応終了時に,氷水で冷やされた試験管には②反応生成物である無色透明の液体が 0.30 g 溜まった。
実験2:ある温度で 3.0 % (質量パーセント)の過酸化水素水 1.0 m L に粉末の酸化マンガン(Ⅳ)10 m g を加えると,過酸化水素は完全に分解し,過酸化水素 1.0 m o l あたり 98 k J の反応熱が観測された。
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実験3:硫化鉄(Ⅱ)と書かれた試薬瓶に入っている試薬中の硫化鉄(Ⅱ)の純度を求めるために以下の実験をおこなった。過マンガン酸カリウム 1.6 g を希硫酸 20 m L に溶かし,水を用いて 25 m L に希釈した。瓶の中の試薬 1.0 g を希硫酸 100 m L に加えると,③気体が発生し,試薬はすべて溶解した。④この溶液を十分に煮沸した後,調製した⑤過マンガン酸カリウム溶液で滴定したところ,5.4 m L 滴下したところで終点に達した。
図2—1 実験1の反応装置
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〔問〕
ア 下線部①の化学反応式を記せ。
イ 下線部②の化合物の構造式を記せ。
ウ 実験1で用いた二クロム酸カリウム溶液の濃度は何 m o l · L − 1 か。有効数字2桁で答えよ。下線部②の化合物が生成する反応の化学反応式および答えに至る過程も記すこと。ただし,氷水で冷やされた試験管には下線部②の化合物のみが溜まったとする。
エ 実験2の反応を酸化マンガン(Ⅳ)20 m g を用いておこなう場合,過酸化水素 1.0 m o l あたり何 k J の反応熱が観測されるか。有効数字2桁で答えよ。
オ 下線部③の気体の化学式を記せ。また,その気体の特徴として正しいものを下記の選択肢(1)~(6)の中からすべて選べ。
(1) 水溶液は弱酸性を示す。
(2) 水溶液は弱アルカリ性を示す。
(3) 下方置換で捕集できる。
(4) 上方置換で捕集できる。
(5) 黄緑色の気体である。
(6) 褐色の気体である。
カ 下線部④に関して,溶液を煮沸せずに滴定すると,硫化鉄(Ⅱ)の純度の実験値が 100 % (質量パーセント)を超えてしまった。この理由を40~60字程度で説明せよ。
キ 実験3の結果から,試薬中の硫化鉄(Ⅱ)の純度(質量パーセント)を有効数字2桁で求めよ。下線部⑤の反応の化学反応式および答えに至る過程も記すこと。ただし,試薬に含まれる不純物は,過マンガン酸カリウムとは反応しないものとする。
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Ⅱ 次の文章を読み,問ク~セに答えよ。
アルカリ金属は a が大きく,常温で激しく水と反応する。一方,銅や銀は a が小さいため,水と反応しないが,b の大きい硝酸を用いると⑥一酸化窒素を発生し溶ける。また,アルカリ金属 M はハロゲン X 2 と反応し,ハロゲン化物 M X を生成する。M X の水に対する溶解度はアルカリ金属イオン M + とハロゲン化物イオン X − のイオン半径の大きさと関係がある。M X の水への溶解は次の熱化学方程式(1)で表される。
M X ( 固 ) + a q = M + a q + X − a q + Q ( 1 )
M X の溶解熱 Q が大きい程,M X の溶解度は高い。ここで,M X の溶解の過程を M X のイオン化と水和に分けて,次のように考える。
固体の M X (固)が気相のイオン M + (気)と X − (気)へイオン化するときの熱化学方程式は式(2)で表される。
M X ( 固 ) = M + ( 気 ) + X − ( 気 ) + Q イオン化 注) ( 2 )
M + (気)と X − (気)の間には静電気的な引力が働き,イオン化熱 Q イオン化 注) は負で,Q イオン化 の大きさはイオン間の距離に反比例する。そこで,Q イオン化 と M + のイオン半径 r M ,X − のイオン半径 r X との間に,近似的に式(3)が成り立つとする。
Q イオン化 = − α r M + r X ( α は正の定数 ) ( 3 )
つづいて,M + (気),X − (気)の水和はそれぞれ熱化学方程式(4)と(5)で表される。
M + ( 気 ) + a q = M + a q + Q M ( 4 )
X − ( 気 ) + a q = X − a q + Q X ( 5 )
Q M および Q X は正で,イオン半径が小さいほど大きい。水和熱 Q 水和 は Q M と Q X の和で表される。そこで,Q 水和 と M + のイオン半径 r M ,X − のイオン半径 r X との間に,近似的に式(6)が成り立つとする。
Q 水和 = Q M + Q X = β ( 1 r M + 1 r X ) ( β は正の定数 ) ( 6 )
M X の溶解熱 Q におよぼす Q イオン化 と Q 水和 の効果を考えると,Q イオン化 の絶対値が c ほど,また Q 水和 が d ほど,M X の溶解度は高くなる。
ここで,陽イオンが同じで陰イオンの異なる2種類のアルカリ金属のハロゲン化物,塩A,Bについて考える。Aの陰イオン半径は陽イオン半径と等しく(r X = r M ),Bの陰イオン半径は陽イオン半径の半分である(r X = 0.5 r M )。Bの Q イオン化 からAの Q イオン化 を差し引くと e となり,一方,Bの Q 水和 からAの Q 水和 を差し引くと f となる。したがって,陰イオン半径が変わると,Q イオン化 と Q 水和 の変化の度合いが異なり,M X の溶解熱が変化する。このため,陰イオン半径の異なる M X について水に対する溶解度の違いを推測することができる。
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注) Q イオン化 には固体の M X (固)が気体の M X (気)へ変化する昇華熱が含まれる。
〔問〕
ク 空欄 a ,b それぞれにあてはまる適切な用語を選択肢(1)~(6)の中から選びその番号を記せ。
(1) 酸 性
(2) 塩基性
(3) イオン化傾向
(4) 酸化力
(5) 電気陰性度
(6) 原子半径
ケ 下線部⑥に関して,銅と希硝酸との化学反応式を記せ。
コ 空欄 c ,d それぞれにあてはまる適切な語を選択肢(1)および(2)から選びその番号を記せ。
(1) 大きい
(2) 小さい
サ 空欄 e ,f それぞれにあてはまる式を α ,β ,r M を用いて記せ。
シ N a F のイオン化熱 Q N a F ,N a + イオンおよび F − イオンの水和熱 Q N a ,Q F ,イオン半径 r N a ,r F を以下に示す。N a F について式(3)および(6)の定数 α ,β を有効数字2桁で求めよ。
ス シで求めた α ,β を用い,塩Aと塩Bのどちらの溶解度が高いか答えよ。また,その理由を Q イオン化 と Q 水和 の絶対値の変化量を比較し50字程度で述べよ。
セ ハロゲン化物イオンのイオン半径を以下に示す。リチウムイオンのイオン半径は 0.09 n m である。ハロゲン化リチウムについて,溶解度が最も高いと考えられる塩と溶解度が最も低いと考えられる塩の化学式をそれぞれ記せ。
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第3問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
Ⅰ 次の文章を読み,問ア~キに答えよ。
〔文1〕 天然に存在するグルコースのほとんどは,D型である。図3—1に示すとおり,炭素❶についたヒドロキシ基(以下,❶OH基と呼ぶ)が六員環をはさんで炭素❻の反対側にあるD-グルコースは,α -D-グルコースと呼ばれる。α -D-グルコースを水に溶かすと,①α -D-グルコースとは異なる環状分子や鎖状分子を含む平衡混合物として存在する。
図3—1 α -D-グルコース水溶液中の平衡混合物(簡略化のため,環を構成するC原子は省略してある)
〔文2〕 図3—2に示すとおり,ポリマー分子P1は,5個の α -D-グルコース(A~E)間で❶OH基と❹OH基どうしが脱水縮合して生じる α -グリコシド結合か,または,❶OH基と❻OH基どうしが脱水縮合して生じる α -グリコシド結合により五糖の単量体を構成し,その単量体が n 個重合した構造をもつ。
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図3—2 ポリマー分子P1の構造
〔問〕
ア 下線部①の環状分子に該当する糖を表している構造式を(1)~(6)からすべて選び,番号で記せ。
イ α -D-グルコース水溶液をアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させると,銀が析出するが,一般的な脂肪族アルデヒドをアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させる場合と比べて銀の析出速度が遅い。その理由を30字程度で記せ。
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ウ 上記イの反応後,α -D-グルコースはどのような化合物に変換されるか,構造式を記せ。ただし,反応溶液はアルカリ性であることを考慮せよ。
エ α -D-グルコース水溶液中の六員環構造をもつ分子どうしが脱水縮合した以下の二糖(1)~(6)のうち,還元作用を示さないものをすべて選び,番号で記せ。
オ 酵素Qは,α -D-グルコースどうしの❶OH基と❻OH基間で生じた α -グリコシド結合のみを加水分解する。酵素Qを用いてポリマー分子P1(重合度 n )内に存在する❶OH基と❻OH基間で生じた α -グリコシド結合をすべて加水分解した場合の化学反応式を記せ。ただし,ポリマー分子P1の分子式は ( C 30 H 50 O 25 ) n と表記し,重合部分の両末端は化学反応式に反映させなくてよいものとする。
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カ α -D-グルコースを十分量のアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させると,1 m o l の α -D-グルコースあたり 2 m o l の銀が析出する。8.1 g のポリマー分子P1を酵素Qと反応させて,P1分子内に存在する❶OH基と❻OH基間で生じた α -グリコシド結合をすべて加水分解した後,酵素Qを除いてから十分量のアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させた。その結果,析出する銀の重量を有効数字2桁で記せ。ただし,重合部分の末端の反応は考慮しなくてよいものとし,また,ポリマー分子P1の分子量として 810 n を用いよ。
キ α -D-グルコースで五糖を構成する際の異性体の数について考える。下記の3条件をすべて満たす異性体の数は全部でいくつあるか記せ。なお,ポリマー分子P1を構成する単量体も3条件を満たしており,異性体の数に含まれる。
条件1:下図に示す三糖(A—B—C)の部分構造をもつ。
条件2:残り2個の α -D-グルコースは,A,Bのいずれに対しても脱水縮合していない。
条件3:縮合の様式はすべて,❶OH基と❹OH基間で生じる α -グリコシド結合か,または,❶OH基と❻OH基間で生じる α -グリコシド結合のいずれかである。
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Ⅱ 次の文章を読み,問ク~ソに答えよ。
〔文3〕 ナイロン66(6,6-ナイロン)は,ジカルボン酸XとジアミンYの縮合重合によって得られる。実験室でナイロン66をつくる場合には,Xの代わりに酸塩化物注)Zを使うと加熱や加圧が不要となり,以下の操作(ⅰ)~(ⅲ)を行うことで簡単に合成することができる。
(ⅰ) ビーカーに溶媒S1を入れ,化合物Zを溶かす。
(ⅱ) 別のビーカーに溶媒S2を入れ,②水酸化ナトリウムと化合物Yを溶かす。
(ⅲ) (ⅰ)で調製した溶液に(ⅱ)で調製した溶液を静かに注ぐと,(ⅱ)の溶液が上層となり,2つの液の境界面にナイロン66の薄膜が生成する。これをピンセットでつまんで引き上げ,試験管などに巻き付けて,ナイロン66の繊維を得る。
一方,工業的にはXとYを直接縮合重合してナイロン66を合成する。実用のために力学的強度を上げるには,ポリマーの重合度を十分に高くする必要がある。③重合度の高いナイロン66を工業的に生産するには,XとYの物質量の比が重要である。そのため,まず最初に,物質量の等しいXとYからなる塩を作る。その後,270 ℃ 程度にまで加熱して,溶融状態で脱水縮合反応を進行させ,ナイロン66を得る。
〔文4〕 2-アミノプロパン ( C H 3 ) 2 C H N H 2 にアクリル酸の酸塩化物注)を加えて反応させるとモノマーMが得られる。さらにMを重合させることでポリマーP2が得られる。P2はある温度以下では水に溶解し,その溶液は透明である。しかし,ある温度以上に加熱すると水に不溶となり,透明な溶液は白濁する。この現象は可逆的で,冷却すると再び透明な溶液に戻る。2-アミノプロパンの代わりにアミノメタン C H 3 N H 2 を用いた場合はこのような性質を示さない。低温領域においては,P2の構造中で親水性の a 結合部位が水分子と水素結合を形成することでP2は水に溶解する。一方,高温領域では水分子がP2から遊離し不溶となる。P2中に存在する b 基の疎水性がこの不溶化に大きく寄与している。このように,P2は温度に応答する“賢い”高分子であり,環境や再生医療の分野などで様々な機能性材料として応用する研究が盛んに行われている。
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注) 酸塩化物:ここでは,カルボン酸の − C O O H を − C O C l に置換した化合物をさす。
〔問〕
ク Zの構造式をすべての価標を省略せずに記せ。
ケ 下線部②について,水酸化ナトリウムを加える理由として最も適当なものを下記の選択肢より1つ選べ。
(1) カルボキシ基を中和することで縮合を加速する。
(2) 縮合速度を抑えることで重合度の高いポリマーを合成する。
(3) 縮合速度を抑えることでポリマーの強度を適切に調整する。
(4) 塩化水素を中和することで縮合速度が低下することを防ぐ。
(5) 酸塩化物をカルボン酸に加水分解することで縮合を加速する。
(6) 水酸化ナトリウムの溶解熱を利用して縮合を加速する。
コ S1とS2の組み合わせとして最も適当なものを1つ選べ。
(1) S1:ジクロロメタン,S2:水
(2) S1:水,S2:ジクロロメタン
(3) S1:アセトン,S2:水
(4) S1:水,S2:アセトン
(5) S1:ジエチルエーテル,S2:水
(6) S1:水,S2:ジエチルエーテル
(7) S1:エタノール,S2:ジエチルエーテル
(8) S1:ジエチルエーテル,S2:エタノール
サ 下線部③について,XとYの物質量が等しくない場合を考える。最初に存在していたXとYがもつカルボキシ基とアミノ基の総数をそれぞれ N x ,N y とする。ここで N x / N y = r ( 0 < r < 1 ) とする。カルボキシ基がすべて反応したとき,反応後の全分子数を N x と r を用いて表せ。
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シ 合成したナイロン66の重合度の平均値(平均重合度)は,(最初の全分子数)/(反応後の全分子数)で計算できるものとする。サの条件において,平均重合度を r を用いて表せ。
ス サの条件において,カルボキシ基がすべて反応したときの平均重合度を200以上にしたい。そのためには,重合開始時においてXの物質量に対するYの物質量の過剰分を何 % 以下に抑える必要があるか。有効数字2桁で求めよ。
セ P2の構造式を記せ。なお,ポリマーの構造式は以下の例にならって繰り返し単位を記すこと。
ソ 空欄 a ,b にあてはまる最も適切な語句をそれぞれ記せ。
第1問 水素を燃料にする — 熱・しまい方・反応の道すじ 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 水素を燃料にするときの話。前半Ⅰは「燃やすと 1 g あたりどれだけ熱が出るか」「メタンから水素を作って燃やすと、もとのメタン 1 g あたりどれだけか」「LiH の結晶にしまうと水素 1 g が何 mL になるか」を数える。道具は熱化学方程式(反応で出入りする熱を書きこんだ式)と、ヘスの法則(道すじによらず、出発と到着が同じなら熱の合計は同じ)と、単位格子(結晶のくり返しの最小の箱)の原子の数え方。
後半Ⅱは、H 2 + I 2 → 2 H I という一見単純な反応が、じつは「I 2 が2個の I に分かれる(速く行ったり来たりして平衡)」と「H 2 と2個の I が反応する」の2段で進んでいる、という話。熱は式の足し引きで、速さの式は「平衡の式で [ I ] を消す」ことで求める。
最後のサは、2段のうちどちらが遅いかで速さの式の形が変わる、というのが見どころ。遅い段がボトルネック(全体の速さを決める一番せまい所)になる。
ア 式(1)は「H 2 1 mol(2.0 g)を燃やすと 286 kJ」。1 g あたりにするには、1 mol の質量で割ればよい:
286 k J 2.0 g = 143 k J / g
有効数字2桁にまるめる。石炭の約 30 kJ、石油の約 46 kJ と比べると3倍以上。水素は分子がとても軽いので、同じ質量に入っている分子の数が多い。
イ 結合エネルギー(気体の分子の結合1 mol 分を切るのに必要なエネルギー)で反応熱を出すときは、「切る結合」と「できる結合」を数える。H 2 + 1 2 O 2 → H 2 O で
切る:H−H 1本(436 kJ)と O=O 半分(表の 496 kJ の半分で 248 kJ)、合わせて 684 kJ。
できる:O−H 2本で 463 × 2 = 926 kJ。
できる方が大きいので、差の 242 kJ が発熱。1 g あたりは 242 ÷ 2.0 = 121 kJ で、有効数字2桁にする。
アの 143 と合わないのは、結合エネルギーは気体どうし の話で、できる水も気体の水だから。式(1)は液体の水ができる熱で、気体の水が液体になるとき、さらに凝縮熱(44 kJ/mol)が出る。実際 286 − 242 = 44 で、差はちょうど水の凝縮熱になっている。
答え 1.2 × 10 2 k J 、一致しない。結合エネルギーから出るのは気体の水ができる熱で、式(1)は液体の水ができる熱なので、水の凝縮熱の分だけちがうから
ウ メタン 1 mol から出発して、ヘスの法則で熱の出入りを順に足す。ここでは、ただし書きの蒸発熱 44 kJ/mol を「原料の水蒸気を、液体の水から作る 」分に使うと読む(できた水は式(1)どおり液体、原料の水も液体から用意する。出発も到着も液体の水にそろえる読み方)。
水蒸気を作る:H 2 O 2 mol を蒸発させるので − 44 × 2 = − 88 kJ(吸熱)。
できた H 2 4 mol を燃やす:+ 286 × 4 = + 1144 kJ。
合計 1144 − 165 − 88 = 891 kJ。メタン 1 mol は 16 g なので
891 16 ≈ 55.7 k J / g
この 891 kJ/mol は、メタンをそのまま燃やして C O 2 と液体の水にしたときの燃焼熱(約 890 kJ/mol)と同じ。出発(メタン+酸素+水)と到着(C O 2 +水)が同じなので、回り道をしても熱は増えない、というヘスの法則そのもの。
なお、読み方を変えて「原料の水蒸気はそのまま与えられ(液体から作る熱を数えない)、できた水も気体のまま 」とすると、242 × 4 − 165 = 803 kJ で 50 kJ/g になる。蒸発熱をまったく使わない読み方で、原料と生成の水の両方 の状態を変えている。原料の水は液体から作ったまま、できた水だけを気体のままにすると、242 × 4 − 165 − 88 = 715 kJ で 44.7 kJ/g になる(803 にはならない)。この問題は蒸発熱をどこに使うかで答えが変わるので、解答ではどう読んだかを書いておくのが安全。
エ Li の電子配置は K 2 L 1 (1s²2s¹)、H は K 1 (1s¹)。問題文のとおり、Li の最外殻電子が感じる核の正電荷は、内側の電子2個に打ち消されて約 +1。H の電子が感じる核の正電荷も +1。
同じ +1 に引かれていても、Li の最外殻電子は外側の L 殻にあって核から遠く、H の電子は一番内側の K 殻にあって核に近い。近いほど強く引かれるので、2つの原子が並ぶと、電子は H の側に寄る。
H が電子を1個もらった H − は K 殻が2個でうまり、He と同じ安定な電子配置になる。LiH は L i + と H − のイオンの結晶と見ることができる。
答え H 原子。Li の最外殻電子は L 殻にあって原子核から遠く、H の電子は K 殻にあって核に近い。どちらも核の正電荷は約 +1 なので、H の方が電子を強く引きつける(H − は He と同じ電子配置)
オ 塩化ナトリウム型では、単位格子(立方体)の辺の上に Li と H が交互にならぶので、1辺の長さは隣どうしの距離の2倍:a = 2 × 0.20 = 0.40 nm。
単位格子の中の数を数える。角の原子は 8 個の格子で分け合うので 1 8 、辺の上は 1 4 、面の上は 1 2 、まん中は 1 個まるごと。片方の原子は角 8×1 8 +面 6×1 2 =4、もう片方は辺 12×1 4 +まん中 1=4。つまり単位格子に LiH が 4 組。
単位格子の体積は ( 0.40 × 10 − 7 c m ) 3 = 6.4 × 10 − 23 c m 3 。水素 1 g は H 原子 1 mol、6.0 × 10 23 個なので、必要な単位格子の数は 6.0 × 10 23 4 = 1.5 × 10 23 個。体積は
1.5 × 10 23 × 6.4 × 10 − 23 c m 3 = 9.6 c m 3
気体なら 12 L(12000 mL)の水素が、1000分の1以下にちぢむ。液体の水素(1 g で約 14 mL)よりも小さい。
カ 反応(6)の正反応 I 2 → 2 I は、I−I の結合を1本切るだけで、新しい結合は1本もできない。結合を切るにはエネルギーが必要なので、その分の熱を外から吸収する。
だから吸熱反応。150 kJ/mol は、ちょうど I−I の結合エネルギーにあたる。
答え 吸熱。I 2 → 2 I は I−I 結合を切るだけで新しい結合ができないので、結合を切るエネルギーの分だけ熱を吸収するから
キ ルシャトリエの原理(平衡は、加えられた変化をやわらげる向きに移る)を使う。温度を上げると、平衡は熱を吸収する向き、つまり吸熱反応の向きに移る。
カより、反応(6)の正反応(I 2 → 2 I )が吸熱なので、平衡は右(I が増える向き)に移る。
圧力は一定なので、圧力の変化による移動は考えなくてよい。デモで温度を上げると、I に分かれる割合が大きくなる(1000 K・1 bar で約 2.6%、1200 K で約 12%)。
答え 右(I が増える向き)。温度を上げると、その変化をやわらげる向き、つまり吸熱の向きに平衡が移る。反応(6)の正反応は吸熱だから
ク 反応の途中で、原子どうしが組みかわる最中の、エネルギーが一番高い状態のこと。古い結合が切れかけ、新しい結合ができかけている。
この山の高さ(出発からの差)が活性化エネルギーで、山を越えられた粒子だけが生成物になる。教科書では「活性化状態」または「遷移状態」と呼ぶ。
ケ 反応熱の足し引き(ヘスの法則)で求める。反応(4)=反応(6)+反応(7) になっている:I 2 → 2 I のあとに H 2 + 2 I → 2 H I をつなげると H 2 + I 2 → 2 H I 。
だから(反応(7)の熱)=(反応(4)の熱)−(反応(6)の熱)。発熱を+で書くと
9 − ( − 150 ) = 159 k J / m o l
反応(7)は、I 原子が H と新しく結合する反応なので、大きな発熱になる。I₂ を切るのに 150 上って、そこから 159 下りる、という階段で考えると分かりやすい。
コ 反応(6)がいつも平衡なので、式(8)がいつも成り立つ:
[ I ] 2 = K [ I 2 ]
これを式(9)の [ I ] 2 に入れると、v H I = k 2 K [ H 2 ] [ I 2 ] となり、[ H 2 ] [ I 2 ] の積に比例する。
これが実験の式(5) v H I = k 1 [ H 2 ] [ I 2 ] と同じ形なので、係数を比べると k 1 = k 2 K 。
実験で測った「k 1 」は、じつは平衡定数と2段目の速さの定数のかけ算だった、ということ。式の形が同じでも、中で起きていることは同じとは限らない。
答え [ I ] 2 = K [ I 2 ] より v H I = k 2 [ H 2 ] [ I ] 2 = k 2 K [ H 2 ] [ I 2 ] , k 1 = k 2 K
サ 今度は逆で、I 2 → 2 I がゆっくりで、できた I はすぐに(反応(7)で)H 2 と反応してしまう。すると I がたまらず、平衡にもならない。
全体の速さは、遅いほうの段、つまり「I 2 が分かれる速さ」で決まる。I が1個できるたびに、待たずに HI になるので、HI のできる速さは I 2 が分かれる速さ([ I 2 ] に比例)と同じ割合で決まる。H 2 がどれだけあっても、I が来るのを待っているだけなので、[ H 2 ] には関係しない。
コとサをくらべると、同じ2段の反応でも、どちらの段が遅いかで [ H 2 ] への依存が1乗から0乗に変わる。デモでは、[ H 2 ] を2倍にしたときの速さの倍率が、コの条件で約2倍、サの条件でほぼ1倍になる。
第2問 電子のやりとりを数える・溶けやすさは引き算で決まる 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、クロムとマンガンの化合物を使った3つの実験。実験1は二クロム酸カリウムで 2-プロパノールを酸化して、できたものを冷やして集める。実験2は酸化マンガン(Ⅳ)を触媒にして過酸化水素を分解する。実験3は硫化鉄(Ⅱ)を酸に溶かし、できた F e 2 + を過マンガン酸カリウムで滴定(色の変わり目まで少しずつ加えて量をはかること)して純度を出す。
酸化還元の計算は、いつも「電子のやりとりの数をそろえる 」。酸化剤が受け取る電子の数と、還元剤が出す電子の数が等しくなるように係数を決め、物質量の比を出す。
後半Ⅱは、ハロゲン化アルカリ(NaF や LiI など)の溶けやすさ。溶けるときの熱を「結晶をばらばらのイオンにする(大きく吸熱)」と「イオンが水にかこまれる=水和(大きく発熱)」の2つに分け、その差 で考える。2つとも大きな数で、差は小さいので、イオンの大きさが少し変わるだけで溶けやすさの順番が決まる。
ア 二クロム酸イオン C r 2 O 7 2 − (赤橙色)は、塩基性にするとクロム酸イオン C r O 4 2 − (黄色)に変わる。イオンの式では
C r 2 O 7 2 − + 2 O H − ⟶ 2 C r O 4 2 − + H 2 O
クロムの酸化数はどちらも +6 で、酸化還元ではない(酸と塩基で形が変わるだけ)。酸性にもどすと逆に進んで赤橙色にもどる。
問いは化学反応式なので、O H − を K O H 、イオンをカリウム塩にして書く。
答え K 2 C r 2 O 7 + 2 K O H ⟶ 2 K 2 C r O 4 + H 2 O
イ 2-プロパノール C H 3 C H ( O H ) C H 3 は、OH のついた炭素に炭素が2つつながった第二級アルコール。第二級アルコールを酸化すると、その炭素の H と OH の H が取れて C=O になり、ケトンができる。
できるのはアセトン(沸点 56 ℃)。65〜70 ℃ に温めると、湯の温度より沸点が低いのはアセトンだけなので、出てくる気体の主役はアセトンになる。それが誘導管を通り、氷水で冷やされて液体としてたまる。原料の 2-プロパノール(沸点 82 ℃)や水(100 ℃)は湯の温度より沸点が高いので、出てくる量は少ない。ただし、沸点より低い温度でも液体には蒸気圧があるので、2-プロパノールや水も「まったく出ない」わけではない。沸点を比べるだけでは「アセトンだけ」とは言い切れず、ウの「②の化合物のみが溜まった」は問題が与えた条件として使う。無色透明の液体、という記述とも合う。
ウ 酸化剤:C r 2 O 7 2 − + 14 H + + 6 e − ⟶ 2 C r 3 + + 7 H 2 O (6 個受け取る。C r 3 + は緑色で、色の変化と合う)
還元剤:C H 3 C H ( O H ) C H 3 ⟶ C H 3 C O C H 3 + 2 H + + 2 e − (2 個出す)
電子の数をそろえるには、2-プロパノールを3倍する。足して電子を消し、H + を硫酸、イオンをカリウム塩・硫酸塩にすると反応式になる。二クロム酸カリウム 1 mol でアセトンが 3 mol できる。
たまったアセトンは 0.30 ÷ 58 = 5.17 × 10 − 3 mol。ここでは「たまった液はアセトンだけ(問題のただし書き)」に加えて、「できたアセトンは全部たまった(取りこぼしなし)」とも読んでいる。2つ目は問題にはっきり書かれていないが、こう読まないと濃さが決まらない。二クロム酸カリウムはその 1 3 で 1.72 × 10 − 3 mol。これが 2.0 mL に入っていたので
1.72 × 10 − 3 m o l 2.0 × 10 − 3 L ≈ 0.86 m o l / L
2-プロパノールは 2.0 mL で約 26 mmol あり、使われる 5.2 mmol より十分多い。つまり使い切られたのは二クロム酸のほうで、「アセトンの量から二クロム酸の量が分かる」という計算の前提と合う。
答え K 2 C r 2 O 7 + 3 C H 3 C H ( O H ) C H 3 + 4 H 2 S O 4 ⟶ C r 2 ( S O 4 ) 3 + 3 C H 3 C O C H 3 + K 2 S O 4 + 7 H 2 O , 0.86 m o l / L
エ 触媒は、反応の山(活性化エネルギー)を低くして速くするだけで、出発(過酸化水素)と到着(水と酸素)のエネルギーは変えない。反応熱は出発と到着の差なので、触媒の量を2倍にしても変わらない。
触媒を増やして変わるのは「どれだけ速く終わるか」だけ。過酸化水素は実験2と同じく完全に分解するので、1 mol あたりの熱は実験2と同じ値のまま。
オ 硫化鉄(Ⅱ)に希硫酸を加えると、弱い酸の塩に強い酸を加えたときと同じで、弱い酸の硫化水素が追い出される:
F e S + H 2 S O 4 ⟶ F e S O 4 + H 2 S
硫化水素の性質を選択肢と照らす。水に少し溶けて H 2 S ⇌ H + + H S − と電離するので、水溶液は弱い酸性((1)○、(2)×)。分子量は 34 で空気の平均(約 29)より重いので、下方置換(容器の下にたまるのを集める)で集める((3)○、(4)×)。色は無色で、腐った卵のようなにおい((5) 黄緑色は塩素、(6) 褐色は二酸化窒素で、どちらも×)。
カ 硫化水素は還元剤(電子を出すもの)で、H 2 S → S + 2 H + + 2 e − と反応する。煮沸しないと、発生した硫化水素の一部が溶液に溶けたまま残る。
すると、滴下した過マンガン酸カリウムが F e 2 + だけでなく、残った硫化水素とも反応してしまう。そのぶん多く滴下することになり、それを全部 F e 2 + の分として計算するので、純度が大きく出る。
FeS 1 個からは F e 2 + が電子を1個、H 2 S が2個出せるので、硫化水素が全部残ると見かけの純度は本当の3倍近くまでふくらむ。100% をこえてもおかしくない。煮沸は、硫化水素を追い出すための操作。
答え 溶液に溶けて残った硫化水素も還元剤として過マンガン酸カリウムと反応するので、鉄(II)イオンの分より多く滴下することになるから
キ 酸化剤:M n O 4 − + 8 H + + 5 e − ⟶ M n 2 + + 4 H 2 O (5 個受け取る。赤紫色が消えて、ほぼ無色になる)
なので、M n O 4 − 1 個に F e 2 + 5 個。これを K M n O 4 、F e S O 4 、H 2 S O 4 を使った化学反応式に書きなおす。
過マンガン酸カリウム(式量 158)の濃度は 1.6 ÷ 158 0.025 ≈ 0.405 mol/L。滴下した 5.4 mL の中の M n O 4 − は 0.405 × 5.4 × 10 − 3 = 2.19 × 10 − 3 mol。その5倍の 1.09 × 10 − 2 mol が F e 2 + 、つまり試薬に入っていた FeS(式量 88)の物質量。
1.09 × 10 − 2 × 88 ≈ 0.961 g
試薬 1.0 g のうち 0.961 g が FeS なので、純度は約 96%。終点は、F e 2 + がなくなって、加えた過マンガン酸イオンの赤紫色が消えずに残るところ。
答え 2 K M n O 4 + 10 F e S O 4 + 8 H 2 S O 4 ⟶ K 2 S O 4 + 2 M n S O 4 + 5 F e 2 ( S O 4 ) 3 + 8 H 2 O , 96 %
ク a:アルカリ金属は電子を出して陽イオンになりやすく、水とも激しく反応する。銅や銀は陽イオンになりにくく、水とも希硫酸・塩酸とも反応しない。この「陽イオンへのなりやすさ」がイオン化傾向。
b:銅や銀は H + では溶けないが、硝酸は H + ではなく硝酸イオンが電子を奪う(強い酸化剤として働く)ので溶かせる。だから硝酸の「酸化力」が大きい、が入る。酸性の強さではない点に注意。
ケ 希硝酸:H N O 3 + 3 H + + 3 e − ⟶ N O + 2 H 2 O (3 個受け取る。N の酸化数が +5 から +2 へ)
電子の数を 6 にそろえると、Cu が 3、H N O 3 が 2(と H + が 6)。C u 2 + と組になる硝酸イオン 6 個を両辺に足すと、H N O 3 は合わせて 8 になる。濃硝酸なら N O 2 が出るが、ここは希硝酸で NO。
答え 3 C u + 8 H N O 3 ⟶ 3 C u ( N O 3 ) 2 + 2 N O + 4 H 2 O
コ 溶けるときの熱は、式(2)と式(4)(5)を足したもの:
Q = Q イオン化 + Q 水和
Q イオン化 は負(結晶をばらばらにするのにエネルギーが要る)なので、その絶対値が小さい ほど損が少なく、Q は大きくなる。Q 水和 は正(水にかこまれて安定になる)なので、大きい ほど Q は大きくなる。問題文より Q が大きいほど溶けやすい。
サ 式(3)(6)に、A(r X = r M )と B(r X = 0.5 r M )を入れる。
A:Q イオン化 = − α 2 r M 、Q 水和 = β ( 1 r M + 1 r M ) = 2 β r M
B:Q イオン化 = − α 1.5 r M 、Q 水和 = β ( 1 r M + 2 r M ) = 3 β r M
e = − α r M ( 2 3 − 1 2 ) , f = 3 β r M − 2 β r M
陰イオンが小さくなると、イオン化の損(絶対値)も水和の得も、両方大きくなる。どちらが勝つかは α と β の大きさ次第で、それがスの問い。
シ 表の NaF の値を式(3)(6)に入れて、α と β を逆算する。表の値は Q N a F = − 923 kJ/mol、Q N a + Q F = 406 + 524 = 930 kJ/mol、r N a = r F = 0.12 nm。
式(3)より α = − Q N a F × ( r N a + r F ) = 923 × 0.24 ≈ 221 。
β = Q N a + Q F 1 0.12 + 1 0.12 = 930 16.7 ≈ 55.8
単位はどちらも kJ·nm/mol。有効数字2桁にまるめる。
答え α = 2.2 × 10 2 k J · n m / m o l , β = 56 k J · n m / m o l
ス サの式にシの値を入れると、A から B に変えたとき
水和の得の増えのほうが大きいので、溶解熱 Q は B のほうが大きい。だから B のほうがよく溶ける。r M の値によらず、この大小は変わらない。
答え B。A→B で Q 水和 の増え β / r M ( ≈ 56 / r M ) が、 | Q イオン化 | の増え α / ( 6 r M ) ( ≈ 37 / r M ) より大きく、溶解熱が大きくなるから
セ Q = − α r M + r X + β ( 1 r M + 1 r X ) に r M = 0.09 nm と、表のハロゲン化物イオンの半径(F − 0.12、C l − 0.17、B r − 0.18、I − 0.21 nm)を入れて比べる。
計算すると溶解熱は LiF 約 30、LiCl 約 96、LiBr 約 110、LiI 約 147 kJ/mol で、陰イオンが大きいほど大きい。
理由:L i + はとても小さく、ハロゲン化物イオンは全部それより大きい。陰イオンが大きくなると、水和の得(β / r X )は減るが、結晶をばらばらにする損(α / ( r M + r X ) )のほうがもっと減る。この式では、陰イオンが陽イオンとほぼ同じ大きさのときに一番溶けにくく、そこから大きくなるほど溶けやすくなる。
ふつう「フッ化物は溶けにくい」と覚えるが、それは Li⁺ のように小さい陽イオンのときの話。デモで陽イオンを大きくすると、F⁻ の塩のほうが Cl⁻ の塩より溶けやすくなる。
第3問 糖の形を読む・つなぎ方を数える・ナイロンの長さ 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰはグルコース(ブドウ糖)。水に溶かすと、六員環(6個の原子の輪)の形が開いて鎖の形になり、また閉じる、を行ったり来たりしている。閉じるときに ❶ の OH の向きが上下どちらにもなれるので、α 型と β 型がまざる。環の絵は回したり裏返したりして描かれていることがあり、番号をふって、各炭素の OH が環の上か下かを読む のが基本。
後半の P1 は、グルコース5個の単位がくり返すポリマー(たくさんつながった大きな分子)。図3—2 では、下の段で A の❶と B の❹がつながり、B の❶が次の単位の A の❹へつながって背骨になる。B の❻に C の❶、C の❻に D の❶が枝としてつき、D の❹に E の❶がつく。還元性(銀鏡反応などで相手を還元するはたらき)は、❶の OH が空いている(ほかの糖とつながっていない)糖の端 にだけある。
Ⅱはナイロン66。ジカルボン酸(COOH を2つ持つ)とジアミン(N H 2 を2つ持つ)がアミド結合でつながる縮合重合(水などを取りながらつながる反応)。結合が1本できるたびに分子の数が1つ減る、という数え方で、原料の量が少しずれると鎖の長さがどれだけ短くなるかを計算する。
ア 下線部①の「α-D-グルコースとは異なる環状分子」は、❶の OH の向きだけが逆の β-D-グルコース (❶の OH が❻の CH₂OH と同じ側)。選択肢から β-D-グルコースを選ぶ。
読み方:環の O の隣で、OH と H がついた炭素が❶、反対隣で CH₂OH がついた炭素が❺。そこから番号をふり、各炭素の OH が環の上か下かを読む。D-グルコースでは❷❸❹の OH が交互に上・下・上(または下・上・下)になる。絵を裏返すと上下がすべて入れかわり、同時に番号の回る向き(時計回りか反時計回りか)も逆になるので、両方を合わせて読めば同じ分子と分かる。
(1)(2) は、回したり裏返したりして描かれているが、読みなおすと❶の OH が❻と同じ側の β-D-グルコース。(3) は❷❸の向き、(6) は❹の向きがグルコースと違うので別の糖。(4)(5) はグルコースを鏡に映した形(L 型)で、鏡に映した分子は回しても裏返しても重ならない。
イ 銀鏡反応(アンモニア性硝酸銀水溶液を還元して銀を出す反応)をするのは、アルデヒド基(−CHO)。グルコースの環の形にはアルデヒド基が無く、環が開いた鎖の形のときだけ❶が −CHO になる。
水溶液中では、グルコースのほとんど(α 約 36%・β 約 64%)が環の形で、鎖の形はごくわずか。鎖の形が反応して減ると、環が開いて少しずつ補われるが、一度に反応できる量が少ないので、銀が出るのが遅い。
ふつうの脂肪族アルデヒドは、全部の分子がはじめから −CHO を持っているので、すぐ反応する。
答え 水溶液中ではほとんどが環状構造で、還元性を示すアルデヒド基をもつ鎖状構造がわずかしかないから
ウ 銀鏡反応で、アルデヒド基 −CHO は酸化されてカルボキシ基 −COOH になる。グルコースの鎖の形は
H O C H 2 − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C H O
なので、❶の −CHO が −COOH に変わったグルコン酸ができる。
ただし書きのとおり、反応溶液はアンモニアを含むアルカリ性なので、−COOH は H + を失って −COO⁻ の陰イオンになっている(アンモニウムイオンと塩をつくっている)。構造式は陰イオンの形で書く。
答え H O C H 2 − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C O O − (グルコン酸イオン。アンモニウム塩として存在)
エ 二糖が還元作用を示すかは、2つの糖のどちらかに「❶の OH が空いている(つながっていない)もの」があるかで決まる。❶が空いていれば、そこから環が開いて −CHO になれる。
図の二糖のつなぎ目を、それぞれ何番どうしかで読む(アの読み方で番号をふる)。(1) は❹どうし、(2) は❻どうし、(4) は❶と❹、(6) は❹どうしで、どれも少なくとも片方の❶が OH のまま空いている。
(3) と (5) は❶どうしでつながっているので、どちらの糖も❶が使われていて環が開けない。だから還元しない。スクロース(ショ糖)やトレハロースが還元しないのと同じ理由。
オ 図3—2 で、❶と❻の間の結合は1単位に2本ある(B の❻と C の❶、C の❻と D の❶)。この2本を水で切る(加水分解する)ので、1単位あたり水が2分子必要。
D−E(❶と❹でつながった二糖):マルトース C 12 H 22 O 11
残った背骨の A−B:A の❶と B の❹、B の❶と次の A の❹でつながったまま n 単位ぶん続くので ( C 12 H 20 O 10 ) n 。
原子の数を確かめると、左辺 C 30 H 50 O 25 + 2 H 2 O は C30・H54・O27、右辺も C 12 H 20 O 10 + C 6 H 12 O 6 + C 12 H 22 O 11 で C30・H54・O27。
答え ( C 30 H 50 O 25 ) n + 2 n H 2 O ⟶ ( C 12 H 20 O 10 ) n + n C 6 H 12 O 6 + n C 12 H 22 O 11
カ 銀を出すのは、❶が空いた糖の端。1本の結合を切るたびに、切られた側の糖の❶が OH にもどって空くので、「切った数=新しくできた還元する端の数」。
1単位で2本切るので、還元する端が2個できる(C の❶と D の❶)。背骨の A−B の鎖は、両端を考えなくてよい(ただし書き)ので、還元する端を持たない。
P1 の物質量(単位の数)は 8.1 810 n × n = 0.010 mol 単位。還元する端は 0.020 mol、銀はその2倍で 0.040 mol。
0.040 × 108 ≈ 4.3 g
(デモで、1→4 を切る酵素にすると 1 単位で 3 か所切れて 6.5 g、全部切るとすべてグルコースになって 10.8 g になる。)
キ 条件1の三糖は、A の❶と B の❹、B の❻と C の❶がつながっている。条件2より、残りの2個(D、E とする)は A にも B にもつかないので、C か、先についた糖につくしかない。
条件3より、新しい糖は自分の❶で、相手の❹か❻とつながる。C は❶がもう使われているので、あいている席は❹と❻の2つ。新しくついた糖にも❹と❻の2つの席ができる。
2個とも C につく:C の❹と❻に1個ずつ。D と E は同じ α-D-グルコースで区別できないので 1 通り。
1個が C に、もう1個がその糖につく:C の席の選び方が2通り(❹か❻)、その糖の席の選び方が2通り。2 × 2 = 4 通り。
合わせて 1 + 4 = 5 通り。P1 の単量体(C の❻に D、D の❹に E)は、後者の4通りのうちの1つ。
ク ナイロン66 の原料 X はアジピン酸 H O O C − ( C H 2 ) 4 − C O O H (炭素6個のジカルボン酸)、Y はヘキサメチレンジアミン H 2 N − ( C H 2 ) 6 − N H 2 (炭素6個のジアミン)。「66」はどちらも炭素が6個という意味。
酸塩化物 Z は、X の −COOH を両方とも −COCl にかえたもの(アジピン酸ジクロリド)。問題は「すべての価標を省略せずに」なので、C−H の線も、C=O の二重線も、C−Cl の線も全部書く。
答え O H H H H O ‖ | | | | ‖ C l − C − C − C − C − C − C − C l | | | |
ケ Z と Y がつながるとき、アミド結合1本ごとに HCl が1分子できる:
− C O C l + H 2 N − ⟶ − C O − N H − + H C l
できた HCl(酸)は、まだ反応していないアミノ基(塩基)と中和して塩になってしまう。塩になった − N H 3 + は Z と反応できないので、そのままでは反応がどんどん遅くなる。水酸化ナトリウムで HCl を中和しておけば、それを防げる。
ほかの選択肢:Z にはカルボキシ基が無い((1)×)。わざと遅くする目的ではない((2)(3)×)。Z を加水分解してカルボン酸にすると反応しにくくなる((5)×)。溶解熱は関係ない((6)×)。
コ 操作(ⅱ)では水酸化ナトリウムを溶かすので、S2 は水。(ⅲ)で (ⅱ) の液が上の層になるには、S1 は水と混ざらず、水より重い(密度が大きい)溶媒でなければならない。
ジクロロメタン(密度約 1.3 g/cm³)は水と混ざらず、水より重いので下の層になる。アセトン・エタノールは水と混ざるので境界面ができない。ジエチルエーテルは水と混ざらないが水より軽く、上の層になってしまう。
2つの液の境界面だけで Z と Y が出会うので、そこに膜ができる。
サ X は1分子に COOH が2個、Y は1分子に N H 2 が2個なので、はじめの分子の数は
N x 2 + N y 2 = N x 2 + N x 2 r = N x ( 1 + r ) 2 r
結合が1本できるたびに、2つの分子が1つになるので、分子の数は1つ減る。カルボキシ基がすべて反応すると、結合は N x 本できる。反応後の分子の数は
N x ( 1 + r ) 2 r − N x
で、これを整理すると答えになる。この式は r < 1 (X が少なめ)で、カルボキシ基が全部反応し、輪にはならない(鎖だけ)という条件で使う。r を 1 に近づけると分子の数は 0 に近づき、平均の長さ(シの答え)は限りなく長くなる。ただし r = 1 ちょうどで「0 本」になるわけではない。有限の数の分子を輪にせず全部つなげば 1 本の鎖が残り、つないだ結合は「分子の数 − 1」本で、端の基が 2 つ残る(端まで全部反応することはできない)。式の 0 は、「分子がとても多いときは 1 本は 0 とほぼ同じ」という極限の意味。
シ 平均重合度=(最初の全分子数)÷(反応後の全分子数)なので、サの2つの式の比をとる:
N x ( 1 + r ) / ( 2 r ) N x ( 1 − r ) / ( 2 r )
r が 1 に近づくと分母の 1 − r が 0 に近づき、平均重合度はいくらでも大きくなる。わずかな量のずれが、鎖の長さに大きく効く。
ス 1 + r 1 − r ≥ 200 ⟹ r ≥ 199 201
X に対する Y の過剰分は、分子の数の比で N y − N x N x = 1 r − 1 なので
1 r − 1 ≤ 201 199 − 1 = 2 199 ≈ 0.01005
たった 1% ずれるだけで、平均の長さが 200 までしか伸びない。だから工業的には、まず X と Y の塩(1対1でぴったり組になったもの)を作ってから加熱する(下線部③)。デモでは過剰 0.1% で平均約 2000、5% で約 41。
セ モノマー M は、2-アミノプロパンの N H 2 とアクリル酸の酸塩化物 C H 2 = C H − C O C l の −COCl が反応してアミド結合をつくったもの:
C H 2 = C H − C O − N H − C H ( C H 3 ) 2
これを重合させると、C=C の二重結合が開いてつながる付加重合になる。だから繰り返し単位は、主鎖の − C H 2 − C H − に、横から − C O − N H − C H ( C H 3 ) 2 がぶら下がった形。例の書き方にならって、繰り返し単位をかっこでくくり n をつける。
答え [ C H 2 − C H ( C ( = O ) − N H − C H ( C H 3 ) 2 ) ] n
ソ a:水と水素結合をつくるのは、N−H と C=O を持つ部分、つまりアミド結合の部分。低温では、ここに水分子がくっついて水に溶ける。
b:温度を上げると水分子が離れ、水をはじく部分(疎水性の部分)どうしが集まって溶けなくなる。− C H ( C H 3 ) 2 のイソプロピル基がその役。2-アミノプロパンのかわりにアミノメタンを使うと、この部分がメチル基になって疎水性が弱く、白くにごる性質が出ない、という本文の記述とも合う。