(必要なときは次の値を用いよ。原子量:H = 1.00,C = 12.0,N = 14.0,O = 16.0,Na = 23.0,S = 32.1,Ag = 108.0,Cd = 112.4。アボガドロ定数 /mol,気体定数 Pa·L/(K·mol),,,。)
第1問
次の文章を読んで,設問(1)〜(4)に答えよ。
①炭酸ナトリウム は,炭酸水素ナトリウム を加熱すると得られ,ガラスの製造に用いられている。 は水によく溶け, 水溶液を濃縮すると,②炭酸ナトリウム十水和物 の結晶が析出する。
水溶液を③塩酸で中和滴定すると,加えた塩酸の体積に対する pH の変化は図 1 のようになる。pH の急激な変化が 2 回現れ,④1 回目と 2 回目の中和点をそれぞれ第一中和点と第二中和点とよぶ。

図 1
設問(1):下線①に関して,以下の問いに答えよ。
(i) 下線①で起こる反応の化学反応式を記せ。
(ii) 8.40 g を Pa,327 ℃の条件で完全に反応させたときに発生するすべての気体の体積の合計 [L] を有効数字 2 桁で求めよ。なお,下線①の反応で 以外に生成する物質は Pa,327 ℃ですべて気体であるとし,理想気体とみなす。
設問(2):下線②に関して,30 ℃の 飽和水溶液 140 g から温度を変えずに水を 10.0 g 蒸発させた。このとき析出する の質量 [g] を有効数字 2 桁で求めよ。なお, の溶解度は 30 ℃で 40.0 g/水 100 g とし, はすべて十水和物として析出するものとする。
設問(3):下線③に関して,塩酸はハロゲン化水素である塩化水素 HCl の水溶液である。ハロゲン化水素について,以下の問いに答えよ。
(i) 次の(a)〜(d)の記述のうち,正しいものをすべて選び,記号で記せ。正しいものがなければ「なし」と記せ。
(a) HCl は,塩化ナトリウムに濃硫酸を加えて加熱すると発生する。 (b) すべてのハロゲン化水素は,無臭である。 (c) ハロゲン化水素の水溶液は,必ず強酸である。 (d) フッ化水素酸は,石英ガラスと反応する。
(ii) 容積 3.00 L の密閉したガラス容器に水素 とヨウ素 をそれぞれ 0.100 mol ずつ入れた。この容器を一定温度に保つとヨウ化水素 HI が生成し,次の反応 1 に示す平衡状態になり,平衡定数は 36.0 であった。密閉容器内の HI の物質量 [mol] を有効数字 2 桁で求めよ。
反応 1
設問(4):下線④に関して,次の文章を読んで以下の問いに答えよ。
0.100 mol/L の 水溶液 10.0 mL を 0.200 mol/L の塩酸で中和滴定することを考える。 はこの水溶液中で次の反応 2 にしたがって完全に電離する。
反応 2
中和滴定では,以下の反応 3 と反応 4 が起こる。
反応 3
反応 4
反応 3 と反応 4 の電離定数をそれぞれ mol/L, mol/L とする。また, とする。
(i) 第一中和点では, はほとんど として存在しており,次の反応 5 だけが起きていると見なすことができる。第一中和点の pH を小数第 2 位まで求めよ。
反応 5
(ii) 第二中和点では, はほとんど として存在しており,反応 3 だけが起きていると見なすことができる。第二中和点の pH を小数第 2 位まで求めよ。
(iii) この中和滴定の第一中和点と第二中和点を別々の実験で調べる。それぞれの中和点を調べるのに必要な pH 指示薬と,中和点における色の変化として最も適切なものを以下の[フェノールフタレイン,ブロモチモールブルー,メチルオレンジ,メチルレッド,赤色,黄色,緑色,青色,無色]の中からそれぞれ選び,解答欄に記せ。同じ語句を複数回使ってもよい。
第2問
次の文章を読んで,設問(1)〜(5)に答えよ。
顔料や太陽電池などに用いられる硫化カドミウム CdS は半導体であり,導体と絶縁体の中間の①電気伝導性を示す。
CdS の微粒子は適切な条件のもと,水中でカドミウムイオン と硫化物イオン を混合することで,②コロイドとして合成できる。③ここに塩化ナトリウム NaCl を多量に加えると溶液が濁り,CdS コロイド粒子が沈殿する。この沈殿を上澄み液と分離し,純水に分散させると④精製された CdS 微粒子のコロイド溶液が得られる。
数ナノメートルの均一な大きさで合成された CdS コロイド粒子は,紫外線を照射すると発光し,発光色は粒子の大きさにより変化する。このような特徴をもつ半導体の微粒子は,「量子ドット」ともよばれ,新しい発光材料として注目されている。2023 年のノーベル化学賞は,量子ドットの発見と合成方法の発展に貢献した研究者らに授与された。
設問(1):下線①について,物質の電気伝導性に関する(a)〜(d)の記述の中で,波線部に誤りを含むものをすべて選び,記号で記せ。誤りを含むものがなければ「なし」と記せ。
(a) Pa,25 ℃において,金属単体の中で最も高い電気伝導性を示すのは,銅 Cu である。
(b) ダイヤモンドは,絶縁体である。
(c) ポリアセチレンに金属のような高い電気伝導性を発現させるには,ヨウ素を添加すればよい。
(d) 電気抵抗が大きく,電熱器に使われるニクロムは,スズ Sn とクロム Cr を主な成分とする合金である。
設問(2):下線②について,コロイド粒子の運動の観察に関する次の文を読み,以下の問いに答えよ。
限外顕微鏡を用いて,コロイド溶液の側面から光を当てることで,コロイド粒子の運動の様子を観察した。コロイド粒子が光を散乱する ア 現象が起こり,限外顕微鏡では光点として見えた。光点の位置の変化から,コロイド粒子が イ 運動により,不規則にゆれ動いていることがわかった。
(i) 文中の空欄 ア と イ に入る最も適切な語句をそれぞれ記せ。
(ii) 文中の波線部について,観察しているコロイド溶液の温度を,溶液が沸騰しない程度に上昇させたところ,コロイド粒子の動きが活発になった。その理由を 40 字以内で説明せよ。
設問(3):下線③のように,多量の電解質の添加により親水コロイドが凝集し沈殿する現象の名称を記せ。
設問(4):CdS は図 1 のような閃亜鉛鉱(硫化亜鉛)型の結晶構造をとる。CdS の結晶構造に関する以下の問いに答えよ。
(i) 閃亜鉛鉱型 CdS 結晶内に含まれる の配位数を記せ。
(ii) 閃亜鉛鉱型 CdS 結晶内の最も近い と の中心間距離が 0.252 nm であるとき,単位格子の一辺の長さ [nm] を有効数字 2 桁で求めよ。

図 1 閃亜鉛鉱型 CdS の結晶の単位格子
設問(5):下線④について,精製された希薄なコロイド溶液は,ファントホッフの法則にしたがい,コロイド粒子のモル濃度に比例した浸透圧を示す。いま, mol の および mol の を用いて,CdS コロイド粒子を合成した。これを精製して得たコロイド溶液の体積は 100 mL であり,27.0 ℃での浸透圧は Pa であった。浸透圧に寄与する溶質が CdS コロイド粒子のみであるとき,以下の問いに答えよ。ただし, と は等量ずつすべて反応し,形成する CdS コロイド粒子の大きさは均一であるものとする。
(i) CdS コロイド粒子 1 個に含まれる の数 [個] を有効数字 2 桁で求めよ。
(ii) CdS コロイド粒子 1 個の体積 [nm³] を有効数字 2 桁で求めよ。ただし,CdS の密度は 4.87 g/cm³ とする。
第3問
問 1 次の文章を読んで,設問(1)〜(4)に答えよ。
分子式 のアルコール A,B,C がある。37 g の A,B あるいは C に単体のナトリウムを加え,生じた水素ガスをすべて集めて完全燃焼させたところ,いずれの場合も 4.5 g の水が得られた。A を硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液中で加熱して酸化したところ,化合物 D が生じた。そのまま加熱を続けて D を十分に酸化すると,化合物 E が生じた。B および C を同様に硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液中で加熱して十分に酸化したところ,B からは化合物 F が得られたが,C は変化しなかった。また,A,B,C をそれぞれ熱濃硫酸に加えたところ,分子内脱水反応が起こり,A および C からは同一の化合物 G が,B からは複数の化合物が生じた。
分子式 のアルコール H がある。H を硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液中で加熱して十分に酸化したところ,分子式 の化合物 I が得られた。I を水酸化ナトリウム水溶液中でヨウ素と混合したところ,黄色沈殿が生じた。また,H を熱濃硫酸に加えたところ,分子間で脱水反応が起こり,①複数の化合物が生じた。
分子式 のアルコール J がある。J を硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液中で加熱して十分に酸化したところ,分子式 の化合物 K が得られた。また,J を熱濃硫酸に加えたところ,分子内脱水反応が起こり,化合物 L,M,N が生じた。その後,化合物 L はより安定な構造異性体 O に変化した。一方,化合物 M および N は再度の分子内脱水反応によって同一の化合物 P に変化した。P は天然ゴムを乾留して得られる化合物と同一であった。
設問(1):アルコール A,B,C の構造式を図 1 にならって記せ。なお,不斉炭素原子が含まれる場合は,すべての不斉炭素原子に*を記せ。

図 1
設問(2):アルコール H の構造式を図 1 にならって記せ。なお,不斉炭素原子が含まれる場合は,すべての不斉炭素原子に*を記せ。
設問(3):下線①について,得られた化合物のうち,分子量が 150〜180 のものは全部で何種類存在するか。立体異性体を区別しない場合と,区別する場合について,それぞれ答えよ。
一般に,ある分子が 個の不斉炭素原子をもつ場合,それぞれの不斉炭素原子について 2 種類の異なる立体構造があるため,その分子は最大で 種類の立体異性体をもつ。したがって,不斉炭素原子を 2 つもつ酒石酸では,図 2 に示すように 種類の立体構造が考えられる。しかし,(i)と(iv)は分子内に対称面をもつため,回転によって重ね合わせることができる同一の構造である。そのため,酒石酸の立体異性体は全部で 3 種類となる。なお,図 2 において,実線は紙面と同一平面にある結合を,くさび形の太線は紙面の手前側に向かう結合を,くさび形の破線は紙面の奥側に向かう結合を意味している。

図 2
設問(4):化合物 K および O の構造式を図 1 にならって記せ。なお,不斉炭素原子が含まれる場合は,すべての不斉炭素原子に*を記せ。
問 2 次の文章を読んで,設問(1)〜(7)に答えよ。
デンプンは多数のグルコースが脱水縮合した天然高分子化合物であり,直鎖状構造をもつアミロースと枝分かれ構造をもつアミロペクチンからなる。これらの構成単位であるグルコースは,水溶液中では図 1 に示すように 2 種類の環状構造と 1 種類の鎖状構造の合計 3 種類が平衡状態で存在する。グルコース水溶液は,鎖状構造が a の部分構造をもつため,フェーリング液を還元して,ア の赤色沈殿を生じる。また,環状構造のグルコースは,1 位の炭素がエーテル結合とヒドロキシ基を 1 つずつ有する イ 構造をもつ。この 1 位のヒドロキシ基は特に反応性に富み,酸触媒の存在下,アルコール類や糖類に含まれるヒドロキシ基と脱水縮合してエーテル結合を形成する。このエーテル結合を,特にグリコシド結合とよぶ。

図 1 グルコースの水溶液中での平衡
α-グルコース 2 分子からなる二糖として,フェーリング反応を起こさないトレハロースがある。トレハロースの工業的生産方法として,図 2 の反応のように,アミロースを原料とした 2 段階の酵素反応 , を用いる方法が知られている。第一段階目の反応 では,アミロースにおける 1,4-グリコシド結合のうち,最も末端の位置 A において,ある変化が起こる。第二段階目の反応 では,加水分解により位置 B の 1,4-グリコシド結合が切断される。 および の反応により,もとのアミロースから 2 つ分のグルコース単位が取り除かれ,トレハロースが生成する。この反応が繰り返されることで,次々にトレハロースが得られる。

図 2 2 段階の酵素反応 , によるアミロースからのトレハロースの合成
しかし,アミロペクチンからは酵素反応 , のみでは効率的にトレハロースを得ることは困難である。これは,1,6-グリコシド結合を含むアミロペクチンを基質とした際に,酵素がうまく働かないことが一つの理由である。一方で,①アミロペクチンに対し別の酵素であるイソアミラーゼを作用させると,1,6-グリコシド結合の部分で加水分解が起こり,アミロースが生成する。この反応で生じたアミロースを酵素反応 , でトレハロースに変換することができる。
以上の方法にて,デンプンからトレハロースを効率的に得ることができる。
設問(1):図 1 の鎖状のグルコースの構造式において,a,b に入る適切な部分構造を,図 3 にならって記せ。

図 3
設問(2):文中の空欄 ア に入る化学式を記せ。また,イ に入る最も適切な語句を記せ。
設問(3):図 2 の構造式の書き方にならって,トレハロースの構造式を記せ。なお,解答用紙に与えられた部分構造に続けて記すこと。
設問(4):糖類に関する以下の(あ)〜(う)の記述のうち,波線部が正しいものをすべて選び,記号で答えよ。正しいものがなければ「なし」と記せ。
(あ) アミロースは,ヒドロキシ基どうしの水素結合により α-グルコース約 6 分子で一回転するらせん構造をとっている。
(い) スクロースを加水分解して生成するグルコースとガラクトースの等量混合物を転化糖という。
(う) 植物の細胞壁成分であるセルロースにセルラーゼを作用させると,主にセロビオースが生成する。
設問(5):質量 [g] のアミロペクチンを用いて下線①の反応を行ったところ,32.4 g のアミロースが生じた後に,トレハロースへの変換が起こった。生じたトレハロースの質量 [g] を有効数字 2 桁で求めよ。なお,このアミロペクチンからはグルコースは生成せず,すべてトレハロースに変換されたとする。
設問(6):アミロペクチンの分子構造の模式図を図 4 に示す。図中の太線は 1,6-グリコシド結合を示し,破線は 1,4-グリコシド結合を示す。ここで,アミロペクチンの分子構造の情報を得るために末端に存在する 2 種のグルコース構造 X,Y に着目する。X は還元性を示さないグルコース構造であり,Y は還元性を示すグルコース構造である。設問(5)で用いた質量 [g] のアミロペクチンについて,グルコース構造 X の量を求めたところ, mol であった。このアミロペクチンを構成する,1,4-グリコシド結合からなる直鎖状高分子構造は,平均して何個のグルコース単位から形成されるか,有効数字 2 桁で求めよ。

図 4 アミロペクチンの分子構造の模式図
設問(7):設問(5),(6)で用いた質量 [g] のアミロペクチンについて銀鏡反応を行ったところ,グルコース構造 Y が完全に反応し,17.3 mg の銀が析出した。このアミロペクチン 1 分子あたりに含まれる 1,6-グリコシド結合の個数を,有効数字 2 桁で求めよ。