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化学基礎・化学
第1問 次の文章を読み,問ア ~コ に答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。
気体定数 R = 8.3 × 10 3 P a · L · K − 1 · m o l − 1
ファラデー定数 F = 9.6 × 10 4 C · m o l − 1
我々の身の回りの物質は原子から構成され,原子と原子は電子を介して①結合を形成する。その結合の強さは②原子の組み合わせや結合のしかたにより異なるため,結合を組み替える化学反応にはエンタルピー変化が伴う。
環境に配慮したエネルギー源として,植物由来の③エタノールや,近年注目を集める④水素を利用する取り組みが進められている。水素の製造方法のひとつに,⑤メタンを原料とする化学反応を利用する方法がある。
化学反応に伴う電子を電流として直接取り出す装置を⑥電池という。燃料電池では,燃料となる物質のもつ化学的なエネルギーを,電気エネルギーとして取り出すことができる。多くの場合,⑦水素を燃料として,これに空気中から取り込む酸素を反応させて水を生成する過程で⑧電気エネルギーを得る。電池とは逆に,電圧をかけて電流を流すことで化学反応を起こすことを⑨電気分解という。太陽光発電などにより得られる電気エネルギーで水を電気分解して水素を得る取り組みも,再生可能エネルギーの観点から注目されている。
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〔問〕
ア 下線部①に関して,以下の(1)~(5)の中から,誤りを含むものをすべて選べ。すべて正しい場合には「なし」と答えよ。
(1) 炭素原子間の結合により構成されるダイヤモンドと黒鉛の結晶は,どちらも同じ密度である。
(2) 共有結合している 2 原子からなる分子をばらばらの 2 つの原子へ引き離すのに必要なエネルギーを活性化エネルギーという。
(3) アンモニウムイオンの 4 本の N − H 結合のうち,3 本の結合距離は同じであるが,1 本は異なる。
(4) 2 原子からなる分子において,電気陰性度の差が大きい組み合わせほど,原子間で共有結合を形成する。
(5) 単体のケイ素における安定な結晶は,共有結合によって構築されている。
イ 下線部②に関連して,以下の(1)~(5)について,長いものから順に,左から右へ並べよ。結合距離とは,原子の中心どうしを結ぶ距離である。
(1) 窒素分子内の窒素原子間の結合距離
(2) 水素分子内の水素原子間の結合距離
(3) エテン(エチレン)分子内の炭素原子間の結合距離
(4) エタン分子内の炭素原子間の結合距離
(5) ベンゼン分子内の隣接する炭素原子間の結合距離
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ウ 下線部③に関して,以下の説明文を読み,a に入る適切な化学反応式およびb に入る数値を答えよ。
〔説明文〕
液体のエタノールの燃焼エンタルピーは − 1237 k J · m o l − 1 である。ただし,水は水蒸気として生成するものとする。この燃焼の化学反応式はa と表される。一般に,化合物がその成分元素の単体から生じるとき,その化合物 1 m o l あたりのエンタルピー変化を生成エンタルピーとよぶ。黒鉛を単体の炭素の基準として考えると,1 m o l の炭素原子を含む黒鉛が完全燃焼するとき 394 k J のエネルギーが熱として発生する(発熱反応)ので,炭素(黒鉛)の燃焼エンタルピーは − 394 k J · m o l − 1 である。このとき 1 m o l の二酸化炭素が発生するので,二酸化炭素の生成エンタルピーは − 394 k J · m o l − 1 である。同様に,水蒸気の生成エンタルピーは − 242 k J · m o l − 1 である。以上の説明をもとに,液体のエタノールの生成エンタルピーはb k J · m o l − 1 と求められる。
エ 下線部④に関して,燃焼に際して 1.0 L の液体のエタノールと同等のエネルギーを生み出すのに必要な水素について,水素分子の物質量〔m o l 〕および室温大気圧での気体の体積〔L 〕を求めよ。解答は有効数字 1 桁でよい。計算の過程を簡潔に記せ。ただし,室温を 27 ∘ C (300 K ),大気圧を 1.0 × 10 5 P a とする。必要があれば,問ウ の説明文を参照せよ。水は水蒸気として生成し,気体はすべて理想気体,液体のエタノールの密度は 0.8 k g · L − 1 とする。
オ 下線部⑤に関して,メタンを原料とし,700 ∘ C 以上の高温で水蒸気と反応させて,水素と一酸化炭素を発生させる反応をメタンの水蒸気改質反応とよぶ。この条件で化学平衡が成り立っているものとする。原料の物質量あたりの水素の収量を大きくするためには,反応容器内の圧力は高い方がよいか,低い方がよいか,あるいは無関係か,簡潔な理由とともに答えよ。
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カ 問オ で記述した改質反応について,温度を上げるほど,化学平衡が移動してメタンの量が減ることが知られている。また,化学工業的には,適切な触媒を利用することが重要となる。
以上の記述をふまえ,以下の(1)~(5)の中から正しいものをすべて選べ。すべて誤っている場合には「なし」と答えよ。
(1) メタンの水蒸気改質反応は吸熱反応である。
(2) メタンの燃焼エンタルピーは正である。
(3) メタンの水蒸気改質反応は,反応速度が温度に比例する。
(4) 触媒を利用することで,水素の量が増える方向に化学平衡が移動する。
(5) 触媒を利用することで,水蒸気改質反応の反応エンタルピーが低下する。
キ 下線部⑥に関して,次ページの図1—1に示すように物質A,物質B,物質Cをこの順にくり返して何層も重ね合わせて実験を行った。説明文のp ~r に入る最も適切な文または語句を,選択肢(1)~(9)の中からそれぞれ選べ。
〔説明文〕
ボルタ電池の原型となった仕組みについて考える。物質A,B,Cの組み合わせ(物質A,物質B,物質C)を(亜鉛板,塩化ナトリウム水溶液で湿らせた綿布,銅板)としたとき,物質A側でp 。この組み合わせのまま,くり返し単位構造の数を増やしたところ,q 。次に,(物質A,物質B,物質C)をr としたところ,その場合でも電池として働いた。
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選択肢
(1) 酸化反応が起きた
(2) 還元反応が起きた
(3) 電圧計が示す電圧の絶対値は変化しなかった
(4) 電圧計が示す電圧の絶対値が大きくなった
(5) 電圧計が示す電圧の絶対値が小さくなった
(6) (亜鉛板,アルミニウム板,白金板)
(7) (亜鉛板,白金板,銅板)
(8) (白金板,食塩水を含むゼラチンゲル,亜鉛板)
(9) (亜鉛板,ガラス板,銅板)
図1—1 実験の模式図
ク 下線部⑦に関して,固体酸化物型と呼ばれる燃料電池では,空気極ともよばれる正極で O 2 − イオンが発生し,それが燃料極ともよばれる負極に移動して反応する。負極で起きる反応を,電子の記号 e − を用いた反応式で表せ。
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ケ 下線部⑧に関して,燃料電池で電気エネルギーとして取り出せるのは,25 ∘ C において水素分子 1 m o l あたり 237 k J である。この温度における燃料電池の起電力(電圧)は何 V と計算できるか,有効数字 2 桁で求めよ。なお,電気エネルギーは反応に関与した電気量と電圧の積で与えられ,1 J = 1 C × 1 V である。
コ 下線部⑨に関連して,塩化ナトリウム水溶液の電気分解を考える。陽極および陰極より発生する 2 種類の気体のうち,一方は塩素である。ここで,発生した上記 2 種類の気体を回収し,その気体どうしをすべて反応させて得られた物質を,水に溶解させた。こうして得られた水溶液中の C l − の濃度 [ C l − ] 〔m o l · L − 1 〕と p H の関係を表すグラフとして最も適切なものを次ページの図1—2に示した(1)~(8)の中から選べ。
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図1—2 [Cl− ]とpHの関係
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第2問 次の文章を読み,問ア ~ク に答えよ。なお,解答にあたり結晶水(水和水)や不純物は考えなくてよい。必要があれば以下の値を用いよ。
気体定数 R = 8.3 × 10 3 P a · L · K − 1 · m o l − 1 ,e :自然対数の底
ゼオライトという結晶性の鉱物が存在する。これは,①ケイ素,アルミニウム,酸素原子からなる骨格を有し,その骨格構造としてミクロ孔と呼ばれる分子レベルの大きさの孔をもつ物質の総称である。骨格構造が異なる様々なゼオライトが知られており,その違いに応じて様々な機能を発現する。図2—1にゼオライトの一種であり,日本でも多く産出するMOR型ゼオライトの骨格構造を示す。ゼオライトの特徴的な性質と応用について考えてみよう。
ゼオライトの骨格は負に帯電しており陽イオン交換に用いることができる。この理由は次のように説明できる。まず,骨格にアルミニウムを含まないゼオライトを考える。ゼオライトをイオン結晶とみなすと,一般に結晶内では全てのケイ素イオンに酸化物イオン 4 つが隣接しており,全ての酸化物イオンにケイ素イオン 2 つが隣接している。このときゼオライトの骨格全体の電荷は 0 となり,酸化物イオンの電荷は − 2 であるため,ケイ素イオンの電荷はあ である。ここで,ゼオライトの骨格全体の中で,ケイ素イオン 1 つをアルミニウムイオン 1 つで置換すると,骨格全体の電荷はい となる。このためアルミニウムイオンの数に対応する負電荷が生じ,ゼオライトはこの負電荷を打ち消すために必要な分量の陽イオンを,ミクロ孔内のイオン交換サイトと呼ばれる部位に保持している。その陽イオンは別の陽イオンと交換できる。このことを利用すると,たとえば②水中に存在するセシウムイオンを除去できる。このとき,③ゼオライトを筒に充填してイオンを含む水をゆっくり通すとイオン交換の効率が高い。
ゼオライトは触媒としても重要性が高い。例えば,イオン交換サイトの陽イオンとして④水素イオンを保持している場合には酸として働くため,固体の酸触媒としてくり返し使用できる。
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図2—1 MOR型ゼオライトの骨格構造の模式図
ここに示す骨格は一部を切り出したものである。(左)原子をイオン半径で示した図。左上には一部の拡大図を示す。「S i または A l 原子」と示す箇所には,ケイ素またはアルミニウムのどちらかの原子が存在する。イオン交換サイトに保持されている陽イオンは省略されている。(右)ケイ素またはアルミニウム原子が存在する位置を線でつないだ図。酸素原子を省略し,骨格構造を見やすくしている。ミクロ孔が紙面に垂直な方向に深く続いていることを示している。
〔問〕
ア あ ,い に入る符号付きの数値を答えよ。ただし,電子 1 個の電荷を − 1 と表すものとする。
イ 下線部①に関して,ゼオライト骨格中のケイ素とアルミニウムの原子の数の比は様々であり,フッ化水素酸によってゼオライトを溶解させるとこの比を精度よく調べられる。ここで,フッ化水素酸の取り扱いについて述べた以下の文について,二重下線部a~eのうち間違っている箇所をすべて選び,記号で答えよ。
フッ化水素酸は有毒かつ(a)強酸であるため,丈夫な(b)石英ガラス製の容器に保存し,実験時には小分けにして用いる。使用する際には,保護めがねを着けるが,(c)手袋は使わず素手で取り扱うことが好ましい。なお,皮膚に付着した場合に備えてグルコン酸カルシウム軟こうを用意しておく。これは,流水洗浄で除去しきれなかったフッ化水素をカルシウムイオンと反応させて(d)毒性の低い錯イオンに変えるためである。実験後に余ったフッ化水素酸は(e)重金属を含まないので下水に流してかまわない。
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ウ 下線部②に関して,セシウムイオンをイオン交換サイトに保持しやすいゼオライトであるMOR型ゼオライトを用いて以下の実験 1 ,2 を行った。
実験1:骨格に含まれるケイ素とアルミニウムの原子の数の比が 5.3 : 1 であり,イオン交換サイトにナトリウムイオンのみを有するMOR型ゼオライトを得た。
実験2:実験1のMOR型ゼオライト 1.00 k g を筒に充填し,セシウムイオン濃度が 2.00 × 10 − 3 m o l · k g − 1 である試料水を連続的にゆっくり通した(図2—2)。その結果,ナトリウムイオンの 96 % がセシウムイオンに交換された段階まではセシウムイオンが完全に除去された水が得られ,それ以降はセシウムイオンを含む水が筒から出てきた。
実験1で得たMOR型ゼオライトの組成式を N a 10 ( S i O p ) q ( A l O r ) s で表すとき,p ,q ,r ,s の値を自然数で答えよ。また,実験2において,使用したMOR型ゼオライトの何倍の質量の試料水からセシウムイオンを完全に除去できたか,有効数字 2 桁で答えよ。
図2—2 筒型装置を用いたイオン交換
図2—3 タンク型装置を用いたイオン交換
エ 下線部③に関して,その理由を明らかにしたい。そのために,化学的性質が同一と見なせる 41 K + と 39 K + を利用し,陽イオンとして 1.00 m o l の 41 K + のみを含む 1.00 × 10 3 L の試料水と,1.00 m o l の 39 K + のみをイオン交換サイトに保持している 1.00 k g のゼオライトを使った実験を考える。図2—3に示すように,単純に全量の試料水(1.00 × 10 3 L )とゼオライト(1.00 k g )をタンク内で混合してイオン交換反応が平衡に達するまで攪拌する。そののち栓を開けて試料水のみを回収する場合に,試料水中に残存する 41 K + の物質量〔m o l 〕を有効数字 2 桁で求めよ。
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オ 問エ に関連して,今度はタンクを 2 段にして実験を行う(図2—4)。問エ の場合と同様に,陽イオンとして 1.00 m o l の 41 K + のみを含む 1.00 × 10 3 L の試料水と,1.00 m o l の 39 K + のみをイオン交換サイトに保持している 1.00 k g のゼオライトを用意する。ここで,実験 3 ~ 5 を行う。
実験3:このゼオライトを上段と下段のタンクに 0.50 k g ずつ入れる。
実験4:試料水 5.0 × 10 2 L を上段のタンクに入れて平衡に達するまで攪拌する。次に,処理後の試料水を下段のタンクに移し,再び平衡に達するまで攪拌する。最後にその試料水を回収する。
実験5:ゼオライトは交換せずに,残りの試料水 5.0 × 10 2 L を用いて実験4と同じ操作をする。
実験4と5で回収された試料水中に残存している 41 K + の物質量〔m o l 〕をそれぞれ有効数字 2 桁で求めよ。
図2—4 2段タンク型装置を用いたイオン交換操作
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カ 図2—2の筒型装置と図2—3のタンク型装置を比較する。二つの装置でそれぞれ同量のゼオライトと試料水を用いるとき,筒型装置のほうが試料水中の特定のイオンをより多く除去できる。その理由を,問エ ,オ をふまえて平衡という語句を用い,簡潔に答えよ。
キ 下線部④に関して,固体の酸の強さは気体のアンモニアを用いて評価できる。式1に示すようにイオン交換サイトに保持された水素イオン(s − H + )とアンモニアが反応し,イオン交換サイトに保持されたアンモニウムイオン(s − N H 4 + )になる。
s − H + + N H 3 ⇌ s − N H 4 + (式1)
この平衡反応の平衡定数 K を式2で表すこととする。このとき,酸が強いほど K の値は大きくなる。ここで,r s − H + と r s − N H 4 + はそれぞれイオン交換サイトを H + と N H 4 + が占める割合を,[ N H 3 ] は気体アンモニアの濃度〔m o l · L − 1 〕を示す。
K = r s − N H 4 + r s − H + · [ N H 3 ] (式2)
あるゼオライトが示す K の値を測定するために以下の実験 6 ~ 9 を行った。
実験6:このゼオライトのイオン交換サイトの陽イオンを全てアンモニウムイオンとしたのち,十分な大きさの容器に入れ,容器内の気体をすべてヘリウムに置換した。
実験7:容器内部を 1.00 × 10 5 P a ,427 ∘ C で一定に保った。このとき,平衡状態において r s − H + と r s − N H 4 + はそれぞれ 80 % ,20 % となった。
実験8:圧力と温度を保持したまま容器内の気体を 1.00 L 捕集した。この捕集したガスを冷却してから 50.0 m L の 1.00 × 10 − 3 m o l · L − 1 硫酸に通し,含まれるアンモニアを全て反応させた。
実験9:この溶液を 1.00 × 10 − 2 m o l · L − 1 の水酸化ナトリウム水溶液で滴定した。その結果,p H 6.0 になるまでに必要な滴下量は 5.00 m L であった。
このとき,K の値を有効数字 2 桁で答えよ。計算過程も示すこと。
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ク 問キ で求めた平衡定数 K の値から分かる固体の酸の強さを,液体の酸の強さと直接比較することは困難である。そこで,液体の酸が他の物質に水素イオンを与える能力の高さを示すハメットの酸度関数(F A )と呼ばれる指標を固体に適用する。ゼオライトについては,F A と問キ の式2の平衡定数 K の関係は式3と式4で表すことができる。ここで,Δ H は問キ に示す式1の正反応の反応エンタルピー〔J · m o l − 1 〕,T は平衡定数を測定した際の温度〔K 〕,α = 1.8 × 10 − 4 m o l · J − 1 ,β = 1.2 × 10 − 9 L · K − 1 · m o l − 1 とする。
F A = α · Δ H + 16 (式3)
K = β · T · e − Δ H R T (式4)
MOR型ゼオライトに関して,問キ と同様の実験を行ったところ 427 ∘ C での平衡定数 K は 5.7 × 10 4 L · m o l − 1 と見積もられた。MOR型ゼオライトの F A を有効数字 2 桁で求めよ。計算過程も示すこと。また,算出した F A をもとに,このMOR型ゼオライトと 80 % 硫酸のどちらが酸として強いといえるか答えよ。ただし,その理由を式3と4をもとに説明すること。なお,F A の値は温度によって変化しないものとし,80 % 硫酸の F A は − 7 とする。必要があれば以下の値を用いよ。
log e ( 5.7 × 10 4 ) = 11 ,log e ( 1.2 × 10 − 9 ) = − 21 ,log e ( 7.0 × 10 2 ) = 7 ,1 J = 1000 P a · L
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第3問 次の文章を読み,問ア ~ケ に答えよ。
有機化合物は,炭素,水素,酸素,窒素など比較的限られた元素から構成されているにもかかわらず,極めて多様な構造や性質を示す。有機化合物が示す①物理的・化学的性質は,その化合物がもつ官能基と②立体構造に強く影響される。
〔問〕
ア 下線部①に関連して,図3—1に示した化合物A~Fを物理的・化学的性質に応じて分類する。大気圧下において沸点が 100 ∘ C より低いものをすべて選び,記号で答えよ。なお,化合物B,C,およびFの構造式は図3—2にしたがって一部の炭素原子および炭素原子に結合した水素原子の表記を省略している。
図3—1 化合物A~Fの構造式
図3—2 構造式の簡略表記の例
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イ 問ア の図3—1に示した化合物A~Fに少量の臭素を滴下すると,一部の化合物において臭素に由来する色が消えた。色が消えた化合物をすべて選び,記号で答えよ。
ウ 水酸化ナトリウム水溶液に,問ア の図3—1に示した化合物A~Fのいずれかとヨウ素を加えて温めると,一部の溶液において黄色沈殿の生成が見られた。この反応を示す化合物をすべて選び,記号で答えよ。また,沈殿した化合物の分子式を示せ。
エ 問ア の図3—1に示した化合物A~Fをそれぞれ水に加えたところ,一部の化合物は水に溶解し,酸性を示した。この性質を有する化合物をすべて選び,記号で答えよ。
オ 有機化合物はその構成元素が変わると性質が変化する。例えば,問ア の図3—1に示した化合物Aとエタンチオール(C H 3 − C H 2 − S H )は構造が類似しているが,沸点は大きく異なる。沸点の違いに関する次の説明文中の空欄あ とい にあてはまる最も適切な語句を答えよ。
〔沸点の違いに関する説明文〕
化合物Aの沸点は,エタンチオールの沸点よりもあ 。この理由は,分子間の相互作用の 1 つであるい 結合の強さが異なるためである。
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カ 下線部②に関連して,立体異性体について考える。例えば,2-ブタノール(C H 3 − C H ( O H ) − C H 2 − C H 3 )は不斉炭素原子をもち,1 対の鏡像異性体が存在する。一方,2-ブタノール中の 1 つの水素原子を塩素原子に置換した3-クロロ-2-ブタノール(C H 3 − C H ( O H ) − C H C l − C H 3 )は,分子内に 2 個の不斉炭素原子をもち,図3—3に示した 4 種類の立体異性体G~Jが存在する。なお,図中の
は紙面上に置いた不斉炭素原子から紙面の手前側に向かう結合,
は紙面の奥側へ向かう結合,——は紙面と同じ平面にある結合を表している。この表記法を以後,「破線-くさび型表記」とよぶ。
図3—3 3-クロロ-2-ブタノールの立体異性体
図3—3中の立体異性体G~Jの中には,鏡像異性体の関係にあるものが 2 対存在する。立体異性体Gと鏡像異性体の関係にある立体異性体を選び,H,I,Jのいずれかの記号で答えよ。
キ 2,3-ブタンジオール(C H 3 − C H ( O H ) − C H ( O H ) − C H 3 )は,図3—3に示した3-クロロ-2-ブタノールと同様に 2 個の不斉炭素原子をもつにもかかわらず,鏡像異性体は 1 対しか存在しない。その理由を簡潔に説明せよ。必要に応じて図を用いて解答してもよい。
ク C 6 H 10 の分子式をもつ直鎖状のアルキンKを用いて次の説明文および図3—4に記載した一連の反応を行った。化合物K,L,M,N,O,およびRの構造式を,図3—5を参考にして描け。
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〔アルキンKに対する一連の反応の説明文〕
直鎖状のアルキンKに硫酸水銀(H g S O 4 )を触媒として水を付加させると,単一のケトンLのみが得られた。なお,ケトンLに対し,問ウ と同様の反応を行ったところ,黄色沈殿は生じなかった。
アルキンKに対し,活性炭の表面にパラジウムの微粒子を載せたパラジウム炭素(P d / C )を触媒として水素を付加させると,化合物Mが得られた。一方,活性炭の代わりに炭酸カルシウムを用い,さらにパラジウム表面に吸着しやすい酢酸鉛などの物質を加えた触媒(リンドラー触媒)を用いた場合には,アルキンKへの水素の付加反応は進行するものの,化合物Mとは異なる化合物Nが得られた。液体アンモニア中にアルキンKとナトリウムを入れて適切な処理を行うと化合物Oが得られた。化合物NとOは,同じ分子式をもち,互いに立体異性体の関係にあった。また,大気圧下における化合物Nの融点は − 138 ∘ C であり,化合物Oの融点(− 115 ∘ C )よりも低い値であった。
さらに,臭素水の上に化合物Nを静かに注いでできた 2 層の溶液を振り混ぜると臭素の色が消える様子が観測された。同様の実験を化合物Oに対して行った場合には臭素の色が消えた一方,化合物Mに対して行った場合には色の変化が観測されなかった。化合物Nと臭素の反応からは 1 対の鏡像異性体PとQが得られた一方,化合物Oと臭素の反応からは鏡像異性体が存在しない化合物Rのみが得られた。化合物P,Q,およびRは同じ分子式をもち,互いに立体異性体の関係にあった。
図3—4 アルキンKに対する一連の反応
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図3—5 構造式の例
ケ 図3—6に示したニトロ基とカルボキシ基をもつベンゼン環どうしが連結された化合物Sは,不斉炭素原子をもたない。それにもかかわらず,この化合物には 1 対の鏡像異性体が存在する。化合物Sに鏡像異性体が存在する理由を,分子の立体的な構造に注目し,1 ~ 2 行程度で簡潔に説明せよ。
図3—6 化合物Sの構造式
第1問 水素とエネルギー — 燃やす・作る・電池にする 出題の意図(東大) 化学における様々な項目(化学結合、化学平衡、気体の状態方程式、化学反応と熱・エネルギー、電気化学)に関する基礎的な理解力と、これらの現象を与えられた情報をもとに複合的な視野から論理的に考察する力を問うことを意図しています。
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 「水素とエネルギー」をテーマに、化学結合 → 反応のエンタルピー(反応で出入りする熱)→ 平衡 → 電池 → 電気分解、と教科書の単元を順にたどる小問の集まり。1問ずつは独立しているが、エ・ケはウの数値や説明文を使う。
エンタルピーの問いでは、ヘスの法則 (反応の道すじが違っても、最初と最後が同じなら出入りする熱の合計は同じ)を使う。「生成エンタルピー(単体から化合物 1 mol ができるときの熱)」がわかれば、どんな反応の熱も「できたものの合計 − もとのものの合計」で出せる。
平衡の問いでは、ルシャトリエの原理 (条件を変えると、その変化をやわらげる向きに平衡が動く)を使う。電池と電気分解では、「電子を出す=酸化」「電子を受けとる=還元」と、電気量 = 電子の物質量 × F が道具になる。
ア (1) ダイヤモンドと黒鉛は同じ炭素でもつながり方が違い、ダイヤモンドはすきまなく立体的に、黒鉛は平面の層が重なっていて層の間が広い。密度はダイヤモンド約 3.5 g / c m 3 、黒鉛約 2.3 g / c m 3 で、同じではない。
(2) 2つの原子を引き離すのに必要なエネルギーは結合エネルギー 。活性化エネルギーは「反応が進むために越えなければならない山の高さ」で、別のもの。
(3) アンモニウムイオン N H 4 + は、1本が配位結合(片方の原子が電子を2個とも出す結合)でできるが、できてしまえば4本はまったく区別がつかず、長さも同じ(正四面体)。
(4) 電気陰性度(電子を引きつける強さ)の差が大きいと、電子が片方に完全にうつってイオン結合 になる。共有結合になりやすいのは、差が小さい組み合わせ。
(5) ケイ素の結晶は、ダイヤモンドと同じ形で原子どうしが共有結合でつながっている。これは正しい。
イ 結合距離は、ふつう「原子が大きいほど長い」「結合の数(単・二重・三重)が多いほど短い」で決まる。
水素原子はいちばん小さいので H–H がいちばん短い(約 0.074 n m )。炭素どうしでは、単結合のエタン(約 0.154 n m )がいちばん長く、二重結合のエテン(約 0.134 n m )は短い。
ベンゼンの炭素どうしの結合は、単結合と二重結合の「中間」で、6本とも同じ長さ(約 0.140 n m )。だから単結合と二重結合のあいだに入る。
窒素分子は三重結合 N ≡ N で、約 0.110 n m 。二重結合の C=C より短く、H–H よりは長い。
答え ( 4 ) , ( 5 ) , ( 3 ) , ( 1 ) , ( 2 )
ウ a エタノール C 2 H 5 O H が酸素と反応して、二酸化炭素と水(水蒸気)になる。係数は原子の数の勘定で決める。
炭素が 2 個なので C O 2 は 2、水素が 6 個なので H 2 O は 3。右側の酸素原子は 2 × 2 + 3 = 7 個で、エタノールの中に 1 個あるから、O 2 から 6 個、つまり O 2 は 3 分子。
燃焼エンタルピーは「エタノール 1 mol あたり」なので、エタノールの係数を 1 にしておく。
ウ b ヘスの法則で、燃焼の熱を「できたものの生成エンタルピーの合計 − もとのものの生成エンタルピーの合計」と書く。酸素は単体なので生成エンタルピーは 0。エタノールの生成エンタルピーを x とすると
− 1237 = ( 2 × ( − 394 ) + 3 × ( − 242 ) ) − x
右のかっこの中は − 788 − 726 = − 1514 。よって
x = − 1514 + 1237
単体からエタノールができるときにも熱が出る(負)。その分、燃えるときに出る熱は、炭素と水素をばらばらに燃やしたとき(1514 k J )より小さい。
エ 方針は「エタノール 1 L が出す熱」を出し、それと同じ熱を出す水素の量を求める。
エタノール 1.0 L は 0.8 k g = 800 g 。分子量は C 2 H 6 O = 46 なので
800 46 ≈ 17.4 m o l 17.4 × 1237 ≈ 2.15 × 10 4 k J
水素の燃焼で水蒸気ができるときの熱は、水蒸気の生成エンタルピーそのもので、H 2 1 mol あたり 242 k J 。
n = 2.15 × 10 4 242 ≈ 88.9 m o l
V = n R T p = 88.9 × 8.3 × 10 3 × 300 1.0 × 10 5 ≈ 2.2 × 10 3 L
有効数字 1 桁にまるめる。同じ熱を出すのに、気体の水素はエタノールのおよそ 2000 倍の体積が要る。水素を燃料にするとき「どう小さくためるか」が大きな問題になる理由がここにある。
オ C H 4 + H 2 O ⇌ C O + 3 H 2
左は気体の分子が 2 個、右は 4 個。圧力を上げると、平衡は「分子の数が減って圧力をやわらげる向き」、つまり左へ動いて水素が減る。
だから水素をたくさん得たいなら、圧力は低いほうがよい。デモでは、圧力を上げるとメタンが反応する割合が下がることが見られる(メタンと水蒸気を 1:1 で入れた計算では、1000 K・1 bar でメタンの約 63% が反応し、圧力を 2 倍にするとこの割合が下がる)。
答え 低い方がよい(反応で気体の分子の数が 2 から 4 に増えるので、圧力が低いほど右に進む)
カ (1) 温度を上げると右へ進む(メタンが減る)。ルシャトリエの原理では、温度を上げると「熱を吸う向き」に平衡が動くので、右向きは吸熱反応。正しい。
(2) メタンは燃えると熱を出す(発熱)ので、燃焼エンタルピーは負。
(3) 反応の速さは温度とともに大きくなるが、比例ではなく、温度が少し上がるだけでぐっと速くなる(山を越えられる分子の割合が急に増える)。
(4)(5) 触媒は、山(活性化エネルギー)を低くして、行きも帰りも同じように速くするだけ。平衡の位置も、反応で出入りする熱の量も変えない。
キ ボルタの電堆(亜鉛・電解液・銅をくり返し重ねたもの)の問い。
p:亜鉛は銅よりイオンになりやすいので、亜鉛の側で Z n → Z n 2 + + 2 e − が起きる。電子を出すので酸化反応。
q:1組の「亜鉛・食塩水・銅」が1つの電池で、それを重ねると電池を直列につないだのと同じ。電圧は組の数だけ足されて大きくなる。
r:電池になるには「2種類の金属(電極)のあいだに、イオンが動ける電解質がはさまっている」ことが必要。(6) と (7) はまん中が金属で、イオンが動けない。(9) のガラスは電気もイオンも通さない。(8) は食塩水を含むゲルでイオンが動け、両側が白金と亜鉛という違う金属なので電池になる(並ぶ順が逆でも、電池であることは変わらない)。
ク 固体酸化物型では、正極(空気極)で O 2 + 4 e − → 2 O 2 − が起き、O 2 − が固体の中を負極へ動いてくる。
負極では、燃料の水素がこの O 2 − と結びついて水になり、電子を放り出す(酸化)。H と O の数、電荷(左 − 2 、右は電子 2 個で − 2 )がそろうように書く。
ケ 電気エネルギー = 電気量 × 電圧。だから電圧は「1 mol の水素が出すエネルギー」を「そのとき流れる電気量」で割ればよい。
H 2 1 分子は電子を 2 個出すので、1 mol あたりの電気量は 2 F = 2 × 9.6 × 10 4 C 。
V = 237 × 10 3 2 × 9.6 × 10 4 ≈ 1.23 V
有効数字 2 桁にまるめる。電圧とは「電気量 1 C あたりが運ぶエネルギー」のことなので、1 分子が出す電子の数で割るのがポイント。
コ 食塩水の電気分解では、陽極から塩素 C l 2 、陰極から水素 H 2 が出る。2つを反応させると塩化水素 H C l ができ、水に溶かすと塩酸。H C l はほぼ全部電離するので、濃いところでは [ H + ] = [ C l − ] 、つまり
p H = − log 10 [ C l − ]
横軸は [ C l − ] を 10 倍ずつ目盛ってあるので、これは右下がりの直線(10 倍濃くなると pH が 1 下がる)。
ところが、とても薄くなると、水そのものの電離([ H + ] [ O H − ] = 1.0 × 10 − 14 )で出る H + (純水で 10 − 7 m o l / L )が効いてくる。水の電離まで入れた式は、電荷のつり合いから
[ H + ] = [ C l − ] + 1.0 × 10 − 14 [ H + ]
これを解くと、[ C l − ] が 10 − 6 より薄いあたりから直線を外れ、どれだけ薄めても pH は 7 に近づくだけで 7 をこえない。酸をいくら薄めても、塩基性にはならない。
(1) は直線のまま 7 をこえて 9 まで行くので×。(3) は 8 までいって 7 をこえるので×。右上がりのグラフ((2)(4)(5)(8))は、濃いほど pH が大きくなっていて、濃いほど酸性が強いことと合わない。(6) は薄いほうで pH 9 になり、これも 7 をこえている。薄いほうで 7 に近づいて平らになり、濃いほうで直線になるものを選ぶ。
答え ( 7 ) (濃いところは pH = − log 10 [ C l − ] の直線、とても薄いと水の電離が効いて pH は 7 に近づき、7 をこえない)
第2問 ゼオライト — 穴のあいた石でイオンを入れかえる 出題の意図(東大) 無機化学に関する様々な項目 (無機物質の性質、取り扱い、酸塩基、化学平衡) に関する基礎的な理解力と、与えられた情報をもとに現象の本質を見抜く力、論理的かつ総合的に考察する力を問うことを意図しています。
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 ゼオライトは、ケイ素 Si・アルミニウム Al・酸素 O がつながってできた、分子くらいの大きさの穴がたくさんあいた結晶。Si の一部が Al に置きかわると骨格が負の電荷をもち、それを打ち消す分だけ、穴の中の「席」(イオン交換サイト)に陽イオンを持つ。この陽イオンを水の中の陽イオンと入れかえるのがイオン交換 。
前半(ア・ウ)は「電荷の勘定」。後半(エ〜カ)は「入れかえの平衡を何回くり返すか」で、タンクでは1回、筒では何回もくり返す、という違いが話の芯。最後(キ・ク)は、ゼオライトを固体の酸として使うときの強さを、アンモニアとの平衡定数から測る。
エ・オでは、41 K + と 39 K + は化学的に同じなので、石の席はどちらも区別せずに取りあう。平衡では「水の中」と「石の席」で、41 K の割合が同じになる、と考えればよい。
ア アルミニウムを含まない骨格では、どの Si にも O が 4 個、どの O にも Si が 2 個となりあっている。O 1 個は 2 個の Si で分けあうので、Si 1 個あたりの O は 4 × 1 2 = 2 個、つまり組成は S i O 2 。
全体の電荷が 0 で O が − 2 なので、Si の電荷を x とすると
x + 2 × ( − 2 ) = 0
Si 1 個(+ 4 )を Al 1 個(アルミニウムイオンは + 3 )に置きかえると、電荷は + 4 から + 3 へ 1 だけ減る。もとの全体は 0 だったので、置きかえた後の全体は 1 だけ負になる。Al 1 個ごとに、陽イオンの席が 1 つできる、ということ。
イ (a) フッ化水素 HF は、ほかのハロゲン化水素(HCl など)と違って弱酸 。H と F の結びつきが強く、水の中であまり電離しない。
(b) フッ化水素酸はガラスの成分 S i O 2 を溶かす(S i O 2 + 6 H F → H 2 S i F 6 + 2 H 2 O )。だからガラスの容器には入れられず、ポリエチレンなどの容器に保存する。
(c) HF は皮膚からしみこみ、体の奥で害を出す。素手はもってのほかで、手袋は必ず使う。
(d) グルコン酸カルシウムの C a 2 + は、F − と結びついて水に溶けにくいフッ化カルシウム C a F 2 の沈殿をつくり、フッ化物イオンを動けなくする。錯イオン(金属イオンに分子やイオンがくっついた、ひとかたまりのイオン)をつくるのではない。
(e) 重金属を含まなくても、フッ化物は有害なので下水に流してはいけない。決められた方法で処理する。
ウ 組成式 N a 10 ( S i O p ) q ( A l O r ) s を、アの考え方で決める。Al も Si と同じく O 4 個にかこまれ、O は 2 個で分けあうので、S i O 2 、A l O 2 の形になる(p = r = 2 )。A l O 2 1 つは電荷 + 3 − 4 = − 1 なので、N a + 10 個を打ち消すには Al が 10 個。Si:Al = 5.3 : 1 から Si は 53 個。
N a 23 × 10 + S i O 2 60 × 53 + A l O 2 59 × 10 = 230 + 3180 + 590 = 4000
1.00 kg = 1000 g は 1000 4000 = 0.250 mol。1 つの組成式に N a + が 10 個あるので、N a + (=席)は 2.50 mol。
その 96% が C s + と入れかわった所までは C s + が全部取れたので、取れた C s + は 2.50 × 0.96 = 2.40 mol。C s + は水 1 kg あたり 2.00 × 10 − 3 mol なので、水の質量は
2.40 2.00 × 10 − 3 = 1200 k g
これをゼオライト 1.00 kg で割れば何倍かが出る。Al が多い(Si:Al が小さい)石ほど席が多く、たくさんの水を処理できる。
答え p = 2 , q = 53 , r = 2 , s = 10 ; 1.2 × 10 3 倍
エ 41 K + と 39 K + は化学的に同じなので、石はどちらかをえり好みしない。平衡では、水の中と石の席で 41 K の割合が同じになる。
K の合計は、水に 1.00 mol、石の席に 1.00 mol。41 K は全部で 1.00 mol あり、それが合計 2.00 mol の K のうち 1 2 をしめる。水の中の K 1.00 mol のうち 41 K も 1 2 なので
1.00 × 1 2
がタンクに残る量。1回まぜただけでは、半分しか取れない。
オ 1段ずつ、エと同じく「水と席で割合がそろう」を使う。石 0.50 kg には席が 0.50 mol、水 500 L には K が 0.50 mol。
実験4 :上段では 41 K 0.50 mol が水と席で半分ずつに分かれ、水に 0.25 mol。この水を下段へ移すと、下段の席は全部 39 K なので、41 K 0.25 mol が合計 1.00 mol の K のうち 1 4 。水の K 0.50 mol のうち 1 4 で
0.50 × 1 4 = 0.125 m o l
下段の席には 41 K が 0.125 mol 入る。
実験5 :上段の席にはすでに 41 K が 0.25 mol ある。新しい水の 0.50 mol とあわせて 0.75 mol が合計 1.00 mol の K に入っているので、水には 0.50 × 0.75 = 0.375 mol。下段の席の 41 K 0.125 mol とあわせて 0.50 mol が合計 1.00 mol の中にあるので、水には 0.50 × 0.50 = 0.25 mol。
2つを足すと水に残るのは 0.125 + 0.25 = 0.375 mol で、1段のタンク(エの 0.50 mol)より少ない。石と水の量は同じなのに、分けて何回も平衡にすると、よく取れる。
答え 実験4 0.13 m o l ( 0.125 ) , 実験5 0.25 m o l
カ エとオの比べで分かったのは、同じ量の石と水でも、平衡を1回で終わらせるより、何回かに分けてくり返すほうが水に残る量が少ない ということ。
筒型では、水が少しずつ進みながら、まだイオンを受けとっていない石と次々に出会い、そのたびに平衡になる。これは、とても多い段数のタンクを並べたのと同じ。タンク型は、全体でたった1回しか平衡にならない。この違いを「平衡」という語を使って書く。
答え 筒では、試料水が進むたびにまだ交換されていないゼオライトと出会い、そのつど平衡に達する(平衡を何段もくり返す)。タンクは全体で1回しか平衡に達しないので、筒のほうが水に残る量が少ない
キ 方針:捕集した気体 1.00 L の中の N H 3 を、硫酸で受けとめて、残った酸を水酸化ナトリウムで滴定して数える(逆滴定)。
硫酸は 2 価の酸なので、出せる H + は 2 × 1.00 × 10 − 3 × 0.0500 = 1.00 × 10 − 4 mol。水酸化ナトリウムは 1.00 × 10 − 2 × 0.00500 = 5.00 × 10 − 5 mol。その差が N H 3 に使われた分:
n N H 3 = 1.00 × 10 − 4 − 5.00 × 10 − 5 = 5.0 × 10 − 5 m o l
pH 6.0 で止めるのは、余った硫酸だけを打ち消し終えた所で、できた N H 4 + (とても弱い酸)にはまだ手をつけていないため。
これが 1.00 L の中にあったので [ N H 3 ] = 5.0 × 10 − 5 mol/L。式2 に r s − N H 4 + = 0.20 、r s − H + = 0.80 を入れて
K = 0.20 0.80 × 5.0 × 10 − 5
答え n N H 3 = 2 × 1.00 × 10 − 3 × 0.0500 − 1.00 × 10 − 2 × 0.00500 = 5.0 × 10 − 5 m o l , [ N H 3 ] = 5.0 × 10 − 5 m o l / L , K = 0.20 0.80 × 5.0 × 10 − 5 = 5.0 × 10 3 L / m o l
ク 式4 の両辺の自然対数をとると、かけ算が足し算になる:
log e K = log e β + log e T − Δ H R T
T = 427 + 273 = 700 K。与えられた値を入れると 11 = − 21 + 7 − Δ H R T で、− Δ H R T = 25 。
Δ H = − 25 × 8.3 × 10 3 × 700 P a · L / m o l ≈ − 1.45 × 10 5 J / m o l
(R が P a · L の単位なので、1 J = 1000 P a · L で J に直す。)式3 に入れて
F A = 1.8 × 10 − 4 × ( − 1.45 × 10 5 ) + 16 ≈ − 26 + 16
どちらが強いか:同じ温度なら、式4 で K が大きいほど Δ H は負に大きく(アンモニアと強く結びつく)、式3 で F A は小さくなる。問題文に「酸が強いほど K は大きい」とあるので、F A が小さいほど強い酸。80% 硫酸の − 7 と比べて、値が小さいほうが強い。
K そのものは測った温度で変わるので、温度の違う K どうしは比べられない。温度によらない F A に直すことで、はじめて液体の酸と同じものさしで比べられる。
答え − Δ H R T = 11 + 21 − 7 = 25 , Δ H = − 25 × 8.3 × 700 = − 1.45 × 10 5 J / m o l , F A = 1.8 × 10 − 4 × ( − 1.45 × 10 5 ) + 16 = − 10 ; MOR 型ゼオライトの方が強い(式4より K が大きいほど ΔH が負に大きく、式3より F A が小さい。酸が強いほど K は大きいので F A が小さいほど強い。 − 10 < − 7 )
第3問 有機化合物の形 — 右手と左手、ねじれ、ひずみ 出題の意図(東大) 有機分子の構造と性質を論理的に考える力、分子の構造を三次元的に捉える力、および化学変換の過程を与えられた情報に基づき論理的に考察する力を問うことを意図しています。
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 有機化合物の性質は「どんな官能基(性質を決める原子のまとまり、–OH や –COOH など)をもつか」と「どんな立体の形をしているか」で決まる、というのが全体の筋。
前半(ア〜オ)は、図3—1 の6つの化合物を、沸点・臭素との反応・ヨードホルム反応・酸性でふるい分ける。見たことのない形(B のかご、C・F のかご)が出てくるが、見るべきは官能基と分子の大きさ。
後半(カ〜ケ)は立体の問題。不斉炭素原子(4つの違う原子や原子団がついた炭素)が2つあると、立体異性体は最大 2 × 2 = 4 種類。ただし分子の中に鏡の面があるとそれより減る(メソ体)。反対に、不斉炭素が無くても、分子がねじれたまま固まっていれば鏡像異性体ができる。
ア 沸点を決めるのは、主に分子の大きさ と分子どうしの水素結合 (–OH や –NH のように、H が O・N に付いた所どうしの強い引きあい)。
A はエタノールで、沸点は約 78 ℃。水素結合はあるが分子が小さい。D はペンタン(炭素5個の鎖)で約 36 ℃。B は炭素5個・水素6個の小さな炭化水素で、水素結合もしないので、ペンタンと同じくらい低いと考えてよい。
C は –CONH₂(アミド)を2つもち、分子どうしが強く水素結合するうえに大きいので、沸点はずっと高い。E はフェノールで約 182 ℃(–OH の水素結合と、ベンゼン環の大きさ)。F は炭素12個のかごを含む大きなエステルで、100 ℃ よりずっと高い。
イ 臭素の赤褐色が消えるのは、臭素が分子に付く(付加)か、分子の H と入れかわる(置換)とき。
B には二重結合が無いが、3つの三角形を共有した、とてもひずんだ形をしている。真ん中の C–C 結合は無理に曲げられていて切れやすく、そこに臭素が付く。二重結合が無いのに色が消える、要注意の選択肢。
E のフェノールは、–OH のおかげでベンゼン環が反応しやすく、臭素と置換反応を起こす(2,4,6-トリブロモフェノール)。ふつうのベンゼンとは違って、触媒なしで進む。
A・D は単結合だけの安定な分子、C・F のかごはひずみが小さく、どれも臭素とは反応しない。
ウ ヨウ素と水酸化ナトリウムで黄色い沈殿(ヨードホルム)ができるのは、C H 3 C O − (炭素または H につながったもの)か、C H 3 C H ( O H ) − の形をもつ化合物。
A のエタノールは C H 3 C H 2 O H で、C H 3 C H ( O H ) − の「–」が H の場合にあたる。まず酸化されてアセトアルデヒド C H 3 C H O になり、それが反応する。
F は C H 3 C O − をもつが、それは O につながったエステル(酢酸エステル)なので反応しない。分けても酢酸とかごのアルコール(–OH が付いた炭素に H が無い第3級)で、どちらも条件に合わない。
沈殿は、C H 3 の H 3つが I に置きかわってできる C H I 3 。
エ 水に溶けて酸性を示すのは、H + を出せる官能基をもつもの。
E のフェノールは、–OH の H がベンゼン環のおかげで少しはなれやすく、弱い酸性を示す(炭酸より弱い)。水にも少し溶ける。
A のエタノールの –OH は H + をほとんど出さず中性。C のアミドも中性。B・D は炭化水素で水に溶けない。F はエステルで酸性を示さない。
オ A(エタノール C H 3 C H 2 O H )とエタンチオール(C H 3 C H 2 S H )は O と S が違うだけ。S のほうが重いので、分子の大きさだけなら S のほうが沸点が高くなりそうに見える。
ところが実際は、エタノール約 78 ℃、エタンチオール約 35 ℃ で、O のほうが 43 ℃ も高い。O は電気陰性度(電子を引きつける強さ)がとても大きく、O–H の H が強くプラスにかたよるので、分子どうしが強く引きあう。S は O ほど電子を引きつけないので、この引きあいが弱い。重さより、この引きあいのほうが強く効いている。
カ 鏡像異性体(右手と左手のように、たがいに鏡に映した形で、どう回しても重ならないもの)は、2つの不斉炭素の向きが両方とも逆 になった組。
それぞれの不斉炭素について、ついている4つ(OH・Cl・CH₃・H など)の立体の並びを破線-くさび型表記から読み、「右回り(R)」か「左回り(S)」かを決める(原子番号の大きい順に見て、いちばん小さい H を奥に置いたときの回る向き)。
読むと、G は上の炭素・下の炭素ともに同じ向きで、H と J は上と下が逆向きどうし。鏡に映すと2つの炭素の向きが両方とも入れかわるので、G の相手は、2つとも G と逆の向きをもつもの。残りの H と J がもう1つの鏡像の組になる。
一方、G と H のように、片方の炭素だけ向きが違うものどうしは、鏡像ではない立体異性体(ジアステレオマー)で、沸点などの性質も違う。
キ 3-クロロ-2-ブタノールでは、2つの不斉炭素に付いている組が違う(一方は OH、他方は Cl)。だから(上 R・下 S)と(上 S・下 R)は別のもので、4種類ができる。
2,3-ブタンジオールでは、2つの不斉炭素に付く組がどちらも H・OH・CH₃・CH(OH)CH₃ で同じ。すると(R, S)と(S, R)は、分子を180度回すと同じものになる。しかもこの分子は、2つの炭素のまん中に鏡の面をもち、自分自身の鏡像と重なる(メソ体)。
その結果、立体異性体は(R, R)・(S, S)・メソ体の3種類になり、鏡像異性体の組は(R, R)と(S, S)の1対だけ。Cl を OH にかえただけで、4種類が3種類に減る。
答え 2つの不斉炭素に付く原子団の組(H, OH, CH 3 , CH(OH)CH 3 )が同じなので、(R,S) と (S,R) は同じ分子(分子内に対称面をもつメソ体)で、鏡像と重なる。立体異性体は (R,R)・(S,S)・メソ体の3種で、鏡像異性体は1対だけ
ク まず K を決める。炭素6個の枝分かれのないアルキン(三重結合を1つもつ)は、三重結合の位置で 1-ヘキシン・2-ヘキシン・3-ヘキシンの3つ。
水を付加すると、三重結合のどちらの炭素に O が付くかでケトンができる。2-ヘキシンは両側が違うので2種類のケトンができ、「単一のケトンのみ」に合わない。1-ヘキシンはケトン1種(2-ヘキサノン C H 3 C O − )だが、これはヨードホルム反応を示すので×。残るのは左右対称な3-ヘキシンで、どちらに付いても同じ3-ヘキサノン。これが L。
Pd/C で水素をいっぱいまで付けるとヘキサン(M、臭素の色を消さない)。リンドラー触媒は途中の二重結合で止まり、H 2つが同じ側 から付くのでシス形のアルケン(N)。液体アンモニアとナトリウムでは H が反対側 に付いてトランス形(O)。シス形は折れ曲がっていて結晶にきれいにつまりにくいので、融点が低い(N の −138 ℃ が O の −115 ℃ より低い、に合う)。
最後に臭素の付き方。臭素はアルケンの二重結合に、面の反対側から1つずつ 付く(まず片面に Br が付き、もう1つはその裏から入る)。
シス形の N に反対側から付けると、上の面から先か下の面から先かで2つの生成物ができ、それらは互いに鏡像。これが P と Q の1対。
トランス形の O に反対側から付けると、2つの不斉炭素(どちらにも H・Br・CH₂CH₃ と相手の炭素が付く)の向きが逆どうしになり、分子の中に鏡の面をもつメソ体になる。これが鏡像をもたない R。キの2,3-ブタンジオールと同じしくみ。
構造式は、N・O は二重結合のまわりの向き(シス・トランス)を区別して描き、R は破線-くさび型表記で、2つの不斉炭素の向きが逆どうし(一方が R、他方が S)になるように描く。
答え K : C H 3 C H 2 C ≡ C C H 2 C H 3 , L : C H 3 C H 2 C O C H 2 C H 2 C H 3 , M : C H 3 ( C H 2 ) 4 C H 3 , N : シス-3-ヘキセン , O : トランス-3-ヘキセン , R : ( 3 R , 4 S ) -3,4-ジブロモヘキサン(メソ体。破線-くさび型で描く)
ケ 化合物S は、2つのベンゼン環が単結合1本でつながり、それぞれの環のつなぎ目の両どなり(2つのオルト位)に、ニトロ基 N O 2 とカルボキシ基 C O O H という大きな原子団が1つずつ付いている。1つの環の両どなりが違う原子団なので、ねじれた形を鏡に映すと、もとと重ならない。
単結合のまわりは、ふつうは自由に回れる。ところが2つの環を同じ平面にそろえようとすると、となりどうしの大きな原子団がぶつかってしまう(デモの計算では、平らにすると置換基どうしが約 0.14 nm まで近づき、原子がふれあう距離よりずっと近い)。だから2つの環はねじれた形のまま、回って入れかわることができない。
ねじれた形には「右ねじれ」と「左ねじれ」があり、この2つは互いに鏡像で、対称面をもたない。回れないので入れかわれず、別の物として存在する。不斉炭素のような「点」ではなく、つなぎ目の「軸」のまわりのねじれが鏡像を生んでいる。
となりの原子団が H だけ(ただのビフェニル)なら、ぶつかりは小さく、ふつうの温度で平らを通って入れかわってしまうので、鏡像異性体は分けて取り出せない。
答え 2つのベンゼン環をつなぐ単結合のまわりの回転が、となり(オルト位)の大きな NO 2 と COOH がぶつかるため妨げられ、2つの環はねじれた形に固定される。この形は対称面をもたず、右ねじれと左ねじれが互いに鏡像で、入れかわれない