東大 過去問 2026年 化学|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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このページの出典

東京大学 第2次学力試験(前期)2026年 理科「化学」(東京大学公式サイト)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

修正履歴

お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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化学基礎・化学

第1問 次の文章を読み,問ア~コに答えよ。必要があれば以下の値を用いよ。

t1-0

気体定数 R=8.3×103Pa·L·K−1·mol−1

ファラデー定数 F=9.6×104C·mol−1

 我々の身の回りの物質は原子から構成され,原子と原子は電子を介して①結合を形成する。その結合の強さは②原子の組み合わせや結合のしかたにより異なるため,結合を組み替える化学反応にはエンタルピー変化が伴う。

 環境に配慮したエネルギー源として,植物由来の③エタノールや,近年注目を集める④水素を利用する取り組みが進められている。水素の製造方法のひとつに,⑤メタンを原料とする化学反応を利用する方法がある。

 化学反応に伴う電子を電流として直接取り出す装置を⑥電池という。燃料電池では,燃料となる物質のもつ化学的なエネルギーを,電気エネルギーとして取り出すことができる。多くの場合,⑦水素を燃料として,これに空気中から取り込む酸素を反応させて水を生成する過程で⑧電気エネルギーを得る。電池とは逆に,電圧をかけて電流を流すことで化学反応を起こすことを⑨電気分解という。太陽光発電などにより得られる電気エネルギーで水を電気分解して水素を得る取り組みも,再生可能エネルギーの観点から注目されている。

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〔問〕

ア 下線部①に関して,以下の(1)~(5)の中から,誤りを含むものをすべて選べ。すべて正しい場合には「なし」と答えよ。

(1) 炭素原子間の結合により構成されるダイヤモンドと黒鉛の結晶は,どちらも同じ密度である。

(2) 共有結合している 2 原子からなる分子をばらばらの 2 つの原子へ引き離すのに必要なエネルギーを活性化エネルギーという。

(3) アンモニウムイオンの 4 本の N−H 結合のうち,3 本の結合距離は同じであるが,1 本は異なる。

(4) 2 原子からなる分子において,電気陰性度の差が大きい組み合わせほど,原子間で共有結合を形成する。

(5) 単体のケイ素における安定な結晶は,共有結合によって構築されている。

イ 下線部②に関連して,以下の(1)~(5)について,長いものから順に,左から右へ並べよ。結合距離とは,原子の中心どうしを結ぶ距離である。

(1) 窒素分子内の窒素原子間の結合距離

(2) 水素分子内の水素原子間の結合距離

(3) エテン(エチレン)分子内の炭素原子間の結合距離

(4) エタン分子内の炭素原子間の結合距離

(5) ベンゼン分子内の隣接する炭素原子間の結合距離

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ウ 下線部③に関して,以下の説明文を読み,aに入る適切な化学反応式およびbに入る数値を答えよ。

〔説明文〕

 液体のエタノールの燃焼エンタルピーは −1237kJ·mol−1 である。ただし,水は水蒸気として生成するものとする。この燃焼の化学反応式はaと表される。一般に,化合物がその成分元素の単体から生じるとき,その化合物 1mol あたりのエンタルピー変化を生成エンタルピーとよぶ。黒鉛を単体の炭素の基準として考えると,1mol の炭素原子を含む黒鉛が完全燃焼するとき 394kJ のエネルギーが熱として発生する(発熱反応)ので,炭素(黒鉛)の燃焼エンタルピーは −394kJ·mol−1 である。このとき 1mol の二酸化炭素が発生するので,二酸化炭素の生成エンタルピーは −394kJ·mol−1 である。同様に,水蒸気の生成エンタルピーは −242kJ·mol−1 である。以上の説明をもとに,液体のエタノールの生成エンタルピーはbkJ·mol−1 と求められる。

エ 下線部④に関して,燃焼に際して 1.0L の液体のエタノールと同等のエネルギーを生み出すのに必要な水素について,水素分子の物質量〔mol〕および室温大気圧での気体の体積〔L〕を求めよ。解答は有効数字 1 桁でよい。計算の過程を簡潔に記せ。ただし,室温を 27∘C(300K),大気圧を 1.0×105Pa とする。必要があれば,問ウの説明文を参照せよ。水は水蒸気として生成し,気体はすべて理想気体,液体のエタノールの密度は 0.8kg·L−1 とする。

オ 下線部⑤に関して,メタンを原料とし,700∘C 以上の高温で水蒸気と反応させて,水素と一酸化炭素を発生させる反応をメタンの水蒸気改質反応とよぶ。この条件で化学平衡が成り立っているものとする。原料の物質量あたりの水素の収量を大きくするためには,反応容器内の圧力は高い方がよいか,低い方がよいか,あるいは無関係か,簡潔な理由とともに答えよ。

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カ 問オで記述した改質反応について,温度を上げるほど,化学平衡が移動してメタンの量が減ることが知られている。また,化学工業的には,適切な触媒を利用することが重要となる。

 以上の記述をふまえ,以下の(1)~(5)の中から正しいものをすべて選べ。すべて誤っている場合には「なし」と答えよ。

(1) メタンの水蒸気改質反応は吸熱反応である。

(2) メタンの燃焼エンタルピーは正である。

(3) メタンの水蒸気改質反応は,反応速度が温度に比例する。

(4) 触媒を利用することで,水素の量が増える方向に化学平衡が移動する。

(5) 触媒を利用することで,水蒸気改質反応の反応エンタルピーが低下する。

キ 下線部⑥に関して,次ページの図1—1に示すように物質A,物質B,物質Cをこの順にくり返して何層も重ね合わせて実験を行った。説明文のp~rに入る最も適切な文または語句を,選択肢(1)~(9)の中からそれぞれ選べ。

〔説明文〕

 ボルタ電池の原型となった仕組みについて考える。物質A,B,Cの組み合わせ(物質A,物質B,物質C)を(亜鉛板,塩化ナトリウム水溶液で湿らせた綿布,銅板)としたとき,物質A側でp。この組み合わせのまま,くり返し単位構造の数を増やしたところ,q。次に,(物質A,物質B,物質C)をrとしたところ,その場合でも電池として働いた。

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選択肢

(1) 酸化反応が起きた

(2) 還元反応が起きた

(3) 電圧計が示す電圧の絶対値は変化しなかった

(4) 電圧計が示す電圧の絶対値が大きくなった

(5) 電圧計が示す電圧の絶対値が小さくなった

(6) (亜鉛板,アルミニウム板,白金板)

(7) (亜鉛板,白金板,銅板)

(8) (白金板,食塩水を含むゼラチンゲル,亜鉛板)

(9) (亜鉛板,ガラス板,銅板)

図1—1 実験の模式図
図1—1 実験の模式図

ク 下線部⑦に関して,固体酸化物型と呼ばれる燃料電池では,空気極ともよばれる正極で O2− イオンが発生し,それが燃料極ともよばれる負極に移動して反応する。負極で起きる反応を,電子の記号 e− を用いた反応式で表せ。

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ケ 下線部⑧に関して,燃料電池で電気エネルギーとして取り出せるのは,25∘C において水素分子 1mol あたり 237kJ である。この温度における燃料電池の起電力(電圧)は何 V と計算できるか,有効数字 2 桁で求めよ。なお,電気エネルギーは反応に関与した電気量と電圧の積で与えられ,1J=1C×1V である。

コ 下線部⑨に関連して,塩化ナトリウム水溶液の電気分解を考える。陽極および陰極より発生する 2 種類の気体のうち,一方は塩素である。ここで,発生した上記 2 種類の気体を回収し,その気体どうしをすべて反応させて得られた物質を,水に溶解させた。こうして得られた水溶液中の Cl− の濃度 [Cl−]〔mol·L−1〕と pH の関係を表すグラフとして最も適切なものを次ページの図1—2に示した(1)~(8)の中から選べ。

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図1—2 [Cl^-]とpHの関係
図1—2 [Cl−]とpHの関係
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第2問 次の文章を読み,問ア~クに答えよ。なお,解答にあたり結晶水(水和水)や不純物は考えなくてよい。必要があれば以下の値を用いよ。

t2-0

気体定数 R=8.3×103Pa·L·K−1·mol−1,e:自然対数の底

 ゼオライトという結晶性の鉱物が存在する。これは,①ケイ素,アルミニウム,酸素原子からなる骨格を有し,その骨格構造としてミクロ孔と呼ばれる分子レベルの大きさの孔をもつ物質の総称である。骨格構造が異なる様々なゼオライトが知られており,その違いに応じて様々な機能を発現する。図2—1にゼオライトの一種であり,日本でも多く産出するMOR型ゼオライトの骨格構造を示す。ゼオライトの特徴的な性質と応用について考えてみよう。

 ゼオライトの骨格は負に帯電しており陽イオン交換に用いることができる。この理由は次のように説明できる。まず,骨格にアルミニウムを含まないゼオライトを考える。ゼオライトをイオン結晶とみなすと,一般に結晶内では全てのケイ素イオンに酸化物イオン 4 つが隣接しており,全ての酸化物イオンにケイ素イオン 2 つが隣接している。このときゼオライトの骨格全体の電荷は 0 となり,酸化物イオンの電荷は −2 であるため,ケイ素イオンの電荷はあである。ここで,ゼオライトの骨格全体の中で,ケイ素イオン 1 つをアルミニウムイオン 1 つで置換すると,骨格全体の電荷はいとなる。このためアルミニウムイオンの数に対応する負電荷が生じ,ゼオライトはこの負電荷を打ち消すために必要な分量の陽イオンを,ミクロ孔内のイオン交換サイトと呼ばれる部位に保持している。その陽イオンは別の陽イオンと交換できる。このことを利用すると,たとえば②水中に存在するセシウムイオンを除去できる。このとき,③ゼオライトを筒に充填してイオンを含む水をゆっくり通すとイオン交換の効率が高い。

 ゼオライトは触媒としても重要性が高い。例えば,イオン交換サイトの陽イオンとして④水素イオンを保持している場合には酸として働くため,固体の酸触媒としてくり返し使用できる。

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図2—1 MOR型ゼオライトの骨格構造の模式図
図2—1 MOR型ゼオライトの骨格構造の模式図

 ここに示す骨格は一部を切り出したものである。(左)原子をイオン半径で示した図。左上には一部の拡大図を示す。「Si または Al 原子」と示す箇所には,ケイ素またはアルミニウムのどちらかの原子が存在する。イオン交換サイトに保持されている陽イオンは省略されている。(右)ケイ素またはアルミニウム原子が存在する位置を線でつないだ図。酸素原子を省略し,骨格構造を見やすくしている。ミクロ孔が紙面に垂直な方向に深く続いていることを示している。

〔問〕

ア あ,いに入る符号付きの数値を答えよ。ただし,電子 1 個の電荷を −1 と表すものとする。

イ 下線部①に関して,ゼオライト骨格中のケイ素とアルミニウムの原子の数の比は様々であり,フッ化水素酸によってゼオライトを溶解させるとこの比を精度よく調べられる。ここで,フッ化水素酸の取り扱いについて述べた以下の文について,二重下線部a~eのうち間違っている箇所をすべて選び,記号で答えよ。

 フッ化水素酸は有毒かつ(a)強酸であるため,丈夫な(b)石英ガラス製の容器に保存し,実験時には小分けにして用いる。使用する際には,保護めがねを着けるが,(c)手袋は使わず素手で取り扱うことが好ましい。なお,皮膚に付着した場合に備えてグルコン酸カルシウム軟こうを用意しておく。これは,流水洗浄で除去しきれなかったフッ化水素をカルシウムイオンと反応させて(d)毒性の低い錯イオンに変えるためである。実験後に余ったフッ化水素酸は(e)重金属を含まないので下水に流してかまわない。

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ウ 下線部②に関して,セシウムイオンをイオン交換サイトに保持しやすいゼオライトであるMOR型ゼオライトを用いて以下の実験 1,2 を行った。

実験1:骨格に含まれるケイ素とアルミニウムの原子の数の比が 5.3:1 であり,イオン交換サイトにナトリウムイオンのみを有するMOR型ゼオライトを得た。

実験2:実験1のMOR型ゼオライト 1.00kg を筒に充填し,セシウムイオン濃度が 2.00×10−3mol·kg−1 である試料水を連続的にゆっくり通した(図2—2)。その結果,ナトリウムイオンの 96% がセシウムイオンに交換された段階まではセシウムイオンが完全に除去された水が得られ,それ以降はセシウムイオンを含む水が筒から出てきた。

 実験1で得たMOR型ゼオライトの組成式を Na10(SiOp)q(AlOr)s で表すとき,p,q,r,s の値を自然数で答えよ。また,実験2において,使用したMOR型ゼオライトの何倍の質量の試料水からセシウムイオンを完全に除去できたか,有効数字 2 桁で答えよ。

図2—2 筒型装置を用いたイオン交換
図2—2 筒型装置を用いたイオン交換
図2—3 タンク型装置を用いたイオン交換
図2—3 タンク型装置を用いたイオン交換

エ 下線部③に関して,その理由を明らかにしたい。そのために,化学的性質が同一と見なせる 41K+ と 39K+ を利用し,陽イオンとして 1.00mol の 41K+ のみを含む 1.00×103L の試料水と,1.00mol の 39K+ のみをイオン交換サイトに保持している 1.00kg のゼオライトを使った実験を考える。図2—3に示すように,単純に全量の試料水(1.00×103L)とゼオライト(1.00kg)をタンク内で混合してイオン交換反応が平衡に達するまで攪拌する。そののち栓を開けて試料水のみを回収する場合に,試料水中に残存する 41K+ の物質量〔mol〕を有効数字 2 桁で求めよ。

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オ 問エに関連して,今度はタンクを 2 段にして実験を行う(図2—4)。問エの場合と同様に,陽イオンとして 1.00mol の 41K+ のみを含む 1.00×103L の試料水と,1.00mol の 39K+ のみをイオン交換サイトに保持している 1.00kg のゼオライトを用意する。ここで,実験 3 ~ 5 を行う。

実験3:このゼオライトを上段と下段のタンクに 0.50kg ずつ入れる。

実験4:試料水 5.0×102L を上段のタンクに入れて平衡に達するまで攪拌する。次に,処理後の試料水を下段のタンクに移し,再び平衡に達するまで攪拌する。最後にその試料水を回収する。

実験5:ゼオライトは交換せずに,残りの試料水 5.0×102L を用いて実験4と同じ操作をする。

 実験4と5で回収された試料水中に残存している 41K+ の物質量〔mol〕をそれぞれ有効数字 2 桁で求めよ。

図2—4 2段タンク型装置を用いたイオン交換操作
図2—4 2段タンク型装置を用いたイオン交換操作
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カ 図2—2の筒型装置と図2—3のタンク型装置を比較する。二つの装置でそれぞれ同量のゼオライトと試料水を用いるとき,筒型装置のほうが試料水中の特定のイオンをより多く除去できる。その理由を,問エ,オをふまえて平衡という語句を用い,簡潔に答えよ。

キ 下線部④に関して,固体の酸の強さは気体のアンモニアを用いて評価できる。式1に示すようにイオン交換サイトに保持された水素イオン(s−H+)とアンモニアが反応し,イオン交換サイトに保持されたアンモニウムイオン(s−NH4+)になる。

s−H++NH3⇌s−NH4+(式1)

 この平衡反応の平衡定数 K を式2で表すこととする。このとき,酸が強いほど K の値は大きくなる。ここで,rs−H+ と rs−NH4+ はそれぞれイオン交換サイトを H+ と NH4+ が占める割合を,[NH3] は気体アンモニアの濃度〔mol·L−1〕を示す。

K=rs−NH4+rs−H+·[NH3](式2)

 あるゼオライトが示す K の値を測定するために以下の実験 6 ~ 9 を行った。

実験6:このゼオライトのイオン交換サイトの陽イオンを全てアンモニウムイオンとしたのち,十分な大きさの容器に入れ,容器内の気体をすべてヘリウムに置換した。

実験7:容器内部を 1.00×105Pa,427∘C で一定に保った。このとき,平衡状態において rs−H+ と rs−NH4+ はそれぞれ 80%,20% となった。

実験8:圧力と温度を保持したまま容器内の気体を 1.00L 捕集した。この捕集したガスを冷却してから 50.0mL の 1.00×10−3mol·L−1 硫酸に通し,含まれるアンモニアを全て反応させた。

実験9:この溶液を 1.00×10−2mol·L−1 の水酸化ナトリウム水溶液で滴定した。その結果,pH 6.0 になるまでに必要な滴下量は 5.00mL であった。

 このとき,K の値を有効数字 2 桁で答えよ。計算過程も示すこと。

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ク 問キで求めた平衡定数 K の値から分かる固体の酸の強さを,液体の酸の強さと直接比較することは困難である。そこで,液体の酸が他の物質に水素イオンを与える能力の高さを示すハメットの酸度関数(FA)と呼ばれる指標を固体に適用する。ゼオライトについては,FA と問キの式2の平衡定数 K の関係は式3と式4で表すことができる。ここで,ΔH は問キに示す式1の正反応の反応エンタルピー〔J·mol−1〕,T は平衡定数を測定した際の温度〔K〕,α=1.8×10−4mol·J−1,β=1.2×10−9L·K−1·mol−1 とする。

FA=α·ΔH+16(式3) K=β·T·e−ΔHRT(式4)

 MOR型ゼオライトに関して,問キと同様の実験を行ったところ 427∘C での平衡定数 K は 5.7×104L·mol−1 と見積もられた。MOR型ゼオライトの FA を有効数字 2 桁で求めよ。計算過程も示すこと。また,算出した FA をもとに,このMOR型ゼオライトと 80% 硫酸のどちらが酸として強いといえるか答えよ。ただし,その理由を式3と4をもとに説明すること。なお,FA の値は温度によって変化しないものとし,80% 硫酸の FA は −7 とする。必要があれば以下の値を用いよ。

loge(5.7×104)=11,loge(1.2×10−9)=−21,loge(7.0×102)=7,1J=1000Pa·L

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第3問 次の文章を読み,問ア~ケに答えよ。

 有機化合物は,炭素,水素,酸素,窒素など比較的限られた元素から構成されているにもかかわらず,極めて多様な構造や性質を示す。有機化合物が示す①物理的・化学的性質は,その化合物がもつ官能基と②立体構造に強く影響される。

〔問〕

ア 下線部①に関連して,図3—1に示した化合物A~Fを物理的・化学的性質に応じて分類する。大気圧下において沸点が 100∘C より低いものをすべて選び,記号で答えよ。なお,化合物B,C,およびFの構造式は図3—2にしたがって一部の炭素原子および炭素原子に結合した水素原子の表記を省略している。

図3—1 化合物A~Fの構造式
図3—1 化合物A~Fの構造式
図3—2 構造式の簡略表記の例
図3—2 構造式の簡略表記の例
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イ 問アの図3—1に示した化合物A~Fに少量の臭素を滴下すると,一部の化合物において臭素に由来する色が消えた。色が消えた化合物をすべて選び,記号で答えよ。

ウ 水酸化ナトリウム水溶液に,問アの図3—1に示した化合物A~Fのいずれかとヨウ素を加えて温めると,一部の溶液において黄色沈殿の生成が見られた。この反応を示す化合物をすべて選び,記号で答えよ。また,沈殿した化合物の分子式を示せ。

エ 問アの図3—1に示した化合物A~Fをそれぞれ水に加えたところ,一部の化合物は水に溶解し,酸性を示した。この性質を有する化合物をすべて選び,記号で答えよ。

オ 有機化合物はその構成元素が変わると性質が変化する。例えば,問アの図3—1に示した化合物Aとエタンチオール(CH3−CH2−SH)は構造が類似しているが,沸点は大きく異なる。沸点の違いに関する次の説明文中の空欄あといにあてはまる最も適切な語句を答えよ。

〔沸点の違いに関する説明文〕

 化合物Aの沸点は,エタンチオールの沸点よりもあ。この理由は,分子間の相互作用の 1 つであるい結合の強さが異なるためである。

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カ 下線部②に関連して,立体異性体について考える。例えば,2-ブタノール(CH3−CH(OH)−CH2−CH3)は不斉炭素原子をもち,1 対の鏡像異性体が存在する。一方,2-ブタノール中の 1 つの水素原子を塩素原子に置換した3-クロロ-2-ブタノール(CH3−CH(OH)−CHCl−CH3)は,分子内に 2 個の不斉炭素原子をもち,図3—3に示した 4 種類の立体異性体G~Jが存在する。なお,図中の

p38a

は紙面上に置いた不斉炭素原子から紙面の手前側に向かう結合,

p38b

は紙面の奥側へ向かう結合,——は紙面と同じ平面にある結合を表している。この表記法を以後,「破線-くさび型表記」とよぶ。

図3—3 3-クロロ-2-ブタノールの立体異性体
図3—3 3-クロロ-2-ブタノールの立体異性体

 図3—3中の立体異性体G~Jの中には,鏡像異性体の関係にあるものが 2 対存在する。立体異性体Gと鏡像異性体の関係にある立体異性体を選び,H,I,Jのいずれかの記号で答えよ。

キ 2,3-ブタンジオール(CH3−CH(OH)−CH(OH)−CH3)は,図3—3に示した3-クロロ-2-ブタノールと同様に 2 個の不斉炭素原子をもつにもかかわらず,鏡像異性体は 1 対しか存在しない。その理由を簡潔に説明せよ。必要に応じて図を用いて解答してもよい。

ク C6H10 の分子式をもつ直鎖状のアルキンKを用いて次の説明文および図3—4に記載した一連の反応を行った。化合物K,L,M,N,O,およびRの構造式を,図3—5を参考にして描け。

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〔アルキンKに対する一連の反応の説明文〕

 直鎖状のアルキンKに硫酸水銀(HgSO4)を触媒として水を付加させると,単一のケトンLのみが得られた。なお,ケトンLに対し,問ウと同様の反応を行ったところ,黄色沈殿は生じなかった。

 アルキンKに対し,活性炭の表面にパラジウムの微粒子を載せたパラジウム炭素(Pd/C)を触媒として水素を付加させると,化合物Mが得られた。一方,活性炭の代わりに炭酸カルシウムを用い,さらにパラジウム表面に吸着しやすい酢酸鉛などの物質を加えた触媒(リンドラー触媒)を用いた場合には,アルキンKへの水素の付加反応は進行するものの,化合物Mとは異なる化合物Nが得られた。液体アンモニア中にアルキンKとナトリウムを入れて適切な処理を行うと化合物Oが得られた。化合物NとOは,同じ分子式をもち,互いに立体異性体の関係にあった。また,大気圧下における化合物Nの融点は −138∘C であり,化合物Oの融点(−115∘C)よりも低い値であった。

 さらに,臭素水の上に化合物Nを静かに注いでできた 2 層の溶液を振り混ぜると臭素の色が消える様子が観測された。同様の実験を化合物Oに対して行った場合には臭素の色が消えた一方,化合物Mに対して行った場合には色の変化が観測されなかった。化合物Nと臭素の反応からは 1 対の鏡像異性体PとQが得られた一方,化合物Oと臭素の反応からは鏡像異性体が存在しない化合物Rのみが得られた。化合物P,Q,およびRは同じ分子式をもち,互いに立体異性体の関係にあった。

図3—4 アルキンKに対する一連の反応
図3—4 アルキンKに対する一連の反応
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図3—5 構造式の例
図3—5 構造式の例

ケ 図3—6に示したニトロ基とカルボキシ基をもつベンゼン環どうしが連結された化合物Sは,不斉炭素原子をもたない。それにもかかわらず,この化合物には 1 対の鏡像異性体が存在する。化合物Sに鏡像異性体が存在する理由を,分子の立体的な構造に注目し,1 ~ 2 行程度で簡潔に説明せよ。

図3—6 化合物Sの構造式
図3—6 化合物Sの構造式