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化 学
第1問
Ⅰ 近年,フロン12などのクロロフルオロカーボン類によるオゾン層破壊の問題など,大気化学への関心が高まっている。ここでは簡単な反応速度式を組み合わせて,成層圏におけるオゾンの分解・再生サイクルを調べてみよう。図1—1に示すように,大気中のオゾンの濃度分布は地表から 15 〜50 k m にある成層圏で高く,30 k m 付近で極大となっている。成層圏でオゾンは紫外線を吸収して酸素分子と酸素原子に分解する。
O 3 ⟶ O 2 + O ( 1 )
この反応によって,オゾンは人体に有害な紫外線を吸収し,地表に届かないようにさえぎる役割を果たしている。一方,分解反応(1)で生成した酸素原子は,周囲に多量に存在する酸素分子とただちに反応してオゾンを再生する。
O + O 2 ⟶ O 3 ( 2 )
このような分解と再生のサイクルが働いているために,紫外線による光化学反応で成層圏のオゾン濃度が減少することはなく,一定である。
図1—2は大気の平均的な温度分布を示している。このグラフによると,成層圏では高度とともに大気の温度が上昇している。オゾンの分解・再生サイクルにおいて再生反応(2)が発熱反応であることが温度上昇の原因のひとつである。この反応の熱化学方程式は
O ( 気体 ) + O 2 ( 気体 ) = O 3 ( 気体 ) + 106 k J ( 3 )
である。
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以下の問ア 〜オ に答えよ。解答は有効数字2桁とせよ。また,結果だけでなく,途中の考え方や式も示せ。
〔問〕
ア 反応(1)によってオゾンが分解する速度を v 1 ,反応(2)によってオゾンが再生される速度を v 2 として,v 1 ,v 2 をそれぞれ反応速度式によって表せ。ただし,反応(1),(2)の速度定数をそれぞれ k 1 ,k 2 とし,酸素原子,酸素分子およびオゾンの濃度を [ O ] ,[ O 2 ] ,および [ O 3 ] とする。
イ 下線部の記述が成り立つとき,酸素原子の濃度が次式(4)となることを示せ。
[ O ] = k 1 [ O 3 ] k 2 [ O 2 ] ( 4 )
ウ 高度 30 k m における酸素原子濃度 [ O ] を求めよ。ただし,酸素分子,オゾンの濃度分布は図1—1に与えられている。また,高度 30 k m において,速度定数は k 1 = 3.2 × 10 − 4 s − 1 ,k 2 = 3.8 × 10 5 l · m o l − 1 · s − 1 とする。
エ 高度 30 k m におけるオゾンの再生反応(2)の速度 v 2 を推定せよ。
オ 成層圏における大気の温度は,オゾンの再生反応などによる加熱効果と赤外放射による冷却効果とが釣り合うことによって,図1—2に示すような分布になっている。ここでは,オゾンの再生反応(2)による加熱効果を見積もってみよう。いま,一定強度の紫外線が1日あたり10時間照射したとすると,高度 30 k m において1日に大気 1 l あたり何 J の熱量が発生するかを求めよ。さらに,発生した熱量による加熱効果は1日あたり何 K の温度上昇に相当するかを見積もれ。ただし,窒素分子および酸素分子のモル熱容量(1 m o l の物質の温度を 1 K だけ上昇させるために必要な熱量)は共に 29 J · K − 1 · m o l − 1 とし,温度,圧力には依存しないとする。
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図1—1 大気中の窒素分子,酸素分子およびオゾンの濃度分布。下図は高度 30 k m 付近のグラフを拡大したものである。
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図1—2 大気の温度分布。対流圏では圧力の低い上層ほど大気の温度は低下する。一方,成層圏では高度とともに大気の温度は上昇し,高度約 50 k m で極大となる。中間圏では再び低下する。
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Ⅱ 最近,水素のもつ化学エネルギーを電極反応によって直接電気エネルギーに変える燃料電池の開発が進められている。ここでは,図1—3に示すような水素—酸素燃料電池を考えてみよう。この電池では電解質に水酸化カリウム水溶液を用いており,負極では水素の酸化反応
H 2 + 2 O H − ⟶ 2 H 2 O + 2 e − ( 5 )
が起こり,正極では酸素の還元反応が起こる。この酸化還元反応のエネルギーが電気エネルギーとして取り出される。
以下の問カ ,キ に答えよ。解答は有効数字2桁とする。また,結果だけでなく,途中の考え方や式も示せ。必要があれば以下の数値を用いよ。
ファラデー定数 9.6 × 10 4 C · m o l − 1
〔問〕
カ 正極における還元反応を,反応式(5)にならって示せ。
キ 水素の燃焼反応の熱化学方程式は
H 2 ( 気体 ) + 1 2 O 2 ( 気体 ) = H 2 O ( 液体 ) + 286 k J ( 6 )
である。水素—酸素燃料電池で取り出すことのできる電気エネルギーが式(6)の反応熱と等しいと仮定したとき,この電池の起電力は何 V になるか。なお,1 V の起電力で 1 C の電気量を取り出したときのエネルギーは 1 J である。
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図1—3 水素—酸素燃料電池の模式図。電極には触媒作用をもった多孔質の金属膜を用い,気体と水酸化カリウム水溶液が接触できるように工夫されている。
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第2問
次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。必要があれば,原子量として下の値を用いよ。
H : 1.0 C : 12.0 N : 14.0 O : 16.0 N a : 23.0 S : 32.1 C l : 35.5
Ⅰ 有機物に含まれるタンパク質などの有機窒素化合物の量は,それを摂取する生物にとっての有用性,例えば栄養的価値,を示す指標の一つとして用いられている。試料に含まれる有機窒素化合物の窒素をアンモニアに変換して分析する実験について述べた以下の文を読み,問ア 〜エ に答えよ。
試料 0.20 g に濃硫酸 5 m l と触媒を加えて加熱した。この加熱過程において,試料は分解され,含まれていた有機窒素化合物の窒素は硫酸水素アンモニウムとなる。あらかじめ蒸留水 50 m l を入れておいた丸底フラスコAに,加熱分解が終了した試料液の全量を移した。そして,図2—1に示す実験装置を組み立てた。コックBを開き 10 m o l · l − 1 水酸化ナトリウム水溶液 20 m l を少量ずつ丸底フラスコAに加え,アンモニアを発生させた。続いて,コックBを閉じ,コックCを開いて水蒸気を丸底フラスコAの溶液中に送り込んだ。アンモニアを捕集するために,丸底フラスコAから水蒸気とともに送られてくるアンモニアを冷却管Eで冷却し,希塩酸 10 m l を入れた三角フラスコDに導入した。丸底フラスコAから発生するアンモニアを全て捕集した後,図2—1の実験装置から三角フラスコDを取り外した。この三角フラスコD内の溶液にメチルレッドを指示薬として加え,x m o l · l − 1 水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定をおこなったところ,9.2 m l を加えたところで溶液が赤色から黄色に変化したので,ここを中和の終点とした。試料を加えずに全く同様にすべての操作をおこなったところ,最後の中和に要した x m o l · l − 1 水酸化ナトリウム水溶液の量は 21.2 m l であった。
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〔問〕
ア 下線部①において,丸底フラスコA内の溶液ではどのような化学反応が起こっているか。反応式で示せ。
イ 下線部②の x m o l · l − 1 水酸化ナトリウム水溶液の濃度を求めるために,次の操作をおこなった。まず,シュウ酸二水和物 ( C O O H ) 2 · 2 H 2 O を 3.15 g とり,水に溶かして 1000 m l とした。このシュウ酸水溶液 10.0 m l にフェノールフタレインを指示薬として加え,上記 x m o l · l − 1 水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ,中和に 11.1 m l を要した。x の値を有効数字2桁で求めよ。結果だけでなく求める過程も記せ。
ウ 試料 0.20 g から生じたアンモニアのモル数を有効数字2桁で求めよ。結果だけでなく求める過程も記せ。
エ シュウ酸と水酸化ナトリウムの中和反応の終点では,シュウ酸イオンのごく一部が水分子と反応してシュウ酸水素イオンと水酸化物イオンを生じるため,水溶液は弱いアルカリ性を示す。このときの水酸化物イオンの濃度は,中和反応の終点におけるナトリウムイオンの濃度 Y ( m o l · l − 1 ) ,水のイオン積 K w ( m o l 2 · l − 2 ) ,およびシュウ酸水素イオンがシュウ酸イオンと水素イオンに電離するときの電離定数 K 2 ( m o l · l − 1 ) を用いて近似的に求めることができる。このときのpHを,Y ,K w ,K 2 で表せ。結果だけでなく求める過程も記せ。
図2—1 丸底フラスコA内の試料液からアンモニアを発生させ捕集する装置
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Ⅱ 次の文章を読み,問オ 〜キ に答えよ。
硫黄分を含んだ化石燃料を燃焼させると,酸性雨の原因となる可能性が指摘されている。燃焼さじに少量の単体の硫黄を取りバーナーの炎を近づけると,青白い炎をあげ刺激臭を放って燃焼し始めた。このさじを蒸留水を底に入れた集気瓶に入れ,燃焼させ続けた。燃焼後,フタをしてよく振り混ぜ気体を溶かした。この溶液は弱酸性を示した。
下線部①で得られた溶液 30 m l にヨウ素水溶液(1.0 × 10 − 3 m o l · l − 1 )を加えたところ,はじめは滴下したヨウ素溶液の色が消えたが,y m l 加えたところでヨウ素溶液の色が残るようになった。このとき溶液のpHは3.0に低下した。
〔問〕
オ 下線部①で得られた溶液に硫化水素ガスを導入したところ溶液は白濁した。このときの反応式は次式で与えられる。a に当てはまる数値と A ,B の化学式を答えよ。また,この反応で硫化水素はどのように働いているか答えよ。
a H 2 S + A ⟶ 3 B + 3 H 2 O
カ 下線部②に関して,溶液中でどのような反応が起こっているか,反応式で示せ。
キ 下線部③の y の値を有効数字2桁で求めよ。結果だけでなく求める過程も記せ。
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第3問
次のⅠ,Ⅱ(a ,b )の各問に答えよ。必要があれば,原子量として下の値を用いよ。
H : 1.0 C : 12.0 O : 16.0
Ⅰ 次の文章を読み,以下の問ア 〜オ に答えよ。
1985年に60個の炭素原子からなる分子,フラーレン(C 60 )が発見された。この化合物は図3—1のようなサッカーボール状の炭素骨格を持っている。この化合物の炭素—炭素間の結合は図3—1に示したように単結合と二重結合のみからなっており,その二重結合の数は z 個である。
図3—1 C 60 の分子模型(左)と構造式(右)
分子模型の球は炭素原子を表す。手前の原子を大きめに示してある。
構造式は左図を正面から見たもので,炭素原子は省略してある。
発見当初,炭素原子からなる六角形の構造はベンゼンのような構造(すべての炭素—炭素間の結合が等価)であると想像されていた。しかし,構造解析の結果,図3—1に示したような1,3,5-シクロヘキサトリエンの構造であることがわかった。C 60 の結晶は適当な条件を選ぶと電気を通すことで科学者の興味を集めているが,炭素の単体としては C 60 の他にも電気を通す A と電気を通さない B の二つが知られている。C 60 を発煙硫酸(三酸化硫黄を濃硫酸に溶かしたもの)で処理し,続いてその生成物に水を加えて加熱すると多数のヒドロキシル基を分子の表面に有する C 60 ( O H ) n の組成を持つ化合物が生成した。この反応では未反応の C 60 が一部残ったので,得られた C 60 と C 60 ( O H ) n の混合物に溶媒 C を加え,溶解度の違いを利用して精製した。つまり,未反応の C 60 を溶媒 C に溶かし出して取り除いた。残った C 60 ( O H ) n をヨウ化メチルと反応させ,すべてのヒドロキシル基をメチルエーテルに変換し C 60 ( O C H 3 ) n とした。この化合物の組成を調べるために凝固点降下の実験を行って n の数を決定した。
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〔問〕
ア z はいくつか。
イ もしベンゼン分子(C 6 H 6 )が1,3,5-シクロヘキサトリエン構造を持っていると仮定すると,どのような性質が期待されるか。次の記述の中からあてはまるものすべての番号を選べ。
(1) 臭素分子を室温下,暗所で加えると置換反応が進行する。
(2) 硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液を室温下で加えるとその赤紫色が脱色される。
(3) 隣り合った炭素上に置換基を一つずつ持つ置換体には構造異性体が2つある。
(4) 触媒を用いて水素を付加させるとシクロヘキサンになる。
ウ 下線部①に示す A および B は何か。
エ 下線部②で使った溶媒 C は何か。以下の選択肢の中から一つ選び,その名称を記せ。
水
飽和食塩水
エタノール
トルエン
オ 下線部③について,n の決定は次のように行った。n はいくつか。有効数字2桁で答えよ。
C 60 ( O C H 3 ) n (123 m g )をベンゼン(50.0 g )に溶解した溶液の凝固点を測定したところ 0.0110 ℃ の凝固点降下を示した。なお 1000 g のベンゼンに溶質 1 m o l を溶かした溶液の凝固点降下は 5.12 ℃ である。
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Ⅱ 次の文章を読み,以下の問カ 〜サ に答えよ。
a )立体異性体とは,原子の結合順序が同じであるにもかかわらず,原子や原子団の立体的な配置が異なる異性体のことで,幾何異性体の他に光学異性体や後述のジアステレオ異性体も含まれる。分子内に1つの不斉炭素原子を有する化合物には互いに鏡像の関係にある異性体,すなわち光学異性体が存在する。一方,分子内に不斉炭素原子が2つ以上存在する場合は,互いに鏡像の関係にはない立体異性体も存在する。これをジアステレオ異性体と呼ぶ。2つの不斉炭素原子を有する化合物の例としてアミノ酸のL-トレオニンをあげることができ,図3—2の通りL-トレオニンを含めて4種類の立体異性体が存在する。しかしながら,不斉炭素原子が2つあっても,3種類の立体異性体しか存在しない場合もある。また,数多くの不斉炭素原子を含む化合物である α -グルコースと α -ガラクトースも,ジアステレオ異性体の関係である。
図3—2 L-トレオニンの立体異性体
〔問〕
カ 下線部①に関して,L-トレオニンの立体異性体 1 ,2 ,3 のうち,L-トレオニンの光学異性体はどれか。番号で答えよ。
キ 下線部①に関して,L-トレオニンの立体異性体 1 ,2 ,3 のうち,L-トレオニンとジアステレオ異性体の関係にあるものはどれか。番号で答えよ。
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ク 下線部②に相当する化合物としてD-酒石酸があげられる。図3—2にならって構造式を描くと,図3—3の4つの構造式を描けるが,このうち2つは同一化合物を表しているため,全体として立体異性体は3種類となる。同一化合物を表している構造式を 4 〜7 の番号で答えよ。
図3—3
ケ 下線部③に関して,6員環構造を持った α -グルコース(図3—4)にはいくつの不斉炭素原子が存在するか。
図3—4 α -グルコース
b )α -グルコース(C 6 H 12 O 6 ,分子量 = 180 )4.5 g を酢酸に溶解して,さらに過剰量の無水酢酸と少量の濃硫酸を加えて加熱したところ,分子内の5つのヒドロキシル基がすべてアセチル化された生成物が 7.8 g 得られた。この生成物を臭化水素を飽和させた酢酸溶液に溶解して室温で5時間反応させると,分子内の特定のアセトキシ基(C H 3 C O O —)1つだけが臭素原子に置き換わった臭素誘導体が得られた。この化合物中の臭素原子は金属触媒を用いた水素による還元反応により,効率よく水素原子に置換することができた。得られた化合物にメタノール中で水酸化ナトリウムを作用させて,すべてのエステル結合を加水分解し,目的化合物を得た。この目的化合物は銀鏡反応に対して陰性であった。
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〔問〕
コ 下線部④の収量は理論的に求められる量の何パーセントにあたるか。有効数字2桁で答えよ。
サ 下線部⑤の化合物の構造を図3—4の例にならって示せ。
第1問 空のオゾンと、水素の電池 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、成層圏(高さ 15〜50 km)のオゾンの問題。オゾン O 3 は紫外線でこわれて酸素原子 O を出し(反応(1))、その O はまわりにたくさんある酸素分子 O 2 とすぐくっついてオゾンにもどる(反応(2))。こわれる速さと、もどる速さが等しいので、オゾンの量は変わらない。
この「こわれる速さ = もどる速さ」の1本の式から、ほとんど量れない酸素原子の濃さが求まる。そこから、もどる反応の速さ、そのとき出る熱、空気の温度がどれだけ上がるかを順に見積もる。濃さは図1—1(高さ 30 km の拡大)から読む。
後半Ⅱは水素—酸素燃料電池。負極で水素が電子を出し、正極で酸素が電子を受けとる。取り出す電気のエネルギーを「電気量 × 電圧」とおいて、電圧を出す。
ア 反応の速さは、反応する物の濃さの積に速度定数をかけた形で書く。
反応(1)は、オゾン1つが紫外線でこわれる反応なので、速さはオゾンの濃さだけに比例する。
反応(2)は、O と O 2 が出会ってはじめて起きる反応なので、速さは2つの濃さの積に比例する。
答え v 1 = k 1 [ O 3 ] , v 2 = k 2 [ O ] [ O 2 ]
イ 下線部は「オゾンの濃さは一定」と言っている。オゾンは反応(1)で減り、反応(2)でふえるので、濃さが変わらないのは、減る速さとふえる速さが等しいとき:
v 1 = v 2 ⟹ k 1 [ O 3 ] = k 2 [ O ] [ O 2 ]
酸素原子の側から見ても同じ。O は反応(1)でできて反応(2)で使われるので、O の量が一定なのも同じ式になる。
答え 濃度が一定 ⇒ v 1 = v 2 ⇒ k 1 [ O 3 ] = k 2 [ O ] [ O 2 ] ⇒ [ O ] = k 1 [ O 3 ] k 2 [ O 2 ]
ウ 図1—1の下の拡大グラフで、高さ 30 km のところの濃さを読むと、[ O 3 ] ≈ 2.0 × 10 − 8 m o l / L 、[ O 2 ] ≈ 2.0 × 10 − 4 m o l / L 。
[ O ] = 3.2 × 10 − 4 × 2.0 × 10 − 8 3.8 × 10 5 × 2.0 × 10 − 4
酸素原子は、オゾンのさらに約24万分の1しかない。O は生まれるとすぐ(100分の1秒ほどで)O 2 とくっついて消えるので、ほとんどたまらない。
答え [ O ] = 3.2 × 10 − 4 × 2.0 × 10 − 8 3.8 × 10 5 × 2.0 × 10 − 4 = 8.4 × 10 − 14 m o l / L (図1—1 から [ O 3 ] = 2.0 × 10 − 8 , [ O 2 ] = 2.0 × 10 − 4 )
エ イで、v 2 = v 1 だった。だから再生の速さは、分解の速さ k 1 [ O 3 ] と同じで、ウの [ O ] を使わなくても出せる:
v 2 = k 1 [ O 3 ] = 3.2 × 10 − 4 × 2.0 × 10 − 8
(ウの値を k 2 [ O ] [ O 2 ] に入れても同じになる。)
答え v 2 = k 1 [ O 3 ] = 6.4 × 10 − 12 m o l / ( L · s )
オ 反応(2)が1回起きるごとに熱が出る。(3)式より、O 3 1 mol ができると 106 k J 。
1日に光が当たるのは 10 時間 = 3.6 × 10 4 s 。この間に空気 1 L の中でできるオゾンは v 2 × 3.6 × 10 4 m o l 。出る熱は
6.4 × 10 − 12 × 3.6 × 10 4 × 1.06 × 10 5 J
次に温度の上がり方。この熱で温まるのは、空気 1 L の中の窒素と酸素。図1—1から 30 km では N 2 が約 8.0 × 10 − 4 、O 2 が約 2.0 × 10 − 4 m o l / L で、合計 1.0 × 10 − 3 m o l 。1 mol を 1 K 上げるのに 29 J なので
Δ T = 熱 1.0 × 10 − 3 × 29
1日に 1 K 近く温まる計算になる。実際には、赤外線で熱が逃げるのと釣り合って、成層圏の温度は一定に保たれている。
答え 6.4 × 10 − 12 × 3.6 × 10 4 × 1.06 × 10 5 = 2.4 × 10 − 2 J , 2.44 × 10 − 2 ( 8.0 × 10 − 4 + 2.0 × 10 − 4 ) × 29 = 0.84 K
カ 正極では、酸素が電子を受けとる(還元)。電解質は KOH 水溶液なので、酸素は水と組んで O H − になる。
O 2 の O 原子2つが、それぞれ電子2つを受けとる → 電子は4つ。O と H の数を合わせるために、左辺に水を2つ置くと、右辺に O H − が4つできる。電荷も左 − 4 、右 − 4 で合う。
負極の式 (5) を2倍して足すと、O H − と電子が消えて 2 H 2 + O 2 ⟶ 2 H 2 O になる。
キ (5)式より、水素 1 mol が反応すると電子が 2 mol 流れる。電気量は 2 × 9.6 × 10 4 C 。
電気のエネルギーは「電圧 × 電気量」。これが反応熱 286 k J と等しいとするので
E × 2 × 9.6 × 10 4 = 286 × 10 3
これを E について解く。実際には、反応熱のすべてを電気にはできない(25 ℃・1 気圧では、取り出せる上限は約 237 k J で、電圧にすると約 1.23 V。温度や圧力が変わるとこの値も変わる)。問題の「等しいと仮定」があってはじめて出る値。
第2問 滴定で量をはかる — 窒素・シュウ酸・硫黄 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、食べ物などの窒素の量を量る方法(ケルダール法)。窒素を硫酸でアンモニウム塩にし、濃い NaOH を加えてアンモニア N H 3 として追い出し、決まった量の塩酸に吸わせる。アンモニアに食べられずに残った塩酸を NaOH で滴定する(逆滴定)。
試料なしで同じ操作をしたときとの差 が、アンモニアが食べた塩酸の量になる。こうすると、塩酸の正確な濃さが分からなくても答えが出る。NaOH の濃さ x は、シュウ酸という正確に量れる酸で先に決めておく。
後半Ⅱは、硫黄を燃やしてできた二酸化硫黄 S O 2 を水に溶かした液(亜硫酸 H 2 S O 3 )の問題。S O 2 の S は酸化数 +4 で、相手によって酸化剤にも還元剤にもなる。硫化水素とは酸化剤として、ヨウ素とは還元剤として反応する。
ア 試料の窒素は硫酸水素アンモニウム N H 4 H S O 4 になっている。これに強い塩基の NaOH を加えると、弱い塩基のアンモニアが追い出される:
N H 4 H S O 4 + 2 N a O H ⟶ N a 2 S O 4 + N H 3 + 2 H 2 O
H S O 4 − の H と N H 4 + の H の、2つ分の H + を NaOH が受けとるので、NaOH は2つ要る。フラスコには加熱に使った濃硫酸も残っていて、それも NaOH で中和される(H 2 S O 4 + 2 N a O H ⟶ N a 2 S O 4 + 2 H 2 O )。NaOH を多めに入れて液を塩基性にしないと、アンモニアは出てこない。
答え N H 4 H S O 4 + 2 N a O H ⟶ N a 2 S O 4 + N H 3 + 2 H 2 O (残った硫酸も H 2 S O 4 + 2 N a O H ⟶ N a 2 S O 4 + 2 H 2 O )
イ シュウ酸二水和物 ( C O O H ) 2 · 2 H 2 O の式量は 126 。3.15 g を 1000 m L にしたので、濃さは 3.15 126 = 2.50 × 10 − 2 m o l / L 。
シュウ酸は H を2つ出す2価の酸、NaOH は1価の塩基。中和の終点では「酸が出す H + の数 = 塩基が出す O H − の数」:
2 × 2.50 × 10 − 2 × 10.0 = x × 11.1
(両辺とも mL のままでよい。)これを x について解く。
答え 3.15 126 = 2.50 × 10 − 2 m o l / L , 2 × 2.50 × 10 − 2 × 10.0 = x × 11.1 ⇒ x = 4.5 × 10 − 2
ウ 三角フラスコ D の塩酸は、試料ありでも試料なしでも同じ量。試料なしでは、塩酸は全部残っていて、中和に NaOH が 21.2 m L 要った。試料ありでは 9.2 m L しか要らなかった。
この差 21.2 − 9.2 = 12.0 m L 分の塩酸を、アンモニアが先に中和していた(N H 3 + H C l ⟶ N H 4 C l 、1:1)。だからアンモニアの物質量は
4.50 × 10 − 2 × 12.0 1000 m o l
指示薬にメチルレッド(酸性側で色が変わる)を使うのは、フラスコにできた N H 4 + まで NaOH と反応してしまわないため。
答え 4.50 × 10 − 2 × 21.2 − 9.2 1000 = 5.4 × 10 − 4 m o l
エ 中和の終点では、液の中にシュウ酸イオン C 2 O 4 2 − がある。これはわずかに水と反応して O H − を出す:
C 2 O 4 2 − + H 2 O ⇌ H C 2 O 4 − + O H −
この反応の平衡定数は、H C 2 O 4 − の電離定数 K 2 と水のイオン積 K w を使って K w K 2 と書ける。
N a + は C 2 O 4 2 − 1つにつき2つなので、[ C 2 O 4 2 − ] ≈ Y 2 (反応するのはごく一部)。できる H C 2 O 4 − と O H − は同じ数なので
[ O H − ] 2 Y / 2 = K w K 2 ⟹ [ O H − ] = K w K 2 · Y 2
[ H + ] = K w [ O H − ] に直し、p H = − log 10 [ H + ] の形にまとめる。終点が弱い塩基性になるので、指示薬には塩基性側で色が変わるフェノールフタレインを使う。
答え [ O H − ] = K w K 2 · Y 2 , p H = 1 2 ( log 10 Y − log 10 2 − log 10 K w − log 10 K 2 )
オ 硫黄を燃やすと S O 2 ができ、水に溶けて亜硫酸 H 2 S O 3 (A)になる。
硫化水素 H 2 S (S は −2)と亜硫酸(S は +4)が反応すると、どちらの S も単体の硫黄(B、酸化数 0)になり、水に溶けないので白くにごる。
電子の数で合わせる。H 2 S の S は電子を2つ出し、H 2 S O 3 の S は電子を4つ受けとる。だから H 2 S は2つ要り、S は合計3つできる(右辺の係数3と合う)。O と H も、水3つで合う。
H 2 S は電子を出して相手を還元しているので、還元剤としてはたらいている。
答え a = 2 , A = H 2 S O 3 , B = S , 硫化水素は還元剤として働く
カ ヨウ素 I 2 は電子を受けとってヨウ化物イオンになる(酸化剤)。亜硫酸の S(+4)は電子を2つ出して硫酸の S(+6)になる(ここでは還元剤)。
I 2 + 2 e − ⟶ 2 I − と H 2 S O 3 + H 2 O ⟶ H 2 S O 4 + 2 H + + 2 e − を足すと、電子がちょうど消える。I − と H + をまとめて HI と書く。
ヨウ素は亜硫酸がある間は反応して色が消え、亜硫酸が全部なくなると色が残る。これが終点。
キ 終点では、亜硫酸がすべて硫酸と HI に変わっている。カの式から、ヨウ素 1 mol ごとに硫酸 1 mol(H + 2 つ)と HI 2 mol(H + 2 つ)ができ、強い酸の H + が 4 mol ふえる。弱い酸の亜硫酸自身が出していた H + は、これにくらべて少ないので無視する。
加えたヨウ素は 1.0 × 10 − 3 × y m m o l (y は mL)。液の体積は 30 + y m L にふえていて、pH 3.0 なので [ H + ] = 1.0 × 10 − 3 m o l / L :
4 × 1.0 × 10 − 3 × y = 1.0 × 10 − 3 × ( 30 + y )
これを y について解く。液の体積がヨウ素の分だけふえることを忘れると、答えがずれる。
答え 1.0 × 10 − 3 × y × 4 = 1.0 × 10 − 3 × ( 30 + y ) ⇒ y = 10 ( 1.0 × 10 m L )
第3問 炭素の形 — サッカーボール分子と、鏡に映した分子 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半Ⅰは、サッカーボールの形をした炭素の分子フラーレン C 60 の話。炭素はいつも結合の手を4本もつ、という数え方から二重結合の数を出す。ベンゼンが「二重結合と単結合が交互の形(シクロヘキサトリエン)」だったら性質はどうなるか、炭素の単体の仲間、溶媒での分け方、凝固点降下で大きな分子の分子量を出して n を決める、と進む。
後半Ⅱの a) は立体異性体。不斉炭素(4つの違う物がついた炭素)が2つあると、それぞれの向きの組み合わせで最大4種類。全部の不斉炭素の向きが逆なら鏡像(光学異性体)、一部だけ逆ならジアステレオ異性体 。ただし分子の両端が同じ形なら、鏡に映しても同じになる物(メソ体)ができて3種類に減る。
b) はグルコースの5つの OH をアセチル化し、特定の1か所(1 位)だけを変えていく反応。できた物が銀鏡反応をしない理由も考える。
ア C 60 の炭素は、どれも3つの炭素とつながっている。炭素の手は4本なので、3本のうち1本が二重結合(手を2本使う)になれば、ちょうど4本になる。つまり、どの炭素も二重結合をちょうど1本もつ。
二重結合1本には炭素が2つ関わるので、二重結合の数は
z = 60 2
手の数で数えても同じ。全部の手は 60 × 4 = 240 本、1本の結合は手を2本使い、二重結合はさらに2本使う。結合は全部で 60 × 3 ÷ 2 = 90 本なので、240 = 2 × ( 90 + z ) 。
イ シクロヘキサトリエンは、ふつうの C=C(アルケン)を3つもつ輪。アルケンとしての性質があるはず。
(1) アルケンに臭素を加えると、C=C に Br が付加する(色が消える)。置換反応は起きないので、あてはまらない。
(2) アルケンは過マンガン酸カリウムで酸化されて、赤紫色を消す。あてはまる。
(3) となりの炭素に置換基を1つずつつけると、その2つの炭素の間が二重結合の場合と単結合の場合の2通りがあり、別の物になる。あてはまる。本物のベンゼンは6つの結合がすべて同じなので、1種類しかない。
(4) 水素を付加させると、C=C が全部単結合になってシクロヘキサンになる。あてはまる(本物のベンゼンでも、触媒と条件を強めれば同じ)。
ウ 炭素の単体(同素体)で、フラーレンのほかに教科書に出てくるのは、黒鉛とダイヤモンド。
黒鉛は、炭素が平面の六角形の網をつくり、各炭素に使われていない電子(手)が1つずつ残っている。この電子が網の上を動けるので、電気を通す(A)。
ダイヤモンドは、各炭素が4本の手を全部使って立体的につながり、動ける電子がないので電気を通さない(B)。
エ C 60 は炭素だけでできた、電気のかたよりのない(無極性の)分子なので、無極性の有機溶媒に溶ける。
C 60 ( O H ) n は OH をたくさんもつので、無極性の溶媒には溶けにくい。だから無極性の溶媒を使えば、C 60 だけを溶かし出せる。
選択肢のうち、水・飽和食塩水・エタノールは極性の溶媒。無極性なのはベンゼン環をもつ炭化水素だけ。
オ 凝固点降下 Δ t = K f m から分子量を出す。K f = 5.12 、溶媒は 0.0500 k g 、溶質は 0.123 g :
0.0110 = 5.12 × 0.123 / M 0.0500 ⟹ M = 0.123 × 5.12 0.0110 × 0.0500
C 60 ( O C H 3 ) n の分子量は、C 60 の 720 に、O C H 3 1つ分の 16 + 12 + 3 = 31 が n 個加わった値:
720 + 31 n = 1145
これを n について解き、整数にまるめる。分子量が大きいと凝固点の下がりはとても小さく(0.01 ℃ほど)、3けた目の読みで n が1つ変わる。
答え M = 0.123 × 5.12 0.0110 × 0.0500 = 1.15 × 10 3 , n = 1145 − 720 31 = 14
カ トレオニンの不斉炭素は、N H 2 のついた炭素と、OH のついた炭素の2つ。図3—2の各炭素で、くさび(手前)と点線(奥)についている原子団を L-トレオニンとくらべ、向きが同じか逆かを調べる。
鏡に映した物(光学異性体)は、2つの不斉炭素の向きがどちらも逆 になっている物。1〜3 のうち、N H 2 の炭素も OH の炭素も L-トレオニンと逆になっているものを選ぶ。
キ ジアステレオ異性体は、鏡像ではない立体異性体。不斉炭素が2つの場合、片方だけ向きが逆 の物がこれにあたる。
カで光学異性体に選んだ1つ以外の2つは、N H 2 の炭素だけ、または OH の炭素だけが L-トレオニンと逆になっている。どちらもジアステレオ異性体。
ク 酒石酸は、2つの不斉炭素のどちらにも H・OH・COOH がつき、分子の左右が同じ形をしている。
4 と 6 は、2つの炭素の向きがどちらも同じ組み合わせで、たがいに鏡像(D-酒石酸と L-酒石酸)。
5 と 7 は、2つの炭素の向きが逆どうしの組み合わせ。この形は、分子の真ん中に鏡を置くと左半分と右半分が映しあう(分子の中に対称面がある)ので、鏡に映しても自分自身と同じになる。5 を左右ひっくり返して(紙面の中で 180° 回して)読むと 7 と重なる、つまり同じ化合物。このため立体異性体は4種類ではなく3種類になる。
ケ 不斉炭素は、4本の手の先がすべて違う炭素。図3—4の α-グルコースの6員環で、炭素を1つずつ見る。
環の中の5つの炭素(1 位〜5 位)は、どれも H、OH(または C H 2 O H )、環の左右2方向(環をたどる向きで先の形が違う)がつき、4つとも違う。
環の外の C H 2 O H の炭素は H を2つもつので、不斉炭素ではない。
コ OH 1つをアセチル化する(− O H ⟶ − O C O C H 3 )と、H が1つ C O C H 3 に置きかわるので、分子量は 43 − 1 = 42 ふえる。5つとも変わると
180 + 5 × 42 = 390
グルコースは 4.5 180 = 0.025 m o l 。反応が100%進めば、同じ物質量の五酢酸エステルが 0.025 × 390 g できる。実際に得られた 7.8 g をこの値でわると収率になる。
答え 4.5 180 = 0.025 m o l , 理論量 0.025 × 390 = 9.75 g , 7.8 9.75 × 100 = 80 %
サ 臭化水素で置きかわる「特定のアセトキシ基」は、1 位(環の O のとなりの炭素)のもの。1 位の炭素は環の O ともつながっていて、ほかの位置より反応しやすい。
その Br を水素で H に置きかえると、1 位は H が2つついた C H 2 になる。最後にエステルを全部加水分解すると、2〜4 位の OH と 6 位の C H 2 O H は元の向きのままもどる。
できた物は、図3—4 の 1 位の OH が H になった形。グルコースが銀鏡反応をするのは、1 位の OH(環の O のとなりの OH)から環が開いてアルデヒドになれるから。その OH がなくなったので環が開けず、銀鏡反応は陰性になる。
答え 図3—4 の 1 位の OH を H に置きかえた形(1 位が C H 2 、ほかの OH と C H 2 O H は図3—4 と同じ向き)=1,5-アンヒドログルシトール C 6 H 12 O 5