東大 過去問 2023年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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東京大学 第2次学力試験(前期)2023年 理科「生物」(東京大学公式サイト)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

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お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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生 物

第1問

 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。

Ⅰ 次の文1と文2を読み,問A〜Mに答えよ。

[文1]

 ヒトの生命は,生殖細胞である精子と卵子にそれぞれ 1 本ずつ含まれる父親由来と母親由来の染色体を受け継いで,2 本の染色体をもつ受精卵としてスタートする。生殖細胞の分化の過程では,減数分裂が起こる。減数分裂では,1回の DNA 合成に続いて,2回の細胞分裂が起こる。1回目の分裂では,父親由来と母親由来の相同染色体どうしが平行に並んで対合し,染色体 DNA の一部が,同一,もしくは,ほぼ同一な配列をもつ染色体 DNA の一部によって置き換わる(ア)組換えという現象が起こる。この時,対合した2本の相同染色体の間で DNA の一部が相互に入れ換わる乗換えが起こることが多い。その後,染色体は細胞の赤道面に並び,細胞の両端から伸びる紡錘糸によって引っぱられ,両極に移動する。その後,細胞質は二分され,続いて,2回目の分裂が行われる。減数分裂の全過程を通して,1個の母細胞から 3 個の娘細胞ができ,娘細胞の染色体数は,母細胞の染色体数の 4 分の1となる。

[文2]

 ヒトの体を構成する細胞のうち,生殖細胞以外の細胞のことを体細胞という。体細胞分裂は,(イ)細胞周期に沿って進行する。細胞周期は,増殖細胞においては繰り返し進行する。ただし,正常細胞では,放射線などによって DNA 損傷が生じた場合には,それに応答して,細胞周期の進行が停止する。一方,組換えという現象は,体細胞において,放射線などによって DNA の二本鎖が切断される場合にも起こり,DNA 修復に関与する。(ウ)体細胞における組換えでは,減数分裂における組換えとは異なる点も存在する。まず,鋳型となる染色体が両者で異なる。また,減数分裂における組換えとは異なり,体細胞における組換えでは,乗換えは起こらない。二本鎖切断の入った染色体の切断部位周辺の DNA 配列は,鋳型となるもう一方の染色体の DNA 配列によって置き換えられるが,この時に鋳型となった染色体では DNA 配列の置き換えは起こらない。

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実験1 タンパク質 X は,遺伝性乳がん・卵巣がんの原因遺伝子産物の1つとして知られる。一方,タンパク質 X は,細胞周期の進行に関わるタンパク質と複合体を形成する。そこで,タンパク質 X の細胞周期の制御における役割を調べることにした。タンパク質 X をコードする遺伝子 X を欠損していないヒト細胞(野生株)と遺伝子 X を欠損したヒト細胞のそれぞれについて,放射線を照射する前の細胞と放射線を照射後24時間経過した細胞を多数採取した。DNA と結合すると蛍光を発する色素を用いて染色することにより,一つ一つの細胞に含まれる DNA 量を計測した。その結果,図1—1のような分布となった。

図1—1 野生株と遺伝子 X 欠損細胞における放射線照射前と放射線照射24時間後の細胞あたりの DNA 量の分布
図1—1 野生株と遺伝子 X 欠損細胞における放射線照射前と放射線照射24時間後の細胞あたりの DNA 量の分布
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実験2 細胞周期の進行と DNA 複製は密接に関連している。タンパク質 X の DNA 複製における機能を調べるために,遺伝子 X を欠損していないヒト細胞(野生株)と遺伝子 X を欠損したヒト細胞を用いて,放射性同位元素で標識した DNA 構成成分の細胞内への取り込みを測定することによって放射線照射前後の DNA 合成量を調べた。その結果,図1—2のようなグラフが得られた。

図1—2 野生株と遺伝子 X 欠損細胞の放射線照射前後の DNA 合成量
図1—2 野生株と遺伝子 X 欠損細胞の放射線照射前後の DNA 合成量

実験3 タンパク質 Y は,タンパク質 X と同様に,遺伝性乳がん・卵巣がんの原因遺伝子産物の1つとして知られる。一方,タンパク質 Y は,組換えの中心的酵素と直接結合することも分かっている。そこで,タンパク質 Y の組換えにおける役割を調べるために,ヒト細胞を用いて,DNA 二本鎖切断を導入したときの組換えによる修復の発生頻度を測定する実験系を構築した。

 この実験系では,配列置換型と欠失型の緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein(GFP))遺伝子を含むレポーター遺伝子を準備した(図1—3と図1—4を参照)。(エ)配列置換型 GFP−a 遺伝子では,正常 GFP 遺伝子の配列内に存在する制限酵素 M の認識配列内に,変異を複数導入することによって,新たに制限酵素 N の認識配列を生成し,その認識配列内に終止コドンを導入した。欠失型 GFP−b 遺伝子では,5′末端と3′末端の両方に欠失を入れた(図1—3)。なお,制限酵素 M も制限酵素 N も,ヒト細胞では通常発現しない。

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図1—3 配列置換型 \mathitGFP-a 遺伝子(左)と欠失型 \mathitGFP-b 遺伝子(右)の構造
図1—3 配列置換型 GFP−a 遺伝子(左)と欠失型 GFP−b 遺伝子(右)の構造

制限酵素 N 認識配列内の下線部(TAG,TAA)は,いずれも終止コドンである。また,欠失型 GFP−b 遺伝子において,開始コドンは欠失していない。

図1—4 組換えの発生頻度を測定する実験系
図1—4 組換えの発生頻度を測定する実験系

配列置換型 GFP−a 遺伝子,欠失型 GFP−b 遺伝子を連結している黒い線は,これらの遺伝子とは関係がない DNA 配列を表している。

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 この実験系で使用するレポーター遺伝子は,配列置換型 GFP−a 遺伝子と欠失型 GFP−b 遺伝子が,これらとは関係のない DNA 配列によって直線状に連結された構造をとる(図1—4)。組換えの発生頻度を調べたい細胞に対して,このレポーター遺伝子を導入し,1コピーが安定的に染色体に組み込まれた細胞を準備する。この細胞において,(オ)染色体に組み込まれたレポーター遺伝子上の配列置換型 GFP−a 遺伝子内の「ある1箇所」に DNA 二本鎖切断を誘発する。その後,姉妹染色分体(注:DNA の複製時に作られる同一の遺伝子配列を持つ染色体),あるいは,同じ染色体の中にある相同な配列を鋳型として,組換えによって二本鎖切断が修復されると,細胞は正常な GFP タンパク質を発現し,緑色の蛍光を発するようになる。緑色の蛍光を発する細胞の割合が,その細胞における組換え頻度に相当する。

 遺伝子 Y を欠損していないヒト細胞(野生株)と遺伝子 Y を欠損したヒト細胞を用いて,この実験系で,それぞれの細胞の組換え頻度を測定した結果,遺伝子 Y 欠損細胞では,野生株の2割程度まで組換え頻度が低下していた。

実験4 タンパク質 Y は,組換えによる DNA 二本鎖切断の修復以外に,別の機能も有することが明らかになってきた。遺伝子 Y を欠損していないヒト細胞(野生株)と遺伝子 Y を欠損したヒト細胞を用いて,3つ以上の中心体を有する細胞の頻度を調べたところ,遺伝子 Y 欠損細胞では野生株と比べて,その頻度は明らかに上昇していた。また,遺伝子 Y 欠損細胞では野生株と比べて,染色体の数の異常(異数体)が多く見られた。

〔問〕

A 1 〜 4 に入る適切な数字をそれぞれ答えよ。

B 下線部(ア)について,減数分裂における組換えの生物学的意義は何か。20字以内で述べよ。

C 下線部(イ)の細胞周期が進行する過程を,次の語群の語句を全て用いて,3〜4行で説明せよ。

[語群] M 期,DNA 量,染色体,G1 期,複製,微小管,G2 期,分裂,分配,S 期

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D 下線部(ウ)について,減数分裂における組換えでは,父親由来と母親由来の相同染色体を鋳型に用いるのに対し,体細胞における組換えでは,DNA 損傷の入っていない姉妹染色分体を鋳型として用いる。体細胞における組換えは,細胞周期のどの段階で起こるか。以下の選択肢(1)〜(4)の中から,正しいものを全て選べ。

(1) G1 期

(2) G2 期

(3) M 期

(4) S 期

E 実験1において,放射線照射後の野生株においては,細胞周期のどの段階の細胞が増加しているか。1つ答えよ(例:○期)。なお,細胞分裂期にある細胞の割合は,野生株と遺伝子 X 欠損細胞との間で差が見られなかったものとする。

F 実験1の結果から読み取れるタンパク質 X の機能を,細胞周期の制御を踏まえ,影響を与える細胞周期の段階(例:○期)を具体的に示しながら,1行で述べよ。

G 実験2の結果から読み取れるタンパク質 X の機能を,細胞周期の制御を踏まえ,影響を与える細胞周期の段階(例:○期)を具体的に示しながら,1行で述べよ。ただし,この実験系では,使用した放射性同位元素による DNA の切断や分解は無視できるものとする。

H 実験3の下線部(エ)において,配列置換型 GFP−a 遺伝子や欠失型 GFP−b 遺伝子からは,正常に機能する GFP タンパク質は産生されない。それぞれにおいて,正常なタンパク質が産生されない理由を,タンパク質の発現もしくは構造異常の観点から,合わせて2〜3行で説明せよ。

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I 実験3の下線部(オ)を実施するためには,実験上,どのような方法をとれば良いか。1行で簡潔に述べよ。なお,ここでの「ある1箇所」とは,図1—4に示した二本鎖切断の部位とする。

J 実験3の組換えの発生頻度を測定する実験系を示した図1—4の中で,組換えによる修復が成功したときに生成されるレポーター遺伝子部分は,どのような構造をとると考えられるか。次の選択肢(1)〜(6)の中から,もっとも適切な図を1つ選べ。

p52a
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K ある患者のがん組織の遺伝子解析を行ったところ,遺伝子 Y のミスセンス変異(=遺伝子の DNA 配列の1塩基対が変化することによって,アミノ酸の1つが別のアミノ酸に置換される変異のこと)が見つかった。この変異については,これまでにヒトにおける病的意義が明らかにされていない。実験3で構築した実験系を用いて,このミスセンス変異が組換え修復に与える影響を調べるためには,どのような細胞を準備して,組換え頻度を比較すれば良いか。実験3で用いたレポーター遺伝子を導入した遺伝子 Y の欠損細胞を材料として用いることを前提として,2〜3行で答えよ。

L 放射線照射によって細胞内の DNA に二本鎖切断が生じ,その修復に失敗して二本鎖切断が残存した場合,その細胞ではどのような現象が起こるか。10字以内で答えよ。

M 実験4において,細胞内の中心体の数が増えると,染色体の数の異常(異数体)が引き起こされる理由について,中心体の細胞内における役割を踏まえて,2行以内で説明せよ。

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Ⅱ 次の文3を読み,問Nと問Oに答えよ。

[文3]

 近年,がんゲノム医療が医療の現場で実践されるようになった。がんゲノム医療では,がん患者の腫瘍細胞だけでなく,正常細胞のゲノム情報も検査することにより,後天的に発生した遺伝子異常だけでなく,先天的に親から受け継がれた遺伝子異常が見つかることもある。

 遺伝子 Y は,がん抑制遺伝子であり,一対の遺伝子の片方だけに病的な異常がある(第1ヒット)だけではがんは発症しない。もう一方の遺伝子にも病的な異常(第2ヒット)が起きて,タンパク質 Y の機能が欠損したときに,初めてがんを発症する。

 生殖細胞に遺伝子 Y のヘテロ接合型の病的な変異を有する人は,遺伝性の乳がん,卵巣がん,膵臓がんの発症リスクが高いことが知られている。図1—5は,生殖細胞に遺伝子 Y の病的な変異を有する家系の一例である。

図1—5 生殖細胞に遺伝子 Y の病的な変異を有する遺伝性がん家系の一例
図1—5 生殖細胞に遺伝子 Y の病的な変異を有する遺伝性がん家系の一例

四角印は男性,丸印は女性を指す。黒塗りの四角や丸は,がんを発症した人を指し,それぞれの発症年齢と発症したがんの種類が記されている。「膵臓がん」とは「すい臓がん」のこと。

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〔問〕

N 図1—5の家系において,①番の女性の2人の娘は,いずれも生殖細胞に遺伝子 Y のヘテロ接合型の病的な変異を受け継いでいたことが判明している。この2人における正常細胞とがん細胞の違いを,遺伝子 Y の状態とタンパク質 Y の機能が保たれているかどうか,という観点から,2〜3行で説明せよ。

O 図1—5において,②番の男性は,遺伝子検査を受けたことがない。この男性の将来の子どもが生殖細胞の病的な遺伝子 Y の変異を受け継ぐ確率は,どれくらいか。次の選択肢の中から,もっとも適当なものを選び,その確率になる理由を2行以内で述べよ。ただし,②番の男性の(将来の)子どもの母親,および,②番の男性の父親(=③番の男性)における生殖細胞の遺伝子 Y は正常であり,②番の男性の母親は,生殖細胞に遺伝子 Y のヘテロ接合型の病的な変異を有するものとする。

[選択肢] 0 %,1.25 %,2.5 %,5 %,7.5 %,10 %,12.5 %,25 %,50 %,75 %,100 %

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第2問

 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。

Ⅰ 次の文章を読み,問A〜Fに答えよ。

 被子植物では,光合成によって葉でつくられた炭水化物が植物の体内を移動して,呼吸や器官の成長に使われたり貯蔵されたりする。植物体内での炭水化物の移動を考えるときには,炭水化物を供給する器官のことをソース,炭水化物が受容される器官のことをシンクと呼ぶ。ソースからシンクへの炭水化物の輸送は,多くの植物でスクロースが(ア)維管束の師部を移動することにより行われる。ソースとなる葉では,葉肉細胞でつくられたスクロースが,細胞間をつなぐ原形質連絡を通って葉脈へと運ばれる。(イ)葉脈の師部における師管へのスクロースの輸送は,積み込みと呼ばれ,植物種によって異なる方法で行われる。積み込まれたスクロースは,師管を通ってシンクとなる器官へと輸送される。

 ソースとシンクの間の師部を介したスクロースの移動の様子は,炭素の安定同位体注1(以下 13C と表記する)を利用した実験によって明らかにできる。こうした実験の結果から,植物体内にあるシンクとなる複数の器官が(ウ)ソースからのスクロースを競合して獲得していることがわかっている。果樹 X で個体内のソースとなる葉からシンクとなる器官へのスクロースの移動の様子を明らかにするために,実験1と実験2を行った。

注1 質量数13の炭素で,自然界に一定の割合で安定して存在する。

— 57 —

実験1 常緑性の果樹 X では,図2—1に示すように初夏の5月に花が咲き,夏から果実が成長を始めて翌年の2月から3月に成熟する。8月に(1)果実をすべて切除した個体(全切除),(2)全果実の 2 / 3 を切除した個体(2 / 3 切除),(3)全果実の 1 / 3 を切除した個体(1 / 3 切除),(4)果実をすべて残した個体(切除なし)をつくった。そして,果実がさかんに成長する10月に一部の葉から 13C を含む 13CO2 を光合成によって多量に植物へ取り込ませ,その3日後に器官を採取し,根,茎,葉,果実の 13C 含量と,根,茎,葉のデンプン濃度を測定した。さらに,(1)から(4)と同様の処理をした個体で,翌年の5月に花の数を調べた。この実験の結果を,図2—2に示す。

図2—1 果樹 X を使った炭素安定同位体の取り込み実験
図2—1 果樹 X を使った炭素安定同位体の取り込み実験

(左)開花と果実の成長の時期と測定を行った時期,(右)果実 X の一部の枝を透明な箱(同化箱)に密閉し,13C を含む 13CO2 を光合成により植物に取り込ませた。

図2—2 果樹 X における果実切除が個体の成長に及ぼす影響
図2—2 果樹 X における果実切除が個体の成長に及ぼす影響

果実の切除処理をした個体における(左)炭素安定同位体含量(13C 含量)の個体内での割合,(中)器官のデンプン濃度,(右)翌年5月の個体あたりの着花数。左のグラフでは,13CO2 を取り込ませた枝での値は除いてある。

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実験2 果実をすべて残した果樹 X の個体で,毎年10月に根でのデンプン濃度を5年間,測定し続けた。この実験の結果は,図2—3のようになった。この測定の間,大きな災害や天候不順はなかったものとする。

図2—3 果実をすべて残した果樹 X の個体における根のデンプン濃度の年変動
図2—3 果実をすべて残した果樹 X の個体における根のデンプン濃度の年変動

グラフ中の1年目は,実験を開始した年とする。

〔問〕

A 下線部(ア)について。維管束を構成する師部と木部に関する記述のうち正しいものを以下の選択肢(1)〜(5)から全て選べ。

(1) 師管と道管は,ともに形成層の細胞の分裂によって作られる。

(2) 冠水などによって土壌中の酸素が不足すると,イネやトウモロコシでは維管束に通気組織が発達する。

(3) 木部で水が通る細胞は,被子植物では道管が主であり,裸子植物とシダ植物,コケ植物では仮道管である。

(4) 茎の屈性に関与する植物ホルモンであるオーキシンは道管を通って極性移動をする。

(5) 木化した茎と根では木部は内側に師部は外側に発達する。

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B 下線部(イ)について。炭水化物の積み込みについて,以下の文中の 1 から 6 に最もよくあてはまる語句を以下の語群から選べ。ただし,語句は複数回選んでもかまわない。

 多くの植物で葉脈を観察すると,師部の細胞と葉肉細胞とが接した部分の面積当たりの原形質連絡の個数が,多い植物の種と少ない植物の種に分けられる。原形質連絡は細胞間の物質の移動を可能にしており,図2—4のように原形質連絡の多い種では,葉肉細胞でつくられたスクロースが原形質連絡を経由して 1 によって師部の細胞へ運ばれる。このとき,スクロース濃度は 2 よりも 3 で高い。一方で原形質連絡の少ない種では,葉肉細胞でつくられたスクロースは細胞の細胞質から細胞壁へ移動し,4 によって師部の細胞へ運ばれる。このとき,スクロース濃度は 5 で 6 よりも高くなることが多い。

〔語群〕 細胞質,細胞膜,細胞壁,葉肉細胞,師部の細胞,能動輸送,受動輸送,エンドサイトーシス,エキソサイトーシス,浸透圧,膨圧

図2—4 葉肉細胞と師部の細胞の間に多くの原形質連絡をもつ種におけるスクロースの積み込みの模式図
図2—4 葉肉細胞と師部の細胞の間に多くの原形質連絡をもつ種におけるスクロースの積み込みの模式図
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C Bの文中にあるような葉脈で師部の細胞と葉肉細胞の間で多くの原形質連絡がみられる植物のなかには,スクロースにガラクトースが結合したラフィノースやスタキオースといったオリゴ糖を師管で輸送するものがある。これらの植物では,葉肉細胞から移動したスクロースが師部の細胞でオリゴ糖に変換される。また,葉肉細胞と師部の細胞とをつなぐ原形質連絡は,スクロースだけを輸送する植物のものよりも内径が細い。こうした植物はオリゴ糖を合成することで,スクロースだけを輸送するよりも大量の糖を輸送できる。それを可能にする機構について以下の語句を全て用いて3行程度で説明せよ。ただし,ガラクトースの供給は十分にあり,スクロースがオリゴ糖に変換される反応は十分に速く進むものとする。

 拡散,原形質連絡,濃度勾配,逆流

D 下線部(ウ)について。実験1を行ったところ,図2—2のような結果を得た。この実験に関連して,以下の選択肢(1)〜(5)から正しいものを1つ選べ。

(1) 光合成で吸収された 13C の総量は,各器官で検出された 13C の量の合計とほぼ等しい。

(2) 検出された 13C は,測定した器官に含まれる細胞壁やデンプン,糖だけに由来する。

(3) 光合成で吸収された 13C は,ソースから近い距離にある器官へ優先して供給される。

(4) 果実の切除により,果樹 X では秋に葉や茎よりも根で乾燥重量が増加する。

(5) 翌年の着花数は,光合成を行う葉が秋に増えることで増加する。

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E 実験2を行ったところ,図2—3のような結果を得た。実験2で根のデンプン濃度を測定した10月に,個体についている果実の総乾燥重量の年変化のパターンを予想してグラフに図示せよ。同時に,果実の総乾燥重量を予想した根拠を2行程度で説明せよ。ただし,果実の総乾燥重量は着花数に比例するとする。また,測定を行った5年間で果樹 X につく果実の総乾燥重量の最大値は変化せず,個体内のスクロースの分配と着花数は,図2—2の結果から読み取れる関係に従うものとする。さらに,グラフ中の1年目は実験を開始した年とする。

p61a

F 果樹 X で8月に果実の半分を切除した個体を複数つくり,10月の果実の総乾燥重量を5年間にわたって測定した。果実の切除は実験を開始した1年目のみに行い,一度測定に用いた個体は実験から除外した。この実験の結果について推察されることで正しいものを以下の選択肢(1)〜(6)から全て選べ。ただし,果実の総乾燥重量は着花数に比例するとする。また,測定を行った5年間で果樹 X につく果実の総乾燥重量の最大値は変化せず,個体内のスクロースの分配と着花数は,図2—2の結果から読み取れる関係に従うものとする。

 10月の果実の総乾燥重量は,

(1) 2年目より4年目で多い。

(2) 2年目と4年目でほぼ等しい。

(3) 2年目より4年目で少ない。

(4) 3年目より5年目で多い。

(5) 3年目と5年目でほぼ等しい。

(6) 3年目より5年目で少ない。

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Ⅱ 次の文章を読み,問G〜Kに答えよ。

 窒素は植物を構成する必須元素のひとつであり,土壌から根で吸収される。土壌中の主要な窒素源のひとつである硝酸塩(または硝酸イオン)は植物に取り込まれたあと,(エ)窒素同化によってアミノ酸に変換されて(オ)タンパク質合成の材料となる。タンパク質の一部は生体内で酵素として機能し,植物の様々な代謝反応を円滑に進行させている。植物の成長は,土壌中の利用できる硝酸塩の濃度に強く左右される。これは,光合成速度を高めるために,CO2 を固定する酵素を多量に必要とするからである。

 植物は窒素を効率的に利用するために,生育する窒素環境に応答して形態を変える。例えば,土壌中の硝酸塩の濃度に対する応答では,植物ホルモン A を介した仕組みによって,植物の(カ)葉や茎(地上部)と根(地下部)の乾燥重量の比が変化する。植物ホルモン A を介した土壌の硝酸塩への応答を詳しく調べるために,実験3を行った。

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実験3 モデル植物であるシロイヌナズナの野生型植物を低濃度と高濃度の硝酸塩を施肥した土壌で育てた。さらに,植物ホルモン A の生合成酵素の遺伝子が欠損した変異体 Y を用意し,野生型植物と変異体 Y とで地上部(葉,茎)と地下部(根)の接ぎ木実験を行い,それぞれを高濃度の硝酸塩を施肥した土壌で育てた。接ぎ木は複数の植物の器官をその切断面でつなぐ園芸の手法で,切断面の維管束がつながることにより接ぎ木した植物の器官は通常の植物と同様に成長できる。これらの植物で地上部と地下部の乾燥重量と植物ホルモン A の濃度を測定し,図2—5の結果を得た。

図2—5 実験を行った植物の(上)地上部と地下部における乾燥重量の比と(下)植物ホルモン A の濃度
図2—5 実験を行った植物の(上)地上部と地下部における乾燥重量の比と(下)植物ホルモン A の濃度

グラフ下部の表は,接ぎ木した地上部と地下部に使った植物の系統を示している。

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〔問〕

G 下線部(エ)について。窒素同化は,硝酸イオンから亜硝酸イオンになる反応と,亜硝酸イオンがアンモニウムイオンになる反応,そしてアンモニウムイオンがアミノ酸に取り込まれる反応の3つからなる。e− は電子,Pi は無機リン酸であるとして,以下の化学式中の 7 から 9 にあてはまる数字もしくは物質名を答えよ。

 NO3−+2H++ 7 e−⟶NO2−+H2O

 NO2−+8H++ 8 e−⟶NH4++2H2O

 NH4+ +グルタミン酸+ ATP ⟶ 9 + ADP + Pi

H 多くの草本植物では窒素同化の反応は主に葉で行われ,その反応速度は光環境に強く依存する。これらの理由をあわせて1行程度で説明せよ。

I 下線部(オ)について。植物がもつタンパク質について,選択肢(1)〜(5)から正しいものを全て選べ。

(1) クロロフィルは光合成に必要な波長の光を吸収するタンパク質である。

(2) フォトトロピンは青色光を受容するタンパク質である。

(3) 花成ホルモンであるフロリゲンはタンパク質である。

(4) 種子発芽に関与する植物ホルモンのジベレリンはタンパク質である。

(5) 電子の受け渡しに貢献する補酵素の NADPH はタンパク質である。

J 下線部(カ)について。図2—5のグラフから土壌中の硝酸塩濃度に応答して地上部と地下部の乾燥重量の比が変化することが読みとれる。高い硝酸塩濃度を施肥したときの地上部と地下部の乾燥重量の比の適応的な意義について,個体の光合成量の観点から以下の語句を全て用いて2行程度で説明せよ。

 酵素,光合成速度,葉面積

— 65 —

K 実験3の実験結果について図2—5のグラフをもとに,以下の文中の 10 から 16 に最もよくあてはまる語句を以下の語群から選べ。ただし,語句は複数回選んでもかまわない。

 シロイヌナズナでは,植物ホルモン A の生合成が 10 で行われ,高濃度の硝酸塩の施肥は植物ホルモン A の生合成を 11 。また,植物体内では植物ホルモン A は 12 から 13 の方向へ移動する。さらに,地上部と地下部の乾燥重量の比が 14 の植物ホルモン A の濃度とより強く相関する。以上の結果から,植物ホルモン A は 15 における成長を 16 という作用をもち,地上部と地下部の乾燥重量の比を変化させることが推測される。

〔語群〕 地上部,地下部,地上部と地下部,促進させる,変化させない,抑制させる

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第3問

 次の文1〜3を読み,問A〜Kに答えよ。

[文1]

 ヒトの ABO 式血液型は,赤血球膜上にある糖タンパク質の糖鎖構造で決定される。A 型のヒトは A 型糖鎖を持ち,B 型のヒトは B 型糖鎖を持つ。また,AB 型のヒトは A 型糖鎖と B 型糖鎖の両方を持っている。図3—1に示すように,A 型のヒトでは H 型糖鎖に N-アセチルガラクトサミンが付加されて A 型糖鎖が形成され,B 型のヒトでは H 型糖鎖にガラクトースが付加されて B 型糖鎖が形成される。A 型と B 型の糖鎖を形成する ABO 式血液型糖転移酵素(以下,糖転移酵素)は,354アミノ酸残基からなるタンパク質である。A 型のヒトは A 型糖鎖を形成する A 型糖転移酵素(以下,A 型酵素)を,B 型のヒトは B 型糖鎖を形成する B 型糖転移酵素(以下,B 型酵素)を持ち,AB 型のヒトは A 型糖転移酵素と B 型糖転移酵素の両方を持っている。また O 型の糖転移酵素遺伝子からは,活性を持たない糖転移酵素が産生される。

図3—1 ABO 式血液型を決める糖転移酵素による糖鎖付加反応の模式図
図3—1 ABO 式血液型を決める糖転移酵素による糖鎖付加反応の模式図
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A 以下の文中の空欄に適切な語句を,以下の語群から選択して記入せよ。

 解答例:1—○○,2—△△

 新生児は,生まれつき ABO 血液型の抗原に対する 1 を産生する能力を持っている。2 による 1 の産生は,T 細胞を必要とせず 3 遺伝子の再構成は行われない。

[語群] 免疫グロブリン,自然抗体,B 細胞,T 細胞,樹状細胞,食細胞

B A 型のヒトは A 型酵素をコードする A 型遺伝子を持ち,B 型のヒトは B 型酵素をコードする B 型遺伝子を持つ。A 型酵素と B 型酵素を比較すると,176番目と235番目と266番目と268番目のアミノ酸残基が異なっている。この4ヶ所について,A 型と B 型の,どちらかの遺伝子型を持つキメラ遺伝子を作製した。それぞれのキメラ遺伝子から産生される糖転移酵素の活性を測定した結果を表3—1に示す。例として,AABB と表記したキメラ遺伝子は,176番目と235番目のコドンが A 型,266番目と268番目のコドンが B 型の塩基配列である。表3—1の結果から,キメラ遺伝子の糖転移酵素活性についての記述として,適当なものを以下の選択肢(1)〜(4)から全て選べ。ただし,酵素活性 A は A 型糖鎖を,酵素活性 B は B 型糖鎖を,酵素活性 AB は A 型糖鎖と B 型糖鎖の両方を産生できることを示す。また酵素活性 A(B) は,主に A 型糖鎖を産生するが B 型糖鎖もわずかながら産生できることを示す。

(1) 266番目が A 型遺伝子の塩基配列であれば,必ず A 型の酵素活性をもつ。

(2) 266番目が B 型遺伝子の塩基配列であれば,必ず B 型の酵素活性をもつ。

(3) 268番目が A 型遺伝子の塩基配列であれば,必ず A 型の酵素活性をもつ。

(4) 268番目が B 型遺伝子の塩基配列であれば,必ず B 型の酵素活性をもつ。

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表3—1 各キメラ遺伝子を発現させたヒト培養細胞で検出された糖転移酵素活性
表3—1 各キメラ遺伝子を発現させたヒト培養細胞で検出された糖転移酵素活性

C B 型遺伝子の268番目のアミノ酸残基について,野生型以外の19種類の置換変異体を作製した。これらの置換変異体と野生型遺伝子を含め20種類の B 型遺伝子のすべての場合について,糖転移活性を測定する実験を行った。表3—2に,作製した B 型遺伝子の持つ268番目のアミノ酸残基の種類と,産生された酵素活性を測定した結果を示す。B 型の酵素活性を持つ糖転移酵素のアミノ酸残基に共通する性質について,最も適当なものを以下の選択肢(1)〜(4)から1つ選べ。

(1) 側鎖が持つ正電荷

(2) 側鎖の疎水性

(3) 側鎖の大きさ

(4) 側鎖の分岐構造

D 表3—1と表3—2から考えられる A 型遺伝子と B 型遺伝子の268番目のアミノ酸残基として,最も適当なものをそれぞれ答えよ。

 解答例:A 型—○○,B 型—△△

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表3—2 作製した B 型遺伝子の268番目のアミノ酸残基と,産生された糖転移酵素の活性
表3—2 作製した B 型遺伝子の268番目のアミノ酸残基と,産生された糖転移酵素の活性

表中の + は酵素活性の高さを示す。+++ は + より高い酵素活性を持つ。

E 活性を持たない糖転移酵素を産生する O 型糖転移酵素遺伝子のホモ接合型のヒト(遺伝子型は OO)は,A 型糖鎖と B 型糖鎖のいずれも持たない。しかしながら,A 型酵素もしくは B 型酵素を持っていても,H 型糖鎖を持たない場合は O 型となる。H 遺伝子は H 型糖鎖を産生する活性を持った酵素をコードし,h 遺伝子は活性を失った酵素をコードする。ある O 型の父親と A 型の母親から,B 型の子供が生まれた。以下の選択肢(1)〜(5)から,両親の持つ H 型糖鎖産生酵素と糖転移酵素の遺伝子型として最も適切なものを1つ選べ。

(1) 父親は HhAB  母親は hhOA

(2) 父親は HHBB  母親は HhAA

(3) 父親は hhOO  母親は HhOA

(4) 父親は HhOB  母親は HHAA

(5) 父親は hhBB  母親は HHOA

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[文2]

 タンパク質合成は,リボソームが mRNA に結合し,1 を認識することによってはじまる。mRNA の連続した3つの塩基からなるコドンが,1つのアミノ酸に対応している。各コドンと塩基対形成する 2 をもつ tRNA が mRNA に結合することで,塩基配列がアミノ酸に変換される。リボソームが1コドンずつずれるごとに,コドンに対応する 2 を持った tRNA が結合する。tRNA によって運搬されたアミノ酸どうしは,3 結合によって連結される。真核生物のほとんどの mRNA の5′側の末端には 4 とよばれる構造が,3′側の末端には 5 とよばれる構造が付加されており,いずれの構造も翻訳を促進する。一方で,6 や 7 などの細胞小器官では,細胞質のリボソームとは異なるリボソームを用いて翻訳反応を行っており,mRNA も 4 や 5 の構造を持っていない。6 や 7 は,それぞれシアノバクテリアと好気性の細菌に構造と機能の点でよく似ており,これらの生物が別の宿主細胞に取り込まれて 8 するうちに,細胞小器官となった 8 説が広く受け入れられている。

 細胞内のリボソームは,核から合成された mRNA のみでなく,ウイルス由来の mRNA や mRNA ワクチンなどの外来の mRNA も翻訳する。SARS-CoV-2 は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因となるウイルスである。SARS-CoV-2 ウイルス粒子が細胞に取り込まれた後,宿主細胞に導入されたウイルス RNA を鋳型にして,ウイルス由来の mRNA(ウイルス mRNA)が新たに合成される。その後,ウイルス mRNA を鋳型にしてリボソームが翻訳を行い,ウイルスタンパク質が合成される。

F 空欄に最も適切な語句を記入せよ。

 解答例:1—複製,2—合成

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G SARS-CoV-2 を宿主細胞に感染させたのち,3,5,8時間経過した後に,宿主細胞内で新しく合成される宿主タンパク質とウイルスタンパク質の合計量を測定した結果を,図3—2—a に示す。また,リボソームが結合する宿主 mRNA とウイルス mRNA の割合を解析した結果を,図3—2—b に示す。ウイルス感染後の細胞に関する記述として,適当なものを以下の選択肢(1)〜(6)から全て選べ。ただし,リボソームが結合する mRNA 量は,その mRNA から合成されるタンパク質量と比例するものと考えよ。

図3—2 宿主細胞内で合成されるタンパク質量とリボソームが結合する mRNA 量
図3—2 宿主細胞内で合成されるタンパク質量とリボソームが結合する mRNA 量

a) 宿主細胞内で新しく合成される宿主タンパク質とウイルスタンパク質の合計量を,ウイルス感染前を100 %とした相対値で示す。b) リボソームが結合する宿主 mRNA とウイルス mRNA の割合を示す。

(1) 感染3時間後にウイルス mRNA から合成されるタンパク質量は,宿主 mRNA から合成されるタンパク質量より少ない。

(2) 感染3時間後に宿主 mRNA から合成されるタンパク質量は,ウイルス感染前と比較して低下する。

(3) ウイルス mRNA から合成されるタンパク質量は,感染5時間後より感染3時間後が多い。

(4) 宿主 mRNA から合成されるタンパク質量は,感染5時間後より感染3時間後が少ない。

(5) 宿主 mRNA から合成されるタンパク質量は,感染8時間後より感染3時間後が少ない。

(6) ウイルス mRNA から合成されるタンパク質量は,感染8時間後より感染3時間後が少ない。

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[文3]

 ヒト白血球型抗原(HLA)は,主要な組織適合性遺伝子の産物であり,「自己」と「非自己」の識別などの免疫反応に重要な役割を果たす。図3—3に示すように,ウイルスが細胞に感染すると,ウイルス由来のペプチドが樹状細胞の膜にあるクラス I のヒト白血球型抗原(HLA-I)の表面に提示される。HLA-I の表面に提示されたペプチドは,細胞障害性 T 細胞膜にある T 細胞受容体によって認識される。ある型の HLA-I を発現する細胞に SARS-CoV-2 を感染させた後,HLA-I に結合した SARS-CoV-2 由来のペプチドを複数同定した。同定したペプチドと HLA-I との親和性を測定する方法として,一定濃度の対照ペプチドとの競合結合試験がある。一定濃度の対照ペプチドに対して,様々な濃度の目的のペプチドを加えた後,HLA-I に結合している対照ペプチド量を測定し,対照ペプチドの結合を50 %阻害するペプチドの濃度を IC50 とする。

図3—3 T 細胞受容体による HLA-I に結合したペプチドの認識
図3—3 T 細胞受容体による HLA-I に結合したペプチドの認識

H 図3—4は HLA-I に結合した SARS-CoV-2 由来のペプチドについて,HLA-I との親和性を測定した結果である。ペプチド1〜5に関する記述として,最も適当なものを以下の選択肢(1)〜(6)から1つ選べ。

(1) ペプチド3の IC50 は,1.0×10−8 mol/L 以上である。

(2) ペプチド4の IC50 は,1.0×10−8 mol/L 以上である。

(3) ペプチド1の IC50 は,1.0×10−10 mol/L 以下である。

(4) ペプチド5の IC50 は,1.0×10−10 mol/L 以下である。

(5) HLA-I との親和性は,ペプチド3よりペプチド1の方が低い。

(6) HLA-I との親和性は,ペプチド2よりペプチド4の方が高い。

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図3—4 SARS-CoV-2 由来のペプチドの HLA-I に対する親和性の測定結果
図3—4 SARS-CoV-2 由来のペプチドの HLA-I に対する親和性の測定結果

対照ペプチドの結合が阻害された割合と個々のペプチド濃度の関係を示す。

I 図3—4に示すペプチド1〜5を含めて,HLA-I に結合した SARS-CoV-2 由来のペプチドと HLA-I との親和性を測定した結果を表3—3に示す。ペプチド4とペプチド5に対応するペプチドを表3—3の記号 a〜k から選択し,その記号を記載せよ。

 解答例:ペプチド4—x,ペプチド5—y

表3—3 同定されたペプチドの IC50
表3—3 同定されたペプチドの \mathrmIC_50

 ペプチドのアミノ酸配列を1文字表記で示す。アミノ酸の1文字表記については,表3—2と表3—4を参考にせよ。

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J SARS-CoV-2 は,宿主細胞表面のアンジオテンシン変換酵素2(ACE 2)タンパク質に結合してヒト細胞に侵入する。SARS-CoV-2 のウイルス粒子の外側に存在するスパイクタンパク質 S が ACE 2 に結合し,ウイルス粒子は細胞に取り込まれる。以下は,スパイクタンパク質 S の翻訳領域のうち,開始コドンから数えて61番目のコドンから90番目までのコドンの塩基配列である。この領域は,ペプチド1とペプチド2を合成するためにリボソームが翻訳する領域を含んでおり,下線部はペプチド2の翻訳領域である。ペプチド1に対応するペプチドを表3—3の記号 a〜k から選択し,その記号を記載せよ。

p74a

 61-AAUGUUACUUGGUUCCAUGCUAUACAUGUC-70

 71-UCUGGGACCAAUGGUACUAAGAGGUUUGAU-80

 81-AACCCUGUCCUACCAUUUAAUGAUGGUGUU-90

表3—4 コドン暗号表
表3—4 コドン暗号表
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K ペプチド1とペプチド2に関する特徴として適当なものを,以下の選択肢(1)〜(5)から全て選べ。表3—4にコドン暗号表を示す。

(1) ペプチド2は,スパイクタンパク質 S と同じ読み枠で翻訳される。

(2) ペプチド2は,スパイクタンパク質 S と異なる読み枠で翻訳される。

(3) ペプチド1は,スパイクタンパク質 S と異なる読み枠で翻訳される。

(4) ペプチド1は,スパイクタンパク質 S と同じ読み枠で翻訳される。

(5) ペプチド1とペプチド2は,異なる読み枠で翻訳される。