(必要なときは次の値を用いよ。原子量:H = 1.00,C = 12.0,N = 14.0,O = 16.0。,,。)
第1問
次の文章を読んで,設問(1)〜(5)に答えよ。気体は理想気体とし,必要なときは図 1 のアンモニア の蒸気圧曲線(一部),気体定数 Pa·L/(mol·K) を用いよ。
窒素は地球上に豊富に存在する元素の一つである。窒素分子 は,二つの窒素原子 N が ア 組の イ 電子対で結ばれた分子であり,空気の約 78 %(体積比)を占めている。地球上の自然界に存在する窒素原子 N には二つの同位体が存在し,質量数 15 の同位体は ウ 個の中性子をもつ。窒素の水素化合物の一つにアンモニア分子があり,一つの窒素原子 N のまわりには 3 組の イ 電子対と 1 組の エ 電子対がある。少量のアンモニアを希塩酸に溶かした水溶液中では,アンモニア分子は オ 結合で水素イオン と結合してアンモニウムイオンを形成し,カ 形の立体構造をとる。窒素よりも陽子の数が一つ少ない元素である キ にも,水素化合物の ク がある。ク は,カ 形の立体構造をとり,アンモニアとほとんど変わらない分子量をもつが,①ク の沸点(−161 ℃)はアンモニアの沸点(−33 ℃)と大きく異なる。
一般に,アンモニアを用いる実験には,高圧ボンベに封入されたアンモニアや濃アンモニア水を使用する。アンモニアを気体として用いる場合は,圧力調整器を用いて高圧ボンベからアンモニアを取り出す。高圧ボンベから容積 300 mL の耐圧容器にアンモニアを移して密閉し,27 ℃に保って十分な時間が経過した後,②容器内のアンモニアの圧力を測定したところ, Pa であった。
質量パーセント濃度 28.0 %の濃アンモニア水 A(密度 0.900 g/cm³)を用いて,③ mol/L のアンモニア水溶液を調製した。下線③のアンモニア水溶液 100 mL を,溶液が揮発しないように容積 200 mL の密閉できる容器にいれ,20 ℃もしくは 40 ℃に保った。溶液を十分にかくはんしながら,平衡に達した後のアンモニアの圧力が Pa となるように,高圧ボンベから気体のアンモニアをいれて容器を密閉した。④20 ℃での容器内のアンモニア水溶液を B,40 ℃での容器内のアンモニア水溶液を C とする。また,同じ容器をもう一つ用意し,100 mL の水と一定量の ク をいれて溶液を十分にかくはんした。20 ℃での平衡に達した後,容器内の ク の圧力を測定すると Pa であった。

図 1
設問(1):文中の空欄 ア 〜 ク にあてはまる最も適切な語句または数字を記せ。
設問(2):下線①の理由を 50 字以内で説明せよ。
設問(3):下線②の容器を冷却し,5 ℃もしくは 20 ℃で十分な時間が経過した後の容器内のアンモニアの圧力 [Pa] をそれぞれ有効数字 2 桁で求めよ。ただし,容器内でアンモニアは化学反応しないと考えてよい。
設問(4):下線③のアンモニア水溶液を調製する方法として,次の(a)〜(d)の文章のうち,最も適切なものを選び,記号で記せ。
(a) 5 g の A と 11 g の水をそれぞれはかりとって混合した。
(b) ホールピペットを使ってはかりとった 5 mL の A を 250 mL のメスフラスコにいれ,水を加えて 250 mL にした。
(c) ホールピペットを使ってはかりとった 5 mL の A を 1 L のメスフラスコにいれ,水を加えて 1 L にした。
(d) ホールピペットを使ってはかりとった 5 mL の A を,メスシリンダーを使ってはかりとった 245 mL の水と混合した。
設問(5):下線④に関して,次の(a)〜(d)の文章のうち,正しいものをすべて選び,記号で記せ。正しいものがなければ「なし」と記せ。
(a) アンモニアの溶解熱は正であるため,B のアンモニアの濃度は,C のアンモニアの濃度より低かった。
(b) 溶液中に溶けている気体のアンモニア分子の熱運動は,温度が高くなるほど激しくなるため,B のアンモニアの濃度は,C のアンモニアの濃度より高かった。
(c) アンモニアと ク が同程度の分子量をもつため,20 ℃では,アンモニアと ク の水への溶解量に大きな差がなかった。
(d) アンモニアと ク の極性が異なるため,20 ℃では,アンモニアの方が ク よりも水への溶解量が多かった。
第2問
次の文章を読んで,設問(1)〜(7)に答えよ。
原子の中の電子は,K 殻,L 殻,M 殻,N 殻…という電子殻に収容される。電子殻中にはさらに,電子が収容される軌道というものが存在し,各軌道には最大 2 個まで電子が収容される。これらの軌道は s 軌道,p 軌道,d 軌道,f 軌道と分類される。さらに,軌道の名称には軌道を表すアルファベットの前に,K 殻では 1,L 殻では 2…と数字をつける。電子殻に存在する軌道の数と収容できる電子数は表 1 のようになる。
①第 4 周期の遷移元素は最外殻電子の数が 1 または 2 という共通の特徴をもつ。原子の電子配置では,「1s → 2s → 2p → 3s → 3p → 4s → 3d …」のようにエネルギーの低い軌道から順に電子が入っていくことが多い。アルゴン原子 Ar では 3p 軌道まで電子が入っているが,次の周期のカリウム原子 K とカルシウム原子 Ca では 4s 軌道に電子が入る。さらに,②スカンジウム原子 Sc 以降の遷移元素になると 4s 軌道と 3d 軌道へ部分的に電子が入るようになる。その結果,最外殻の電子数が 1 または 2 となる。
第 4 周期の遷移元素の原子がイオン化するときは 4s 軌道にある電子から失われる。③イオンの電子配置において 3d 軌道へ部分的に電子が入っている場合,そのイオンを含む水溶液は特定の色を示す。その色はイオンの種類やイオンの価数に依存する。
また,遷移元素は錯イオンをつくるものが多く,錯イオンの配位子の種類や配置によっても水溶液の色が変化する。ニッケル(Ⅱ)イオン の水溶液は緑色であるが,アンモニア を配位子とする④錯イオン の水溶液は青紫色を示す。 塩の水溶液では,⑤電離した錯イオンの立体構造の違いによって紫色か緑色のどちらかを示す。
表 1
| 電子殻 | K | L | L | M | M | M | N | N | N | N |
| 電子軌道 | 1s | 2s | 2p | 3s | 3p | 3d | 4s | 4p | 4d | 4f |
| 軌道の数 | 1 | 1 | 3 | 1 | 3 | ア | 1 | 3 | ア | 7 |
| 収容できる電子数の合計 | 2 | 2 | 6 | 2 | 6 | イ | 2 | 6 | イ | エ |
| 最大収容電子数 | 2 | 8 | 8 | ウ | ウ | ウ | オ | オ | オ | オ |
(最大収容電子数の行は,L 殻・M 殻・N 殻でそれぞれ 1 つのます)
設問(1):表 1 の空欄 ア 〜 オ にあてはまる整数を記せ。
設問(2):下線①に関して,第 4 周期の遷移元素の共通の特徴として次の(a)〜(e)のうち正しいものをすべて選び,記号で記せ。正しいものがなければ「なし」と記せ。
(a) 周期表上で隣接する元素が似た性質をもつ。
(b) 化合物はすべて金属の性質をもつ。
(c) イオン化エネルギーが大きく,価電子が離れやすい。
(d) 単体や化合物には触媒として働くものが多い。
(e) 化合物中での酸化数は+5 以上にならない。
設問(3):下線②に関して,第 4 周期の遷移元素のクロム原子 Cr と銅原子 Cu だけは 4s 軌道に電子が 1 個,他は 4s 軌道に電子が 2 個入る。したがって,第 4 周期の 3〜11 族の元素の中で 3d 軌道の電子数が同数となる原子が 1 組存在する。それらの原子の原子番号と 3d 軌道の電子数を答えよ。
設問(4):下線③に関して,4 族のチタン(Ⅲ)イオン の 3d 軌道の電子数を答え,その水溶液が特定の色を示す場合は「有色」,示さない場合は「無色」と記せ。
設問(5):下線④の錯イオンの名称を答えよ。
設問(6):下線⑤に関して,この錯イオンの立体構造を次のように考える。図 1 に示すように は正八面体形をとる。この錯イオンの 2 個の配位子をそれぞれ塩化物イオン に置き換えると,2 種類の異なる立体構造を与える。2 種類の立体構造の違いがわかるように, が配位する位置を図 2 の例にならって解答欄の○を黒く塗りつぶして示せ。ただし,解答欄ではあらかじめ 1 個目の の位置を黒く塗りつぶしてある。

図 1 の正八面体形構造。細線と破線は構造をわかりやすくするための補助線である。太線は金属イオンと配位子の間の結合を示し,○は 配位子の位置を示す。

図 2 の 1 個の 配位子を に置き換えた構造。置き換えた位置を●で示す。
設問(7):第 4 周期の元素に限らず,遷移元素のハロゲン化物には水に難溶性の塩になるものがある。しかし,遷移元素が錯イオンを形成する条件では,この塩はある程度水に溶解する。ここで,固体の臭化銀 AgBr の飽和水溶液中における溶解度積を とする。また,銀(Ⅰ)イオン がアンモニア水中で 錯イオンを形成する,
という反応の平衡定数を とする。25 ℃におけるこれらの値を表 2 に示す。
表 2
| [(mol/L)²] | |
| [(mol/L)⁻²] |
以下の問いに答えよ。
(i) AgBr をアンモニア水に加えると を形成して溶解する。この溶解平衡を表すイオン反応式を記せ。
(ii) (i)の溶解平衡の平衡定数 を と で表せ。導出過程も書くこと。なお,導出過程では ,臭化物イオン ,, のモル濃度 [mol/L] をそれぞれ ,,, と記せ。ただし,固体の量は溶解平衡には影響しない。
(iii) 25 ℃で,1.0 mol/L アンモニア水に(i)の溶解平衡が成立するまで AgBr を溶かした。この溶液中の ,, のモル濃度 [mol/L] を表 2 の値を用いて計算し,有効数字 2 桁で求めよ。ただし,アンモニアと水の反応は AgBr の溶解や の錯イオン形成に影響がなく,溶解反応で溶液の体積および温度は変化しないとする。
第3問
問 1 次の文章を読んで,設問(1)〜(6)に答えよ。
化合物 A は炭素原子 C,水素原子 H,酸素原子 O のみからなる分子量 244 の化合物であり,分子内にエステル結合を一つ含むが,それ以外には酸素原子をもたない。水酸化ナトリウム水溶液を用いて,化合物 A を加水分解した。得られた反応混合物を水で希釈し,さらにジエチルエーテルを加えて抽出したところ,エーテル層から化合物 B が得られた。残った水層に塩酸を加えて酸性にした後,再びジエチルエーテルで抽出したところ,エーテル層から化合物 C が得られた。
化合物 B はベンゼンの一置換体であり,ヨードホルム反応を示さなかった。一方,化合物 C は分子式 で表されるシクロプロパン誘導体であった。①化合物 C にオゾン を反応させた後に,過酸化水素 を含む水溶液で処理したところ,化合物 D とアセトンが生じた。②化合物 D には鏡像異性体は存在しなかった。また,化合物 D を加熱したところ,分子内で脱水反応がおこり,化合物 E が生じた。
設問(1):化合物 A を完全燃焼したところ,二酸化炭素 1.76 g と水 0.450 g が生じた。化合物 A の分子式を記せ。
設問(2):化合物 B の構造式を図 1 にならって記せ。

図 1
設問(3):化合物 B の構造異性体のうち,ベンゼンの二置換体であり,塩化鉄(Ⅲ)水溶液を加えると呈色するものは何種類あるか答えよ。
設問(4):化合物 C の構造の一部を図 2 に示す(太いくさび形の結合は紙面の手前側にあることを示す)。空欄 ア 〜 ウ にあてはまる部分構造を図 3 にならって記せ。なお,下線①の反応では,アルケンの炭素原子間の二重結合が酸化され,開裂する。たとえば図 4 の反応では,カルボン酸およびケトンが得られる。

図 2

図 3

図 4(,, はアルキル基を示す)
設問(5):図 5 のように,シクロプロパン環を構成する三つの炭素原子からなる平面に対して同じ側にある置換基 と は近接しているが,反対側に位置する と は離れている。この位置関係は,図 6 で示したアルケンの置換基 ,, の位置関係に類似している。このことをふまえて,化合物 E の構造式を図 7 にならって記せ。

図 5

図 6

図 7
設問(6):化合物 D の立体異性体として,化合物 F と G が存在する。下線②の情報をふまえて,化合物 D,F,G について述べた以下の(あ)〜(え)の文章のうち,正しいものをすべて選び,記号で記せ。正しいものがなければ「なし」と記せ。
(あ) 化合物 D,F,G は,いずれもシクロプロパン誘導体である。
(い) 化合物 F と G は,互いにシス-トランス異性体の関係にある。
(う) 化合物 D,F,G を 1 mol ずつ含む水溶液は,ある特定方向にのみ振動する光(偏光)の振動面を回転させる性質(旋光性)を示さない。
(え) 化合物 F と G は,水に対する溶解度が異なる。
問 2 次の文章を読んで,設問(1)〜(7)に答えよ。
合成高分子化合物は石油や石炭などを原料としてつくられ,合成繊維,合成樹脂,合成ゴムなどとして利用されている。合成樹脂は,熱に対する性質から熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分類できる。たとえば,①アジピン酸とエチレングリコールの ア により得られる高分子化合物は,熱 イ 性樹脂である。無水フタル酸とグリセリンから生成する高分子化合物は熱 ウ 性樹脂であり,エ 樹脂の一種である。また,②オ により合成される熱 カ 性樹脂として,尿素樹脂やメラミン樹脂がある。
設問(1):文中の空欄 ア および オ にあてはまる最も適切な重合反応の種類を記せ。
設問(2):文中の空欄 イ 〜 エ および カ にあてはまる最も適切な語句を以下の(A)〜(G)から選び,それぞれ記号で記せ。ただし,同じ記号を繰り返し選んでもよい。
(A) フェノール (B) メタクリル (C) エポキシ (D) アラミド (E) アルキド (F) 硬化 (G) 可塑
設問(3):図 1 にならって下線①の反応を化学反応式で記せ。

図 1
設問(4):下線②について,尿素樹脂は常温常圧で気体の化合物 X と尿素から得られ,メラミン樹脂は化合物 X と化合物 Y から得られる。図 2 に示すメラミン樹脂の構造をふまえて,化合物 X および Y の構造式を図 3 にならって記せ。

図 2

図 3
設問(5):テレフタル酸とエチレングリコールの ア により合成される高分子化合物の分子量が である場合,この高分子化合物の 1 分子中に含まれるカルボニル基の数を有効数字 2 桁で求めよ。
設問(6):合成高分子化合物に関する以下の記述(a)〜(c)と最も関連の深い化合物を以下の(H)〜(L)から選び,それぞれ記号で記せ。
(a) ロケットや航空機に使用する炭素繊維の原料となる。
(b) 生分解性ポリマーとして実用化されている。
(c) 日本で開発された合成繊維であり,モノマーの環構造が開いて重合することにより得られる。
(H) ナイロン 6 (I) ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド (J) ビニロン (K) ポリアクリロニトリル (L) ポリグリコール酸
設問(7):合成樹脂に関する以下の記述(d)〜(g)のうち,正しいものをすべて選び,記号で記せ。正しいものがなければ「なし」と記せ。
(d) フマル酸とエチレングリコールを重合して得られるポリエステルを原料として用いて,熱硬化性樹脂をつくることができる。
(e) メタクリル酸メチルの付加重合により得られる高分子化合物は,透明度の高い熱硬化性樹脂である。
(f) 酢酸ビニルの重合体のけん化により得られるポリビニルアルコールは,熱可塑性を示す。
(g) 熱硬化性樹脂のリサイクルは,主にマテリアルリサイクルによって行われる。