化 学 問 題
(解答はすべて化学解答用紙に記入すること)
【注意】
1. 必要があれば次の数値を用いよ。
H の原子量=1.0,C の原子量=12,N の原子量=14,O の原子量=16,Br の原子量=80
2. 特にことわらない限り,構造式は下の例にならって示すこと。

第1問
〔1〕 以下の文章を読み,問 1〜問 4 に答えよ。なお,[X] は分子もしくはイオン X のモル濃度を表す。
濃度 〔mol/L〕の酢酸水溶液中で の平衡がなりたっているとき,水のイオン積 と酢酸の電離定数
を用いて,[H⁺] を表すことができる。陽イオンと陰イオンの電荷のつりあいの条件が
を満たすこと,および,濃度 が
で表されることを考慮すれば,[H⁺] 以外の分子やイオンの濃度を消去することにより,[H⁺] に関する三次方程式
が得られる。この方程式の解 [H⁺] を用い,酢酸の電離定数 mol/L,水のイオン積 (mol/L)² として,酢酸水溶液の pH の濃度変化曲線の一部を図 1 に描いた。
なお,濃度 が高いときには,水の電離の影響を無視できるので の近似が許され,三次方程式を二次方程式
へと変形することができる。この方程式の解 [H⁺] は,高濃度の極限において で近似できる。

問 1 空欄 ア 〜 エ にあてはまる分子やイオンのモル濃度を答えよ。
問 2 空欄 オ 〜 キ を ,,ならびに を用いて表せ。
問 3 酢酸水溶液の pH は,濃度 が低い領域でほぼ一定値をとる。その理由を記せ。さらに, mol/L の範囲における pH の濃度変化を,解答用紙の図 1 に実線で書き込め。
問 4 酢酸水溶液の pH は,濃度 が高い極限で の一次関数となる。まず, mol/L の酢酸水溶液の pH を計算し,小数点以下 1 桁まで答えよ。次に, mol/L の範囲で pH の濃度変化を,解答用紙の図 1 に実線で書き込め。必要があれば の近似値を用いよ。
第2問
〔2〕 以下の文章を読み,問 1〜問 6 に答えよ。
滑らかなピストンがついた体積が可変の容器(図 1)に,同じ物質量のメタノールとヘリウムを封入し,温度 43 ℃,圧力を Pa とした。まず,①温度を 43 ℃に保ったまま,内容物を Pa に加圧した。このとき,気体の体積は 7.0 L となった。以下のすべての操作は, Pa の圧力一定の条件のもとで行った。
次に,内容物を 4 ℃/min の一定速度で昇温するように加熱すると,②昇温開始から時間 Δt〔min〕が経過した時点で,メタノールはすべて気体となった。さらに同じ昇温速度で Δt〔min〕加熱した。
続いて,内容物が漏出しないように,固体の触媒と乾燥剤を入れ,201 ℃に加熱すると,③メタノールの 80 % が,以下の反応によりジメチルエーテルと水に変化した。ここで,ジメチルエーテルはすべて気体の状態で存在したが,水は乾燥剤によりすべて取り除かれた。
なお,すべての気体は理想気体とみなすことができ,ヘリウムは常に気体で存在し,液相への溶解は無視できる。また,メタノールの蒸気圧曲線を図 2 に示す。

問 1 下線部①の操作のとき,加圧後のヘリウムの分圧は加圧前のヘリウムの分圧の何倍になるか,有効数字 2 桁で答えよ。
問 2 下線部①の操作後,容器内のメタノールの全物質量に対する気体のメタノールの物質量の割合を有効数字 1 桁で求めよ。
問 3 下線部②の時間 Δt〔min〕を有効数字 1 桁で求めよ。解答欄には計算過程も記せ。
問 4 下線部②について,以下の例にならって,メタノールとヘリウムの分圧の時間変化を解答欄に略図で記せ。ただし,時間 0,Δt,2Δt のときの各成分の分圧の値を記入すること。

問 5 下線部③の反応後のジメチルエーテルの分圧を有効数字 2 桁で求めよ。解答欄には計算過程も記せ。
問 6 下線部③の反応後の気体の体積を有効数字 2 桁で求めよ。解答欄には計算過程も記せ。
第3問
〔3〕 以下の文章を読み,問 1〜問 10 に答えよ。
石油精製により得られる①ナフサの熱分解や改質等で製造される低分子量のアルケンや芳香族化合物は,工業的に重要な多くの化学製品の合成原料であり,それらの反応を知ることは重要である。
問 1 下線部①のナフサとは何かを,灯油や軽油との物理的性質の違いについて言及しつつ簡潔に説明せよ。
アルケンの反応
②環状構造を含まない炭素数 4 以下の炭化水素のうちで,過剰の臭素の存在下において,臭素の付加により分子量が 160 だけ増加するアルケンがすべてここにある。これらのアルケンを,硫酸を触媒にして水と反応させて生成物を得た。③得られた生成物はすべてナトリウムと反応し,水素とナトリウムアルコキシドが生じた。また,硫酸触媒による水との反応における主生成物に着目した場合,④いくつかのアルケンから同じ生成物が得られた。
なお,不斉炭素原子を有する化合物の立体構造は以下の例にならって表現する。

問 2 下線部④の生成物は,鏡像異性体の等量混合物である。この混合物を構成するそれぞれの異性体の構造式を,上の枠内に示す例にならって,くさび型の線を用いて書け。
問 3 下線部④の生成物を与えたすべてのアルケンの構造式を書け。
問 4 下線部④の生成物は鏡像異性体の混合物である。鏡像異性体は,融点・密度やふつうの化学反応性などの性質が同じで,通常の操作では分離することができない。しかし,下線部④の生成物を右に示す化合物 B を用いてエステルに変換すると,通常の操作で分離することができた。その理由を示せ。

問 5 下線部②の反応は,下図に示すような形式で進行することが知られている。すなわち,アルケンのつくる平面の上下に 1 つずつ Br が付加した形の生成物を与える(下図参照)。

下線部④の生成物を与えたすべてのアルケンを原料として,それぞれのアルケンに対して下線部②に示す臭素の付加反応を行ったところ,単一の化合物を与える場合と,鏡像異性体の混合物を与える場合があった。単一の化合物を与えた原料のアルケンの構造式を書け。
芳香族化合物の反応
ベンゼンは FeBr₃ の存在下において臭素とともに加熱すると臭素化されるが,⑤アルケンの臭素化とは異なり付加反応は進行せず,異なる形式で反応が進行する。また,ベンゼンに濃硝酸と濃硫酸を混合して反応させるとニトロベンゼンが生成する。⑥ニトロベンゼンにスズ (Sn) と濃塩酸を加えて反応させると,アニリン塩酸塩が生じる。
フェノールは工業的には,ベンゼンと下線部②のアルケンの 1 つを酸触媒で反応させ,さらに⑦酸化反応等を経て合成される。ベンゼンと異なり,⑧フェノールは FeBr₃ を加えなくとも臭素との反応が速く進み,無色針状結晶が沈殿する。また,⑨フェノールは硫酸を加えなくとも室温で速やかに希硝酸と反応しニトロ化された生成物を与え,⑩混酸(濃硝酸:濃硫酸 = 1:3 体積比)と反応させるとピクリン酸(2,4,6-トリニトロフェノール)が生じる。
問 6 下線部⑤に関して,ベンゼンにおいて進行する臭素化は, 反応という反応形式に分類される。 に当てはまる漢字 2 字を答えよ。またベンゼンでは,アルケンとは異なり付加反応が進行しない理由を説明せよ。
問 7 下線部⑥の反応と下線部③の反応は,どちらも酸化還元反応に分類することができる。その観点から,下線部⑥の反応に関わる化合物のうちで,下線部③の反応のナトリウムアルコキシドに対応する物質の分子式を書け。
問 8 下線部⑦の反応では,ベンゼンの酸化物であるフェノールと同時に,アルケンの酸化物も生成する。原料のアルケンとその酸化生成物の構造式を書け。
問 9 下線部⑧,⑨のように,フェノールはベンゼンとは反応性が異なる。以下に示すその反応性に関する説明文の空欄 ア 〜 ウ には,「正」または「負」の語句が当てはまる。解答欄の適切な方を丸で囲め。
説明文:フェノールのヒドロキシ基は,酸素の電気陰性度を考慮するとベンゼン環に ア 電荷をもたらす。反対に,酸素上の非共有電子対の効果によりベンゼン環に イ 電荷をもたらす働きが知られている。フェノールの反応性においては,後者の効果が大きい。一方,ベンゼンにはこのヒドロキシ基の効果が無く反応性が低いため,反応を進行させるためには,臭素や硝酸の反応性を高める必要がある。FeBr₃ と硫酸には,ベンゼンの臭素化やニトロ化において,臭素や硝酸に ウ 電荷を帯びさせる作用がある。
問 10 フェノール 1.88 g を原料とした下線部⑩の反応において,得られたピクリン酸の物質量は,原料のフェノールの物質量に対して 55 % であった。得られたピクリン酸の質量を有効数字 2 桁で答えよ。
第4問
〔4〕 以下の文章を読み,問 1〜問 8 に答えよ。構造式を書く場合には,図 1 と図 2 の構造式にならうこと(炭素原子に番号を付けなくてよい)。
グルコースやフルクトースは単糖類である。水溶液中でグルコースは,六員環の環状構造の α-グルコース,β-グルコースと鎖状構造のグルコースの 3 種類の異性体が平衡状態で存在する(図 1)。①ガラス容器中でアンモニア性硝酸銀水溶液にグルコースを加えて温めると銀鏡が生じる(銀鏡反応)。

フルクトースはグルコースの構造異性体であり,水溶液中では六員環の環状構造,鎖状構造のほか,五員環の環状構造も存在する(図 2)。

二糖類にはマルトースやスクロースなどがある。マルトースには α 型と β 型の 2 つの立体異性体があり,その 1 つである α-マルトースは,2 分子の α-グルコースが,一方の分子の C¹ に結合したヒドロキシ基 (–OH) と,もう一方の分子の C⁴ に結合した –OH との間で縮合した構造をもつ。スクロースは,α-グルコースの C¹ に結合した –OH と,五員環構造の β-フルクトースの C² に結合した –OH との間で縮合したものである。
多糖類のデンプンにはアミロースとアミロペクチンという 2 種類の成分があり,いずれも α-グルコース分子が繰り返し縮合した高分子化合物である。アミロースは α-グルコースの②Cᵃ と Cᵇ に結合した –OH どうしの間で縮合した構造であり,アミロペクチンはアミロースと同じ結合をもつほか,③Cᶜ と Cᵈ に結合した –OH の間でも縮合した枝分かれ構造を含んでいる。
問 1 β-グルコースの構造式を書け。
問 2 下線部①の操作によりグルコースから生じる生成物の構造式を書け。
問 3 図 2 の X と Y にあてはまる原子または原子団を示せ。
問 4 α-マルトースの構造式を書け。
問 5 解答用紙の図に原子または原子団を記入してスクロースの構造式を完成させよ。ただし,図 2 の X と Y をそのまま用いること。
問 6 下線部①の実験において,グルコースをフルクトース,マルトース,スクロースのそれぞれにかえて同じ操作を行ったとき,グルコース以外に銀鏡反応を示す化合物の名称をすべて書け。
問 7 下線部②と③の a〜d にあてはまる炭素原子の番号を書け。ただし,a ≦ b,c ≦ d とすること。
問 8 アミロペクチン 3.89 g のすべての –OH を –OCH₃ に変化させてから酸で完全に加水分解すると,0.208 g の化合物 A(α 型の構造を示すが,β 型も存在する)やそれとほぼ同じ物質量の化合物 B を含む混合物が得られた。このアミロペクチンは,グルコース単位が平均して何個あたりに 1 個の枝分かれをもつかを,計算過程を示して整数で答えよ。また,化合物 B の構造式を書け。
