東大 過去問 2004年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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東京大学 第2次学力試験(前期)2004年 理科「生物」(東京大学がかつて公開したPDFの Internet Archive 保存版)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

修正履歴

お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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生 物

第1問

次の文1〜文4を読み,Ⅰ〜Ⅳの各問に答えよ。

〔文1〕

 植物細胞は細胞壁で被われている。細胞壁は力学的に一定程度の強度をもった構造で,植物細胞の形と大きさを決めている。植物の組織を,適当な浸透圧のもとで(ア)細胞壁成分を分解する酵素で処理することによって,個々の細胞に分離させ,プロトプラストとよばれる細胞壁が除去された球形の細胞を得ることができる。

 プロトプラストは植物細胞の機能や分化の研究に大いに役立つので,プロトプラストを得る試みは古くから行なわれていた。例えば,(イ)葉を高張液に浸して,鋭利なカミソリの刃で細切し,おだやかに絞り出す方法である。この操作で多くの細胞は壊れるが,同時に,ある程度の数のプロトプラストを遊離させることができる。しかし,この方法では収率が低く,上記のように酵素処理による方法が一般的である。

 プロトプラストは,ショ糖,ミネラル,植物ホルモン,マニトールなどを含む適当な液体培地で培養すると分裂増殖する。これを寒天培地に移して培養すると,不定形の細胞塊(カルス)を形成する。さらに適当な植物ホルモンを含む培地に移植して培養すると,芽や根が分化して,最終的には完全な植物体に成長する。このように植物の体細胞は潜在的に個体を再形成できる 1 を保持している。体細胞から再形成された植物体はクローン苗としても利用され,挿し木,株分けなどで繁殖した植物体と同様に,親植物と 2 的に同一であるという特徴をもっている。

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〔文2〕

 2種の植物 X と Y の葉からプロトプラストを得て混合し,ポリエチレングリコール溶液で処理すると2種類の細胞の内容物が混じり合う 3 が起こり,雑種細胞が生じる。これらの細胞も分裂増殖して,植物体に再分化することがある。X と Y の雑種細胞から分化した体細胞雑種について,光合成に関わるルビスコ(RuBisCO)タンパク質を調べた。ラン藻類から維管束植物にいたるまで,このタンパク質は分子量の異なる S と L の2種類のポリペプチドからなり,X や Y のような植物細胞では,L の遺伝子は葉緑体に,(ウ)S の遺伝子は核にあることがわかっている。また,S と L のポリペプチドは種によってそのアミノ酸組成が異なっている。ルビスコ S と L のポリペプチドは,ある種の電気泳動法(電気的性質によって高分子を分ける方法)によりさらに分離され,電気的性質の異なるポリペプチドを示すバンド(S については3本,L については2本)が,X,Y の種によって特徴的な位置に検出された。(エ)X,Y および両者の体細胞雑種植物4系統 a〜d について S と L のポリペプチドを電気泳動して検出した結果は図1のようになった。

図1 ルビスコ S と L の電気泳動の模式図
図1 ルビスコ S と L の電気泳動の模式図

X,Y,a〜d の文字の上のバンドは,電気泳動法により分離された X,Y,a〜d の植物体由来のルビスコのポリペプチドを示す。

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〔文3〕

 葉緑体のストロマにはルビスコタンパク質が大量に含まれる。このタンパク質はカルビン・ベンソン回路の酵素のひとつである。カルビン・ベンソン回路の反応でつくられた有機物は,エネルギー源や細胞を構成するさまざまな物質の合成のための材料として使われる。また,多くの貯蔵組織では,(オ)ショ糖から巨大な分子である多糖類のデンプンが合成され,貯えられる。

 文2でも述べたように,ルビスコタンパク質は分子量の異なる2種類のポリペプチド S と L が組み合わさってできたタンパク質である。核 DNA に存在するポリペプチド S の遺伝子の伝令 RNA は,細胞質基質で翻訳が行なわれる。一方,葉緑体 DNA に存在する L の遺伝子の転写と翻訳は,ともにストロマで行なわれる。

 タンパク質合成に必要な種々の成分を含む反応液に,エンドウの S の遺伝子から転写された伝令 RNA を加えて,試験管内でタンパク質合成を行なわせることができた。合成されたポリペプチドを調べると,図2に示すようにアミノ末端側に延長部分をもつ,S よりも長いポリペプチドであった(注1)。この延長部分を「延長ペプチド」と呼ぶことにする。伝令 RNA の塩基配列から推定されるアミノ酸配列も,S のアミノ末端側に「延長ペプチド」をもった,S よりも長いポリペプチドであることを示していた。この S より長いポリペプチドを以後 pS と呼ぶ。葉緑体のストロマには S は存在するが,pS は存在しない。

 試験管内で合成したエンドウの pS を用いて以下の実験を行なった。

(注1) ポリペプチド鎖の一方の端には NH2 基が,他の端には,COOH 基があり,これらの両端をそれぞれ,アミノ末端,カルボキシル末端と呼ぶ。

図2 S と pS の模式図
図2 S と pS の模式図

影をつけた部分が「延長ペプチド」

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実験1 エンドウの葉から,葉緑体を包んでいる膜(包膜)を壊さないように単離した葉緑体(以下,無傷葉緑体と呼ぶ)と,放射性同位体 14C で標識した(注2)人工の pS を,適当な反応液に加えた。一定時間後,反応液を遠心分離して無傷葉緑体を沈殿させて回収した。無傷葉緑体に(カ)タンパク質分解酵素 A(この酵素は包膜を透過できず,葉緑体の内部のタンパク質は分解できない)の溶液を加えて一定時間置いたあと,再び無傷葉緑体を回収した。回収した無傷葉緑体について S と pS の有無と放射能を調べた。その結果,回収した無傷葉緑体の内部に S は認められたが,pS は認められず,S からは放射能が検出された。

(注2) アミノ酸の一種が放射性同位体 14C で標識されており,そのアミノ酸はポリペプチド全体に分布しているものとする。本問では,このことを「14C で標識した」と表す。

実験2 pS の代わりに,

(1) 14C で標識された S,

(2) 大腸菌由来の,あるタンパク質 B(14C で標識してある),

(3) タンパク質 B のアミノ末端に pS の「延長ペプチド」をつないだ人工的なタンパク質(14C で標識してある),

をそれぞれ用いて,実験1と同様の実験を行なったところ,以下のような結果が得られた。

(1)の場合。回収した無傷葉緑体には S は認められたが,放射能は検出されなかった。

(2)の場合。回収した無傷葉緑体にはタンパク質 B は認められなかった。

(3)の場合。回収した無傷葉緑体には,「延長ペプチド」がついたタンパク質 B は認められなかったが,タンパク質 B そのものは認められ,放射能も検出された。

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〔文4〕

 土壌に生息する細菌であるアグロバクテリウムは,大きな環状の DNA(プラスミド)をもつが,宿主となる植物に感染すると,その一部である T-DNA を植物細胞の核 DNA に組み込むことにより,植物腫瘍クラウンゴールを生じて植物の成長に障害を引き起こすことが知られている。通常の植物細胞の培養には植物ホルモンが必要であるが,このクラウンゴールの細胞からアグロバクテリウムを除いて培養すると(キ)植物ホルモンを含まない培地でも増殖する植物細胞が生じる。クラウンゴールの細胞は,(ク)植物が利用できないアミノ酸であるオパインを合成するようになる。

 人為的に T-DNA の一部を他の遺伝子に置き換えることで,植物細胞に外来遺伝子を導入して,新しい性質を付与した遺伝子組換え植物を作成することができる。すでに,病気に対する抵抗性などの性質をもった植物体が(ケ)設備の整った実験施設で作成され,安全性の確認されていない植物については厳密な管理下で育成されている。

〔問〕

Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(ア)について。細胞壁を構成する最も主要な成分の物質名を記せ。

B 下線部(イ)について。なぜこの方法によってプロトプラストが遊離してくるのか。3〜4行で述べよ。

C 文中の空欄1,2に入る最も適当な語句を記せ。

Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A 文中の空欄3に入る最も適当な語句を記せ。

B 葉緑体は独自の DNA をもつが,これはラン藻類のような光合成を行なう単細胞生物が,光合成能をもたない宿主の細胞に共生したことが起源であるとされている。

(a) 下線部(ウ)の事実から,ルビスコタンパク質 S の遺伝子について進化の過程で何が起こったと考えられるか。1行で述べよ。

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(b) 葉緑体と同様に共生起源とされるもう1つの細胞小器官の名称と,その主要な機能は何か。それぞれ適当な語句で答えよ。

C 下線部(エ)の結果から,これらの体細胞雑種の遺伝的性質に関して考えられることは何か。推論を2行で述べよ。

Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(オ)について。有機物を,小さな分子であるショ糖ではなく,巨大な分子であるデンプンとして貯えることは,細胞にとってどのような利点があると考えられるか。2〜3行で述べよ。

B 実験1の反応で,pS についてどのようなことが起こったか。2行以内で述べよ。

C 下線部(カ)について。回収した無傷葉緑体にタンパク質分解酵素 A の溶液を加えた目的は何か。3行以内で述べよ。

D 実験1と実験2の結果から推論できる「延長ペプチド」の機能について,3行以内で述べよ。

Ⅳ 文4について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(キ)の原因はどのように考えられるか。1行で述べよ。

B 下線部(ク)について。アグロバクテリウムはオパインを栄養源として利用できる。このような,植物との関係を何と言うか。1語で答えよ。

C 下線部(ケ)の遺伝子組換え植物を実験施設外に出さないための対策として,下記の事項から必須でないものをすべて選び,その番号を記せ。

(1) 外界から物理的に隔離できる実験施設で作成する。

(2) 光,温度,湿度などが厳密に管理された条件下で育成する。

(3) 種子や花粉などが外に出ないように厳重に管理する。

(4) 人が施設に出入りする際には衣服等を紫外線で殺菌する。

(5) 植物試料を捨てる前に高温等で処理して殺す。

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第2問

次の文1と文2を読み,ⅠとⅡの各問に答えよ。

〔文1〕

 ヒトやマウスは,甘味,苦味,酸味など,いろいろな味を感じることができる。味覚の受容は,さまざまな構造をもつ化学物質がそれぞれを受容する分子に結合した結果,味細胞が反応し,この情報が感覚神経を介して脳へ伝えられることによって成立する。味細胞は支持細胞とともに集合して たまねぎ形の構造物を形成しており,これが舌にある舌乳頭の一部の側面に分布している。これを 1 と呼ぶ。味細胞はその先端を舌の表面に露出し,基底部で感覚神経の末端に接している。

 感覚神経は一般に有髄神経繊維であり,その軸索は 2 で被われている。この部分は電気的絶縁性が強いため,有髄神経繊維では 2 の切れ目である 3 でとびとびに興奮が起こる。このような伝導の方法を 4 という。この結果,有髄神経繊維における伝導速度は,同じ太さの無髄神経繊維よりもずっと大きくなる。

〔文2〕

 マウスはその系統により,味覚の受容に違いのあることが知られている。純系の3系統のマウスを用いて,以下の実験を行なった。

実験1 A系統のマウスは甘味,苦味をともに受容できること,甘味を好み苦味を忌避することが知られている。またここで用いる濃度の範囲では,味の嗜好性は変化しない。A系統のマウス10匹について苦味物質 X,苦味物質 Y に対する応答を検討した。まず,味物質の水溶液を吸い口のついたびん1に,蒸留水をびん2に入れ,この2本のびんをマウスの飼育かごの別々の場所に配置した。この飼育かごの中でマウスを単独で48時間飼育し,マウスが各々のびんから摂取した水溶液の体積を測定した。(ア)びんの位置を交換した後にさらに48時間飼育し,摂取した水溶液の体積を測定して,結果が同様であることを確認した。10匹のマウスについて得られた実験結果の平均値を図3に示す。この際,「びん1から摂取した水溶液の体積」を「びん1とびん2から摂取した水溶液の合計体積(総摂取体積)」で除した値を算出し,これを図示した。

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実験2 B系統のマウス,C系統のマウスは,ともに苦味物質 X をまったく受容できない。(イ)A系統とB系統,A系統とC系統,B系統とC系統という3通りの組み合わせで両者を交配させて誕生した F1 マウス(それぞれ (A×B)F1,(A×C)F1,(B×C)F1 とする)は,すべてA系統のマウスと同様に苦味物質 X に応答した。次にこの F1 マウスどうしを交配させた。(A×B)F1 どうし,あるいは (A×C)F1 どうしの交配では,「苦味物質 X に応答する個体数」と「苦味物質 X に応答しない個体数」の比は3:1であり,性差は認められなかった。

図3 A系統マウスの苦味物質に対する応答(実験1)
図3 A系統マウスの苦味物質に対する応答(実験1)
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実験3 ヒトですでに知られている苦味の受容にかかわるタンパク質(以後「苦味受容体」と呼ぶ)の遺伝子の塩基配列を参考にして,マウスの苦味受容体の候補遺伝子 P を得た。この遺伝子の伝令 RNA から推定されるアミノ酸配列を系統間で比較したところ,A系統とB系統のマウス間では3箇所が異なっていた。C系統マウスの遺伝子 P の塩基配列は,A系統のものとまったく同一であった。

 ヒトの苦味受容体の遺伝子については,これを味細胞とは無関係の培養細胞に導入して形質転換することにより,細胞が苦味物質に応答できるようになることが知られている。すなわち,この形質転換の結果,苦味受容体は細胞表面に出現する。またこの細胞は,味細胞と同様に苦味物質 X に応答し,その細胞内カルシウムイオン濃度が上昇する。この変化は遺伝子導入をしなかった細胞では観察されない。A系統とB系統のマウスに由来する遺伝子 P をそれぞれこの培養細胞に導入すると,この遺伝子産物は,ともに同様の密度で細胞表面に出現した。これらの細胞及び遺伝子導入をしなかった細胞に苦味物質 X,もしくは苦味物質 Y を与えて細胞内カルシウムイオン濃度を測定した結果を,図4〜6に示す。

実験4 遺伝子 P の遺伝子断片に蛍光色素を結合させた後,この遺伝子断片を染色体上の相補的な塩基配列の部分に特異的に結合させることにより,遺伝子 P が染色体のどこに位置するかを蛍光によって視覚的に知ることができる。

 あらかじめ病原菌に由来するタンパク質 K で免疫したA系統のマウスの脾臓細胞から T リンパ球とマクロファージ(大食細胞)を分け取り,(ウ)両者を混合して培地中に同じタンパク質 K を加えて培養したところ,T リンパ球が増殖した。タンパク質 K を加えない場合には T リンパ球は増殖しなかった。T リンパ球が増殖を開始した後にある薬剤を加え,(エ)分裂中期に見られる染色体の配置と分配に必要な構造の形成を阻害した。この薬剤で処理すると,(オ)多くの T リンパ球の細胞内で染色体が観察されるようになった。上述の方法を用い,遺伝子 P は第6染色体の端に近い部分に存在することがわかった。

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実験5 ゲノム解析の結果,苦味を受容できないC系統のマウスでは,第6染色体上の遺伝子 Q の領域で,対立遺伝子の双方に欠失が認められた。この欠失はA系統とB系統のマウスでは見られなかった。C系統のマウスが苦味物質 X を受容できないのは,この遺伝子 Q の欠失が原因であった。

図4 A系統マウスに由来する遺伝子 P で形質転換した細胞の苦味物質に対する応答(実験3)
図4 A系統マウスに由来する遺伝子 P で形質転換した細胞の苦味物質に対する応答(実験3)
図5 B系統マウスに由来する遺伝子 P で形質転換した細胞の苦味物質に対する応答(実験3)
図5 B系統マウスに由来する遺伝子 P で形質転換した細胞の苦味物質に対する応答(実験3)
図6 遺伝子を導入していない細胞の苦味物質に対する応答(実験3)
図6 遺伝子を導入していない細胞の苦味物質に対する応答(実験3)
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〔問〕

Ⅰ 文1について,空欄1〜4に最も適当な語句を入れよ。

Ⅱ 文2について,次の小問に答えよ。

A 下線部(ア)について。これはどのような可能性を排除するための実験操作か。1行で述べよ。

B 実験1について。

(a) 苦味物質の濃度が 10mg/l のとき,A系統のマウスは苦味物質 X,Y の苦味を受容しているか。苦味物質 X,Y のそれぞれについて,理由とともに答えよ。

(b) びん1に甘味物質 Z,びん2に蒸留水を入れて実験1と同様の方法を用いると,甘味物質 Z に対するA系統のマウスの応答はどのようになるか。図7に示す(1)〜(6)の中から最も適当な結果を選び,番号で答えよ。

(c) びん1に苦味物質 X を入れて苦味に対する応答の再実験を行う際,あやまってびん2に蒸留水ではなく,苦味物質 Y の 1mg/l の濃度の水溶液を入れてしまった。このとき,苦味物質 X に対するA系統のマウスの応答はどのようになると予想されるか。図7に示す(1)〜(6)の中から最も適当な結果を選び,番号で答えよ。

C 実験2から実験5の内容をふまえ,次の問に答えよ。

(a) 下線部(イ)について。B系統とC系統のマウスを交配させて誕生した (B×C)F1 マウスが,苦味物質 X に応答できるようになったのはなぜか。本文中からわかることをもとに2行程度で説明せよ。

(b) 遺伝子 P と遺伝子 Q の組換え価が25%であると仮定した場合,(B×C)F1 どうしの交配で誕生する F2 マウスにおいて,「苦味物質 X に応答する個体数」と「苦味物質 X に応答しない個体数」の比率の期待値はいくつになるか。

D 実験3について。この結果から,苦味受容体の候補遺伝子 P は苦味物質 X の受容体であるが,苦味物質 Y の受容体ではないと考えた。図4〜6に示した苦味物質に対する応答の違いに着目し,このように判断する根拠を2点あげ,箇条書きでそれぞれ1〜2行程度で述べよ。

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E A系統のマウスを用いて遺伝子 P を欠失したマウスを作製し,P の遺伝子産物が苦味物質 X の受容体であることを証明した。遺伝子 P を欠失したA系統のマウスを用いて,実験1と同様の方法で苦味物質 X,苦味物質 Y に対する応答を調べた。どのような結果が予想されるか。図7に示す(1)〜(6)の中から最も適当な結果を選び,X—(7),Y—(8)のように答えよ。

図7 マウスの味物質水溶液に対する応答
図7 マウスの味物質水溶液に対する応答

縦軸は「びん1から摂取した水溶液の体積」を「総摂取体積」で除した値を,横軸は味物質の濃度(mg/l)を示す。

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F 実験4について。

(a) T リンパ球は,多数の細胞を取得することができ,また種々の処理によって増殖させることが容易であるため,このような実験の材料に使われることが多い。T リンパ球は遺伝子 P の伝令 RNA を含まず,また P の遺伝子産物を有していない。それにもかかわらず,この実験の材料に T リンパ球を用いてもかまわない理由として考えられることを,1行で述べよ。

(b) 下線部(ウ)について。この培養操作におけるマクロファージの役割は何か。1行で述べよ。

(c) 下線部(エ)について。この構造の名称を記せ。

(d) 下線部(オ)について。この薬剤処理によって多くの T リンパ球の細胞内で染色体が観察されるようになった理由として考えられることを,1行で述べよ。

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第3問

次の文1〜文3を読み,ⅠとⅡの各問に答えよ。

〔文1〕

 ワトソンとクリックにより DNA の二重らせんモデルが提唱され,すでに50年が経過した。20世紀の中頃から21世紀初頭にかけてのこの50年間において,人類は生命現象に伴うさまざまな神秘を分子レベルで解き明かし,3×109 対の塩基からなるヒトの巨大なゲノム DNA の化学構造すら明らかにした。DNA に書き込まれた遺伝情報(遺伝子の塩基配列)は,RNA の塩基配列に変換され,さらにタンパク質(アミノ酸配列)に変えられ,生じたタンパク質によりさまざまな生体反応が実行・制御される。このような遺伝情報の流れをセントラルドグマという。したがって,生命現象の最も基本的な仕組みは,設計図としての DNA 情報とそれを具現化するためのセントラルドグマであり,生命体は非常に複雑な化学反応の“るつぼ”といえよう。

 細胞中では,通常,DNA は2本の分子がよりあわさり,二重らせん構造を形成している。DNA 分子の基本単位はヌクレオチドで,各ヌクレオチドは 1(D と略す),リン酸(P と略す),塩基という3つの成分から成り立っている。1 は図8のように2ヶ所でリン酸と結合し,P–D–P–D–P–D–P–D–P というような DNA のバックボーン構造を作っている。DNA のバックボーンには方向性があり,その一端を5′末端,他端を3′末端という。二重らせん構造を形成する2本の DNA 分子は,5′末端,3′末端に関して逆向きである。二重らせんの内側には塩基が位置している。塩基には,アデニン,グアニン,2,3 という4種類があり,それぞれ A,G,C,T という1文字で表記する。4 と T,5 と 6 は水素結合を介して対合しており,この対合(塩基対)が遺伝の最も基本的な仕組みである。

 なお,水素結合は熱に弱いので,二本鎖 DNA の水溶液を高温にすると,2本の分子は解離する。逆に,解離した DNA 分子の水溶液をゆっくりと冷やすと,再び塩基対が形成されて二本鎖 DNA が再生される。

PDFの 38 枚目
図8 DNA分子の構造の模式図
図8 DNA分子の構造の模式図
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〔文2〕

 細胞の増殖に際し,(ア)DNA は複製され,遺伝情報は親細胞から娘細胞へ正しく伝えられる。この DNA 複製の際にも,セントラルドグマは機能するに違いない。しかし,もしそうであるとすると(DNA が複製されるためにはさまざまなタンパク質が必要であることを考えれば),生命の誕生の際に DNA がタンパク質より先にできたのか,それともタンパク質が DNA より先にできたのかという基本的な疑問に突き当たってしまう。実際,この問題は分子生物学者を長い間悩ませてきた。問題の解決の糸口は,酵素に類似した働きが RNA にもあるという発見により与えられた。一方で,RNA が遺伝子として働くことは,RNA でできたゲノムをもつウイルス(RNA ウイルス)の存在を通じて,それ以前から知られていた。これらの知見をもとに,現在の DNA/セントラルドグマの時代(DNA ワールド)の以前に,RNA が遺伝子やタンパク質の役割をも果たした時代(RNA ワールド)があったという有力な考えが提唱されている。RNA ワールドが DNA ワールドに移行するには,RNA を DNA に変換する分子機構が必要であると考えられる。

 ヒトにエイズを引き起こす HIV や白血病を引き起こす HTLV-Ⅰは,レトロウイルスと呼ばれるウイルスである。レトロウイルスの研究から,RNA を DNA に変換する分子機構の存在を支持する実験結果が得られた。

実験1 精製されたあるレトロウイルスの入った溶液に,ある薬剤 X を加えると,レトロウイルスの外被の膜が溶けて,溶液中の物質がレトロウイルスの中に侵入できるようになる。薬剤 X で処理したレトロウイルス液に,放射性同位体である 32P で標識された活性型ヌクレオチド(注3)を含む適当な緩衝液を加えて37 ℃ で1時間保温した。1 を成分として含む活性型ヌクレオチドを用いた場合は,32P で標識された核酸が合成されたが,7 を成分として含む活性型ヌクレオチドを用いた場合は,核酸の合成は起こらなかった。薬剤 X で処理したレトロウイルス液に,RNA 分解酵素を加えて37 ℃ で保温したのちに,1 を成分として含む活性型ヌクレオチドを加えて同様の反応を行なった場合では,核酸の合成は起こらなかった。

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(注3) 活性型ヌクレオチド:連続した3個のリン酸が結合したヌクレオチドで,ATP はその一種である。

実験2 レトロウイルスとポリオウイルスから精製した RNA を含む水溶液を,95 ℃ で加熱後急冷し,ナイロン膜に結合させた(図9)。実験1で合成した 32P で標識された核酸を精製した。この核酸水溶液を95 ℃ で加熱後急冷し,適当な緩衝液を加え,そこに RNA を結合させたナイロン膜を浸し,プラスチック袋に密封して42 ℃ で一晩保温した。ナイロン膜を適切に処理したのち,ナイロン膜の放射能を測定したところ,(イ)レトロウイルス RNA を結合させた領域 B では,RNA を結合させていない領域 A やポリオウイルス RNA を結合させた領域 C に比べて,100倍以上の高い 32P の放射能が検出された。

図9 実験2の模式図
図9 実験2の模式図

A:RNAを結合させていない領域

B:レトロウイルスRNAを結合させた領域

C:ポリオウイルスRNAを結合させた領域

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〔文3〕

 現在の世界には,それぞれ非常に高い多様性をもったバクテリア,植物,動物といった生物が存在している。また,それ自身は生物とはいえないにしても,生物に寄生して自己を増やすウイルスも多々ある。これらの遺伝情報は基本的に同一のセットの遺伝暗号によりアミノ酸配列情報に変換されることから,(ウ)現存するすべての生物は,同一の起源から生じた生命体の子孫であると推定されている。個体間の小さなばらつきを別にすると,個々の生物種は固有の遺伝情報をもっている。

 DNA の塩基配列はさまざまな理由で変化する。ここでは,生殖細胞で起こった親から子へ遺伝可能な突然変異だけを考察することとする。進化の過程で DNA の塩基配列は変化するので,突然変異が進化と密接に関わっていることは確かであろう。しかし,進化は突然変異だけでは説明できない。生じた突然変異の集団中への固定が重要である。通常,同一の突然変異が種を構成している他の個体の当該遺伝子に起こることは,種を構成する集団の数がよほど大きくない限り考えにくい。したがって,進化に際しては,(エ)何らかの過程で,集団を構成するすべての個体の当該遺伝子が,すべて突然変異型に置き換わる機構が存在しなくてはならない。突然変異の出現とその固定が何度も繰り返され,現在見られる種固有の DNA 塩基配列上の大きな変化が作り出されたと考えられる。

〔問〕

Ⅰ 文1,文2について,次の小問に答えよ。

A 空欄1〜7に最も適当な語句を入れよ。解答は,1.タンパク質,2.アミノ酸のように記せ。

B 下線部(ア)について。DNA の複製に際し,新しいヌクレオチドは,常に合成されている DNA 鎖の3′末端にしか付加されないことが知られている(図10参照)。図10(b)は図10(a)よりも複製が少し進んだときの未完成の模式図である。

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(a) 6行程度のスペースを使って図10(b)を写し取り,図中の新生 W 鎖と新生 C 鎖の合成がどのように進行するかを示せ。新しく合成された部分を点線で表し,合成の方向がわかるように矢頭をつけること。

(b) 得られた図を参考にして,W 鎖と C 鎖のそれぞれに相補的な鎖(DNA 分子)の合成における相違点を3行程度で述べよ。

図10 複製途中のDNA
図10 複製途中のDNA

C 実験1と実験2は,レトロウイルス粒子に含まれる「ある酵素」の性質を調べたものである。この酵素の性質として,実験1と実験2からわかることを以下の(1)〜(8)からすべて選び,番号で答えよ。

(1) DNA の塩基配列を写し取って DNA を合成する活性がある。

(2) DNA の塩基配列を写し取って RNA を合成する活性がある。

(3) RNA の塩基配列を写し取って DNA を合成する活性がある。

(4) RNA の塩基配列を写し取って RNA を合成する活性がある。

(5) DNA の塩基配列を写し取って DNA を合成する活性はない。

(6) DNA の塩基配列を写し取って RNA を合成する活性はない。

(7) RNA の塩基配列を写し取って DNA を合成する活性はない。

(8) RNA の塩基配列を写し取って RNA を合成する活性はない。

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D 下線部(イ)について。なぜこのような結果になったのか。ポリオウイルス RNA の塩基配列がレトロウイルス RNA の塩基配列と著しく異なることを踏まえて,3行程度で説明せよ。

E ヒトのゲノム DNA の塩基配列を調べてみると,遺伝子の数はおよそ3万個であった(ただし,後述するレトロウイルスや広義のその仲間の遺伝子を除く)。一方,レトロウイルスや広義のその仲間の DNA が,全ゲノム DNA の50 %程度を占めていることがわかった。

(a) どのような仕組みで「レトロウイルスや広義のその仲間」がヒトのゲノムに多数存在するようになったのか,1〜2行で考えを述べよ。

(b) ヒトゲノム中に見出される「レトロウイルスや広義のその仲間」の一個のサイズが平均5000塩基対であると仮定して,ヒトのゲノム DNA に存在する「レトロウイルスや広義のその仲間」の個数を計算せよ。

Ⅱ 文3について,次の小問に答えよ。

A 下線部(ウ)の記述と矛盾しないものを以下の(1)〜(4)からすべて選び,番号で答えよ。

(1) ヒトとサルは共通の祖先から由来した生物であるが,ヒトとハエはそうではない。

(2) ヒトのインターフェロン遺伝子で形質転換した大腸菌から,ヒトのインターフェロンを合成できる。

(3) 酵母とハエは共通の祖先から由来した生物であるが,セイタカアワダチソウとヒトは同じ祖先に由来した生物ではない。

(4) ハエのある種の突然変異体に,ヒトの遺伝子を導入して正常に戻すことができる。

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B DNA と同様に RNA にも方向性がある。アミノ酸配列への変換は,5′から3′の方向に行われる。5′-UCUAGUGCGCGCUUUC-3′は,遺伝子 X の伝令 RNA のヌクレオチド配列の一部で,この中にはロイシン—バリン—アルギニン—アラニン—フェニルアラニンというペプチドに対応するヌクレオチド配列が含まれている。左から10番目の C を A,G,U のいずれに置き換えても,アミノ酸配列に変化は見られなかったが,左から6番目の U を C に置き換えると,バリンがアラニンに,左から11番目の G を C に置き換えると,アラニンがプロリンに変化した。

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(a) なぜ10番目の C を変化させたときだけアミノ酸配列は変わらなかったのか。1行で説明せよ。

(b) ここからわかるアミノ酸のコドンをすべて示せ。解答は AUG—メチオニン,GGG—グリシンのように記せ。

C 下線部(エ)について。突然変異の固定にはさまざまな要因が考えられる。ここで考える突然変異は,淘汰に特に有利なものではないとすると,どのような機構が考えられるか。1〜2行で述べよ。

D 種を構成する個体の生息地域が,ある時を境に物理的に隔離されると,その境界を越えて突然変異が伝播する速度は著しく小さくなり,生息地域に特徴的な DNA 塩基配列が生じる。このような生息地域依存的な DNA 塩基配列の違いは,それが直接病気と関わらなくても,遺伝病の探索や病気にかかりやすい体質の研究に重要である。なぜか。考えを2〜3行で述べよ。