ヒトの腎臓では,まず腎小体において血しょう成分がろ過される。続いて,原尿が細尿管(腎細管)を通過する間に有用物質が 1 され,不要物質が濃縮され排出される。集合管を構成する細胞には脳下垂体後葉ホルモンであるバソプレシンの受容体が存在し,そこにバソプレシンが作用すると集合管の水に対する 2 が上昇し,1 を促進する。ヒトの糸球体で1日にろ過される血しょう量(糸球体ろ過量という)は150 L 以上にも及ぶが,1日に排泄される尿量は1〜2 L 程度である。
D 表1—1に示した淡水魚と海水魚の血しょう中のナトリウムイオン濃度はそれぞれ140 ミリ と150 ミリ であった。表1—1の値をもとに,それぞれの尿中のナトリウムイオン濃度を答えよ。解答はミリ の単位で表し,四捨五入して小数点第1位まで記せ。
E 表1—1から,ヒトと淡水魚では,細尿管(ここでは集合管も含めるものとする)の機能に大きな違いがあることがわかる。細尿管における水とナトリウムイオンの 1 について,それぞれ1行程度で答えよ。
F 下線部(ア)について。海水魚は,体内に過剰となるナトリウムイオンを主として鰓の塩類細胞から排出している。腎臓でも尿をつくることでナトリウムイオンが排出されるが,実際には糸球体ろ過量ならびに尿量は少ない。恒常性維持の観点から,海水魚が糸球体ろ過量ならびに尿量を抑制する理由について,表1—1にある数値を根拠として2行程度で説明せよ。
Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。
A 表1—2に示した交配実験の結果から,父,母,仔それぞれの遺伝子型が仔マウスの24時間後の生存率に与える影響について2行以内で述べよ。
B 実験1〜3の結果から,仔マウスが生後24時間以内に死亡してしまう原因は何だと考えられるか。以下の選択肢(1)〜(6)からもっとも適切だと考えられるものを1つ選べ。また,もっとも適切だと考えた理由について2行程度で説明せよ。
(1) 仔マウスが乳を消化・吸収できなかった。
(2) 仔マウスが腎臓から老廃物を排出できなかった。
(3) 母マウスが腎臓から老廃物を排出できなかった。
(4) 母マウスが低体温であった。
(5) 母マウスから乳が出なかった。
(6) 父マウスの保育行動が不足していた。
C Bで導き出した理由を仔マウスを用いて確かめるとしたら,どのような実験を追加したらよいか。実験と期待される結果を1行程度で答えよ。
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第2問
次の文1と文2を読み,ⅠとⅡの各問に答えよ。
〔文1〕
アブラナ科植物の多くは,同一個体の配偶子間の受精(自家受精)を防ぐために,同一個体の花粉が柱頭に受粉した際に花粉の発芽を阻害する自家不和合性と呼ばれる仕組みをもっている。この仕組みは,花粉表面に存在する雄性因子(タンパク質 X)が,柱頭の細胞表面に存在する雌性因子(受容体タンパク質 Y)に結合することにより発動する。タンパク質 X と Y をつくる遺伝子は,それぞれ1つである。同じ植物種であってもタンパク質 X と Y にはそれぞれアミノ酸配列の違う複数のタイプが存在し,タンパク質 X と Y の組み合わせは,株(遺伝的に同一な集団)ごとに異なっている。また,通常は同じ株がつくるタンパク質 X と Y の組み合わせに限り両者は結合可能である。
アブラナ科に属する植物種 A は,タンパク質 X と Y による自家不和合性反応のため,自家受精することができない。一方,A 種の近縁種 B は,タンパク質 X と Y の遺伝子をもっているが,自家不和合性は示さず,自家受精が可能である。また,A 種にも B 種にも複数の株が存在し,A 種の特定の株と B 種の特定の株の間で人工的に交配した際に,花粉が発芽するかどうかはタンパク質 X と Y が結合するかどうかによって決まる。植物種 A と B を用いて以下のような実験を行った。なお,実験に用いた A 種ならびに B 種のすべての株は,特殊な操作によって,タンパク質 X と Y の遺伝子についてすべてホモ接合となるようにした。
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実験1 A 種の2種類の株(A1株,A2株)のそれぞれの花粉を,B 種の3種類の株(B1株,B2株,B3株)の柱頭に対しすべての組み合わせで受粉する実験を行った。その結果,A1株の花粉は B1株,B3株の柱頭では発芽したが,B2株の柱頭では発芽しなかった。一方,A2株の花粉は B 種のすべての株の柱頭で発芽した(図2—1)。
図2—1 実験1の交配結果
各株がもつタンパク質 X と Y それぞれのタイプを括弧内に示す。
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実験2 実験1で花粉が発芽しなかった A1株と B2株の組み合わせについて,それぞれのタンパク質 X の mRNA(伝令 RNA)の塩基配列を比較した。その結果,両者の間で mRNA の長さに違いはなかったが,タンパク質をコードする領域内の4箇所で塩基の違いが見つかった。塩基の違いのある箇所を含む7塩基の配列を表2—1に示す。なお,配列の先頭位置は,mRNA 中の翻訳開始コドン AUG の A を1として数えた位置である。
表2—1 A1株とB2株に由来するタンパク質 X の mRNA 塩基配列の比較
※:塩基の違いがある箇所の7塩基を示す。
表2—2 遺伝暗号表
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実験3 花粉の表面に A1株由来のタンパク質 X をつくらせる人工遺伝子を作製し,形質転換によって B2株に導入した(形質転換株)。形質転換株は,その後の操作によって人工遺伝子がホモ接合になるようにし,形質転換株のすべての花粉表面に A1株のもつタンパク質 X が存在することを確認した。この形質転換株と B2株(野生型株)を用いて,相互に交配する実験を行った(表2—3)。
ある種子植物 C 種において,変異 m のヘテロ接合体から得られる花粉では,50 %の割合で花粉管内に2個の精細胞ではなく1個の精細胞に似た細胞がつくられる。こうした異常な細胞をもつ花粉管は,花粉管の内容物を放出するまでの過程に野生型との間で違いはみられないが,胚のう内に放出された精細胞に似た細胞は,卵細胞とも中央細胞とも接合することができず,正常な種子形成を開始することができない。C 種の野生型株と変異 m のヘテロ接合体を用いて,以下の実験を行った。
実験1 C 種の野生型株の柱頭に変異 m のヘテロ接合体から得た花粉を十分量受粉したところ,以下のような結果が得られた。
B 表2—1で示された mRNA 塩基配列の違いによって,B2株がつくるタンパク質 X は A1株が作るタンパク質 X に対して違いが生じる。両者の違いについて述べた以下の文章中の,空欄1〜5に当てはまる数字,アミノ酸名を表2—2を参照して答えよ。なお,A1株がつくるタンパク質 X は89アミノ酸からなることとする。
文章:B2株で作られるタンパク質 X は,A1株でつくられるタンパク質 X の 1 番目のバリンが 2 に,3 番目のセリンが 4 にそれぞれ置換され,タンパク質全長が A1株に比べてアミノ酸 5 個分短くなっている。
C 表2—3の空欄(a)について,花粉の発芽はどのようになると予想されるか。すべての花粉は発芽した,すべての花粉が発芽しなかった,半分の花粉は発芽した,の中から選べ。また,そのように予想した理由について,以下の語句をすべて用いて2行程度で記せ。
花粉,柱頭,雌性因子
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D B2株では自家受精が可能なのはなぜか。以下の(1)〜(4)よりもっとも適切な理由を選択せよ。
(1) B2株ではタンパク質 X の機能が失われているため。
(2) B2株ではタンパク質 Y の機能が失われているため。
(3) B2株ではタンパク質 X と Y の機能がともに失われているため。
(4) B2株ではタンパク質 X と Y の機能がともに正常であるため。
E A 種において,タンパク質 X と Y による自家不和合性の仕組みが世代を超えて安定に保たれるためには,タンパク質 X と Y をつくるそれぞれの遺伝子が,染色体上でどのような位置関係にある必要があるか。また,そうした位置関係にあることによって,自家不和合性の仕組みが安定に保たれる理由も,あわせて2行程度で記せ。
Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。
A 下線部(イ)について。(イ)の過程で卵細胞が作られるまでの,核あたりの DNA 量の変化をグラフに示せ。なお,グラフの横軸には時間経過を,縦軸には核あたりの DNA 量をとり,(イ)の過程が始まる前の時点における胚のう母細胞の核あたりの DNA 量を2とすること。
B 下記の植物種の中から重複受精をする植物種をすべて選べ。
イチョウ,イネ,エンドウ,ゼニゴケ,ソテツ,ワラビ
C 下線部(ウ)について。卵細胞,胚,胚乳それぞれの核相を記せ。なお,解答は「孔辺細胞:2n」のように記すこと。
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D C 種の野生型株では,受精した胚のうに進入している花粉管は1本しか観察されない。実験1,2の結果をもとに,C 種の野生型株において花粉管が胚のうへ2本以上進入するのを防ぐ仕組みを考察した。以下の文章中の,空欄1〜3に当てはまる適切な語を入れよ。
実験2 上記の実験では,自然状態での草食獣の密度はそれほど高いものではなかった。そこで,家畜を高密度に放牧した新たな実験区 e を作った。この実験区では,窒素化合物の添加は行っていない。その結果,1年後の植物の現存量は,図3—1の実験区 a(対照区)の値より減少したが,種数は実験区 c(草食獣排除区)と同程度になった。しかし,実験区 e と実験区 c の種構成には大きな違いが見られた。
B Aで考察した,窒素化合物の添加により種数が減少する効果は,草食獣がいると緩和されることが図3—1から読み取れる。緩和される理由について,2行程度で述べよ。ただし,草食獣による排泄物や遺体の影響は無視できるものとする。
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C 実験2の下線部(ウ)について。種構成の違いについての説明として不適切なものを,以下の(1)〜(5)からすべて選べ。
説明:実験区 e では,
(1) トゲのある植物が多かった。
(2) 葉の柔らかい植物が多かった。
(3) 丈の高い植物が多かった。
(4) タンニンを多く含む植物が多かった。
(5) 成長の遅い植物が多かった。
Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。
A 図3—2の無脊椎動物の系統関係は,下記のように表すことができる。a〜d に当てはまる生物名の組み合わせを,以下の(1)〜(6)から選べ。ただし,生物名の順番は a〜d の順番に対応している。
(1) ユスリカ,イトミミズ,トンボ,アメリカザリガニ
(2) ユスリカ,トンボ,アメリカザリガニ,イトミミズ
(3) ユスリカ,トンボ,イトミミズ,アメリカザリガニ
(4) ユスリカ,イトミミズ,アメリカザリガニ,トンボ
(5) トンボ,アメリカザリガニ,ユスリカ,イトミミズ
(6) トンボ,アメリカザリガニ,イトミミズ,ユスリカ
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B 図3—2のため池でオオクチバスを駆除すると,長期的にはトンボの幼虫がさらに減少する可能性がある。そのようなことが起こるのは,オオクチバスの捕食がトンボの幼虫に与える直接的な負の影響(図の※で記した矢印)よりも,ある2つの間接的な正の影響の総和の方が強い場合である。その2つの影響について,それぞれ1行で答えよ。ただし,小魚やアメリカザリガニが,ユスリカの幼虫やイトミミズに与える影響は無視できるものとする。
C 在来の生物群集を復元するには,オオクチバスに加えてアメリカザリガニの影響を軽減する必要がある。しかし,アメリカザリガニは罠による駆除を試みても,個体数を十分減らすことは難しい。図3—2の相互作用をもとに,在来生物への影響がもっとも少ないと考えられる駆除以外の有効な方法を,その理由とともに2行程度で述べよ。ただし,オオクチバスは完全に駆除できていると仮定する。
形質転換株は、B2 株に「A1 株の X を花粉の表面に作る遺伝子」を入れたもの。柱頭の Y は B2 株のまま変わらない。
表2—3で、形質転換株の花粉を野生型(B2)の柱頭につけると × になっている。A1 株の X が B2 株の Y と結合するのは図2—1(A1 の花粉が B2 で発芽しない)と同じ。
(a) は形質転換株どうし。柱頭には B2 株と同じ雌性因子 Y があり、花粉にはすべて A1 株の X がある(人工遺伝子をホモにして、すべての花粉にあることを確かめている)。だから野生型の柱頭のときと同じく結合が起こり、すべての花粉が発芽しない。「半分」にならないのは、ホモ接合にしてすべての花粉が X を持つからで、デモでヘテロの場合(花粉が自分の遺伝子で X を作るとしたとき)を試すと半分になる。ただし、花粉の表面の X を親の株の細胞が作って付けるしくみなら、ヘテロでもすべての花粉に X が乗りうるので、いつも半分になるとは言えない。問題が「すべての花粉の表面に X があることを確認した」と書いているのは、このあいまいさを消すため。
実験区 e は家畜を高密度で放牧した区。種数は c(草食獣を締め出した区)と同じくらいだが、顔ぶれが違う。c では食べられる心配が無いので、背が高く成長の速い、競争に強い種が残る。e では強く食べられるので、食べられにくい種・食べられても生き残れる種が残る。
(1) トゲと (4) タンニン(苦くて消化しにくい物質)は、食べられにくくする防御なので e で多いのは適切。
(5) 成長の遅い植物は、実験の結果からは直接わからない。一般に、防御(トゲやタンニン)にエネルギーを回す植物は成長が遅くなりやすい(成長と防御の引きかえ)ので、食べられにくい種が多い e では成長の遅い種も多い、と読めば適切になる。一方、強く食べられる所では、食べられてもすぐ伸びなおせる成長の速い植物が有利になることもあるので、(5) も不適切と読む余地はある。ここでは防御の方を重く見て、(5) は適切とした。
(2) 葉の柔らかい植物は食べられやすく、(3) 丈の高い植物は家畜の口が届きやすく、どちらも e では減るはず。これらが不適切。デモの模型でも、e で c より少なくなる性質は「やわらかさ」と「丈」だけになる。ただし模型では、成長の速さを丈の高さと結びつけて置いている(丈が高い種ほど少し速い)ので、(5) についての模型の結果はその置き方から出たもので、(5) を別に確かめたことにはならない。
答え,
Ⅲ A
系統樹では a と b が一番近く、次に c、その外側に d、一番外にヒトデがある。ヒトデは棘皮動物(後口動物)で、ほかの4つとは遠い。