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生 物
第1問
次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。
〔文1〕
私たちのからだには3種類の筋肉がある。これらは,からだを動かすはたらきをもつ骨格筋,心臓を拍動させる心筋,そして小腸や膀胱などの内臓器官の壁を構成し,それらを動かす 1 筋である。骨格筋と心筋では,筋繊維と呼ばれる細長い細胞が束になっており,その筋繊維の内部には多数の筋原繊維が規則正しく並ぶ。筋繊維を顕微鏡で観察すると,長軸方向に 2 がみられる。一方,1 筋では 2 はみられない。
骨格筋の運動は,運動神経を介して自分の意思によって制御できる。これに対して,心臓の拍動や小腸などの内臓器官の運動は,自分の意思に関係なく,主に自律神経によって制御されている。自律神経には,3 神経と 4 神経がある。3 神経の中枢は中脳,延髄,脊髄にあるのに対して,4 神経の中枢は脊髄にあり,いずれも 5 によってさらに統合的に調節されている。
〔文2〕
心臓と小腸を用いて次のような実験を行った。
実験1 摘出したマウスの心臓から2つの心房を切り出し,心房筋標本を作製した(心房筋標本 a と心房筋標本 b と呼ぶ)。心房筋標本を,37 ℃に保温した人工栄養液を満たした容器内に固定し,栄養液には十分な酸素を通気した。心房筋標本の一端を収縮測定装置に連結し,心房筋標本 a および b の収縮弛緩反応を測定した(図1—1)。心房筋標本のうち,心房筋標本 a は自発性の律動的な収縮弛緩(自動能)を示したが,心房筋標本 b は全く自動能を示さなかった(図1—2)。(ア) 次に,ウシの副腎をすりつぶして得た抽出液 X を,心房筋標本 a を固定した容器内の人工栄養液に加えると,この投与によって心房筋標本 a の自動能は増強された。
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図1—1 心房筋標本と小腸筋標本の収縮測定装置(模式図)
図1—2 摘出した心房筋標本 a および b の収縮弛緩反応
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実験2 マウスの腹部から小腸の一部を取り出した後,粘膜部を取り除いて小腸筋標本を作製し,図1—1の装置に固定した。この小腸筋標本の収縮弛緩反応に対する,自律神経末端(終末)から放出される神経伝達物質 Y と神経伝達物質 Z の作用を調べた。はじめに神経伝達物質 Y を小腸筋標本に投与すると筋は収縮し,その収縮は持続した。この収縮している筋標本に,さらに神経伝達物質 Z を投与すると,筋標本はすみやかに弛緩した。
〔文3〕
(イ) 心臓は,血液を送り出すポンプとしてはたらき,全身への酸素の供給と,全身からの二酸化炭素の回収に重要な役割をになっている。図1—3はヒトの心臓の断面図を示している。ヒトの心臓は4つの部屋(左右の心房と心室)からなるが,(ウ) 左心室壁は右心室壁に比べて厚い。左右の心室をへだてる壁を心室中隔というが,心室中隔には出生まで穴があいており,左右の心室は完全には分かれていない。通常この穴は,出生とともに閉じて心臓の形態は完成する。(エ) しかし,出生後もこの心室中隔の穴がふさがらず,心臓のポンプ機能がそこなわれることがある。
図1—3 ヒトの心臓の断面図(模式図)
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〔問〕
Ⅰ 文1について,文中の空欄1〜5に入る最も適切な語句を記せ。
Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。
A 実験1について。自動能を示した心房筋標本 a は右心房か左心房かを答えよ。また,なぜ心房筋標本 a だけが自動能を生じたのか。その理由を1〜2行程度で述べよ。
B 実験1の下線部(ア)について。副腎から得た抽出液 X に含まれるどのような物質がこの反応を引き起こすと考えられるか。その物質名を答えよ。また,この物質のように,特定の器官で産生され,血液循環を介して他の標的器官に作用する物質は,一般に何と呼ばれているか。その名称を答えよ。
C 心房筋標本 a は,通常,次ページの図1—4上段(投与前)のような自動能を示す。いま,実験2の神経伝達物質 Y と Z とを,それぞれ単独に心房筋標本 a に投与した。この時,心房筋標本 a は,神経伝達物質 Y および Z に対してどのような反応を示すと考えられるか。図1—4の選択肢(1)〜(3)よりそれぞれ選んで記号で答えよ。また,神経伝達物質 Y と Z の名称を答えよ。
D 心房筋標本 a の自動能は,ある薬物の投与により,図1—4の投与前の状態から,投与後の選択肢(3)のような状態に変化した。この自動能の変化に見られる2つの特徴を答えよ。また,この薬物を生体に投与した時,心臓の機能にはどのような変化が生じるか。先の2つの特徴と対応させて,それぞれ1行程度で答えよ。
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図1—4 心房筋標本 a の自動能に対する神経伝達物質 Y と Z の効果
Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。
A 下線部(イ)について。表1—1は,健常な人における,心臓の各部屋と心臓に出入りする血管内の血中酸素濃度についてまとめたものである。空欄1〜6にあてはまる状態はなにか。血中酸素濃度を高低に二分し,例にならって血中酸素濃度の状態が高い場合は「高」,低い場合は「低」と記せ。
表1—1 心臓に出入りする血管と心臓における血中酸素濃度の状態
B 下線部(ウ)について。左心室を形成する壁はなぜ右心室を形成する壁に比べて厚いのか。その理由を1〜2行程度で答えよ。
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C 下線部(エ)について。心臓のポンプ機能にどのような障害が生じると考えられるか。心臓内での血液の流れに着目して,以下の語句を用いて3行程度で答えよ。ただし,解答にはすべての語句を少なくとも1回は用いること。
(語句) 全身の臓器,右心室内圧,左心室内圧,血液,体循環,肺循環
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第2問
次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。
〔文1〕
植物の生育は,植物個体中のソースとシンクの機能に基づく分業により支えられている。ソースとは,物質を他の細胞へ供給する細胞群のことであり,シンクとは,ソースから受け取った物質を利用して成長したり貯蔵したりする細胞群のことである。ソースからシンクへの物質の移動は転流と呼ばれ,これを仲介するのが維管束系である。
葉と根の関係を考えてみよう。葉は光合成で炭酸同化を行い,その同化産物の一部を(ア) スクロースの形で根に供給する。一方,根は土壌より無機窒素化合物を吸収し,(イ) それをそのまま葉に供給したり,(ウ) 根でアミノ酸に同化してから葉に供給したりする。このように,葉は根に対して炭酸同化産物のソースとなっており,根は葉に対して窒素化合物のソースとなっている。葉と根はこうして獲得した炭素と窒素を使って必要な成分を合成して成長していく。この合成に必要なエネルギーを得るために,葉も根も炭酸同化産物を呼吸基質とした好気呼吸を行う。この呼吸は一日中行われるので,昼間に蓄積された炭酸同化産物は夜間に消費される。再び蓄積が始まるのは,葉に(エ) 補償点以上の強さの光が当たる明るさになってからである。
〔文2〕
イネは栄養成長期に十数枚の葉を順次つける(注2−1) 。(オ) 1枚の葉の一生には,4つの段階がある。すなわち,茎頂分裂組織からの分化の段階,成長の段階,成熟葉として活動する段階,老化の段階である。分化直後の葉は,葉緑体が未発達である。葉の成長段階では,転流してくる窒素の7割以上が葉緑体の発達に使われる。葉緑体の成熟は,出葉した葉の先端部分より始まり,完全展開時に葉全体におよぶ。これ以降を成熟葉と呼び,葉は盛んに光合成を行う。ある時期がくると葉緑体の光合成装置が分解され,炭酸同化速度が低下していく。これが老化の段階である。図2—1は,栄養成長期の後期にあるイネがつけた1枚の葉の窒素量と炭酸同化速度の変化を観察した例である。この図からわかるように,老化段階では葉が保持する窒素量も減少している。その理由は,光合成装置に含まれるタンパク質の分解により生じるアミノ酸に何らかの動きが起きているからである。何が起きているかを知るための観察結果が,図2—2と表2—1である。図2—2は,イネの生育にともなう第5葉〜第9葉の窒素量の変化を観察した結果である。また,図2—2の矢印の時点において第6葉と第8葉の師管から採取した液のアミノ酸濃度を測定した結果が,表2—1である。
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(注2—1) 種子は発芽すると,まず子葉を生じる。その次に生じる葉が第1葉で,以後順に第2葉,第3葉と呼ぶ。相対的に数字の小さい葉を下位の葉,大きい葉を上位の葉と呼ぶ。葉の原基は,それより下位の葉が作る鞘状構造の中に形成される。葉の伸長とともに鞘状構造の外に出た時点を出葉と呼び,それ以上伸長しなくなった時点を完全展開と呼ぶ。第6葉以降(栄養成長期の後期)では,出葉後7日程度で完全展開する。
図2—1 イネの葉の一生における窒素量と炭酸同化速度の変化
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図2—2 イネの生育にともなう第5葉〜第9葉の窒素量の変化
矢印は,表2—1に示される師管液を採取した時点をあらわす。
表2—1 図2—2の矢印の時点における第6葉と第8葉から採取した師管液のアミノ酸濃度(全アミノ酸を合算した値)
〔文3〕
最後に,イネの一生におけるソースとシンクの移り変わりを考えてみよう。
イネの種子は,胚乳に 1 と貯蔵タンパク質を蓄積している。発芽時には胚から 2 が分泌され,これに応答して胚乳中の 1 と貯蔵タンパク質がそれぞれ糖とアミノ酸に分解される。胚はこれらを栄養素として利用する。すなわち,胚は胚乳をソースとして 3 栄養的に生育している。この生育は第3葉が完全展開するまで持続し,以後は,葉での炭酸同化と根での窒素吸収に依存した 4 栄養に移行する。栄養成長期のイネは,下位葉から上位葉への窒素の転流を繰り返しながら,十数枚の葉を成長させる。
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茎頂分裂組織が穂に分化すると生殖成長が始まる。生殖成長期の初期には,葉から転流されてくる窒素を用いて花の形成と茎の伸長が進行する。花が開き受粉すると,種子を構成する胚と胚乳が形成される。以後は胚乳が主要なシンクとなる。炭素に関しては,上位の数枚の葉がソースとなり,炭酸同化産物の転流がおこる。窒素に関しては,(カ) すべての葉や茎がソースとなり,それまでに蓄えていた窒素の大部分が転流される。炭素と窒素を十分に蓄積して成熟した胚乳は,胚とともに種子となる。この種子は,5 の作用により休眠する。
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〔問〕
Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。
A 下線部(ア)について。スクロースの転流を仲介する維管束系の組織は何であるかを記せ。
B 下線部(イ)について。無機窒素化合物の転流を仲介する維管束系の組織は何であるかを記せ。
C 下線部(ウ)について。アミノ酸の転流を仲介する維管束系の組織は何であるかを記せ。
D 下線部(エ)について。光の補償点の定義を2行程度で述べよ。
Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。
A 図2—2について。矢印の時点において,第6葉と第8葉は,下線部(オ)に示される4つの段階のいずれであるか。その根拠とともに,それぞれ1〜2行で答えよ。
B 表2—1について。師管液中の全アミノ酸濃度が第6葉で第8葉よりも高くなっているのは,第6葉で何が起きているからか。2行程度で述べよ。
C 図2—1に示した葉は,下表(表2—2)の各生育時期において,炭素ならびに窒素に関して,ソース,シンク,あるいはソースとシンクの機能を果たしている。表2—2の空欄1〜6では,ソースあるいはシンクのどちらのはたらきが主となるかを答えよ。
表2—2 図2—1に示した葉の各生育時期における機能
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Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。
A 空欄1〜5に入る最も適切な語句を記せ。ただし,空欄2と5には,植物ホルモンの名称を記せ。また,空欄3と4には,独立と従属のどちらか適切なものを記せ。
B 下線部(カ)について。図2—3をもとに,完熟した種子(穂の分化後70日の段階における種子)が蓄えた窒素のうち,茎葉部から転流してきたものはおよそ何割であるかを,計算式を示して答えよ。ただし,穂の分化後30日までは花の形成の期間である。また,種子の形成期には,茎葉部から穂へ転流される窒素はすべて種子に蓄えられるものとし,茎葉部から根への転流も無いものとする。
図2—3 種子の成熟にともなう茎葉部と穂の窒素量の変化
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第3問
次の文1と文2を読み,Ⅰ〜Ⅶの各問に答えよ。
〔文1〕
(ア) 生物の形や色などの個々の形質は,対応する遺伝子によって受け継がれ,決定されている。多くの生物は,両親から受け継いだ1対の遺伝子を有している。しかし,これら対をなすそれぞれの遺伝子は必ずしも同一とは限らない。このような遺伝子を対立遺伝子と呼ぶ。すなわち,生物の形質はさまざまな対立遺伝子によって決定されている。対立遺伝子は,大昔の祖先型の遺伝子から進化してきたと考えられている。出発点となる祖先型の遺伝子が子孫に伝わる間に,突然変異により新しい対立遺伝子が生じ,その結果,何種類もの対立遺伝子が受け継がれてきた。突然変異の多くは,(イ) DNA の複製時におこる塩基配列の偶然の変化であり,予測することは不可能である。細胞分裂には,個体が成長する時の 1 分裂と,配偶子形成時に染色体数が半減する 2 分裂があるが,これらにおいて,最終的に配偶子に伝わった突然変異だけが子孫に受け継がれる。このような突然変異の蓄積により生物は進化してきた。突然変異は,生物の生存または繁殖に影響しない(中立的)か有害な場合がほとんどであり,有益な突然変異は少ない。突然変異はある頻度で常に起こっている。しかし,生存または繁殖に有害な対立遺伝子は,3 により取り除かれていくため,その種類は増えつづけるわけではない。
中立的な突然変異により生じた対立遺伝子が,生物の集団内に蓄積されるかどうかは,偶然的な効果によっている。通常,このような中立的な突然変異により生じた新しい対立遺伝子は,出現した後の数世代の間に消失する。しかし,ある確率で,古い対立遺伝子が新しい対立遺伝子に置き換わる。この確率は,生物集団の大きさで決まる。このことから,一定の大きさの生物集団では,中立的な突然変異による分子進化(注3—1) は一定速度で起こる,ということができる。
(注3—1) 分子進化:遺伝情報をになう DNA の塩基配列やいろいろなタンパク質のアミノ酸配列に関する進化。
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〔文2〕
近年,さまざまな生物のゲノム配列が決定され,DNA の塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列を生物間で比較することが盛んに行われている。その結果,多様な生物種で類似した塩基配列をもつ遺伝子が見つかった。このような遺伝子は相同遺伝子と呼ばれ,共通の祖先に由来する,同じような構造や機能をもつ遺伝子であると考えられる。
複数の種において,相同遺伝子の DNA 塩基配列やコードするタンパク質のアミノ酸配列を比べると,多くの場合,置換が起こっている。このような置換のほとんどは中立的な突然変異によるものであり,タンパク質の機能をまったく変化させないか,変化させてもわずかである。したがって,(ウ) 中立的な突然変異により生じる,ある配列内で起きる塩基またはアミノ酸の置換の数は,進化の過程で,生物が異なる種に分岐してからの年数に正比例すると考えられる。通常,(エ) あるタンパク質の分子進化の速度は,一定年数あたりにおける1アミノ酸あたりの置換率として表すことができる。また,(オ) 進化の過程でタンパク質のアミノ酸が置換する速度は,タンパク質によって異なり,さらに同一のタンパク質のアミノ酸配列内でも一様ではない。
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〔問〕
Ⅰ 文1の空欄1〜3に入る最も適切な語句を記せ。
Ⅱ 文1の下線部(ア)について,以下の小問に答えよ。
A 単一の遺伝子の変異により引き起こされる,あるヒトの遺伝病 S について調べたところ,下のような家系図が得られた(図3—1)。遺伝病 S の原因となる対立遺伝子は,優性遺伝子と劣性遺伝子のどちらであるかを,その根拠とともに2行程度で述べよ。ただし,第一世代の個体1と第二世代の個体1と6は,遺伝病 S の原因となる対立遺伝子をもっていないとする。
図3—1 遺伝病 S についての家系図
B この遺伝病 S のような遺伝様式を何と呼ぶか記せ。また,その遺伝様式になると判断した根拠を2行程度で述べよ。
C 第三世代の個体6と遺伝病 S の原因となる対立遺伝子をもっていない男性との間に子供が生まれたとする。生まれた子供が遺伝病 S になる確率を,子供が男性の場合と女性の場合について,それぞれ記せ。
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Ⅲ 文1の下線部(イ)について。以下の(1)〜(5)から正しくないものを2つ選べ。
(1) DNA 複製は,DNA リガーゼが鋳型鎖に相補的な塩基をもつヌクレオチドをつぎつぎに結合させることによって進行する。
(2) DNA 複製時以外に紫外線などにより DNA が損傷を受けた場合,生物はその損傷を修復することができる。
(3) DNA 複製は,細胞分裂の前期に行われ,引き続いて起こる核分裂,細胞質分裂によって細胞は分裂する。
(4) DNA 複製は,原核生物では1つの起点から,真核生物では複数の起点から進行する。
(5) DNA 複製において,遺伝子の DNA の塩基配列に変化を生じる突然変異は遺伝子突然変異と呼ばれる。
Ⅳ 文2の下線部(ウ)について,以下の小問に答えよ。
A 生物の類縁関係を模式的に表した図を系統樹と呼ぶ。4種類の生物種 a〜d の進化系統関係を明らかにするために,あるタンパク質 X のアミノ酸配列を互いに比較し,アミノ酸の違いを数で表した(表3—1)。そして,この表をもとに系統樹を作成した。
生物種 a〜d を表す系統樹として最も適切なものはどれか。次ページの(1)〜(4)から1つ選べ。ただし,系統樹の枝の長さは生物の進化の時間とは直接対応しないものとする。
表3—1 タンパク質 X のアミノ酸置換数
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B 化石を用いた研究から,哺乳類 a と哺乳類 b とは今から約8000万年前に共通祖先から分岐したと推定されている。哺乳類 a の祖先と魚類 d の祖先とが共通祖先から分岐したのはおよそ何年前と考えられるか,(1)〜(4)から最も適切なものを1つ選べ。
(1) 2億3000万年前
(2) 2億9000万年前
(3) 3億9000万年前
(4) 4億3000万年前
Ⅴ 文2の下線部(エ)について。表3—1のタンパク質 X は140アミノ酸からなるタンパク質であり,哺乳類 a と哺乳類 b とは今から8000万年前に分岐したとする。タンパク質 X の分子進化の速度を,10億年あたりにおける1アミノ酸あたりの置換率として計算し,有効数字2桁で答えよ。ただし,2つの系統間のアミノ酸置換数は,分岐後の2つの系統におけるアミノ酸の置換の合計であることに留意すること。
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Ⅵ 文2の下線部(オ)について。以下の(1)〜(5)から正しくないものを2つ選べ。
(1) 酵素では,基質と結合する基質結合部位のアミノ酸が置換すると,酵素としてのはたらきが損なわれるため,基質結合部位のアミノ酸の置換速度は一般に非常に小さい。
(2) フィブリンは前駆体である血液凝固因子フィブリノーゲンからつくられるが,その際切り出されて捨てられるフィブリノペプチドのアミノ酸の置換速度は,フィブリンの置換速度に対して大きい。
(3) インスリンは2本のポリペプチドが2か所で結合したものであるが,それぞれが独立にはたらくことができるため,どのアミノ酸も同じ置換速度を示す。
(4) 分子量の大きなタンパク質は,多くのアミノ酸で構成されているため,アミノ酸の置換する速度も一般に大きい。
(5) 視覚に頼っている動物では,目の水晶体をつくっているクリスタリンのアミノ酸の置換速度は小さいが,洞穴にすむ視力を失った動物では置換速度が大きくなっている。
Ⅶ 生物の分子進化に関連する以下の小問に答えよ。
A 原核生物種の系統関係を調べるために,原核生物の複数の種において,あるタンパク質 Y の相同遺伝子の塩基配列を比べたところ,3塩基ごとに置換速度が大きいという法則性があった。その理由を3行程度で述べよ。
B 真核生物の複数の種において,あるタンパク質 Z の相同遺伝子の塩基配列を比べたところ,塩基配列の置換速度が小さい領域と大きい領域が交互に存在していた。また,問Ⅶ—Aの3塩基ごとに置換速度が大きいという法則性は,置換速度が小さい領域だけにあてはまった。その理由を合わせて4行程度で述べよ。
第1問 心臓のリズムと血液の流れ — ペースメーカー・自律神経・心室中隔の穴 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 筋肉と自律神経、心臓のしくみを順に問う問題。文1は筋肉の種類と自律神経の基本、文2はマウスの心房と小腸を取り出して縮み方を記録する実験、文3はヒトの心臓の4つの部屋と血液の流れ。
文2を読むときの道具は2つある。1つ目は、心臓はそれ自身の中にリズムをつくる場所(ペースメーカー)を持っている こと。神経がつながっていない取り出した標本でも打つのはこのため。2つ目は、自律神経の物質は、受け取る器官によってはたらきが逆になることがある こと。小腸を縮める物質が、心臓ではゆっくりにする。
文3では、血液が「全身 → 右心房 → 右心室 → 肺 → 左心房 → 左心室 → 全身」と8の字に回ることを思い出し、どこで酸素を受け取り、どこで使うかを順にたどる。
Ⅰ 空欄1:内臓の壁をつくる筋肉は平滑筋。骨格筋と心筋は横じま(横紋)が見える横紋筋だが、平滑筋には横じまが見えない(空欄2)。
空欄3・4:自律神経は交感神経と副交感神経。中枢が中脳・延髄・脊髄(の下のほう)にあるのが副交感神経、脊髄(胸と腰のあたり)にあるのが交感神経。
空欄5:両方の自律神経をまとめて調節するのは、間脳の視床下部。体温や血糖の調節の中枢でもある。
答え 1 平滑,2 横じま(横紋),3 副交感,4 交感,5 間脳の視床下部
Ⅱ A 図1—2で、標本 a だけが神経もつながっていないのにひとりでに打っている。心臓の中で、ひとりでに周期的な興奮をつくる所は洞房結節(ペースメーカー)で、これは右心房 の壁(大静脈が入ってくるあたり)にある。
左心房にはこの場所が無いので、ふつうの心筋は外から興奮が伝わってこない限り縮まない。取り出した標本では伝わってくる興奮が無いので、b は打たない。
ただし「洞房結節のほかには自動能がまったく無い」わけではない。房室結節など、ほかにも弱い自動能をもつ所があり、条件によってはそこから興奮が起こることもある。ふだんは洞房結節がいちばん速く打つので、心臓全体のリズムを決めている。ここでは、実験で b が打たなかったことから「a には洞房結節がある」と考える。
デモで標本 b(左心房)に切りかえると、膜電位の線が平らなままで打たない(模型では b に自動能を与えていないので、何を入れても打たない)。
答え 右心房。右心房には,自発的に周期的な興奮を発生して拍動のリズムをつくる洞房結節(ペースメーカー)があるから。(54字)
Ⅱ B 副腎の髄質は、交感神経がはたらくときに血液中にアドレナリンを出す。アドレナリンは心臓の拍動を速く強くするので、抽出液 X で自動能が強まったことと合う。
このように、決まった器官(内分泌腺)で作られ、血液に乗って運ばれ、離れた器官(標的器官)にはたらく物質をホルモンという。
Ⅱ C まず実験2から Y・Z を決める。小腸の筋肉は、副交感神経がはたらくと縮んで動きが活発になり、交感神経がはたらくとゆるむ。Y で縮んだので Y は副交感神経の末端から出るアセチルコリン、Z でゆるんだので Z は交感神経の末端から出るノルアドレナリン。
次に心臓へのはたらき。副交感神経は心臓の拍動をゆっくり弱くし、交感神経は速く強くする。図1—4の選択肢の記録の山を数えると(1秒の線で測る)、投与前は1秒に約 4.5 回、(1) は変化なし、(2) は約 3.2 回で山も低い、(3) は約 6.2 回で山も2倍ほど高い。
アセチルコリンは「回数が減り、山も低い」(2)、ノルアドレナリンは「回数が増え、山も高い」(3)。デモでは、膜電位の上がり方の傾きが変わることで回数が変わる様子を見せている。同じアセチルコリンで、小腸は縮み、心臓はゆっくりになる ところが、この問いのねらい。
答え Y:(2),Z:(3)。Y はアセチルコリン,Z はノルアドレナリン
Ⅱ D 図1—4の (3) を投与前と比べると、2つの点がちがう。1つは山と山の間がつまって、同じ時間の山の数が多い(拍動の頻度が増える)こと。もう1つは山が高い(1回の収縮が強い)こと。
生体の心臓に当てはめると、頻度が増えるのは心拍数が増えること。収縮が強くなるのは、1回の拍動で押し出す血液の量(1回拍出量)が増えること。
心臓が1分間に送り出す血液の量は「心拍数 × 1回拍出量」なので、両方が増えると全身へ送られる血液は大きく増え、血管の太さなどほかの条件が同じなら血圧も上がる。図1—4 から直接わかるのは「打つ回数が増える」「1回の収縮が強くなる」までで、血圧は血管の側の条件にもよる。特徴を2つ書き、それぞれに対応する生体での変化を1行ずつ書く。
答え 特徴:①拍動の頻度(一定時間あたりの回数)が増加した。②1回ごとの収縮の大きさ(収縮力)が増大した。 生体では:①心拍数が増加し,一定時間に血液を送り出す回数が増える。(28字)②1回の拍出量が増加し,心拍出量が増えて(ほかの条件が同じなら)血圧が上昇する。(39字)
Ⅲ A 血液の流れをたどる。全身で酸素を使った血液は大静脈から右心房に入り(低)、右心室から肺動脈を通って肺へ行く(右心室・肺動脈も低)。肺動脈は「動脈」だが、中の血液の酸素は少ない ことに注意する。
肺で酸素を受け取った血液は肺静脈を通って左心房に入り(高)、左心室から大動脈で全身へ送られる(左心室も高)。肺静脈は「静脈」だが、酸素は多い 。
健常な人では左右の心室の間に穴が無いので、右側の部屋はすべて低、左側の部屋はすべて高になる。デモでは、ふつうの値で血液を流し、8か所とも表の例と同じ高低に分かれることを確かめている。
答え 1 高,2 低,3 低,4 低,5 高,6 高
Ⅲ B 右心室は肺へ、左心室は全身へ血液を送る。同じ量の血液を送るのに必要な圧力は、通り道の抵抗が大きいほど高い 。
肺の血管は短く太く、並んで枝分かれしているので血液の通りにくさ(抵抗)が小さく、低い圧力(ふつう最高で 25 mmHg くらい)で送れる。全身は頭から足先まで長く細い血管が張りめぐらされているので、ずっと高い圧力(最高で 120 mmHg くらい)が要る。
高い圧力を出すには筋肉を多くする必要があるので、左心室の壁は厚い。
答え 左心室は体循環で全身へ血液を送り出すため,肺循環へ送る右心室より大きな抵抗に打ち勝つ高い圧力を生む必要があるから。(57字)
Ⅲ C Ⅲ B から、生まれた後の心臓では左心室内圧が右心室内圧よりずっと高い。心室中隔に穴があると、左心室が縮むとき、圧力の高いほうから低いほうへ、つまり左心室から右心室へ 血液が流れこむ。
右心室に入った血液は肺動脈から肺循環へ送られ、また左心房・左心室に戻ってくる。この分の血液は全身へは行かず、肺と心臓の間を回るだけになる。
その結果、左心室が送り出す量が同じなら、体循環へ出ていく血液が減り、全身の臓器へ運ばれる酸素が足りなくなる(心臓がもっと多く送り出して補うこともできるが、そのぶん心臓と肺に負担がかかる)。デモで穴を通る割合を 30% にすると、全身へ行く血液は 5 L/分 から 3.5 L/分 に減る。全身へ同じ量を送ろうとすると心臓は余分に働く必要がある。6つの語句(全身の臓器・右心室内圧・左心室内圧・血液・体循環・肺循環)を全部使って、この流れを3行にまとめる。
なお本文の「心室中隔には出生まで穴があいており、通常この穴は出生とともに閉じる」は、問題の原文どおり(元の冊子で確かめた)。実際のヒトでは、心室中隔はふつう生まれる前にできあがっていて、生まれるときに閉じるのは心房の間の穴(卵円孔)である。この問題では本文の設定どおりに考える。
答え 左心室内圧は右心室内圧より高いので,左心室が収縮するたびに血液の一部が穴を通って右心室へ流れこみ,肺循環に戻ってしまう。そのため左心室が送り出す量が同じなら体循環へ行く血液が減り,全身の臓器へ十分な酸素を運べなくなる。(109字)
第2問 イネの葉のソースとシンク — 1枚の葉の一生と窒素の使い回し 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 植物の体の中で、物を「出す側」(ソース)と「受け取って使う・ためる側」(シンク)が分業している、という見方で、イネの一生を読む問題。文1は葉と根の関係、文2は1枚の葉の一生と下の葉から上の葉への窒素の移動、文3は種子の発芽から種子ができるまで。
一番の道具は、グラフの量が増えているときはその部分が受け取っている(シンク)、減っているときは出している(ソース) という読み方。図2—1・図2—2・図2—3 は、どれもこの見方で読める。
もう1つは、窒素は葉の中でおもに光合成の装置(葉緑体のタンパク質)として使われていること。葉が老化するときにこのタンパク質が分解されると、窒素はアミノ酸になって別の場所へ運ばれる。
Ⅰ A 葉で作られた糖(スクロース)は、師管を通って根や若い葉・種子などへ運ばれる。師管は生きた細胞がつながった管で、上にも下にも運べる。問いは「維管束系の組織」なので、組織の名前の師部と、その中の管の師管を並べて答える(Ⅰ B・Ⅰ C の木部と道管も同じ)。
Ⅰ B 根で吸収した無機窒素化合物(硝酸イオンなど)は、水といっしょに道管を通って葉へ上がる。道管は死んだ細胞の管で、根から吸った水が葉の蒸散に引っぱられて上へ流れる。
Ⅰ C 根でアミノ酸に作りかえた窒素も、根から葉へ運ぶので、水の流れに乗って道管を上がる。「アミノ酸は師管」と決めつけず、どこからどこへ運ぶか で考える。根 → 葉 なら道管、葉 → ほかの所 なら師管。
Ⅰ D 光が弱いと、光合成で取りこむ二酸化炭素より、呼吸で出す二酸化炭素のほうが多い。光を強くしていくと、ある強さで2つがつり合い、外から見た二酸化炭素の出入り(見かけの光合成速度)が 0 になる。この光の強さが補償点。
デモでは、光を弱くしていくと取りこむ矢印が細くなり、出す矢印と同じ太さになった所がグラフの 0 の点になる。補償点より明るくないと、昼間に糖を増やせない。ただし昼間に増えても、夜の呼吸の分があるので、1日の合計ではへることもある(補償点を少し超えるくらいの明るさのとき)。文1の「補償点以上の強さの光が当たる明るさになってから蓄積が始まる」はこのことを言っている。
答え 光合成による二酸化炭素の吸収速度と呼吸による二酸化炭素の放出速度が等しくなり,見かけの光合成速度が0になるときの光の強さ。(61字)
Ⅱ A 図2—2の各葉の線は、第5葉が 0 日、第6葉が 7 日、第7葉が 14 日…と、7 日ごとに始まっている。線の始まりを出葉と見ると、矢印の日(約 36 日)は、第6葉は出葉から約 29 日、第8葉は約 15 日。
図2—1の1枚の葉の時間に当てはめる。出葉後 7 日で完全展開し(ここから成熟葉)、約 20 日で窒素量が最大になってから減っていく(光合成も下がる=老化)。
第6葉は窒素量がすでに山を過ぎて減っているので老化の段階。第8葉は完全展開は過ぎているが、窒素量は山の手前で、まだ減っていないので成熟葉として活動する段階。「窒素量が増えているか減っているか」と「出葉からの日数」の両方を根拠にできる。
答え 第6葉:老化の段階。出葉後約29日たち,窒素量が最大を過ぎて減少しているから。(39字) 第8葉:成熟葉として活動する段階。出葉後約15日で完全展開を過ぎ,窒素量が最大付近でまだ減少していないから。(54字)
Ⅱ B 師管液は、その葉から外へ運び出される液。第6葉の師管液のアミノ酸は、第8葉の約 2 倍の濃さ。
Ⅱ A から第6葉は老化の段階。文2に、老化では光合成装置が分解され、それに含まれるタンパク質の分解でできたアミノ酸に「何らかの動き」がある、とある。第6葉では、タンパク質が分解されてできたアミノ酸が、師管に入って運び出されている 。行き先は、同じ時期に窒素量が急に増えている上の葉(第9葉など、成長中の葉)である。
答え 第6葉は老化の段階にあり,葉緑体の光合成装置のタンパク質が分解されて生じたアミノ酸が,師管を通って上位の成長中の葉へ転流されているから。(68字)
Ⅱ C 表の4つの期間を、図2—1の2本の線で1つずつ見る。
成長開始から出葉まで:葉はまだ下の葉のさやの中で、光が当たらず光合成をしていない(炭酸同化速度 0)。炭素も窒素も外から受け取って育つので、どちらもシンク。
出葉から 7 日まで(表に書いてある):炭素は光合成を始めつつ、自分が伸びるためにも受け取るので両方、窒素はシンク。
7〜20 日:完全展開して伸び終わり、光合成は急に上がって 20 日で最大になる。作った糖は外へ出すので炭素はソース。窒素量はまだ増えている(0.70 → 0.99)ので窒素はシンク。
20〜40 日:光合成は下がるがまだ続いていて、炭素はソース。窒素量は減っている(0.99 → 0.78)ので窒素はソース。炭素と窒素で役目の切りかわる時期がずれる のがこの表のポイント。
答え 1 シンク,2 ソース,3 ソース,4 シンク,5 シンク,6 ソース
Ⅲ A イネの種子の胚乳にたくわえられているおもな物はデンプン(空欄1)。発芽のとき、胚からジベレリン(空欄2)が出て、胚乳のまわりの糊粉層にアミラーゼなどの分解酵素を作らせ、デンプンを糖に、貯蔵タンパク質をアミノ酸に分解する。
胚は胚乳の栄養にたよって育つので従属栄養(空欄3)。葉で光合成をし、根で窒素を吸えるようになると、自分で有機物を作る独立栄養(空欄4)に移る。
できた種子は、アブシシン酸(空欄5)のはたらきで休眠し、すぐには発芽しない。
答え 1 デンプン,2 ジベレリン,3 従属,4 独立,5 アブシシン酸
Ⅲ B 図2—3から、穂の分化後 30 日と 70 日の値を読む。茎葉部は 100 → 35、穂は 20 → 100。
30 日までは花の形成の期間なので、そのときまでに穂に入っていた 20 は種子ではない。種子にたまった窒素は 30〜70 日に穂で増えた 80 。
条件から、この間に茎葉部から出た窒素はすべて種子へ行き、根へは行かない。茎葉部の減った 65 が、茎葉部から種子へ来た量。残りの 15 は、この間に根が新しく吸った窒素。
割合は 65 ÷ 80 で約 0.8。デモでは、窒素を粒にして1日ごとに茎葉部から穂へ動かす計算でも同じ割合になる(ただしこれは同じ差し引きの考えを粒で数え直したもので、窒素の出どころを印をつけて実験で分けた値ではない)。
この 0.8 は、問題が考えている「差し引き」の読み方による。もし同じ期間に、根から吸った窒素がいったん茎葉部に入ってから種子へ出ていく流れもあれば、茎葉部から出た量は 65 より多くなりうる。また 30 日までに穂に入っていた 20 を種子の分に数えない、という読み方も使っている。問題の条件(茎葉部から出た窒素はすべて種子へ)にそって、差し引きで出す答えである。花の分の 20 を引き忘れて 65 ÷ 100 としないように注意する。
答え 30日から70日に茎葉部の窒素は100−35=65減り,穂(種子)の窒素は100−20=80増えた。65÷80≒0.81より,およそ8割。(69字)
第3問 遺伝病の家系と分子進化 — 伴性遺伝・系統樹・3文字目の置換 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 遺伝子が親から子へどう伝わるか(文1・問Ⅱ)と、長い時間の中で遺伝子がどう変わっていくか(文2・問Ⅳ〜Ⅶ)を続けて問う問題。
家系図の問題では、「この仮説なら、図のどの人も矛盾なく説明できるか」を1人ずつ確かめる のが道具になる。1人でも説明できない人がいれば、その仮説は捨てる。
分子進化の問題では、中立説の考え方が中心になる。生物が生きるのに影響しない(中立な)置換は自然選択で取りのぞかれず、時間に比例してたまっていく 。だから、ちがいの数から分かれた年代が計算でき(分子時計)、大事でない場所ほど速く変わる。
Ⅰ 空欄1・2:からだが成長するときの分裂は体細胞分裂、配偶子(精子・卵)を作るときに染色体の数が半分になる分裂は減数分裂。からだの細胞(体細胞)に起きた突然変異は、その体の中だけにとどまり、子には伝わらない。ただし、配偶子のもとになる細胞(生殖細胞の系列)も減数分裂の前には体細胞分裂でふえるので、そこで起きた突然変異は子に伝わりうる。「どの分裂で起きたか」ではなく「配偶子につながる細胞で起きたか」で決まる。本文の「最終的に配偶子に伝わった突然変異」もこの意味。
空欄3:生存や繁殖に不利な対立遺伝子をもつ個体は子を残しにくく、その遺伝子は世代とともに減っていく。これが自然選択。
Ⅱ A 第三世代の2に注目する。この人は発病しているが、父(第二世代の1)も母(第二世代の2)も発病していない。
もし原因の遺伝子が優性なら、その遺伝子を1つでももつ人は発病する。子が原因の遺伝子をもつなら、父か母のどちらかから受け継いだはずで、その親も発病しているはず。両親とも発病していないのに子が発病しているので、原因の遺伝子は劣性 。
デモで「常染色体・優性」「X染色体・優性」を選ぶと、第三世代の2で必ず矛盾が出て、合う組み合わせが 0 通りになる。
答え 劣性遺伝子。第三世代の2は発病しているが,その両親(第二世代の1と2)はどちらも発病していない。優性なら発病した子の親の少なくとも一方は発病するから。(75字)
Ⅱ B 劣性だとわかったので、次は常染色体か X染色体かを決める。
常染色体上の劣性なら、第三世代の2は原因の遺伝子を2つもつ(aa)。1つは父から受け継ぐ必要があるが、ただし書きで第二世代の1は原因の遺伝子をもたない 。だから常染色体ではありえない。
X染色体上の劣性なら説明できる。男性は X を1本しかもたず、その X は母から来る。母(第二世代の2)が原因の遺伝子を1つもつ保因者(発病しない)なら、息子は 1/2 の確率で発病する。第一世代の2(発病した女性)の息子2人がどちらも発病し、娘2人が発病していないことも合う。この遺伝のしかたを伴性遺伝という。
デモでは、全員の遺伝子型の組み合わせを全部数えて、X染色体・劣性だけが 4 通り合うことを確かめている。
答え 伴性遺伝(X染色体上の劣性遺伝)。劣性なのに第三世代の2の父(第二世代の1)は原因遺伝子をもたない。息子のX染色体は母からの1本だけなので説明できる。(75字)
Ⅱ C 第三世代の6の父(第二世代の5)は発病した男性なので、原因の遺伝子をもつ X を1本もつ。娘には父の X が必ず伝わるので、第三世代の6は必ず保因者 (XᴬXᵃ)。母(第二世代の6)は原因をもたないので、もう1本は正常な X。
男の子は母から X を1本もらう。正常な X と原因の X が半分ずつなので、発病するのは 1/2。女の子は父から必ず正常な X をもらうので、母から原因の X をもらっても発病しない(保因者になるだけ)。デモでは子を 4 万人さいころで生ませて、この割合になることを確かめている。
Ⅲ (1) は、ヌクレオチドを鋳型に合わせてつないでいくのは DNA ポリメラーゼで、DNA リガーゼは切れた DNA 断片どうしをつなぐ酵素。誤り。
(3) は、DNA の複製は分裂の前期ではなく、分裂が始まる前の間期(S期)に行われる。誤り。
(2) は正しい(紫外線などの損傷は修復のしくみで直される)。(4) も正しい(大腸菌などの原核生物の環状 DNA は複製の起点が1つ、真核生物の長い DNA は起点がたくさんある)。(5) も正しい(塩基の並びが変わる突然変異は遺伝子突然変異と呼ぶ)。
Ⅳ A 表3—1 で一番ちがいが少ないのは a と b(15)。この2つが最後に分かれた。
次に、4種を2組に分ける分け方の「ちがいの和」を比べると、ab+cd=77、ac+bd=140、ad+bc=144。a・b の組と c・d の組に分ける形が一番よく合う 。選択肢でこの形になるのは (1)・(2)・(3) で、ちがいは木のねもと(一番古い分かれ目)をどこに置くか。
c と a・b のちがい(62・64)は、d と a・b のちがい(80・78)よりずっと小さいので、c と d が同時に分かれた (1) ではなく、c は d より a・b に近い(d より後に a・b から分かれた)。魚類から両生類や哺乳類などの陸の脊椎動物が分かれたことを合わせると、魚類 d が一番外側で (3)。
注意:c と d のちがい(62)は、c と a・b の平均(63)とほぼ同じなので、平均の数で機械的につなぐと (2) になってしまう。デモの「木のつなぎ方」で2つを見比べられる。
Ⅳ B 問Ⅴと同じ考えで、ちがいの数は分かれてからの年数に比例する。
a と b は 8000 万年前に分かれて、ちがいは 15。a と d のちがいは 80 なので、分かれたのは 8000 万年 × 80 ÷ 15 ≒ 4 億 3000 万年前。b と d(78)で計算しても約 4 億 2000 万年前で、一番近い選択肢は同じ。
Ⅴ ただし書きにあるように、a と b のちがい 15 は、分かれた後に a の系統で起きた置換と b の系統で起きた置換の合計 。1つの系統あたりでは 8000 万年に 7.5 個。
1アミノ酸あたりにすると 7.5 ÷ 140。これを 8000 万年(0.08 × 10億年)で割って、10億年あたりにする。
15 2 × 140 × 0.08 = 0.669 ⋯
デモでは、140 個のアミノ酸を2つの系統で 8000 万年ずつ、この速さでさいころを振って置きかえ、置換の回数の平均が 15 になることを確かめている。
Ⅵ 置換の速さは、その場所がどれだけ大事か(変わると困るか)で決まる。大事な場所の置換は自然選択で取りのぞかれるので遅く、大事でない場所は速い。
(1) 正しい。基質と結合する場所は、変わると酵素がはたらかなくなるので遅い。(2) 正しい。フィブリノペプチドは切り出されて捨てられる部分なので、変わっても困りにくく、とても速い(切り出される所の目印のように、変わると困る所も少しはある)。(5) 正しい。目を使わない洞穴の動物では、水晶体のクリスタリンが変わっても困らないので速くなる。
(3) は誤り。インスリンの2本の鎖(A 鎖・B 鎖)は S–S 結合でつながってはじめてはたらく。また鎖の中でも、受容体と結合する部位や S–S 結合をつくるシステインのように変わると困る場所と、そうでない場所があり、「どのアミノ酸も同じ」にはならない。(4) も誤り。長いタンパク質は置換の数の合計は多くなるが、1アミノ酸あたりの速さは長さでは決まらない 。デモで長さを 500 にしても 1アミノ酸あたりの速さは同じになる。
Ⅶ A アミノ酸は3つの塩基(コドン)で指定される。遺伝暗号表を見ると、同じアミノ酸を指定するコドンは、たいてい3番目の塩基だけがちがう (例:GCU・GCC・GCA・GCG はどれもアラニン)。
だから3番目の塩基が置換しても、アミノ酸は変わらないことが多い(同義置換)。デモで暗号表の全部のコドンを調べると、1文字変えてもアミノ酸が変わらない割合は 3文字目で約 69%、1文字目で約 4%、2文字目で 0%。
アミノ酸が変わらなければタンパク質のアミノ酸の並びは同じなので、はたらきにはほとんど影響せず(ほぼ中立)、自然選択で取りのぞかれにくい。ただし「並びが同じ」ことと「何の影響も無い」ことは同じではなく、コドンによって翻訳の速さなどが少し変わることもある。1・2文字目の置換はアミノ酸を変えてしまうことが多く、取りのぞかれやすい。この差が「3塩基ごとに速い」という形で見える。
答え 遺伝暗号には同じアミノ酸を指定するコドンが複数あり,3番目の塩基が置換してもアミノ酸が変わらないことが多い。このような置換はタンパク質のはたらきにほとんど影響しない(ほぼ中立的な)ので,自然選択で除かれにくく蓄積しやすいから。(113字)
Ⅶ B 真核生物の遺伝子の中には、アミノ酸を指定するエキソンと、指定しないイントロンが交互に並んでいる。イントロンは転写された後、スプライシングで切り取られる。
イントロンの塩基はアミノ酸にならないので、置換しても困らない所(機能的制約の弱い所)が多く、速く変わる。3つおきに区切って読まれることも無いので、3塩基ごとの山も無い。これが「速い領域」。
ただし「イントロンのどの塩基も中立」ではない。イントロンの両はしなど、スプライシングで切り取る場所の目印になる配列が変わると、正しく切り取れず、正常なタンパク質ができなくなることがある。そういう所は遅い。答えは「制約の弱い部分が多い」と書く。デモでは、イントロンの 1 割(両はしの 3 塩基ずつ)をこの目印として遅くしている(仮の値)。
エキソンはアミノ酸を指定するので、Ⅶ A と同じく、1・2番目の塩基の置換は取りのぞかれて遅く、3番目だけが比較的速い。これが「遅い領域」で、3塩基ごとの法則性はここだけに現れる。デモで真核生物に切りかえると、この交互の模様が見える。
答え 真核生物の遺伝子はエキソンとイントロンからなる。イントロンはスプライシングで除かれアミノ酸を指定しないので,機能的制約の弱い部分が多く置換速度が大きく,周期性も無い。エキソンではアミノ酸を変える置換が自然選択で除かれ速度が小さいが,3番目の塩基の同義置換は残るので周期性が現れる。(140字)