東大 過去問 2012年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

東大理系科目 AI解答・シミュレーション‹ 東大生物 2012‹ 生物2012

このページの出典

東京大学 第2次学力試験(前期)2012年 理科「生物」(東京大学がかつて公開したPDFの Internet Archive 保存版)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

修正履歴

お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

— 36 —

生 物

第1問

 次の文1と文2を読み,ⅠとⅡの各問に答えよ。

〔文1〕

 受精卵の細胞質には,将来の形態形成に重要な影響を及ぼす因子(母性因子)が,しばしば偏りをもって存在する。(ア)イモリの胚を一部縛ったり除去したりする実験は,このような母性因子の分布を知る手がかりとなる。胚発生では,胚の方向性(体軸)の決定が,からだのおおまかな形づくりに重要である。その1つである背腹軸も,ある母性因子が胚内で偏って存在することによって決められている。

 図1—1に示すように,アフリカツメガエルの胚では,受精のあと,1細胞期の間に,もともと植物極付近にあった背側化因子が,胚の表層の回転によって,精子進入点から離れる方向に移動する。この因子がある影響を及ぼすことによって,母性因子である A タンパク質が,胚内で偏って機能する。その後,ある遺伝子が特異的に発現することによって,神経などへの分化を周辺組織に誘導する 1 を形成する。なお,1 は,原腸胚の原口背唇部に相当する。

 イモリやアフリカツメガエルの胚では,原口背唇部を胚の腹側に移植すると,通常の発生では見られない二次胚ができる。このような二次胚は,胚の背側を決めるタンパク質をコードする伝令 RNA を胚に直接注入することでも形成される。ここで,A タンパク質をコードする伝令 RNA(A RNA)を用い,A タンパク質の機能を調べる目的で次の実験を行った。

— 37 —
図1—1 アフリカツメガエルの胚における,背側の決定のしくみ
図1—1 アフリカツメガエルの胚における,背側の決定のしくみ
— 38 —

実験1 アフリカツメガエルの受精直後の胚は,動物半球で表層の色が濃い。しかし,4細胞期胚を動物極側からよく見ると,4つの割球の動物極側の色はすべて同じではなく,やや色の濃い割球と薄い割球が,2つずつあることがわかる。これは,胚の背腹の向きを反映しており(図1—2,色の濃い方が腹側),背腹方向をこの色の偏りによって判別することができる。この時期に,背側の決定に関わるタンパク質をコードする伝令 RNA を注入すれば,背腹の決定に影響を与えることができる。(イ)図1—2の中央に示すように,A RNA をアフリカツメガエルの4細胞期胚の腹側割球に,ガラス注射針を用いて注入し,初期幼生になるまで発生させたところ,二次胚が形成された。

 次に,別の母性因子である B タンパク質をコードする伝令 RNA(B RNA)を用意した。B RNA を腹側割球に注入しても,目立った変化はおこらなかったが,図1—2の右に示すように,背側割球に注入すると,背側の構造が小さくなった初期幼生が得られた。このことから,B タンパク質には背側の決定を阻害する効果があることがわかった。なお,別の実験結果から,B タンパク質は A タンパク質のはたらきに対して影響を与えるが,A タンパク質は B タンパク質のはたらきに影響を与えないことがわかっている。

図1—2 アフリカツメガエルの胚への伝令 RNA の注入実験
図1—2 アフリカツメガエルの胚への伝令 RNA の注入実験
— 39 —

〔文2〕

 原腸形成は,受精後の胚全体で協調的におこる細胞運動である。アフリカツメガエルの胚では,原口背唇部が原口から胚の中にもぐり込むことによって,原腸形成がひきおこされる。もぐり込んだ中胚葉の細胞群は,外胚葉の内側を裏打ちするように伸び,動物極付近に達する。こうして,将来頭になる部分から尾になる部分にかけ,正中線(頭尾をむすぶ線)の背側に沿って中胚葉が配置される。このようにつくられた胚の基本的な構造をもとにして,尾芽胚期には胴部が伸び,胚が丸い形状から細長い形状へと変化して初期幼生へと発生する(図1—3)。

 では,中にもぐり込んだ中胚葉の細胞はどのように動くのだろうか。興味深いことに,中胚葉の細胞はおのおの,もぐり込む方向ではなく,もぐり込む方向と直交するように動く。正中線に向けて集まるように細胞が移動することによって,中胚葉の細胞群は全体としてもぐり込みの方向に伸びる(図1—4)。このような中胚葉の細胞運動に,どのようなタンパク質がかかわっているか,最近の研究で徐々に明らかになってきた。原腸形成時の細胞運動に関して,細胞内に存在する C タンパク質の機能を知るため,以下の実験をおこなった。

図1—3 アフリカツメガエルの胚の原腸形成とその後の発生(図は正中線に沿った縦断面を示す)
図1—3 アフリカツメガエルの胚の原腸形成とその後の発生(図は正中線に沿った縦断面を示す)
図1—4 原腸形成時の,胚の背側方向からみた中胚葉の細胞運動の模式図
図1—4 原腸形成時の,胚の背側方向からみた中胚葉の細胞運動の模式図
— 40 —

実験2 アフリカツメガエルの,原口が形成された直後の胚2個からそれぞれ,原口背唇部を含む外胚葉から中胚葉にかけての領域を四角に切り出し,内側どうしを貼り合わせる(図1—5)。この組織片(外植体)を約8時間培養すると,(ウ)外植体は細胞数をそれほど増やさないが,原腸形成を模倣するように形をかえる。この方法を用いると,胚の内部にもぐり込む中胚葉の細胞を,胚を輪切りにすることなく,そのまま観察することができる。

 はじめに,C タンパク質は細胞内のどこに存在するかを調べると,細胞質中で均一に分布せず,細胞膜付近の,ある2か所に偏って存在していた。この2か所の位置は,近隣の細胞で同じ方向性をもっていた。次に,C タンパク質の働きを阻害するタンパク質である dnC をコードする伝令 RNA(dnC RNA)を,4細胞期の背側割球に,C タンパク質を阻害するのに十分な量だけ注入した。この胚を用いて図1—5の実験をおこない,外植体を観察すると,(エ)通常胚を用いた外植体ではおこるはずの変形がおこらなかった。また,dnC RNA を注入した胚をそのまま発生させて初期幼生を観察したところ,(オ)体長が通常の初期幼生のものより短かった。なお,dnC RNA の注入で,細胞の分化は影響をうけなかった。

図1—5 実験2の概要
図1—5 実験2の概要
— 41 —

〔問〕

Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。

A 空欄1に適切な語を入れよ。

B 下線部(ア)について。2細胞期のイモリ胚を細い髪の毛でくくり,割球を分離すると,2つの割球からそれぞれ完全な個体が発生する場合だけでなく,片方の割球だけが完全な個体に発生し,もう片方の割球は正常に発生しない場合も生じる。これらの結果の違いはなぜ引き起こされるか。灰色三日月環という語を用いて2行程度で述べよ。

C 下線部(イ)について。この結果から,A タンパク質は背側の決定にどのようなはたらきをもつと考えられるか。理由とともに2行程度で述べよ。

D 実験1について。一定量の A RNA に B RNA を加えた混合液を,胚の腹側割球に注入した。加える B RNA の量を少しずつ増やした時に得られる結果として,最も適切なグラフはどれか。以下の(1)〜(6)から1つ選べ。

p41a

E A タンパク質と B タンパク質は,ともに胚の背側,腹側の両方に分布する。このとき,文1で触れた背側化因子は,A タンパク質のはたらきに,結果としてどのような影響を与えると考えられるか。B タンパク質と関連づけながら,2行程度で述べよ。

— 42 —

Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A アフリカツメガエルにおいて,原腸形成によりもぐり込んだ中胚葉の細胞の一部は,棒状の,幼生の体を支える器官へと分化する。この器官の名称を答えよ。

B 下線部(ウ)について。培養した外植体は,どのような形になると予想されるか。下の(1)〜(5)の中から1つ選べ。

p42a

C 下線部(エ)について。このような表現型が生じたのはなぜか。可能性として考えられるものを,以下の(1)〜(5)からすべて選べ。

(1) C タンパク質の阻害によって,中胚葉の細胞にならなくなった。

(2) C タンパク質の阻害によって,細胞の運動方向がバラバラになった。

(3) C タンパク質の阻害によって,原口背唇部ができなくなった。

(4) C タンパク質の阻害によって,原腸形成に必要な細胞が足りなくなった。

(5) C タンパク質の阻害によって,中胚葉の細胞が動けなくなった。

D 下線部(オ)について。このような表現型が生じたのはなぜか。2行程度で述べよ。

E C タンパク質をコードする伝令 RNA(C RNA)をある量以上胚の背側割球に注入すると,dnC RNA を注入した場合と同様の作用があった。考えられる理由について,C タンパク質の細胞内における分布と関連づけながら,1行程度で述べよ。

— 44 —

第2問

 次の文1と文2を読み,ⅠとⅡの各問に答えよ。

〔文1〕

 人類は定住し農耕を始めるようになってから,安定的に食糧を得るため,植物の遺伝的改良を行ってきた。現在,私たちが栽培しているほとんどの農作物は,野生植物から出現した優良個体の長年にわたる選抜と,交配や人為的な変異を用いた遺伝的改良によって作出されたものである。このような,同一種の中で農業上区別できる系統を,ここでは品種という。

 イネは日本において盛んに品種改良が行われてきた作物の1つであり,これまで数多くの品種が作出されている。その中でもコシヒカリは,現在日本で最も多く栽培されているイネ品種である。近年,コシヒカリの優良形質を受けついだ新品種がいくつも開発されている。以下はその3つの品種の例である。

 品種 A は,病気に強い品種とコシヒカリとの交配により,病気に強い形質をコシヒカリに付加した品種であり,(ア)戻し交配と DNA マーカー選抜法という手法を組み合せることによって作出された(図2—1)。DNA マーカー選抜法では,できた雑種の DNA の塩基配列を調べることによって,その個体のもつ多数の遺伝子がコシヒカリ由来であるのか,交配相手由来であるのか,またそれらがホモ接合であるのか,ヘテロ接合であるのかを判別することができる。導入したい形質(病気に強い)に関わる遺伝子をもち,それ以外の多くの遺伝子がコシヒカリ由来となった雑種を選抜し,自家受粉を経て,形質が固定されたものを最終的に新品種とする。

 品種 B は,コシヒカリの突然変異体を選抜することによって得られた品種であり,コメの粘りがコシヒカリより強い。コメの粘りは,胚乳に蓄積する2種類のデンプン分子,アミロースとアミロペクチンの割合によって決まり,アミロースの割合が低いとコメの粘りが強くなる。

 品種 C は,草丈の低い品種とコシヒカリとの交配により,草丈が低く,倒れにくい形質をコシヒカリに付加した品種であり,品種 A と同じ方法によって作られた。

— 45 —

 これらの3つの品種を用いて,以下の実験1〜3を行った。なお,3つの品種はいずれも純系であり,病気に強い,コメの粘りが強い,草丈が低いという形質以外の形質は,コシヒカリと同等である。またそれぞれの形質は1遺伝子によって支配され,独立に遺伝するものとする。

図2—1 戻し交配と DNA マーカー選抜法による品種 A の作出過程。図中の F_1BC_x は,F_1 に戻し交配(backcross)を x 回行った個体である。
図2—1 戻し交配と DNA マーカー選抜法による品種 A の作出過程。図中の F1BCx は,F1 に戻し交配(backcross)を x 回行った個体である。

実験1 品種 A,B,C をそれぞれコシヒカリと交配し,F1 種子を得た。F1 個体を自家受粉させ,雑種第2代(F2)における表現型の分離比を調べたところ,それぞれの集団には,病気に強い個体,自家受粉すると粘りが強いコメのみをつける個体,草丈が低い個体が 25 % の割合で出現した。

実験2 品種 B とコシヒカリとの交配を,雄親と雌親をそれぞれ入れ替えて行い,2種類の F1 種子を得た。得られた2種類の F1,コシヒカリ,品種 B の4つについて,種子の胚乳におけるアミロースの割合を調べたところ,コシヒカリが最も高く,コシヒカリ>コシヒカリを雌親とした F1>品種 B を雌親とした F1>品種 B,の順で低くなった。

— 46 —

実験3 図2—2のような交配により作出した1つの個体 Q を自家受粉させ,種子集団 R を得た。この種子集団 R を発芽させ,その後の表現型を調べたところ,病気に強く,自家受粉すると粘りが強いコメのみをつけ,草丈が低いという,品種 A,B,C の性質を兼ね備えた個体が出現した。

図2—2 種子集団 R の作出過程
図2—2 種子集団 R の作出過程

〔文2〕

 ある植物に他の生物由来の遺伝子を導入して作られた植物を,トランスジェニック植物という。イネでは,土壌細菌であるアグロバクテリウムを用いた遺伝子導入法がよく用いられている。アグロバクテリウムは,自身のもつ Ti プラスミドの一部を,植物細胞の核の DNA に組み込む性質をもつ。この性質を用いた方法によって,ある遺伝子をイネに導入するために,以下の実験4を行った。図2—3はこの実験の前半部の概要を示したものである。また,図中で示された(イ),(ウ),(エ)は,実験説明文中の下線部(イ),(ウ),(エ)の操作に対応している。

実験4 導入したい目的遺伝子を含む DNA を (イ)PCR 法によって増幅した。この増幅した DNA に対して,(ウ)酵素反応を行うことによって特定の塩基配列の部位を切断し,目的遺伝子を含む DNA 断片を得た。続いて,アグロバクテリウムから Ti プラスミドを取り出し,(ウ)酵素反応を行うことによってその一部の DNA 配列を取り除き,そこに目的遺伝子を含む DNA 断片を(エ)酵素反応によって組み込んだ。次に,この(オ)目的遺伝子をもったプラスミドをアグロバクテリウムに導入し,寒天培地上でアグロバクテリウムを増殖させ,菌体を感染用の溶液に懸濁し,アグロバクテリウム溶液とした。

— 47 —

 籾殻を取り外した(カ)イネの種子を殺菌し,(キ)植物ホルモン X を含む寒天培地に置いたところ,(ク)胚の細胞が増殖し,約2週間後に多数のカルスが形成された。それらのカルスを集め,調製したアグロバクテリウム溶液に数分間浸し,水洗した後,培地上で3日間培養することによって,アグロバクテリウムをカルスに感染させた。その後,カルスの表面に増殖したアグロバクテリウムを殺し,(ケ)植物ホルモン X を含む寒天培地で2週間程度培養した。更に培養を続けてもカルスに変化は見られなかったが,カルスを(コ)植物ホルモン X と Y を含む寒天培地に移したところ,1週間ほどで(サ)カルスの一部が緑色になり,2週間後にはその周辺から多数の芽が形成された。芽を含む組織を,植物ホルモンを含まない寒天培地上に移植したところ,芽や根が伸長し,植物体へと成長した。この植物の DNA を調べ,目的遺伝子をもったトランスジェニックイネであることを確認した。

図2—3 遺伝子導入に用いるアグロバクテリウムの調製方法。Ti プラスミドの灰色の部分は,本来アグロバクテリウムが,植物の核の DNA に組み込む DNA 領域であることを示す。
図2—3 遺伝子導入に用いるアグロバクテリウムの調製方法。Ti プラスミドの灰色の部分は,本来アグロバクテリウムが,植物の核の DNA に組み込む DNA 領域であることを示す。
— 48 —

〔問〕

Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。

A 実験1について。品種 A とコシヒカリとの交配で得られた F1 個体の,病気に対する表現型はどのようになるか,答えよ。

B 実験2について。コシヒカリを雌親とした F1 の方が,品種 B を雌親とした F1 よりも,胚乳におけるアミロースの割合が高くなった理由を,被子植物特有の受精様式を考慮した上で,2行程度で述べよ。

C 実験3について。種子集団 R の中に含まれると考えられる純系の種子の割合を,分数で答えよ。

D 下線部(ア)について。以下の(a)と(b)に答えよ。

(a) DNA マーカーによる選抜を行わずに,4回の戻し交配によってできた個体(F1BC4)を考える。仮に独立に遺伝する n 対の遺伝子が存在するとした場合,交配相手とコシヒカリの対立遺伝子がヘテロ接合になると期待される遺伝子対の数を,n を用いた分数で答えよ。

(b) DNA マーカーによる選抜を行わずに,表現型による選抜によって,品種 A と同等な性質をもつ品種を作出するためには,図2—1で示す過程と比べて,長い年月を必要とする。その理由を2行程度で述べよ。

E 品種 C の草丈を低くさせる遺伝子は,1960 年代からの急激なコメの増産によって,当時の食糧危機を救ったとされる「緑の革命」で中心的な役割を果たした遺伝子である。この変異はある遺伝子の機能欠損による劣性変異である。一方,コムギにおいて「緑の革命」を主導した草丈の低い品種の作出には,草丈が低くなる優性の遺伝子が利用されている。この違いは,イネが二倍体であるのに対して,コムギが六倍体であることと関連があると考えられる。コムギではイネと異なり,劣性変異が利用されにくい理由を2行程度で述べよ。

— 49 —

Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(イ),(ウ),(エ)には遺伝子操作でよく用いられる酵素が使われる。それぞれに最も適切な酵素を以下の(1)〜(4)から選び,(イ)—(5)のように答えよ。

(1) DNA 合成酵素

(2) DNA リガーゼ

(3) DNA 分解酵素

(4) 制限酵素

B 下線部(カ)について。イネの種子は,種子貯蔵物質の蓄積の様式が,エンドウの種子とは異なっている。その違いを2行程度で述べよ。

C 下線部(ク)における胚の細胞からカルスへの変化,下線部(サ)におけるカルスから芽への変化のことをそれぞれ何というか。(ク)—○○○,(サ)—×××,のように答えよ。

D 下線部(キ),(ケ),(コ)の培地に含まれる植物ホルモン X と Y について正しい記述を,以下の(1)〜(6)からすべて選べ。

(1) X は離層の形成を促進する。

(2) X は幼葉鞘の先端から基部方向へ移動する。

(3) X をイネの種子に与えると,胚乳のデンプン分解が促進される。

(4) Y を葉に与えると,老化が抑制される。

(5) Y は果実の成熟を促進する。

(6) Y はイネに病気を引き起こす菌が分泌する物質として同定された。

E 下線部(オ)のプラスミドには,目的遺伝子とともに,あらかじめ,ある除草剤に対して耐性となる遺伝子が組み込んである。また,下線部(ケ)と(コ)の培地にはこの除草剤を加えてある。この方法により,トランスジェニック個体を効率よく取得することができる。その理由を2行程度で述べよ。

— 52 —

第3問

 次の文1と文2を読み,ⅠとⅡの各問に答えよ。

〔文1〕

 180 万〜160 万年前頃(注1)に始まり,現在に至る新生代第四紀は,寒冷な時期と温暖な時期が繰り返される,気候変動の大きい時期であった。たとえば,最終 1 はわずか1万数千年ほど前まで続いていた。この気候変動に合わせて,生物は生存に適した気候帯へ,分布域を変化させたと考えられている。その過程で,環境の変化に適応できなかった種や一部の個体群が絶滅したり,分断・隔離された集団が種分化をおこしたり,というようなことがしばしばおこったと推察される。

 本州・四国・九州の山岳地帯の樹林には,ルリクワガタ属という小型のクワガタムシの仲間(図3—1)が分布し,現在までに 10 種が記載されている。このうち,図3—2に水平分布を示した種 A,種 B,種 C,種 D は,長らく1つの種として扱われてきた。最近になって,これらの種は近縁ではあるものの,(ア)交尾器(雌雄が交尾する時に結合する部分で,交尾時以外は腹部に格納されている)の形態が互いに異なり,遺伝子の塩基配列等によっても互いに識別できる4種であることが明らかになった。図3—2の分布域は,それぞれの種の分布確認地点の最も外側の点をなめらかな線で結んだものである。

 種 A〜種 D の分布域は基本的に重ならない。2種の分布域の間に平地の空白地帯を挟む場合もあるが,生息に適した樹林が連続しているような地域に境界がある場合には互いに隣り合うように分布している。これらの種は気候変動にともなって隔離されて種分化し,その後分布を拡大して,現在のような分布状態になったと推定される。これらの種の分布境界線は,しばしば,図3—3に示したように分水嶺に近い高地に存在している。そのような境界域を詳しく調べると,幅 1 km にも満たない混生地帯をはさんで2種が接している場合がある。したがって,種 A〜種 D は,互いに分布域が接触しても,混ざり合って生息することがない関係だと推定される。

— 53 —
図3—1 ルリクワガタ属の種 A(雄)
図3—1 ルリクワガタ属の種 A(雄)
図3—2 種 A〜種 D の水平分布域
図3—2 種 A〜種 D の水平分布域
図3—3 種 A と種 B の分布境界付近の模式図。種 A〜種 D の分布境界付近は同様の状態になることが多い。
図3—3 種 A と種 B の分布境界付近の模式図。種 A〜種 D の分布境界付近は同様の状態になることが多い。

 種 A〜種 D では,1つの容器に異種の雌雄を入れておくと,しばしば交尾をしようとする。しかし,種間交配では交尾が成立する割合は低く,子ができることも稀で,たとえ雑種個体が生じたとしても,多くの場合,生存能力や生殖能力が低い。このような種間交配のために子孫の数が減少することを「繁殖(生殖)干渉」といい,種 A〜種 D の例のように,近縁な2種が混ざり合って生息することができない原因のひとつと考えられている。

 これ以外にも,近縁な種どうしの生息域が隣接しているものの,混ざり合わない現象としては 2 が知られ,餌やすみかをめぐる 3 を避ける効果があると考えられている。

(注1) 2009 年になって,第四紀の始まりは約 260 万年前だとする新しい説が広く認められるようになった。

— 54 —

〔文2〕

 オオシラビソという高木に成長する樹木は,本州中部〜東北地方の山岳地帯に広く分布する一方で,分布を欠く山も多くみられる。(イ)オオシラビソの生育に適していると考えられる標高の範囲であるにもかかわらず,この種が分布しない理由については,現在の気候条件や,種としての水平分布域の変遷などからさまざまな説が唱えられてきた。しかし,気候的にみて分布が可能ではないかと思われ,周囲にも分布が認められるような山でも,オオシラビソが分布しないこともあり,他にも原因があることが予想されていた。

 そこで,本州中部〜東北地方の多数の山についてオオシラビソの出現状況を調べる研究が行われた。その結果,オオシラビソの分布する山の頂上の標高と,それらの山でのオオシラビソの分布の下限標高との間に,次のような関係が認められた。図3—4(A)の黒丸(●)は,オオシラビソが分布する山の緯度と頂上の標高を示しており,a 線(実線)はそれらの緯度 1° ごとの下限を結んだものである。一方,白丸(○)は,それらの山においてオオシラビソが分布している最低標高の地点の緯度と標高を示しており,b 線(破線)はそれらの緯度 1° ごとの下限を結んだものである。a 線と b 線は,緯度によらず標高差 300〜400 m を保ってほぼ平行である。また,(ウ)a 線より頂上の低い山には,その頂上の標高が b 線を超えていても,オオシラビソは全く分布していないことがわかった。オオシラビソのほか,シラビソ,トウヒ,コメツガなどの樹種においても同様の図を作成すると,a 線と b 線は,やはり標高差約 300〜400 m をもってほぼ平行になるので,a 線と b 線の標高差はこれらの樹種に共通の特徴であると思われた。

 しかし,ハイマツでは,同様の図を作成すると,図3—4(B)に示すように,a 線と b 線の標高差はオオシラビソなどにくらべて非常に小さかった。ハイマツは高標高地に生える代表的な低木で,他のマツ類と同様に 4 樹としての性質が強く,オオシラビソやトウヒなどの高木は反対に 5 樹の性質を示す。

 ハイマツは,気候的には許容範囲であったとしても,これらの高木林が優占する場所には生育することがむずかしい。図3—4(B)に示すように,ハイマツの分布がしばしば山の 6 付近に限られるのは,このような他の高木との関係が影響していると考えられる。ハイマツは一般的にオオシラビソよりも 7 な気候に生育するが,両方の種が生育可能な気候の範囲もある。そのような範囲の場所では,5 樹であるオオシラビソが最終的な競争的強者となる。しかし,気候的な制約から高木の生育しにくい 6 付近の環境下では,比較的低標高であってもハイマツが生育する場合がある。

— 55 —

 (エ)中部地方の山岳地域(標高 1000〜2000 m)で地層中の植物の花粉分析(地層の年代を化学的手法で推定し,年代ごとに植物の花粉を同定する)が行われている。その結果,中部地方では,(オ)約 3500 年前にはオオシラビソを含む複数の樹種の垂直分布が現在より約 300〜400 m,標高の高い方にずれており,その後,現在の垂直分布に近づいたことが明らかになった。

図3—4 樹木の分布する山の頂上の標高と分布下限標高の関係。a 線と b 線は,緯度を 35°,36°,・・・というように 1° ごとに区切り,それらの間の最低標高の黒丸と白丸を,それぞれ結んだものである。
図3—4 樹木の分布する山の頂上の標高と分布下限標高の関係。a 線と b 線は,緯度を 35°,36°,・・・というように 1° ごとに区切り,それらの間の最低標高の黒丸と白丸を,それぞれ結んだものである。
— 56 —

〔問〕

Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。

A 空欄1〜3に適切な語を入れよ。

B 下線部(ア)について。昆虫の複数の集団を比較すると,外見が非常に似通っていて生態もよく似ているが,交尾器の形態に明瞭な差のある場合がある。このような集団どうしは通常,別種として扱われる。その理由を,種の概念と関連づけて,2行程度で述べよ。

C 種 A〜種 D の垂直分布は,おおむね標高 500〜1500 m の範囲にあり,それは,ほぼ1つの植物群系の分布域に相当している。その群系の樹林帯名を答えよ。また,その樹林帯に生育する代表的樹種として適切なものを以下の(1)〜(7)からすべて選べ。

(1) アラカシ

(2) ガジュマル

(3) ミズナラ

(4) シイ

(5) ブナ

(6) タブノキ

(7) トドマツ

D 種 A と種 B は,最初はそれぞれ孤立していたが,その後,分布域を接するようになったと考えられる。現在の分布状態から,これらの種の種分化および分布域の形成過程として最も適切なものを,以下の(1)〜(4)から1つ選べ。

(1) 寒冷期に,高標高地に孤立して種分化し,温暖期に,低標高地へ向かって分布を広げて現在のようになった。

(2) 寒冷期に,低標高地に孤立して種分化し,温暖期に,高標高地へ向かって分布を広げて現在のようになった。

(3) 温暖期に,高標高地に孤立して種分化し,寒冷期に,低標高地へ向かって分布を広げて現在のようになった。

(4) 温暖期に,低標高地に孤立して種分化し,寒冷期に,高標高地へ向かって分布を広げて現在のようになった。

— 57 —

Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A 空欄4〜7に適切な語を入れよ。

B 下線部(イ)について。オオシラビソの生育に適していると考えられる気温の範囲であるにもかかわらず,この種が分布しない理由を,以下の(1)〜(5)のように考察してみた。この中から,理由として適切でないものを2つ選べ。

(1) オオシラビソは,暖温帯の気候下では生育できない。

(2) オオシラビソは,冬季の積雪量が非常に多い山では生育できない。

(3) オオシラビソは,強風の吹きやすい山では生育できない。

(4) オオシラビソは,遷移の途中に多く出現し,極相に達するとほとんど消滅する。

(5) オオシラビソは,生育に適している気温の範囲全域に,まだ分布を広げられていない。

C 下線部(エ)のような花粉分析は,湿性遷移の過程にある湿地の周辺で掘削を行い,地層中を調査することが一般的であるが,この理由を2行程度で述べよ。

D 下線部(オ)より推定される,調査地での約 3500 年前の気候として,最も適切なものを以下の(1)〜(6)から1つ選べ。

(1) 平均気温は,現在より約 2 ℃ 高温であった。

(2) 平均気温は,現在より約 2 ℃ 低温であった。

(3) 平均気温は,現在より約 4 ℃ 高温であった。

(4) 平均気温は,現在より約 4 ℃ 低温であった。

(5) 平均気温は,現在より約 6 ℃ 高温であった。

(6) 平均気温は,現在より約 6 ℃ 低温であった。

E 文2で述べられた一連の研究の結果,下線部(ウ)のようなオオシラビソの分布の特徴には,過去の分布変遷が関わっていると考えられるようになった。下線部(オ)を考慮して,下線部(ウ)のような分布の特徴が生じた理由を2行程度で述べよ。