東大 過去問 2006年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

東大理系科目 AI解答・シミュレーション‹ 東大生物 2006‹ 生物2006

このページの出典

東京大学 第2次学力試験(前期)2006年 理科「生物」(東京大学がかつて公開したPDFの Internet Archive 保存版)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

修正履歴

お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

PDFの 20 枚目

生 物

第1問

 次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。

〔文1〕

 真核生物の細胞内には,膜に囲まれた細胞小器官が多数存在している。これらの細胞小器官は,細胞質基質とは異なる環境を細胞内に作り出し,さまざまな反応の「場」を提供している。核は核膜により仕切られており,染色体や核小体を含んでいる。1 と 2 は二重の膜により囲まれており,1 の内部には好気呼吸に関与する酵素類が多く含まれている。植物に特徴的な細胞小器官である 2 は,さらに葉緑体や有色体に分化している。一重の膜に囲まれた細胞小器官には,ゴルジ体,液胞,小胞体などがあり,それぞれに異なる重要な役割を担っている。これらの細胞小器官が正常に機能するためには,そこで多様な反応に関与するさまざまなタンパク質や RNA が,それぞれの目的の場所に輸送される必要がある。そのため,真核細胞には細胞の内部でさまざまなタンパク質や RNA を運搬するしくみが存在する。

〔文2〕

 リボソームは RNA とタンパク質からなる巨大な複合体であり,遺伝情報の翻訳を担っている。ほ乳類のリボソームは4種類のリボソーム RNA と79種類のリボソームタンパク質により構成されており,その活性はこれらの構成要素の中でも主にリボソーム RNA により担われていることが明らかになりつつある。リボソームが真核細胞内で合成される過程を見てみよう。まず,(ア)リボソームタンパク質をコードする(リボソームタンパク質のアミノ酸配列を決めている)遺伝子の情報をもとに mRNA(伝令 RNA)が合成され,これらの mRNA は核から細胞質へ運ばれる。細胞質では,mRNA の情報に従ってリボソームタンパク質が既存のリボソームにより合成される。新たに合成されたリボソームタンパク質は,(イ)細胞質から核内へと輸送される。このリボソームタンパク質と(ウ)核内で合成されたリボソーム RNA が核小体で集合することにより,まず大小二つの複合体が形成される。これらの各複合体は,再び核から細胞質へと運ばれ,完全なリボソームとしてタンパク質の合成を行う。このような核内外への物質の輸送は,核膜に存在する 3 を通して行われている。

PDFの 21 枚目

〔文3〕

 一重膜に囲まれた細胞小器官の間では,小さな膜の袋(膜小胞)をやりとりすることにより物質の輸送が行われている。酵母はこの輸送のしくみを研究するうえで優れた研究材料であり,酵母の分泌タンパク質である酵素 A については合成されてから以下のような過程を経て分泌されることがこれまでに明らかとなっている。

 酵素 A は,小胞体表面に存在するリボソーム上で合成され,小胞体内腔へと取り込まれる。この段階で酵素 A は最初の修飾(小胞体型の糖鎖の付加)を受けるが,小胞体への取り込みとこの修飾とは翻訳と並行して起こるため,修飾を受けていない酵素 A が検出されることはない。続いて酵素 A は小胞体から形成される膜小胞の内部に取り込まれ,小胞体からゴルジ体へと輸送される。ここで,酵素 A はゴルジ体に特異的な糖鎖の修飾を受ける。これにより酵素 A の分子量はゴルジ体で増加するが,この修飾は一様なものではないため,修飾後の酵素 A の分子量は分子ごとに異なったものとなる。そののち,酵素 A はゴルジ体から形成される膜小胞の内部に取り込まれて細胞膜へと運ばれ,最終的に細胞の外へと分泌される。このような輸送のしくみを明らかにする過程では,(エ)細胞小器官間における物質輸送が異常となった酵母の突然変異体が非常に重要な役割を果たした。

(注1) 小胞体内腔では,タンパク質中の特定のアミノ酸残基(アスパラギン残基など)に対し,オリゴ糖が共有結合により付加される。ゴルジ体では,そのオリゴ糖にさらに糖が付加されるなどの修飾を受け,ゴルジ体に特異的な糖鎖が形成される。

PDFの 22 枚目

実験1 野生型の酵母細胞を放射性同位体 35S を含むメチオニン存在下で短時間培養することにより,酵素 A を 35S で標識した。そののち酵母を放射性同位体を含まない培地に移し,0分間または30分間培養したのち,細胞内と細胞外の標識された酵素 A をそれぞれ回収した。回収した酵素 A をゲル電気泳動法により分離した結果を図1に示す。なおこの電気泳動法では,分子量が小さいものほど下側に検出される。また,この実験において酵素 A の標識にかかった時間は細胞小器官間の輸送にかかる時間と比べ十分短いものとする。

図1 標識された酵素 A の電気泳動パターンの模式図
図1 標識された酵素 A の電気泳動パターンの模式図

実験2 下線部(エ)に関し,生存に必須な遺伝子産物の研究では,高い温度で培養した際にのみ表現型を示す温度感受性突然変異体が用いられる。さて,膜小胞を介したタンパク質の輸送機構に損傷を持つ a,b,c の3つの酵母温度感受性突然変異体が得られた。これらの突然変異体は,23 ℃ で培養した場合には膜小胞を介したタンパク質の輸送が野生型と同様におこっていたが,35 ℃ の高温条件下で培養するとその輸送が停止した。23 ℃ で培養したこれらの変異体を,35 ℃ に移して1時間培養したのち細胞内部の様子を電子顕微鏡で観察したところ,以下のような表現型が観察された。

PDFの 23 枚目

(i) 変異体 a では,細胞の中に多くの膜小胞が蓄積していた。

(ii) 変異体 b では,細胞の中に肥大したゴルジ体が蓄積していた。

(iii) 変異体 c では,細胞の中に小胞体が大量に蓄積していた。

 また,これらの変異体を35 ℃ で1時間培養したのち,35S を含むメチオニン存在下で短時間培養して酵素 A を標識した。そののち放射性同位体を含まない培地に移して35 ℃ で30分間培養し,酵素 A の分析を行ったところ,いずれの変異体においても細胞外に標識された酵素 A は検出されなかった。また,これらの変異体ではタンパク質の合成に異常は見られなかった。

(注2) 温度感受性の原因はさまざまであるが,多くの場合は変異を持つタンパク質の高次構造が高温条件下で変化し,正常に機能できなくなることに起因すると考えられている。

〔問〕

Ⅰ 文中の空欄1〜3に適当な語句を入れよ。

Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(ア)について。真核生物では,タンパク質をコードする遺伝子は多くの場合イントロンにより分断されており,RNA に転写されたのち核内でスプライシングと呼ばれる反応によりイントロン部分が除去され,完成型の mRNA となる。続いて mRNA は細胞質へと輸送され,タンパク質へと翻訳される。このように mRNA の合成と翻訳は異なる区画で行われるため,スプライシングを受ける前の mRNA が翻訳されることはない。では,イントロン部分を含む mRNA がスプライシングを受けずに翻訳された場合,どのようなことがおこると考えられるか。以下の選択肢の中から,正しいものを1つ選べ。

PDFの 24 枚目

(1) イントロンは本来アミノ酸配列を指定していないので,合成されるタンパク質のアミノ酸配列や翻訳の効率に変化はなく問題は生じない。

(2) イントロンは本来アミノ酸配列を指定していないので,合成されるタンパク質のアミノ酸配列に変化はないが翻訳の効率が低下する。

(3) イントロンは本来アミノ酸配列を指定していないので,翻訳がエキソンとイントロンの最初の境界で止まってしまう。

(4) イントロンは本来アミノ酸配列を指定していないので,イントロン部分が翻訳されてしまうことにより異常なタンパク質が作られる。

(5) イントロンは本来アミノ酸配列を指定していないので,イントロン部分でアミノ酸がタンパク質に無作為に取り込まれてしまうことにより異常なタンパク質が作られる。

B 下線部(イ)について。以下のもののうち,細胞質で翻訳されたのち核に輸送されるものはどれか。(1)〜(6)から2つ選べ。

(1) ペプシン

(2) ヒストン

(3) 免疫グロブリン

(4) アミラーゼ

(5) ケラチン

(6) DNA ポリメラーゼ

C 下線部(ウ)について。ほ乳類の細胞には,きわめて多数のリボソームが存在し(細胞あたり数百万個),リボソーム RNA の量は細胞内の全 RNA 量の8割に及ぶ。一般的に生物はリボソーム RNA 遺伝子の数を増やすことによってこのような多量のリボソーム RNA を確保している。実際,ヒトのゲノムには,それぞれのリボソーム RNA 遺伝子が100個以上ずつ存在する。一方,それぞれのリボソームタンパク質をコードする遺伝子は1個ずつしか存在しない。リボソーム RNA をコードする遺伝子とは異なり,リボソームタンパク質をコードする遺伝子が1個ずつで十分である理由を考察し,2行以内で述べよ。

D リボソームタンパク質の合成には既存のリボソームが必要である。では,最初のリボソームタンパク質はどのように作られたのだろうか。原始生命体において触媒活性を持つ分子がどのように進化したかをふまえ,最初のリボソームタンパク質を翻訳したと推測される翻訳装置の特徴を1行で述べよ。

PDFの 25 枚目

Ⅲ 文3および実験1,2について,以下の小問に答えよ。

A 実験2の変異体 a では,培養終了時細胞内部に図1中 X に対応する分子量の標識された酵素 A が蓄積していた。変異体 a では,酵素 A の輸送のどの段階に異常があると考えられるか。理由とともに2行以内で述べよ。

B 実験2の変異体 b,c に関して,培養終了時細胞内部に蓄積していると思われる酵素 A は,図1中 X,Y のどちらの分子量のものであると考えられるか。理由とともにそれぞれ2行以内で述べよ。

C 実験2の変異体 a と変異体 c をかけ合わせることにより,両方の変異を同時に持つ二重変異体を作製した。この二重変異体を35 ℃ で1時間培養したのち,実験2と同様に 35S を含むメチオニン存在下で短時間培養して酵素 A を標識し,そののち 35S を含まない培地に移して35 ℃ でさらに30分間培養した。

a この二重変異体において,培養終了時に細胞内に検出されると予想される標識された酵素 A の分子量について,正しいものを以下の選択肢より選べ。

(1) 図1中 X の位置に検出される。

(2) 図1中 Y の位置に検出される。

(3) 図1中 X と Y 両方の位置に検出される。

(4) 図1中 X と Y の中間の位置に検出される。

b この二重変異体の細胞内部の様子を,培養終了後に電子顕微鏡により観察した場合,どの細胞小器官が主に蓄積していることが予測されるか。理由とともに2行以内で述べよ。

PDFの 26 枚目

第2問

 次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。

〔文1〕

 (ア)植物体の構成成分やエネルギー源となる有機化合物は,光合成により大気中の二酸化炭素から光エネルギーを利用して合成される。太陽光は広いスペクトルをもつが,このうち光合成に利用できる可視領域の 400〜700 nm の光は地表に届く太陽光エネルギーの45 % を占め,アンテナ複合体とよばれるクロロフィルとタンパク質の複合体で集められ,反応中心とよばれる特別なクロロフィルに渡される。

 光合成の電子伝達系は葉緑体のチラコイド膜とよばれる袋状の膜に存在する。電子伝達にともなってチラコイド膜を横切る水素イオンの移動が起こり,チラコイド膜内腔(袋状の膜の内側の可溶性の区画)の水素イオン濃度が上昇する。その結果,膜の内外で pH 勾配が生じる。チラコイド膜には ATP 合成酵素が存在し,その酵素内部の特別な通路を水素イオンが濃度勾配に従って流れ,ATP が合成される。(イ)すなわち,ATP の生産は水素イオン濃度勾配の解消と共役している。

 光合成の電子伝達系では2種類の光化学系(光化学系Ⅰと光化学系Ⅱ)が光エネルギーを吸収して,ATP と還元力(X・2H)の生産を行う。水の分解反応では,それぞれの光化学系が光エネルギーを吸収して,2分子の水を1分子の酸素,4個の水素イオン,そして4個の電子に分解する。このとき,4個の電子は電子伝達系に渡され,4個の水素イオンはチラコイド膜内腔に蓄積する。さらに,その4電子が電子伝達系を伝わっていく間に,8個の水素イオンがチラコイド膜内腔に取り込まれる。このようにして,電子伝達反応にともなってチラコイド膜内腔の水素イオン濃度が上昇する。また,電子は電子伝達系をへて最終的に補酵素 X に渡されて,2個の電子あたり1分子の還元力(X・2H)を作りだす。一方,チラコイド膜の ATP 合成酵素は,3個の水素イオンをチラコイド膜外部にくみ出すごとに1分子の ATP を生産する。

 このようにして,電子伝達系により作り出された ATP および還元力(X・2H)のエネルギーは,葉緑体のストロマに存在する炭酸固定系によって利用され,これによって二酸化炭素から有機化合物が合成される。

PDFの 27 枚目
図2 2つの異なる植物 A,植物 B の群落について,40 cm 四方の区画を設け,群落内の高さごとの相対的な光の強さを測定し,層別刈取法を行って得られた結果をもとに作成した生産構造図
図2 2つの異なる植物 A,植物 B の群落について,40 cm 四方の区画を設け,群落内の高さごとの相対的な光の強さを測定し,層別刈取法を行って得られた結果をもとに作成した生産構造図
PDFの 28 枚目

〔文2〕

 野外では多くの場合,植物は集まって群落を構成しており,植物群落における葉の集まり(葉群)を光合成生産の単位と見なすことができる。葉群の光合成速度は個々の葉の光合成速度の和である。しかし,それぞれの葉が受ける光の強さはその位置や向きによって大きく異なるため,葉群内の葉がみな同じような光合成速度をもつわけではない。群落内の光環境と葉(光合成器官)や茎・花など(非光合成器官)の分布を高さ別に調べた(層別刈取法)ものを生産構造図という。図2(前ページ)は植物 A と植物 B の群落について調べた生産構造図である。

 また,土地面積あたりの葉面積を葉面積指数という。一般に,ある高さにおける相対的な光の強さの対数と,群落最上部から光強度を測定した点までで積算した葉面積指数(積算葉面積指数)は直線関係にある。ただし,その関係は植物の群落によって異なっている(図3)。(ウ)生産構造図や葉面積指数と光の強さとの関係を描くことで,その植物群落がどのように光を利用しているかがわかる。

図3 光の強さと積算葉面積指数の関係
図3 光の強さと積算葉面積指数の関係
PDFの 29 枚目
図4 植物Aの光—光合成曲線
図4 植物Aの光—光合成曲線
PDFの 30 枚目

〔文3〕

 表1は,地球上のさまざまな生態系における植物の現存量と純生産量の推定値で,有機化合物の乾重量で表されている。地球全体では,1.8×1015kg の一次生産者が存在し,毎年 1.7×1014kg の有機物が生産されていると推定されているが,地球の全表面積のほぼ30 % を占める陸地で約3分の2が,ほぼ70 % を占める海洋で約3分の1が生産されている。

表1 地球上の主要生態系の植物の現存量と純生産量の推定値
表1 地球上の主要生態系の植物の現存量と純生産量の推定値
PDFの 31 枚目

〔問〕

Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(ア)について。植物体がすべて有機化合物から成り立っていて,1.0g の有機物を合成するのに 16.8kJ のエネルギーが必要であるとする。

 ある地域の純生産量が 3.0kg/m2・年であり,地表に到達する太陽の光エネルギーの放射が 8.0×103kJ/m2・日とする。光合成に有効な可視領域の放射のうち何パーセントが純生産として利用されるか,有効数字2桁で答えよ。

B 下線部(イ)について。以下の(1)〜(4)から,これを説明するうえで,正しくないものをすべて選び,番号で答えよ。

(1) チラコイド膜を暗所で pH 4 の緩衝液に長時間浸すことで,チラコイド膜内腔を pH 4 にした。その後,ADP とリン酸を含む pH 8 の緩衝液に移すと,ATP が合成された。

(2) 水素イオンの濃度勾配を解消する脂溶性の弱酸である2,4-ジニトロフェノールでチラコイド膜を処理すると,ATP 合成は抑制されずに電子伝達系だけが阻害された。

(3) 電子伝達系の活性には,袋状の構造が破れていないチラコイド膜が必要であるが,ATP 合成にはチラコイド膜の状態は関係ない。

(4) チラコイド膜を構成する脂質二重膜は,水素イオン(H+),OH−,K+ や Cl− などのイオンを透過させない。

C 光合成の電子伝達系によって1分子の水が分解されるとき,生産されるエネルギーは ATP 何分子に相当するか計算せよ。ただし,1分子の還元力(X・2H)を作り出すのに必要なエネルギーは,3分子の ATP 生産に相当するものとし,還元力(X・2H)のエネルギーも加えて計算すること。

Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A 図2の植物 A,植物 B の群落をそれぞれ何型とよぶか。また,それらは図3の(ア),(イ)のどちらに相当するかを記せ。

B 図2の区画において,植物 B の葉 1.0g あたりの平均葉面積は 60cm2 であった。植物 B の群落の最上部から地上 15cm の高さまでの積算葉面積指数を求め,有効数字2桁で答えよ。

PDFの 32 枚目

C 下線部(ウ)について。図2,図3から植物 B の型の群落における光合成は,光を利用するうえでどのような特徴を持っていると言えるか。3行程度で述べよ。

D 図4は植物 A の光—光合成曲線である。この植物 A の地上 45cm の高さにおける相対的な光合成速度を求めよ。ただし,図4における光の強さ(相対値)は,図2におけるそれと一致するものとする。

E 一般に葉面積指数の増加は光合成器官である葉の面積の増加を意味するため,葉面積指数が大きい群落ほど光合成による生産速度が大きいことが期待される。しかし,実際の植物群落では最適な葉面積指数が存在する。その理由を3行程度で述べよ。

Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。

A 表1で,現存量 1kg あたりの純生産量を森林と草原について計算し,有効数字2桁で答えよ。また森林と草原について,現存量 1kg あたりの純生産量に違いが生じる理由を2行程度で述べよ。

B 表1で,それぞれの生態系において植物の現存量が平衡に達している場合,現存量あたりの純生産量は何を意味していると考えられるか,以下の(1)〜(4)から1つ選べ。

(1) その生態系内の植物の現存量に対する植物の1年間の成長の割合。

(2) その生態系内の植物の現存量に対する植物の1年間の枯死量の割合。

(3) その生態系内の植物を構成する有機物が1年間で更新される回数。

(4) その生態系を構成する有機物が1年間で更新される回数。

C 表1の全陸地と全海洋について,現存量を純生産量で割った値を計算し,有効数字2桁で答えよ。また一般の生態系で問 B と同様の前提の場合,現存量を純生産量で割った値は何を表していると考えられるか,1行程度で述べよ。

D 全陸地と全海洋について現存量を純生産量で割った値を比較し,その違いが何によるものなのか,全陸地・全海洋それぞれで主たる一次生産者の種類とその構造的特徴,および問 C の解答をふまえて理由を考察し,5行程度で述べよ。

PDFの 33 枚目

第3問

 次の文1〜文4を読み,Ⅰ〜Ⅳの各問に答えよ。

〔文1〕

 マラリア症は,病原体であるマラリア原虫(原生動物)が蚊の一種であるハマダラカによって媒介される感染症である。この感染症の特徴はハマダラカによる吸血によって病気が伝わることであり,図5に示すような生活環にしたがって,マラリア原虫がほ乳類などの動物とハマダラカの間を循環しながら増殖する。ハマダラカ体内では,マラリア原虫は有性生殖期を経たのちにオーシストとなり,ひとつのオーシストからは数百のスポロゾイトが生み出される。そのスポロゾイトはハマダラカの唾液腺に侵入することによって初めて感染性を得る。(ア)感染したヒトやネズミは場合によっては致死となるが,媒介するハマダラカ自身はマラリア原虫が体内に侵入しても,寿命や生殖能力に影響をうけない。

 ここに,異なる二系統のハマダラカがあり,それぞれ X 系統と Y 系統とする。これらの系統は観察されるすべての表現型について純系であり,また外見からは区別がつかない。これらの系統を用いて,以下の実験をおこなった。マラリア原虫をネズミに感染させ,十分な量のマラリア原虫の増加が血中に観察されたのち,このネズミをそれぞれ数十匹の X 系統と Y 系統のハマダラカに吸血させた。一週間の後,一部のハマダラカの腹部を解剖したところ,X 系統と Y 系統ともに体内に多くのオーシストが観察された。しかし,X 系統ではそのすべてのオーシストにおいて黒い色素の沈着がみられた。(イ)別の実験から,Y 系統のハマダラカはマラリア原虫をネズミに媒介することができるが,X 系統はその能力をもたないことがわかり,色素沈着がその原因であると考えられた。

PDFの 34 枚目
図5 マラリア原虫の生活環
図5 マラリア原虫の生活環

 マラリアに感染したヒトやネズミを吸血したハマダラカ体内では雌雄のガメートが受精してザイゴートとなり,それが分化してオーシストとなる。オーシスト内部で作られた大量のスポロゾイトは,ハマダラカが吸血したときにヒトやネズミの血中に送り込まれ,新たな感染を引き起こす。

PDFの 35 枚目

〔文2〕

 X 系統のオスと Y 系統のメスを交配し,次の世代を得た(F1 世代)。このメスと,X 系統または Y 系統のオスを交配することによって,さらに次世代を得た(戻し交配世代)。ハマダラカはメスのみが吸血することから,必然的にマラリア原虫を媒介するのもメスである。この戻し交配世代のメスに,マラリア原虫が感染したネズミを吸血させ,文1の実験と同様に体内のオーシストを観察し,黒い色素の沈着していない正常なオーシストの割合(図6)を調べた。また同時に,(ウ)ハマダラカの体内に存在しているマラリア原虫の総数(正常オーシスト数+色素沈着オーシスト数)(図7)も調べた。

 この実験において,色素沈着の表現型を支配する遺伝子座が二つ以上あると仮定すると,それらの遺伝子座は別々の染色体もしくは同一の染色体上に存在する場合が考えられる。前者ではそれぞれの対立遺伝子が 1 の法則にしたがい分離し,後者では染色体の 2 により乗換えが生じ,連鎖している対立遺伝子の組み合わせが変化し,その結果 3 が起こる。このような場合,戻し交配世代の表現型はばらつきを示すことが多い。よって図6から考えると,オーシスト色素沈着の形質は(エ)ひとつの遺伝子座によって支配されていると考えられた。さらに,オーシストに色素沈着がおきる形質が 4 または 5 であるならば,図6の X 系統を用いた戻し交配の実験において正常なオーシストをもつハマダラカ個体も観察されるはずであり,よって X 系統の対立遺伝子由来の形質が 6 であると考えられる。

(注3) 遺伝子座とは染色体やゲノムにおける遺伝子の位置のことであり,二倍体における対立遺伝子の遺伝子座は同一である。

PDFの 36 枚目
図6 戻し交配世代におけるハマダラカ個体中の正常オーシストの割合
図6 戻し交配世代におけるハマダラカ個体中の正常オーシストの割合
図7 戻し交配世代のハマダラカの体内に存在しているマラリア原虫の総数
図7 戻し交配世代のハマダラカの体内に存在しているマラリア原虫の総数
PDFの 37 枚目

〔文3〕

 ハマダラカでは最近ゲノム解読がほぼ終了し,さまざまな手法により表現型と遺伝子の機能の関係を調べられるようになった。そのひとつに,DNA マーカーを用いた手法がある。この DNA マーカーには,ゲノム中に数塩基の短い配列が反復したマイクロサテライトとよばれるものが主に利用され,系統ごとにその反復回数が異なる。その反復回数の違いを検出することによって,その DNA マーカー近傍の染色体領域がどちらの系統由来のものか判別できる。

 いま,ハマダラカの X 系統における色素沈着を支配する遺伝子座が,染色体のどこに存在するかを調べるために,DNA マーカーを使った以下の実験をおこなった。別の実験から,ハマダラカがもつ一対の性染色体と二対の常染色体のうち,その遺伝子座は2番染色体に位置することがわかり,(オ)2番染色体上に存在する三種類の DNA マーカー(マーカー1,マーカー2,マーカー3)を用意した。文2の実験において,F1 世代のメスと Y 系統のオスを交配することによって得られた戻し交配世代のハマダラカの体細胞から DNA を抽出し,各 DNA マーカーの塩基配列の長さをゲル電気泳動法により判別し,オーシストの色素沈着の表現型との相関を調べた。同時にもとの X 系統と Y 系統に加え F1 世代も調べ,それらの代表的な実験データを図8に示した。なお,同じ DNA マーカーの組み合わせを示すハマダラカは,色素沈着に関していずれも同じ表現型を示したものとする。これらの結果から,これらの DNA マーカーのうち 7 の近くに,X 系統における色素沈着を支配する遺伝子座があると考えられた。実際に調べたところ,ある遺伝子 Z が関わっていることが明らかになった。(カ)Y 系統の遺伝子 Z には,X 系統には存在しない一塩基挿入が見つかり,これにより Y 系統ではこの遺伝子 Z 由来のタンパク質が存在しないことがわかった。

PDFの 38 枚目
図8 ゲル電気泳動法による各DNAマーカーの長さの判別
図8 ゲル電気泳動法による各DNAマーカーの長さの判別
PDFの 39 枚目

〔文4〕

 マラリア原虫をもったハマダラカがヒトを吸血すると,マラリア原虫のヒトへの感染が起こる。(キ)マラリア症の患者は定期的な発熱により体力を奪われ,悪性マラリアの場合には死に至ることもある。ヒトに感染したマラリア原虫は赤血球に侵入して爆発的に増殖する。赤血球には 8 とよばれる色素タンパク質が存在し,9 の運搬をおこなっている。8 の遺伝子には正常型の対立遺伝子 A と,塩基が1か所だけ置き換わった変異型の対立遺伝子 S がある。対立遺伝子 S から生じる 8 分子は,その立体構造が正常型と異なっており,赤血球の形態異常の原因となる。遺伝子型 SS の人は赤血球の形態異常を特徴とするかま状赤血球貧血症となり,貧血や循環器障害などの重篤な症状を示して生存が困難になる。遺伝子型 AS の人では片方の対立遺伝子が正常なため,通常ではかま状になる赤血球は少なく,症状も軽い。マラリア原虫は遺伝子型 AS の人の赤血球内部では増殖しにくく,遺伝子型 AS の人は遺伝子型 AA の人よりもマラリア抵抗性が高いことが知られている。(ク)このため,かま状赤血球貧血症は悪性マラリアが発生する地域で多く見られる。

PDFの 40 枚目

〔問〕

Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(ア)について。マラリア原虫—ハマダラカ間およびマラリア原虫—ヒト・ネズミ間における,それぞれの生物間の相互関係をあらわす語句を答えよ。

B 下線部(イ)について。どのような実験をすればこのようなことが明らかとなるか,2行以内で述べよ。

Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A 空欄1〜6に適当な語句を入れよ。

B 下線部(ウ)について。ハマダラカにおけるマラリア原虫の感染性を支配する遺伝形質について,図7からわかることを2行以内で述べよ。

C 下線部(エ)について。仮にこの形質が複数の遺伝子座によって支配されているとするならば,それはどのような場合か。2行以内で述べよ。

Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(オ)について。これらの DNA マーカーは染色体上において互いに十分に離れて存在するものを選んだ。その理由を考え,1行以内で述べよ。

B 空欄7に適当な DNA マーカーの番号を入れ,選んだ理由を2行以内で述べよ。

C 下線部(カ)について。X 系統のオスと Y 系統のメスを交配して得た F1 世代のメスに,文1と同様にマラリア原虫が感染したネズミを吸血させ,オーシストを観察したときにみられる現象について,正しいものを以下の(1)〜(4)からひとつ選べ。

(1) 色素沈着を抑える機能をもつ遺伝子 Z 由来のタンパク質の量が半分しかないため,色素沈着が起こる。

(2) 色素沈着を誘導する機能をもつ遺伝子 Z 由来のタンパク質の量が半分しかないが,十分な程度に働くことができるため,色素沈着が起こる。

PDFの 41 枚目

(3) 色素沈着を誘導する機能をもつ遺伝子 Z 由来のタンパク質の量が半分しかないため,色素沈着が起きない。

(4) 色素沈着を抑える機能をもつ遺伝子 Z 由来のタンパク質の量が半分しかないが,十分な程度に働くことができるため,色素沈着が起きない。

Ⅳ 文4について,以下の小問に答えよ。

A 文中の空欄8と9に適当な語句を入れよ。

B 下線部(キ)について。ヒトにおけるマラリア症が依然として猛威をふるう現在,ハマダラカの X 系統はマラリア制圧のひとつの重要な手段として注目されている。その理由とともに,具体的な使用方法について2行以内で述べよ。

C 下線部(ク)について。悪性マラリアが発生する地域に住むヒト集団で,ある年に生まれた新生児の遺伝子型を調べたところ,各遺伝子型が AA:AS:SS=25:10:1 の比で観察された。新生児における対立遺伝子 S の遺伝子頻度を既約分数の形で求めよ。

D この地域では,これらの新生児が成人になるまでの過程で,遺伝子型 AA をもつ者の一部が悪性マラリアで死亡し,遺伝子型 SS をもつ者の全てがかま状赤血球貧血症で死亡する。また,それ以外の者はすべて成人に達するとする。成人における対立遺伝子 S の頻度を調べたところ,新生児における頻度と等しかった。新生児が成人になるまでの過程で遺伝子型 AA をもつ者のうちどれだけの割合が死亡するか。既約分数の形で答えよ。