東大 過去問 2008年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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東京大学 第2次学力試験(前期)2008年 理科「生物」(東京大学がかつて公開したPDFの Internet Archive 保存版)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

修正履歴

お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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生 物

第1問

 次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。

〔文1〕

 細胞分裂が正常に実行されるためには,さまざまなしくみが連携して機能する巧妙なしかけが必要である。たとえば,細胞が1回分裂する全過程を細胞周期というが,1回の体細胞の細胞周期で一度だけ DNA 複製がおこるようなしかけがある。また,DNA 複製によって1対の姉妹染色分体という染色体構造ができるが,分裂中期までにこの対が離れてしまうと,正確な染色体の分配ができなくなる。これを防ぐために,姉妹染色分体が,ある種のタンパク質(姉妹染色分体結合タンパク質)を介して結合し,近接した状態に配置されるしかけがある。

 動物の体細胞の細胞周期では,分裂 1 期に染色体を構成するクロマチンが凝縮して,分裂期染色体が構築される。クロマチンは,2 というタンパク質に DNA が巻きついて,ビーズ状になったものである。さらに,間期から分裂期まで核膜近傍に存在する中心体が2つに増え,これを起点として,微小管とよばれるタンパク質の繊維(紡錘糸)からなる紡錘体が形成される。分裂中期までには,染色体の狭窄部位に存在する動原体に微小管が結合し,この微小管(動原体微小管)を介して両極へ染色体が引っ張られる。(ア)分裂中期では,動原体微小管は姉妹染色分体上でたがいに特定の角度で配置される。そのため,分裂中期に 3 面に縦列した染色体上の動原体に,両極からの動原体微小管を介した張力が発生し,均衡することになる。細胞にはこの張力の均衡状態を監視するはたらきがあり,動原体微小管において十分な均衡した張力が生じるまでの間,細胞周期を分裂中期に停止するしかけ(紡錘体チェックポイント)が存在する。

 全染色体について十分に均衡張力が生じると,細胞内のある種のタンパク質分解酵素が活性化し,動原体部位に多く存在する姉妹染色分体結合タンパク質を分解する。これを契機に姉妹染色分体が両極に向かって移動を開始する。また,動物細胞では,紡錘体の軸に直交するかたちで 3 面が規定される。その延長上の細胞膜に収縮環とよばれる構造が形成され,細胞をくびり切る 4 を実行するため,分離した姉妹染色分体のセットがもれなく分配される。このような連携的なしかけによって,姉妹染色分体の 5 細胞への均等分配が保証される。

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〔文2〕

 減数分裂は,動物では精子や卵などの配偶子を形成する際にのみ見られる分裂様式である。減数分裂では(イ)DNA の複製の後,2回の連続する染色体分配がおこるため,二倍体(複相)の生物では最終的に一倍体(単相)の配偶子が形成される。減数分裂の際には,DNA 複製後の姉妹染色分体の連結をへたのち,両親由来の相同染色体が対合し,二価染色体が形成される。(ウ)二価染色体上の動原体に微小管が結合し,減数第一分裂では両極に向かって相同染色体が分離される。この際にも,動原体微小管に生じる張力の均衡を監視するはたらきがあるが,この場合,相同染色体間をつなぎとめているのは,姉妹染色分体結合タンパク質ではなく,乗換えによって形成された(エ)キアズマという構造である。

〔文3〕

 (オ)連鎖した3点の遺伝子の形質を用いて,それぞれの遺伝子間の組換え率を測定し,それをくり返すことで,染色体地図を描くことができる。これはモーガンの学派が提唱した「遺伝子間距離と乗換え頻度は比例関係にある」という仮説と,染色体上のいずれの領域においても乗換え(もしくは組換え)が一様に生じることが,前提となっている。しかしながら,(カ)上記の方法で得られた染色体地図と,ゲノム計画で明らかになった染色体上の遺伝子の配置(物理的遺伝子地図)を比較したところ,両者における遺伝子間距離が合致しない領域があることが明らかになっている。

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〔問〕

Ⅰ 文1について。文中の空欄1〜5に入る最も適切な語句を記せ。

Ⅱ 文1と文2について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(ア)に記述された動原体微小管の配置に関して,最も適切と思われる角度を,次の(1)〜(4)の中から1つ選べ。

(1) 30度

(2) 60度

(3) 90度

(4) 180度

B 下線部(イ)について。体細胞分裂と減数分裂時の DNA 複製と中心体の数の変動のしかたの違いについて,3行程度で述べよ。

C 下線部(ウ)について。動原体の配置はどのようなものであるか,以下の図(1)〜(4)から最も適切なものを1つ選べ。

p23a
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Ⅲ 文2と文3について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(エ)のキアズマ構造の形成が一部の染色体で欠損すると,精子や卵の形成,およびそれらの染色体の組成にどのような影響があると考えられるか,2行程度で説明せよ。

B 下線部(オ)のような解析方法を何というか,名称を記せ。

C 上記の方法で測定された組換え頻度1 %に対し,遺伝子間距離が 1cM(センチモルガン)と当初定義された。しかしその後,組換えをもたらす乗換えは,必ず減数分裂期 DNA 合成のあとにおこることが明らかになった。乗換えが1対の相同染色体で1回おこるケースでは,乗換えが生じない姉妹染色分体が1組存在する。したがって,相同染色体あたり1回の乗換えは,50 %の組換え頻度に相当することになる。一方,それほど離れていない遺伝子間で,上記Bの手法で距離を測定し,それらの結果をつなぎ合わせて染色体地図を作製した場合,キイロショウジョウバエの第3染色体の一方の末端から,他方の末端までは,105cM であった。以上の情報から,キイロショウジョウバエ第3染色体の,染色体1本あたりの平均乗換え回数を計算せよ。なお,計算式を記入のうえ,有効数字は1桁で答えること。

D Cのように,短区間の遺伝的距離をつなぎ合わせるのではなく,染色体の両方の末端に存在する遺伝子の表現型を用いて,組換え頻度を測定し,大まかな染色体全体長を,その2つの遺伝子の遺伝的距離から推定する方法もあるだろう。実際,キイロショウジョウバエの第3染色体の一方の末端に存在する遺伝子と,他方の末端に存在する遺伝子の間で組換え率を測定したところ,第3染色体の一方の末端から他方の末端までは,44cM であることがわかった。この値は,上記のCに示された距離 105cM よりかなり短い。「組換え頻度」と「乗換えの回数」という言葉を用いて,その理由を3行程度で述べよ。

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E 下線部(カ)について。ある染色体領域において,遺伝的な距離が物理的距離に比べて長い場合の説明として,小問CとDの内容もふまえたうえで,次の文章(1)〜(4)の中から不適切と考えられるものを,すべて選べ。

(1) その染色体領域内では,組換え頻度が相対的に高い。

(2) その染色体領域内には,組換え測定に適した表現型を持つ遺伝子の数が少ない。

(3) その染色体領域内では,組換えを活発に行う部位がまれにしか存在しない。

(4) その染色体領域内には,遺伝子の働きが抑制される領域が多く存在する。

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第2問

 次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。

〔文1〕

 ヒトのからだには,体外の環境が変化しても,体内部の状態や機能を一定に保とうとする性質があり,これを 1 という。1 には,(ア)内分泌系,自律神経系などにおけるフィードバックが大きな役割を果たしている。

 ここで水を大量に飲んだ時のからだの反応について考える。飲んだ水は吸収され循環系に入る。そうすると血液は薄められ,血しょう浸透圧は減少する。これにより 2 に存在する浸透圧受容器が反応し,その結果,3 からのバソプレッシンの分泌が 4 される。バソプレッシンの血中濃度が 5 い時は,腎臓での水の再吸収が減り,排泄量が増え,尿は低浸透圧となる。摂取された水はこれらの過程をへて尿として排泄され,血しょう浸透圧はごくわずかの変動範囲に保持されるのである。

〔文2〕

 腎臓は,尿をつくり有害な物質や過剰な物質を体外に排出するなどして,内部環境を一定の状態に保つはたらきをしている。尿をつくる単位構造はネフロンとよばれ,糸球体とそれに続く1本の腎細管(細尿管,尿細管)からなる(図2—1)。このネフロンが,1個の腎臓に約100〜120万個ある。

 ネフロンにおいて,血しょう中のある物質が毛細血管から尿へと排泄される過程について考える。血しょう中に含まれる物質は,まず腎臓の糸球体でろ過される。ろ過された物質は,その後,腎細管の上皮を介して再吸収されたり,逆に毛細血管から分泌されたりして,最終的に尿へと排泄される。つまり,(イ)ある物質の尿への排泄量は,ろ過,再吸収と分泌という3つの過程によって決定される。

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図2—1 ネフロンにおける物質のろ過,再吸収および分泌
図2—1 ネフロンにおける物質のろ過,再吸収および分泌

〔文3〕

 グルコースは,ネフロンでろ過され再吸収されるが,分泌されない物質である。糸球体の毛細血管でろ過されたグルコースは,腎細管の上皮細胞により再吸収され毛細血管に入る。血しょう中グルコース濃度(血糖値)が正常であれば,ろ過されたグルコースはすべて再吸収され,尿中には排泄されない。ところが血糖値が上昇してある値(閾値)をこえると,グルコースは尿中に排泄されるようになる(図2—2)。また,再吸収されないグルコースが腎細管中にあると,浸透圧の効果によって尿量が増える。

図2—2 血糖値とグルコースのろ過,排泄,再吸収量との関係
図2—2 血糖値とグルコースのろ過,排泄,再吸収量との関係
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〔問〕

Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。

A 文中の空欄1〜5に入る最も適切な語句を記せ。なお,空欄4には「促進」と「抑制」のどちらか,空欄5には「高」と「低」のどちらか適切な語句を選べ。

B 下線部(ア)について。以下の(1)〜(4)から誤った記述を1つ選べ。

(1) 内分泌腺から分泌されるホルモンは,血流によって全身に運ばれるが,特定の標的器官にのみ作用をおよぼす。

(2) 交感神経と副交感神経は,多くの場合,器官に対してたがいに反対の作用をおよぼして,そのはたらきを調節している。

(3) 交感神経が興奮すると,その末端からはアドレナリンが,副交感神経ではノルアドレナリンが分泌されて各器官に作用する。

(4) フィードバックには,負のフィードバックと正のフィードバックがある。

Ⅱ 文2について。表2—1は,腎臓における物質のろ過,再吸収,分泌について調べるために行った検査の測定値である。これらの測定値に基づいて次ページの小問に答えよ。

表2—1
表2—1
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A 物質 X は,糸球体でろ過され,腎細管で再吸収も分泌もされない物質で,また体内で代謝されない。この物質 X を静脈に注入し,動脈血しょう中の濃度が一定値を維持するように静脈への注入を続け,その後,一定時間内の尿を採取した。物質 X が単位時間に尿中に排泄される量(排泄量)(mg/分)を,尿流量(ml/分)と物質 X の尿中濃度(mg/ml)から算出せよ。なお,尿流量とは,単位時間に腎臓から排出される尿量のことである。

B 単位時間にろ過されるある物質の量は,ろ過負荷量(mg/分)とよばれ,その物質の血しょう中濃度(mg/ml)に比例する。ある物質のろ過負荷量を血しょう中濃度で割った値は,糸球体ろ過量(ml/分)とよばれ,さまざまな物質に対して共通である。腎細管で再吸収も分泌もされない物質の排泄量は,ろ過負荷量と同じ値となる。以上のことに基づいて,糸球体ろ過量(ml/分)を算出せよ。

C 下線部(イ)について。ある物質の排泄量は,ろ過負荷量,腎細管での再吸収量および分泌量で決定される。つまり,排泄量とろ過負荷量を比較することによって,その物質の再吸収や分泌について知ることができる。物質 Y を静脈に注入し,その後,一定時間内の尿および血しょう中濃度を測定した(表2—1)。物質 Y の排泄量(mg/分)と,ろ過負荷量(mg/分)を算出せよ。

D Cの結果から考えられることとして,正しいものを以下の(1)〜(5)から1つ選べ。

(1) 物質 Y は,糸球体でろ過されない。

(2) 物質 Y は,腎細管で再吸収も分泌もされない。

(3) 物質 Y は,腎細管での再吸収量が分泌量より少ない。

(4) 物質 Y は,腎細管での再吸収量と分泌量が同等である。

(5) 物質 Y は,腎細管での再吸収量が分泌量より多い。

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Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。

A 健常者の空腹時血糖値は 0.7〜1.0mg/ml である。ある糖尿病の患者の血糖値を測定したところ 4.0mg/ml であった。この患者に適量のインスリンを投与すると,血糖値は 0.9mg/ml まで低下した。インスリン投与後のこの患者に観察されたグルコースの尿中への排泄量と尿量の推移について,以下の記述の空欄6,7に適切な語句を,下の選択肢(1)〜(4)からそれぞれ1つ選べ。また,その理由についてそれぞれ1〜2行で説明せよ。

記述:グルコースの尿中への排泄は 6 ,尿量は 7 。

空欄6 (1) 消失し (2) 減少し (3) 増加し (4) 変化なく

空欄7 (1) 消失した (2) 減少した (3) 増加した (4) 変化しなかった

B ある物質の1分間の排泄量がどれだけの血しょう量に由来するかを示す値は,クリアランス(ml/分)とよばれ,排泄量を血しょう中濃度で割った値として求めることができる。これに基づき,グルコースのクリアランスと血糖値の関係を示したグラフと考えられるものを,図2—3の(1)〜(4)から1つ選べ。

図2—3 グルコースのクリアランスと血糖値の関係
図2—3 グルコースのクリアランスと血糖値の関係
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C インスリン欠乏が高血糖を引きおこす際にみられる現象を以下の(1)〜(7)から2つ選べ。

(1) タンパク質合成の促進

(2) グリコーゲン合成の抑制

(3) 脂肪分解の抑制

(4) 筋および脂肪細胞へのグルコースの取り込みの抑制

(5) アミノ酸生成の抑制

(6) 糸球体ろ過量の減少

(7) 尿流量の減少

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第3問

 次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。

〔文1〕

 呼吸は,生物が生きていくために必要なエネルギーを,ATP として獲得する手段である。ヒトの細胞では,呼吸はミトコンドリアで行われる。ミトコンドリアは外膜と内膜に囲まれ,クエン酸回路の酵素を 1 に,電子伝達系のタンパク質を 2 にもつ。クエン酸回路は,有機物を 3 に分解する異化作用の最終段階であり,この回路で取り出された電子が,電子伝達系にわたされる。電子が電子伝達系を流れるとエネルギーが発生するので,このエネルギーを利用して ATP が合成される。また,電子伝達系を流れた電子は酸素および水素イオンと結合し,その結果 4 がつくられる。このように酸素を電子の受容体とする呼吸を,酸素呼吸とよぶ。

〔文2〕

 多くの細菌はクエン酸回路と電子伝達系をもち,ミトコンドリアと同様に,有機物を基質とした酸素呼吸を行うことができる。ところが,細菌がもつ電子伝達系は多様性に富んでおり,細菌の中には,電子の受容体として酸素以外の物質(硝酸や硫酸など)を利用する呼吸を行うことができるものがいる。この呼吸を嫌気呼吸と総称する。さらに,無機物(アンモニアや硫化水素など)から取り出した電子を電子伝達系に流して ATP を合成することができる細菌もいる。これが化学合成細菌であり,電子の受容体としてはさまざまな物質が利用される。

 化学合成細菌と嫌気呼吸を行う細菌の具体例をみてみよう。土壌には,アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌がいる。前者はアンモニウムイオン(NH4+)を亜硝酸イオン(NO2−)に,後者は亜硝酸イオンを硝酸イオン(NO3−)に酸化して電子を得ることで酸素呼吸を行う。両細菌は常に一緒にいるので,土壌にアンモニウムイオンを入れると一気に硝酸イオンに変換されるようにみえる。このことを硝化作用とよび,また,両細菌をまとめて硝化細菌とよぶ。

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 土壌中には,脱窒素細菌もいる。この細菌は,有機物を基質として,酸素呼吸と嫌気呼吸の両方を行うことができる。この嫌気呼吸では,硝酸イオンが電子受容体となり,気体の窒素(N2)が生成される。これを硝酸呼吸とよぶ。窒素ガスは土壌から大気へ放出されるので,硝酸呼吸は脱窒作用ともよばれる。

〔文3〕

 土壌をガラス管につめ,上から硫酸アンモニウムの溶液を流すと,下から硫酸カルシウムの溶液が出てくる。これは,土壌中のカルシウムイオン(Ca2+)と溶液中のアンモニウムイオンとが交換することでおこる現象であり,土壌には外から入ってきた正荷電のイオンを保持する能力があることを意味する。一方,負荷電のイオンは土壌にほとんど保持されない。このような土壌の特性から,硝酸カリウムを畑にまいた場合,カリウムの肥料効果は十分に得られるものの,窒素の肥料効果はそれほど得られないということがおこる。これは,雨水が土壌に浸透し下降していく際に,カリウムイオン(K+)は土壌に保持されるのにたいして,硝酸イオンは地下水系にまで流されてしまうからである。では,硫酸アンモニウムを窒素肥料としてまいた場合には何がおこるのだろうか。土壌には硝化細菌と脱窒素細菌が多数生息するので,硝化作用と脱窒作用もはたらきそうである。このことを,水田を題材に考えてみよう。

 水田では,耕耘により土壌表面から 20cm 程度の深さに水漏れを防ぐ層(鋤床層)を作製し,それより上部の土壌を水と混合して作土層とし,これを水(田面水)でおおう。これにより,作土層は空気から遮断される。そのため作土層は,田面水と接する表層だけ(厚さ 1cm 程度)が好気的状態(酸化層)で,その下層は嫌気的状態(還元層)となっている。作土層の水は鋤床層からゆっくりと漏れ出るため,それに応じて田面水が作土層へ浸透していく(図3—1)。(ア)この状態の水田で,硫酸アンモニウムを窒素肥料として作土層の表面にまいても,その多くはイネに吸収される前に消失してしまい,十分な肥料効果は得られない。

 自然界には,大気中の窒素をアンモニアに変換する 5 細菌がいる。したがって自然界では,5 細菌と硝化細菌,脱窒素細菌の活動による,窒素→アンモニア→硝酸→窒素という循環系が機能している。

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図3—1 水田の構造
図3—1 水田の構造
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〔問〕

Ⅰ 文1について,空欄1〜4に入る最も適切な語句を記せ。

Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A 硝化細菌は,細胞を構成する有機物を無機物から合成して生きている。何からどのように合成しているのかを,1行で答えよ。

B アンモニア酸化細菌がアンモニウムイオンを酸化する過程には,アンモニアと酸素分子を結合させる反応が必要である。では,硝化細菌に嫌気呼吸を行う能力があるとして,嫌気的な条件で硝化作用は進行するのだろうか。進行するかしないかを,理由とともに3行程度で答えよ。

C 脱窒素細菌は,酸素と硝酸イオンの両方があると,酸素呼吸と硝酸呼吸のどちらを行うのだろうか。それを調べるために,十分量の有機物を含み,硝酸イオンの有無にのみ違いのある液体培地が入った2つの容器に,脱窒素細菌を少量(乾燥重量で 1mg)ずつ接種して静置培養し,増殖のようすを比較した。その結果を表3—1に示す。培養開始時の培地には一定量の酸素が溶けていること,ならびに,この細菌の酸素呼吸による酸素消費速度は,酸素が培地に溶けこむ速度よりもかなり速いことに留意して,以下の(a)と(b)に答えよ。

(a) 硝酸イオンのない培地では,培養20時間目から培養44時間目までの間に,細菌はほとんど増殖しなかった。その理由を,2行程度で答えよ。

(b) 硝酸イオンのある培地で,細菌は,培養20時間目と培養44時間目において,酸素呼吸と硝酸呼吸のどちらを行っていたのか。根拠とともに,2行程度で答えよ。

表3—1 脱窒素細菌の呼吸と増殖に対する硝酸イオンの効果
表3—1 脱窒素細菌の呼吸と増殖に対する硝酸イオンの効果

(*)気体の生成が泡としてみえた。

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Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。

A 空欄5に入る最も適切な語句を記せ。

B 水田土壌の酸化層ならびに還元層において,硝化細菌と脱窒素細菌による硝化作用と脱窒作用はおこるのだろうか。以下の(a)〜(d)について,おこるなら「○」で,おこらないなら「×」で答えよ。

(a) 酸化層における,硝化細菌による硝化作用

(b) 酸化層における,脱窒素細菌による脱窒作用

(c) 還元層における,硝化細菌による硝化作用

(d) 還元層における,脱窒素細菌による脱窒作用

C 下線部(ア)について。なぜそのようなことがおこるのかを,5行程度で説明せよ。

D 硫酸アンモニウムは水田のどの部分に与えると,安定してイネに吸収されることになるのだろうか。根拠とともに,2行程度で答えよ。