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生 物
第1問
次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。
〔文1〕
細胞分裂が正常に実行されるためには,さまざまなしくみが連携して機能する巧妙なしかけが必要である。たとえば,細胞が1回分裂する全過程を細胞周期というが,1回の体細胞の細胞周期で一度だけ DNA 複製がおこるようなしかけがある。また,DNA 複製によって1対の姉妹染色分体という染色体構造ができるが,分裂中期までにこの対が離れてしまうと,正確な染色体の分配ができなくなる。これを防ぐために,姉妹染色分体が,ある種のタンパク質(姉妹染色分体結合タンパク質)を介して結合し,近接した状態に配置されるしかけがある。
動物の体細胞の細胞周期では,分裂 1 期に染色体を構成するクロマチンが凝縮して,分裂期染色体が構築される。クロマチンは,2 というタンパク質に DNA が巻きついて,ビーズ状になったものである。さらに,間期から分裂期まで核膜近傍に存在する中心体が2つに増え,これを起点として,微小管とよばれるタンパク質の繊維(紡錘糸)からなる紡錘体が形成される。分裂中期までには,染色体の狭窄部位に存在する動原体に微小管が結合し,この微小管(動原体微小管)を介して両極へ染色体が引っ張られる。(ア) 分裂中期では,動原体微小管は姉妹染色分体上でたがいに特定の角度で配置される。そのため,分裂中期に 3 面に縦列した染色体上の動原体に,両極からの動原体微小管を介した張力が発生し,均衡することになる。細胞にはこの張力の均衡状態を監視するはたらきがあり,動原体微小管において十分な均衡した張力が生じるまでの間,細胞周期を分裂中期に停止するしかけ(紡錘体チェックポイント)が存在する。
全染色体について十分に均衡張力が生じると,細胞内のある種のタンパク質分解酵素が活性化し,動原体部位に多く存在する姉妹染色分体結合タンパク質を分解する。これを契機に姉妹染色分体が両極に向かって移動を開始する。また,動物細胞では,紡錘体の軸に直交するかたちで 3 面が規定される。その延長上の細胞膜に収縮環とよばれる構造が形成され,細胞をくびり切る 4 を実行するため,分離した姉妹染色分体のセットがもれなく分配される。このような連携的なしかけによって,姉妹染色分体の 5 細胞への均等分配が保証される。
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〔文2〕
減数分裂は,動物では精子や卵などの配偶子を形成する際にのみ見られる分裂様式である。減数分裂では(イ) DNA の複製の後,2回の連続する染色体分配がおこるため,二倍体(複相)の生物では最終的に一倍体(単相)の配偶子が形成される。減数分裂の際には,DNA 複製後の姉妹染色分体の連結をへたのち,両親由来の相同染色体が対合し,二価染色体が形成される。(ウ) 二価染色体上の動原体に微小管が結合し,減数第一分裂では両極に向かって相同染色体が分離される。この際にも,動原体微小管に生じる張力の均衡を監視するはたらきがあるが,この場合,相同染色体間をつなぎとめているのは,姉妹染色分体結合タンパク質ではなく,乗換えによって形成された(エ) キアズマという構造である。
〔文3〕
(オ) 連鎖した3点の遺伝子の形質を用いて,それぞれの遺伝子間の組換え率を測定し,それをくり返すことで,染色体地図を描くことができる。これはモーガンの学派が提唱した「遺伝子間距離と乗換え頻度は比例関係にある」という仮説と,染色体上のいずれの領域においても乗換え(もしくは組換え)が一様に生じることが,前提となっている。しかしながら,(カ) 上記の方法で得られた染色体地図と,ゲノム計画で明らかになった染色体上の遺伝子の配置(物理的遺伝子地図)を比較したところ,両者における遺伝子間距離が合致しない領域があることが明らかになっている。
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〔問〕
Ⅰ 文1について。文中の空欄1〜5に入る最も適切な語句を記せ。
Ⅱ 文1と文2について,以下の小問に答えよ。
A 下線部(ア)に記述された動原体微小管の配置に関して,最も適切と思われる角度を,次の(1)〜(4)の中から1つ選べ。
(1) 30度
(2) 60度
(3) 90度
(4) 180度
B 下線部(イ)について。体細胞分裂と減数分裂時の DNA 複製と中心体の数の変動のしかたの違いについて,3行程度で述べよ。
C 下線部(ウ)について。動原体の配置はどのようなものであるか,以下の図(1)〜(4)から最も適切なものを1つ選べ。
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Ⅲ 文2と文3について,以下の小問に答えよ。
A 下線部(エ)のキアズマ構造の形成が一部の染色体で欠損すると,精子や卵の形成,およびそれらの染色体の組成にどのような影響があると考えられるか,2行程度で説明せよ。
B 下線部(オ)のような解析方法を何というか,名称を記せ。
C 上記の方法で測定された組換え頻度1 %に対し,遺伝子間距離が 1 c M (センチモルガン)と当初定義された。しかしその後,組換えをもたらす乗換えは,必ず減数分裂期 DNA 合成のあとにおこることが明らかになった。乗換えが1対の相同染色体で1回おこるケースでは,乗換えが生じない姉妹染色分体が1組存在する。したがって,相同染色体あたり1回の乗換えは,50 %の組換え頻度に相当することになる。一方,それほど離れていない遺伝子間で,上記Bの手法で距離を測定し,それらの結果をつなぎ合わせて染色体地図を作製した場合,キイロショウジョウバエの第3染色体の一方の末端から,他方の末端までは,105 c M であった。以上の情報から,キイロショウジョウバエ第3染色体の,染色体1本あたりの平均乗換え回数を計算せよ。なお,計算式を記入のうえ,有効数字は1桁で答えること。
D Cのように,短区間の遺伝的距離をつなぎ合わせるのではなく,染色体の両方の末端に存在する遺伝子の表現型を用いて,組換え頻度を測定し,大まかな染色体全体長を,その2つの遺伝子の遺伝的距離から推定する方法もあるだろう。実際,キイロショウジョウバエの第3染色体の一方の末端に存在する遺伝子と,他方の末端に存在する遺伝子の間で組換え率を測定したところ,第3染色体の一方の末端から他方の末端までは,44 c M であることがわかった。この値は,上記のCに示された距離 105 c M よりかなり短い。「組換え頻度」と「乗換えの回数」という言葉を用いて,その理由を3行程度で述べよ。
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E 下線部(カ)について。ある染色体領域において,遺伝的な距離が物理的距離に比べて長い場合の説明として,小問CとDの内容もふまえたうえで,次の文章(1)〜(4)の中から不適切と考えられるものを,すべて選べ。
(1) その染色体領域内では,組換え頻度が相対的に高い。
(2) その染色体領域内には,組換え測定に適した表現型を持つ遺伝子の数が少ない。
(3) その染色体領域内では,組換えを活発に行う部位がまれにしか存在しない。
(4) その染色体領域内には,遺伝子の働きが抑制される領域が多く存在する。
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第2問
次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。
〔文1〕
ヒトのからだには,体外の環境が変化しても,体内部の状態や機能を一定に保とうとする性質があり,これを 1 という。1 には,(ア) 内分泌系,自律神経系などにおけるフィードバックが大きな役割を果たしている。
ここで水を大量に飲んだ時のからだの反応について考える。飲んだ水は吸収され循環系に入る。そうすると血液は薄められ,血しょう浸透圧は減少する。これにより 2 に存在する浸透圧受容器が反応し,その結果,3 からのバソプレッシンの分泌が 4 される。バソプレッシンの血中濃度が 5 い時は,腎臓での水の再吸収が減り,排泄量が増え,尿は低浸透圧となる。摂取された水はこれらの過程をへて尿として排泄され,血しょう浸透圧はごくわずかの変動範囲に保持されるのである。
〔文2〕
腎臓は,尿をつくり有害な物質や過剰な物質を体外に排出するなどして,内部環境を一定の状態に保つはたらきをしている。尿をつくる単位構造はネフロンとよばれ,糸球体とそれに続く1本の腎細管(細尿管,尿細管)からなる(図2—1)。このネフロンが,1個の腎臓に約100〜120万個ある。
ネフロンにおいて,血しょう中のある物質が毛細血管から尿へと排泄される過程について考える。血しょう中に含まれる物質は,まず腎臓の糸球体でろ過される。ろ過された物質は,その後,腎細管の上皮を介して再吸収されたり,逆に毛細血管から分泌されたりして,最終的に尿へと排泄される。つまり,(イ) ある物質の尿への排泄量は,ろ過,再吸収と分泌という3つの過程によって決定される。
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図2—1 ネフロンにおける物質のろ過,再吸収および分泌
〔文3〕
グルコースは,ネフロンでろ過され再吸収されるが,分泌されない物質である。糸球体の毛細血管でろ過されたグルコースは,腎細管の上皮細胞により再吸収され毛細血管に入る。血しょう中グルコース濃度(血糖値)が正常であれば,ろ過されたグルコースはすべて再吸収され,尿中には排泄されない。ところが血糖値が上昇してある値(閾値)をこえると,グルコースは尿中に排泄されるようになる(図2—2)。また,再吸収されないグルコースが腎細管中にあると,浸透圧の効果によって尿量が増える。
図2—2 血糖値とグルコースのろ過,排泄,再吸収量との関係
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〔問〕
Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。
A 文中の空欄1〜5に入る最も適切な語句を記せ。なお,空欄4には「促進」と「抑制」のどちらか,空欄5には「高」と「低」のどちらか適切な語句を選べ。
B 下線部(ア)について。以下の(1)〜(4)から誤った記述を1つ選べ。
(1) 内分泌腺から分泌されるホルモンは,血流によって全身に運ばれるが,特定の標的器官にのみ作用をおよぼす。
(2) 交感神経と副交感神経は,多くの場合,器官に対してたがいに反対の作用をおよぼして,そのはたらきを調節している。
(3) 交感神経が興奮すると,その末端からはアドレナリンが,副交感神経ではノルアドレナリンが分泌されて各器官に作用する。
(4) フィードバックには,負のフィードバックと正のフィードバックがある。
Ⅱ 文2について。表2—1は,腎臓における物質のろ過,再吸収,分泌について調べるために行った検査の測定値である。これらの測定値に基づいて次ページの小問に答えよ。
表2—1
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A 物質 X は,糸球体でろ過され,腎細管で再吸収も分泌もされない物質で,また体内で代謝されない。この物質 X を静脈に注入し,動脈血しょう中の濃度が一定値を維持するように静脈への注入を続け,その後,一定時間内の尿を採取した。物質 X が単位時間に尿中に排泄される量(排泄量)(mg/分)を,尿流量(ml/分)と物質 X の尿中濃度(mg/ml)から算出せよ。なお,尿流量とは,単位時間に腎臓から排出される尿量のことである。
B 単位時間にろ過されるある物質の量は,ろ過負荷量(mg/分)とよばれ,その物質の血しょう中濃度(mg/ml)に比例する。ある物質のろ過負荷量を血しょう中濃度で割った値は,糸球体ろ過量(ml/分)とよばれ,さまざまな物質に対して共通である。腎細管で再吸収も分泌もされない物質の排泄量は,ろ過負荷量と同じ値となる。以上のことに基づいて,糸球体ろ過量(ml/分)を算出せよ。
C 下線部(イ)について。ある物質の排泄量は,ろ過負荷量,腎細管での再吸収量および分泌量で決定される。つまり,排泄量とろ過負荷量を比較することによって,その物質の再吸収や分泌について知ることができる。物質 Y を静脈に注入し,その後,一定時間内の尿および血しょう中濃度を測定した(表2—1)。物質 Y の排泄量(mg/分)と,ろ過負荷量(mg/分)を算出せよ。
D Cの結果から考えられることとして,正しいものを以下の(1)〜(5)から1つ選べ。
(1) 物質 Y は,糸球体でろ過されない。
(2) 物質 Y は,腎細管で再吸収も分泌もされない。
(3) 物質 Y は,腎細管での再吸収量が分泌量より少ない。
(4) 物質 Y は,腎細管での再吸収量と分泌量が同等である。
(5) 物質 Y は,腎細管での再吸収量が分泌量より多い。
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Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。
A 健常者の空腹時血糖値は 0.7 〜1.0 m g / m l である。ある糖尿病の患者の血糖値を測定したところ 4.0 m g / m l であった。この患者に適量のインスリンを投与すると,血糖値は 0.9 m g / m l まで低下した。インスリン投与後のこの患者に観察されたグルコースの尿中への排泄量と尿量の推移について,以下の記述の空欄6,7に適切な語句を,下の選択肢(1)〜(4)からそれぞれ1つ選べ。また,その理由についてそれぞれ1〜2行で説明せよ。
記述:グルコースの尿中への排泄は 6 ,尿量は 7 。
空欄6 (1) 消失し (2) 減少し (3) 増加し (4) 変化なく
空欄7 (1) 消失した (2) 減少した (3) 増加した (4) 変化しなかった
B ある物質の1分間の排泄量がどれだけの血しょう量に由来するかを示す値は,クリアランス(ml/分)とよばれ,排泄量を血しょう中濃度で割った値として求めることができる。これに基づき,グルコースのクリアランスと血糖値の関係を示したグラフと考えられるものを,図2—3の(1)〜(4)から1つ選べ。
図2—3 グルコースのクリアランスと血糖値の関係
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C インスリン欠乏が高血糖を引きおこす際にみられる現象を以下の(1)〜(7)から2つ選べ。
(1) タンパク質合成の促進
(2) グリコーゲン合成の抑制
(3) 脂肪分解の抑制
(4) 筋および脂肪細胞へのグルコースの取り込みの抑制
(5) アミノ酸生成の抑制
(6) 糸球体ろ過量の減少
(7) 尿流量の減少
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第3問
次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。
〔文1〕
呼吸は,生物が生きていくために必要なエネルギーを,ATP として獲得する手段である。ヒトの細胞では,呼吸はミトコンドリアで行われる。ミトコンドリアは外膜と内膜に囲まれ,クエン酸回路の酵素を 1 に,電子伝達系のタンパク質を 2 にもつ。クエン酸回路は,有機物を 3 に分解する異化作用の最終段階であり,この回路で取り出された電子が,電子伝達系にわたされる。電子が電子伝達系を流れるとエネルギーが発生するので,このエネルギーを利用して ATP が合成される。また,電子伝達系を流れた電子は酸素および水素イオンと結合し,その結果 4 がつくられる。このように酸素を電子の受容体とする呼吸を,酸素呼吸とよぶ。
〔文2〕
多くの細菌はクエン酸回路と電子伝達系をもち,ミトコンドリアと同様に,有機物を基質とした酸素呼吸を行うことができる。ところが,細菌がもつ電子伝達系は多様性に富んでおり,細菌の中には,電子の受容体として酸素以外の物質(硝酸や硫酸など)を利用する呼吸を行うことができるものがいる。この呼吸を嫌気呼吸と総称する。さらに,無機物(アンモニアや硫化水素など)から取り出した電子を電子伝達系に流して ATP を合成することができる細菌もいる。これが化学合成細菌であり,電子の受容体としてはさまざまな物質が利用される。
化学合成細菌と嫌気呼吸を行う細菌の具体例をみてみよう。土壌には,アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌がいる。前者はアンモニウムイオン(N H 4 + )を亜硝酸イオン(N O 2 − )に,後者は亜硝酸イオンを硝酸イオン(N O 3 − )に酸化して電子を得ることで酸素呼吸を行う。両細菌は常に一緒にいるので,土壌にアンモニウムイオンを入れると一気に硝酸イオンに変換されるようにみえる。このことを硝化作用とよび,また,両細菌をまとめて硝化細菌とよぶ。
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土壌中には,脱窒素細菌もいる。この細菌は,有機物を基質として,酸素呼吸と嫌気呼吸の両方を行うことができる。この嫌気呼吸では,硝酸イオンが電子受容体となり,気体の窒素(N 2 )が生成される。これを硝酸呼吸とよぶ。窒素ガスは土壌から大気へ放出されるので,硝酸呼吸は脱窒作用ともよばれる。
〔文3〕
土壌をガラス管につめ,上から硫酸アンモニウムの溶液を流すと,下から硫酸カルシウムの溶液が出てくる。これは,土壌中のカルシウムイオン(C a 2 + )と溶液中のアンモニウムイオンとが交換することでおこる現象であり,土壌には外から入ってきた正荷電のイオンを保持する能力があることを意味する。一方,負荷電のイオンは土壌にほとんど保持されない。このような土壌の特性から,硝酸カリウムを畑にまいた場合,カリウムの肥料効果は十分に得られるものの,窒素の肥料効果はそれほど得られないということがおこる。これは,雨水が土壌に浸透し下降していく際に,カリウムイオン(K + )は土壌に保持されるのにたいして,硝酸イオンは地下水系にまで流されてしまうからである。では,硫酸アンモニウムを窒素肥料としてまいた場合には何がおこるのだろうか。土壌には硝化細菌と脱窒素細菌が多数生息するので,硝化作用と脱窒作用もはたらきそうである。このことを,水田を題材に考えてみよう。
水田では,耕耘により土壌表面から 20 c m 程度の深さに水漏れを防ぐ層(鋤床層)を作製し,それより上部の土壌を水と混合して作土層とし,これを水(田面水)でおおう。これにより,作土層は空気から遮断される。そのため作土層は,田面水と接する表層だけ(厚さ 1 c m 程度)が好気的状態(酸化層)で,その下層は嫌気的状態(還元層)となっている。作土層の水は鋤床層からゆっくりと漏れ出るため,それに応じて田面水が作土層へ浸透していく(図3—1)。(ア) この状態の水田で,硫酸アンモニウムを窒素肥料として作土層の表面にまいても,その多くはイネに吸収される前に消失してしまい,十分な肥料効果は得られない。
自然界には,大気中の窒素をアンモニアに変換する 5 細菌がいる。したがって自然界では,5 細菌と硝化細菌,脱窒素細菌の活動による,窒素→アンモニア→硝酸→窒素という循環系が機能している。
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図3—1 水田の構造
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〔問〕
Ⅰ 文1について,空欄1〜4に入る最も適切な語句を記せ。
Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。
A 硝化細菌は,細胞を構成する有機物を無機物から合成して生きている。何からどのように合成しているのかを,1行で答えよ。
B アンモニア酸化細菌がアンモニウムイオンを酸化する過程には,アンモニアと酸素分子を結合させる反応が必要である。では,硝化細菌に嫌気呼吸を行う能力があるとして,嫌気的な条件で硝化作用は進行するのだろうか。進行するかしないかを,理由とともに3行程度で答えよ。
C 脱窒素細菌は,酸素と硝酸イオンの両方があると,酸素呼吸と硝酸呼吸のどちらを行うのだろうか。それを調べるために,十分量の有機物を含み,硝酸イオンの有無にのみ違いのある液体培地が入った2つの容器に,脱窒素細菌を少量(乾燥重量で 1 m g )ずつ接種して静置培養し,増殖のようすを比較した。その結果を表3—1に示す。培養開始時の培地には一定量の酸素が溶けていること,ならびに,この細菌の酸素呼吸による酸素消費速度は,酸素が培地に溶けこむ速度よりもかなり速いことに留意して,以下の(a)と(b)に答えよ。
(a) 硝酸イオンのない培地では,培養20時間目から培養44時間目までの間に,細菌はほとんど増殖しなかった。その理由を,2行程度で答えよ。
(b) 硝酸イオンのある培地で,細菌は,培養20時間目と培養44時間目において,酸素呼吸と硝酸呼吸のどちらを行っていたのか。根拠とともに,2行程度で答えよ。
表3—1 脱窒素細菌の呼吸と増殖に対する硝酸イオンの効果
(*)気体の生成が泡としてみえた。
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Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。
A 空欄5に入る最も適切な語句を記せ。
B 水田土壌の酸化層ならびに還元層において,硝化細菌と脱窒素細菌による硝化作用と脱窒作用はおこるのだろうか。以下の(a)〜(d)について,おこるなら「○」で,おこらないなら「×」で答えよ。
(a) 酸化層における,硝化細菌による硝化作用
(b) 酸化層における,脱窒素細菌による脱窒作用
(c) 還元層における,硝化細菌による硝化作用
(d) 還元層における,脱窒素細菌による脱窒作用
C 下線部(ア)について。なぜそのようなことがおこるのかを,5行程度で説明せよ。
D 硫酸アンモニウムは水田のどの部分に与えると,安定してイネに吸収されることになるのだろうか。根拠とともに,2行程度で答えよ。
第1問 細胞分裂のしかけと染色体地図 — 引っぱり合い・中心体・乗換えの数え方 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 細胞分裂を「正しく分けるためのしかけ」という目で見る問題。文1は体細胞分裂(姉妹染色分体を両極へ)、文2は減数分裂(第一分裂で相同染色体を両極へ)、文3は減数分裂の乗換えを使って遺伝子の並びを調べる方法(染色体地図)を扱っている。
文1・文2の一番の道具は、「つながっている物を、両側から引っぱる」 という見方。体細胞分裂では姉妹染色分体が結合タンパク質でつながり、減数第一分裂では相同染色体がキアズマでつながっている。つながった物を反対の極から引くと張力が生まれ、細胞はその張力のつり合いを確かめてから分離を始める。
文3の道具は、組換え頻度は「乗換えが奇数回起きたか」しか見ていない こと。近い2点なら乗換えは0回か1回なので組換え頻度=乗換えの多さと見てよいが、遠い2点では2回・3回と起こり、偶数回は見えなくなる。これが小問C〜Eをつなぐ筋になる。
Ⅰ クロマチンが凝縮して太い染色体が見えるようになるのは、分裂期のはじめ(前期)。
クロマチンは、DNA がヒストンというタンパク質に巻きついたビーズ状の構造(ヌクレオソーム)がつながったもの。
分裂中期に染色体が並ぶ面は、両極のちょうど真ん中の赤道面。動物細胞では、この赤道面の延長上の細胞膜に収縮環ができ、細胞をくびり切る。これが細胞質分裂で、分離した姉妹染色分体のセットが2つの娘細胞に1つずつ入る。
答え 1 前,2 ヒストン,3 赤道,4 細胞質分裂,5 娘
Ⅱ A 姉妹染色分体の2つの動原体に、両極からの微小管が1本ずつついて引いている。2本の力の大きさが同じでも、向きがそろっていなければ、足し合わせた力(合力)が残る。
2本の力の間の角度を θ とすると、合力の大きさは
2 T cos θ 2
になる(T は1本の力)。これが 0 になるのは θ = 180 ∘ 、つまり2本がまっすぐ反対を向くときだけ。30度・60度・90度では合力が残り、染色体は赤道面から流されてしまう。
文中で「両極からの張力が発生し,均衡する」と書かれているのは、この 180度の配置のこと。姉妹を引き離す向きの力(張力)も、180度のときに一番大きくなる。デモで角度を下げると、赤い矢印(合力)の分だけ染色体がずれていく。
Ⅱ B 体細胞分裂と減数分裂で、「DNA 複製」「中心体の複製」「分裂」の3つの出来事の順番を並べてみる。
体細胞分裂では、間期に DNA が複製され、中心体も1つから2つに増え、分裂で1つずつ娘細胞へ入る。DNA 複製と中心体の複製が、分裂1回ごとに1組ずつくり返される。
減数分裂では、DNA 複製は第一分裂の前の1回だけで、第一分裂と第二分裂の間には起こらない(だから DNA 量が体細胞の半分の配偶子ができる)。ところが第二分裂でも紡錘体の両極が要るので、中心体は第二分裂の前にもう一度複製される 。つまり DNA は1回、中心体は2回複製され、2つの出来事の組が外れている。
デモでは、仮に「中心体は DNA 複製のときだけ増える」としてみると、第二分裂の前に中心体が1つしかなく、紡錘体が2極にならずに分裂できない細胞が出る。違いを書くときは、DNA 複製と中心体の複製それぞれについて、体細胞分裂と減数分裂を比べる形にするとよい。
答え 体細胞分裂では,分裂の前にDNA複製と中心体の複製が1回ずつ起こり,分裂ごとにくり返される。減数分裂では,DNA複製は第一分裂の前の1回だけで第一分裂と第二分裂の間には起こらないが,中心体は第二分裂の前にも複製される。(109字)
Ⅱ C 図の読み方:白い染色体と灰色の染色体が重なって描かれていて、これが相同染色体の2本。それぞれが左右2本の姉妹染色分体からなる(「姉妹染色分体」の線は、白い方の左右2本を指している)。
減数第一分裂で分けたいのは相同染色体なので、1本の相同染色体の姉妹染色分体2本は同じ極へ、相同染色体どうしは反対の極へ 行く必要がある。そのためには、姉妹の動原体がそろって同じ極を向き、2本の相同染色体の動原体が反対を向いていなければならない。
(1)(2) は、姉妹の動原体がそれぞれ反対の極を向いている。これは体細胞分裂の向きで、姉妹が別れてしまう。(4) は、2本の相同染色体の動原体がどちらも同じ極を向いていて、両方が同じ極へ行く(張力も生まれない)。姉妹がそろって一方を向き、相同染色体どうしが反対を向いているのは (3) だけ。
Ⅲ A キアズマには2つの意味がある。1つは乗換えの跡。もう1つは、相同染色体どうしをつなぎとめるロープ の役目。文2に「相同染色体間をつなぎとめているのは…キアズマ」とあるのはこちら。
キアズマが無いと、その相同染色体の2本は離ればなれで、両極から引かれても張力が生まれない。細胞が張力を見はっているなら、分裂が止まって配偶子の形成そのものが減る。止まらずに進めば、2本がそれぞれ勝手に極を選ぶので、同じ極へ2本とも行くことが起こる。
2本が勝手に極を選ぶと、反対の極へ分かれる確率は 1 2 。同じ極へ行った場合、できる配偶子はその染色体が1本多いか、1本足りない。デモでは、4 対のうち 1 対でキアズマが無いだけで、染色体数の正しい配偶子が約半分になる。
答え 相同染色体をつなぎとめられず張力が均衡しないため,分裂が止まって配偶子の形成が減るか,相同染色体が不均等に分配され染色体数に過不足のある配偶子ができる。(76字)
Ⅲ B 連鎖した3つの遺伝子を同時に調べ、2つずつの間の組換え頻度から3つの並び順と距離を決める方法。3つの間の距離は「両端の2つの間の距離=間の2区間の和」におおよそなるので、真ん中にある遺伝子がわかる。これをくり返して地図をつないでいく。
Ⅲ C 問題文の約束を順に使う。組換え頻度 1% が 1 c M で、乗換えは DNA 複製のあとの4本の染色分体のうち2本の間で起こる。1回の乗換えでは、4本のうち2本が組換え型、2本(乗換えに加わらなかった、それぞれの姉妹染色分体)が元のままなので、組換え頻度は 50%。つまり相同染色体1対あたり乗換え1回=50 cM 。
短い区間をつないだ第3染色体の全長は 105 c M なので、1対あたりの平均の乗換えの回数は
105 ÷ 50 = 2.1
デモでは、乗換えを1対あたり平均 2.1 回、でたらめな場所で起こす減数分裂を2万回さいころで回し、短い区間の組換え頻度を足すと 105 に近い値になることを確かめている。
Ⅲ D 両端の遺伝子の間で乗換えが起きても、配偶子に入る1本の染色分体の上で乗換えが2回(偶数回)起きると、両端の組み合わせは元にもどる 。1回目で入れかわり、2回目でもう一度入れかわるからである。すると、乗換えは起きているのに、両端の遺伝子だけを見ると組換えは見えない。
ここで数えているのは、配偶子に入る1本の染色分体が加わった乗換え の数。二価染色体全体で2回の乗換えでも、1回目が染色分体 A と C、2回目が B と D のように別々の2本ずつなら、4本とも1回ずつしか加わらないので、4本とも両端が組換え型になる。同じ2本の間で2回起きたときに、その2本が元にもどる。3本が関わる2回なら、2本だけが組換え型になる。いろいろな場合があるので、両端だけを見ると、乗換えの一部が見えなくなる。
遠く離れた2点の間では乗換えが何回も起こりやすいので、この「見えない乗換え」が多くなる。組換え頻度は乗換えの回数ではなく「奇数回だったかどうか」を数えていることになり、どれだけ遠くても 50% をこえない。
短い区間では乗換えはほとんど0回か1回なので、組換え頻度が乗換えの回数をそのまま表す。それを足し合わせた 105 c M は乗換えの回数を正しく数えた長さで、両端を直接測った 44 c M は見えない乗換えの分だけ短い。実際、平均 2.1 回の乗換えがでたらめに起こるとすると、両端の組換え頻度は約 44% になり、2つの数字が同じ乗換えの回数で説明できる。
答え 離れた遺伝子間では乗換えが2回以上起こりやすく,同じ染色分体に偶数回の乗換えが起こると両端の遺伝子の組み合わせが元に戻り,組換えとして検出されない。そのため組換え頻度は乗換えの回数を反映せず50%をこえず,短い区間の和より小さくなる。(117字)
Ⅲ E 「遺伝的な距離が物理的距離に比べて長い」とは、同じ長さの DNA の中で組換えが多く見つかる、ということ。C・D の考えでは、遺伝的距離は乗換えの多さを数えたものなので、その領域では乗換え(組換え)がよく起こっている 。
(1) は「組換え頻度が相対的に高い」で、そのまま合う。
(2) 地図に使える遺伝子が少ないと、区間が長くなって偶数回の乗換えを見のがし、D と同じ理由で距離は短く 出る。(3) 組換えが起こりやすい部位がまれなら、乗換えは少なく距離は短くなる。(4) 遺伝子のはたらきが抑えられた領域(染色体が固く凝縮した部分)は、乗換えも起こりにくいことが多い。どれも「短くなる」向きなので、長い場合の説明としては合わない。
デモで目印の数を減らすと地図が縮み、真ん中に乗換えを集めるとそこだけ地図が伸びる。
第2問 腎臓のろ過・再吸収・分泌 — 尿の数字から体の中を逆算する 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 体の内部の状態を一定に保つしくみを、水の量(文1)と、腎臓で物質がどう尿に出ていくか(文2・文3)で考える問題。
文1の道具は負のフィードバック 。ずれ(浸透圧が下がった)を感じて、ずれを打ち消す向き(水を捨てる)にはたらきを変える。
文2・文3の道具は、尿に出た量=こされた量−吸いもどした量+つけ足した量 という収支。濃さ(mg/ml)ではなく、1 分あたりの量(mg/分)で考えるのがこつ。腎細管では水も大量に再吸収されるので、濃さは水の量で大きく変わってしまうが、物質の量は再吸収か分泌がない限り変わらない。
Ⅰ A 体外の環境が変わっても体内の状態を一定に保とうとする性質が恒常性(ホメオスタシス)。
水を飲んで血しょう浸透圧が下がると、それを感じるのは間脳の視床下部にある浸透圧受容器。バソプレッシンは視床下部の神経分泌細胞でつくられ、脳下垂体後葉から血液中に放出される。
バソプレッシンは腎臓(集合管)での水の再吸収を進めるホルモン。浸透圧が下がったときは水を捨てたいので、分泌は抑えられ、血中濃度が低くなると再吸収が減って、うすい尿がたくさん出る。デモでは、1 L 飲むと尿が一時 16 ml/分 近くまでふえ、6 時間で飲んだ分ほぼ全部が出て浸透圧が元にもどる。
答え 1 恒常性(ホメオスタシス),2 間脳の視床下部,3 脳下垂体後葉,4 抑制,5 低
Ⅰ B 1つずつ確かめる。(1) ホルモンは血液で全身に運ばれるが、受容体をもつ標的器官にだけはたらく。正しい。
(2) 交感神経と副交感神経は、多くの器官に両方が来ていて、たがいに反対のはたらきをする(拮抗的にはたらく)。正しい。
(3) 交感神経の末端から出る神経伝達物質はノルアドレナリン、副交感神経の末端からはアセチルコリン。アドレナリンは副腎髄質から出るホルモンなので、この記述は入れちがっている。
(4) 結果が原因を弱める負のフィードバックのほかに、結果が原因をさらに強める正のフィードバックもある。正しい。
Ⅱ A 排泄量は、1 分間に出た尿の中にふくまれる X の量。尿流量(1 分間の尿の体積)に、尿 1 ml あたりの X の量(尿中濃度)をかければよい。
0.9 ml/分 × 35 mg/ml
単位も「ml/分 × mg/ml = mg/分」と、ml が消えて正しい単位になる。
答え 0.9 m l / 分 × 35 m g / m l = 31.5 m g / 分
Ⅱ B X は再吸収も分泌もされないので、こされた X は全部そのまま尿に出る。だから X の排泄量=X のろ過負荷量 。
ろ過負荷量は「1 分間にこされた血しょうの体積 × 血しょう中濃度」なので、1 分間にこされた血しょうの体積(糸球体ろ過量)は、ろ過負荷量を血しょう中濃度で割れば出る。
糸球体ろ過量 = 31.5 mg/分 0.25 mg/ml
言いかえると、「尿に出た 31.5 mg の X は、何 ml の血しょうにふくまれていた分か」を数えている。デモでは、腎細管を細かく区切って水を少しずつ吸いもどす計算で、出口の X の濃さが 35 になる入口の量をさがしても同じ値になる。
Ⅱ C Y の排泄量は A と同じく、尿流量 × 尿中濃度。
Y のろ過負荷量は、糸球体ろ過量(B で求めた、どの物質にも共通の値)× Y の血しょう中濃度。
2つの数字は、単位が同じ mg/分 なので、そのまま大小をくらべられる。これが D につながる。
答え 排泄量 0.9 × 15 = 13.5 m g / 分 ,ろ過負荷量 126 × 0.02 = 2.52 m g / 分
Ⅱ D C の結果では、排泄量(13.5)がろ過負荷量(2.52)の 5 倍以上ある。こされた量より多く尿に出ているので、腎細管でつけ足された (分泌された)分がある。
再吸収があったとしても、分泌がそれより多ければ排泄量はろ過負荷量より多くなる。つまり「再吸収量<分泌量」。
(2)(4) なら排泄量=ろ過負荷量、(5) なら排泄量<ろ過負荷量になるはずで、どれも合わない。(1) は、糸球体ろ過量は物質によらず共通という B の約束と、Y が血しょう中にある(0.02 mg/ml)ことから、Y もこされていると考えられるので選べない。デモの腎細管のグラフでは、Y の量が入口から出口へ右上がりになる。
Ⅲ A 図2—2 では、血糖値が閾値(約 2.5 mg/ml)より低いうちは、ろ過量と再吸収量が重なっていて、排泄量は 0。再吸収のしくみには上限があり、それをこえた分だけが尿に出る。
インスリン投与後の血糖値 0.9 m g / m l は閾値よりずっと低いので、こされたグルコースは全部再吸収され、尿中への排泄はなくなる。空欄6 は「減少」ではなく「消失」の選択肢を選ぶ。
尿量については文3の最後の文がかぎ。再吸収されないグルコースが腎細管にあると、その浸透圧で水が引きとめられ、水の再吸収がさまたげられて尿がふえる(糖尿病で尿の量がふえる理由)。排泄がなくなれば、このはたらきもなくなって尿量は減る。尿はふつうでも作られ続けるので「消失」ではない。
答え 空欄6 (1) 理由:血糖値0.9 mg/mlは閾値より低いので,ろ過されたグルコースはすべて腎細管で再吸収されるから。(49字) 空欄7 (2) 理由:再吸収されないグルコースが腎細管中になくなり,その浸透圧の効果で水の再吸収がさまたげられることがなくなるから。(55字)
Ⅲ B クリアランス=排泄量 ÷ 血糖値 なので、図2—2 の排泄量の線を、それぞれの血糖値で割ったグラフを考える。
閾値より下では排泄量が 0 なので、クリアランスも 0。ここで (1)(3) は外れる。
閾値より上では、排泄量はおよそ「ろ過量 − 再吸収の上限」で、ろ過量は血糖値に比例する。糸球体ろ過量を G 、再吸収の上限を T 、血糖値を P とすると
G P − T P = G − T P
となり、P が大きくなるほど T P が小さくなって G に近づく。まっすぐ上がり続ける線ではなく、上がり方がだんだんゆるやかになる曲線 。図2—2 から読んだ値(G 約 117 ml/分、T 約 343 mg/分)では、血糖値 10 で約 83 ml/分。これと合う形の選択肢を選ぶ。
Ⅲ C インスリンは、血液中のグルコースを細胞に取りこませ、肝臓や筋肉でグリコーゲンとしてたくわえさせるホルモン。インスリンが欠乏すると、この逆が起こる。
(2) グリコーゲン合成は抑えられる。(4) 筋肉や脂肪細胞へのグルコースの取りこみも抑えられる。どちらも血液中のグルコースを減らせない方向で、高血糖の原因になる。
ほかの選択肢は向きが逆。インスリンが無いと、タンパク質の合成は進まず((1) は逆)、エネルギー源として脂肪やタンパク質の分解が進む((3)(5) は逆)。高血糖で尿中にグルコースが出ると尿量はふえる((7) は逆)。糸球体ろ過量が減ることは高血糖を引きおこす現象ではない((6))。
第3問 硝化細菌・脱窒素細菌と水田 — 酸素があるか無いかで、窒素の行き先が変わる 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 呼吸を「電子をどこから取り出して、どこへわたすか」という目で整理し、それを土の中の細菌と水田の肥料に当てはめる問題。
ヒトの酸素呼吸は、有機物から電子を取り出し、酸素にわたす。細菌では、わたす先が硝酸イオンのこともあり(嫌気呼吸、脱窒素細菌の硝酸呼吸)、取り出す元がアンモニウムイオンのような無機物のこともある(化学合成、硝化細菌)。
もう1つの道具は、イオンの電荷で土の中の動き方が変わる こと。文3のとおり、土は正のイオン(N H 4 + 、K + )をつかまえるが、負のイオン(N O 3 − )はつかまえず、水と一緒に流してしまう。水田の問題は「酸素がある所・無い所」と「つかまる形・流れる形」の2つを重ねて考える。
Ⅰ ミトコンドリアは外膜と内膜の二重の膜をもち、内膜に囲まれた内側をマトリックスという。クエン酸回路の酵素はマトリックスに、電子伝達系のタンパク質は内膜にある。
クエン酸回路で有機物の炭素は二酸化炭素として出ていき、取り出された電子(NADH などが運ぶ)が電子伝達系を流れる。流れ終わった電子は酸素と水素イオンと結びつき、水ができる。
答え 1 マトリックス,2 内膜,3 二酸化炭素,4 水
Ⅱ A 化学合成細菌は、光のかわりに、無機物(硝化細菌ならアンモニウムイオンや亜硝酸イオン)を酸化して取り出したエネルギーを使う。
そのエネルギーでつくった ATP などを使って、植物の光合成と同じように、二酸化炭素を取りこんで有機物にする。材料は二酸化炭素と水、エネルギーの出どころが無機物の酸化、という2点を1行に入れる。
答え 無機物の酸化で得たエネルギーを使い,二酸化炭素と水から有機物を合成する。(36字)
Ⅱ B 問題文のヒントは「アンモニアと酸素分子を結合させる反応が必要」。ここでの酸素は、電子の受け手としてではなく、反応の材料そのもの として使われている。
嫌気呼吸ができるとは、電子の受け手を酸素以外の物にかえられる、ということ。しかしそれは、アンモニアに酸素分子をくっつける反応の代わりにはならない。嫌気的な条件では、アンモニウムイオンを亜硝酸イオンにする最初の段階が進まない。
すると亜硝酸酸化細菌にわたる亜硝酸イオンもできないので、硝化作用全体が止まる。デモで酸素を 0 にすると、嫌気呼吸が「できる」としても、1段目の矢印が止まったままになる。
答え 進行しない。嫌気呼吸で酸素以外の物質に電子をわたせても,アンモニウムイオンを酸化する最初の反応には酸素分子そのものが材料として必要なので,嫌気条件ではアンモニアが酸化されず,亜硝酸も硝酸もつくられないから。(103字)
Ⅱ C (a) 表3—1で、硝酸イオンのない培地は 20 時間目 25 mg、44 時間目 27 mg とほとんど増えていない。
この培地で細菌が使える呼吸は酸素呼吸だけ。培養の始めに溶けていた酸素は、20 時間目までに菌が 1 mg から 25 mg に増える間に使われる。問題文の注意書きのとおり、酸素が消費される速さは溶けこむ速さよりずっと速いので、いったん使いきると、そのあとは溶けこむ少しの酸素の分しか呼吸できない。
硝酸イオンがないので、酸素の代わりに硝酸呼吸をすることもできない。エネルギーが得られないので増殖できない、という筋で書く。
答え はじめに溶けていた酸素を酸素呼吸で使い切った後は,酸素が溶けこむ速度が遅く,硝酸がないので嫌気呼吸もできず,エネルギーを得られないから。(68字)
Ⅱ C (b) 20 時間目:硝酸イオンがあってもなくても、菌の量は同じ 25 mg。もし硝酸呼吸もしていたなら、硝酸ありの培地の方が多く増えているはず。硝酸の有無で差がない → ここまでの増殖には硝酸をほとんど使っていない → 酸素呼吸 をしていた、と考える。
ただし表の数は、はじめからためてきた菌の量なので、「20 時間目までの増え方」がわかるだけ。20 時間目のちょうどその瞬間に、もう酸素が尽きて硝酸呼吸に切りかわり始めていたかまでは、この数だけでは決められない(デモで酸素の溶けこむ速さを 0.5 倍にすると、菌の量は同じ約 24 mg のまま、20 時間目ちょうどには硝酸呼吸に切りかわっている)。答えは「20 時間目ごろまでは酸素呼吸」という読み方。
44 時間目:硝酸なしの培地は酸素がなくて増えないのに、硝酸ありの培地は 63 mg まで増えている。しかも(*)で気体の泡が見えた。酸素が尽きたあと、硝酸イオンに電子をわたして窒素ガスを出す硝酸呼吸 をしていた。
2つを合わせると、脱窒素細菌は酸素と硝酸イオンの両方があるときは酸素呼吸をし、酸素がなくなってから硝酸呼吸に切りかえる。デモでは「酸素が先」「同時に使う」「硝酸が先」の3つの考えで菌の増え方を計算し、表の4つの数と合うのは「酸素が先」だけであることを確かめている。ただし速さは表に合わせて決めた仮の値で、ほかの同時に使うやり方(たとえば酸素が少なくなってから少しずつ硝酸も使う)がすべて外れる、とまでは言えない。
答え 20時間目は酸素呼吸。硝酸の有無で増殖量が同じだから。44時間目は硝酸呼吸。酸素が尽きた後も硝酸のある培地だけ増殖し,気体が発生したから。(69字)
Ⅲ A 大気中の窒素(N 2 )をアンモニアに変えるはたらきは窒素固定。根粒菌、アゾトバクター、クロストリジウム、ネンジュモなどのシアノバクテリアがもつ。
Ⅲ B 硝化作用は酸素分子がないと進まない(Ⅱ B)。酸化層には酸素があるので (a) は起こり、還元層にはないので (c) は起こらない。
脱窒素細菌は、酸素があるうちは酸素呼吸をして、硝酸呼吸をしない(Ⅱ C (b))。酸化層では (b) の脱窒は起こらず、酸素のない還元層で (d) の脱窒が起こる。還元層には有機物もあるので、脱窒素細菌の基質にも困らない。
答え (a) ○,(b) ×,(c) ×,(d) ○
Ⅲ C 窒素の粒を1つ追いかけるつもりで、場所ごとに何が起こるかを順番に書く。
まず表面の酸化層:まかれたアンモニウムイオンは、酸素があるので硝化細菌に酸化されて硝酸イオンになる(Ⅲ B の (a))。
次に移動:アンモニウムイオンのままなら正の電荷で土につかまっていられたが、硝酸イオンは負の電荷なので土に保持されない。文3の水田では、作土層の水が鋤床層からゆっくり漏れ、田面水がしみこんでいくので、硝酸イオンはその水に乗って下の還元層へ運ばれる。
最後に還元層:酸素がないので、脱窒素細菌が硝酸イオンを電子の受け手にして硝酸呼吸を行い、窒素ガスに変える(Ⅲ B の (d))。窒素ガスは大気へ出ていくので、イネに吸われる前に窒素が消えてしまう。デモの模型(数は仮の値)では、表面にまいた窒素のおよそ 8 割が窒素ガスになる。
答え 表層の酸化層では,アンモニウムイオンが硝化細菌によって硝酸イオンに酸化される。硝酸イオンは負電荷をもつため土壌に保持されず,田面水の浸透にともなって下の還元層へ運ばれる。還元層は酸素がない嫌気的状態なので,脱窒素細菌が有機物を基質として硝酸呼吸を行い,硝酸イオンを窒素ガスに変えて大気中へ放出する。残った硝酸イオンも鋤床層から地下へ流れる。このため窒素はイネに吸収される前に失われる。(192字)
Ⅲ D C の流れのどこか1つを断ち切ればよい。一番の出発点は、表面の酸化層で硝化されること。
酸素のない還元層にアンモニウムイオンを直接入れれば、硝化細菌がはたらけないので硝酸イオンにならない。正の電荷のまま土に保持されて流れず、硝酸イオンがないので脱窒もされない。イネの根は還元層に広がっているので(図3—1)、そこで吸収される。デモでまく所を還元層に切りかえると、イネに届く割合が大きく上がる。
答え 作土層の下層の還元層に与える。酸素がないので硝化されず,正電荷のアンモニウムイオンのまま土壌に保持され,流されず脱窒も受けずに根に吸収されるから。(73字)