D 問Bで選択したプライマーを用いて PCR を行う際に,実験手技が正しく行われていることを確認するため,陽性対照(必ず予想サイズの PCR 産物が得られる)と陰性対照(PCR 産物が得られることはない)を設置することにした。陽性対照および陰性対照に用いる PCR の鋳型の組み合わせとして適切なものを,下の表から全て選んで番号で答えよ。
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E 図1—4に示した融合遺伝子5は,実験の準備過程でできた予想外の融合遺伝子である。エキソン—イントロン構造は融合遺伝子 X–Y と同じであるが,そのタンパク質は図1—3に示した融合遺伝子3から発現するタンパク質よりも小さく,さらにがん化能力を有していなかった。そこでこの融合遺伝子5の DNA 配列を調べた結果,X4 と Y2 のつなぎ目に予期しなかった配列の変化が見つかった。融合遺伝子5に起こった DNA の変化として考えられる4つの候補 a〜d を図1—4に示す。この中から融合遺伝子5として適切な DNA 配列を下記の選択肢1〜4から選び,その理由を3行以内で述べよ。
融合遺伝子 X–Y によって発症する白血病(X–Y 白血病)の治療には分子標的薬 Q が使用される。X–Y 融合タンパク質に対しては,分子標的薬 Q が X–Y 融合タンパク質のチロシンリン酸化活性(以下「リン酸化活性」と称する)部位に結合し,その機能を阻害する。X と融合していない正常な Y タンパク質もリン酸化活性を持つが,正常な Y タンパク質のリン酸化活性部位は全く異なる構造をしているため,分子標的薬 Q は X–Y 融合タンパク質にしか作用しない。
一方で,この分子標的薬 Q は近年,X–Y 白血病以外にも,消化管にできる S タイプと呼ばれるがんの治療にも効果があることが分かった。このがん S では,R という遺伝子に変異が見られる。正常な遺伝子 R から転写翻訳された R タンパク質は Y タンパク質と同じくリン酸化活性を有する受容体であるが,R 遺伝子に変異が起こった結果,がん S では R タンパク質が異常な構造に変化して,3 非依存的に活性化されることが分かっている。
ソルガムやトウモロコシは,菌根菌を根に定着させる過程の初期において,化合物 S を土壌中へ分泌し,周囲の菌根菌の菌糸を根に誘引する。化合物 S は,不安定で壊れやすい物質であり,根から分泌された後,土壌中を数 拡散する間に短時間で消失する。このような性質により,根の周囲には化合物 S の濃度勾配が生じ,菌根菌の菌糸はそれに沿って根に向かう。
ストライガは,宿主となるソルガムやトウモロコシのこのような性質を巧みに利用し,それらへ寄生する。直径が ほどのストライガの種子は,土壌中で数十年休眠することが可能であり,化合物 S を感知して発芽する。その後,発芽したストライガの根は,宿主の根に辿り着くと,その根の組織を突き破り内部へ侵入する。最終的に,ストライガは自身と宿主の維管束を連結し,それを介して宿主から水分や無機栄養,光合成産物を奪い成長する。そのため,ストライガに寄生されたソルガムやトウモロコシは,多くの場合,結実することなく枯れてしまう(図2—1)。
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図2—1 ソルガムに寄生するストライガ図2—2 無機栄養の欠乏が根における化合物 S の分泌量に及ぼす影響
グラフは,根の単位重量当たりの化合物 S の分泌量を,リン酸と窒素が十分存在する条件での値を1として示している。
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〔問〕
A 下線部(ア)について。菌根菌の宿主は,その光合成産物のかなりの量を,菌根菌に糖や脂質を与えるために消費している。ここでは,リン酸のみが欠乏した畑地でソルガムを栽培し,根に菌根菌が定着した後に,土壌へ十分な量のリン酸を与える場合を考える。このとき,菌根菌とソルガムには,リン酸を与える前後で,それぞれどのような種間相互作用がみられるか。以下の選択肢(1)〜(6)から,適切な種間相互作用を全て選べ。解答例:与える前—(1) 与えた後—(2) (3)
(1) 同じ容器内で飼育したゾウリムシとヒメゾウリムシにみられる種間相互作用
(2) シロアリとその腸内に生息しセルロースやリグニンを分解する微生物にみられる種間相互作用
(3) ナマコとその消化管を外敵からの隠れ家として利用するカクレウオにみられる種間相互作用
(4) イヌとその体の表面に付着して吸血するダニにみられる種間相互作用
(5) ハダニとそれを食べるカブリダニにみられる種間相互作用
(6) アブラムシとその排泄物を餌にするアリにみられる種間相互作用
B 下線部(イ)について。土壌中のリン酸や窒素の欠乏が,ソルガムやマメ科牧草のアカツメクサの根における化合物 S の分泌量に及ぼす影響をそれぞれ調べ,その結果を図2—2にまとめた。根における化合物 S の分泌様式が,両者の間で異なる理由について,無機栄養の獲得戦略の観点から,3行程度で述べよ。
C 下線部(ウ)について。このような化合物 S の性質は,ストライガが宿主に寄生するうえで,どのような点で有利にはたらくか。1行程度で述べよ。
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D 下線部(エ)について。ストライガの種子が存在する土壌において,宿主が生育していない状況で,化合物 S を散布すると,ストライガは発芽するものの,宿主への寄生が成立しないため枯死する。そこで,ストライガの種子が拡散している無機栄養の欠乏した畑地において,作物を栽培していない時期にストライガを枯死させるため,化合物 S の土壌での安定性を高めた類似化合物を開発した。さらに,作物の無機栄養吸収に影響を与えず,ストライガを効率よく,より確実に枯死させるため,この類似化合物を改良したい。以下2つの活性を個別に改変できるとした場合,それらを化合物 S の活性と比較してどのように改変することが望ましいか。2つの活性について,その理由を含め,それぞれ3行程度で述べよ。
【改変可能な活性】ストライガの発芽を誘導する活性,菌根菌を誘引する活性
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Ⅱ 次の文章を読み,問E〜Hに答えよ。
ストライガは,どのようにして宿主から水分を奪うのだろうか。自身の根の維管束を宿主のそれに連結したストライガは,蒸散速度を宿主より高く保つことで,宿主から自身に向かう水分の流れを作り出す。この蒸散速度には,葉に存在する気孔の開きぐあいが大きく影響する。土壌が乾燥して水不足になると,多くの植物では,体内でアブシシン酸が合成され,その作用によって気孔が閉じる。このとき,体内のアブシシン酸濃度の上昇に応じ,気孔の開きぐあいは小さくなっていく。一方,ストライガでは,タンパク質 X のはたらきにより,気孔が開いたまま維持される。このタンパク質 X は,陸上植物に広く存在するタンパク質 Y に,あるアミノ酸変異が起こって生じたものである。シロイヌナズナのタンパク質 Y は,体内のアブシシン酸濃度の上昇に応じ,その活性が変化する。ここでは,タンパク質 X やタンパク質 Y の性質を詳しく調べるため,以下の実験を行った。
実験1 遺伝子工学の手法により,タンパク質 X を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体を作製した。次に,この形質転換体を野生型シロイヌナズナとともに乾燥しないよう栽培し,ある時点で十分な量のアブシシン酸を投与した。しばらく時間をおいた後,サーモグラフィー(物体の表面温度の分布を画像化する装置)を用いて,葉の表面温度をそれぞれ計測し,その結果を図2—3にまとめた。
実験2 遺伝子工学の手法により,タンパク質 Y を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体とタンパク質 Y のはたらきを欠失させたシロイヌナズナ変異体とを作製した。次に,これらの形質転換体や変異体を,野生型シロイヌナズナやタンパク質 X を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体とともに,乾燥しないよう栽培した。その後,ある時点から水の供給を制限し,土壌の乾燥を開始した。同時に,日中の決まった時刻における葉の表面温度の計測を開始し,その経時変化を図2—4にまとめた。この計測と並行し,タンパク質 X やタンパク質 Y の発現量を測定したところ,各種のシロイヌナズナの葉におけるそれらの発現量に,経時変化は見られなかった。
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図2—3 野生型シロイヌナズナとタンパク質 X を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体の上からのサーモグラフィー画像図2—4 各種のシロイヌナズナにおける水の供給を制限した後の葉の表面温度の経時変化
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〔問〕
E 実験1において,十分な量のアブシシン酸を投与した後に,野生型シロイヌナズナの葉の表面温度が上昇した理由を,1行程度で述べよ。
F 実験1,実験2の結果をふまえて,タンパク質 X やタンパク質 Y のはたらきを述べた文として最も適切なものを,以下の選択肢(1)〜(8)から一つ選べ。
(1) タンパク質 X やタンパク質 Y は,アブシシン酸の合成を促進する。
(2) タンパク質 X やタンパク質 Y は,アブシシン酸の合成を抑制する。
(3) タンパク質 X は,アブシシン酸の合成を促進する。一方,タンパク質 Y は,アブシシン酸の合成を抑制する。
(4) タンパク質 X は,アブシシン酸の合成を抑制する。一方,タンパク質 Y は,アブシシン酸の合成を促進する。
(5) タンパク質 X やタンパク質 Y は,気孔に対するアブシシン酸の作用を促進する。
(6) タンパク質 X やタンパク質 Y は,気孔に対するアブシシン酸の作用を抑制する。
(7) タンパク質 X は,気孔に対するアブシシン酸の作用を促進する。一方,タンパク質 Y は,気孔に対するアブシシン酸の作用を抑制する。
(8) タンパク質 X は,気孔に対するアブシシン酸の作用を抑制する。一方,タンパク質 Y は,気孔に対するアブシシン酸の作用を促進する。
G 下線部(オ)について。実験2の結果をふまえると,タンパク質 Y とそれにアミノ酸変異が起こって生じたタンパク質 X との間には,どのような性質の違いがあるか。体内のアブシシン酸濃度の上昇に伴うタンパク質の活性の変化に着目し,2行程度で述べよ。
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H 実験2の7日間の計測期間中,4種類のシロイヌナズナはどれも葉の萎れを示さなかった。このとき,最も早く葉の光合成活性が低下したと考えられるものは4種類のうちどれか。また,その後も,水の供給を制限し続けたとき,最も早く萎れると考えられるものはどれか。その理由も含め,それぞれ3行程度で述べよ。
B 動物の初期発生が進行する過程で,一様であった細胞(割球)が複数の細胞群(胚葉)へと分化する。後生動物は,外胚葉と内胚葉からなる二胚葉性の動物と,外胚葉・中胚葉・内胚葉からなる三胚葉性の動物に大別される。下記にあげた動物はそれぞれ,二胚葉性・三胚葉性のどちらに分類されるか。「(1)二胚葉性」のように記せ。
(1) イソギンチャク
(2) カブトムシ
(3) ゴカイ
(4) ヒト
(5) クシクラゲ
(6) イトマキヒトデ
C 旧口動物と新口動物は,初期発生の過程が大きく異なることが特徴である。どのように異なるのか,2行程度で記せ。
D ウニやヒトデなどの棘皮動物は,五放射相称の体制を有するにもかかわらず,左右相称動物の系統に属する。このことは,発生過程を見るとよくわかる。それは,どのような発生過程か,2行程度で記せ。
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Ⅱ 次の文章を読み,問E,Fに答えよ。
動物の系統関係を明らかにする場合,その動物が持つ様々な特徴から類縁関係を探ることができ,古くから形態に基づく系統推定は行われてきた。しかし,形態形質は研究者によって用いる形質が異なるなど,客観性にとぼしい。近年では,様々な生物種から DNA の塩基配列情報を容易に入手できるようになり,これに基づいて系統関係を推定する分子系統解析が,系統推定を行う上で主流となっている。
1949年に「珍渦虫(ちんうずむし)」と呼ばれる謎の動物が,スウェーデン沖の海底から発見された(図3—2)。この動物は,体の下面に口があるが,肛門はないのが特徴である。珍渦虫がどの動物門に属するかは長らく謎であり,最初は扁形動物の仲間だと考えられていた。1997年に,珍渦虫の DNA 塩基配列に基づく分子系統解析が初めて行われて以来,現在までに様々な仮説が提唱されている。当初,軟体動物に近縁だと報告されていたが,これは餌として食べた生物由来の DNA の混入によるものだと判明した。その後,分子系統解析が再度行われた結果,珍渦虫は新口動物の一員であるという知見が発表された。
H 動物の中には,外肛動物(コケムシ)のように,個体が密着して集団がまるで1個体であるかのように振る舞う「群体性」を示すものが存在している。群体性を示す動物の中には,異なる形態や機能を持つ個体が分化したり,不妊の個体が存在する種も知られる。このように同種の血縁集団として生活し,その中に不妊個体を含む異なる表現型を持つ個体が出現する動物は他にも存在している。その例として最も適切なものを下記からひとつ選べ。
(1) アブラムシの翅多型
(2) ミジンコの誘導防御
(3) クワガタムシの大顎多型
(4) 社会性昆虫のカースト
(5) ゾウアザラシのハーレム
I ヘッケルの唱えた「ガストレア」が後生動物の起源だとすると,現生の動物門の中で「ガストレア」の状態に最も近い動物門は何か。動物門の名称とその理由を3行程度で記せ。
「融合遺伝子 X–Y を検出する」には、X–Y にはあって、正常な遺伝子 X や Y には無い部分を増やせばよい。それは X の部分と Y の部分の継ぎ目をまたぐ所。だから右向きのプライマーは X–Y に残る X の部分(X1〜X4 の前半)に、左向きのプライマーは X–Y に残る Y の部分(Y2 の後半〜Y11)に置く必要がある。
右向きで X4 にあるのは あ(い は X6 で、X–Y には無い)。左向きで Y の側にあるのは き(Y3)だけ。う は X5 なので X–Y には無い。こうして組は1つに決まる。正常な遺伝子 X と Y は別の染色体にあるので、この組では何も増えない。
4〜6 は細胞から取り出したもの。PCR で使う酵素(DNA ポリメラーゼ)は DNA を鋳型にして DNA を合成するので、RNA やタンパク質からはそのままでは何も増えない(RNA は先に逆転写という手順が要る)。4 と 5 は陽性対照でも増えないので使えない。6 の DNA は、X–Y を持つ細胞では増え、持たない細胞では X と Y が別々なので増えない。
R タンパク質は「受容体」で、ふつうは細胞の外から来る特定の物質が結合したときにだけ活性化する。受容体に特異的に結合する物質をまとめてリガンドという(ホルモンや神経伝達物質、増殖因子など)。
がん S では R が異常な構造になり、その結合が無くても(非依存的に)活性化したままになる。選択肢のうち、ビタミン・ペプチドは物質の種類、シャペロンは折りたたみを助けるタンパク質、チャネルは膜の通り道、ドメインはタンパク質の中のまとまった部分で、どれも「受容体に結合して活性化させるもの」という意味にはならない。
答えリガンド
I
問題文から言えることを表にすると、分子標的薬 Q は X–Y のリン酸化活性部位にはまり、変異 R にも効く。正常な Y にははまらない。
(1) 白血病細胞が消化管を攻撃して R の変異を起こす、という話は問題文のどこにも無い。X–Y 白血病とがん S は別々の病気で、同じ薬が効くだけ。
(3) 薬の標的は臓器ではなく分子。がん S に効くのは、R の変異でできた異常な構造(とくにリン酸化活性部位)にはまるからで、場所が消化管だから効くのではない。発生した場所が同じでも、変異 R が無ければ標的の分子があるとは言えず、効くとは期待できない。
Ⅰは「合図」の話。ソルガムやトウモロコシは、栄養が足りないときに化合物 S を土に出して菌根菌(根に共生する菌)を呼ぶ。ストライガはこの合図を横取りして発芽する。S がいつ出るか(問B)、S がすぐ壊れることの意味(問C)、それを逆手に取った防除(問D)と、合図の性質を順に追っていく。
Ⅱは「水」の話。ふつうの植物は乾くとアブシシン酸が増えて気孔を閉じるが、ストライガはタンパク質 X のはたらきで気孔を開けたままにし、蒸散で宿主から水を引っぱる。葉の表面温度は、気孔が開いて蒸散しているほど低い(水が蒸発するときに熱をうばうから)。図2—3・2—4 の温度を「気孔の開き」と読みかえるのが、Ⅱ全体の鍵になる。
菌根菌を誘引する活性:作物の無い時期に菌根菌を呼んでも、菌根菌には栄養をくれる相手がいない。むだに菌糸をのばして消耗するうえ、壊れにくい化合物が土に残ると、作物を植えたあと根が出す S の濃さの坂がかき消され、菌根菌が根にたどり着きにくくなる。すると作物がリン酸や窒素を吸いにくくなり、「作物の無機栄養吸収に影響を与えず」という条件に反する。だから弱めるかなくす。
実験1では、アブシシン酸を外から十分な量与えている。それでも X を過剰発現させた株は温度が上がらない(気孔が開いたまま)。合成を促進・抑制しても、外から与えた分には関係ないので、X は合成ではなく、気孔に対するアブシシン酸の作用を抑えていると考えられる。これで(1)〜(4)と、X が作用を促進するとした(5)(7)が消える。