東大 過去問 2020年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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東京大学 第2次学力試験(前期)2020年 理科「生物」(東京大学がかつて公開したPDFの Internet Archive 保存版)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

修正履歴

お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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生 物

第1問

 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。

Ⅰ 次の文章を読み,問A〜Eに答えよ。

 遺伝的変異は突然変異によって生み出される。突然変異には,ⒶDNA の塩基配列に変化が生じるものと,Ⓑ染色体の数や構造に変化が生じるものがある。たとえばⒶにおいて,ある遺伝子上で塩基の挿入や欠失が起こると,1 がずれてアミノ酸配列が変化することがある。これによってアミノ酸の配列が大幅に変わってしまった場合は,タンパク質の本来の機能が失われることが多い。それ以外に塩基が他の塩基に入れ替わる変異もあり,これを置換変異と呼ぶ。置換変異の中で,アミノ酸配列の変化を伴わない変異を 2,アミノ酸配列の変化を伴う場合を非 2 と呼ぶ。

 Ⓑの一例として,染色体相互転座という現象がある。これは異なる2つの染色体の一部がちぎれた後に入れ替わって繋がる変化で,がん(癌)でしばしば認められる染色体異常のひとつである。図1—1に示したのはある種の白血病で見られる染色体相互転座の例で,2つの異なる染色体の一部が入れ替わることで,本来は別々の染色体に存在している遺伝子 X と Y が繋がり,融合遺伝子 X–Y ができる。この融合遺伝子 X–Y から転写・翻訳されてできる X–Y タンパク質が,血球細胞をがん化(白血病化)させることが知られている。正常な Y タンパク質の本来の働きは酵素であり,アミノ酸のひとつであるチロシンをリン酸化するというリン酸化酵素活性を持つ。この酵素活性は,X–Y タンパク質のがん化能力にも必須であることがわかっている。一方で,もう片方の染色体にできた融合遺伝子 Y–X には,がん化など細胞への影響はないものとする。

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図1—1 染色体相互転座による融合遺伝子 X–Y と Y–X の形成
図1—1 染色体相互転座による融合遺伝子 X–Y と Y–X の形成

矢印は遺伝子が転写される方向を表す。

実験1 正常な遺伝子 X と遺伝子 Y は,X の4番目のエキソンと,Y の2番目のエキソンがそれぞれ途中(破線部)で切れたのち融合することで,融合遺伝子 X–Y となる(図1—2)。この融合遺伝子 X–Y の性質をより詳しく調べるために,人工的な融合遺伝子1〜4を作製した(図1—3)。それらの遺伝子から発現したタンパク質の大きさや性質を実験的に調べたところ,図1—3に示すような結果が得られた。

図1—2 正常な遺伝子 X と遺伝子 Y,融合遺伝子 X–Y のエキソン・イントロン構造
図1—2 正常な遺伝子 X と遺伝子 Y,融合遺伝子 X–Y のエキソン・イントロン構造

■は遺伝子 X のエキソン,▩は遺伝子 Y のエキソン,四角内の数字はエキソンの番号,エキソン間の直線はイントロンを表す。

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図1—3 人工的に作製した4種類の融合遺伝子1〜4と実験結果
図1—3 人工的に作製した4種類の融合遺伝子1〜4と実験結果

最上段の X–Y は,図1-2に示した融合遺伝子 X–Y と同一である。「予想サイズのタンパク質発現」の予想サイズとは,図示している全てのエキソンがタンパク質に翻訳された場合のサイズ,という意味である。

[問]

A Ⅰの問題文の1と2に入る適当な語句を,それぞれ答えよ。

B 白血病細胞中に存在する融合遺伝子 X–Y を PCR 法で検出するために,図1—2のあ〜きの中から,最も検出に優れたプライマーの組み合わせを書け(例:あ—い)。

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C 図1—3に示した結果から言えることとして不適切なものを,以下の選択肢から全て選べ。

(1) 融合遺伝子のエキソンは,遺伝子 X と遺伝子 Y に由来するものがそれぞれ最低1個あり,かつ合計が最低8個あれば,その組み合わせに関わらずがん化能力を有する。

(2) 融合遺伝子1にがん化能力がないのは,最初のエキソンである X1 がないために,融合遺伝子の転写・翻訳が起こらないからである。

(3) エキソン Y10 と Y11 はがん化に必要ではない。

(4) 融合遺伝子4にがん化能力がないのは,エキソン Y2 と Y7 の間で,RNA ポリメラーゼによる転写が停止するからである。

(5) タンパク質 Y のリン酸化活性には,Y3 から Y6 に相当する領域が必要である。

D 問Bで選択したプライマーを用いて PCR を行う際に,実験手技が正しく行われていることを確認するため,陽性対照(必ず予想サイズの PCR 産物が得られる)と陰性対照(PCR 産物が得られることはない)を設置することにした。陽性対照および陰性対照に用いる PCR の鋳型の組み合わせとして適切なものを,下の表から全て選んで番号で答えよ。

p49a
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E 図1—4に示した融合遺伝子5は,実験の準備過程でできた予想外の融合遺伝子である。エキソン—イントロン構造は融合遺伝子 X–Y と同じであるが,そのタンパク質は図1—3に示した融合遺伝子3から発現するタンパク質よりも小さく,さらにがん化能力を有していなかった。そこでこの融合遺伝子5の DNA 配列を調べた結果,X4 と Y2 のつなぎ目に予期しなかった配列の変化が見つかった。融合遺伝子5に起こった DNA の変化として考えられる4つの候補 a〜d を図1—4に示す。この中から融合遺伝子5として適切な DNA 配列を下記の選択肢1〜4から選び,その理由を3行以内で述べよ。

図1—4 融合遺伝子5に起こった変化の候補 a〜d とその塩基配列
図1—4 融合遺伝子5に起こった変化の候補 a〜d とその塩基配列

変化前の融合遺伝子 X—Y の塩基配列とアミノ酸配列を上に,変化後の塩基配列の候補 a〜d を下に示す。□はその部分の塩基が欠失していることを示す。

1) a と d

2) a と b と d

3) b のみ

4) a と c

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Ⅱ 次の文章を読み,問F〜Lに答えよ。

 融合遺伝子 X–Y によって発症する白血病(X–Y 白血病)の治療には(ア)分子標的薬 Q が使用される。X–Y 融合タンパク質に対しては,分子標的薬 Q が X–Y 融合タンパク質のチロシンリン酸化活性(以下「リン酸化活性」と称する)部位に結合し,その機能を阻害する。X と融合していない正常な Y タンパク質もリン酸化活性を持つが,(イ)正常な Y タンパク質のリン酸化活性部位は全く異なる構造をしているため,分子標的薬 Q は X–Y 融合タンパク質にしか作用しない。

 一方で,この分子標的薬 Q は近年,X–Y 白血病以外にも,消化管にできる S タイプと呼ばれるがんの治療にも効果があることが分かった。このがん S では,R という遺伝子に変異が見られる。正常な遺伝子 R から転写翻訳された R タンパク質は Y タンパク質と同じくリン酸化活性を有する受容体であるが,R 遺伝子に変異が起こった結果,がん S では R タンパク質が異常な構造に変化して,3 非依存的に活性化されることが分かっている。

実験2 分子標的薬 Q が X–Y 白血病細胞の増殖に与える効果を実験的に確認した。約1,000,000個の X–Y 白血病細胞を用意し,治療に適切な濃度の分子標的薬 Q を加えて4週間培養し,経時的に細胞数を数えた。この濃度では,X–Y 白血病細胞の数は3日毎に10分の1に減ることが知られていたことから,図1—5に示した黒線のようなグラフが予想された。しかし実際には X–Y 白血病細胞は死滅せず,28日目に500個の細胞が残っていた。これらの生き残った細胞が持つ融合遺伝子 X–Y の配列を調べたところ,これらの細胞ではもれなく,エキソン Y5 内に存在する塩基の置換変異により,特定のアミノ酸が1つ変化していることがわかったが,そのリン酸化活性は保たれていた。

— 53 —
図1—5 分子標的薬 Q が X–Y 白血病細胞の増殖に与える効果
図1—5 分子標的薬 Q が X–Y 白血病細胞の増殖に与える効果

[問]

F 下線部(ア)に関して,がん治療における分子標的薬全般の説明として最も適切なものをひとつ選べ。なおこの場合の「分子」とは,核酸やタンパク質をさす。

(1) 分子標的薬は RNA ポリメラーゼの分解を介して,細胞全体の転写活性を阻害する薬である。

(2) 分子標的薬はがん細胞の増殖や転移などの病状に関わる特定の分子にのみ作用するように設計されている。

(3) 分子標的薬はがん細胞の表面を物理的に覆い固めることで,がん細胞の分裂・増殖を阻害する薬である。

(4) 分子標的薬は細胞表面に出ている受容体にしか効果がない。

(5) 分子標的薬は標的分子が十分に大きくないと結合できないため,小さい分子には効果がない。

G 下線部(イ)について,一般に酵素の活性部位はそれぞれの酵素に特有の構造をしており,特定の物質のみに作用する性質を持つ。この性質を酵素の何と呼ぶか。下記の選択肢からひとつ選べ。

 基質交叉性,基質反応性,基質指向性,基質特異性,基質決定性,基質排他性

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H 3 に入る適当な語句を,下の選択肢からひとつ選べ。

 ビタミン,リガンド,ペプチド,シャペロン,チャネル,ドメイン

I Ⅱの問題文の内容に関する記述として,以下の説明から不適切なものを2つ選べ。

(1) X–Y 白血病細胞が消化管の細胞を誤って攻撃することで遺伝子 R の変異が誘導され,がん S が起こる。

(2) X–Y 融合タンパク質のリン酸化活性部位との結合力を高めれば,より治療効果の高い分子標的薬を作ることができる。

(3) あるがんにおいて,遺伝子 R の変異がなくても,その発生部位ががん S と同じく消化管であれば,分子標的薬 Q の効果が期待できる。

(4) X–Y 融合タンパク質のリン酸化活性部位と,がん S で見られる変異 R タンパク質のリン酸化活性部位は,タンパク質の構造が類似している。

J 実験2で述べたアミノ酸の置換によって,なぜ分子標的薬 Q が効かなくなったと考えられるか。「構造」,「結合」という単語を使って2行程度で述べよ。

K 実験2においてこのアミノ酸置換を持つ細胞は実験途中で融合遺伝子 X–Y に変異が起こって出現したのではなく,もともとの細胞集団の中に存在しており,分子標的薬 Q の影響を全く受けずに,4日毎に2倍に増殖すると仮定した場合,最初(0日目)に何個の細胞が存在していたか計算せよ(小数第一位を四捨五入した整数で答えよ)。

— 55 —

L K の仮定を考慮すると,図1—5の実際の細胞数の増減パターンは下記1〜6のどれが最も近いか。X 軸,Y 軸の値は,図1—5と同じとする。

p55a
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第2問

 次のⅠ,Ⅱの各問に答えよ。

Ⅰ 次の文章を読み,問A〜Dに答えよ。

 アフリカを中心とした半乾燥地帯における貧栄養土壌での作物栽培に,大きな被害をもたらす寄生植物に,ストライガ(図2—1)というハマウツボ科の一年草がある。ストライガは,自身で光合成を行うものの,その成長のためには宿主への寄生が必須となる。実際に,土壌中で発芽したストライガは,数日のうちに宿主へ寄生できなければ枯れてしまう。ストライガは,ソルガムやトウモロコシといった現地の主要な作物に,どのようなしくみで寄生するのだろうか。その理解のためには,まず,これらの作物と菌根菌との関係を知る必要がある。

 ソルガムやトウモロコシは,土壌中のリン酸や窒素といった無機栄養が欠乏した環境において,菌根菌を根に定着させる。(ア)菌根菌は,土壌中から吸収したリン酸や窒素の一部をソルガムやトウモロコシへ与える代わりに,その生育や増殖に必須となる,光合成産物由来の糖や脂質をこれらの作物から受け取っている。

 (イ)ソルガムやトウモロコシは,菌根菌を根に定着させる過程の初期において,化合物 S を土壌中へ分泌し,周囲の菌根菌の菌糸を根に誘引する。(ウ)化合物 S は,不安定で壊れやすい物質であり,根から分泌された後,土壌中を数 mm 拡散する間に短時間で消失する。このような性質により,根の周囲には化合物 S の濃度勾配が生じ,菌根菌の菌糸はそれに沿って根に向かう。

 ストライガは,宿主となるソルガムやトウモロコシのこのような性質を巧みに利用し,それらへ寄生する。直径が 0.3 mm ほどの(エ)ストライガの種子は,土壌中で数十年休眠することが可能であり,化合物 S を感知して発芽する。その後,発芽したストライガの根は,宿主の根に辿り着くと,その根の組織を突き破り内部へ侵入する。最終的に,ストライガは自身と宿主の維管束を連結し,それを介して宿主から水分や無機栄養,光合成産物を奪い成長する。そのため,ストライガに寄生されたソルガムやトウモロコシは,多くの場合,結実することなく枯れてしまう(図2—1)。

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図2—1 ソルガムに寄生するストライガ
図2—1 ソルガムに寄生するストライガ
図2—2 無機栄養の欠乏が根における化合物 S の分泌量に及ぼす影響
図2—2 無機栄養の欠乏が根における化合物 S の分泌量に及ぼす影響

グラフは,根の単位重量当たりの化合物 S の分泌量を,リン酸と窒素が十分存在する条件での値を1として示している。

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〔問〕

A 下線部(ア)について。菌根菌の宿主は,その光合成産物のかなりの量を,菌根菌に糖や脂質を与えるために消費している。ここでは,リン酸のみが欠乏した畑地でソルガムを栽培し,根に菌根菌が定着した後に,土壌へ十分な量のリン酸を与える場合を考える。このとき,菌根菌とソルガムには,リン酸を与える前後で,それぞれどのような種間相互作用がみられるか。以下の選択肢(1)〜(6)から,適切な種間相互作用を全て選べ。解答例:与える前—(1) 与えた後—(2) (3)

(1) 同じ容器内で飼育したゾウリムシとヒメゾウリムシにみられる種間相互作用

(2) シロアリとその腸内に生息しセルロースやリグニンを分解する微生物にみられる種間相互作用

(3) ナマコとその消化管を外敵からの隠れ家として利用するカクレウオにみられる種間相互作用

(4) イヌとその体の表面に付着して吸血するダニにみられる種間相互作用

(5) ハダニとそれを食べるカブリダニにみられる種間相互作用

(6) アブラムシとその排泄物を餌にするアリにみられる種間相互作用

B 下線部(イ)について。土壌中のリン酸や窒素の欠乏が,ソルガムやマメ科牧草のアカツメクサの根における化合物 S の分泌量に及ぼす影響をそれぞれ調べ,その結果を図2—2にまとめた。根における化合物 S の分泌様式が,両者の間で異なる理由について,無機栄養の獲得戦略の観点から,3行程度で述べよ。

C 下線部(ウ)について。このような化合物 S の性質は,ストライガが宿主に寄生するうえで,どのような点で有利にはたらくか。1行程度で述べよ。

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D 下線部(エ)について。ストライガの種子が存在する土壌において,宿主が生育していない状況で,化合物 S を散布すると,ストライガは発芽するものの,宿主への寄生が成立しないため枯死する。そこで,ストライガの種子が拡散している無機栄養の欠乏した畑地において,作物を栽培していない時期にストライガを枯死させるため,化合物 S の土壌での安定性を高めた類似化合物を開発した。さらに,作物の無機栄養吸収に影響を与えず,ストライガを効率よく,より確実に枯死させるため,この類似化合物を改良したい。以下2つの活性を個別に改変できるとした場合,それらを化合物 S の活性と比較してどのように改変することが望ましいか。2つの活性について,その理由を含め,それぞれ3行程度で述べよ。

【改変可能な活性】ストライガの発芽を誘導する活性,菌根菌を誘引する活性

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Ⅱ 次の文章を読み,問E〜Hに答えよ。

 ストライガは,どのようにして宿主から水分を奪うのだろうか。自身の根の維管束を宿主のそれに連結したストライガは,蒸散速度を宿主より高く保つことで,宿主から自身に向かう水分の流れを作り出す。この蒸散速度には,葉に存在する気孔の開きぐあいが大きく影響する。土壌が乾燥して水不足になると,多くの植物では,体内でアブシシン酸が合成され,その作用によって気孔が閉じる。このとき,体内のアブシシン酸濃度の上昇に応じ,気孔の開きぐあいは小さくなっていく。一方,ストライガでは,タンパク質 X のはたらきにより,気孔が開いたまま維持される。この(オ)タンパク質 X は,陸上植物に広く存在するタンパク質 Y に,あるアミノ酸変異が起こって生じたものである。シロイヌナズナのタンパク質 Y は,体内のアブシシン酸濃度の上昇に応じ,その活性が変化する。ここでは,タンパク質 X やタンパク質 Y の性質を詳しく調べるため,以下の実験を行った。

実験1 遺伝子工学の手法により,タンパク質 X を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体を作製した。次に,この形質転換体を野生型シロイヌナズナとともに乾燥しないよう栽培し,ある時点で十分な量のアブシシン酸を投与した。しばらく時間をおいた後,サーモグラフィー(物体の表面温度の分布を画像化する装置)を用いて,葉の表面温度をそれぞれ計測し,その結果を図2—3にまとめた。

実験2 遺伝子工学の手法により,タンパク質 Y を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体とタンパク質 Y のはたらきを欠失させたシロイヌナズナ変異体とを作製した。次に,これらの形質転換体や変異体を,野生型シロイヌナズナやタンパク質 X を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体とともに,乾燥しないよう栽培した。その後,ある時点から水の供給を制限し,土壌の乾燥を開始した。同時に,日中の決まった時刻における葉の表面温度の計測を開始し,その経時変化を図2—4にまとめた。この計測と並行し,タンパク質 X やタンパク質 Y の発現量を測定したところ,各種のシロイヌナズナの葉におけるそれらの発現量に,経時変化は見られなかった。

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図2—3 野生型シロイヌナズナとタンパク質 X を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体の上からのサーモグラフィー画像
図2—3 野生型シロイヌナズナとタンパク質 X を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体の上からのサーモグラフィー画像
図2—4 各種のシロイヌナズナにおける水の供給を制限した後の葉の表面温度の経時変化
図2—4 各種のシロイヌナズナにおける水の供給を制限した後の葉の表面温度の経時変化
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〔問〕

E 実験1において,十分な量のアブシシン酸を投与した後に,野生型シロイヌナズナの葉の表面温度が上昇した理由を,1行程度で述べよ。

F 実験1,実験2の結果をふまえて,タンパク質 X やタンパク質 Y のはたらきを述べた文として最も適切なものを,以下の選択肢(1)〜(8)から一つ選べ。

(1) タンパク質 X やタンパク質 Y は,アブシシン酸の合成を促進する。

(2) タンパク質 X やタンパク質 Y は,アブシシン酸の合成を抑制する。

(3) タンパク質 X は,アブシシン酸の合成を促進する。一方,タンパク質 Y は,アブシシン酸の合成を抑制する。

(4) タンパク質 X は,アブシシン酸の合成を抑制する。一方,タンパク質 Y は,アブシシン酸の合成を促進する。

(5) タンパク質 X やタンパク質 Y は,気孔に対するアブシシン酸の作用を促進する。

(6) タンパク質 X やタンパク質 Y は,気孔に対するアブシシン酸の作用を抑制する。

(7) タンパク質 X は,気孔に対するアブシシン酸の作用を促進する。一方,タンパク質 Y は,気孔に対するアブシシン酸の作用を抑制する。

(8) タンパク質 X は,気孔に対するアブシシン酸の作用を抑制する。一方,タンパク質 Y は,気孔に対するアブシシン酸の作用を促進する。

G 下線部(オ)について。実験2の結果をふまえると,タンパク質 Y とそれにアミノ酸変異が起こって生じたタンパク質 X との間には,どのような性質の違いがあるか。体内のアブシシン酸濃度の上昇に伴うタンパク質の活性の変化に着目し,2行程度で述べよ。

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H 実験2の7日間の計測期間中,4種類のシロイヌナズナはどれも葉の萎れを示さなかった。このとき,最も早く葉の光合成活性が低下したと考えられるものは4種類のうちどれか。また,その後も,水の供給を制限し続けたとき,最も早く萎れると考えられるものはどれか。その理由も含め,それぞれ3行程度で述べよ。

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第3問

 次のⅠ,Ⅱ,Ⅲの各問に答えよ。

Ⅰ 次の文章を読み,問A〜Dに答えよ。

 ヒトも含めた多細胞動物は,後生動物と呼ばれ,進化の過程で高度な体制を獲得してきた。動物が進化して多様性を獲得した過程を理解する上では,現生の動物の系統関係を明らかにすることが非常に重要である。動物門間の系統関係は未だ議論の残る部分もあるが,現在考えられている系統樹の一例を図3—1に示す。この系統関係を見ると,どのようにして動物が高度な体制を獲得するに至ったのか,その進化の過程を見てとることができる。動物進化における重要な事象として,多細胞化,口(消化管)の獲得,神経系・体腔の獲得,左右相称性の進化,旧口/新口(前口/後口)動物の分岐,脱皮の獲得,脊索の獲得などが挙げられる。

図3—1 動物門間の系統関係
図3—1 動物門間の系統関係
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〔問〕

A 図3—1の1〜5に入る語句として最も適切な組み合わせを下記の(1)〜(4)から選べ。

(1) 1:放射相称動物,2:体腔の獲得,3:左右相称動物,4:脱皮動物,5:冠輪動物

(2) 1:放射相称動物,2:左右相称動物,3:体腔の獲得,4:脱皮動物,5:冠輪動物

(3) 1:左右相称動物,2:放射相称動物,3:体腔の獲得,4:冠輪動物,5:脱皮動物

(4) 1:体腔の獲得,2:左右相称動物,3:放射相称動物,4:冠輪動物,5:脱皮動物

B 動物の初期発生が進行する過程で,一様であった細胞(割球)が複数の細胞群(胚葉)へと分化する。後生動物は,外胚葉と内胚葉からなる二胚葉性の動物と,外胚葉・中胚葉・内胚葉からなる三胚葉性の動物に大別される。下記にあげた動物はそれぞれ,二胚葉性・三胚葉性のどちらに分類されるか。「(1)二胚葉性」のように記せ。

(1) イソギンチャク

(2) カブトムシ

(3) ゴカイ

(4) ヒト

(5) クシクラゲ

(6) イトマキヒトデ

C 旧口動物と新口動物は,初期発生の過程が大きく異なることが特徴である。どのように異なるのか,2行程度で記せ。

D ウニやヒトデなどの棘皮動物は,五放射相称の体制を有するにもかかわらず,左右相称動物の系統に属する。このことは,発生過程を見るとよくわかる。それは,どのような発生過程か,2行程度で記せ。

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Ⅱ 次の文章を読み,問E,Fに答えよ。

 動物の系統関係を明らかにする場合,その動物が持つ様々な特徴から類縁関係を探ることができ,古くから形態に基づく系統推定は行われてきた。しかし,形態形質は研究者によって用いる形質が異なるなど,客観性にとぼしい。近年では,様々な生物種から DNA の塩基配列情報を容易に入手できるようになり,これに基づいて系統関係を推定する分子系統解析が,系統推定を行う上で主流となっている。

 1949年に「珍渦虫(ちんうずむし)」と呼ばれる謎の動物が,スウェーデン沖の海底から発見された(図3—2)。この動物は,体の下面に口があるが,肛門はないのが特徴である。珍渦虫がどの動物門に属するかは長らく謎であり,最初は扁形動物の仲間だと考えられていた。1997年に,珍渦虫の DNA 塩基配列に基づく分子系統解析が初めて行われて以来,現在までに様々な仮説が提唱されている。当初,軟体動物に近縁だと報告されていたが,これは餌として食べた生物由来の DNA の混入によるものだと判明した。その後,分子系統解析が再度行われた結果,(ア)珍渦虫は新口動物の一員であるという知見が発表された。

図3—2 珍渦虫の体制.上から見た図(上)と正中断面(下)
図3—2 珍渦虫の体制.上から見た図(上)と正中断面(下)
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 さらにその後,扁形動物の一員と考えられていた無腸動物が珍渦虫に近縁であることが示され,両者を統合した珍無腸動物門が新たに創設された。しかし,その系統学的位置については,新口動物に近縁ではなく,「(イ)旧口動物と新口動物が分岐するよりも前に出現した原始的な左右相称動物である」という新説が発表された。また,(ウ)珍渦虫と無腸動物は近縁でないとする説も発表されるなど,状況は混沌としてきた。

 2016年,(エ)珍渦虫と無腸動物は近縁であり(珍無腸動物),これらは左右相称動物の最も初期に分岐したグループであることが報告された。しかし,2019年に発表された論文では,(オ)珍無腸動物は水腔動物(半索動物と棘皮動物を合わせた群)にもっとも近縁であるという分子系統解析の結果が発表された。そのため珍無腸動物の系統学的位置は未解決のままである。

〔問〕

E 下線部(ア)〜(オ)の仮説を適切に説明した系統樹を次の1〜4から選び,(ア)—1のように記述せよ。それぞれの仮説に当てはまるものはひとつとは限らない。

p67a

F 図3—2下の断面図にあるように,珍渦虫には口はあるが肛門はない。下線部(ア)が正しいとすると,その分類群の中ではかなり不自然な発生過程をたどることになると考えられる。それはなぜか。3行程度で記せ。

— 68 —

Ⅲ 次の文章を読み,問G〜Iに答えよ。

 多細胞体である後生動物は,単細胞生物からどのような過程を経て進化してきたのだろうか。この点についてはかなり古くから議論があり,これまでに様々な仮説が提唱されている。主として支持されてきたのが,ヘッケルの群体鞭毛虫仮説(群体起源説,ガストレア説)とハッジの多核体繊毛虫仮説(繊毛虫類起源説)である(図3—3)。

 ヘッケルの唱えた群体鞭毛虫仮説では,単細胞の鞭毛虫類が集合して,群体を形成し,多細胞の個体としてふるまうようになったものが最も祖先的な後生動物であるとしている。この仮想の祖先動物は「ガストレア」と呼ばれ,多くの動物の初期胚に見られる原腸胚(嚢胚)のように原腸(消化管のくぼみ)を有するとしている。この説では,6 から 7 が生じたとしている。

 一方,ハッジの唱えた多核体繊毛虫仮説では,繊毛を用いて一方向に動く単細胞繊毛虫が多核化を経て多細胞化したとする。つまりこの説では,8 から 9 が派生したとしている。

 近年の分子系統学的解析から,後生動物は単系統であることや,その姉妹群が襟鞭毛虫であることが示されている。襟鞭毛虫は群体性を示すことや,後生動物の中で最も早期に分岐した海綿動物には,襟鞭毛虫に似た「襟細胞」が存在することから,現在ではヘッケルの群体鞭毛虫仮説が有力と考えられている。

図3—3 ヘッケルの群体鞭毛虫仮説(A)とハッジの多核体繊毛虫仮説(B)
図3—3 ヘッケルの群体鞭毛虫仮説(A)とハッジの多核体繊毛虫仮説(B)
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〔問〕

G 文中の空欄6〜9に当てはまる語句として最も適切な組み合わせを下記の(1)〜(4)から選べ。

(1) 6:放射相称動物,7:左右相称動物,8:左右相称動物,9:放射相称動物

(2) 6:左右相称動物,7:放射相称動物,8:左右相称動物,9:放射相称動物

(3) 6:放射相称動物,7:左右相称動物,8:放射相称動物,9:左右相称動物

(4) 6:左右相称動物,7:放射相称動物,8:放射相称動物,9:左右相称動物

H 動物の中には,外肛動物(コケムシ)のように,個体が密着して集団がまるで1個体であるかのように振る舞う「群体性」を示すものが存在している。群体性を示す動物の中には,異なる形態や機能を持つ個体が分化したり,不妊の個体が存在する種も知られる。このように同種の血縁集団として生活し,その中に不妊個体を含む異なる表現型を持つ個体が出現する動物は他にも存在している。その例として最も適切なものを下記からひとつ選べ。

(1) アブラムシの翅多型

(2) ミジンコの誘導防御

(3) クワガタムシの大顎多型

(4) 社会性昆虫のカースト

(5) ゾウアザラシのハーレム

I ヘッケルの唱えた「ガストレア」が後生動物の起源だとすると,現生の動物門の中で「ガストレア」の状態に最も近い動物門は何か。動物門の名称とその理由を3行程度で記せ。