東大 過去問 2005年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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東京大学 第2次学力試験(前期)2005年 理科「生物」(東京大学がかつて公開したPDFの Internet Archive 保存版)

問題・出題の意図・東京大学の解答例(東京大学の公表資料)

東京大学の利用規定について

東京大学は、入試問題と出題の意図・解答の2次利用について「東京大学第2次学力試験入学試験問題等の2次利用について」(令和6年7月1日改定)で条件を定めている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

修正履歴

お知らせ(2026年10月4日)

解答・解説・シミュレーションは、すべて Claude Opus 5.5 で作成しています。作ったあとの確かめ方は、科目によって違います。

どの科目も、東京大学が公表した解答ではありません。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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生 物

第1問

次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。

〔文1〕

 多細胞生物の成長は細胞分裂を伴うが,体細胞では多くの場合 DNA 複製と細胞分裂が交互におこる。この DNA 複製と細胞分裂の周期を細胞周期とよび,1回の細胞分裂の終了から次の細胞分裂の終了までの期間が1細胞周期となる。細胞周期は,DNA の複製が始まるまでの準備期(G1 期)→DNA 合成期(S 期)→分裂が始まるまでの準備期(G2 期)→分裂期(M 期)の順に進行する。M 期での細胞核の分裂は 1 と核小体が消失して染色体が凝縮していく前期,染色体が赤道面に整列する中期,染色分体が両極に移動していく後期,それらの周囲に 1 が再形成される終期の順に進行し,次いで細胞質分裂がおこって2つの娘細胞が形成される。さらに分裂増殖を続ける場合は,この細胞周期がくり返される。

 動物細胞では,前期に中心体が二分されるとともに微小管が伸長して星状体となり,それらが両極となって 2 の形成が始まる。植物細胞には中心体はないが,2 は形成される。いずれの場合でも両極から伸長した微小管は,3 に付着して染色体を動かす。中期には,両極からの力がつり合って染色体が赤道面に並ぶが,後期に入ると,対をなしていた染色分体が分かれ,3 微小管が短くなることで染色分体は両極に移動する。終期に入ると,細胞核が再形成され,続いて(ア)細胞質分裂がおこって,細胞は2分割される。

〔文2〕

 S 期の細胞に水素の同位体 3H を含むチミジンを与えると,3H チミジンは複製中の DNA にとり込まれ,DNA を標識することができる。いま盛んに分裂増殖し,細胞周期のさまざまな時期を進行中の多数の細胞を含む培養液に,3H チミジンを加えて DNA を短時間標識した。その後,細胞を洗浄して細胞外の 3H チミジンを完全に除き,3H チミジンを含まない培養液に戻して,細胞周期を進行させた。(イ)4時間後から,標識された M 期の細胞が観察され始め,5時間後には M 期の細胞の50%が標識されるに至った。その後に M 期の細胞は100%標識されたものになり,やがて減じて,10時間後にはその割合は再び50%になった。引き続き培養を続けたところ,標識された M 期の細胞は全く見られなくなったが,18時間後から再び観察されるようになった。

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(注1) この実験では,細胞を標識した時点で多数の細胞が細胞周期の各時期に一様に分布し,すべての細胞は細胞周期を同じ速度でまわり続けているとする。また,細胞の標識に要した時間は便宜上0時間とし,S 期の細胞はすべて標識されたとする。

〔文3〕

 窒素の同位体 15N(窒素 14N より重い)のみを窒素源として含む培地で,充分に長い期間大腸菌を増殖させ,DNA 中の窒素原子がすべて 15N に置きかわった菌を作製した。この大腸菌を 14N のみを窒素源とする培地に移して増殖させると,DNA 複製の際に 14N が取り込まれる。菌がいっせいに分裂するように調整してから,分裂するたびに大腸菌を採取して,その DNA を取り出して調べた。DNA の二重鎖は重さによって遠心分離で区別できる。(ウ)2回目の分裂直後の遠心分離では,DNA 二重鎖は,重いもの,中間のもの,軽いものの比率が0:1:1になった。

(注2) DNA 二重鎖中の窒素原子がすべて 15N に置きかわったものを重い DNA 鎖,すべて 14N のものを軽い DNA 鎖とする。

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〔問〕

Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。

A 文中の空欄1〜3に入る最も適当な語句を記せ。

B 下線部(ア)について。一般的な植物細胞と動物細胞の細胞質分裂の違いについて2行で述べよ。

C 細胞を構成する主な構造の中で,一般に動物細胞に比べて植物細胞に特徴的なものを下記の例以外に2つあげ,その構造と主要な機能について各1行で述べよ。

(例)

葉緑体:二重の膜をもつ細胞小器官で,クロロフィルを含み光合成を行う。

Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A M 期の細胞を識別するために染色に用いられる色素を1つあげよ。

B 下線部(イ)について。この細胞が細胞周期の G2 期と M 期それぞれを通過するのに要する時間を求めよ。

C この細胞が細胞周期の G1 期を通過するのに要する時間を求めよ。

Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。

A この実験で示された DNA の複製のしくみを何とよぶか。

B 下線部(ウ)について。4回目および n 回目の分裂直後の DNA 二重鎖では,これらの比率はどのようになるか。それぞれの場合について

重い DNA 鎖:中間の DNA 鎖:軽い DNA 鎖

の比率を求めよ。

C 上記 B の n 回目の分裂後,再び 15N のみを窒素源とする培地に移し,さらに2回分裂を行わせた。この2回目の分裂直後における

重い DNA 鎖:中間の DNA 鎖:軽い DNA 鎖

の比率を求めよ。

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第2問

次の文1〜文3を読み,Ⅰ〜Ⅲの各問に答えよ。

〔文1〕

 植物の系統進化の研究は,はじめは形態的特徴により,のちに物質組成や生理学的特徴に基づいて進められてきた。また,20世紀後半には遺伝子などの塩基配列の比較により系統解析がおこなわれるようになった。2000年に双子葉植物のシロイヌナズナの全ゲノム塩基配列が決められると,(ア)ゲノムの比較を系統進化の研究の主要な手段とすることが可能になってきた。このため,系統的に異なるさまざまな光合成生物のゲノム塩基配列の解析が進められた。種子植物以外でも,コケ植物蘚類のヒメツリガネゴケや緑藻のクラミドモナス,紅藻のシアニジオシゾンなどで,核ゲノムの研究が進んでいる。

 緑色植物(陸上植物や緑藻類)の系統とは異なる真核光合成生物には,紅藻のほか,有色植物(褐藻・ケイ藻などの藻類)が知られている。(イ)有色植物と紅藻はクロロフィル組成や補助色素の種類の点でも大きく異なるが,葉緑体ゲノムに含まれている遺伝子は互いによく似ていて,それぞれの葉緑体は系統的に関連があることがわかった。

 葉緑体ゲノムは小型であるため,30以上にものぼる多くの真核光合成生物で塩基配列決定が進んでいる。葉緑体ゲノムには,数十個の光合成関連の重要な遺伝子が含まれている。さらに,光合成をおこなうことが可能な原核生物である 1 の全ゲノムについても,10種ほどが解読されている。

 葉緑体の起源を説明する仮説として,以前は膜説があった。この説によれば,始原真核細胞で細胞膜の陥入によってさまざまなオルガネラができたとされる。(ウ)これに対し現在では,真核光合成生物の葉緑体の起源については,1 と葉緑体との系統関係に基づき,2 が有力とされている。

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〔文2〕

 蘚類は,被子植物と共通した面が多いが,被子植物で知られているさまざまな生理現象を,より単純な形で示すことが多い。たとえば,(エ)蘚類の茎葉体(配偶体)の葉は,一層の細胞からなるが,被子植物の葉は,通常,複数の細胞層からなる葉肉と表皮をもつ。被子植物の葉は,単位葉面積あたりの光合成能力を高めるために,多層構造になっていると考えられる。

 蘚類では,胞子が発芽すると,細胞が一列につらなった原糸体が伸長する。(オ)原糸体は頂端細胞が分裂することで成長し,光の方向に伸長していく性質がある。原糸体は枝分かれしながら成長するが,やがて芽とよばれる細胞塊を形成し,これが成長して茎葉体となる。芽の形成は,植物ホルモンの一種であるサイトカイニンにより促進される。やがて適当な条件下で,造精器・造卵器ができ,受精により胞子体を形成する。(カ)胞子体は複相世代であるが,すぐに減数分裂を行って単相世代である胞子を生ずる(図1)。

図1 ヒメツリガネゴケの生活環
図1 ヒメツリガネゴケの生活環
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 葉緑体ゲノムにおきた突然変異によって光合成ができなくなり,培地に糖を加えないと生育できない変異株が,ある種の蘚類で得られた。(キ)この変異株と野生株をかけあわせたとき,変異株の卵と野生株の精子を用いた場合,得られた胞子が発芽してできるすべての細胞が変異型となったが,変異株の精子と野生株の卵を用いた場合,得られた胞子が発芽してできるすべての細胞が正常な光合成能力を示した。

 ヒメツリガネゴケの特徴の1つに,細胞核遺伝子の相同組換えが高頻度でおこることがある。これを利用すると,塩基配列のわかった遺伝子にねらいを定めてこれを破壊することが可能である。そのため,ヒメツリガネゴケは被子植物の重要な現象の解析のためのモデル植物として利用されている。たとえば,(ク)葉緑体の分裂において,くびれ込む包膜の内側に沿ってリング状の構造をつくる FtsZ とよばれるタンパク質が知られているが,このタンパク質をつくる細胞核遺伝子を破壊したコケを作製したところ,細胞あたり1個の巨大葉緑体をもつようになった。野生株の細胞では,細胞あたりの葉緑体数は20個以上である。このため,FtsZ タンパク質が,葉緑体の分裂に重要な働きをしていることが推定されている。さらに,類似のタンパク質が,被子植物でも機能していることがわかった。

〔文3〕

 生命誕生以前の地球では,現在よりもはるかに高濃度の二酸化炭素が大気中に含まれており,逆に酸素はほとんど含まれていなかったと考えられている。大気中に酸素を最初に多量に発生させたのは,1 であった。1 の化石はストロマトライトとよばれる層状構造を持った石灰岩として残っており,20〜30億年前の地層から大量に発見されるが,同様の構造物は,現在でも一部の地域で形成され続けている。大気中の二酸化炭素は,炭酸カルシウムとして沈殿したり,光合成によって有機化合物に変えられたりすることにより除去され,これによって,温室効果が減少し,地上の温度が次第に低くなった。また,大気中や水中に多量の酸素が蓄積していったことにより,3 によって大量にエネルギーを獲得することができる従属栄養生物,特に大型の動物の誕生が可能になった。さらに,酸素に 4 が作用して生ずる 5 の,成層圏での蓄積は,有害な 4 の地上への到達を防ぐことによって陸上への生物の進出を可能にし,現在我々が見るような地球の姿を生み出す重要な要因となった。このように(ケ)光合成は,現存する生物全体のエネルギーの源であるばかりでなく,豊かな生態系に恵まれた地球環境全体を生み出した原動力でもあった。

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〔問〕

Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(ア)について。ゲノムという言葉は今日,いくつかの意味合いで用いられる。以下の(1)〜(5)から,用法として正しくないものを一つ選べ。

(1) ゲノムという言葉のもとの意味は,生物の生存に必要な最小限の染色体セットに含まれる遺伝子の総体であった。

(2) 一般に,植物細胞の中には,3種類のゲノムがある。

(3) 大腸菌のゲノムは,単一の環状 DNA からなるが,そのほかにプラスミドをもつ場合がある。

(4) 真核生物の各染色体は,それぞれ別々のゲノムを含む。

(5) パンコムギは6セットの核ゲノムをもつが,これは,それぞれ2セットのゲノムをもつ3種の野生の原種コムギのゲノムが組み合わされたものである。

B 下線部(イ)について。紅藻には含まれないが,褐藻には存在するクロロフィルは何か。

C 空欄1に入れるのにもっとも適切な生物名を記せ。なお,空欄1は文3にも使われている。

D 下線部(ウ)について,以下の問に答えよ。

(a) 空欄2に入れるべき説の名称をあげよ。

(b) この説が支持される理由を2つあげ,それぞれ2行程度で記せ。

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Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。

A 下線部(エ)について,次の問に答えよ。

(a) 葉が単に細胞層を重ねた多層構造であれば,光が強い場合,光量に応じた光合成量が確保できないと予想される。その理由を2行程度で記せ。

(b) (a)の問題点は,多層構造をもつ実際の葉では,どのような構造をつくることで克服されているか,名称を記せ。

B 下線部(オ)について,次の問に答えよ。

(a) マカラスムギ(単子葉植物)の子葉鞘で知られる光屈性(屈光性)のしくみを2行程度で説明せよ。

(b) マカラスムギの光屈性のしくみは,コケの原糸体にも全く同じように当てはまるかどうか,その根拠とともに述べよ。

C 下線部(カ)について。被子植物には,単相でも複相でもない特定の核相をもつ組織がある。その名称と核相を記せ。

D 下線部(キ)について。この理由として考えられることを2行程度で説明せよ。なお,この突然変異によって胞子形成には影響がないものとする。

E 下線部(ク)について。このような変異株を野生株と交配してできた胞子を発芽させてできる原糸体における表現型を調べると,どのような表現型の原糸体を生ずる胞子がどのような比率で現れるか述べよ。

Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。

A 空欄3,4,5に入る最も適切な語句は何か。

B 下線部(ケ)について,以下の(1)〜(4)から正しくないものを一つ選べ。

(1) 太陽の光エネルギーを利用する生物には,酸素を発生しないものもある。

(2) 海洋で光合成が行われるようになったのは,褐藻など大型の藻類が生まれてからである。

(3) 光合成生物が誕生する以前の地球では,無機物の酸化還元が生物の主なエネルギー源であった。

(4) 動植物が使う炭素源やエネルギーの大部分は,光合成によって固定された二酸化炭素と太陽光エネルギーに由来する。

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第3問

次の文1〜文4を読み,Ⅰ〜Ⅵの各問に答えよ。

〔文1〕

 図2に示すように,網膜の視細胞がとらえた視覚情報は,外側膝状体を通って,脳の後部にある一次視覚皮質に送られる。網膜の中で鼻に近い半分の視細胞からの情報は反対側の脳へ送られ,耳に近い半分からの情報は同じ側の脳へ送られる。網膜に写る像はレンズによって反転しているので,視野の左半分は右眼からの情報も左眼からの情報も右脳で処理され,右半分は左脳で処理されることになる。視野の同じ位置をとらえる左右の眼の視細胞は,一次視覚皮質の同じ位置に情報を送る。

 網膜の中心の少し内側に,視神経が束になって眼から出てゆく部分がある。ここは盲点(盲斑)とよばれ,視細胞がないので光を感じない。下の参考図で,眼と紙の距離を 15cm 程度に調節し,片眼を閉じて中央の黒い丸に視点を固定すると,(ア)右眼で見たときは右の×が,左眼で見たときは左の×が,ちょうど盲点に入って見えなくなることがある。

参考図
参考図
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図2 眼と脳の水平断面
図2 眼と脳の水平断面

視野の同じ位置の像をとらえる2対の視細胞(●と○)の情報経路を示す。

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〔文2〕

 発生の過程において,一部の細胞は大きく場所を移動する。たとえば脊椎動物では,背中をつらぬく(イ)神経管の背部から神経冠細胞(神経堤細胞)とよばれる一群の細胞が作られ,そこから色素細胞や末梢神経細胞,副腎髄質,顔面の骨などが生じる(図3)。色素細胞は,分裂をくりかえしながら表皮に沿って全身に移動し,1本1本の毛の付け根にある毛母細胞の間に入り込んで,メラニン色素を合成して毛に分泌する(図4)。

図3 発生中の胚の背部
図3 発生中の胚の背部
図4 毛の構造
図4 毛の構造

 ネコの体色に関連する常染色体上の対立遺伝子に,白斑遺伝子 S と斑なし遺伝子 s がある。この遺伝子は色素細胞の移動を制御しており,遺伝子型が ss の場合は色素細胞は体表全体へと広がる。そのため毛は黒一色や茶一色になる。一方,遺伝子型が SS や Ss の個体では,色素細胞は体表全体へは広がらない。このため一部の毛は毛根に色素細胞をもたず,白い毛となる。従って,このような遺伝子型をもつ猫の体色は黒と白の斑や,茶と白の斑になる。色素細胞は背側の神経管から広がるため,背中から遠い脚や腹部ほど白くなりやすい。しかし,移動の経路や到達位置は,細胞ごとに厳密に決まっているわけではない。

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〔文3〕

 多くの動物は父親由来と母親由来の2本が組になった染色体セットをもっている。このうち一部の染色体が3本になると,その染色体上の遺伝子だけ他よりも数が多くなり,伝令 RNA に転写される量のバランスが変化してしまう。これは個体に致命的な障害を及ぼすことが多い。たとえば人間は,22組ある常染色体のうち21番染色体以外のどれか1つでも3本になると,胎児はほとんど生きのびることができない。

 一方,性染色体は雌雄で本数が異なる場合が多い。たとえばショウジョウバエや多くの哺乳類では,通常はオスでは X 染色体が1本なのに対し,メスでは2本である。それにもかかわらず重大な支障がおこらないのは,性染色体をもつ生物がさまざまな方法で遺伝子量補正とよばれる調節を行っているためである。ショウジョウバエではオスでだけ,X 染色体上の遺伝子が伝令 RNA へ転写される活性がメスの2倍に上昇しており,染色体数が半分であることを補っている。一方,哺乳類ではメスでだけ,受精卵が細胞分裂をくりかえして体細胞の数がある程度増えた時点で,それぞれの体細胞がもつ2本の X 染色体のうちの1本が凝縮して不活性化し,その染色体上のほとんどの遺伝子が伝令 RNA に転写されなくなる。

 2本の X 染色体のうちのどちらが不活性化されるかは定まっておらず,細胞ごとにランダム(無作為)に決まる。X 染色体が3本以上あるような場合も,1本だけが活性を保ち,残りは不活性化される。その後,発生の進行に伴い,それぞれの体細胞はさらに細胞分裂を続けるが,一度不活性化された X 染色体は娘細胞でも引き続き不活性化される。従って哺乳類のメスの体には,父親由来の X 染色体が不活性化された細胞群と,母親由来の X 染色体が不活性化された細胞群が,斑状に存在することになる。不活性化がおこる時期やその後の細胞分裂の回数の違いにより,斑のサイズには個体差や体の部位による差が生じる。

 X 染色体上の遺伝子は伴性遺伝とよばれる遺伝形式をとる。ショウジョウバエのメスでは X 染色体は2本とも活性をもつため,ヘテロ接合の場合の表現型のあらわれ方は常染色体のときと同じである。しかし哺乳類では様相は異なる。

 ネコの X 染色体上の対立遺伝子に,毛の色が茶色になる茶色遺伝子 O と黒になる黒色遺伝子 o がある。メスには X 染色体が2本あるので,遺伝子型には 1,2,3 の3つの可能性がある。斑なし遺伝子がホモ接合 ss である個体では,茶色遺伝子がホモ接合の 1 の場合には体色は茶一色になり,黒色遺伝子がホモ接合の 2 の場合には黒一色になる。ところがヘテロ接合の 3 の場合には,体色は黒でも茶でも,黒と茶の中間でもなく,黒と茶の斑になる。これは X 染色体の不活性化によって,色素細胞の一部では父親由来の対立遺伝子だけが発現し,残りでは母親由来の対立遺伝子だけが発現するためである。

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 また,白斑遺伝子のヘテロ接合 Ss やホモ接合 SS の個体では,色素細胞の移動の効果が加わるため,茶色/黒色遺伝子が 1 の場合は体色は 4,また 2 の場合は 5,3 の場合は 6 になる。(ウ)この最後の場合が,いわゆる三毛猫である。

〔文4〕

 ヒトの伴性遺伝の例として知られている赤緑色盲(色覚異常)は,X 染色体上の,光を感じるタンパク質の遺伝子の突然変異によって生じる。赤緑色盲はありふれた突然変異の一つで,日本では男性の20人に1人が赤緑色盲である。赤緑色盲の遺伝子頻度が男女とも同じで,女性の性染色体について常染色体と同様にハーディー・ワインベルグの法則が成立すると仮定すると,昨年度の東京大学の志願者(男性11,673名,女性3,224名)のうち,概算で男性志願者の約580名が赤緑色盲であり,女性志願者の約 7 名が赤緑色盲遺伝子をもつと推定できる。

 父親が赤緑色盲でない場合,その娘は赤緑色盲遺伝子のホモ接合にはならないので,赤緑色盲にはならないという記述をよく見かける。しかしこれは誤りで,(エ)まれにヘテロ接合の女性が赤緑色盲の表現型を示すこともある。また,赤緑色盲の検査は色のついた図形を両眼で見ながら行うが,片眼ずつ検査をするとどちらかの眼が赤緑色盲の表現型を示す女性が少数だが存在する。しかしこのような女性は,両眼で検査をすると赤緑色盲と判定されないことが多い。

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〔問〕

Ⅰ 文1の下線部(ア)について。

両眼で見ると盲点の存在が意識されない理由を考え,2行程度で述べよ。

Ⅱ 文2の下線部(イ)について。

神経管はどの胚葉から作られるか,答えよ。

Ⅲ 文3について,以下の小問に答えよ。

A 空欄1〜3に該当する遺伝子型を答えよ。

B 空欄4〜6に該当する毛の色を下の選択肢からそれぞれ選べ。

a:黒,b:茶,c:黒と茶の斑,d:黒と白の斑,e:茶と白の斑,f:黒と茶と白の斑

C 下線部(ウ)について,三毛猫はほとんどがメスである。これはなぜか,理由を考え,2行程度で述べよ。

Ⅳ あなたが茶と白の斑のメス猫を飼っているとする。これをどのような毛色のオス猫と掛け合わせれば,三毛猫を産ませることができるか。

A 候補になりうるオスの毛色を,以下の選択肢からすべて選んで記号を答えよ。

a:黒,b:茶,c:黒と茶の斑,d:黒と白の斑,e:茶と白の斑,f:黒と茶と白の斑

B またその場合に,三毛猫以外にどのような毛の子猫が同時に生まれうるかを,オスの子猫,メスの子猫それぞれについて上の選択肢の a〜e から選び,記号を列挙せよ。(オス親の候補が複数ある場合は,全部をまとめて列挙せよ。また,オスの三毛猫などごくまれにしかあらわれない毛色の可能性は除外して考えよ。)

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Ⅴ 文4について,以下の小問に答えよ。

A 空欄7に該当する数字を有効数字2ケタで答えよ。

B 下線部(エ)について。赤緑色盲遺伝子がヘテロ接合なのに赤緑色盲の表現型を示す女性では,網膜の視細胞がどのようになっている可能性が考えられるか。2行程度で述べよ。

C 赤緑色盲遺伝子をもつヘテロ接合の女性は確率的に視細胞の約半分が赤緑色盲の変異をもつにもかかわらず,ほとんどの人が赤緑色盲の表現型を示さない。この理由を考え,2行程度で述べよ。

Ⅵ 社会に流布しているイメージでは,クローン人間は元になった人間と全く同じになると考えられがちである。2002年に,三毛猫の体細胞から作られたクローン猫が誕生した。生まれたメスの子猫は元になった猫と全く同じ遺伝子セットをもっているが,毛の模様は元になった猫と同じになると考えられるか,違うと考えられるか。また,メスの三毛猫でなく黒と白の斑や茶と白の斑のオス猫からクローンを作った場合は,どうなると考えられるか。理由とともに2行程度で述べよ。