重鎖の可変部は,V,D,J とよばれる3つの遺伝子断片にコードされている。未分化なB細胞の染色体には,異なる配列をもつ遺伝子断片が,それぞれ数個〜数十個存在する。B細胞が分化するとき,個々のB細胞で,V,D,J の遺伝子断片が1つずつ選ばれて連結し(DNA 再編成),1個のB細胞では1種類の固有のアミノ酸配列が決定される。軽鎖の可変部についても,V,J の2つの遺伝子断片による DNA 再編成がおこる。その結果,個々のB細胞は異なる抗原特異性をもつ抗体を産生する。ある抗原に対する抗体を産生することができるB細胞が,生体内で,その抗原と出会うと,増殖(クローン増殖)し,抗体を産生する。このため,その抗原に対する血清中の抗体量が増える。リンパ球の1種である 3 は,B細胞のクローン増殖を調節する。
マウスにヒトのがん細胞に対する抗体を産生させるため,次の実験を行った。
実験1 ヒトの白血球由来のがん細胞 X の表面タンパク質 Y と,正常なマウスの白血球の表面タンパク質 Z を単一に精製した。Y は X にのみ発現しており,正常なヒトの細胞には発現していない。Y と Z を同じ濃度で生理的食塩水に溶解し,2匹のマウスに,それぞれ2回ずつ同量注射した。経時的にマウスから血清を分離し,一定量の Y および Z に対する,血清中の抗体の反応の強さ(抗体力価)を測定した。その結果,図1—2のように,Y を注射した場合,1回目の注射で抗体力価は弱く上昇したが,2回目の注射では強く上昇した。一方,Z を注射した場合には,抗体力価はまったく上昇しなかった。
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図1—2 タンパク質 Y と Z を注射したマウスの抗体力価の経時的変化
〔文2〕
毒素やウイルスが抗原の場合,抗体が結合するだけで抗原を不活性化することがある。ところが,病原菌やがん細胞が抗原の場合,抗体が結合するだけでは抗原細胞を殺せないことが多い。しかし,たとえば,Fab 部分で抗原細胞と結合した IgG 抗体の Fc 部分が,マクロファージの表面にある,Fc に対する受容体と結合すると,抗体を介して結合した抗原細胞に対するマクロファージの食作用が容易になり,抗原細胞が排除されることがある。
がん細胞に対するモノクローナル抗体を用いた,がんの治療が行われている。モノクローナル抗体を作製するには,まず,動物に目的の抗原を注射して,その抗原に特異的な抗体を産生するB細胞を体内でクローン増殖させる。B細胞を多く含む器官からB細胞を分離し,無限増殖能をもつミエローマ細胞と融合させる。つぎに,目的の抗原と結合する抗体を産生する融合細胞を1個選び,培養液中で増殖させると,培養液から単一の抗原特異性をもつモノクローナル抗体が得られる。この方法により,実験1において Y に対して十分に血清中の抗体力価が上昇したマウスから,B細胞を分離して,Y に対するモノクローナル IgG 抗体(mab 1)を作製した。しかし,ヒトのがん細胞 X の培養液に mab 1 を大量に加えても,mab 1 は X の細胞表面に結合するのに,X の増殖は抑制しなかった。
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通常は,ヒトの細胞を正常なマウスに注射すると,X のようながん細胞であっても,強い免疫反応がおこって,ヒトの細胞は排除される。しかし,遺伝的に胸腺の形成不全を示すヌードマウスに,ヒトのがん細胞 X を注射したところ,血液中で X が増殖した。そこで,がん細胞 X に対する mab 1 の効果を調べるため,このヌードマウスを用いて,次の実験を行った。
実験2 ヒトのがん細胞 X が血液中で増殖している2匹のヌードマウスに,精製した mab 1 と正常なマウス血清から精製した IgG(正常マウス IgG)を,同じ濃度で生理的食塩水に溶解し,それぞれ,同量注射した。経時的にヌードマウス血液中のがん細胞 X の細胞数を計測した結果,正常マウス IgG を注射した場合は,がん細胞 X の細胞数は増加していたが,mab 1 を注射した場合は,しばらくすると,がん細胞 X は血液中にまったく見られなくなった。
〔問〕
Ⅰ 文1について,以下の小問に答えよ。
A 文中の空欄1〜3に適切な語を入れよ。
B マラリアはかつて,日本でもよくみられた感染症であったが,1950 年代に撲滅され,現在の日本には常在しない。一方,日本人が海外でマラリアに感染する機会は増えている。マラリアに感染した日本人の血清は,マラリア原虫のタンパク質(抗原)に対して高い抗体力価を示す。ところが,1度もマラリアに感染したことがない日本人の血液中にも,マラリア原虫のタンパク質に結合する抗体を産生できるB細胞が,ごくわずかではあるが存在すると考えられている。その理由を3行程度で述べよ。
C 下線部(ア)について。抗原決定部位と抗原結合部位の結合様式として正しいものを,以下の(1)〜(5)からすべて選べ。
(1) ペプチド結合
(2) ジスルフィド結合
(3) ファンデルワールス力
(4) 水素結合
(5) イオン結合
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D ある1種類の IgG 抗体が,異なる病原体 O および P のいずれとも,抗原抗体反応によって特異的に強く結合した。その理由を2行程度で述べよ。
E 実験1について。2種類の変異マウス, マウスと マウスに,実験1と同様に Y と Z をそれぞれ注射して,抗体を産生させる場合を考える。ここで, マウスはヒトのタンパク質 Y の遺伝子をマウスの染色体に組み込んで,Y を細胞表面に発現させた変異マウスであり, マウスは,マウスのタンパク質 Z を先天的につくれない変異マウスである。 マウスに Y を注射した場合は,Y に対する血清中の抗体力価は上昇しなかった。一方, マウスに Z を注射した場合は,Z に対する血清中の抗体力価は上昇した。それらの結果が得られた理由を3行程度で述べよ。
F 下線部(イ)について。2回目の Y の注射後,抗体力価が著しく上昇した説明として適切なものを,以下の(1)〜(5)からすべて選べ。
(1) 1回目の Y の注射によりB細胞が産生した抗体は,リンパ組織に貯蔵されていた。2回目の Y の注射によりその抗体が一挙に血液中に放出された。
(2) 1回目の Y の注射によりB細胞が産生した抗体は,血清中に残っていた。2回目の Y の注射によりその抗体自体の Y との結合が著しく強くなった。
(3) 1回目の Y の注射によりクローン増殖したB細胞の一部が,記憶B細胞として残っていた。2回目の注射によりその記憶B細胞がすばやく増殖したため,Y と結合できる抗体の産生量が著しく多くなった。
(4) 1回目の Y の注射によりクローン増殖したB細胞の一部が,記憶B細胞として残っていた。2回目の注射によりその記憶B細胞に DNA 再編成が起きて,Y と結合できる抗体の種類が著しく増えた。
(5) 1回目の Y の注射によりクローン増殖したB細胞の一部が,記憶B細胞として残っていた。2回目の注射によりその記憶B細胞に DNA 再編成が起きて,1回目より著しく強く Y と結合できる抗体を産生した。
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Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。
A 下線部(ウ)について。B細胞を多く含む器官として適切なものを,以下の(1)〜(5)からすべて選べ。
(1) リンパ節
(2) ひ 臓
(3) 脳
(4) すい臓
(5) 胸 腺
B 下線部(エ)について。遺伝的に胸腺の形成不全を示すヌードマウスでは,なぜヒトのがん細胞 X は排除されなかったのか。3行程度で述べよ。
C mab 1 の Fab(mab 1-Fab)と Fc(mab 1-Fc)を作製し,以下の(1)〜(4)を,実験2で用いた mab 1 と同じ濃度で,生理的食塩水に溶解した。X が血液中で増殖している4匹のヌードマウスに,実験2と同じ方法で,それぞれ,同量注射した。最も強く X の増殖を抑制すると考えられるものを,以下の(1)〜(4)から1つ選べ。また,その理由を2行程度で述べよ。
(1) 精製した mab 1-Fab
(2) 精製した mab 1-Fc
(3) 精製した mab 1-Fab と mab 1-Fc を等量混合したもの
(4) 精製した mab 1
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第2問
次の文1と文2を読み,ⅠとⅡの各問に答えよ。
〔文1〕
DNA の部分的な損傷や複製時の誤りによって塩基配列に変化が生じることを,遺伝子突然変異という。この遺伝子突然変異により,それまでに見られなかった形質が生じ,子孫に遺伝する突然変異体が出現する場合がある。
シロイヌナズナは長日植物であり,遺伝子 P の機能が失われた突然変異体(以後,P 突然変異体とよぶ)は,長日条件下で野生型よりも花成時期が遅くなる「遅咲き」表現型を示した。一方,遺伝子 P を植物体全体で強制的に発現させた変異体(以後,P 過剰発現体とよぶ)では,長日条件下で野生型よりも花成時期が早くなる「早咲き」表現型を示した。さらに,野生型の台木に P 過剰発現体の穂木を接ぎ木すると,台木の表現型は早咲きになった。このような,変異体を組み合わせて接ぎ木を行った実験の結果を表2—2に示す。
A 遺伝情報は DNA から mRNA に写され,次に,その mRNA の情報に基づきアミノ酸が連結したタンパク質が合成される。これら2つの過程をそれぞれ何というか。また,遺伝情報が DNA から mRNA,さらにはタンパク質へと一方向に流れる原則のことを何というか。それぞれ答えよ。
B グアニンがアデニンへと変化する遺伝子突然変異を人為的に誘発して,トリプトファンのコドン(UGG)に変異が生じた場合,野生型と異なる表現型を示す突然変異体となることが多い。その理由を3行程度で述べよ。
C タンパク質のアミノ酸配列は DNA の塩基配列に対応しているが,その塩基配列に変化が生じても,アミノ酸配列に影響を及ぼさず,表現型にも影響を与えない場合がある。一方,タンパク質のアミノ酸配列から DNA の塩基配列を推定することは,DNA の塩基配列からタンパク質のアミノ酸配列を推定することより難しい。これら2つの事がらは同じ理由による。その理由を,遺伝暗号の特徴を考慮して2行程度で述べよ。
D 空欄1,2に適切な語を入れよ。
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E A 突然変異体では,領域1から領域4にかけて,めしべ,おしべ,おしべ,めしべの順に花器官が形成された。このことから推測される調節遺伝子 A,B,C の相互の関係について,適切なものを以下の(1)〜(5)からすべて選べ。
(1) 調節遺伝子 A は調節遺伝子 B の機能を阻害しており,調節遺伝子 A の機能欠損により,調節遺伝子 B がすべての領域で機能するようになる。
(2) 調節遺伝子 A は調節遺伝子 C の機能を阻害しており,調節遺伝子 A の機能欠損により,調節遺伝子 C がすべての領域で機能するようになる。
(3) 調節遺伝子 A は調節遺伝子 B と C の機能を阻害しており,調節遺伝子 A の機能欠損により,調節遺伝子 B と C がすべての領域で機能するようになる。
(4) 調節遺伝子 A の機能は,調節遺伝子 B と C の機能と関係しない。
(5) 調節遺伝子 A の機能は,調節遺伝子 B の機能に必要である。
F ラカンドニアという植物の領域3と領域4では,シロイヌナズナと比べて花器官の形成位置が逆転しており,それぞれ,めしべ,おしべが形成される。これは,調節遺伝子 A,B,C の機能する領域がシロイヌナズナとは異なるためであると考えられている。ラカンドニアの領域1と領域2では,がくが形成されると仮定すると,ラカンドニアではどの調節遺伝子がどの領域で機能すると考えられるか。調節遺伝子 A,B,C についてそれぞれ答えよ。
G シロイヌナズナで,領域1から領域4のすべての領域で調節遺伝子 B を強制的に発現させると,各領域にはどの花器官が形成されるか。それぞれの領域について答えよ。また,調節遺伝子 B を強制的に発現させた後,調節遺伝子 A と調節遺伝子 C の機能を変化させるとすべての領域でおしべが形成されたとする。調節遺伝子 A と調節遺伝子 C の機能をどのように変化させたか。それぞれ答えよ。
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Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。
A 下線部(ア)について。花成ホルモンの別名を答えよ。
B 遺伝子 Q の機能を失ったシロイヌナズナの突然変異体も,遅咲きの表現型を示す。文2と表2—2中に示した P 突然変異体や P 過剰発現体を用いて行った実験を,それぞれ Q 突然変異体や Q 過剰発現体を用いて行っても,同じ結果が得られた。一方,接ぎ木をしていない Q 突然変異体の葉で遺伝子 P を強制的に発現させると早咲きになった。しかし,接ぎ木をしていない P 突然変異体の葉で遺伝子 Q を強制的に発現させても遅咲きのままであった。これら2つの実験から,葉における遺伝子 P と遺伝子 Q の機能はどのような関係にあると考えられるか。2行程度で述べよ。
C タンパク質 P とタンパク質 Q のどちらかが花成ホルモンであると考えられた。そこで以下の実験を行った。野生型において,遺伝子 P または遺伝子 Q を葉のみで強制的に発現させると早咲きになった。一方,遺伝子 P を茎頂部のみで強制的に発現させると早咲きになったが,遺伝子 Q を茎頂部のみで強制的に発現させても早咲きにはならなかった。これらの結果から正しいと考えられるものを,以下の(1)〜(6)からすべて選べ。
(1) タンパク質 P は,葉から茎頂部に移動する。
(2) タンパク質 Q は,葉から茎頂部に移動する。
(3) タンパク質 P もタンパク質 Q も葉から茎頂部に移動する。
(4) 花成を誘導するためには,タンパク質 P もタンパク質 Q も,ともに茎頂部ではたらくことが必要である。
(5) 花成を誘導するためには,タンパク質 P は葉で,タンパク質 Q は茎頂部ではたらくことが必要である。
(6) 花成を誘導するためには,タンパク質 P は茎頂部で,タンパク質 Q は葉ではたらくことが必要である。
D 表2—2の空欄3〜5に適切な語を入れよ。
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E 短日植物であるイネの遺伝子 と遺伝子 は,長日植物であるシロイヌナズナの遺伝子 P と遺伝子 Q にそれぞれ相同な遺伝子である。長日条件下において,イネの 突然変異体は遅咲きで, 過剰発現体は早咲きであった。一方,長日条件下において,イネの 突然変異体は早咲きで, 過剰発現体は遅咲きであった。この実験結果から,長日条件下において,イネの遺伝子 と遺伝子 の機能はどのような関係にあると考えられるか。シロイヌナズナの遺伝子 P と遺伝子 Q の機能の関係と比較して2行程度で述べよ。
この神経回路を見て,感覚器→前庭神経核(以後,神経核 A とよぶ)→外転神経核(神経核 B)→動眼神経核(神経核 C)→眼筋,と信号が伝達される際のニューロンの活動について考えてみよう。太い矢印で示すように,頭が左側(水平面上で反時計回り)に回転させられる場合,左側の感覚器の活動は増加し,右側の感覚器の活動は減少する。すると,この神経回路により,左側の神経核 A のニューロン(神経核 A に細胞体のあるニューロン)の活動は増加し,右側の神経核 A のニューロンの活動は減少する。また,左側の神経核 B のニューロンの活動は 4 し,右側の神経核 B のニューロンの活動は 5 する。さらに,左側の神経核 C のニューロンの活動は 6 し,右側の神経核 C のニューロンの活動は 7 する。その結果,左右の眼球がともに右に回転する。
(a) 左側の神経核 B のニューロンと左側の神経核 C のニューロンの活動は相反的に増減する。つまり,一方の活動が増加するともう一方の活動が減少し,逆に一方の活動が減少するともう一方の活動が増加する。同様に,右側の神経核 B のニューロンと右側の神経核 C のニューロンの活動も相反的に増減する。このようなニューロンの活動は眼球に対してどのような作用を及ぼすか。そのときの外直筋と内直筋の挙動とともに1〜2行で述べよ。
(b) 左側の神経核 B のニューロンと右側の神経核 B のニューロンの活動は相反的に増減する。同様に,左側の神経核 C のニューロンと右側の神経核 C のニューロンの活動も相反的に増減する。このようなニューロンの活動はどのような左右の眼の動きをひきおこすか。1〜2行で述べよ。ただし,(a)で述べた増減の関係は保たれているものとする。
D 図3—1で,右側の感覚器の活動が消失した場合,頭を不意に左側に回転させられると,左右の眼球はそれぞれどちらの方向に動くか。理由とともに3行以内で述べよ。
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Ⅱ 文2について,以下の小問に答えよ。
A 下の図3—3で,体性感覚野および随意運動を担う運動野は,大脳のどこにあるか。(1)〜(4)から最も適切なものを選び,体性感覚野,運動野の順に記せ。
D 図3—4は,「○」または「×」という視覚対象を見たときの,視野の左側の視覚情報と,対応する右半球の視覚野の領域を太線で示している。一方,図3—5は,ある視覚対象を見たときの,対応する右半球の視覚野の領域を太線で示している。図3—4を参考にして,この視覚対象として最も適切なものを,A,E,H,T,Y の中から選べ。ただし,アルファベットおよび「○」と「×」の線の太さは考慮する必要がないものとする。
E 大脳の視覚野に多数存在するニューロンは,それぞれが視野の特定部分の情報処理を担当する。視覚対象が視野の中心付近に提示されるとき,周辺部に提示されるときに比べて,より小さな視覚対象を識別することができる。これを可能にするために,ひとつのニューロンが担当する視野の範囲は視覚野内で均一ではなく,ある特徴をもつ。どのような特徴か。2行程度で述べよ。
実験2で mab 1 がヌードマウスの体の中で X を消したのに、培養液の中では X の増殖を止めなかった。培養液に無くて体の中にあるものは、マクロファージなどの細胞である。文2の最初の段落にあるとおり、Fab で抗原細胞と結合した IgG の Fc が、マクロファージの受容体と結合すると、食作用が起こりやすくなる。
これが起こるには、1つの分子の中で「Fab が X に」「Fc がマクロファージに」同時に結合する必要がある。(1) Fab だけでは X に結合してもマクロファージにつながらない。(2) Fc だけではマクロファージにはついても X に結合しない。(3) 両方を混ぜても、Fab と Fc が別々の分子なので X とマクロファージを橋わたしできない。
デモの模型では、10 日後の X は (1)(2)(3) と正常 IgG ではどれも約 2 万個(20 倍)に増え、mab 1 だけが数個に減る。理由には「Fab と Fc の両方が1つの分子にあって、X とマクロファージをつなぐ」ことを書く。
遺伝子がどうやって形質(見た目や性質)を決めるかを、3つの段階で考える問題。1つ目は DNA の塩基が1つ変わると何が起こるか(遺伝暗号)、2つ目は調節遺伝子の組み合わせで花の器官が決まるしくみ(ABC モデル)、3つ目は葉でできたタンパク質が茎頂部(茎の先)へ運ばれて花を咲かせるしくみ(花成ホルモン)。
文1の後半を読むときの道具は、3つの調節遺伝子 A・B・C がはたらく領域の重なりで器官が決まるという見方。A だけならがく、A と B なら花弁、B と C ならおしべ、C だけならめしべ。そして A と C はたがいに相手のはたらきを抑えている。
A 突然変異体では、外から めしべ・おしべ・おしべ・めしべ ができた。領域1にめしべ(C だけ)、領域2におしべ(B と C)ができているので、A が無くなった領域1・2で C がはたらき始めている。B は領域2・3 のまま変わっていない。
選択肢の仮説ごとに4つの領域を予想すると、(2)「A が C を抑えていて、A が無いと C が全部の領域ではたらく」だけが観察と合う。
(1) B が全部に広がると、領域1は B だけ、領域4は B と C(おしべ)になり合わない。(3) B と C が全部に広がると全部おしべになる。(4) A と B・C が無関係なら、領域1・2は C がはたらかず、めしべ・おしべにならない。(5) A が B に必要なら、B もはたらかなくなり、おしべができない。
答え
Ⅰ F
ラカンドニアの器官は、外から がく・がく・めしべ・おしべ。これを A・B・C の組み合わせに戻す。
がくは A だけなので、領域1・2では A がはたらき、B・C ははたらかない。めしべは C だけなので、領域3では C だけ。おしべは B と C なので、領域4では B と C がはたらく。
茎頂部だけで P を強制すると早咲きになる。だから P は茎頂部ではたらく。葉だけで P を強制しても早咲きになる。茎頂部ではたらく P が葉から効くのだから、P は葉から茎頂部へ移動する。
葉だけで Q を強制すると早咲きになるが、茎頂部だけで Q を強制しても早咲きにならない。Ⅱ B の「Q が P を促す」と合わせると、Q は葉ではたらいて P をつくらせ、その P が茎頂部へ動く。茎頂部で Q を増やしても花成は進まない。Q 自身が動くかどうかは、この実験からは決まらない(動いても茎頂部で増やして効かないので結果は同じ)。
文1の道具は、ニューロンの活動の増減を、配線に沿って足し算・引き算していくこと。興奮性ニューロンは相手の活動を自分と同じ向きに動かし、抑制性ニューロンは逆向きに動かす。図3—1 では、左の神経核 A の興奮性ニューロンは線が交差して右の神経核 B へ、抑制性ニューロンは同じ側(左)の神経核 B へ行っている。神経核 B には2種類のニューロンがあり、1つは同じ側の外直筋へ、もう1つは交差して反対側の神経核 C へ行き、神経核 C は同じ側の内直筋へ行く。
文2の道具は、視野の地図は形を保ったまま、中心が大きく引きのばされていること。図3—2(b) の視覚野では、視野の中心 F から 2°・10°・40° の線がほぼ同じ間隔で並ぶ(中心からの角度の「対数」のような目盛り)。
左右の神経核 B が逆に増減すると、片方の眼の外直筋が縮むとき、もう片方の眼の外直筋はゆるむ。(a) の関係と合わせると、たとえば右の外直筋が縮むときは左の内直筋も縮む。右の外直筋は右眼を右へ、左の内直筋は左眼を右へ引くので、両眼が同じ向きに回る。
もし左右の B が同じ向きに増減したら、視線はそろわない。いまの配線(C は反対側の B から興奮をもらう)のままだと、左右の B が両方増えると C も両方増え、1つの眼の外直筋と内直筋が同時に強く縮んで引き合うので、眼はほとんど動かない。もし同じ側の B と C は逆に増減する((a) の関係は保つ)ように配線を変えたうえで左右の B が同じ向きに増えると、両眼の外直筋が縮み、左眼は左へ・右眼は右へと離れる向きに動く。デモの模型でも、左右の眼の速さの差は 0 になっている。
文字の真ん中を見つめたとき、左半分がこの形(真ん中から左への横線、そこから真上の頂点へ向かう線と、左下へ向かう線)になるのは A。E・H は左に縦の線(視覚野では縦に近い線)があり、T は横線が上にあって F を通らず、Y は F から出る斜めの線しか無いので、どちらも H にそった線にならない。デモでは5つの文字を実際に写し、図3—5 との近さ(一番遠い点のずれ)を比べている。
答えA
Ⅱ E
中心付近で小さなものまで見分けられるのは、中心付近の視野に多くのニューロンが割り当てられているから(Ⅱ C の (2) の逆)。