九大 過去問 2025年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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九州大学 令和7年度 前期日程 理科(生物基礎・生物)(改変あり)(2025年。九州大学のサイト(「試験問題、解答例等について」のページ)の PDF)

問題・解答例・出題意図(九州大学の公表資料)

九州大学の利用の条件について

九州大学は「九州大学入学試験問題等の利用について」(令和7年3月31日)で、入学試験問題等の2次利用(インターネット上に載せることを含む)を、条件を守ることで事前の承認なしにできるとしている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

お知らせ

解答・解説・シミュレーションは、すべて AI で作成しています。九州大学が公表した解答ではありません。

理科は、九州大学の「標準解答例」と見比べ、すべて一致しています(標準解答例を先に開いているので、見ずに解いたとは言えません)。数学は九州大学が解答例を出していないので、自分で解いて別の計算で確かめています。作成に使ったものとは別のAIでも全問を点検し、見つかった誤りを直しています。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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第1問

次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。(25 点)

近年,猛暑の影響でイネ種子の発芽遅延が問題になっている。発芽遅延の理由としては,植物ホルモンである〔 ア 〕が種子に蓄積し,種子が〔 イ 〕することが知られている。発芽後,苗は苗床で育苗される。苗を丈夫にするために,ロープや木材で苗の上部先端をなでる露払いとよばれる方法がある。植物ホルモンである〔 ウ 〕の作用によって,苗の茎葉の過度の伸長が抑えられ,茎が太くなる。細胞は,〔 エ 〕のはたらきで,細胞のセルロース繊維どうしの結びつきが弱まり,水が流入して成長する。接触・圧迫等で〔 ウ 〕が増加すると,その作用でセルロース繊維が頂端−基部軸方向に合成されるため,横方向の肥大成長が促進される。

発芽し,ある程度成長すると光合成を行うようになる。葉に光が当たると気孔が開き CO2 が取り込まれる。気孔の開口に有効な光は〔 オ 〕色光で,〔 カ 〕が光受容体としてこれを感知する。日中,強い日差しが照りつけると蒸散が活発になるが,根の吸水による水の供給が追いつかなければ,葉は乾燥状態に陥り,〔 ア 〕が合成され,気孔が閉じる。

<u>植物の成長がすすみ,温度や日長などの条件がそろうと花芽形成が始まる</u>①。<u>都市近郊の水田では,農地を照らす屋外照明により,出穂の遅れが問題になっている</u>②。<u>花芽形成には,花成ホルモンとよばれるタンパク質(フロリゲン)が関与している</u>③。

問 1.文章中の〔 ア 〕〜〔 カ 〕に入る適切な語句を答えなさい。

問 2.下線部①に関連して,日長の変化に対する花芽形成の反応は植物の種類によって異なる。1 日の暗期の長さと花芽形成までの日数を調べると,図 1 に示すように a,b,c の 3 つのパターンに分けられる。以下の問いに答えなさい。

(1) a,b,c の中で短日植物を示したグラフを選びなさい。

39

(2) 短日植物において,花芽形成に必要な最短の暗期の長さを何というか答えなさい。

(3) a,b,c が花芽形成し,かつ花芽形成までに要する日数が,a < b < c となるのは,日照時間を何時間にしたときか,最も適切な番号を次の①〜⑤の中から選びなさい。

① 9 時間  ② 10 時間  ③ 11 時間  ④ 13 時間  ⑤ 14 時間

1f1

図 1

問 3.下線部②に関連して,暗期における光照射によって花芽形成が阻害される現象を何というか答えなさい。また,これが引き起こされる原因について以下の用語をすべて用いて 30 字以内で説明しなさい。

Pfr 型,Pr 型

40

問 4.下線部③に関連して,あるイネの品種からフロリゲンと塩基配列のよく似た遺伝子 X がみつかった。以下の実験を行った結果,遺伝子 X はフロリゲンと同等の特性をもつことが判明した。次の (1)〜(4) の問いに答えなさい。

(1) 遺伝子 X の発現が花芽形成に及ぼす影響を調べるために,遺伝子 X の発現量を増やすか,逆に減らすようにした形質転換体を作製し,これを花芽形成が誘導される適切な日長で栽培して,開花までの日数を測定した。なお,ここでは,非形質転換体を野生型,遺伝子 X の発現量を増やした形質転換体を過剰型,逆に減らした形質転換体を抑制型とよぶ。それぞれの形質転換体はどのような反応を示したか。得られた結果として最もふさわしいものを図 2 の (a)〜(d) から選びなさい。

1f2

図 2

41

(2) 前問 (1) で用いた野生型の根,茎,葉,茎頂における遺伝子 X の発現量(mRNA の存在量)を調べたところ,葉でのみ mRNA が検出された。野生型を異なる日長条件下で栽培したときに,遺伝子 X の mRNA 発現量として観察された結果として最もふさわしいものを図 3 の (a)〜(d) から選びなさい。

1f3

図 3

42

(3) 遺伝子 X がコードするタンパク質の存在部位を検出するため,遺伝子を組換えた形質転換体を作製した。葉を図 4 で示した切断部位で切り出し,その横断面を観察した。遺伝子 X の発現部位(■)を示す図として最もふさわしいものを図 4 の (a)〜(d) から選びなさい。

1f4

図 4

43

(4) 前問 (3) で作製した形質転換体を用いて,花芽形成が誘導される茎頂付近を観察したところ,遺伝子 X の mRNA は検出されなかったが,遺伝子 X がコードするタンパク質は検出された。茎頂を図 5 で示した切断部位で切り出し,その縦断面を観察した。その断面の模式図を図 5 に示した。遺伝子 X がコードするタンパク質の検出部位(■)を示す図として最もふさわしいものを図 5 の (a)〜(d) から選びなさい。

1f5

図 5

44

第2問

次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。(25 点)

ヒトの眼は光を受容する直径約 25 mm の球状の器官である。眼に入った光は,〔 ア 〕と水晶体で屈折し,〔 イ 〕の上に像を結ぶ。〔 イ 〕に到達する光の量は虹彩が伸び縮みし,瞳孔の大きさが変わることで調節される。また,<u>水晶体の厚みを変化させることで,遠くのものや近くのものを見ることが可能となる</u>①。

ヒトの〔 イ 〕には 2 種類の視細胞が存在しており,色の識別に関与する〔 ウ 〕細胞と,うす暗い場所で働き,明暗に反応する〔 エ 〕細胞が知られており,〔 オ 〕という視物質の役割が重要となる。これらの視細胞によって受容した光の情報は,介在神経を介して視神経細胞を興奮させる。左右の眼球から出た視神経は〔 カ 〕といわれる部分で一部交差して,大脳にある視覚野に伝えられ,そこで視覚が生じる。

神経細胞を伝わる情報は,細胞体や軸索で発生する電気的な信号である。神経軸索の末端は,他の神経細胞や効果器と狭い隙間を隔てて接続しており,この部分をシナプスとよぶ。<u>シナプス前細胞に興奮が伝わると,神経伝達物質が放出され,これを受容したシナプス後細胞で膜電位が変化することで興奮が伝わる</u>②。例えば骨格筋では運動神経終末が筋細胞と直接シナプスを形成し,運動神経終末から神経伝達物質としてアセチルコリンが放出されることで,筋細胞に活動電位が生じ,<u>筋収縮が起きる</u>③。

問 1.文章中の〔 ア 〕〜〔 カ 〕に入る適切な語句を答えなさい。

問 2.下線部①に関して,近くを見る際の眼のしくみの説明について,空欄〔 キ 〕〜〔 ケ 〕に入る正しい語句を選び,解答用紙に丸をつけてそれぞれ答えなさい。

毛様筋が〔 キ 〕し,チン小帯が〔 ク 〕,水晶体が〔 ケ 〕なる。

45

問 3.下線部②に関して,赤色光を照射することにより神経細胞で活動電位を誘発可能な受容体 R,あるいは青色光を照射することにより活動電位を誘発可能な受容体 B を用いて以下の実験を行った。受容体 R あるいは受容体 B を発現させることが可能なウイルスを,ラットの脳領域 X に存在するシナプス前細胞 N1〜N3 に直接投与しスライス標本を作製した(図 1)。シナプス前細胞 N1〜N3 には受容体 R あるいは受容体 B のいずれかが発現するとし,以下の条件の下で種々の電気生理学的実験を行った結果,図 2 のⅠ〜Ⅳのような応答が観察された。

ただし,このスライス標本にはシナプス前細胞 N1〜N3 およびシナプス後細胞 1 つのみが存在すると仮定し,各単一シナプス前細胞は活動電位を生じた際に,興奮性または抑制性のいずれかの神経伝達物質を放出するものとする。また,シナプス後細胞には,興奮性および抑制性の神経伝達物質を受容することが可能な受容体が発現している。

2f1

図 1

・各電気刺激の強度は同様で,シナプス前細胞で活動電位を誘発する。

・各単一シナプス前細胞は光刺激によっても活動電位を生じ,シナプス後細胞では電気刺激の際と同様の応答を示す。

・単一シナプス前細胞刺激でシナプス後細胞の電位は閾値を超えることはない。

46

・各単一シナプス前細胞が刺激を受けた際のシナプス後細胞の電位変化量(静止電位からの正あるいは負方向への変化)は同程度とする。

・赤色光および青色光を照射すると,シナプス前細胞 N1〜N3 に均一に照射される。

2f2

図 2

47

(1) シナプス前細胞 N1〜N3 は興奮性あるいは抑制性神経のいずれであるか,また受容体 R あるいは B のいずれが発現しているかについて解答用紙に丸をつけてそれぞれ答えなさい。

(2) シナプス前細胞 N3 を電気刺激した際のシナプス後細胞での反応について,以下の語句のうち適切なものを使用して 40 字以内で説明しなさい。

Ca2+,Na+,Cl−,脱分極,過分極

問 4.下線部③について,ラットを用いた筋収縮に関する実験を行った。下腿三頭筋(骨格筋)の下部を露出させ,アキレス腱に糸を結び,負荷をかけた際の張力を記録装置にて計測記録することで筋収縮を測定可能とした。このとき,坐骨神経(運動神経)および下腿三頭筋をそれぞれ電気刺激すると筋収縮が起きることが確認された。ただし,ラットの坐骨神経を露出し,中枢端(脊髄側)を糸で縛っているため,脊髄反射による応答は見られないものとする。

そこで,ある物質 A をラットに静脈内投与した際に,坐骨神経および下腿三頭筋のいずれを刺激した際も筋収縮は抑制された。このとき,物質 A の特徴について以下の説明 (a)〜(d) から正しいものを 1 つ選びなさい。ただし,物質 A の標的は 1 か所とする。

(a) 物質 A は,筋繊維上に発現するアセチルコリンの受容体を遮断する。

(b) 物質 A は,シナプス間隙に存在するアセチルコリンの分解を促進する。

(c) 物質 A は,筋小胞体からの Ca2+ の遊離を抑制する。

(d) 物質 A は,運動神経終末の電位依存性 Ca2+ チャネルを阻害する。

48

第3問

次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。(25 点)

問 1.雌雄に関係なく動物の配偶子の元となるのは〔 ア 〕である。脊椎動物の場合,〔 ア 〕は胚発生の早い時期に出現し,体細胞分裂によって増殖しながら,生殖巣へと移動する。雄では精巣にて精原細胞となったあと,〔 イ 〕分裂を始める。〔 イ 〕分裂を始めた細胞を一次精母細胞,1 度目の分裂を終えた細胞を二次精母細胞という。精子形成では,1 個の一次精母細胞から〔 ウ 〕個の精細胞ができる。

(1) 文章中の〔 ア 〕〜〔 ウ 〕に入る適切な語句,数字を答えなさい。

(2) ヒト体細胞の核相は 2n である。以下の (a)〜(d) の組み合わせのうち,それぞれの細胞の核相を正しく示した組み合わせを選びなさい。

(a) 一次精母細胞:n  二次精母細胞:2n

(b) 一次精母細胞:2n  二次精母細胞:2n

(c) 一次精母細胞:2n  二次精母細胞:n

(d) 一次精母細胞:n  二次精母細胞:n

(3) 以下の文章 (a)〜(e) は,ウニの受精中に起こる一部の過程を示している。各過程が起きる順番を時系列にしたがって正しく並べなさい。

(a) 卵細胞の表層粒がエキソサイトーシスを起こす。

(b) 精子の先端が伸び,鞭毛の動きが活発化して卵の細胞膜に接する。

(c) 卵黄膜は細胞膜から離れて受精膜となる。

(d) 精子の先体の中身がゼリー層に向かって放出される。

(e) 精子と卵の細胞膜が融合する。

49

問 2.組織や器官は,それぞれ異なる種類の細胞で構成されており,細胞の選別にはカドヘリンという細胞膜貫通型の接着タンパクが関わっている。脊椎動物胚において,将来の脳や脊髄となる神経板と表皮外胚葉はともに外胚葉に由来する。神経板は〔 エ 〕-カドヘリン,表皮は〔 オ 〕-カドヘリンを発現することで,それぞれの細胞種が接着し細胞の選別が起こる(図 1)。神経板からできる神経管の背側領域からは〔 カ 〕細胞が遊出するが,〔 カ 〕細胞では〔 エ 〕-カドヘリンの発現が低下する(図 1)。

3f1

図 1

(1) 文章中および図 1 中の〔 エ 〕〜〔 カ 〕に入る適切な語句を答えなさい。

(2) 以下の文章 (a)〜(f) のうち,カドヘリンの特性を適切に説明している文章を 3 つ選びなさい。

(a) カドヘリンの細胞内ドメインは,連結タンパク質を介して細胞骨格のアクチンフィラメントと間接的に連結している。

(b) カドヘリンの細胞内ドメインは,細胞骨格のアクチンフィラメントと直接連結している。

(c) 異なった種類のカドヘリンどうしの結合の方が,同じ種類のカドヘリンどうしの結合よりも親和性が高い。

(d) 同じ種類のカドヘリンどうしの結合の方が,異なった種類のカドヘリンどうしの結合よりも親和性が高い。

(e) ナトリウムイオン(Na+)がカドヘリンどうしの結合に必要である。

(f) カルシウムイオン(Ca2+)がカドヘリンどうしの結合に必要である。

50

問 3.発生生物学研究室に所属する大学院生の W さんは,脊椎動物の四肢(手足)形成に関する研究を行っている。脊椎動物四肢の大部分は中胚葉組織のうち,側板中胚葉と呼ばれる領域の一部に由来する。四肢の形成パターンや指の数は,四肢原基である肢芽内の極性化活性帯(ZPA)から分泌されるソニックヘッジホッグ(Shh)タンパク質により規定されると考えられている。W さんは以下の 3 つの実験を通して,この ZPA から分泌される Shh タンパク質の四肢形成における役割を調べた。なお,いずれも実験手技に不備はないものとする。

実験 1:W さんは,Shh タンパク質を分泌する ZPA が指のパターニングに関してどのような役割をもつか調べるため,ニワトリ胚肢芽から採取した ZPA を他の胚の肢芽に,本来の場所とは異なる箇所へと移植した(図 2 の右半分参照)。その結果,本来の自脚(ヒトであれば手に相当する部分)に加え,もう 1 つの自脚が作られた。

3f2

図 2

実験 2:W さんは,CRISPR/Cas9 法を用いて ZPA から分泌される Shh タンパク質をコードする遺伝子を欠損したノックアウト(KO)マウスを作製した(Shh-KO)。また,Shh タンパク質が伝達する細胞内シグナルとの関係が予想される,転写調節因子 GT をコードする遺伝子領域を欠損した KO マウスも作製した(GT-KO)。Shh 遺伝子の KO マウスでは 1 番目の指のみが形成され,GT 遺伝子の KO マウスでは 2 番目と 3 番目の指が重複した(図 3)。

3f3
51

実験 3:W さんは,Shh とヘビの四肢欠損の関係を調べるため,まず,ニシキヘビ胚側板中胚葉における Shh の mRNA とタンパク質の検出を試みた。しかしながら,マウスやニワトリとは違い,ニシキヘビではいずれも検出されなかった。また,Shh mRNA の転写を阻害する因子や,mRNA の分解を促進する因子も検出されなかった。一方で,脊索などの他の組織では,ニシキヘビ胚でも,Shh の mRNA とタンパク質が検出された。加えて,ニシキヘビ胚の全細胞がもつ Shh 遺伝子の配列には,Shh タンパク質の機能を損なう変異などの問題は見当たらなかった。

(1) 実験 1 の結果を考慮し,以下の図 4 の (a)〜(c) から本来の ZPA の場所を示した図を選びなさい。また,ZPA から分泌される Shh タンパク質の濃度勾配と,図 2 の指の種類(第 1 指,第 2 指,第 3 指)との関係について,60 字以内で説明しなさい。

3f4

図 4

(2) 実験 2 の結果を適切に考察した文章を,以下の (a)〜(e) から 2 つ選びなさい。

(a) Shh タンパク質は肢芽細胞の増殖と生存に必要な因子である。

(b) Shh タンパク質はマウスでは第 1 指から第 5 指まで,すべての指形成に必要である。

(c) GT は細胞外で Shh タンパク質と結合し,その働きを抑制する。

(d) GT は Shh タンパク質の作用が胚前方に拡大することを抑制する。

(e) GT は Shh タンパク質の作用が胚前方に拡大することを促進する。

52

(3) 実験 3 の結果から,ニシキヘビ側板中胚葉で Shh の mRNA とタンパク質が検出されなかったのは,進化の過程で以下の (a)〜(e) のいずれかに変化が生じたためだと考えられる。正しいものを 1 つ選びなさい。

(a) Shh タンパク質の分解機構

(b) Shh タンパク質の翻訳

(c) Shh mRNA のスプライシング

(d) Shh 遺伝子配列の複製機構

(e) Shh 遺伝子の発現を制御する転写調節配列

54

第4問

次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。(25 点)

飲酒により体内で発生するアセトアルデヒドを無毒化する酵素の一つとして,アルデヒド脱水素酵素 2(ALDH2)があることはよく知られている。ALDH2 の酵素の性質を調べるために,実験 1,2,3 を行った。

実験 1:公共データベースを検索して,ヒト ALDH2 の遺伝子配列情報(9,561 塩基対)と全長 517 個のアミノ酸配列情報を入手した。ALDH2 タンパク質をコードする領域は,<u>51〜53 番目の塩基 "atg"</u>① から <u>1602〜1604 番目の塩基 "taa"</u>② までであった(図 1)。

まず ALDH2 遺伝子の翻訳領域を PCR 法で増幅して,GFP(緑色蛍光タンパク質)と融合できるベクターに,制限酵素 EcoRI と SalI を用いてクローニング(標的 DNA 配列をベクターに組み込む操作)した。発現ベクターの一部の模式図,ベクターの制限酵素部位と GFP(717 塩基対)のアミノ末端の塩基配列を図 2 に示す。なお,EcoRI と SalI の認識配列は,ベクター内にそれぞれ 1 か所しかなく,ALDH2 遺伝子にはない。

4f1

図 1

55
4f2

図 2

問 1.次の問いに答えなさい。

(1) 下線部①の atg(aug)がコードするアミノ酸をカタカナで答えなさい。

(2) 下線部②の taa(uaa)は何とよばれるか答えなさい。

問 2.ALDH2 タンパク質を GFP 融合タンパク質として発現させるために,図 3 に示す R プライマーと F プライマーを設計した。次の問いに答えなさい。ただし,図中の矢印は DNA の伸長方向を示す。

4f3

図 3

(1) R プライマーの設計で正しいのは (ア)〜(エ) のどれか答えなさい。

(ア) 5′- aa gtc gac act caa gaa gac tcc gtg -3′

(イ) 5′- aa gtc gac aat act caa gaa gac tcc -3′

(ウ) 5′- aa gtc gac tga gtt ctt ctg agg cac -3′

(エ) 5′- aa gtc gac tta tga gtt ctt ctg agg -3′

(2) F プライマーの設計で正しいのは (ア)〜(エ) のどれか答えなさい。

(ア) 5′- aa gaa ttc atg ttg cgc gct gcc gcc -3′

(イ) 5′- aa gaa ttc ttg cgc gct gcc gcc cgc -3′

(ウ) 5′- aa gtc gac atg ttg cgc gct gcc gcc -3′

(エ) 5′- aa gtc gac ttg cgc gct gcc gcc cgc -3′

56

問 3.設計したプライマーを用いて増幅した PCR 産物を電気泳動すると,図 4 の (ア)〜(オ) のどのバンドが観察できるか答えなさい。ただし,M は分子量マーカーを示す。

4f4

図 4

実験 2:ヒトの肝臓から樹立した培養細胞株 A と培養細胞株 B のそれぞれの全 mRNA を逆転写した相補的 DNA を鋳型にして,実験 1 のプライマーを用いて増幅した PCR 産物を図 2 のベクターにクローニングし,サンガー法で塩基配列を確認した。

その結果,<u>細胞株 A では,1560 番目の塩基は "g" であり "gaa" のグルタミン酸(E)がコードされていた。細胞株 B では,1560 番目の塩基は "a" であり "aaa" のリシン(K)がコードされていた</u>③。

この細胞株 A から作製した "g" 型ベクターと細胞株 B から作製した "a" 型ベクターを,ALDH2 遺伝子を欠失させた細胞株 C に遺伝子導入して,ALDH2 タンパク質の酵素活性を調べた。その結果,<u>"g" 型ベクターを遺伝子導入した細胞の酵素活性は高く,"a" 型ベクターを遺伝子導入した細胞の酵素活性はほとんど検出できなかった</u>④。

57

問 4.下線部③に関して,コードするアミノ酸が変わる変異を何というか答えなさい。

問 5.下線部④に関して,"g" 型塩基と "a" 型塩基によって,なぜ酵素活性に違いが生じたのか。80 字以内で説明しなさい。ただし,ALDH2 タンパク質は,2 つの単量体が集まって二量体を形成して酵素活性をもつが,この時 "g" 型塩基がコードするグルタミン酸(E)が重要である。

実験 3:ALDH2 タンパク質(517 個のアミノ酸,分子量は 56,000)のアミノ末端の 17 個のアミノ酸は,ミトコンドリア移行シグナルペプチドであり,翻訳後の前駆体 ALDH2 はミトコンドリアに移行して,このシグナルペプチドは切断されて成熟型 ALDH2(500 個のアミノ酸)となり機能する。<u>ヒトの ALDH2 遺伝子を欠失させた細胞株 C に,実験 2 の "g" 型ベクターを遺伝子導入して GFP(238 個のアミノ酸,分子量 27,000)の蛍光を観察した</u>⑤。また,<u>全細胞溶解液を処理してタンパク質を電気泳動し,細胞に発現させた単量体 ALDH2 タンパク質をその特異抗体を用いて検出した</u>⑥。なお,この方法を用いると目的のタンパク質をその大きさによって検出できる。

問 6.下線部⑤に関して,GFP の蛍光が最も強く観察できるのは,図 5 の (ア)〜(オ) のどれか答えなさい。

4f5

図 5

58

問 7.下線部⑥に関して,この特異的抗体が ALDH2 タンパク質のカルボキシル末端の近傍のアミノ酸配列を認識することができるとすると,図 6 の (ア)〜(カ) のどのバンドが検出されるか答えなさい。ただし,M は分子量マーカーを示す。

4f6

図 6

60

第5問

次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。(25 点)

<u>生物</u>①は,「細胞からなる」,「DNA をもつ」,「代謝を行う」,「自己複製能力をもつ」などの特徴を有するため,現在の地球上の生物が共通の祖先から生じたと考えられる。特に,DNA 上の遺伝情報からタンパク質を合成するしくみがすべての生物でほぼ共通しているという事実は,有力な証拠である。その遺伝情報とは塩基配列によって示されており,放射線や化学物質などの影響があると〔 ア 〕を起こす可能性が高まるが,単純な複製ミスなどによっても〔 ア 〕は起こる。その大部分は個体の生存に有利でも不利でもなく,〔 イ 〕によって集団内に広まっていくことがある。これを〔 ウ 〕という。

塩基配列の変化により,指定していたアミノ酸の種類や並び方に変化が起こると,つくられるタンパク質の種類や性質が変わる場合がある。進化が進む中で,アミノ酸の置換が累積していることも知られている。脊椎動物のもつヘモグロビンのアミノ酸配列を種間で比較すると,類縁関係の近い種ではわずかな違いしか見られない。一方,類縁関係の遠い種ではその違いは大きい。<u>生物間のアミノ酸置換数とそれらの化石から推定される分岐年代を比較すると,分岐が古いほど,アミノ酸置換数が多くなる傾向がある</u>②。このようなアミノ酸の置換は生物種に関係なく,タンパク質や遺伝子の種類ごとに一定の確率で変化することから,これらに生じる変化の速度の一定性を〔 エ 〕という。その置換率は,タンパク質や遺伝子の種類によって異なっている。

問 1.文章中の〔 ア 〕〜〔 エ 〕に入る適切な語句を記入しなさい。

問 2.下線部①について,真核生物では<u>ないもの</u>を (a)〜(h) の中から 3 つ選びなさい。

(a) アメーバ  (b) イカ  (c) コロナウイルス  (d) サルモネラ

(e) シイタケ  (f) スギナ  (g) ネンジュモ  (h) ミズカビ

61

問 3.下線部②はアミノ酸の置換に関する説明である。次の (1)〜(3) の問いに答えなさい。

(1) 表 1 は生物 5 種(A〜E)のあるタンパク質の 120 のアミノ酸座位の中で,異なるアミノ酸数を示している。図 1 はその生物群の分子系統樹を示している。

5t1
5f1

図 1

生物 A と B の共通の祖先が分岐した時期は,化石記録によると約 8,000 万年前と推定された。このタンパク質のアミノ酸座位 1 個に置換が起こる率は 1 年あたりどれくらいになるか,有効数字 2 桁で求めなさい。また,その置換率から生物 A と E の共通の祖先が分岐した時期は,何年前であると推定されるか,有効数字 2 桁で求めなさい。ただし,このタンパク質の変異速度は常に一定であるとする。

62

(2) 生物の系統関係は形態や発生等の特徴を比較することでも推定できる。表 2 はある生物 P と上記の生物 5 種(A〜E)に関する形態的特徴を示している。〇は特徴をもつこと,×は特徴をもたないことを示す。ただし,生物 P の特徴はすべて祖先状態である×とし,これらの進化は複数回生じないこととする。これらの情報を使って系統樹(形態系統樹)を推定した。適切な系統樹を図 2 の (Ⅰ)〜(Ⅸ) の中から 1 つ選びなさい。

5t2
63
5f2

図 2

64

(3) 推定された形態系統樹と分子系統樹(図 1)との比較を行い,形質 4,5,6 の進化について議論した。次の説明文 (a)〜(f) の中から適切な記述をすべて選びなさい。なお,系統樹上で形質の進化を議論する場合,その変化数を最小にする仮説を用いる。

(a) 分子系統樹(図 1)が正しいと仮定すると,形質 4 は生物 A〜E の共通の祖先で獲得され,その後生物 A と B の共通の祖先で失われたものである。

(b) 形態系統樹が正しいと仮定すると,形質 4 は生物 A〜E の共通の祖先で獲得され,その後生物 A と B の共通の祖先で失われたものである。

(c) 分子系統樹(図 1)が正しいと仮定すると,形質 5 は生物 A と B の共通の祖先で獲得され,その後生物 B で失われたものである。

(d) 形態系統樹が正しいと仮定すると,形質 5 は生物 A と B の共通の祖先で獲得され,その後生物 B で失われたものである。

(e) 分子系統樹(図 1)が正しいと仮定すると,形質 6 は生物 D と E で独立に獲得されたか,あるいは生物 A〜E の共通の祖先で獲得され,その後生物 A,B と C の共通の祖先で失われたものである。

(f) 形態系統樹が正しいと仮定すると,形質 6 は生物 D と E の共通の祖先に由来するものである。