化学基礎・化学
必要な場合は,次の値を用いよ。
原子量:H = 1.00,C = 12.0,N = 14.0,O = 16.0,F = 19.0,Si = 28.1,Cl = 35.5,Ca = 40.1
,,
気体定数:
温度:0 ℃ = 273 K
構造式を記入するときは,記入例にならって答えよ。
構造式の記入例

第1問
次の文章 (1)〜(3) を読み,問 1〜問 7 に答えよ。ただし,図に示したグラフの縦軸,横軸の間隔は一定ではない。(25 点)
(1) Pa における水の沸点は 100 ℃,ベンゼンの沸点は 80 ℃,ヘキサンの沸点は 69 ℃である。水は分子量が小さいにもかかわらず,沸点が他の液体に比べ高い。その理由は分子間に〔 ア 〕が存在するためである。図 1 は水の状態図である。3 本の曲線の交点 M は〔 イ 〕である。N 点は〔 ウ 〕であり,それより温度と圧力を高くしていくと液体と気体の区別がつかなくなる。水に塩化ナトリウムを溶かすと (a)<u>図 1 中の固体と液体,および,液体と気体の状態を分ける曲線は図 X のように変化する</u>。
乾燥野菜などのインスタント食品製造時には,水の蒸発にともなう食品の劣化を避けるために凍結乾燥を行うことがある。工業的な凍結乾燥では,まず食品全体を凍らせ,圧力を〔 エ 〕した後,熱を加えながら食品の水分を〔 オ 〕させる。

図 1
問 1.〔 ア 〕〜〔 ウ 〕に入る最も適切な語句を以下の (A)〜(I) のなかからひとつずつ選んで記号で答えよ。
(A) 軟化点 (B) 三重点 (C) 融点 (D) 沸点 (E) 凝固点
(F) 臨界点 (G) ファンデルワールス力 (H) 水素結合 (I) 共有結合
問 2.下線部 (a) の図 X として最も適切なものを以下の (A)〜(D) のなかからひとつ選んで記号で答えよ。水の状態図(実線)に,塩化ナトリウム水溶液の固体と液体,および,液体と気体の状態を分ける曲線を点線で追加している。

問 3.〔 エ 〕に当てはまる最も適切な語句を以下の (A)〜(E) のなかからひとつ選んで記号で答えよ。ただし,水以外の物質の影響は無視できるとする。
(A) Pa より高く
(B) Pa より高く
(C) Pa より低く
(D) Pa より高く
(E) Pa より低く
問 4.〔 オ 〕に入る適切な状態変化について正しいものを以下の (A)〜(E) のなかからひとつ選んで記号で答えよ。
(A) 蒸発 (B) 融解 (C) 昇華 (D) 凝華 (E) 凝固
(2) 図 2 のように容積が 10 L の密閉容器Ⅰ,Ⅱを用意した。容器Ⅰには mol の水を入れたビーカーが置いてある。容器Ⅱには水溶液 P(1.0 mol の水に不揮発性の物質 Z を mol 溶かしたもの)と水溶液 Q(1.0 mol の水に Z を mol 溶かしたもの)を入れたビーカーが置いてある。容器Ⅰ,Ⅱの温度を 27 ℃に保ち,圧力が一定の状態になるまで放置した。
ただし,気体は理想気体として扱えるものとする。また,容器内には上記の物質のみが存在し,液体およびビーカーの体積は無視できるものとする。
問 5.容器Ⅰ内の圧力〔Pa〕を求め,有効数字 2 桁で答えよ。
問 6.容器Ⅱではビーカー間で水が移動し,気液平衡の状態となった。容器Ⅱ内の圧力〔Pa〕を求め,有効数字 2 桁で答えよ。ただし,物質 Z は電離せず,水溶液の蒸気圧は溶媒のモル分率に比例するとし(ラウールの法則),気体の水の物質量は液体の水の物質量に比べて十分小さいものとする。

図 2
(3) 図 3 に示す密閉容器Ⅲを用意した。容器Ⅲにはコックとポンプが接続されている。容器Ⅲに 27 ℃の水を入れたビーカーを置き,容器内の圧力が Pa になるまで貴ガスを追加した。時刻 0 にコックを開けて容器をポンプでゆっくり排気した。時刻 に水の一部が沸騰し始めた。さらに排気すると時刻 に水の一部が氷となり,時刻 に水はすべて氷となった。その後も排気を続けると,時刻 に容器の圧力は Pa になり,ビーカーには氷が残った。
容器Ⅲ,ビーカーと外部の間に熱のやりとりはないとし,貴ガスは水に溶けず,水の過冷却は起こらないとする。なお,圧力および温度の変化は緩やかでそれにともなう水の状態変化は状態図にしたがうものとする。

図 3
問 7.時刻 0 から までにおける圧力計の値 の変化を表すグラフの概形として最も適切なものを以下の (A)〜(E) のなかから,温度計の値 の変化を表すグラフの概形として最も適切なものを以下の (F)〜(J) のなかから,それぞれひとつ選んで記号で答えよ。
圧力 の変化

温度 の変化

第2問
次の文章 (1) と (2) を読み,問 1〜問 5 に答えよ。(25 点)
(1) 固体のヨウ素は昇華性を有し,大気圧下で加熱すると紫色の気体となる。固体のヨウ素 1 mol が気体に変化するときのエンタルピー変化であるヨウ素の昇華エンタルピーは kJ/mol である。気体となったヨウ素を水素と混合して加熱すると,以下の式①の反応によりヨウ化水素が生じる。
(気)(気) (気) ①
問 1.ヨウ化水素の生成エンタルピーは,ヨウ化水素 1 mol が気体の水素と固体のヨウ素から生じる式②の反応から定義され,その値は kJ/mol である。
(気)(固) (気) ②
このとき,式①の正反応の反応エンタルピー〔kJ/mol〕の値を正負の記号とともに有効数字 2 桁で答えよ。
問 2.式①の反応には,固体の白金が触媒として作用する。これに関連した記述として,以下の (A)〜(E) から正しいものを<u>すべて</u>選んで記号で答えよ。
(A) 白金の存在により,反応エンタルピーがより小さい経路で式①の反応が進むようになる。
(B) 白金の存在により,大きな運動エネルギーを持つ気体分子の割合が増え,衝突する分子が遷移状態になりやすくなる。
(C) 白金は式①の反応に対して不均一系触媒(不均一触媒)として作用する。
(D) 白金の存在により,式①の反応が平衡状態に到達するまでの時間が短くなる。
(E) 白金の存在により,より多くの気体分子が反応するようになり,平衡状態でのヨウ化水素の濃度が増加する。
(2) 1 価の弱酸 HA の水溶液を,NaOH 水溶液で中和滴定する実験を考える。NaOH によって HA が中和されて徐々に NaA に置き換わることから,中和点より滴下量が少ない場合,HA と NaA が混合した緩衝液となる。HA および NaA はそれぞれ以下の式のように電離する。
③
④
ここで式④のように NaA はほぼ完全に電離するため,緩衝液中には が大量に存在する。従って,緩衝液中では式③の平衡は左に偏っており,電離している HA はわずかである。つまり HA が 〔mol/L〕,NaA が 〔mol/L〕となるように混合した緩衝液については,, と近似できる。
上記をふまえ,0.10 mol/L の HA 水溶液 100 mL を 0.20 mol/L の NaOH 水溶液で滴定する実験を行った。ただし,HA の電離定数 mol/L,水のイオン積 とする。
問 3.滴定を開始する前の HA 水溶液の pH を有効数字 2 桁で答えよ。
問 4.NaOH 水溶液を 30 mL 滴下した後の水溶液の pH を有効数字 2 桁で答えよ。
問 5.NaOH 水溶液を 50 mL 滴下した後の水溶液の pH を有効数字 2 桁で答えよ。
第3問
次の文章 (1)〜(3) を読み,問 1〜問 4 に答えよ。(25 点)
(1) アルカリ土類金属は 2 族に属する価電子数 2 の元素である。代表的なアルカリ土類金属であるマグネシウムやカルシウムの化合物は,薬剤や生体材料等,身近に利用されている。
問 1.アルカリ土類金属およびその化合物に関する記述として正しいものを,以下の (A)〜(D) のなかから<u>すべて</u>選んで記号で答えよ。
(A) マグネシウムを空気中で強熱すると激しく燃焼し,酸化物となる。
(B) 酸化カルシウムは,室温では水と反応しない。
(C) 硫酸バリウムは水に溶けにくく,X 線造影剤に利用される安定な物質である。
(D) ストロンチウムはカルシウムより反応性が低く,灯油中で保存する安定な物質である。
(2) 陽イオンと陰イオンのイオン結合によってできる結晶をイオン結晶という。代表的なイオン結晶の結晶構造は NaCl 型,CsCl 型である。塩化アンモニウムは 184 ℃以上で NaCl 型構造,室温で CsCl 型構造として存在する化合物であり,肥料や工業薬品など,幅広い分野で利用されている。
問 2.塩化アンモニウムが NaCl 型構造と CsCl 型構造で存在する際の密度〔g/cm³〕を示す計算式を,以下の (A)〜(K) のなかからそれぞれひとつ選んで記号で答えよ。ただし,アンモニウムイオンは球として取り扱う。また,NaCl 型構造と CsCl 型構造それぞれにおける単位格子の体積は 0.278 nm³ と 0.0577 nm³ とし,アボガドロ定数は とする。
(A) (B) (C) (D)
(E) (F) (G) (H)
(I) (J) (K)
(3) ハロゲンは 17 族に属する価電子数 7 の元素である。ハロゲンの化合物は医療,産業などの分野で利用されている。例えば (a)<u>ヨウ素化合物</u>は,消毒液やうがい薬などの医薬品として我々の生活を支えている。またフッ化水素はフッ素の化合物であり,その水溶液である (b)<u>フッ化水素酸</u>は半導体製造に不可欠なエッチング剤として利用されている。
問 3.下線部 (a) に関して,湿ったヨウ化カリウムデンプン紙にオゾンを接触させると,青紫色(青色)に変色する。この現象を利用することによりオゾンの検出が可能である。このときに起こる変化の一部は,以下の化学反応式により表される。この化学反応式における空欄〔 ア 〕〜〔 ウ 〕に入る化学式を,係数を含めてそれぞれ順不同で答えよ。なお係数が 1 の場合は省略せよ。
〔 ア 〕+〔 イ 〕+〔 ウ 〕
問 4.下線部 (b) に関して,フッ化水素酸は石英()を溶かしてヘキサフルオロケイ酸を生成することが知られている。ここでフッ化カルシウムと濃硫酸を反応させてフッ化水素を発生させた。さらに得られたフッ化水素の水溶液と石英を反応させたところ,36.0 g の水が生成した。このとき,反応に使われたフッ化カルシウムの質量〔g〕を,小数点以下を四捨五入し整数で答えよ。ただし,フッ化カルシウムおよび発生したフッ化水素はすべて反応したとする。
第4問
次の文章 (1)〜(3) を読み,問 1〜問 6 に答えよ。構造式を答える際には,表紙にある記入例にならって答えよ。(25 点)
(1) 下図のように,化合物 1 に濃塩酸を作用させたところ,塩化水素が付加した化合物 2 と 3 がそれぞれ生じた。この反応の主生成物は 2 であった。

この反応の機構は以下のように考えられる。まず,化合物 1 のベンゼン環の外にある炭素−炭素二重結合が,濃塩酸に含まれる水素イオン と反応し,炭素陽イオンを含む中間体①もしくは②が生じる。(a)<u>炭素陽イオンは多くの場合,その炭素に連結する水素原子が少ないほど安定である</u>ため,中間体①は中間体②に比べ安定だと考えられる。この中間体①の炭素陽イオンの位置で塩化物イオンが反応することで,化合物 2 が主生成物として生じる。このような,炭素−炭素二重結合へのハロゲン化水素などの付加の位置に関わる経験則を〔 ア 〕の法則と呼ぶ。すなわちこの法則は,反応の中間に生じる炭素陽イオンの安定性で説明できる。
問 1.化合物 2 の構造式,および中間体②の塩化物イオン以外の構造式を答えよ。
問 2.文章中の〔 ア 〕にあてはまる適切な語句を答えよ。
(2) 化合物の安定性は,電子の非局在化によっても説明できる。たとえば,ベンゼンの炭素−炭素二重結合は③のように特定の原子間に固定されておらず,6 個の炭素原子間に均等に分布していると考えられている。その構造は下図の④と⑤を重ね合わせたようなものであり,結合を構成する電子が特定の二重結合に局在していない。これを電子の非局在化とよぶ。このように (b)<u>電子が非局在化すると,一般にその構造は安定化する</u>ことが知られている。ここで④,⑤のような構造式を共鳴構造式とよび,両者を矢印(↔)でつなぐものとする。

問 3.下線部 (b) に関し,以下の条件 (i),(ii) を用いて,ベンゼンは非局在化によりどの程度安定化したのか,そのエネルギーの絶対値〔kJ/mol〕を整数で答えよ。
(i) ベンゼンに水素を付加させてシクロヘキサンを得る反応の反応エンタルピー を kJ/mol とする。
(ii) ③の構造式に示す 3 つの非局在化していない炭素−炭素二重結合のひとつに水素を付加させる反応の反応エンタルピー を kJ/mol とする。
(3) 文章 (2) のような非局在化による安定化は,炭素陽イオンの正電荷についてもなりたつ。たとえば,下図のように中間体①の炭素−炭素二重結合を移動させることで,炭素陽イオンの位置が異なる共鳴構造式⑥,⑦を書くことができる。このことは,炭素陽イオンの正電荷が非局在化しており,中間体①は文章 (1) で示した中間体②よりさらに安定化を受けていることを示している。

以上をふまえて,ふたつの二重結合をもつイソプレンの反応を考える。イソプレンと希硫酸の混合物を加熱したところ,異なる二種類のアルコール 4 と 5 が得られた。これらの分子式はいずれも だが,沸点はアルコール 5 の方が高い。

この反応の機構は以下のように考えられる。まず,希硫酸に含まれる水素イオン が二重結合と反応すると,炭素陽イオンを含む中間体が生じる。イソプレンには二重結合がふたつあるため,生じうる中間体の構造が複数あるが,文章 (1) の下線部 (a) にもとづくと,その中で最も安定なものは中間体⑧と考えられる。この中間体に含まれる炭素陽イオンの位置で水と反応することでアルコール 4 が生じる。一方,上記のように,中間体⑧の共鳴構造式として⑨を書くことができる。⑨の炭素陽イオンの位置で水と反応することでアルコール 5 が得られる。
問 4.アルコール 4 および 5 の構造式を答えよ。
問 5.イソプレンおよびアルコール 4,5 の説明として<u>誤った</u>記述を次の (A)〜(D) から<u>ひとつ</u>選んで記号で答えよ。
(A) 天然ゴムの主成分はポリイソプレンである。このため天然ゴムを乾留することでイソプレンを得ることができる。
(B) アルコール 4 は硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液とは反応せず,これらを混合しても元の赤紫色は消失しなかった。
(C) アルコール 5 に臭素水溶液を少量滴下したところ,その赤褐色が消失し,無色の溶液が得られた。
(D) 希硫酸の代わりに濃硫酸を用いて同様の反応を行うと,アルコール 4,5 はほとんど得られなかった。
問 6.希硫酸に含まれる水素原子がすべて重水素原子 D に置換された試薬を文章 (3) と同様にイソプレンと反応させたところ,アルコール 4 の水素原子のうちふたつが重水素原子に置換された化合物が得られた。この化合物の構造式を答えよ。また,この化合物が鏡像異性体を有する場合,以下の例にならって不斉炭素原子を矢印で示せ。
構造式と矢印の記入例

第5問
以下の文章 (1) と (2) を読み,問 1〜問 7 に答えよ。構造式を答える際には,表紙にある記入例にならって答えよ。(25 点)
(1) アミノ酸は分子内に〔 ア 〕基と〔 イ 〕基を両方もつ化合物である。〔 ア 〕基と〔 イ 〕基が同一の炭素原子に結合したものを -アミノ酸という。タンパク質を構成する -アミノ酸は約 20 種類存在する。そのなかで,ヒトが体内で合成できない,または合成しにくいために外部から摂取する必要のある -アミノ酸は,〔 ウ 〕と呼ばれている。
問 1.空欄〔 ア 〕〜〔 ウ 〕に適切な語句を答えよ。なお,〔 ア 〕と〔 イ 〕の解答は順不同とする。
問 2.アミノ酸には -アミノ酸以外にも -アミノ酸が存在する。-アミノ酸の例として,-アラニンの構造式を答えよ。ただし,ここではイオン化は考慮しない。
問 3.2 分子のグリシンがジペプチドを形成するときに減少する分子量を,小数点以下第 1 位まで答えよ。
問 4.グリシンの等電点は約 6.0 である。pH 1.0 の水溶液に溶解させたとき最も多く存在するグリシンの構造を,イオン化を考慮した構造式を用いて答えよ。
問 5.システインを含むタンパク質の水溶液に,水酸化ナトリウムを加えて熱し,酢酸鉛(Ⅱ)を加えると黒色沈殿を生じた。その黒色沈殿の化合物名を答えよ。
(2) タンパク質やペプチドの精製には様々なクロマトグラフィーが用いられている。イオン交換クロマトグラフィーはイオン交換樹脂を円筒容器(カラム)に充塡し,その中に試料を入れたのち,適切な溶媒を流すことで目的成分を分離する方法である。イオン交換樹脂として最もよく用いられているものは〔 エ 〕と〔 オ 〕の共重合体を母体として作られた合成高分子である。
合成高分子には他にもビニロンがある。ビニロンを合成する際には,まず〔 カ 〕(分子量 86.0)の付加重合によって〔 キ 〕(繰り返し単位の式量 86.0)を合成する。これを水酸化ナトリウムなどの塩基を用いてけん化することにより〔 ク 〕(繰り返し単位の式量 44.0)を合成する。これを紡糸,乾燥後ホルムアルデヒド(分子量 30.0)を用いてアセタール化することによってビニロンは合成される。
問 6.空欄〔 エ 〕〜〔 ク 〕に適切な語句を答えよ。なお,〔 エ 〕と〔 オ 〕の解答は順不同とする。
問 7.ビニロンの合成において〔 キ 〕を十分量の水酸化ナトリウムを用いて完全にけん化させたのち,アセタール化を行ったところヒドロキシ基の 35 % がアセタール化されたビニロン 50.0 g を得た。合成に用いた〔 キ 〕の質量〔g〕を小数点以下第 1 位まで求めよ。なお,ビニロンのアセタール化された繰り返し単位の式量は 100.0 である。