化 学 問 題
(解答はすべて化学解答用紙に記入すること)
【注意】
1. 必要があれば次の数値を用いよ。
H の原子量=1.0,C の原子量=12,N の原子量=14,O の原子量=16,Ca の原子量=40
アボガドロ数 /mol,ファラデー定数 C/mol
,,
2. 特にことわらない限り,構造式は下の例にならって示すこと。

3. 体積の単位記号 L はリットルを表す。
4. 字数制限のある解答は,下の例にならって書くこと。

第1問
〔1〕 以下の文章を読み,問 1〜問 9 に答えよ。
イオン,原子,分子などの構成粒子が繰り返し規則正しく配列した固体を結晶といい,最小の繰り返し単位となる構造を単位格子という。
①イオン結晶では,陽イオンと陰イオンが静電気的な引力(クーロン力)で結合し,交互に規則正しく立体的に配置している。イオン結晶の構造には,②陽イオンと陰イオンの価数の違いや,イオン半径の比によっていくつかの種類が存在する(図 1)。
③非金属元素である炭素の単体は,ダイヤモンド,黒鉛,フラーレン,カーボンナノチューブなど様々な物質が存在する。
この中でダイヤモンドは無色透明で極めて硬く,ア 結合の結晶であり,イオン結晶の ④ の全ての陽イオンと陰イオンを炭素原子に置き換えたものと同等の結晶構造をもつ。1 つの炭素原子は イ 個の炭素原子と ア 結合しており,1 つの単位格子に含まれる炭素原子の数は ウ 個である。ダイヤモンドの単位格子の一辺を 0.357 nm とするとき,隣接した炭素原子間の ア 結合の距離は ⑤ nm である。
一方で黒鉛は黒色で柔らかく,炭素原子が正六角形の網目状に並んだ平面が積層した結晶構造をもつ。図 2 のように,黒鉛の単位格子の辺の長さを 0.246 nm,0.670 nm とするとき,隣接した炭素原子間の ア 結合の距離は ⑥ nm であり,密度は ⑦ g/cm³ となる。
ダイヤモンドや黒鉛は,完全燃焼させると二酸化炭素になる。二酸化炭素を Pa のもとで −79 ℃以下にすると,気体から固体に変化する。この固体はドライアイスと呼ばれ,エ 力により凝集した オ 結晶である。この結晶は面心立方格子のような配置であり,1 つの単位格子に含まれる酸素原子の数は カ 個である。


問 1 下線部①において,イオン結晶のハロゲン化ナトリウムは,単位格子内で同じイオンの配置になっている結晶構造をもつ。これらの融点は NaF > NaCl > NaBr > NaI の順に低くなる。この順で融点が低くなる理由を 70 字以内で記せ。
問 2 下線部②において,図 1 に示す (a)〜(d) の構造をもつイオン結晶の物質名を次の語群から選んで書け。
語群:塩化セシウム (CsCl),酸化アルミニウム (Al₂O₃),塩化ナトリウム (NaCl),閃亜鉛鉱 (ZnS),紅亜鉛鉱 (ZnO),蛍石 (CaF₂)
問 3 下線部③において,同じ元素からなる単体で,性質が違うものどうしを何というか。
問 4 ア 〜 カ にあてはまる最も適切な語句,または数字を記入せよ。
問 5 ④ にあてはまる構造を,図 1 の結晶構造 (a)〜(d) のいずれかから選び,記号で答えよ。
問 6 ⑤ にあてはまる数値を有効数字 3 桁で求めよ。
問 7 ⑥ にあてはまる数値を有効数字 3 桁で求めよ。
問 8 ⑦ にあてはまる数値を有効数字 2 桁で求めよ。解答欄には,計算過程も示せ。
問 9 ダイヤモンドのすべての結合を切断して炭素原子を生成するのに必要なエネルギーを結合の数で割ると,ダイヤモンドの C—C の平均結合エネルギー 〔J/mol〕が求まる。ダイヤモンドの燃焼熱を J/mol,二酸化炭素の C=O の結合エネルギーを J/mol,酸素の O=O の結合エネルギーを J/mol とする。このとき を,,, を用いて表せ。
第2問
〔2〕 以下の問 1〜問 7 に答えよ。
問 1 水素と酸素は白金触媒が存在すると式 (1) の反応により水を生成する。
この反応の反応熱は,25 ℃, Pa で +286 kJ/mol である。H—H,O=O,O—H の結合エネルギーをそれぞれ 436,497,463 kJ/mol として,H₂O の凝縮熱を有効数字 2 桁で求めよ。
問 2 H₂O の凝縮熱に関する以下の文章の空欄 ア 〜 オ にあてはまる最も適切な語句を下記の語群より選び,解答欄に記入せよ。
H₂O の凝縮熱は CH₄ や H₂S の凝縮熱に比べて ア。これは,隣接する分子間で,水素原子と イ の大きい酸素原子との間で ウ を形成するためである。ウ は エ や オ の構造形成における相互作用として重要である。
語群:大きい,小さい,結合エネルギー,配位数,充填率,電気陰性度,水素結合,イオン結合,共有結合,DNA,ポリスチレン,ポリエチレン,セルロース,硫黄,酸化マグネシウム,臭化カリウム
問 3 燃料電池は式 (1) の反応熱の一部を電気エネルギーに変換するものである。燃料電池にはいくつか種類が知られているが,ここでは図に示したリン酸型の燃料電池を考える。白金触媒を含む多孔質電極 A と B の間に電解液を配置し,電極 A で水素を反応させ,電極 B で酸素を反応させると,電極 B で水が生成するとともに電極間に電圧が生じ,外部回路に電流が流れる。
電極 A と B はそれぞれ正極と負極のいずれか,解答欄の適切なものを丸で囲め。また,電極 A と B で起こる反応を電子 e⁻ を含むイオン反応式で表せ。

問 4 図の電極 A と B の間に外部回路をつないで作動させたところ,電圧 0.70 V が生じ,外部回路に一定電流が流れ,25 分間で電極 B から水が 1.44 g 生成した。外部回路を流れた電流〔A〕と仕事率〔W〕を有効数字 2 桁で求めよ。ただし,水は液体状態でのみ生成したとする。解答欄には計算過程も記せ。
問 5 問 4 の条件下で,燃料電池により電流として取り出された仕事〔J〕を求めるとともに,それが式 (1) の反応熱の何 % に相当するか,有効数字 2 桁で求めよ。この条件下で式 (1) の反応熱は +286 kJ/mol とする。解答欄には計算過程も記せ。
問 6 燃料電池に関する以下の文 (1)〜(5) のうち間違っているものをすべて選び,その番号を答えよ。
(1) 燃料電池による発電時に発生する熱を暖房などに利用することで,エネルギー利用効率を発電だけの場合に比べ,数十 % 上げることができる。
(2) 電解液に高濃度のアルカリ水溶液を用いた燃料電池では,酸素が反応する電極から水が生じる。
(3) 燃料電池の実用上の問題の一つは,貴金属である白金触媒の利用によるコストの増加である。
(4) 燃料電池で使われている白金触媒は,反応の活性化エネルギーを高め,電気エネルギーを速く取り出しやすくする。
(5) 燃料電池の電極間の電解液の代わりとして,高分子膜も使われている。
問 7 家庭用の燃料電池などでは,熱化学方程式 (2) を含む反応により,メタンと水から水素を発生させ,発電に用いる。
式 (2) の反応に関して,反応が平衡状態にあるとき,一定圧力下で温度を上げると H₂ 濃度は増加するか減少するか,解答欄の適切なものを丸で囲め。また,その理由を 50 字以内で記せ。
第3問
〔3〕 以下の文章を読み,問 1〜問 8 に答えよ。
ベンゼン環上に 1 つだけ置換基を有する 5 つの芳香族化合物 A〜E を含むジエチルエーテル溶液から,各成分を分離する以下の実験を行った。
実験 (1)
芳香族化合物 A〜E を含むジエチルエーテル溶液を分液漏斗に取り,塩酸を加えてよく振り,静置すると,①上層と下層の二層に分離した。下層のみを取り出し,この下層溶液に十分な量の水酸化ナトリウム水溶液を加えると,化合物 A が遊離して得られた。化合物 A の成分元素を調べたところ,炭素,水素,窒素のみから成ることがわかった。また,その質量百分率は C 77.4 %,H 7.50 %,N 15.1 % であった。
実験 (2)
実験 (1) の操作後,残った上層に,②十分な量の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてよく振り,静置すると,再度二層に分離した。下層のみを取り出し,この下層溶液に塩酸を加えると,化合物 B が白色固体として遊離した。化合物 B の成分元素を調べたところ,炭素,水素,酸素のみから成ることがわかった。また,122 mg の化合物 B を元素分析装置で完全燃焼させたところ,二酸化炭素 308 mg と水 54.0 mg が得られた。
実験 (3)
実験 (2) の操作後,残った上層に,水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく振り,静置すると,二層に分離した。下層のみを取り出し,この下層溶液に塩酸を加えると,化合物 C が油状となって浮かんだ。化合物 C は塩化鉄(Ⅲ)水溶液と反応し,紫色を呈した。
実験 (4)
実験 (3) の操作後,上層から溶媒を蒸発させ,カラムクロマトグラフィーにより化合物 D と化合物 E を分離した。化合物 E を銅線につけて炎に入れると,青緑色の炎色反応を示した。
問 1 化合物 A〜C の構造式を書け。
問 2 下線部①において,ジエチルエーテル層は上層と下層のどちらか,解答欄の適切なものを丸で囲め。また,その理由を 30 字以内で簡潔に説明せよ。
問 3 下線部②において,炭酸水素ナトリウム水溶液に代えて水酸化ナトリウム水溶液を加えた場合,下層には化合物 B の塩と化合物 C の塩が含まれる。ここにガス F を十分に吹きこんだ後,再度ジエチルエーテルを加えて,よく振ってから静置すると,上層には化合物 C が含まれ,下層には化合物 B の塩が残る。ガス F の化学式を書け。
問 4 化合物 A に希塩酸と亜硝酸ナトリウム水溶液を加え,これを化合物 C と水酸化ナトリウム水溶液の混合溶液に加えたところ,橙赤色の固体 G を生じた。化合物 G の構造式を書け。
問 5 ベンゼン環上に置換基を 1 つだけもつ化合物に対して,濃硝酸と濃硫酸の混合物を用いてニトロ化反応を行うと,主としてオルト・パラの位置がニトロ基で置換される場合(オルト・パラ配向性)と,主としてメタの位置がニトロ基で置換される場合(メタ配向性)がある。化合物 B と C のニトロ化反応を行ったときの,それぞれの配向性を答えよ。
問 6 問 5 で観測される配向性は,ベンゼン環上にあらかじめ存在する置換基の種類によって,ニトロ化のような置換反応の起こりやすい位置が変化することを意味している。オルト・パラ配向性を示すトルエンのニトロ化を例に,この理由を次のように考察した。
考察文:濃硝酸と濃硫酸から生じる NO₂⁺ がベンゼン環の炭素原子のうち,メチル基から見てパラの位置で共有結合により結びつくと,正電荷を帯びた中間体を与える。この中間体は,二重結合と正電荷が複数の炭素原子に広がっているため,H1,H2,H3 のような複数の構造式として表現できる。これら H1〜H3 の関係を共鳴といい,両矢印(⟷)で表す。また,各構造式は共鳴構造式と呼ばれる。この中で,特に H2 に注目すると,メチル基が結合した炭素が正電荷を帯びているが,メチル基は電子を与えることができる置換基のため,H2 は大きく安定化されている。その結果,パラの位置でのニトロ化は促進される。一方で,メタの位置で置換する場合,このような安定化効果が得られないため,反応は促進されない。

この考察を基に,トルエンのオルト位でニトロ化が進行する際の,H1〜H3 に対応する共鳴構造式を書け。
問 7 化合物 D を分析したところ,分子量 118 の炭化水素であることがわかった。化合物 D として考えられる分子の構造式を全て書け。ただし,立体異性体が存在する場合は,それも区別して記せ。
問 8 質量分析計とは,分子をイオン化することで,化合物の分子量に関する情報を得ることができる機器であり,原子の同位体も区別することができる。化合物 E を質量分析計で分析したところ,同じ分子式をもつ質量数 112 と 114 の分子が 3:1 の比で存在していることがわかった。化合物 E の構造式を書け。つづいて,化合物 E に対して塩化鉄(Ⅲ)存在下で塩素を反応させると,二置換ベンゼン誘導体 I が得られた。I を質量分析計で分析したところ,同じ分子式をもつ質量数 146,148,150 の 3 つの分子が存在していることがわかった。この 3 つの分子の存在比を,最も簡単な整数比で答えよ。
第4問
〔4〕 以下の文章を読み,問 1〜問 4 に答えよ。
アセチレン (C₂H₂) は三重結合を有する化合物の中で最小の炭化水素であり,アルカンの熱分解で製造されるほか,①炭化カルシウムに水を加えても発生する。一般に,アセチレンは反応性に富み,例えば 2 分子の臭素と速やかに反応して,化合物 A を与える。また,②硫酸水銀(Ⅱ)触媒存在下では,水の付加も進行する。水が付加する反応では,不安定な化合物 B を経由し,最終的に化合物 C を与える。なお,化合物 B と化合物 C は構造異性体の関係にある。さらに,③アセチレンを赤熱した鉄に触れさせると 3 分子重合が起こり,化合物 D になる。一方,アセチレンを過剰のアンモニア性硝酸銀水溶液に通じると,化合物 E が白色固体として生じる。
問 1 化合物 A〜E の構造式を書け。
問 2 下線部①の反応式を書け。また,純度 64.0 % の炭化カルシウム 5.00 g と十分な量の水を反応させた時に発生するアセチレンは,理想気体とすると標準状態(0 ℃, Pa)で何 L に相当するか,有効数字 2 桁で答えよ。ただし,不純物は反応に関与しないものとする。解答欄には計算過程も記せ。
問 3 下線部②において,アセチレンに代えてプロピン (C₃H₄) を用いた場合,最終的に互いに構造異性体の関係にある 2 つの安定な化合物の混合物が得られる。この 2 つの化合物の構造式を書け。また,主生成物となる方の構造式を丸で囲め。
問 4 下線部③において,用いる触媒によっては付加重合が進行し,高分子化合物であるポリアセチレンが得られる。ポリアセチレンに ア を少量加えると,金属に匹敵する イ 性を示すことが知られている。空欄 ア,イ にあてはまる適切な語句を記せ。