(必要なときは次の値を用いよ。原子量:H = 1.00,C = 12.0,N = 14.0,O = 16.0,S = 32.0。アボガドロ定数 /mol,,,。)
第1問
次の文章を読んで,設問(1)〜(6)に答えよ。
純物質の状態は,温度と圧力によって決まる。温度を横軸,圧力を縦軸にとり,状態間の境界を曲線で示すと状態図が得られる。図 1 に水 の模式的な状態図を示す。図 1 の固体と液体の状態間の境界線は融解曲線とよばれ,液体と気体の状態間の境界線は ア 曲線,固体と気体の状態間の境界線は イ 曲線とよばれる。これらの境界線上の温度と圧力では,その線をまたぐ 2 つの状態が共存する。3 本の境界線がすべて交差する点 A では,固体,液体,気体の状態がすべて共存する。この点 A を ウ という。液体と気体の状態間の境界線は点 B で途切れるが,この点 B を エ という。点 B から右上の領域 X の状態の物質は オ 流体とよばれる。
純物質の固体が複数の状態をとるときは,固体の状態間の境界線が加わった状態図が得られる。たとえば,硫黄 S の単体には斜方硫黄,単斜硫黄,カ の同素体が存在する。①斜方硫黄と単斜硫黄は環状構造の 分子からなる分子結晶である。カ は多数の S 原子が鎖状につながった分子からできている。硫黄の状態図では斜方硫黄と単斜硫黄の状態間に境界線があらわれ,その状態図(一部)は図 2 のようになる。この状態図では 3 本の境界線が交差する点は 3 つあり,水と同様に②固体,液体,気体の状態がすべて共存する点もあるが,③2 種類の固体(斜方硫黄と単斜硫黄)と液体が共存する点や,2 種類の固体と気体が共存する点もある。この状態図を用いると,④斜方硫黄から単斜硫黄を得るための圧力や温度の条件が読み取れる。

図 1

図 2
設問(1):文中の空欄 ア 〜 カ にあてはまる最も適切な語句を記せ。
設問(2):図 1 の点 A と点 B の温度 [℃] の組み合わせが正しいものを次のうちから選択して,記号で記せ。
(a) A は 0.00,B は 374 (b) A は 0.01,B は 100 (c) A は 0.01,B は 374 (d) A は 0.00,B は 100
設問(3):水に加わる圧力を Pa から Pa の条件に変化させたとき,水が凝固する温度はどう変化するかを図 1 の状態図を用いて考える。その変化を「低くなる」,「変化しない」,「高くなる」から選択して記せ。また,そのように考えた理由を 40 字以内で説明せよ。
設問(4):下線①に関して,以下の問いに答えよ。
(i) 斜方硫黄の密度は 2.07 g/cm³ である。その単位格子は直方体であり,体積は 3.30 nm³ である。単位格子中に含まれる硫黄分子の個数を計算し,小数点以下を切り捨てて整数値で記せ。
(ii) 100 g の四塩化炭素 を溶媒として斜方硫黄の結晶を溶かしたところ,凝固点が 0.15 ℃下がった。何 g の結晶を溶かしたか計算し,有効数字 2 桁で求めよ。斜方硫黄の分子は溶液中で化学反応せずに溶けるとする。また, のモル凝固点降下は 29.8 K·kg/mol とせよ。
設問(5):下線②と下線③に対応する点として最も適切なものを,図 2 の C〜G の中から 1 つずつ選択して,記号で記せ。
設問(6):下線④に関して,次の(a)〜(d)のうち,単斜硫黄を得る条件を記した文章として正しいものをすべて選び,記号で記せ。正しいものがなければ「なし」と記せ。
(a) 標準大気圧のもとで,斜方硫黄の結晶を 130 ℃に加熱し,十分な時間保持した後に,ゆっくりと 121 ℃に冷却して温度を保持した。
(b) 標準大気圧のもとで,斜方硫黄の結晶を 121 ℃に加熱し,十分な時間保持した後に,ゆっくりと 110 ℃に冷却して温度を保持した。
(c) Pa の圧力のもとで,斜方硫黄の結晶を 121 ℃に加熱し,十分な時間保持した後に,ゆっくりと 96 ℃に冷却して温度を保持した。
(d) Pa の圧力のもとで,斜方硫黄の結晶を 121 ℃に加熱し,十分な時間保持した後に,121 ℃のままゆっくりと Pa に加圧して,圧力を保持した。
第2問
次の文章を読んで,設問(1)〜(6)に答えよ。
アンモニア は産業を支える重要な物質であり,①工業的には,触媒を用いた窒素 と水素 の反応によって合成される。 は空気に含まれるため, の製造が重要である。② をつくるには,以下の反応 1〜反応 3 の化学反応が用いられる。
反応 1
反応 2
反応 3
反応 1 は,メタン と水蒸気 を混ぜて加熱する反応である。反応 1 では,全ての が反応できず,反応後のガス中には未反応の が残る。そのため,空気中の酸素 を用いて反応 2 のように未反応の を反応させる。反応 2 で空気を使用することで,反応後のガスに が導入される。さらに,反応 1 および反応 2 で得られる気体は一酸化炭素 CO を含むので,反応 3 のように CO を水蒸気 と反応させて二酸化炭素 と を得る。
は,③硝酸 や尿素などの原料として利用されている。1828 年,ドイツのウェーラーは,シアン酸アンモニウム の合成を目的とする実験において,目的物質のかわりに,有機物である尿素が生じることを発見した。④尿素は,工業的には, と を原料として合成される。尿素は有用な⑤窒素肥料として,食糧問題の解決に貢献してきた。
設問(1):下線①に関して,工業的には触媒として化学式 を主成分とする物質がよく利用される。 に関して,次の(a)〜(d)の記述のうち,正しいものをすべて選び,記号で記せ。正しいものがなければ「なし」と記せ。
(a) は,赤褐色をしている。 (b) は,酸化数+2 と+3 の鉄を含む。 (c) は,強い磁性をもつ。 (d) は,還元されると となり,さらに還元されると Fe となる。
設問(2):工業製品をつくる際に,触媒は非常に重要な役割を果たしており,触媒には,酸や金属および金属酸化物などが利用されている。(あ)酸(),(い)金属(Pt),(う)金属酸化物(CuO–ZnO,ZnO など)が触媒として工業的に利用されている反応として,最も適切なものを以下の(a)〜(c)の中からそれぞれ 1 つずつ選択して記号で記せ。
(a) オストワルト法での硝酸の製造におけるアンモニアの酸化:
(b) メタノールの製造:
(c) エタノールの製造:
設問(3):下線②に関して,1.00 mol の を用いて反応 1 を行ったところ, [mol] の が反応した。反応 1 で残った の全量を反応させるためにちょうど必要な量の空気を用いて反応 2 を進行させると, がすべて反応した。反応 1 と反応 2 で生成した CO は反応 3 ですべて反応した。以下の問いに答えよ。ただし,反応 2 に用いる空気は (体積比)の混合気体とし,反応 1 と反応 3 に用いる は十分に存在するものとする。
(i) 反応 2 で用いた空気に含まれる の物質量 [mol] と,反応 1〜反応 3 で得られるすべての の物質量 [mol] を, を用いてそれぞれ記せ。
(ii) が となる場合の [mol] を,有効数字 2 桁で求めよ。
設問(4):下線③に関して,硝酸は強酸として働くほか,強い酸化剤としても働く。次の 5 つの金属のうち,以下の(ア),(イ)の記述にあてはまる金属を以下の[アルミニウム Al,金 Au,銅 Cu,鉄 Fe,ニッケル Ni]の中からそれぞれすべて選び,元素記号で記せ。あてはまるものがなければ「なし」と記せ。
(ア) 濃硝酸によく溶ける。 (イ) 濃硝酸には不動態となって溶けない。
設問(5):下線④に関して,以下の問いに答えよ。
(i) と を用いて高温高圧のもとで尿素を直接合成するときの反応式を記せ。ただし,反応式中の尿素は示性式で記せ。
(ii) 1000 kg の を用いて(i)の反応を行ったところ,実際には 500 kg の尿素が得られた。尿素の収率 [%] を有効数字 2 桁で求めよ。ただし,尿素の収率は次の式で表される。
設問(6):下線⑤に関して,窒素肥料は,他の肥料や土壌の性質を改善する物質(消石灰など)と配合して使用される場合がある。硫酸アンモニウムは代表的な窒素肥料の 1 つであるが,消石灰と混合すると窒素肥料としての効果を減少させる化学反応が起こる。その反応式を記せ。ただし,硫酸アンモニウムと消石灰を左辺に含むこと。
第3問
問 1 次の文章を読んで,設問(1)〜(6)に答えよ。
炭素原子間の三重結合をもつ化合物は,図 1 に示すように,水の付加反応によりアルデヒドもしくはケトンを与える。また,①アセチレンを過剰量の臭素 と十分に反応させると,化合物 A が得られる。
炭素原子間の三重結合を 1 つもつ化合物 B 102 mg を完全燃焼させたところ,二酸化炭素 330 mg および水 108 mg が得られた。化合物 B に触媒を用いて水を付加させたところ,2 種類の安定な化合物 C および D が得られた。化合物 C および D について,それぞれをアンモニア性硝酸銀水溶液に加えて加熱したところ,どちらの化合物も反応しなかった。また,化合物 C および D を還元したところ,化合物 C からは不斉炭素原子をもつ化合物 E,化合物 D からは不斉炭素原子をもたない化合物 F が得られた。化合物 B〜F の分子量はすべて 100 未満であり,化合物 E および F はヒドロキシ基をもっていた。
炭素原子間の三重結合を 1 つもつ化合物 G(分子式 )は,化合物 B と同様に②水の付加反応を示す。また,化合物 G のような分子はその構造に特有な反応性を示し,医薬品の開発研究などに利用されている。この特有の化学反応を開発した研究者に 2022 年のノーベル化学賞が授与された。

図 1(, は水素原子または炭化水素基を示す)
設問(1):化合物 A の構造式を図 2 にならって記せ。

図 2
設問(2):下線①について,自然界には と という 2 種類の安定な同位体が存在するため,同位体の組み合わせによって質量数の総和が異なる 3 種類の臭素分子 が存在する。したがって,化合物 A にも同位体の組み合わせの異なる分子が複数存在し,炭素原子は のみ,水素原子は のみとした場合には,化合物 A の質量数の総和は小さいものから順に(ア),(イ),(ウ),(エ),(オ)の 5 通りとなる。以下の(i)〜(iii)にあてはまる数値を,小数点以下を四捨五入して整数で答えよ。なお, と の存在比は 1:1 であり,同位体間で反応性には差がないものとする。
(i) (ア)の値 (ii) 化合物 A の全分子数に対する,質量数の総和が(ア)である分子数の割合 [%] (iii) 化合物 A の全分子数に対する,質量数の総和が(ウ)である分子数の割合 [%]
設問(3):化合物 B の分子式を記せ。
設問(4):化合物 C および D の構造式を図 2 にならって記せ。
設問(5):ヨードホルム反応を示す化合物を,化合物 C〜F の中からすべて選び,記号で答えよ。ヨードホルム反応を示す化合物がなければ「なし」と記せ。
設問(6):下線②について,1 分子の化合物 G に付加した水は 1 分子であり,ケトン H のみが生成した。このケトン H を還元したところ,不斉炭素原子をもたないアルコール I が得られた。化合物 G の構造式を図 2 にならって記せ。
問 2 次の文章を読んで,設問(1)〜(7)に答えよ。
生体内には,L 体の α-アミノ酸だけでなく,その鏡像異性体である D 体の α-アミノ酸も少量存在している。生体内では,D 体の α-アミノ酸は,一般に酵素の働きによって,対応する L 体の α-アミノ酸からつくられる。この過程に関わる酵素の一種は,図 1 で示すアラニンの例のように L 体から D 体への変換反応だけでなく,D 体から L 体への変換反応も触媒する。なお,実線で表された結合は紙面と同一平面にあることを,くさび形の太線で表された結合は紙面の手前側にあることを,くさび形の破線で表された結合は紙面の奥側にあることを意味している。一方,この酵素を,図 2 で示す α-アミノ酸の一種である L 体のトレオニンに作用させた場合,D 体のトレオニンは生じず,L 体のトレオニンの立体異性体である化合物 A が生じる。①これは,この変換反応がアミノ基とカルボキシ基がともに結合している炭素原子でのみ起こるためである。したがって,化合物 A は L 体および D 体のトレオニンのどちらとも鏡像関係にはならない。このように,複数の不斉炭素原子の存在により生じる立体異性体のうち,鏡像関係にないものはジアステレオ異性体の関係にある。また,この酵素は D 体のトレオニンをそのジアステレオ異性体である化合物 B に変換する。

図 1

図 2
設問(1):下線①のように,酵素は特定の化合物の構造を認識し,作用する。このような酵素の性質を何というか。最も適切な語句を記せ。
設問(2):化合物 A および B の構造式の一部を図 3 に示す。解答欄に示した化合物 A および B の構造式中の点線の枠にあてはまる原子または原子団を化学式でそれぞれ記せ。

図 3
設問(3):化合物 A と化合物 B はどのような異性体の関係にあるか。最も適切な用語を以下の[(あ) 構造異性体,(い) ジアステレオ異性体,(う) 鏡像異性体,(え) 幾何異性体]の中から 1 つ選び,記号で答えよ。
設問(4):脱水縮合によりアラニン 2 分子が環状に結合したペプチドの立体異性体を図 4 に示す。このうち L 体のアラニンのみからなる分子をここでは LL 体,D 体のアラニンのみからなる分子を DD 体,L 体と D 体のアラニンからなる分子を LD 体および DL 体と表す。DL 体は紙面上で 180° 水平に回転させることで LD 体と重なり合う同一の分子である。そのため,このペプチドの立体異性体は全部で 3 種類存在することになる。これらの環状ペプチドに関する以下の(お)〜(き)の記述のうち,誤っているものをすべて選び,記号で答えよ。誤っているものがなければ「なし」と記せ。
(お) 3 種類の環状ペプチドはいずれもジアステレオ異性体の関係にある。 (か) LL 体と DD 体の融点は等しい。 (き) LD 体はその鏡像と同一の構造をしている。

図 4
設問(5):設問(4)をふまえて,脱水縮合によりアラニン 4 分子がすべて環状に結合したペプチドを考える。そのペプチドが任意の数の L 体および D 体のアラニンからなる場合,立体異性体は全部で何種類存在するか,鏡像異性体を区別して答えよ。なお,不斉炭素原子の立体配置の違いに起因する異性体のみを考慮するものとする。
設問(6):設問(4)の環状ペプチドとアラニンを区別するために,ある検出反応を行った。アラニンを含む反応液が紫色に呈色したのに対し,環状ペプチドを含む反応液は呈色しなかった。この反応として最も適切なものを,以下の[(く) ニンヒドリン反応,(け) キサントプロテイン反応,(こ) 銀鏡反応,(さ) ビウレット反応]の中から 1 つ選び,記号で答えよ。
設問(7):設問(6)において,アラニンが呈色したのに対して環状ペプチドが呈色しなかった理由を,それらに含まれる官能基の違いに基づき 40 字以内で記せ。