京大 過去問 2024年 化学|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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京都大学 一般選抜 個別学力検査 2024年度 理科(化学)(京都大学がかつて公開したPDFの Internet Archive 保存版)

問題・出題意図等(京都大学の公表資料)

京都大学の利用の条件について

京都大学は「京都大学入試問題等の利用について」(平成31年4月)で、入試問題と出題意図等を、決められた3つの条項に従うことを条件に、ネットに載せることも含めて許可している。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

お知らせ

解答・解説・シミュレーションは、すべて AI で作成しています。京都大学が公表した解答ではありません。

京都大学が「出題意図等」で解答例を公表している小問は、それと照らし合わせています。作成に使ったものとは別のAIでも全問を点検し、見つかった誤りを直しています。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

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化 学  (4 問題 100 点)

化学問題 Ⅰ

 次の文章(a),(b)を読み,問 1〜問 6 に答えよ。解答はそれぞれ所定の解答欄に記入せよ。2=1.41,3=1.73 とする。

(a) チタン Ti は水素 H を吸収する金属である。原子を球とみなし,Ti の結晶構造を最近接 Ti 原子どうしが接する完全な六方最密構造とする。H 原子の吸収量が少ないとき,Ti は六方最密構造を保ち,吸収された H 原子は図 1 に示す 6 個の Ti 原子で囲まれた隙間(八面体隙間),もしくは 4 個の Ti 原子で囲まれた隙間(四面体隙間)に入る。Ti の原子半径を r とし,隙間には周囲の Ti 原子と接する大きさまでの原子が入ることができるとすると,八面体隙間には半径 Ⅰ ×r,四面体隙間には半径 Ⅱ ×r までの原子が入ることができる。また,六方最密構造では Ti 原子 1 個あたり あ 個の八面体隙間,い 個の四面体隙間が存在する。

 H 原子の吸収量が増加すると,結晶中の Ti 原子の配列は六方最密構造から体心立方格子へと変化する。結晶構造が体心立方格子の場合も H 原子が入る位置として八面体隙間と四面体隙間が考えられる。 体心立方格子中の最近接 Ti 原子どうしは接しているとする。

図1(左:八面体隙間の原子配置,右:四面体隙間の原子配置)
図1(左:八面体隙間の原子配置,右:四面体隙間の原子配置)
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図2
図2

問 1 Ⅰ と Ⅱ にあてはまる数値を有効数字 2 けたで答えよ。

問 2 あ と い にあてはまる整数または既約分数を答えよ。

問 3 図 2 ⓐのように体心立方格子の単位格子の一辺の長さを 1 とし,ある Ti 原子の中心を原点にとって xyz 座標を設定する。下線部に関して次の(i)〜(iii)の問いに答えよ。

(i) 八面体隙間の中心位置に H 原子が入るとき,H 原子と周囲の 4 つの Ti 原子は同一平面上に存在し,H 原子の中心と周囲の各 Ti 原子の中心との間の距離 dTi-H には異なる 2 つの値が存在する。2 つの dTi-H の値を有効数字 2 けたで答えよ。

(ii) (i)で定めた八面体隙間の中心位置に H 原子が存在するとき,図 2 ⓑに示す xy 平面(z=0)における 0≦x≦1,0≦y≦1 の領域で,八面体隙間に入った H 原子中心の位置として考えられるものすべてを (x, y) 座標の形式で答えよ。x および y の値はそれぞれ小数第 2 位まで答えよ。

(iii) 四面体隙間の中心位置に H 原子が入るとき,dTi-H には 1 つの値のみが存在する。(ii)と同じ xy 平面における 0≦x≦1,0≦y≦1 の領域で,四面体隙間の中心位置に H 原子が存在するとき,H 原子中心の位置として考えられるものすべてを (x, y) 座標の形式で答えよ。x および y の値はそれぞれ小数第 2 位まで答えよ。

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(b) パラジウム Pd も結晶内部に水素 H を吸収する金属である。図 3 の装置を用いて Pd に H を吸収させる実験を行った。容器 1 と容器 2 の間はバルブ A によって隔てられ,容器 1 にはバルブ B が接続されている。これらのバルブを介して容器 1 に気体を導入したり,容器 1 と容器 2 を排気して真空にしたりできる。容器の内壁は気体原子あるいは分子と反応しないものとする。実験中,装置全体の温度は一定に保たれており,容器 1 と容器 2 の容積は変化しない。接続配管内部およびバルブの内部の体積は無視できる。また,H の吸収による Pd の体積変化は無視できるものとする。気体はすべて理想気体とみなす。原子量は H=1.00,O=16.0,Pd=106,気体定数は 8.31×103 Pa·L/(K·mol) とする。

 実験は以下の操作 1 から操作 3 を行った。

操作 1

 容器 2 に 79.5 g の Pd を入れた後に,バルブ A とバルブ B を開けて容器 1 と容器 2 を十分に排気して真空にした。その後,バルブ A を閉じて容器 1 のみにアルゴン Ar を導入してバルブ B を閉じたところ,容器 1 の圧力は 3.00×105 Pa となった。次にバルブ A を開けて,十分に時間が経過すると容器 1 と容器 2 の圧力は 2.00×105 Pa となった。Pd は Ar を吸収しないとする。

操作 2

 操作 1 の後,バルブ A とバルブ B を開けて Ar を十分に排気して容器 1 と容器 2 を真空にした。その後,バルブ A を閉じて容器 1 のみに水素分子 H2 を導入してバルブ B を閉じたところ,容器 1 の圧力は 1.00×105 Pa となった。次にバルブ A を開けて,十分に時間が経過すると容器 1 と容器 2 の圧力は 5.00×104 Pa となり,平衡に達した。

操作 3

 操作 2 の後,バルブ A を閉めて,バルブ B を介して容器 1 のみに酸素分子 O2 を追加して容器 1 に存在する H2 と反応させたところ,H2 はすべて消費されて 10.0 g の水が生じた。

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図3
図3

問 4 一連の実験結果から,操作 2 終了後に容器 1 と容器 2 に残った気体 H2 の総物質量は何 mol になるか求め,有効数字 2 けたで答えよ。

問 5 一連の実験結果から,操作 2 終了後に Pd に吸収された H 原子の個数が求まる。Pd 原子の個数を NPd,吸収された H 原子の個数を NH としたときの原子数の比 NHNPd を有効数字 2 けたで答えよ。

問 6 H 原子を吸収した Pd を容器 2 から取り出して,吸収されたすべての H 原子を気体の H2 として放出させたとき,温度 300 K,圧力 1.00×105 Pa において放出された H2 がしめる体積 [L] を有効数字 2 けたで答えよ。

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化学問題 Ⅱ

 次の文章を読み,問 1 〜問 6 に答えよ。解答はそれぞれ所定の解答欄に記入せよ。気体はすべて理想気体とみなし,気体定数は R [Pa·L/(K·mol)] とする。水のイオン積は 1.00×10−14 (mol/L)2,[X] は mol/L を単位とした物質 X の濃度とする。必要があれば,log102=0.30,log103=0.48,log105=0.70 の値を用いよ。

 気体 A を不純物として微量に含んだ気体混合物を,吸収液と接触させることで A を除去するガス吸収操作について考える。以下では,A のみが吸収される液を用い,気体の圧力および液体中の濃度は常に一様と見なせるものとする。A の濃度が希薄な条件下では,気体と液体を接触させ十分に時間が経過した後,A の分圧 PA [Pa] と液体に溶解した A の濃度 [A]max [mol/L] の間には次のヘンリーの法則が成り立つ。

PA=H[A]max(1)

ここで,H [Pa·L/mol] はヘンリー定数とよばれる比例定数で温度に依存する。温度が高くなると,溶解している分子の ア が激しくなるため,ヘンリー定数は多くの場合 イ {大きくなる・小さくなる・変化しない}。

 A が吸収される速さについて考えると,吸収液の単位表面積および単位時間あたりに吸収される A の物質量 vA [mol/(m²·s)] は,k を正の定数として次式で与えられる。

vA=k([A]max−[A])(2)

式(2)からわかるように vA は,ある時点の PA に対して A が溶解できる最大の濃度 [A]max とその時点での A の濃度 [A] との差に比例する。A の吸収にともなって PA は変化するので,それに対応する [A]max も時間とともに変化する。

 ガス吸収の操作として,温度が T [K] で一定の条件下で,以下の操作 1 〜 3 をそれぞれ行った。なお,使用前の吸収液に A は含まれず,蒸発や気体の吸収による吸収液の体積変化は考慮しない。

操作 1 A を n0 [mol] 含む気体混合物の入った密閉容器内において,A と化学反応しない吸収液をスプレーで均一な直径をもつ球形の微細な液滴にして霧状に散布した。スプレーと吸収液を除く空間の体積は V [L] で,十分に時間が経過した後,

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液滴の直径に変化はなく,A の分圧は P1 [Pa] となった。これより,吸収液には ウ [mol] の A が吸収されたことがわかる。このとき,使用した吸収液の総体積は エ [L] である。操作開始時に,吸収液の総体積を変えずに液滴の直径を 2 倍にすると,最終的に吸収される A の物質量 [mol] は あ 倍に,ある PA と [A] における液滴 1 個あたりの A の吸収速度 [mol/s] は い 倍に,吸収液全体での A の吸収速度 [mol/s] は う 倍になる。

操作 2 図 1 のように,A をモル分率 f0 で含む気体混合物を容器下部右側から一定の流量 G [mol/s] で供給し,内部で吸収液と接触させたのち,容器上部から排出した。一方,吸収液を一定の流量 W [mol/s] で容器上部のスプレーから霧状の液滴として供給し,容器下部から A を含む液として排出した。A の濃度は希薄であるため,排出される気体混合物と吸収液の流量は,それぞれ G と W と見なしてよい。この操作を継続すると,排出される気体混合物中の A のモル分率 fA と吸収液中の A のモル分率 gA は一定となり変化しなくなった。

図1
図1

fA と gA の値は G や W,容器体積などの条件によって変化するが,ヘンリーの法則が成り立つときには,fA と gA の関係は h を定数として次式で表される。

fA=hgA(3)

この操作では,容器内に単位時間あたりに供給される A と排出される A の物質量が等しいため,W は G,f0,fA,gA を用いて オ と表される。

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操作 3 A は式(4)のように水と反応する。

A+H2O⇄AH++OH−(4)

ここで式(4)の電離定数 Ka は式(5)で表される。

Ka=[AH+][OH−][A]=1.80×10−7 mol/L(5)

ヘンリー定数は H=8.00×102 Pa·L/mol である。pH = え の塩酸 2.00 L を吸収液として用いて,操作 1 と同様に,霧状に散布したところ,十分に時間が経過した後,最終的な吸収液の pH は 7.00 に,A の分圧は 1.00 Pa になった。

問 1 ア に適切な用語を,イ に{ }から適切な語句を選択し,記入せよ。ウ 〜 オ に適切な数式を記入せよ。

問 2 あ 〜 う に入る適切な数値を以下の選択肢から 1 つずつ選び記入せよ。なお,選択する数値は重複してもよい。

 選択肢:116,18,14,122,12,12,1,2,2,22,4,8,16,32

問 3 操作 1 において,x 軸,y 軸の組み合わせをそれぞれ以下の(i),(ii)としたときに,その関係を表すグラフの概形として最も適切なものを図 2 のⓐ〜ⓕからそれぞれ選べ。

(i) x 軸:[A],y 軸:vA

(ii) x 軸:時間,y 軸:吸収液内の A の物質量

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図2
図2

問 4 ガス吸収操作では,吸収液の量は少ない方が望ましい。操作 2 において,気体混合物中の A のモル分率を f0 からある値 ff まで低下させるために必要な,吸収液と気体混合物の流量比 WG の最小値を,f0,ff,h を用いて求めよ。

問 5 式(4)のように吸収液と A が反応する場合でも,十分に時間が経過した後の吸収液中の A の濃度はヘンリーの法則に従うと考えてよい。操作 3 において,吸収液によって気体混合物から除去された A の物質量 [mol] を有効数字 2 けたで答えよ。

問 6 え に入る適切な数値を小数第 1 位まで求めよ。

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化学問題 Ⅲ

 次の文章(a),(b)を読み,問 1 〜問 7 に答えよ。解答はそれぞれ所定の解答欄に記入せよ。ただし,構造式は記入例にならい,シス-トランス異性体(幾何異性体)がわかるように記せ。原子量は H=1.00,C=12.0,O=16.0 とする。

構造式の記入例:

構造式の記入例
構造式の記入例

(a) 図 1 に示すように,2-メチルプロパンの 4 つの炭素原子のうち,①の番号を付した 3 つは,いずれも 3 つの水素原子と 1 つのイソプロピル基 (CH3)2CH- と結合している。つまり,①の炭素原子 3 つは,いずれも結合している原子と原子団が同じであり,化学的に等価とみなせる。一方,②の番号を付した炭素原子は,1 つの水素原子と 3 つのメチル基 CH3- と結合している。このことからわかるように,①と②の炭素原子は結合している原子と原子団が異なり,化学的に非等価である。すなわち,2-メチルプロパンは 2 種類の非等価な炭素原子をもつ。同様の考え方は,鎖状構造のみならず,環状構造にも適用できる。例えば,シクロヘキセンの 6 つの炭素原子のうち,③の番号を付した 2 つ,④の番号を付した 2 つ,⑤の番号を付した 2 つはそれぞれ等価とみなせる。すなわち,シクロヘキセンは 3 種類の非等価な炭素原子をもつ。有機化合物の構造決定において,非等価な炭素原子の数は,分子式や反応性とならび,重要な情報である。

図1
図1
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 5 種類の有機化合物(あ)〜(お)の構造決定について考えてみよう。これらの化合物はそれぞれ構造異性体の関係にあり,以下の情報が得られている。

 化合物(あ)は,炭素,水素,酸素の 3 種類の原子から構成されており,分子量は 86.0 であった。25.8 mg の化合物(あ)を完全燃焼させると,27.0 mg の水と 66.0 mg の二酸化炭素が生成した。

 化合物(あ)と(い)は不斉炭素原子をもたないカルボニル化合物であった。化合物(あ)と(い)をそれぞれ還元し,脱水させたのちに水素分子 H2 を付加させたところ,同一の飽和炭化水素を与えた。化合物(あ)をアンモニア性硝酸銀水溶液中で熱したところ,銀が析出した。一方,化合物(い)にヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を反応させたところ,黄色沈殿が生じた。

 化合物(う)は炭素原子間の二重結合を 1 つもち,この二重結合を構成する炭素原子に酸素原子は結合していなかった。化合物(う)に水素を付加させたところ,非等価な炭素原子の種類が 1 つ減少した。この水素付加後の生成物を酸化したところ,化合物(い)が生成した。

 化合物(え)と(お)は 3 種類の非等価な炭素原子をもっていた。化合物(え)は二重結合とメチル基をもたず,ナトリウムとは反応しなかった。一方,化合物(お)はナトリウムと反応して水素分子を発生した。また,化合物(お)を脱水させたのちに水素分子を付加させたところ,化合物(か)が生成した。化合物(か)のすべての炭素原子は等価であった。

問 1 化合物(あ)の分子式を求めよ。

問 2 化合物(あ)〜(お)の構造式を記せ。なお,ここでは鏡像異性体は考慮しない。

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(b) 有機化合物の立体的な配置(立体配置)は,医薬品や機能性材料としての性能に大きく影響を及ぼすことが知られている。有機化合物の立体配置を的確に捉え,その 3 次元構造を知ることは,有機化学の理解を深めるために重要である。

 アルケンの付加反応を例に,有機化合物の立体配置について考えてみよう。アルケンは二重結合を形成する炭素原子と,それに直結した原子がすべて同一平面(アルケン平面)上に存在する。アルケンと臭素分子 Br2 の反応は,2 つの臭素原子がアルケン平面をはさんで互いに反対側から付加する。例えば,図 2 の化合物(き)への付加反応では,化合物(く)とその鏡像異性体の 2 種類が得られる。なお,R1〜R4 はたがいに異なる炭化水素基,太線(くさび形)は紙面の手前側に出ている結合,破線は紙面の奥側に出ている結合である。一方,白金触媒によるアルケンと水素分子の反応は,2 つの水素原子がアルケン平面の同じ側から付加する。例えば,化合物(き)への付加反応では,生成物(け)とその鏡像異性体の 2 種類が得られる。化合物(く)や(け)は炭素原子を中心とした四面体が連結したような構造をしており,炭素原子間の単結合は,それを軸として回転できる。図 2 の枠内には,炭素原子間の単結合を 180° 回転させた場合の例を示した。

図2
図2
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 図 2 のアルケンの付加反応における立体的な特徴を考慮すると,原料アルケンのシス-トランス異性体の違いから,付加反応で得られる化合物の立体配置を予想することができる。例えば,図 3 のシス形アルケン(こ)に臭素分子が付加すると化合物(さ)とその鏡像異性体の 2 種類が得られるのに対し,トランス形アルケン(し)に臭素分子が付加すると化合物(す)とその鏡像異性体の 2 種類が得られる。

図3
図3
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 付加反応で得られる化合物の立体配置がわかっている場合には,原料アルケンの構造やシス-トランス異性体を予想することもできる。図 4 の化合物(せ)とその鏡像異性体の 2 種類がアルケンへの臭素分子の付加で得られる場合について,原料アルケンの構造を以下の手順で考えてみよう。炭素原子間の単結合が回転できることを考慮すると,図 4 の破線の枠内に示した化合物(せ)の,太矢印で指し示した単結合を 180° 回転させることで,2 つの臭素原子が付加した直後の立体配置を的確に示した(そ)の配置へと描き直すことができる。(そ)の立体配置からアルケン(た)が原料だと予想できる。

 一方,炭素原子間の単結合が回転できることを考慮することで,白金を触媒として水素分子を付加させると化合物(ち)とその鏡像異性体の 2 種類が得られる場合,その原料はアルケン(つ)だと予想できる。

図4
図4
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問 3 図 5 のアルケン(て)〜(ぬ)に臭素分子が付加した際に,不斉炭素原子を 2 つ含む化合物を与えるものをすべて選び,記号を記せ。

図5
図5

問 4 図 5 のアルケン(て)〜(ぬ)に白金を触媒として水素分子を付加させた際に,不斉炭素原子を含む化合物を与えるものをすべて選び,記号を記せ。

問 5 図 3 の化合物(さ),(す)の構造式について,ア 〜 エ にあてはまる原子または原子団を化学式で答えよ。

問 6 図 4 の化合物(そ)の構造式について,オ 〜 キ にあてはまる原子または原子団を化学式で答えよ。

問 7 図 4 の化合物(た)および(つ)の構造式をシス-トランス異性体がわかるように記せ。

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化学問題 Ⅳ

 次の文章(a),(b)を読み,問 1 〜問 7 に答えよ。解答はそれぞれ所定の解答欄に記入せよ。原子量は H=1.00,C=12.0,N=14.0,O=16.0 とする。

(a) 環状ペプチドは,ペプチド結合などを介して環化したポリペプチドである。ここで,5 つのアミノ酸から形成されるポリペプチド(ペンタペプチド)の鎖状構造と環状構造を比較してみよう。例えば,グリシン,アラニンそれぞれ 2 つとセリン 1 つから形成される鎖状のペンタペプチドの構造を図 1 のように記した場合,左端の破線で囲まれた部分を N 末端残基,右端の破線で囲まれた部分を C 末端残基とよぶ。図 1 の鎖状のペンタペプチドの N 末端残基と C 末端残基が同一分子内でペプチド結合によりつながった場合,図 2 のような環状のペンタペプチドとなる。このように形成された環状ペプチドには,N 末端残基と C 末端残基が存在しないことがわかる。この構造はヒトがもつ消化酵素では分解されにくく,医薬品にも応用されている。

図1・図2
図1・図2

 環状ペプチドであるグラミシジン S は抗生物質として知られる。この化合物は,10 個のアミノ酸がすべてペプチド結合により連結したポリペプチドであり,5 つの異なるアミノ酸 A1,A2,A3,A4 および A5 それぞれ 1 つずつからなるペンタペプチドと,同じ配列のペンタペプチドが結合した環状構造をもつ。 グラミシジン S のアミノ酸配列は,A1 〜 A5 を用いて図 3 のように表すことができる。

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図3
図3

 グラミシジン S の構成アミノ酸(A1 〜 A5)はバリン,ロイシン,フェニルアラニン,プロリンおよびヒトのタンパク質には通常含まれないアミノ酸 X からなる。アミノ酸 X を除くアミノ酸の構造を図 4 に示す。各アミノ酸の分子量は,図 4 の括弧内の数値とする。

図4
図4

 このグラミシジン S に対し,実験 1 から実験 3 をそれぞれ行った。

実験 1 68.40 mg のグラミシジン S に塩酸を加えて加熱し完全に加水分解すると,フェニルアラニンが 19.80 mg 得られた。ただし,アミノ酸の塩酸塩の生成は考慮しないものとする。

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実験 2 228 mg のグラミシジン S に含まれる窒素をすべてアンモニアに変え,生成したアンモニアを 0.20 mol/L の希硫酸 7.0 mL にすべて吸収させた。この溶液を 0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液で中和するのに 4.0 mL 要した。

実験 3 グラミシジン S にニンヒドリン溶液を加えて加熱すると,紫色に発色した。

問 1 文章中の下線部の条件を満たすアミノ酸配列の組み合わせは何通り存在するか答えよ。ただし,側鎖はペプチド中のアミノ酸の連結に関与しないものとする。なお,アミノ酸の鏡像異性体は考慮しない。

問 2 実験 1 で消費される水の質量は何 mg か,有効数字 3 けたで答えよ。

問 3 グラミシジン S の分子量を整数で答えよ。

問 4 アミノ酸 X の分子量を整数で答えよ。

問 5 1 分子のアミノ酸 X に含まれる窒素原子の数を答えよ。

問 6 図 5 の構造をもつアミノ酸 X において,破線の枠内の側鎖 R は水素,炭素,窒素の 3 種類の原子から構成される。アミノ酸 X の構造を図 4 にならって記せ。ただし,側鎖 R にメチル基および不斉炭素原子は含まれないものとする。

図5
図5
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(b) グラミシジン S を構成するアミノ酸 A1 〜 A5 を用いて,3 つの鎖状のトリペプチドを合成した。図 6 は各トリペプチドのアミノ酸配列を示しており,左端は N 末端残基,右端は C 末端残基を指す。そして,分子量が大きい順にペプチド P1,ペプチド P2,ペプチド P3 とした。

図6
図6

 これらペプチド P1 〜 P3 に対し,実験 4 と実験 5 をそれぞれ行った。

実験 4 各ペプチドにニンヒドリン溶液を加えて加熱した。すると P2 と P3 のみ紫色に発色した。

実験 5 各ペプチドに濃硝酸を加えて十分に加熱し,アンモニア水をさらに加えた。すると P1 と P2 は橙黄色に発色し,P3 は無色のままであった。

問 7 A1 〜 A5 に該当するアミノ酸は,バリン,ロイシン,フェニルアラニン,プロリンおよびアミノ酸 X のいずれであるかそれぞれ答えよ。