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物 理
第1問 地球表面上の海水は,地球からの万有引力の他に,月や太陽からの引力,さらに地球や月の運動によって引き起こされる様々な力を受ける。これらの力の一部が時間とともに変化することで,潮の満ち干が起こる(潮汐運動)。ここでは,地球の表面に置かれた物体に働く力について,単純化したモデルで考察しよう。なお,万有引力定数を G とし,地球は質量 M 1 で密度が一様な半径 R の球体とみなせるとする。以下の設問Ⅰ,Ⅱ,Ⅲに答えよ。
Ⅰ 地球の表面に置かれた物体は地球の自転による遠心力を受ける。地球の自転周期を T 1 とするとき,以下の設問に答えよ。
(1) 質量 m の質点が赤道上のある地点Eに置かれたときに働く遠心力の大きさ f 0 ,および北緯 45 ∘ のある地点Fに置かれたときに働く遠心力の大きさ f 1 を求め,それぞれ m ,R ,T 1 を用いて表せ。
(2) 設問Ⅰ(1)の地点Eにおける,地球の自転による遠心力の効果を含めた重力加速度 g 0 を求め,G ,M 1 ,R ,T 1 を用いて表せ。
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Ⅱ 次に,月からの引力と,月が地球の周りを公転運動することによって発生する力を考える。ここではこれらの力についてのみ考えるため,地球が自転しないという仮想的な場合について考察する。
月が地球の周りを公転するとき,地球と月は,地球と月の重心である点Oを中心に同一周期で円運動をすると仮定する(図1—1)。なお,図1—1において,この円運動の回転軸は紙面に垂直である。月は質量 M 2 の質点とし,地球の中心と月との距離を a とする。また,地球の中心および月から点Oまでの距離をそれぞれ a 1 ,a 2 とする。以下の設問に答えよ。
(1) 点Oから見た地球の中心および月の速さをそれぞれ v 1 ,v 2 とする。v 1 および v 2 を a ,G ,M 1 ,M 2 を用いて表せ。
(2) 点Oを原点として固定した x y 座標系を,図1—2(a)のように紙面と同一平面にとる。時刻 t = 0 において,座標が ( − a 1 − R , 0 ) である地球表面上の点を点Xとする。月の公転周期を T 2 とするとき,時刻 t における点Xの座標を,a 1 ,R ,T 2 ,t を用いて表せ。ただし,地球の自転を無視しているため,時刻 t = 0 以降で図1—2(b),(c)のように位置関係が変化することに注意せよ。
(3) 設問Ⅱ(2)の点Xに,M 1 および M 2 に比して十分に小さい質量 m の質点が置かれているときを考える。この質点について,地球が点Oを中心とした円運動をすることで生じる遠心力の大きさ f C を求め,G ,m ,M 2 ,a を用いて表せ。
(4) ある時刻において,地球表面上で月から最も遠い点をP,月に最も近い点をQとする。質量 m の質点を点Pおよび点Qに置いた場合に,質点に働く遠心力と月からの万有引力の合力の大きさをそれぞれ f P ,f Q とする。f P ,f Q を G ,m ,M 2 ,a ,R を用いて表せ。また,点Pおよび点Qにおける合力の向きは月から遠ざかる方向か,近づく方向かをそれぞれ答えよ。
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図1—1
図1—2
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Ⅲ さらに,太陽からの引力と,地球の公転運動によって発生する力について考える。これらの力についても設問Ⅱと同様に考えられるものとする。なお,地球と太陽の重心を点 O ′ とする。太陽は質量 M 3 の質点とし,地球の中心と太陽の距離を b とする。
図1—3のように,ある時刻において地球表面上で太陽から最も遠い点をSとする。質量 m の質点が点Sに置かれたとき,地球が点 O ′ を中心とした円運動をすることで生じる遠心力と太陽からの万有引力の合力の大きさを f S とする。設問Ⅱ(4)で求めた f P に対する f S の比は以下のように見積もることができる。
0 . ア < f S f P < 0 . イ
ア と イ には連続する1桁の数字が入る。表1—1の中から必要な数値を用いて計算し,ア に入る数字を答えよ。
表1—1
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図1—3
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第2問 図2—1のように,水平な x y 平面上に原点Oを中心とした長円形のレールがあり,斜線で示された − d 2 < x < d 2 ,y < 0 の領域には鉛直上向き方向に磁束密度の大きさが B の一様な磁場が加えられている。レール上に木製の台車があり,コイルを含む回路が台車に固定されている。コイルは x y 平面に平行な正方形で,一辺の長さは L ,ただし,L > d とする。コイルの四つの辺は台車の進行方向に対して平行または垂直である。上から見たとき台車とコイルの中心は一致しており,回路を含む台車の質量は m である。レールの直線部 P 0 P 2 は台車の大きさに比べて十分長いものとし,区間 P 0 P 2 上の x = 0 の点を P 1 とする。
台車が点 P 0 を速さ v 0 で x 軸正の方向(図の右方向)に出発し,その後,台車の中心が最初に P 1 ,P 2 を通過した瞬間の速さをそれぞれ v 1 ,v 2 とする。v 0 に比べて速さの変化 | v 1 − v 0 | と | v 2 − v 1 | は十分に小さい。また,v a = v 0 + v 1 2 とする。コイルの右辺が磁場に進入する瞬間と磁場から出る瞬間の台車の中心位置をそれぞれ Q 1 ,Q 2 とする。同様に,左辺が磁場に進入する瞬間と出る瞬間の台車の中心位置をそれぞれ Q 3 ,Q 4 とする。台車に働く摩擦力や空気抵抗,コイル自身の電気抵抗は無視できる。
Ⅰ 図2—2のように,回路が正方形の一巻きコイルと抵抗値 R の抵抗からなる場合に,台車が最初に区間 P 0 P 2 を走る時の運動を考える。
(1) 台車の中心が Q 1 から Q 2 へ移動する運動について,以下の ア と イ に入る式を v a ,L ,d ,B ,m ,R のうち必要なものを用いて表せ。磁束の符号は鉛直上向きを正とする。
速さに比べて速さの変化が十分に小さいため,台車が Q 1 Q 2 間を移動するのにかかる時間は Δ t = d v a と近似できる。移動の前後でのコイルを通る磁束の変化量 Δ Φ は ア であり,この間の誘導起電力の平均値は E ― = − Δ Φ Δ t と書くことができる。移動中に誘導起電力が E ― で一定であると近似すると,この間に抵抗で発生するジュール熱の総和は イ と書ける。
(2) v 1 を v 0 ,L ,d ,B ,m ,R のうち必要なものを用いて表せ。
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図2—1
図2—2
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Ⅱ 正方形の一巻きコイルに,抵抗値 R の抵抗,起電力 V で内部抵抗の無視できる電池,理想的なダイオードが接続された回路を台車に載せて走らせる。理想的なダイオードとは,順方向には抵抗なしに電流を通し,逆方向には電流を流さない素子である。図2—3は,区間 P 0 P 2 を走る台車を上から見たものである。P 0 を出発した台車は磁場を通過することにより減速した。
台車が最初に区間 P 0 P 2 を走る時の運動について,v a ,L ,d ,B ,m ,R ,V のうち必要なものを用いて設問(1)~(3)に答えよ。ただし,設問Ⅰと同様の近似を用いることができるものとする。
(1) 台車の中心が Q 1 から Q 2 へ移動する間にコイルに流れる電流の大きさを求めよ。
(2) この電流によりコイルが磁場から受けるローレンツ力を求めよ。力の符号は,x 軸正の向きを正とする。
(3) 同様に,台車の中心が Q 3 から Q 4 へ移動する間のローレンツ力を求めよ。
台車はレール上を繰り返し回りながら徐々に速度を下げ,やがて一定の速さ v ∞ で運動するようになった。設問(4),(5)に答えよ。
(4) n 回目に P 2 を通り抜けた時の台車の運動エネルギー K n を n の関数としてグラフに描いた場合,図2—4の①~④のうちどの形が最も適切か答えよ。
(5) 速さ v ∞ を v 0 ,L ,d ,B ,m ,R ,V のうち必要なものを用いて表せ。
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図2—3
図2—4
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Ⅲ 2本の正方形一巻きコイルと接続パネルからなる回路を台車に載せて走らせる。図2—5は区間 P 0 P 2 を走る台車を上から見たものである。2本のコイルの両端は接続パネルの端子A,B,C,Dに接続されている。接続パネルは図2—6に示すような抵抗と理想的なダイオードからなる回路である。設問Ⅰと同様の近似を用いることができるものとし,台車が最初に区間 P 0 P 2 を走る時の運動について,以下の設問に答えよ。2本のコイルは上から見たときに完全に重なっているとみなすことができ,接続パネル以外の部分では互いに絶縁されている。また,接続パネルの大きさは無視できるものとする。
(1) 端子Dの電位をゼロとする。台車の中心が Q 1 Q 2 間を移動する間の端子A,Bの電位をそれぞれ求め,v a ,L ,d ,B ,m のうち必要なものを用いて表せ。
(2) 抵抗 R 1 と R 2 の抵抗値 R 1 ,R 2 は R 1 + R 2 = 6 R を満たしながら 0 < R 1 < 6 R の範囲で値を調節することができる。区間 P 0 P 2 を通り過ぎた後の台車の速さの変化 | v 2 − v 0 | を v 0 ,L ,d ,B ,m ,R 1 ,R 2 のうち必要なものを用いて表せ。また,| v 2 − v 0 | が最小となるような R 1 を求め,R を用いて表せ。
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図2—5
図2—6
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第3問 図3—1のようにピストンのついた断面積一定のシリンダーがある。ピストンには棒がついており,気密を保ちながら鉛直方向に滑らかに動かすことができる。シリンダーとピストンで囲まれた空間は,シリンダー内のある位置に水平に固定された特殊な膜によって領域1と領域2に仕切られている。領域1と領域2には合計1モルの単原子分子理想気体Xが,領域2には気体Xのほかに1モルの単原子分子理想気体Yが入っている。図3—2のように気体Xの分子は膜を衝突せず通過できるのに対し,気体Yの分子は膜を通過できない。シリンダーとピストンで囲まれた空間の外は真空であり,膜の厚さや,膜,シリンダー,ピストンの熱容量,気体分子に対する重力の影響は無視できる。ピストンは断熱材でできている。気体Xの分子1個の質量を m X ,気体Yの分子1個の質量を m Y ,シリンダーの内側の断面積を S ,アボガドロ定数を N A ,気体定数を R とする。鉛直上向きに z 軸をとる。以下の各過程では気体の状態は十分ゆっくり変化するため,領域1の圧力と領域2の圧力はそれぞれ常に均一であり,気体XとYが熱のやりとりをすることでシリンダー内の温度は常に均一であるとみなせる。
以下の設問に答えよ。
Ⅰ はじめにピストンは固定されており,領域1の体積は V 1 ,圧力は p 1 ,領域2の体積は V 2 ,圧力は p 2 ,シリンダー内の温度は T であった。気体分子の z 方向の運動に注目し,気体XとYの分子の速度の z 成分の2乗の平均をそれぞれ v z 2 ― ,w z 2 ― とする。気体Yの分子は,膜に当たると膜に平行な速度成分は一定のまま弾性衝突してはね返されるとする。同様に,気体XとYの分子はピストンおよびシリンダーの面に当たると面に平行な速度成分は一定のまま弾性衝突してはね返されるとする。分子間の衝突は考慮しなくてよいほど気体は希薄である。
(1) ピストンが気体Xから受ける力の大きさの平均を F 1 とする。F 1 を,m X ,v z 2 ― ,N A ,S ,V 1 ,V 2 のうち必要なものを用いて表せ。
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(2) シリンダーの底面が気体XとYから受ける合計の力の大きさの平均を F 2 とする。F 2 を,m X ,m Y ,v z 2 ― ,w z 2 ― ,N A ,S ,V 1 ,V 2 のうち必要なものを用いて表せ。
(3) ボルツマン定数を k として,各分子は一方向あたり平均して 1 2 k T の運動エネルギーを持つ。p 1 と p 2 を,R ,T ,V 1 ,V 2 のうち必要なものを用いて表せ。
(4) 気体XとYの内部エネルギーの合計を,R ,T を用いて表せ。
図3—1
図3—2 (膜近傍の拡大図)
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Ⅱ 次にピストンを設問Ⅰの状態からゆっくりわずかに押し下げたところ,領域1の体積が V 1 から V 1 − Δ V 1 に,領域1の圧力が p 1 から p 1 + Δ p 1 に,領域2の圧力が p 2 から p 2 + Δ p 2 に,シリンダー内の温度が T から T + Δ T に変化した。この過程で気体と外部の間で熱のやりとりはなかった。以下の設問では,Δ p 1 ,Δ p 2 ,Δ T ,Δ V 1 はそれぞれ p 1 ,p 2 ,T ,V 1 + V 2 より十分小さな正の微小量とし,微小量どうしの積は無視できるとする。
(1) 温度変化 Δ T を,p 1 ,R ,Δ V 1 を用いて表せ。
(2) Δ p 1 p 1 = ア Δ V 1 V 1 + V 2 が成り立つ。ア に入る数を求めよ。
Ⅲ 設問Ⅰの状態からピストンについている棒を取り外し,おもりをシリンダーに接しないようにピストンの上に静かに乗せたところ,領域1と領域2の体積,圧力,温度に変化はなかった。さらに図3—3のようにヒーターをシリンダーに接触させ気体を温めたところ,ピストンがゆっくり押し上がった。領域1の体積が 2 V 1 になったところでヒーターをシリンダーから離した。
(1) このときのシリンダー内の温度を,T ,V 1 ,V 2 を用いて表せ。
(2) 気体XとYが吸収した熱量の合計を,R ,T ,V 1 ,V 2 を用いて表せ。
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図3—3
第1問 潮の満ち干の力 ― 地球は回らずに「ゆらゆら」まわる 出題の意図(東大) 【万有引力と物体の回転運動】回転する物体の運動に関する基本的な理解、万有引力や遠心力の作用についての理解を問うています。月と太陽の作用による潮汐運動を題材として、自然現象を単純化したモデルで考える問題となっており、物体の運動を正しく理解し物理法則を適切に用いる柔軟な思考力を求めています。また、作用する力の大きさがどれくらいかという定量的観点も物理では重要であり、問 III では与えられた数値から求める量を概算する力を試しています。
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 潮の満ち干(潮汐)を起こす力を、簡単なモデルで考える問題。地球の上の物は、地球の引力のほかに、月や太陽の引力と、地球の運動による見かけの力(遠心力)を受ける。
Ⅰは地球の自転による遠心力。Ⅱが本題で、地球と月が、2つの重心 O のまわりを同じ周期で回る。ここで大事なのは、地球は自転しないとしているので、地球は回転せずに「平行移動しながら」円をえがく こと。すると地球の上のどの点も、地球の中心と同じ半径の円をえがき、遠心力はどこでも同じ大きさ・同じ向きになる。
その「どこでも同じ遠心力」と、「近いほど強い月の引力」の差が、潮の力。月に近い側では引力が勝って月の側へ、遠い側では遠心力が勝って月と反対側へ引かれる。だから海は両側にふくらむ。Ⅲでは、太陽の潮の力を月とくらべる。
Ⅰ(1) 自転で、地面の上の点は地軸のまわりに周期 T 1 で円をえがく。遠心力は m × ( 円の半径 ) × ω 2 で、ω = 2 π T 1 。赤道の点 E では円の半径は R 。北緯 45 ∘ の点 F では、地軸までの距離が R cos 45 ∘ = R 2 なので、遠心力も 1 2 倍になる。
答え f 0 = 4 π 2 m R T 1 2 , f 1 = 2 2 π 2 m R T 1 2
Ⅰ(2) 赤道では、遠心力は地球の中心と反対向き(真上)で、引力 G m M 1 R 2 (真下)とちょうど逆向き。だから、遠心力を含めた重力はその差:
m g 0 = G m M 1 R 2 − m R ( 2 π T 1 ) 2
Ⅱ(1) 地球と月は、重心 O のまわりを同じ周期で回る。重心の位置から、O までの距離は質量に反比例して
a 1 = M 2 M 1 + M 2 a , a 2 = M 1 M 1 + M 2 a
地球の円運動の向心力は、月の引力 G M 1 M 2 a 2 。
M 1 v 1 2 a 1 = G M 1 M 2 a 2
a 1 を入れて v 1 について解くと答えになる。月についても同じように M 2 v 2 2 a 2 = G M 1 M 2 a 2 から v 2 が出る。
答え v 1 = M 2 G a ( M 1 + M 2 ) , v 2 = M 1 G a ( M 1 + M 2 )
Ⅱ(2) 地球の中心は、O を中心に半径 a 1 の円を周期 T 2 でまわる。t = 0 で中心は ( − a 1 , 0 ) にあり、図1—2のように回るので、時刻 t の中心は
( − a 1 cos 2 π t T 2 , − a 1 sin 2 π t T 2 )
地球は自転しないので、地球は向きを変えずに平行移動する。だから点 X は、いつも地球の中心から x の負の向きに R ずれた位置にある。中心の座標の x に − R を足すと答えになる。
答え ( − a 1 cos 2 π t T 2 − R , − a 1 sin 2 π t T 2 )
Ⅱ(3) Ⅱ(2) から分かるように、点 X は、地球の中心と同じ半径 a 1 ・同じ周期 T 2 の円をえがく(中心だけがずれた円)。だから点 X の質点が受ける遠心力は、地球の中心にある質点が受けるものと同じ:
f C = m a 1 ( 2 π T 2 ) 2
地球の中心の円運動の向心力は月の引力なので、M 1 a 1 ( 2 π T 2 ) 2 = G M 1 M 2 a 2 。これを使うと、f C は「地球の中心で月が m を引く力」と同じ大きさになる。向きは、どの点でもいつも月と反対向き。
Ⅱ(4) 遠心力はどこでも同じで G m M 2 a 2 (月と反対向き)。月の引力は、月までの距離で変わる。
点 P(月から一番遠い、距離 a + R ):月の引力 G m M 2 ( a + R ) 2 は遠心力より弱いので、合力は遠心力の側、つまり月から遠ざかる向き 。大きさは2つの差。
点 Q(月に一番近い、距離 a − R ):月の引力 G m M 2 ( a − R ) 2 が遠心力より強いので、合力は月に近づく向き 。大きさは2つの差。
どちらも地球の中心から外向きの力なので、海は月の側と反対側の両方にふくらむ。ふくらみが2つあるので、この問題の模型(地球は自転しない)では月が1周する間に満ち潮が2回来る。本物の地球は1日に1回自転してこの2つのふくらみの下を通るので、1日に満ち潮がほぼ2回ある。
答え f P = G m M 2 { 1 a 2 − 1 ( a + R ) 2 } (月から遠ざかる向き) , f Q = G m M 2 { 1 ( a − R ) 2 − 1 a 2 } (月に近づく向き)
Ⅲ f S = G m M 3 { 1 b 2 − 1 ( b + R ) 2 }
比は f S f P = M 3 { b − 2 − ( b + R ) − 2 } M 2 { a − 2 − ( a + R ) − 2 } 。
R は a や b よりずっと小さいので、1 b 2 − 1 ( b + R ) 2 ≈ 2 R b 3 と近似できる(a も同じ)。すると
f S f P ≈ M 3 M 2 ( a b ) 3
表1—1の値(M 2 = 7.3 × 10 22 kg、M 3 = 2.0 × 10 30 kg、a = 3.8 × 10 8 m、b = 1.5 × 10 11 m)を入れると、M 3 M 2 ≈ 2.7 × 10 7 、( a b ) 3 ≈ 1.6 × 10 − 8 で、比は 0.4 と 0.5 のあいだに入る。
太陽が地球を引く力は月の約 176 倍もあるのに、潮の力は月の半分ほど。潮の力は「近い所と遠い所の引く強さの差」なので、距離の3乗で効き、太陽は遠すぎるから。
答え ア = 4 ( f S f P = M 3 { b − 2 − ( b + R ) − 2 } M 2 { a − 2 − ( a + R ) − 2 } = 0.457 )
第2問 磁場の帯を通りぬけるコイルの台車 出題の意図(東大) 【誘導起電力と電気回路】磁場中を運動する回路を考えることで、誘導起電力とローレンツ力、そしてジュール熱と運動エネルギーのエネルギー収支を問うています。ダイオードや電池などを含む電気回路と力学的な運動を組み合わせた系全体を、統合的に理解できる思考力を求めています。
東大の解答例(選ぶ問題だけ) Ⅱ(4):③ 下の答えと全部一致
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 台車にのせた正方形のコイル(1辺 L )が、幅 d のせまい磁場の帯(d < L )を通りぬける問題。帯がコイルより細いので、磁場の中に入る辺は、いつも1本だけ。右の辺が帯を横切るあいだ(Q 1 から Q 2 )はコイルを通る磁束がふえ、左の辺が横切るあいだ(Q 3 から Q 4 )は減る。
磁場の中の辺には起電力 v B L (速さ × 磁場 × 辺の長さ)が生まれ、電流が流れると、その辺は磁場から力(ブレーキ)を受ける。減った運動エネルギー = 回路で使われたエネルギー (抵抗の熱や、電池の充電)という関係で、速さの変化が求まる。
Ⅱでは電池とダイオードを入れ、何周も回すと、ある速さで電流が流れなくなって一定の速さに落ち着く。Ⅲでは2本のコイルを接続パネルでつなぎ、抵抗の分け方でブレーキの強さがどう変わるかを見る。
Ⅰ(1) ア :Q 1 ではコイルの右の辺が帯の左の端にいて、コイルの中に磁場は無い。Q 2 では右の辺が帯の右の端に来て、帯の幅 d の全体がコイルの内側に入っている。帯の中の磁場は上向きの B で、コイルの中の帯の面積は L × d 。磁束の変化は、この面積 × B 。
イ :平均の起電力の大きさは E ― = | Δ Φ | Δ t = B L d d / v a = B L v a (右の辺の v B L と同じ)。起電力が一定なら、抵抗で出る熱は「1秒あたり E ― 2 R × 時間 Δ t 」:
( B L v a ) 2 R · d v a
Ⅰ(2) P 0 から P 1 (台車の中心が x = 0 )までに、磁場を横切るのは右の辺だけ(左の辺が帯に入る Q 3 は P 1 より先)。だから、この区間で減った運動エネルギーが、Ⅰ(1) の熱に等しい:
1 2 m v 0 2 − 1 2 m v 1 2 = B 2 L 2 v a d R
左辺は 1 2 m ( v 0 + v 1 ) ( v 0 − v 1 ) = m v a ( v 0 − v 1 ) と書けるので、v a が消えて
v 0 − v 1 = B 2 L 2 d m R
速さによらず、1回通るごとに同じだけ速さが減る(ブレーキの力が速さに比例し、帯を通る時間が速さに反比例するので、打ち消し合う)。
Ⅱ(1) 右の辺が帯を横切るあいだ、コイルには起電力 B L v a が生まれる。ダイオードは、この起電力が電流を流そうとする向きを通す向きに入っている。一方、電池 V はそれと逆向きに電流を流そうとする。
だから回路にかかる正味の電圧は B L v a − V (起電力が電池に勝つ分)で、それが抵抗 R にかかる。速さが十分大きく B L v a > V なので、電流が流れる。
Ⅱ(2) 磁場の中にあるのは右の辺(長さ L )だけで、そこを流れる電流 I が受ける力の大きさは I B L 。
向きは、レンツの法則(誘導電流は、動きをさまたげる向きの力を受ける)から、進む向きと逆、つまり x の負の向き。Ⅱ(1) の電流を入れると答えになる。
Ⅱ(3) 左の辺が帯を横切るあいだは、コイルを通る磁束が減るので、起電力の向きが右の辺のときと逆になる。この向きの電流は、ダイオードが通さない。電池の電圧も、ダイオードの逆向きなので電流は流れない。
Ⅱ(4) 1周のうちブレーキがかかるのは右の辺が帯を横切るときだけで、その力の大きさは Ⅱ(2) の B L ( B L v − V ) R 。速さ v が V B L に近づくほど、力は 0 に近づく。
1周で減る運動エネルギーは、この力 × 帯の幅 d なので、v が大きいうちは大きく減り、V B L に近づくにつれて減り方がどんどん小さくなる。どこまで行っても、ちょうど V B L に着いて減り方が急に 0 になることはない(近づくほどブレーキが弱くなるので、少しずつ近づいていくだけ)。
だから K n のグラフは、下がりながら傾きがだんだんゆるやかになり(下にふくらんだ形)、一定の値 K ∞ = 1 2 m v ∞ 2 に上から近づいていくが、ぴったり着くことはない形。これが③。①と②は、はじめ減り方が小さく途中で大きくなる形で、速いときほど大きく減ることと合わない。②と④は、ある周で急に平らになる(ぴったり着く)形で、近づくほどブレーキが弱くなることと合わない。
Ⅱ(5) 電流が流れるのは起電力 B L v が電池 V に勝つときだけ。速さが下がって B L v = V になると、右の辺が帯を横切っても電流が流れなくなり、ブレーキもかからない。そこからは速さが変わらない:
B L v ∞ = V
これを v ∞ について解くと答えになる。v 0 や R にはよらない。磁場が強いほど、最後の速さは遅くなる。減った運動エネルギーの一部は、電池の充電にもどっている。
Ⅲ(1) 2本のコイルは上から見て重なっているので、右の辺が帯を横切るあいだ、どちらのコイルにも同じ起電力 v a B L が生まれる。
接続パネルでは、コイル1の端 B とコイル2の端 C が、R 1 と R 2 のあいだの同じ点につながっている。図2—5のとおり、コイル1の両端が A と B、コイル2の両端が C と D なので、2本のコイルは D → コイル2 → C(B と同じ点)→ コイル1 → A と2段に重なっている。パネルの中では、A からダイオード(A から入る向きを通す)と R 1 を通って真ん中の点へ、真ん中の点から R 2 とダイオード(D へ出る向きを通す)を通って D へつながっている。D を 0 とすると、1段目で v a B L 上がって B、2段目でさらに v a B L 上がって A になる。
Ⅲ(2) Ⅲ(1) から、R 1 (A と真ん中のあいだ)にも R 2 (真ん中と D のあいだ)にも、同じ v a B L の電圧がかかる。右の辺が帯を横切るあいだ、ダイオードはこの向きを通すので、2つの抵抗で出る熱の合計は
( ( v a B L ) 2 R 1 + ( v a B L ) 2 R 2 ) d v a
左の辺が帯を横切るあいだは起電力が逆向きになり、2つのダイオードがどちらも電流を止めるので、熱は出ない。
Ⅰ(2) と同じく、減った運動エネルギー m v a | v 2 − v 0 | がこの熱に等しいとおくと、v a が消えて
| v 2 − v 0 | = B 2 L 2 d m ( 1 R 1 + 1 R 2 ) = B 2 L 2 d m · R 1 + R 2 R 1 R 2
R 1 + R 2 = 6 R が一定なので、速さの減りが一番小さいのは R 1 R 2 が一番大きいとき。和が一定の2つの数の積は、2つが等しいときに一番大きい。
答え | v 2 − v 0 | = B 2 L 2 d ( R 1 + R 2 ) m R 1 R 2 , R 1 = 3 R
第3問 膜で仕切った2種類の気体 ― ピストンに見えない気体 Y 出題の意図(東大) 【混合気体の熱力学】気体分子運動論の基礎的な理解と、気体の状態方程式や様々な状態変化に対する熱力学の法則についての理解を問うています。2種類の気体が混合されていて、片方の気体しか通さない膜によって仕切られているという設定を題材にすることで、状況に応じて的確に物理現象を把握する力を問いました。なお、気体分子運動論を用いなくても気体ごとに独立な状態方程式を考えることで設問 I (3)や II, III を解答することも可能です。
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 シリンダーを特別な膜で上(領域1)と下(領域2)に仕切る。気体 X(1モル)は膜を素通りしてシリンダー全体を動きまわり、気体 Y(1モル)は膜を通れず、下の領域2に閉じこめられている。
分子の運動から圧力を出す(気体の分子運動論)のがⅠ。カギは、ピストンをたたくのは X だけで、Y はピストンに届かない こと。だからピストンから見ると、Y は「見えない」。でも Y は X と熱をやりとりして同じ温度になるので、温度を上げ下げするときには Y の分のエネルギーも必要になる。
Ⅱ・Ⅲでは、この「力には効かないが、熱には効く」Y のせいで、X だけのときとは違う結果になる。Y は「熱をためる入れもの」のようにはたらく。
Ⅰ(1) X の分子は膜を素通りするので、底からピストンまで、高さ H = V 1 + V 2 S のあいだを往復する。
速度の z 成分が v z の分子1個は、ピストンに当たるたびに運動量を 2 m X v z 渡し、2 H v z ごとにもどってくる。だから、ピストンに与える平均の力は
2 m X v z 2 H / v z = m X v z 2 H
N A 個の分の合計で、v z 2 を平均 v z 2 ― にかえ、H を入れると答えになる。
Ⅰ(2) 底には、X と Y の両方が当たる。X の分は Ⅰ(1) と同じ(高さ H を往復)。
Y の分子は膜ではね返されるので、底と膜のあいだ、高さ V 2 S を往復する。同じ考え方で、Y が底に与える力は N A m Y w z 2 ― V 2 / S 。2つを足すと答えになる。
答え F 2 = N A S ( m X v z 2 ― V 1 + V 2 + m Y w z 2 ― V 2 )
Ⅰ(3) 1方向あたりの運動エネルギーの平均が 1 2 k T なので、1 2 m X v z 2 ― = 1 2 k T 、つまり m X v z 2 ― = k T 。Y も同じ温度なので m Y w z 2 ― = k T 。分子の重さによらず、同じ温度なら「分子1個が壁をたたく強さ」は同じになる。
p 1 = F 1 S = R T V 1 + V 2
領域2の圧力は底が受ける力から p 2 = F 2 S で、X の分に Y の分 R T V 2 が足される。X は全体に広がった1モルの気体、Y は領域2だけの1モルの気体として、それぞれの圧力を足したものになっている。
答え p 1 = R T V 1 + V 2 , p 2 = R T V 1 + V 2 + R T V 2
Ⅰ(4) 単原子分子の気体の内部エネルギーは、1モルあたり 3 2 R T (3方向 × 1 2 k T × N A )。X と Y で合わせて2モルなので、2倍になる。
Ⅱ(1) 熱の出入りはないので、ピストンが気体にした仕事が、そのまま内部エネルギーのふえた分になる。
ピストンを押すときに押し返してくるのは X の圧力 p 1 だけ(Y はピストンに届かない)なので、体積を Δ V 1 減らす仕事は p 1 Δ V 1 。一方、内部エネルギーは Ⅰ(4) より 3 R T なので、温度が Δ T 上がると 3 R Δ T ふえる:
p 1 Δ V 1 = 3 R Δ T
Ⅱ(2) p 1 = R T V 1 + V 2 で、押しこんだあとは温度が T + Δ T 、全体の体積が V 1 + V 2 − Δ V 1 。小さい量の積を無視すると、圧力の変化の割合は、温度の割合の変化と体積の割合の変化の和:
Δ p 1 p 1 = Δ T T + Δ V 1 V 1 + V 2
Ⅱ(1) の Δ T = p 1 Δ V 1 3 R と p 1 = R T V 1 + V 2 から、Δ T T = 1 3 · Δ V 1 V 1 + V 2 。これを足すと ア が決まる。
X だけの断熱変化なら、この数は 5 3 になる。Y が仕事の分のエネルギーを半分もらってしまうので、温度の上がり方が小さく、圧力の上がり方もゆるやかになる。
Ⅲ(1) おもりをのせてもピストンは動かなかったので、おもりの重さは X の圧力 p 1 による力とつり合っている。ゆっくり温めるあいだも、ピストンにかかるのはこの同じおもりなので、p 1 は一定のまま。
p 1 = R T V 1 + V 2 で、膜の位置は変わらないので領域2の体積は V 2 のまま、全体の体積は 2 V 1 + V 2 になる。p 1 が同じなので
R T V 1 + V 2 = R T ′ 2 V 1 + V 2
Ⅲ(2) 吸収した熱は、内部エネルギーのふえた分と、気体がした仕事の和(熱力学の第1法則)。
内部エネルギーのふえた分は 3 R ( T ′ − T ) = 3 R T V 1 V 1 + V 2 。気体(X)がピストンを押した仕事は、一定の圧力 p 1 × ふえた体積 V 1 で R T V 1 V 1 + V 2 。2つを足すと答えになる。
Y がいなければ内部エネルギーの分は半分になり、必要な熱は少なくてすむ。Y は仕事はしないが、同じ温度まで上げるための熱を余分に吸いこむ。