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物 理
第1問 バイオリンの弦は弓でこすることにより振動する。弓を当てる力や動かす速さの影響を,図1—1に示すモデルで考えてみよう。長さ L の軽い糸を張力 F で水平に張り,糸の中央に質量 m の箱を取り付ける。箱は,糸が水平の状態で水平面と接しており,糸の両端を結ぶ線分の垂直二等分線上をなめらかに動くことができる。図1—1(b)のように,糸の両端を結ぶ線分の中点(太矢印の始点)を箱の変位 x の原点とし,太矢印の向きを変位および力の正の向きとする。箱の変位は糸の長さに比べて十分小さく,糸の張力は一定と見なすことができる。図1—1(c)のように,箱の上には正の向きに一定の速さ V で動いているベルトがあり,箱に接触させることができるようになっている。ベルトから見た箱の速度をベルトと箱の相対速度と定義する。ベルトと箱が接触している状態で相対速度が 0 のとき,ベルトから箱に静止摩擦力が働く。静止摩擦係数を μ とする。ベルトから箱に働く動摩擦力および糸と箱に働く空気抵抗を無視する。
図1—1
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Ⅰ ベルトと箱が接触していないときの箱の運動を考える。図1—1(b)のように,糸の両端を結ぶ線分と糸がなす角を θ [ r a d ] とする。必要があれば,| θ | が 1 に比べて十分小さいときに成り立つ近似式 sin θ ≒ tan θ ≒ θ を用いてよい。
(1) 糸から箱に働く復元力の大きさを F ,θ を用いて表せ。また,この復元力の大きさを L ,F ,x を用いて表せ。
(2) 箱に初期変位か初期速度を与えると,箱は単振動をする。単振動の周期 T を L ,F ,m を用いて表せ。
Ⅱ 箱が単振動をしているとき,ベルトを一定の垂直抗力 N で箱に接触させたところ,ベルトと箱がくっついている状態と滑っている状態が交互に現れた。箱の変位 x が 0 ,箱の速度が V (すなわち,ベルトと箱の相対速度が 0 )となる瞬間があり,この瞬間を時間の原点 t = 0 とする。t > 0 で,箱の変位 x は図1—2のOPQRP′Q′R′に示すように周期的に変化する(2周期分を示している)。OPは直線,PQは正弦曲線の一部,QRは直線,RP′Q′R′はOPQRの繰り返しである。また,直線OPは点Pで正弦曲線O′PQと接している。点Oから点Rまで箱の1周期の運動に要する時間を T ′ とする。
図1—2
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(1) 0 ≦ t ≦ 2 T ′ の範囲で,(a)箱の速度,(b)ベルトと箱の相対速度,(c)糸から箱に働く復元力,(d)ベルトから箱に働く静止摩擦力,を表す図を,図1—3の(ア)〜(オ)からそれぞれ選べ。
(2) 箱がベルトに対して滑り始める点Pでの箱の変位 s を L ,F ,μ ,N を用いて表せ。
(3) PQ間では,箱は問Ⅰ(2)で考えた単振動と同じ運動をする。箱の最大変位 A を L ,F ,m ,V ,μ ,N を用いて表せ。
(4) ベルトから箱に働く垂直抗力 N を大きくすると,箱の最大変位 A と箱の1周期の運動に要する時間 T ′ は,それぞれ,大きくなるか,小さくなるか,変わらないか,を理由とともに答えよ。理由の説明に図を用いてよい。
図1—3
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第2問 図2—1(a)のように,導体でできた中空の円筒を鉛直に立て,その中に円柱形の磁石をN極が常に上になるようにしてそっと落としたら,やがてある一定の速さで落下した。これは,磁石が円筒中を通過するとき,電磁誘導によりその周りの導体に電流が流れるためである。磁石の落下速度がどのように決まるかを理解するために,導体の円筒を,図2—1(b)のように,等間隔で積み上げられたたくさんの閉じた導体リングで置き換えて考えてみる。以下の問に答えよ。
Ⅰ まず,図2—2のように,1つのリングだけが水平に固定されておかれており,そのリングの中心を磁石が一定の速さ v で下向きに通り抜ける場合を考える。z 座標を,リングの中心を原点として,鉛直上向きが正になるようにとる。磁石は z 軸に沿って,z 軸の負の向きに運動することに注意せよ。
(1) 磁石がリングに近づくときと遠ざかるとき,それぞれにおいて,リングに流れる電流の向きと,その誘導電流が磁石に及ぼす力の向きを答えよ。電流の向きは上向きに進む右ねじが回転する向きを正とし,正負によって表せ。
(2) 磁石の中心の座標が z にあるとき,z = 0 に置かれたリングを貫く磁束 Φ ( z ) を,図2—3のように台形関数で近似する。すなわち磁束は,区間 − b ≦ z ≦ − a で 0 から最大値 Φ 0 に一定の割合で増加し,区間 a ≦ z ≦ b で最大値 Φ 0 から再び 0 に一定の割合で減少するとする。ここで磁束の正の向きを上向きにとった。磁石が通過する前後に,このリングに一時的に誘導起電力が現れる。その大きさを Φ 0 ,v ,a ,b を用いて表せ。
(3) リング一周の抵抗を R としたとき,誘導起電力によって流れる電流の時間変化 I ( t ) のグラフを描け。リングに電流が流れ始める時刻を時間 t の原点にとり,電流の正負と大きさ,電流が変化する時刻も明記せよ。ただし,リングの自己インダクタンスは無視してよい。
Ⅱ 次に,図2—1(b)のように,鉛直方向に問Ⅰで考えたリングを密に積み上げ,その中を問Ⅰと同じ磁石が落下する場合を考える。鉛直方向の単位長さあたりのリングの数を n とする。
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(1) リングに電流が流れるとジュール熱が発生する。磁石が速さ v で落下するとき,積み上げられたリング全体から単位時間当たりに発生するジュール熱を求めよ。
(2) 磁石の質量を M ,重力加速度を g としたとき,エネルギーの保存則を用いると磁石が一定の速さで落下することがわかる。その速さ v を求めよ。ただし,このとき空気の抵抗は無視できるものとする。
Ⅲ 図2—1(a)で,磁石のN極とS極を逆にして実験を行うと,磁石はどのような運動を行うか。その理由も示せ。
図2—1
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図2—2
図2—3
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第3問 図3—1のように,水面上で,波長 λ の波が左から右にまっすぐ進み壁に垂直に衝突している。壁に沿った方向を x 方向とし,壁には自由にすき間を開けることができるようになっているとする。すき間を通った波を壁の右側の点Pで観測する。以下の問に答えよ。
Ⅰ 点Pは十分遠方にあるとし,図3—1のように x = 0 から見たP方向の角度を θ とする。問Ⅰ(1),(2)で開けるすき間はすべて同じ幅とする。また,そのすき間の幅は波長 λ に比べて小さいので,各すき間からは,そこを中心とする円形波が図の右側に広がっていくと考えてよい。
(1) 壁の x = 0 の位置にすき間Aを開け,わずかにずれた位置 x ( x > 0 ) にすき間Bを開ける。すき間Bを開ける位置を少しずつ x の正の方向に動かしていくと,x = b になったとき,それまで振動していた点Pでの水面が初めて動かなくなった。b を λ と θ を用いて表せ。ただし点Pは十分に遠いので,すき間Bから見たP方向の角度も θ としてよい。
(2) 問Ⅰ(1)のように x = 0 と x = b にすき間がある状態で,すき間Cを x = c ( 0 < c < b ) に開けると,点Pでの水面は振動を始めた。さらにもう一つ,x = b にできるだけ近い位置にすき間Dを開けることによって,点Pでの水面の振動を止めたい。すき間Dの x 座標を求めよ。
Ⅱ 次にすき間の幅が広い場合を考えよう。点Pは問Ⅰと同じ位置にあるとする。すき間の一方の端を x = 0 ,他方の端を x = w とする(図3—2)。以下の問については,すき間内の各点から円形波(素元波)が右に広がっていき,その重ね合わせが点Pでの水面の振動になると考えよ。
(1) すき間内のある位置 x = x 1 ( 0 < x 1 < w ) から点Pまでの距離と,すき間の端 x = 0 から点Pまでの距離の差を,x 1 と θ を用いて表せ。
(2) x = 0 から出た円形波の変位が点Pでゼロである瞬間に,すき間内の各点 x = x 1 ( 0 < x 1 < w ) からくる円形波のすべての変位が点Pで同符号である(強め合う)ためには,すき間の幅 w はどのような条件を満たしていなければならないか。
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(3) すき間の幅を w = 0 から w = 2 b まで増やしたとき点Pでの波の振幅はどのように変化するか。理由を付けて答えよ。ただし b は問Ⅰ(1)で求めた値である。
Ⅲ 今度は点Pは壁の近くにあるとし,壁との距離を L とする。図3—3のように,点Pの真正面にすき間を開ける。そのすき間の幅をゼロから増やしていくと,幅が 2 r になったとき点Pでの振幅が最大になった。r を L と λ を用いて表せ。
図3—1
図3—2
図3—3
第1問 弓でこする弦のモデル(くっつく・すべる) 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 バイオリンの弦を弓でこすると音が出るしくみを、「張った糸の真ん中の箱」と「一定の速さで動くベルト」で考える問題。
Ⅰ :糸を横にずらすと、張力が箱を元にもどそうとする。ずれが小さいとき、その力はずれに比例するので、箱はばねにつないだのと同じ単振動をする。
Ⅱ :そこへ速さ V のベルトを当てる。ベルトと箱の間は静止摩擦だけ(動摩擦は無視)。箱の速さがベルトと同じ V の間は、静止摩擦でくっついて いっしょに動く。糸の力が強くなって静止摩擦で支えきれなくなるとすべり 出し、すべっている間は摩擦が 0 なのでⅠと同じ単振動をする。このくっつく・すべるのくりかえしが、弓でこする弦の動き(スティック・スリップ)。
Ⅰ(1) 箱が x ずれると、左右の糸はそれぞれ角度 θ だけ傾く。張力 F の、箱をもどす向き(x の負の向き)の成分は1本あたり F sin θ で、2本あるので
2 F sin θ ≈ 2 F θ
糸の片側の長さは L 2 なので、角度が小さいとき θ ≈ tan θ = x L / 2 = 2 x L 。入れると、力は x に比例する形になる。
Ⅰ(2) 復元力が k x (k = 4 F L )の形なので、ばね定数 k のばね振り子と同じ。角振動数は
ω = k m = 4 F m L
周期は T = 2 π ω 。4 = 2 が 2 π の2とうまく約分される。
糸を強く張る(F を大きくする)ほど周期が短く、音が高くなる。
Ⅱ(1) 図1—2の位置のグラフを区間ごとに読んでから、それぞれの量を考える。
OP(まっすぐ):くっついていて、箱は一定の速さ V で x = 0 から s まで進む。PQ(正弦曲線):すべっていて単振動。Q で速さが再び V になって、またくっつく。QR(まっすぐ):くっついて x = − s から 0 まで進む。
(a) 箱の速度:くっついている間は V で一定、すべっている間は単振動の速度で、一度負になってまた V にもどる。「正の一定値 → へこむ曲線 → 一定値」の形。
(b) 相対速度(箱の速度 − V ):(a) を V だけ下げたもの。くっついている間は 0、すべっている間は負。
(c) 糸からの復元力:− k x なので、位置のグラフを上下さかさまにした形。t = 0 で 0 から始まり、まず負へまっすぐ下がる。
(d) 静止摩擦力:くっついている間は、糸の力とつり合うので + k x 。OP で 0 から μ N までまっすぐ上がり、P で支えきれずにすべって 0 にとぶ。すべっている間は 0。Q でくっつくと − k s = − μ N にとんで、QR でまっすぐ 0 にもどる。
この4つの特徴を図1—3の (ア)〜(オ) と照らし合わせる。
答え ( a ) ( エ ) ( b ) ( オ ) ( c ) ( ア ) ( d ) ( イ )
Ⅱ(2) くっついている間、箱は等速なので、糸の力 k x と静止摩擦力がつり合っている。x が大きくなるほど必要な静止摩擦力もふえ、限界 μ N に届いたところですべり出す:
4 F L s = μ N
Ⅱ(3) P で箱は、位置 s 、速さ V から単振動を始める。単振動のエネルギー保存(ばねと同じ形)から、一番遠い位置 A では速さ 0:
1 2 m V 2 + 1 2 k s 2 = 1 2 k A 2
k = 4 F L を入れて A について解く。ω = k / m を使うと A = s 2 + ( V / ω ) 2 とも書ける。
Ⅱ(4) N を大きくすると、Ⅱ(2) より s が大きくなる(強く押すほど、長くくっついていられる)。
最大変位:Ⅱ(3) の A = s 2 + ( V / ω ) 2 は s が大きいほど大きい。
1周期の時間:くっついている区間(− s から s まで、速さ V )の時間は 2 s V で、s に比例してのびる。すべっている区間の時間は少し短くなるが、差し引きでは長くなる。
図で考えると分かりやすい:図1—2で、直線 OP は P で正弦曲線 O′PQ に接している。正弦曲線は、直線 OP(速さ V )より速く x = 0 から s まで進む(O′ は O より右にある)。くっつく区間が長くなるほど、速い正弦曲線の部分が、遅いまっすぐな線に置きかわる部分が長くなるので、1周期がのびる。
強く押すほど振れ幅が大きく、1往復が長くなる。バイオリンで言えば、弓を強く押しつけるとわずかに音が低くなる。
答え A も T ′ も大きくなる。 s = μ N L / ( 4 F ) が大きくなるので A = s 2 + ( V / ω ) 2 は増える。 T ′ = 2 s V + 2 ω ( π − tan − 1 ω s V ) ( ω = 4 F / ( m L ) ) は d T ′ d s = 2 V · ( ω s / V ) 2 1 + ( ω s / V ) 2 > 0 。図でいうと、速さ V のまっすぐな線(くっつく)が、それより速い単振動の曲線の一部を置きかえる区間が長くなるから
第2問 金属の筒の中をゆっくり落ちる磁石 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 金属の筒の中に磁石を落とすと、途中から一定の速さでゆっくり落ちる。そのわけを、筒を「積み上げたたくさんの金属の輪」に置きかえて考える問題。
磁石が輪に近づいたり遠ざかったりすると、輪を貫く磁束が変わって、輪に誘導電流が流れる(電磁誘導)。レンツの法則により、その電流は磁束の変化をじゃまする向き に流れ、磁石には動きをじゃまする向き の力がはたらく。
Ⅱ では、力を直接足し合わせる代わりに、エネルギーで考える。磁石が一定の速さで落ちているとき、重力がする仕事は運動エネルギーをふやさず、全部輪のジュール熱(電流による発熱)になる。この「重力の仕事率=発熱の割合」から速さが決まる。
Ⅰ(1) N 極が上の磁石では、磁石の外の磁力線は、上の N 極から出てまわりこみ、下の S 極に入る。磁石の下側(S 極の近く)でも、軸の上では磁場は上向き 。だから磁石が上から近づくと、輪を貫く上向きの磁束がふえる。
近づくとき :上向きの磁束がふえるのをじゃまするため、輪は下向きの磁場を作る向きに電流を流す。上向きに進む右ねじの回る向きが正なので、下向きの磁場を作る電流は負。電流の輪は、磁石に向き合う側が同じ極(反発する向き)になるので、磁石には上向きの力(押し返す)がはたらく。
遠ざかるとき :磁石が輪を通りぬけて下へ離れると、上向きの磁束がへる。それをじゃまするため、輪は上向きの磁場を作る向き(正)に電流を流す。今度は磁石を引きもどす向きで、力はやはり上向き。
電流の向きは近づくときと遠ざかるときで逆なのに、力はどちらも上向き(磁石の動きと逆)。
答え 近づくとき:電流は負(上から見て時計回り)、力は上向き。遠ざかるとき:電流は正、力は上向き
Ⅰ(2) 磁石は速さ v で下(z の負の向き)に動くので、磁石の位置 z は1秒に v ずつ小さくなる。
磁束が変わるのは、a ≤ z ≤ b と − b ≤ z ≤ − a の坂の区間だけ。坂の区間では、長さ b − a の間に磁束が Φ 0 変わるので、1秒あたりの磁束の変化は
Φ 0 b − a × v
これが誘導起電力の大きさ。平らな区間(− a < z < a )では磁束が変わらないので、起電力は 0。
Ⅰ(3) 電流は起電力÷抵抗で、大きさは Φ 0 v R ( b − a ) 。時間の区切りは、磁石が各区間を通るのにかかる時間から決まる。
z = b から a まで(はじめの坂、時間 b − a v ):近づくので電流は負。
z = a から − a まで(平ら、時間 2 a v ):電流 0。
z = − a から − b まで(次の坂、時間 b − a v ):遠ざかるので電流は正。
区切りの時刻は b − a v 、b + a v 、2 b v 。負の長方形、0、正の長方形がならぶグラフになる。
答え I ( t ) = − Φ 0 v R ( b − a ) ( 0 < t < b − a v ) , 0 ( b − a v < t < b + a v ) , + Φ 0 v R ( b − a ) ( b + a v < t < 2 b v )
Ⅱ(1) ( 起電力 ) 2 R = 1 R ( Φ 0 v b − a ) 2
ある瞬間に電流が流れているのは、磁石から見て坂の区間にある輪だけ。坂の区間は上と下に長さ b − a ずつあり、単位長さあたり n 本なので、その本数は 2 n ( b − a ) 。
全体の発熱の割合は、1本あたりにこの本数をかけたもの。( b − a ) が1つ約分されて答えの形になる。
Ⅱ(2) 一定の速さで落ちているとき、運動エネルギーは変わらないので、重力が1秒あたりにする仕事 M g v は、全部ジュール熱になる:
M g v = 2 n Φ 0 2 v 2 R ( b − a )
発熱は v 2 に比例し、重力の仕事は v に比例する。遅いうちは重力の仕事が勝って加速し、速くなると発熱が追いついて、ちょうどつり合う速さで落ちつく。
Ⅲ N と S を逆にすると、磁束の向きがすべて逆(下向き)になり、起電力も電流もすべて向きが逆になる。
しかし、ジュール熱は電流の2乗に比例するので、向きが逆でも同じ。Ⅱ(1) の発熱の式も、Ⅱ(2) のエネルギーのつり合いの式も変わらない。力も、レンツの法則からいつも動きをじゃまする向き(上向き)で、大きさも同じ。
だから磁石は、N 極が上のときとまったく同じ運動をする。
答え 同じ運動をする(同じ一定の速さ M g R ( b − a ) / ( 2 n Φ ₀ ² ) で落ちる)。磁束の符号が逆になり電流の向きは全部逆になるが、ジュール熱は電流の 2 乗なので同じで、エネルギーのつりあいの式が変わらない。力はどちらでも動きをじゃまする向き
第3問 壁のすき間を通る水面の波 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 まっすぐ進む水面の波が壁に当たり、壁のすき間から円い波が広がる。すき間が波長より小さければ、すき間の1つ1つが「新しい波源」になる。壁にはまっすぐな波が同時に届くので、どのすき間の波源も同じタイミングでゆれている 。
だから点 P でのゆれは、各すき間から P までの道のりの差 で決まる。差が半波長なら2つの波は打ち消し合い、波長の整数倍なら強め合う。
P が十分遠いときは、すき間から P へ向かう線はどれも平行(角度 θ )とみなせて、P は x の正の側(図の上側)に向かって角度 θ の方向にあるので、位置 x のすき間は x = 0 のすき間より x sin θ だけ P まで近い 。この道のりの差「x sin θ 」(の大きさ)が全体の道具。
Ⅱ では幅の広いすき間を、たくさんの小さなすき間が並んだものと考える(ホイヘンスの原理)。
Ⅰ(1) P が遠いので、A(x = 0 )と B(x )から P までの道のりの差は x sin θ 。B を x = 0 から少しずつ動かすと、差は 0 からふえていき、はじめて半波長になったところで2つの波が打ち消し合い、P は動かなくなる:
b sin θ = λ 2
Ⅰ(2) A と B の波はすでに打ち消し合っているので、C を開けて P がゆれ始めたのは C の波の分だけ。これを止めるには、C の波と打ち消し合う波を D から出せばよい。
C と D の道のりの差が半波長の奇数倍、つまり x の差が b の奇数倍なら打ち消し合う:
x D = c ± b , c ± 3 b , …
この中で b に一番近いものを選ぶ。c + b は b から c だけ離れていて、c − b は負の位置で b から 2 b − c 離れている(c < b なので c の方が小さい)。
Ⅱ(1) Ⅰ(1) と同じく、P が十分遠いので、x = x 1 から P へ向かう線と x = 0 から P へ向かう線は平行とみなせる。x 1 から P への線を後ろ(P と反対側)へのばし、そこへ x = 0 から垂線を下ろすと、2本の線の長さの差は、垂線の足から x 1 までの部分になる(x = 0 からの線のほうがこの分だけ長い)。その部分は、長さ x 1 の斜辺と角度 θ の直角三角形の辺なので、長さは x 1 sin θ 。
Ⅰ(1) の2つのすき間の道のりの差と同じ形で、すき間の中の位置 x 1 に比例する。
Ⅱ(2) x 1 からの波は、x = 0 からの波より道のりが x 1 sin θ だけ短いので、その分だけ早く P に届く(位相が進む)。そのずれを「波の何周期分か」で表すと、角度(位相)で 2 π x 1 sin θ λ だけずれている。
x = 0 からの波の変位が 0 の瞬間、それより位相が同じ向きに 0 から π の範囲でずれている波は、全部同じ符号の変位をもつ(正弦曲線の山の半分に全部入っている)。ずれが π をこえると、符号が逆の波がまじる。
だから、一番ずれの大きい端 x 1 = w で、ずれが π (半波長分)以下であればよい:
w sin θ ≤ λ 2
これはⅠ(1) の b を使うと、w ≤ b と同じ。
Ⅱ(3) w が 0 から b まで:Ⅱ(2) より、すき間のどこからの波も同じ符号で足されるので、幅をふやすほど足される波がふえて、振幅は大きくなる。w = b で一番大きい。
w が b から 2 b まで:すき間を [ 0 , w − b ] の部分と、そこから b だけずれた [ b , w ] の部分に分けて組にすると、組になる2点はちょうど b 離れていて道のりの差が半波長なので、打ち消し合う。残るのは真ん中の [ w − b , b ] の部分だけで、w がふえるほどこの残りはせまくなり、振幅は小さくなる。
w = 2 b では、すき間全体が [ 0 , b ] と [ b , 2 b ] に分かれて完全に打ち消し合い、振幅は 0 になる。
広いすき間ほど波がよく通りそうだが、遠い P の向きには、幅が b のときが一番強い。
答え w = 0 から b までは単調に大きくなり(どの点からの波も同符号で足される)、 w = b で最大。 b から 2 b では小さくなり、 w = 2 b で 0 。 [ b , w ] の部分からの波が [ 0 , w − b ] の部分からの波と、 1 つずつ半波長ずれて打ち消しあうから(振幅 ∝ | s i n ( π w / 2 b ) | )
Ⅲ P が壁の近くにあるので、もう平行な線とはみなせない。P の真正面のすき間の中心から P までは L 、中心から r 離れた端からは L 2 + r 2 。
Ⅱ(2) と同じ考え方で、「中心からの波と端からの波の道のりの差が半波長になるまでは、全部の波が同じ符号で足されて振幅がふえる」とみなす。振幅が最大になるのは、端の道のりの差がちょうど半波長のとき:
L 2 + r 2 − L = λ 2
L 2 + r 2 = L + λ 2 として両辺を2乗すると L 2 が消え、r 2 = λ L + λ 2 4 。
この答えが何を言っているか :この r は「真ん中からの波と端からの波の道のりの差がちょうど半波長」=「全部が同じ符号で足される一番広い幅」という条件で出したもの。Ⅱ(2)→Ⅱ(3) の流れ(遠い P では、全部同じ符号の一番広い幅が、そのまま振幅が一番大きい幅になる)をⅢにも使う、というのが出題の考え方と読める(公式の解答は手元に無いので、これは問題の流れからの読み)。
ただし、近い P では「全部同じ符号の一番広い幅」と「振幅がいちばん大きい幅」は同じではない。すき間の各点から出る円い波が、距離 ρ とともに 1 / ρ で弱まるとして(Ⅱ の素元波の考え方を、近似なしの距離のまま)数値で足し合わせると、振幅の本当の山はこれより少し内側(この r の約 85%。L = 10 λ で 2.73 λ と 3.20 λ )にあり、この r での振幅は山の約 94% になる。山での端の道のりの差は半波長ではなく約 0.37 λ 。これも素元波を足すという模型での話で、水面の波の完全な計算ではない。
つまり、文字どおり「振幅がいちばん大きい幅」を求めるなら、素元波の強さの決め方しだいで答えが変わり、この r にはならない。この r は「全部が同じ符号で足される一番広い幅」として正しい答え。
答え L 2 + r 2 − L = λ 2 より r = λ L + λ 2 4 (出題の考え方= Ⅱ ( 2 ) と同じく「端の波が真ん中から半波長ずれるまで全部同符号」)