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物 理
第1問 x y 平面内で運動する質量 m の小球を考える。小球の各時刻における位置,速度,加速度,および小球にはたらく力のベクトルをそれぞれ
r → = ( x , y ) , v → = ( v x , v y ) , a → = ( a x , a y ) , F → = ( F x , F y )
とする。また小球の各時刻における原点Oからの距離を r = x 2 + y 2 ,速度の大きさを v = v x 2 + v y 2 とする。以下の設問に答えよ。なお小球の大きさは無視できるものとする。
Ⅰ (1) 以下の文中の ア から カ に当てはまるものを v x ,v y ,a x ,a y から選べ。
各時刻において原点Oと小球を結ぶ線分が描く面積速度は
A v = 1 2 ( x v y − y v x )
で与えられる。ある時刻における位置および速度ベクトルが
r → = ( x , y ) , v → = ( v x , v y )
であったとき,それらは微小時間 Δ t たった後にそれぞれ
r → ′ = ( x + ア Δ t , y + イ Δ t ) ,
v → ′ = ( v x + ウ Δ t , v y + エ Δ t )
に変化する。このことを用いると,微小時間 Δ t における面積速度の変化分は
Δ A v = 1 2 ( x オ − y カ ) Δ t
で与えられる。なお ( Δ t ) 2 に比例した面積速度の変化分は無視する。
(2) 設問Ⅰ(1)の結果を用いて,面積速度が時間変化しないためには力 F → の成分 F x ,F y がどのような条件を満たせばよいか答えよ。ただし小球は原点Oから離れた点にあり,力は零ベクトルではないとする。
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(3) 設問Ⅰ(2)の力 F → を受けながら,小球が図1—1の半径 r 0 の円周上を点Aから点Bを通って点Cまで運動したとする。このとき,力 F → が点Aから点Bまでに小球に行う仕事と点Aから点Cまでに小球に行う仕事の大小関係を,理由を含めて答えよ。
図1—1
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Ⅱ (1) 小球の原点Oからの距離 r の時間変化率は
v r = x v x + y v y r
で与えられる。これを動径方向速度とよぶ。このとき,小球の運動エネルギーと
K r = 1 2 m v r 2
との差を m ,r および面積速度 A v を用いた式で表せ。
(2) 面積速度が一定になる力 F → の例として万有引力を考える。原点Oに質量 M の物体があるとする。このとき万有引力による小球の位置エネルギーは
U = − G m M r (式1)
で与えられる(G は万有引力定数)。ただし物体の質量 M は小球の質量 m と比べてはるかに大きいため,物体は原点Oに静止していると考えてよい。小球の面積速度 A v が 0 でないある定数値 A 0 をとるとき,力学的エネルギーが最小となる運動はどのような運動になるか答えよ。また,そのときの力学的エネルギーの値を m ,M ,A 0 ,G を用いて表せ。
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Ⅲ ボーアの原子模型では電子の円軌道の円周 2 π r とド・ブロイ波長 λ の間に量子条件
2 π r = n λ ( n = 1 , 2 , 3 , ⋯ )
が成り立つ。以下で考える小球の円運動に対しても同じ量子条件が成り立つと仮定する。
(1) 設問Ⅱ(2)の(式1)に対応する万有引力がはたらく小球の円運動を考える。各 n について,量子条件を満たす円軌道の半径 r n を n ,h ,m ,M ,G を用いた式で表せ。ただし小球のド・ブロイ波長 λ は,小球の速度の大きさ v を用いて λ = h m v で与えられる(h はプランク定数)。
(2) 宇宙には暗黒物質という物質が存在し,銀河の暗黒物質は銀河中心からおよそ R = 10 22 m の半径内に集まっていると考えられている。暗黒物質が未知の粒子によって構成されていると仮定し,設問Ⅲ(1)の結果を用いてその粒子の質量に下限を与えてみよう。暗黒物質の構成粒子を,(式1)に対応する万有引力を受けながら円運動する小球として近似する。設問Ⅲ(1)で考えたボーアの量子条件を満たす小球の軌道半径のうち n = 1 としたものが R = 10 22 m と等しいとしたときの小球の質量を求めよ。
なお銀河の全質量は銀河中心に集まっていて動かないと近似し,その値を M ≒ 10 42 k g とする。また,G ≒ 10 − 10 m 3 / ( k g · s 2 ) ,h 2 π ≒ 10 − 34 m 2 · k g / s と近似してよい。この設問で求めた質量が暗黒物質を構成する1粒子の質量のおおまかな下限となる。
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第2問
Ⅰ 図2—1のように,水平面上に置かれた2本の長い導体のレール上に,質量 m の導体棒が垂直に渡してある。磁束密度の大きさ B の一様な磁場が全空間で鉛直方向(紙面に垂直方向)にかけられている。導体棒とレールの接点をX,Yと呼ぶ。また,導体棒はレール方向にのみ動けるものとし,摩擦や空気抵抗,導体棒の両端に発生する誘導電荷,および回路を流れる電流が作る磁場の影響は無視できるものとする。
図2—1のように,間隔 d の平行なレールの端に電池(起電力 V 0 ),抵抗(抵抗値 R ),スイッチを取り付け,導体棒を静止させる。スイッチを閉じた後の様子について,以下の設問(1)〜(5)に答えよ。
図2—1(上から見た図)
(1) 以下の文中の ア 〜 オ の空欄を埋めよ。ただし ア ,エ ,オ には式を記入し,イ ,ウ にはそのあとの括弧内から適切な語句を選択せよ。
スイッチを閉じると,回路に電流が流れ,導体棒は右向きに動きはじめた。ある瞬間の電流を I とすると,導体棒には大きさ ア の力が働き加速されるからである。このことから磁場の向きは,鉛直 イ (上,下)向きであることがわかる。導体棒が動くと,接点X,Y間には ウ (X,Y)側を正とする誘導起電力 V が発生し,導体棒を流れる電流は小さくなる。電池の起電力 V 0 と誘導起電力 V の間に エ の関係が成り立つと,電流は流れなくなり,導体棒の速さは一定になる。この一定の速さを以下では「到達速さ」と表記する。この場合の到達速さは オ で与えられる。
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(2) 導体棒に電流 I が流れているとき,微小時間 Δ t の間に,導体棒の速さや接点X,Y間の起電力はどれだけ変化するか。速さの変化量 Δ s ,起電力の変化量 Δ V を,B ,d ,I ,m ,R ,Δ t ,V 0 のうち必要なものを使ってそれぞれ求めよ。
(3) スイッチを閉じてから導体棒が到達速さにいたるまでの間に,導体棒を流れる電気量を,B ,d ,m ,R ,V 0 のうち必要なものを使って求めよ。
(4) 設問(2),(3)より,導体棒に流れる電流や電気量と接点X,Y間に発生する起電力との関係が,コンデンサーを充電する際の電流や電気量と電圧の関係と類似していることがわかる。スイッチを閉じてから導体棒が到達速さにいたるまでの間に,接点X,Y間の起電力に逆らって電荷を運ぶのに要する仕事はいくらか。設問(1)で求めた到達速さを s 0 として,B ,d ,m ,R ,s 0 のうち必要なものを使って求めよ。
(5) 設問(3)で求めた電気量を Q とすると,スイッチを閉じてから導体棒が到達速さにいたるまでに電池がした仕事は Q V 0 で与えられる。この電池がした仕事は,どのようなエネルギーに変わったか,その種類と量をすべて答えよ。
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Ⅱ 設問Ⅰの設定のもとで,導体棒が間隔 d の平行なレール上を到達速さで右に移動している状態から,図2—2のように,導体棒は間隔 2 d の平行なレール上に移動した。以下の文中の カ 〜 ケ の空欄を埋めよ。
この間スイッチは閉じたままであった場合を考える。このとき,間隔 2 d のレール上での到達速さは,間隔 d のレール上での到達速さに比べ,カ 倍になる。また,それぞれの到達速さで移動しているときの接点X,Y間の起電力は,レール間隔が2倍になるのにともない,キ 倍になる。
次に,導体棒が間隔 d のレール上を到達速さで移動しているときにスイッチを切り,その後スイッチを切ったままの状態で,導体棒が間隔 2 d のレール上に移動した場合を考える。このときは,レール間隔が2倍になるのにともない,速さは ク 倍になり,接点X,Y間の起電力は ケ 倍になる。
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図2—2
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Ⅲ 図2—3に示すように,間隔 d の平行なレールと間隔 2 d の平行なレールを導線でつなぎ,設問Ⅰと同様に,電池,抵抗,スイッチを取り付けた。磁場も設問Ⅰと同じとする。スイッチを切った状態で,図2—3のように質量 m の2つの導体棒1,2をそれぞれ間隔 d ,間隔 2 d のレール上に垂直に置き静止させたのち,スイッチを閉じたところ,導体棒1,2はともに右向きに動き始めた。十分に時間が経ったのち,導体棒の速さは一定と見なせるようになった。このときの導体棒1,2の速さを B ,d ,m ,R ,V 0 のうち必要なものを使ってそれぞれ求めよ。
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図2—3
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第3問 図3—1に示すように,容器X,Yにそれぞれ1モルの単原子分子理想気体が入っている。容器Xの上部は滑らかに動くピストンで閉じられており,ピストンの上にはおもりが載せられている。ピストンの質量は無視できる。容器Yの体積は一定である。容器の外は真空であり,容器Xと,容器Yまたは物体Zが接触した場合にのみ熱のやりとりが行われ,外部の真空や床などとの熱のやりとりは常に無視できるものとする。容器の熱容量は無視できる。また,物体Zの温度は常に 4 5 T A に保たれているものとする。
はじめ,容器Xは容器Yと接触しており,ピストンの上には質量 a 5 m (a > 1 )のおもりが載せられている。容器X内の気体の圧力は p A である。容器X,Y内の気体の温度はともに T A である。このときの容器X内の気体の状態を状態Aと呼ぶことにする。続いて,図3—1に示すように,以下の操作①〜④を順番に行い,容器X内の気体の状態を,A→B→C→D→Eと変化させた。これらの操作において,気体の状態変化はゆっくりと起こるものとする。気体定数を R とすると,状態A〜Dにおける容器X内の気体の圧力,温度,体積,内部エネルギーは表3—1のように与えられる。
操作①(A→B) 容器Xを,容器Y,物体Zのいずれとも接触しない位置に移動させた。次に,ピストン上のおもりを質量が m になるまで徐々に減らした。
操作②(B→C) 容器Xを物体Zに接触させ,容器X内の気体の温度が 4 5 T A になるまで放置した。
操作③(C→D) 容器Xを,容器Y,物体Zのいずれとも接触しない位置に移動させた。次に,ピストン上のおもりを質量が a 5 m になるまで徐々に増やした。この操作後の容器X内の気体の温度を T D とする。
操作④(D→E) 容器Xを容器Yと接触させ,容器X,Y内の気体の温度が等しくなるまで放置した。このときの温度を T E とする。
以下の設問に答えよ。
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図3—1
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Ⅰ 操作①〜③において,容器X内の気体がされた仕事をそれぞれ W 1 ,W 2 ,W 3 とする。W 1 ,W 2 ,W 3 を,R ,T A ,a を用いて表せ。
Ⅱ 操作④による容器X内の気体の状態変化(D→E)について,以下の設問に答えよ。
(1) 操作④による容器X内の気体の内部エネルギーの変化 Δ U 4 を,R ,T D ,T E を用いて表せ。
(2) 操作④において,容器X内の気体がされた仕事 W 4 を,R ,T D ,T E を用いて表せ。
(3) 状態Eにおける容器X内の気体の温度 T E を,T A ,T D を用いて表せ。
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表3—1
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Ⅲ a の値がある条件を満たすとき,操作①〜④は,容器X内の気体に対して仕事を行うことで,低温の物体Zから容器Y内の高温の気体に熱を運ぶ操作になっている。操作④による容器Y内の気体の内部エネルギーの変化を Δ U Y として,以下の設問に答えよ。
(1) 操作④によって容器Y内の気体の内部エネルギーが増加する(Δ U Y > 0 )とき,操作①〜④における容器X内の気体の圧力 p と体積 V の関係を表す図として最も適切なものを,図3—2のア〜カの中から一つ選んで答えよ。
(2) Δ U Y > 0 となるための a に関する条件を答えよ。
(3) 操作①〜④の間に容器X内の気体がされた仕事の総和を W ,操作②において容器X内の気体が物体Zから受け取る熱量を Q 2 とする。Δ U Y を,W と Q 2 を用いて表せ。
(4) 状態Eからさらに引き続き,操作①〜④を何度も繰り返すと,容器Y内の気体の温度は,ある温度 T F に漸近する。T F を,T A と a を用いて表せ。
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図3—2
第1問 原点に引っぱられる小球 ― 面積速度とエネルギーの谷 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 平面の上を動く小球について、原点と小球を結ぶ線が1秒あたりにえがく面積(面積速度)A v = 1 2 ( x v y − y v x ) を追いかける問題。ケプラーの第2法則(惑星は同じ時間に同じ面積をえがく)を、成分の計算だけで確かめるところから始まる。
Ⅰ :面積速度が変わらないのは、力がいつも原点の方向(中心力)を向いているとき。
Ⅱ :速さを「原点から遠ざかる・近づく分(動径方向)」と「原点のまわりを回る分」に分ける。回る分の運動エネルギーは面積速度で書けて、r が小さいほど大きくなる「かべ」になる。このかべと万有引力の位置エネルギーを足した「谷」の一番底が、エネルギー最小の運動。
Ⅲ :その円運動に、ボーアの原子模型と同じ「円周に波がちょうど n 個のる」という決まりを当てはめて、銀河の暗黒物質の粒子の重さのおおまかな下限を出す。
Ⅰ(1) 短い時間 Δ t のあいだ、位置は「速度 × 時間」、速度は「加速度 × 時間」だけ変わる:
r → ′ = ( x + v x Δ t , y + v y Δ t ) , v → ′ = ( v x + a x Δ t , v y + a y Δ t )
Δ t 後の面積速度 1 2 ( x ′ v y ′ − y ′ v x ′ ) に入れて、もとの 1 2 ( x v y − y v x ) を引く。Δ t に比例する部分は
1 2 ( x a y + v x v y − y a x − v y v x ) Δ t
で、v x v y の2つは打ち消しあう。残るのは位置と加速度の組だけになる(( Δ t ) 2 の部分は捨てる)。
答え ア v x , イ v y , ウ a x , エ a y , オ a y , カ a x
Ⅰ(2) 運動方程式 F → = m a → より a x = F x m 、a y = F y m 。これを Ⅰ(1) に入れると
Δ A v = 1 2 m ( x F y − y F x ) Δ t
面積速度が変わらないのは、かっこの中がいつも 0 のとき。
x F y − y F x = 0 は F x : F y = x : y と同じで、力のベクトルが位置のベクトル ( x , y ) と平行、つまり力がいつも原点を通る直線の向き (原点に向かうか、原点から離れる向き)を向いていることを表す。デモで力を少し前に傾けると、扇形がだんだん大きくなり、面積速度が増えていく。
Ⅰ(3) 円周の上では、原点から小球までの距離はいつも r 0 で、速度は円の接線の向き、つまり半径と直角。このとき面積速度は
A v = 1 2 r 0 v
Ⅰ(2) の力なら面積速度は一定なので、r 0 が決まっている円の上では速さ v も一定になる。
Ⅰ(3) 理由 速さが変わらなければ、運動エネルギー 1 2 m v 2 も変わらない。仕事は「運動エネルギーの増えた分」なので、A→B でも A→C でも仕事は 0。
力の向きから見ても同じ:力は原点の方向(半径の向き)、速度は接線の向きで、いつも直角。直角な力は仕事をしない。道のりの長さにかかわらず 0 なので、2つは等しい。
答え 1 2 r 0 v が一定なので速さが一定、運動エネルギーが変わらない(力はいつも速度と直角)
Ⅱ(1) ( x v x + y v y ) 2 + ( x v y − y v x ) 2 = ( x 2 + y 2 ) ( v x 2 + v y 2 )
左の1つ目は ( r v r ) 2 、2つ目は ( 2 A v ) 2 、右は r 2 v 2 。よって
v 2 = v r 2 + 4 A v 2 r 2
両辺に 1 2 m をかけると、運動エネルギーは「近づく・遠ざかる分 K r 」と「回る分」の和に分かれる。
回る分の速さは 2 A v r で、面積速度が同じなら、原点に近いほど速く回る(惑星が太陽に近いところで速くなるのと同じ)。
Ⅱ(2) E = K r + 2 m A 0 2 r 2 − G M m r
K r = 1 2 m v r 2 は 0 以上なので、E を一番小さくするには、①K r = 0 にして、②残りの r だけの部分(「谷」の形のグラフ)の底を選べばよい。
− 4 m A 0 2 r 3 + G M m r 2 = 0 ⟹ r = 4 A 0 2 G M
この r を入れると、回る分 G 2 M 2 m 8 A 0 2 と位置エネルギー − G 2 M 2 m 4 A 0 2 の和になる。
v r = 0 のまま同じ r にいつづけるので、軌道は円。面積速度が一定なので、速さも一定の等速円運動。エネルギーが谷の底より高くても 0 より低い(E min < E < 0 )なら、r が谷の中を行ったり来たりしてだ円になる。E = 0 だと放物線、E > 0 だと双曲線で、r はもどってこない(遠くへ飛んでいく)。
答え 半径 4 A 0 2 G M の等速円運動、 E = − G 2 M 2 m 8 A 0 2
Ⅲ(1) 円運動を支えているのは万有引力なので、中心向きの運動方程式は
m v 2 r = G M m r 2 ⟹ v 2 = G M r
量子条件 2 π r = n h m v は、書きかえると m v r = n h 2 π 。両辺を2乗して v 2 を消すと
m 2 G M r = n 2 h 2 4 π 2
これを r について解けば r n 。半径は n 2 に比例するので、一番内側の輪は n = 1 。
Ⅲ(2) Ⅲ(1) の式で n = 1 、r 1 = R として m について解くと
m 2 = ( h 2 π ) 2 1 G M R
数値を入れると G M R = 10 − 10 × 10 42 × 10 22 = 10 54 、その平方根は 10 27 。h 2 π = 10 − 34 を割って m が出る。
r 1 は m 2 に反比例するので、粒子が軽いほど一番内側の輪でも大きくなる。それより軽いと、輪が銀河の大きさ R からはみ出してしまうので、この値が重さの下限になる。
第2問 磁場の中のレールを走る導体棒 ― 棒はコンデンサー 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 磁場の中の2本のレールに導体の棒をわたし、電池・抵抗とつないでスイッチを入れる問題。電流が流れると棒は磁場から力を受けて走り出す。走り出すと、こんどは棒の中に誘導起電力(動く導体にできる電圧)V = B d s が生まれ、電池の電圧に逆らう。電流は I = V 0 − V R で、だんだん小さくなり、V = V 0 で止まる。
全体の筋は「動いている棒は、充電されていくコンデンサーと同じふるまいをする 」という読みかえ。棒に流れた電気量が速さ(=起電力)に比例するので、電気量と電圧が比例するコンデンサーと同じ式になる。
エネルギーでは、十分に時間がたつと、電池のした仕事のちょうど半分が棒の運動エネルギーに、残り半分が抵抗の熱になる。これはコンデンサーを抵抗ごしに充電したときと同じ結果。
Ⅰ(1) 長さ d の棒に電流 I が流れると、磁場から受ける力の大きさは I B d 。
図2—1の電池は、長い線(+極)が上のレールにつながっている。電流は上のレール → X → 棒 → Y → 下のレールと流れ、棒の中では X から Y の向き。この電流が右向きの力を受けるには、フレミングの左手の法則(電流・磁場・力の向きの関係)から、磁場は紙の表から裏、つまり鉛直下向きでなければならない。
棒が右へ動くと、棒の中のプラスの電荷は「速度 × 磁場」の向きの力を受け、X の側へ寄る。だから X 側が正。これは電池が棒に流そうとする向き(X→Y)とは逆向きの起電力で、電流を小さくする。
電流が 0 になるのは、棒の起電力が電池とちょうど打ち消しあうとき:V = V 0 。起電力は V = B d s なので、B d s = V 0 から速さが決まる。
答え ア I B d , イ 下 , ウ X , エ V = V 0 , オ V 0 B d
Ⅰ(2) Δ s = I B d m Δ t
起電力は速さに比例する(V = B d s )ので、その変化は Δ V = B d Δ s 。Δ s を入れれば Δ V になる。
ここで I Δ t はその間に流れた電気量 Δ Q なので、Δ V = B 2 d 2 m Δ Q 。「電気量に比例して電圧が上がる」のは、容量 C = m B 2 d 2 のコンデンサーと同じ形。
Ⅰ(3) Ⅰ(2) の Δ V = B 2 d 2 m Δ Q を、起電力が 0 から V 0 になるまで足しあわせると
V 0 = B 2 d 2 m Q
運動量で考えても同じ:力積 ∑ I B d Δ t = B d Q が、運動量の変化 m s 0 = m V 0 B d に等しい。
Ⅰ(4) 起電力 V に逆らって電荷 Δ Q を運ぶ仕事は V Δ Q 。V は Q に比例して 0 から V 0 まで増えるので、コンデンサーの充電と同じく、足しあわせると三角形の面積になる:
W = 1 2 Q V 0
Q = m s 0 B d 、V 0 = B d s 0 を入れると B と d が消える。
この仕事は、磁場からの力が棒にした仕事、つまり棒の運動エネルギーそのもの。電気の側から見た「起電力に逆らう仕事」と、力学の側から見た「運動エネルギー」が同じものを指している。
Ⅰ(5) Q V 0 = m V 0 B 2 d 2 · V 0 = m V 0 2 B 2 d 2
このうち、起電力に逆らって電荷を運んだ分(Ⅰ(4))が棒の運動エネルギー 1 2 m s 0 2 = m V 0 2 2 B 2 d 2 になった。
残りは抵抗を流れた電流が出したジュール熱で、ちょうど同じ大きさになる。抵抗の値 R は、かかる時間を変えるだけで、熱の合計には効かない。コンデンサーを充電したときに「電池の仕事の半分が熱になる」のと同じ。
答え 棒の運動エネルギー m V 0 2 2 B 2 d 2 と 抵抗のジュール熱 m V 0 2 2 B 2 d 2
Ⅱ スイッチを閉じたまま のとき:広いレールでも、電流が止まる条件は「棒の起電力 = V 0 」のまま。起電力は B ( 2 d ) s なので
B ( 2 d ) s 0 ′ = V 0 ⟹ s 0 ′ = V 0 2 B d
広いレールに入った瞬間、起電力は 2 V 0 にはね上がり、電池より大きくなる。すると電流が逆向きに流れて棒にブレーキがかかり、起電力が V 0 に下がるまで減速する(このとき電池は逆に充電される)。
スイッチを切ったまま のとき:電流が流れないので棒に力ははたらかず、速さはそのまま。起電力は B ( 2 d ) s 0 = 2 V 0 で2倍になる。
Ⅲ 図2—3では、電池・抵抗・棒1・棒2がひとつながり(直列)になっている。だから2本の棒にはいつも同じ電流 I が流れる。
同じ時間 Δ t での速さの変化は、棒1が I B d m Δ t 、棒2が I B ( 2 d ) m Δ t 。どちらも止まった状態から始まるので、いつでも
s 2 = 2 s 1
2本とも右へ動くので、どちらの起電力も電池に逆らう向き。電流が 0 になって速さが一定になる条件は
V 0 = B d s 1 + B ( 2 d ) s 2
コンデンサーで言えば、容量 m B 2 d 2 と m 4 B 2 d 2 の2つを直列につないで充電したのと同じ。直列なので2つにたまる電気量は同じで、電圧は容量に反比例して 1 : 4 に分かれる。
第3問 おもりの上げ下ろしで、冷たい所から温かい所へ熱をはこぶ 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 ピストンつきの容器 X(単原子分子の理想気体 1 モル)を、容器 Y と物体 Z のあいだで行き来させて、冷たい Z から温かい Y へ熱を運ぶ (冷蔵庫やエアコンの暖房と同じしくみ)問題。
操作は4つ。①熱を出入りさせずに(断熱で)おもりを減らす → 気体はふくらんで冷える。②Z にくっつけて温度を 4 5 T A にする(圧力はおもりで決まっているので一定)。③断熱でおもりをもとにもどす → 気体はちぢんで温まる。④Y にくっつけて同じ温度にする(ここも圧力一定)。
使う道具は3つだけ:単原子分子の内部エネルギー U = 3 2 R T 、圧力一定のときの仕事 p Δ V = R Δ T (1 モル)、熱力学第1法則「内部エネルギーの変化 = された仕事 + もらった熱」。表3—1に状態 A〜D の値がそろっているので、それを使えば計算はほぼ引き算になる。
Ⅰ 操作① は断熱なので熱の出入りがない。第1法則から、された仕事はそのまま内部エネルギーの変化:
W 1 = U B − U A = 3 2 a 2 R T A − 3 2 R T A
操作② は圧力 p A a 5 のまま体積が変わる。された仕事は − p Δ V で、1 モルの理想気体では p Δ V = R Δ T なので
W 2 = − R ( 4 5 T A − T A a 2 )
操作③ はまた断熱なので W 3 = U D − U C = 6 5 a 2 R T A − 6 5 R T A 。
答え W 1 = − 3 2 R T A ( 1 − 1 a 2 ) , W 2 = − R T A ( 4 5 − 1 a 2 ) , W 3 = 6 5 R T A ( a 2 − 1 )
Ⅱ(1) 単原子分子の理想気体 1 モルの内部エネルギーは 3 2 R T で、温度だけで決まる。温度が T D から T E に変わるので、その差に 3 2 R をかければよい。
Ⅱ(2) 操作④のあいだ、ピストンの上のおもりは a 5 m のままなので、圧力は p A で一定。された仕事は − p A Δ V 。
状態方程式 p V = R T から、圧力一定なら p A Δ V = R Δ T 。よって W 4 = − R ( T E − T D ) 。X が冷えて(T E < T D なら)ちぢむとき、外から押されて正の仕事をされる。
Ⅱ(3) X が操作④でもらう熱を Q 4 とすると、第1法則から
Q 4 = Δ U 4 − W 4 = 5 2 R ( T E − T D )
(圧力一定なので、温めるには 3 2 R ではなく 5 2 R ずつ熱が要る)。
Y は体積一定なので仕事はなく、X が出した熱 − Q 4 がそのまま Y の内部エネルギーになる:
3 2 R ( T E − T A ) = − 5 2 R ( T E − T D )
R を消して T E について解けばよい。T E は T A と T D を 3 : 5 の重みで平均した温度になる。
Ⅲ(1) Δ U Y > 0 は、Y が温まる、つまり T E > T A ということ。Ⅱ(3) の式から、これは T D > T A と同じ。このとき T E は T A と T D のあいだ。
状態 A・E・D はどれも圧力 p A で、体積は温度に比例する。だから同じ高さの横線の上に、左から A、E、D の順に並び、操作④では D から E へ左向き(ちぢむ)。この並びになっているのはオだけ(アは D が A・E より低い位置にあり、ウは E が A より左)。
次に B→C(圧力 p A a 5 で一定)。T D > T A は 4 5 a 2 > 1 のことで、これは T B = T A a 2 < 4 5 T A = T C とも同じ。B から C へは温まってふくらむので、右向きの横線になる。オは B→C も右向きの横線なので、これも合う。答えはオ。
Ⅲ(2) Ⅲ(1) のとおり、条件は T D = 4 5 a 2 T A > T A 、つまり a 2 > 5 4 。a > 1 なので平方根をとればよい。
同じ条件は「①のあとの X(T A a 2 )が Z(4 5 T A )より冷たい」ことでもある。X が Z より冷たくなるまでふくらませれば、Z から熱をもらえて、③のあとは Y より熱くなる。この2つがちょうど同じ条件になっているのがおもしろいところ。
Ⅲ(3) 操作①〜④をひとまわりしたあいだの X について、第1法則をまとめて使う。X に入ったエネルギーは、された仕事 W 、Z からの熱 Q 2 、Y からの熱 − Δ U Y (Y が増やした分だけ X が出した)。①③は断熱なので熱はこれだけ:
U E − U A = W + Q 2 − Δ U Y
X と Y はどちらも 1 モルで、どちらも T A から T E になったので、U E − U A = Δ U Y 。これを入れて Δ U Y について解けばよい。
運んだエネルギー(仕事と Z からの熱の合計)の半分が Y に入り、残り半分は X 自身の温まりに使われる。
Ⅲ(4) 2回目からは、はじめの温度が T A ではなく Y の温度 T Y になる。けれども②で X はかならず 4 5 T A になり、③で T D = 4 5 a 2 T A になる。T D は Y の温度によらず毎回同じ。
T Y ′ = 3 T Y + 5 T D 8
これを書きかえると T Y ′ − T D = 3 8 ( T Y − T D ) 。1回ごとに T D との差が 3 8 倍になるので、Y の温度は T D に近づいていく。
その温度では、①のあとの X がちょうど Z と同じ温度になり、Z から熱をもらえなくなる。これ以上は運べない、という行き止まり。