— 64 —
地 学
第1問 近年,太陽以外の恒星のまわりを回る惑星(太陽系外惑星)が多数見つかっている。恒星Sのまわりを回る惑星Pについて,以下の問いに答えよ。なお,恒星及び惑星はすべて球体であり,表面の温度は一様でシュテファン・ボルツマンの法則に従うエネルギー放射を行っていると仮定する。シュテファン・ボルツマン定数を ,円周率を とする。数値での解答にはすべて有効数字 桁で答え,計算過程も示せ。また,必要に応じて ,,,, を用いよ。
問Ⅰ 恒星Sの表面温度が ,半径が ,惑星Pの半径が ,恒星Sと惑星Pの距離が であるとき,惑星Pの表面温度 を推定したい。
(1) 恒星Sから放射された全エネルギーは,惑星Pの位置では半径 の球面に均等に分配される。このことから,恒星Sから惑星Pに単位時間あたりに入射する全エネルギー を ,,,,,, のうち必要なものを用いて表せ。
(2) 惑星Pの表面から単位時間あたりに放射される全エネルギー を ,,,,,, のうち必要なものを用いて表せ。
(3) 惑星Pの表面では と がつり合う熱平衡状態になっている。このとき,惑星Pの表面温度 を ,,,,, のうち必要なものを用いて表せ。
(4) (3)の関係式を用いて,地球の表面温度 を推定してみよう。(太陽半径),(太陽の表面温度),(地球半径),( 天文単位)とする。このとき, を計算せよ。
(5) 実測された地球の平均地表気温は,(4)で求めた よりも高い。その違いの原因を つあげよ。
— 66 —
問Ⅱ 図1—1のように,恒星Sと惑星Pが互いの共通重心(恒星と惑星の つをあわせた重心)のまわりをA→B→C→D→A→・・・の順に円運動しているとする。このとき,以下の問いに答えよ。ただし,恒星Sの質量を ,惑星Pの質量を ,公転周期を ,恒星Sと惑星Pの距離を ,恒星Sの共通重心のまわりの軌道半径を とする。
(1) を ,, を用いて表せ。
(2) 光のドップラー効果を利用すると,観測者に対する恒星Sの速度を測定することができる(以下,これを「視線速度」という)。共通重心は観測者に対して運動しないとすると,視線速度の時間変動は図1—2のように正弦関数として観測される。この視線速度の振幅 が に比例することを示せ。ただし,観測者は恒星Sから十分離れた位置におり,惑星Pの公転軌道と観測者は同一平面上にあるとする。
— 67 —
図1—1 軌道面に垂直な方向から見た恒星Sと惑星Pの軌道。観測者は,恒星Sから十分離れた位置にいる。
図1—2 恒星Sの視線速度の時間変化。横軸のABCDは,図1—1のABCDに対応する。
— 68 —
問Ⅲ 質量が太陽の半分の主系列星S′のまわりを回る,地球と同じ質量をもつ惑星P′を考える。惑星P′の表面温度が問Ⅰの と等しいとき,以下の問いに答えよ。
(1) 主系列星では,恒星質量 と単位時間あたりの全放射エネルギー の間にはおおよそ の関係がある( は比例係数)。このとき,恒星S′と惑星P′の距離は何天文単位になるか求めよ。
(2) 地球により生じる太陽の共通重心まわりの回転速度は であることを用いて,惑星P′により生じる恒星S′の視線速度の振幅を求めよ。ただし,観測者は惑星P′の公転軌道と同一平面上におり,惑星P′の質量は恒星S′の質量と比べて十分に小さいとする。
(3) 太陽系外惑星の探索には,恒星の視線速度の変動を測定する手法が良く用いられる(視線速度法)。視線速度法を用いて,主系列星のまわりを回る地球と同じ質量で同じ表面温度の惑星を探索することを考えると,重い恒星を観測するほうが容易か,軽い恒星を観測するほうが容易か,理由とともに 行程度で述べよ。
— 72 —
第2問 大気と海洋に関する以下の問Ⅰ~Ⅲに答えよ。
問Ⅰ 太平洋の黒潮は亜熱帯環流と呼ばれる大規模な時計回りの環流の一部である。以下の(1)~(3)に答えよ。
(1) 亜熱帯環流はどのような風によって形成されているか,~ 行程度で説明せよ。
(2) 図2—1は太平洋における亜熱帯環流の様子を表している。図のAにおいて海面の高さはまわりに比べて高いか低いか,海水に働く力のつり合いを述べた上で,~ 行程度で答えよ。ただし,亜熱帯環流は地衡流であるとする。
(3) 図2—2は太平洋での海洋による北向き熱輸送量 を示したものである。北緯 度付近の のすべてが亜熱帯環流によって担われていると仮定すると,その緯度における北向きと南向きの海流の平均的な水温差 を推定できる。亜熱帯環流の流量を ,海水の比熱(単位質量あたりの熱容量)を ,密度を としたとき, を ,,, を用いて表せ。また,, , としたとき, の値を有効数字 桁で求めよ。
— 73 —
図2—1 太平洋における亜熱帯環流の様子。実線は海面の高さの等値線,矢印は海流の向きを示している。陸地近くでの等値線は省略してある。
図2—2 太平洋での海洋による北向き熱輸送量
— 74 —
問Ⅱ 地上において温度 ℃ の空気が,強制的に上空に持ち上げられる場合を考える。持ち上げられる空気の温度と高度の関係は,図2—3の細い実線と太い実線で表されるものとする。空気に含まれる水蒸気の量は, の空気に対して何 の水蒸気を含むかで定義される混合比という量で表される。相対湿度 の空気は,飽和混合比として表される量の水蒸気を含んでいる。持ち上げられる空気A,Bについて,水蒸気の混合比はそれぞれ と であるとする。以下の(1)~(3)に答えよ。
(1) 持ち上げられる空気A,Bのそれぞれについて,雲ができ始める高度が何 であるかを図から読み取り,小数点以下 桁で答えよ。
(2) 雲ができ始めた後に,持ち上げられた空気が自然に上昇を始めたとする。このようなことが起こるのは,まわりの空気の高さ方向の温度分布(気温減率)がどのような場合か,~ 行で答えよ。
(3) 人工衛星から赤外線で雲を撮影する装置と同じ装置を使って,地上から空気A,Bにできた雲を撮影する。雲は赤外線に対して完全に不透明であり,撮影される物体からの赤外線が強いほど,写真にはより黒く写るものとする。このとき,空気A,Bにできた雲は,どちらがより黒く写るか,理由を含めて ~ 行で答えよ。
— 75 —
図2—3 上昇する空気の温度の変化(細い実線と太い実線)。破線は,混合比が3,5,7 g/kgのときに水蒸気が凝結する温度を表す等飽和混合比線を示す。
— 76 —
問Ⅲ 地球大気の大規模な循環を調べるために,回転水槽を用いた実験が行われることがある。図2—4は,異なる条件のもとで行った回転水槽実験における流れを,水槽の上から見たものである。これと現実の大気大循環に関して以下の(1)~(3)に答えよ。
(1) 図2—4の流れについて,以下の文章のア~ウに当てはまる語を答えよ。
図の(a)に見られる同心円状の流れは地球大気の ア に相当すると考えられ,水槽の回転と同じ向きで,かつ水槽よりも速く流れている。このとき,外壁近くの水位は内壁近くよりも イ く,地衡風のバランスを考えると整合的である。一方,図の(b)に見られる流れは,ア に加えて波動が生成していることを意味するが,これは地球大気で ウ と呼ばれるものに対応する。図の(a)において,暖められた外壁付近では上昇流が,冷やされた内壁付近では下降流が作られ,これらが①鉛直循環を形成する。
(2) 地球大気は,図の(a),(b)どちらの特徴ももつが,回転水槽実験では条件を変えることで(a)から(b)へ遷移する。この条件をあげ,それをどう変えたときに遷移が生じるかを簡潔に 行で述べよ。ただし,(a)と(b)では同じ水槽を用いており,媒質も変えないものとする。
— 77 —
(3) 下線部①にともなう水槽の底付近の流れについて,以下のA~Iから正しいものを つ選べ。
A.— の方向では,圧力傾度力が,転向力と摩擦力の合力とほぼつり合う。
B.底面の摩擦が大きいと,外壁に向かう流れの成分が弱められる。
C.— の方向では,転向力が,圧力傾度力と摩擦力の合力とほぼつり合う。
D.回転台に乗って見る底面付近の流れは,水槽の回転と逆向きである。
E.— の方向では,摩擦力が,圧力傾度力と転向力の合力とほぼつり合う。
F.回転台に乗って見ると底面付近の流れは静止している。
G.底面の摩擦が大きいと,外壁に向かう流れの成分が強められる。
H.回転台に乗って見る底面付近の流れは,水槽の回転と同じ向きである。
I.外壁に向かう流れの成分の大きさは,底面の摩擦の大きさにはよらない。
図2—4 回転水槽実験で現れる流れの様子を,水槽の上から見たもの。水槽は2つの円筒で挟まれたドーナツ型で,回転台に乗せられており,内壁側を冷やし,外壁側を暖めて温度差を作っている。図の黒い部分は水を表しており,アルミニウム粉末で白く流れを可視化している。(a)のx—x′は動径方向を表す。
— 80 —
第3問 以下の問Ⅰと問Ⅱに答えよ。
問Ⅰ 地球内部の熱と地震発生のエネルギーに関する以下の問いに答えよ。
(1) 地球内部の温度は,内側へ行くほど高くなり,地球の中心では約 ℃ に達すると考えられている。地球の内部がこのように高温であることには,主に つの理由がある。 つは,地球が形成されるときに集積した物質の力学的エネルギーが,熱として蓄積されたためである。もう つの理由を 行程度で説明せよ。
(2) 高温の地球内部から低温の地表に向けて流れ出る熱量を地殻熱流量といい,単位面積を単位時間に流れ出る熱量で表す。地殻熱流量の地球全体の平均値が であるとき,地表から 年間に放出される熱エネルギーを有効数字 桁で求めよ。解答には計算の過程も示せ。ただし,地球の半径を , 年を 秒とする。
(3) 海溝付近と海嶺付近の地殻熱流量にはどのような違いがあると考えられるか,理由とともに ~ 行で述べよ。
(4) 次の文を読み,空欄 ア ~ エ に当てはまる数値を,以下の(a)~(m)から選べ。また,オ ~ キ に当てはまる数値を,計算の過程も示しつつ,有効数字 桁で答えよ。 とし,必要ならば数学公式
を用いよ。
地球内部の熱はプレート運動の原動力であり,プレート運動と地震発生は密接に関係している。地震により 年間に放出されるエネルギーを概算し,(2)で求めた熱エネルギーと比較してみよう。地震のマグニチュード は四捨五入して整数値として扱う。例えば, はすべて とする。起こりうる最大の地震のマグニチュードを とし,そのエネルギーを とする。
— 81 —
地震の発生頻度はマグニチュードが 小さくなるごとにおよそ 倍になる。これはグーテンベルグ・リヒター則と呼ばれる。一方,地震 個のエネルギーはマグニチュードが 小さくなるごとに ア 倍になる。
年間に の地震が 個発生し,地震の発生頻度がグーテンベルグ・リヒター則に従う場合に,地震のエネルギーの総和を考える。グーテンベルグ・リヒター則から の地震は 個発生し, の地震のエネルギーの合計は の地震のエネルギーの合計の イ 倍になる。同様に考えると, の地震は ウ 個発生し,そのエネルギーの合計は の地震の合計の エ 倍になる。この考えを無限に小さな地震にまで繰り返すと,エネルギーの総計は オ になる。そのうち の地震のエネルギーが占める割合は カ である。
この 年間の総計から,地震により 年間に平均して放出されるエネルギーを計算すると,それは(2)で求めた地球の熱エネルギーの キ に相当する。
— 82 —
問Ⅱ 石英は地殻の主要な構成鉱物の つであり,その化学式は である。 は,温度・圧力の変化にともなって,いくつかの異なった結晶構造をもつ鉱物として存在し,それらが安定に存在する温度・圧力の領域は図3—1のように示される。
(1) このように,同じ化学組成でも異なった結晶構造をもつ鉱物どうしを何と呼ぶか述べよ。また,このような例を 以外に つあげて,化学式と相当する鉱物名を つ答えよ。
(2) 温度 ℃,圧力 の地球深部で,コース石を含んだ岩石が形成され,この岩石が造山運動で地表に上がって来たとする。この岩石から薄片試料を作って,偏光顕微鏡を使って観察したところ,図3—2のようにコース石を取り囲んで石英が存在しており,さらにその周囲にある輝石に放射状の割れ目が観察された。この割れ目がどのようにして形成されたかを ~ 行程度で説明せよ。
(3) 図3—1で示すようなコース石やスティショバイトなどの超高圧下で安定な鉱物が形成される場所は,通常は地球深部である。しかし,コース石やスティショバイトは,ある自然現象によって,地表でも形成されることが分かっている。この自然現象は何か答えよ。
— 83 —
図3—1 さまざまな温度・圧力下で安定に存在するSiO₂鉱物。それぞれの鉱物名の下の数字は密度を表している。
図3—2 コース石を含んだ薄片の模式的スケッチ
第1問 よその星の惑星:温度と、星のゆれ
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
太陽以外の恒星のまわりを回る惑星(太陽系外惑星)の問題。使う道具は2つある。
シュテファン・ボルツマンの法則:表面温度 の物体が表面 から1秒間に出すエネルギーは 。球の恒星全体なら、表面積 をかけて になる。問Ⅰは、惑星が「受け取る光」と「自分が出す赤外線」のつり合い(放射平衡)で表面温度を決める。
共通重心と万有引力:恒星と惑星は、恒星が動かないのではなく、2つの共通重心のまわりを同じ周期で回っている。恒星も小さな円を描くので、観測者の方へ近づいたり遠ざかったりする。その速さ(視線速度)は光のドップラー効果で測れる。問Ⅱ・問Ⅲは、このゆれの大きさが何で決まるかを調べ、惑星を見つけやすい恒星を考える。
問Ⅰ(1)
恒星の表面全体から出るエネルギーは 。これが恒星から距離 の所では、半径 の球面(面積 )全体に均等に広がる。 あたりにすると
惑星が受け止めるのは、恒星の方から見た惑星の「影」の面積、つまり断面の円 の分(半球の表面積 ではない。光は一方向から来るので、影の面積だけ受ける)。これをかける。
デモでは、星の表面を細い輪に分けて、それぞれの輪から届く光を足しあげても同じ値になる。
答え(恒星全体の放射 が面積 に広がり,断面 が受ける)
問Ⅰ(2)
惑星の表面温度は一様と仮定しているので、惑星は昼の側も夜の側も、表面全体 から ずつ放射する。表面積をかければよい。
受け取るのは断面 、出すのは表面全体 で、面積が4倍ちがうことが次の問いで効いてくる。
問Ⅰ(3)
惑星の半径 は答えに残らない。大きい惑星は多く受け取るが、同じ割合で多く出すからである。温度を決めるのは、恒星の温度と「恒星の半径 ÷ 距離」だけ。デモで冷たい惑星に光を当てると、温度が上がって、入る熱と出る熱が等しくなった所で止まる。
問Ⅰ(4)
計算すると約 (与えられた根号の値を使わずに計算すると )。有効数字2桁にまとめる。
答え()
問Ⅰ(5)
実際の地球の平均地表気温は約 ( ℃)で、(4) より高い。
(4) の計算には入っていないが、実際の地球にあるものを考える。地表から出た赤外線の多くは、大気中の水蒸気や二酸化炭素に吸収され、大気がその一部を地表へ放射し返す。地表は太陽の光に加えてこの分も受け取るので、大気が無い場合より暖かくなる。これが温室効果。
一方、実際の地球は太陽の光の約 3 割を雲や地表ではね返している(反射率 約 0.3)。これを入れると温度は約 に下がり、人工衛星で測った「地球が宇宙へ出している赤外線」の温度(約 )とよく合う。 とのさらに大きな差が、温室効果の分である。
答え大気の温室効果。水蒸気や二酸化炭素が地表からの赤外線を吸収し,一部を地表へ放射し返すため。
問Ⅱ(1)
共通重心は、恒星と惑星を結ぶ線の上で、2つの質量の「てこのつり合い」の点。恒星から重心までが 、惑星から重心までが なので
重い恒星ほど重心の近くにいて、小さな円しか描かない。
問Ⅱ(2)
恒星は半径 の円を、惑星と同じ周期 で回るので、恒星の速さは 。
周期 は、ケプラーの第3法則(2つの天体がたがいのまわりを回るときの形)で決まる。万有引力定数を として
観測者は公転の面の中にいて、十分遠いので、恒星が観測者の方向にまっすぐ動く瞬間(図1—1 の B と D)には、恒星の速さがそのまま視線速度になる。したがって振幅 は に等しく、 に比例する。
デモでは、恒星と惑星を万有引力だけで動かして、視線速度のグラフが図1—2 と同じ形になり、B でいちばん速く遠ざかることが見える。
答え恒星の速さは 。ケプラーの第3法則 ( は万有引力定数)と (1) より 。観測者は軌道面内にいるので振幅
問Ⅲ(1)
問Ⅰ(3) の式を、恒星の明るさ(全放射エネルギー) で書き直すと
恒星S′の質量は太陽の半分なので、 より明るさは太陽の 倍。惑星P′の温度が地球と同じなら も同じなので
暗い恒星のまわりでは、同じ温度になるには恒星のずっと近くを回る必要がある。
答え天文単位( が 倍,同じ温度には )
問Ⅲ(2)
問Ⅱ(2) より、。惑星の質量は恒星よりずっと小さいので としてよく、。
地球と太陽の組み合わせ()とくらべると、惑星の質量は同じ、距離は 倍、恒星の質量は 倍なので
を使って計算し、有効数字2桁にまとめる。
太陽のゆれ は、万有引力定数と太陽・地球の本当の質量で計算した値(約 )とも合っている。
答え( より )
問Ⅲ(3)
(1)(2) を一般の質量 の恒星で考える。 なので、地球と同じ温度になる距離は 。これを に入れると
恒星が軽いほど、惑星は近くを回らなければならず((1))、しかも恒星自身が軽いので惑星に振り回されやすい。どちらも を大きくする向きにはたらくので、軽い恒星ほど視線速度のゆれが大きく、測りやすい。
デモで恒星の質量を 0.2 にすると、 は約 (地球と太陽の 11 倍)になり、公転の周期も約 6.5 日と短く、何周分も観測しやすい。
答え軽い恒星が容易。惑星が近くを回り,恒星も軽く視線速度の振幅が大きい。
第2問 海の大きな渦、持ち上げられる空気、回る水槽
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
大気と海の大きな流れの問題。3つの問いに共通するのは、地球の自転によるコリオリの力(転向力)。北半球では、動いているものを進む向きの右へ曲げる見かけの力で、速さに比例する。
問Ⅰは太平洋の亜熱帯環流(黒潮をふくむ、時計回りの大きな流れ)。大きな海の流れは、海面の坂による力(圧力傾度力)とコリオリの力がつり合った地衡流になっている。流れの向きが分かれば、力のつり合いから海面の高低が分かる。最後は、北へ行く暖かい水と南へ戻る冷たい水で運ばれる熱の計算。
問Ⅱは、持ち上げられた空気の温度の変わり方(断熱変化)と雲のでき方を、図2—3 から読み取る。問Ⅲは、外側を暖め内側を冷やした回転水槽の実験を、赤道と極の間の大気の流れと見くらべる。
問Ⅰ(1)
亜熱帯環流の北側(中緯度)には西から東へ吹く偏西風、南側(低緯度)には東から西へ吹く貿易風がある。向きが逆の2つの風が、海面を引きずる。
風に引きずられた表面の水は、コリオリの力で北半球では風の右へ曲げられ、層全体としては風の右 90° の向きに運ばれる(エクマン輸送)。偏西風の下の水は南へ、貿易風の下の水は北へ運ばれるので、2つの風にはさまれた亜熱帯の海に水が集まる。
こうして真ん中が盛り上がった海のまわりに、時計回りの流れができる。デモの赤い矢印が、風に引きずられた水の運ばれる向き。
答え中緯度の偏西風と低緯度の貿易風。向きが逆の2つの風が海面を引きずり,運ばれた海水が間の海域に集まって時計回りの環流ができる。
問Ⅰ(2)
地衡流では、圧力傾度力(海面の高い方から低い方へ押す力)とコリオリの力がつり合う。
図2—1 の流れは時計回り。北半球のコリオリの力は進む向きの右なので、時計回りに回る流れでは、右=環流の中心の向きになる。つり合うためには、圧力傾度力は中心から外向きでなければならない。圧力傾度力は海面の高い方から低い方へはたらくので、中心の A の海面はまわりより高い。
デモでは、盛り上がった海の上で水を止めて放すと、坂を下りかけてはコリオリの力で右へ曲げられ、ループを描きながら時計回りの向きに流れていく。その平均の速さは、地衡流の式(重力加速度 × 坂 ÷ コリオリの係数)で出した値とほぼ同じになる。真ん中を低くすると、流れは反時計回りになる。
答え高い。地衡流では圧力傾度力と転向力がつり合う。北半球の転向力は流れの右向きで,時計回りの環流では中心向きになるので,圧力傾度力は外向きであり,Aの海面はまわりより高い。
問Ⅰ(3)
北向きの流れ(黒潮)も南向きの流れも、流量は同じ (水がたまったり減ったりしないため)。北へ行く水の温度を 、南へ戻る水の温度を とする。
1秒間に北へ運ばれる水の質量は で、それが持っている熱(ある基準からの量)は 。南へ戻る水は を持ち帰る。差し引きで北へ運ばれる熱は
図2—2 で北緯 30° の値を読むと、 は約 (画素で細かく読むと 0.48)。
有効数字1桁にまとめる。0.48 と読んでも 4.0 で、答えは変わらない。
答え,(図2—2 で北緯 30 度の ,)
問Ⅱ(1)
雲ができるのは、持ち上げられた空気の温度が下がって、含んでいる水蒸気で飽和したとき。
雲ができるまでの空気は、図2—3 の地上 ℃ から出る細い実線(乾燥断熱線)に沿って冷える。空気が含む水蒸気の量(混合比)は、雲ができるまで変わらない。その温度での飽和混合比が、空気の混合比まで下がった所で飽和する。図では、乾燥断熱線と、その空気の混合比の等飽和混合比線(点線)の交点の高さを読めばよい。
空気A()は、 ℃ からの乾燥断熱線が「3」の点線と交わる所で、高さは あたり。空気B()は「5」の点線と交わる所で、 あたり。
水蒸気を多く含むBの方が、少し冷えただけで飽和するので、雲の底が低い。デモでは、図の線を画素から読み直して、交点が A 1.43 km・B 0.51 km になることを確かめている。
問Ⅱ(2)
雲ができた後の空気は、水蒸気が凝結するときに出す熱(潜熱)で温められながら上がるので、図の太い実線(湿潤断熱線)に沿って、乾燥断熱線よりゆっくり冷える。
空気が自然に上昇を始めるのは、持ち上げられた空気がまわりの空気より暖かく(軽く)なったとき。まわりの空気の気温が高さとともに下がる割合(気温減率)が、湿潤断熱減率より大きければ、上がるにつれてまわりの方が早く冷えていくので、いつか持ち上げられた空気の方が暖かくなる。
一方、雲ができる前は強制的に持ち上げられていた(自然には上がらなかった)ので、まわりの気温減率は乾燥断熱減率より小さい。この「乾燥断熱減率より小さく、湿潤断熱減率より大きい」状態を条件付き不安定という。デモでまわりの気温減率を大きくすると、自分で上がり始める高さが下がり、小さくすると上がらなくなる。
答えまわりの気温減率が湿潤断熱減率より大きい場合(乾燥断熱減率よりは小さい条件付き不安定の場合)。
問Ⅱ(3)
地上から撮影するので、写るのは雲の底(雲底)から地上へ出る赤外線。雲は赤外線に対して完全に不透明なので、雲の中や上からの赤外線は届かない。
雲底の温度は、雲ができ始めた高さの空気の温度。(1) の交点の温度を図から読むと、A は約 ℃、B は約 ℃。B の方が雲底が低く、温度が高い。
物体が出す赤外線の強さは、絶対温度の4乗に比例して大きくなる(シュテファン・ボルツマンの法則)。デモでは で A が約 、B が約 。赤外線が強いほど黒く写るので、B の雲の方が黒く写る。
人工衛星から雲の上を撮るときは逆に、雲の頂上が高い(冷たい)ほど赤外線が弱い。見る向きによって、どこの温度を見ているかが変わる。
答えBの雲。雲底が低いので温度が高く,雲底から地上へ出る赤外線が強いから。
問Ⅲ(1)
水槽の外壁(暖める)が赤道、内壁(冷やす)が極にあたる。暖められた外壁付近で上昇し、冷やされた内壁付近で下降する循環ができる。
図の(a)の同心円状の流れは、回転と同じ向きに水槽より速く流れている。地球の大気で、自転と同じ向き(西から東)に地面より速く吹く風は偏西風。
この流れが地衡流のつり合いにあるとする。回転と同じ向きに回る流れでは、コリオリの力(進む向きの右)は外向きになる。つり合う圧力傾度力は内向きなので、圧力(水位)は外壁の方が高い。地球でいえば、中緯度の上空で気圧が赤道側で高く極側で低いことにあたる。
(b)では同心円の流れが大きく蛇行し、波ができている。地球の大気では、偏西風が南北に蛇行する偏西風波動(ロスビー波)にあたる。デモの計算でも、外壁側を高くした水面の上で水を放すと、回転と同じ向きに流れる。
答えア 偏西風,イ 高,ウ 偏西風波動(ロスビー波)
問Ⅲ(2)
同じ水槽・同じ水で変えられる条件は、水槽の回転の速さと、外壁と内壁の温度差。
回転水槽の実験では、回転が遅いときは(a)のような軸対称な流れ(南北方向の鉛直循環が主役で、地球ではハドレー循環にあたる)になり、回転を速くしていくと、流れが不安定になって(b)のような波のある流れに移る。地球は自転が速いので、低緯度はハドレー循環、中緯度は偏西風波動、という両方の特徴をもつ。
答え水槽の回転の速さ。回転を速くすると(a)から(b)に遷移する。
問Ⅲ(3)
下線部①の鉛直循環は、外壁付近で上昇・内壁付近で下降なので、水槽の底の近くでは内壁から外壁へ向かう流れになる。
底では、冷たく重い水がある内壁の方が圧力が高く、外向きの圧力傾度力がはたらく。外へ向かう流れは、転向力で進む向きの右(回転と逆向き)へ曲げられる。したがって回転台に乗って見ると、底の流れは回転と逆向きの成分をもつ(D)。地球でいえば、赤道へ向かう地表の風が東風(貿易風)になるのと同じ。
— の方向(外向き)の力を考える。圧力傾度力は外向き。回転と逆向きの流れにかかる転向力は内向き。まさつ力は流れと逆向きで、流れに外向きの成分があるので内向きの成分をもつ。つまり外向きの圧力傾度力を、内向きの転向力とまさつ力の合力が支えている(A)。C や E は向きが合わない。
まさつが無ければ流れは圧力傾度力と転向力がつり合う方向(円周の向き)に流れ、外壁へ向かう成分は生まれない。外壁へ向かう成分はまさつによって生まれ、まさつが大きいほど強くなる(G)。B と I はこれと合わない。デモでは、止まった水から時間を進めて落ちついた流れを求め、この3つを確かめている。
第3問 地球の熱、地震のエネルギー、コース石の割れ目
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
前半(問Ⅰ)は、地球の中から出てくる熱と、地震が出すエネルギーの大きさくらべ。地表から出る熱は、熱流量( から1秒に出る熱)に地球の表面積と時間をかければよい。地震のエネルギーは、グーテンベルグ・リヒター則(マグニチュードが 1 小さいと数が約 10 倍)と、1個のエネルギーの減り方を組み合わせ、等比数列の和として足しあげる。
後半(問Ⅱ)は、 の多形(同じ化学組成で結晶のつくりがちがう鉱物)の問題。図3—1 は、それぞれの鉱物が安定な圧力と温度の範囲と、密度を示している。高い圧力ほど、密度の大きい(ぎゅっと詰まった)鉱物が安定になる。
問Ⅰ(1)
地球の内部が高温であるもう1つの理由は、岩石に含まれる放射性元素(ウラン・トリウム・カリウムなど)。これらの原子核は長い時間をかけてこわれ(崩壊し)、そのときに熱を出す。
地球ができてから約 46 億年の間、この熱が内部で出続けてたまってきた。
答え地球内部の放射性元素が崩壊するときに出す熱がたまったため。
問Ⅰ(2)
地表全体から1秒に出る熱は、熱流量 × 地球の表面積 。1年分にするには1年の秒数をかける。
1秒あたりでは約 (44 TW)で、実際に見積もられている地球全体の熱の流れ(約 44〜47 TW)と合う。
答え()
問Ⅰ(3)
海嶺では、高温のマントル物質が上昇してきてマグマができ、新しいプレートが生まれる。すぐ下が熱いので、地殻熱流量は大きい。
プレートは海嶺から離れるにつれて海の底から冷やされ、厚くなりながら海溝へ運ばれる。海溝付近に来るのは長い時間をかけて冷えた古いプレートで、それが冷たいまま沈み込むので、地殻熱流量は小さい。
デモでは、プレートが海の底から冷えていく模型で熱流量を計算している。海嶺の近く(生まれて 1 百万年)では約 、海溝の近く(100 百万年)では約 で、地球の平均 をはさんで 10 倍もちがう。
答え海嶺付近は高温のマントルが上昇してくるので高く,海溝付近は冷えて厚くなった古い海洋プレートが沈み込むので低い。
問Ⅰ(4)
ア:地震のエネルギー とマグニチュード には、 が 2 大きいとエネルギーが 1000 倍、つまり 1 大きいと 倍、という関係がある()。 が 1 小さくなると
この式で を計算すると で、問題の値と合う。
イ〜エ: は数が 10 倍、1個のエネルギーは 倍なので、合計は 倍。 は 個で、合計は 倍。
オ:マグニチュードが 1 小さくなるごとに、組の合計は 倍になる。 の組の合計は なので、無限に小さな地震まで足すと
( を使った)。有効数字1桁にまとめる。
カ: の組は、 の組( の 倍)から始まる等比数列なので、総計に対する割合は
キ:50 年の総計を 50 で割ると1年あたり約 。(2) の熱 とくらべると
で、百分率にする。地震で出るエネルギーは、地球から出る熱のごく一部にすぎない。
数は小さい地震ほど多いのに、エネルギーの総計のほとんどは大きな地震が出している( の組だけで約 68 %)。デモで「数の増え方」を 倍にすると、どの組の合計も同じになって、足しても終わらなくなる。数が 10 倍ずつ(エネルギーの減り方より小さい割合)で増えることが、総計が決まるための条件になっている。
答えア (d),イ (f),ウ (m),エ (e),オ ,カ ,キ (オ:,カ:,キ:)
問Ⅱ(1)
同じ化学組成で、結晶構造(原子の並び方)がちがう鉱物どうしを多形(同質異像)という。 では、石英・クリストバル石・リンケイ石・コース石・スティショバイトがそうである。
ほかの例として、炭素 のダイヤモンドと石墨(グラファイト)がある。ほかに、 の方解石とあられ石、 の紅柱石・藍晶石・珪線石なども多形である。
答え多形(同質異像)。例: のダイヤモンドと石墨(グラファイト)
問Ⅱ(2)
図3—1 で ℃・ の点は、コース石の領域にある( ℃ での石英との境目は約 )。この岩石が造山運動で地表へ上がってくると、圧力が下がって石英の領域に入る。そこで、コース石はまわりから石英に変わり始める。
コース石の密度は 、石英は 。同じ質量なら体積は密度に反比例するので、石英に変わった部分の体積は
ふくらんだ粒は、まわりの輝石を内側から押し広げる。押し広げられた輝石は、粒のまわりを取り巻く向き(円周の向き)に引きのばされるので、その向きに引き裂かれ、粒から外へのびる放射状の割れ目ができる。デモでは、まわりの岩のつり合いを計算して、円周の向きに押す力の半分の大きさの引っぱりがかかることを確かめている。
内側にコース石が残っているのは、変化が途中で止まった(温度が下がって反応が進まなくなった)ため。コース石が残っていることは、この岩石が一度は深さ約 100 km に相当する高い圧力を受けた証拠になる。
答え地表へ上がる途中で圧力が下がり,コース石がまわりから密度の小さい石英に変わった。体積が約16%増えたため,まわりの輝石が外へ押し広げられて放射状に割れた。
問Ⅱ(3)
地表で一瞬だけ非常に高い圧力が生まれる自然現象は、隕石の衝突。
大きな隕石が高速でぶつかると、衝撃で をこえる圧力が生じ、石英がコース石やスティショバイトに変わる。これらの鉱物は、隕石の衝突でできたクレーターの証拠として使われる。