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地 学
第1問
天体までの距離を推定することは,宇宙の大きさを知るための天文学上の重要な課題である。以下の問いに有効数字 2 桁で答えよ。なお,1 パーセク離れた所に,直径が 1 天文単位の円盤を視線方向に垂直に置いたとき,この円盤の視直径は 1 秒角である。ここで 1 パーセク = 2.1 × 10 5 天文単位である。
Ⅰ 金星が地球に最接近したとき,金星の方向に対して垂直方向に R 離れたところにいる地球上の 2 名の観測者が同時に金星の位置を測定したところ,背景の恒星に対して,金星の位置がちょうど 10 秒角異なっていた。
(1) 最接近した際の金星と地球の距離を 4.1 × 10 7 k m として,2 名の観測者間の距離(k m )を求めよ。
(2) (1)の最接近の場合,金星の視直径は 64 秒角であった。また地球よりもっとも離れた時の金星の視直径は 10 秒角であった。地球と金星は,太陽を中心に同じ平面内で円運動しているものと仮定し,地球と金星の公転の軌道半径(k m )を求めよ。
Ⅱ 太陽の数倍以上の質量をもつ星の進化の最終段階では,星の中心部における圧力と重力のつりあいが破れて超新星爆発を起こし,星全体を吹き飛ばしたり,外層部を吹き飛ばして残された部分が中性子星やブラックホールになる。1987 年,私たちの銀河系のすぐ隣にある大マジェラン雲に,超新星が出現した。初期のスペクトルは激しいガスの運動を示す幅の広い輝線によって特徴づけられていた。爆発後 90 日経過した時点で,幅の狭い輝線が初めて観測され,その強度は爆発後 400 日経過した時点で最大となった。幅の狭い輝線が出現した原因は次のように説明できる。もとの星(超新星になった星)の周りには,超新星爆発の前からガスが存在しており,円形リング状に分布していた。超新星爆発の強烈な放射をうけてリングのガスが加熱された結果,そこから幅の狭い輝線が放射された。事実,ハッブル宇宙望遠鏡により超新星を取り囲む楕円状のリングが観測されている(図1—1)。幅の狭い輝線の強度の時間変化は,図1—2の構造を考えると理解できる。リングの中心には超新星がある。この円形のリングは,リングを含む面と垂直な方向Nに対して観測者の視線の方向が角度 θ だけ傾いているので,図1—1のように楕円として観測される。超新星から観測者(地球)へ光が到達するまでの距離は,超新星の光がリングにあたらずに直接観測者に届くAがもっとも短い。2 番目に短い距離は,超新星→B′→Bの経路である(超新星の光がリング上の地球に最も近い部分B′にあたり,そこから幅の狭い輝線が観測者の視線方向Bに放射される)。最も長い距離は,超新星→C′→Cの経路(地球から最も遠い地点C′を経由)である。つまり,B方向の輝線が地球に到達したのが爆発後 90 日経過した時点であり,Cの輝線が到着したのが 400 日経過した時点と考えればよい。ただし,超新星の放射がリングのガスを加熱して,輝線が放射されるまでの時間は非常に短く,無視してよい。
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(1) 爆発から最初に幅の狭い輝線が観測されるまでの経過時間を t 0 ,その強度が最大となるまでの経過時間を t 1 ,リングの半径を r ,光速を c として,t 0 ,t 1 を r ,c ,θ で表せ。
(2) リングの半径(パーセク)を求めよ。ただし,1.0 パーセク = 3.3 光年,1.0 光年 = (光速)× (365 日)として計算せよ。
(3) ハッブル望遠鏡により,リングの長軸方向の直径は 1.6 秒角であることが観測されている。超新星までの距離(パーセク)を求めよ。
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図1—1 超新星とリング(ハッブル宇宙望遠鏡による撮像)
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図1—2 リングの構造。リングは円形であり,その中心に超新星がある。Nはリングを含む平面と垂直な方向である。A,B,Cは互いに平行で,観測者の視線の方向を表す。視線方向は方向Nに対して角度θ傾いている。超新星→C′→Cの経路と超新星→B′→Bの経路との距離の差は,線分HC′に等しい。ただし,点B′から直線CC′に下ろした垂線との交点をHとする。
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第2問
Ⅰ 大気と海洋の全球熱輸送に関する次の文章を読み, に最も適切な語句の番号を下のリストから選んで,a—1のように示せ。
大気と海洋はお互いに影響しながら,モンスーンやエルニーニョなどを含む全球の気候システムを形成している。気候システムでの大気・海洋共通の働きとして,熱の南北輸送がある。地球表面で単位面積あたり大気と海洋が受け取る a は,b で多く c で少ない。この不均衡を解消するために,大気と海洋で b から c へ熱が輸送されている。
地球全体の熱輸送量(年平均)を人工衛星や現場の観測によって見積もると,図2—1のようになる。縦軸は北向き熱輸送量,横軸は緯度を示す。北半球では,大気の高・低気圧や海洋の黒潮や湾流(メキシコ湾流)などが熱輸送の主要な役割を担っている。このことから,図中の細い実線は d が運ぶ熱輸送量,破線は e が運ぶ熱輸送量を示していることがわかる。なお,太い実線はこれらを合わせた熱輸送量を示している。
図2—1から,北半球,南半球ともに f に熱が輸送されていることがわかる。また,緯度によって輸送量に差はあるが,地球全体としてほぼ同程度の量の熱輸送を大気と海洋で分担していることもわかる。
1. 低緯度 2. 高緯度 3. 貿易風
4. 偏西風 5. 大 気 6. 台 風
7. 海 洋 8. 東西方向 9. 雲放射量
10. 太陽放射量 11. 赤外放射量 12. 極向き
13. 熱帯方向 14. 南向き 15. 北向き
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図2—1
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Ⅱ 黒潮は日本列島の近くを流れ,図2—2のように,九州南方の断面A(北緯 30 度,東経 130 度)と日本東方の断面B(北緯 37 度,東経 160 度)を通る。黒潮は圧力傾度力とコリオリの力のつりあった流れであり,鉛直方向に流速が一様とすると,流れの幅 L での平均流速 v は,
v = g Δ h f L ( 1 )
で表される。ここで,g は重力加速度,Δ h は沖側(南側)と岸側(北側)の海面高度の差,f はコリオリの係数である。海面高度は,黒潮の沖側の方が岸側より高い。また,コリオリの係数は f = 2 ω sin ϕ で表され,ω は地球の自転角速度,ϕ は考えている地点の緯度である。g = 9.8 m s − 2 ,ω = 7.3 × 10 − 5 s − 1 として,以下の問いに有効数字 2 桁で答えよ。
図2—2
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問1 上の文章での圧力傾度力は,黒潮の流れに対してどの向きに働くか。理由を添えて 100 字以内で説明せよ。なお,コリオリの力の大きさは,(1)式では f v で表されている。
問2 断面Aを通過する黒潮の海面高度差 Δ h と流れの厚さ H が,Δ h = 1.0 m ,H = 300 m のとき,黒潮の体積流量(m 3 s − 1 )を求めよ。
問3 黒潮の流速 v と幅 L が,断面AとBで変わらないとすると,断面Aで Δ h = 1.0 m のときの断面Bでの Δ h (m )を求めよ。ここで,sin 37 ∘ = 0.60 とする。
問4 黒潮の海域では,大量の熱が海洋から大気に放出されている。いま,断面AとBの間の黒潮流域で,4.0 × 10 14 W (1 W = 1 J s − 1 )の熱が,海面から大気に放出されているとしよう。そして,これと等量の熱が黒潮によってこの海域に供給されることで,熱の放出と供給がつりあっているとする。このとき,黒潮の運ぶ海水の平均水温は,断面AとBのどちらの方が何度(K )高いかを答えよ。なお,黒潮の流れに直交する水平方向の熱のやりとりは無視できるものとする。ここで,海水密度は 1.0 × 10 3 k g m − 3 ,海水の比熱は 4.2 × 10 3 J k g − 1 K − 1 ,黒潮の体積流量は 3.0 × 10 7 m 3 s − 1 とし,これらは断面AとBで変わらないものとする。
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第3問
次の文章を読んで問いに答えよ。
日本列島には多くの活火山があり,火山噴火が絶えない。そして火山噴火による大規模災害も多く発生していて,甚大な被害を与えている。今,ある火山から溶岩と,その中に含まれていた,大きさ 0.1 m 程度のまるい岩石を多数採集してきた。これらを偏光顕微鏡で調べたところ,以下の(a)から(d)の 4 種類の岩石に分類された。また,(a)と同じ種類の岩石はここの地域に広く分布し,その一部はこの溶岩によって覆われていること,(c)や(d)と同じ種類の岩石は溶岩の中にしか見出されないことが地質調査の結果判明した。
(a) 石英,斜長石,カリ長石,黒雲母がほぼ等量程度含まれていた。これらはいずれも数 m m 程度の大きさであった。
(b) 数 m m 程度の柱状の輝石,数 m m 程度の柱状の斜長石がほぼ等量含まれ,それらの周囲は微細な結晶とガラスから構成され,色指数は 60 であった。
(c) 少量のカンラン石に加えて,数 m m 程度の輝石と数 m m 程度の斜長石が同量程度含まれていた。
(d) 数 m m 程度の柱状のカンラン石と数 m m 程度の斜長石が同量程度含まれていた。
問1 この溶岩の岩石名を以下の中から選べ。
凝灰岩,玄武岩,安山岩,デイサイト,流紋岩,砂岩
問2 (a)の岩石名を以下の中から選べ。
はんれい岩,玄武岩,デイサイト,流紋岩,花こう岩,安山岩
問3 (c)の岩石はどれか,以下の中から選べ。
はんれい岩,玄武岩,かんらん岩,石灰岩,閃緑岩,流紋岩
問4 (a)の岩石が溶岩の中に含まれているのはどのような理由か,50 字以内で述べよ。
問5 (b),(c),(d)の岩石は相互に類似した化学組成の鉱物をもち,それらの野外における産出状況から,でき方に関して密接な関係を持つことが推測された。これらの岩石の成因は互いにどのように関係していたと考えられるか,溶岩を供給したマグマだまりの中での結晶分化作用と関連づけて 100 字以内で説明せよ。
第1問 金星と、超新星のリングで距離をはかる 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 天体までの距離を「角度」からはかる問題。道具は1つで、小さい角なら、角度(ラジアン)× 距離 = その角度が見こむ長さ 。
問題の書き出しにある約束がそのための換算表になっている。1 パーセク先の 1 天文単位が 1 秒角に見えるので、1 秒角 = 1 天文単位 1 パーセク = 1 2.1 × 10 5 ラジアン。つまり「長さ = 距離 × 秒角 ÷ ( 2.1 × 10 5 ) 」と計算すればよい(本当は 1 / 206265 だが、問題の値を使う)。
Ⅰは金星。2か所から同時に見たときの位置のずれ(視差)と、見かけの大きさ(視直径)が距離に反比例することを使う。
Ⅱは超新星 1987A のまわりのリング。爆発の光がリングで光り直して地球へ届くまでの「遠回りの時間」から、リングの大きさを光の速さで測る。大きさが分かれば、見かけの大きさ(角度)から距離が出る。
Ⅰ(1) 2人の観測者は、金星の方向に垂直に R はなれている。金星はとても遠い背景の星にくらべて近いので、2人からは背景の星に対してちがう位置に見える。その角度のずれ 10 秒角は、金星から2人を見こむ角と同じ。
R = 4.1 × 10 7 × 10 2.1 × 10 5 = 1.95 × 10 3 k m
地球の直径(約 13000 km)よりずっと短く、地球の上の2人として無理のない長さ。デモのグラフのように、同じ2人でも金星が遠いとずれは小さくなる(いちばん遠いときは約 1.6 秒角)。
答え 2.0 × 10 3 k m ( R = 4.1 × 10 7 × 10 2.1 × 10 5 )
Ⅰ(2) 見かけの大きさ(視直径)は距離に反比例する。いちばん近いとき 64 秒角・いちばん遠いとき 10 秒角なので、いちばん遠い距離は
4.1 × 10 7 × 64 10 = 2.62 × 10 8 k m
同じ平面で円を描いて回っているので、いちばん近いのは金星が太陽と地球の間にあるとき(距離 = 地球の半径 − 金星の半径)、いちばん遠いのは太陽の向こう側にあるとき(距離 = 地球の半径 + 金星の半径)。
和と差の半分をとって、地球の軌道半径 a E = 4.1 × 10 7 + 2.62 × 10 8 2 、金星の軌道半径 a V = 2.62 × 10 8 − 4.1 × 10 7 2 。それぞれ有効数字2桁にまとめる。
デモでは、この半径で地球と金星をケプラーの第3法則の周期で回すと、金星の見かけの大きさが 64 秒角と 10 秒角の間を約 600 日ごとにくり返す。
答え 地球 1.5 × 10 8 k m ,金星 1.1 × 10 8 k m (最も遠いとき 4.1 × 10 7 × 64 10 = 2.6 × 10 8 k m 。和と差の半分)
Ⅱ(1) 図1—2 で、観測者はリングの面の垂線 N から θ だけ傾いた方向のずっと遠くにいる。まっすぐ来る光 A を基準にして、リングで光り直した光がどれだけ遠回りするかを考える。
超新星からリングまでは、どの点へも r 。リングの点 B′(地球にいちばん近い点)は、超新星より地球の方へ r sin θ だけ前に出ているので、そこから地球までの道のりは A より r sin θ 短い。遠回りは r − r sin θ 。
リングの点 C′(いちばん遠い点)は逆に r sin θ だけ後ろにあり、遠回りは r + r sin θ 。遠回りを光の速さ c で割れば、爆発の光より遅れて届く時間になる。
図の H は、B′ から C′C の線に下ろした垂線の足。だから H から C′ までの長さは、B′ と C′ の前後の差 2 r sin θ にあたる(c ( t 1 − t 0 ) = 310 光日)。超新星から見た C′ の後ろへのずれ r sin θ (155 光日)は、その半分。
デモでは、リングを細かい点に分けて、地球を本当に遠くに置いて道のりの差を測っても、同じ遅れになる。
答え t 0 = r ( 1 − sin θ ) c , t 1 = r ( 1 + sin θ ) c
Ⅱ(2) t 0 + t 1 = 2 r c = 90 + 400 = 490 日
なので r = 245 光日(光が 245 日で進む距離)。
問題の約束では 1 光年 = 光の速さ × 365 日、1 パーセク = 3.3 光年なので
r = 245 365 × 3.3 ≈ 0.203 パーセク
ついでに、引き算からは sin θ = 400 − 90 400 + 90 ≈ 0.63 、θ は約 39°。
なるほどポイント:超新星から見れば、光は 245 日目にリング全体に同時に届いている。地球で 90 日目から 400 日目まで順に光って見えるのは、地球までの道のりが点ごとにちがうから。デモで t 0 = t 1 (真正面から見る)にすると、リングは一度に光る。
答え 0.20 パーセク ( t 0 + t 1 = 2 r c = 490 日より r = 245 光日 = 245 365 × 3.3 )
Ⅱ(3) 円いリングを傾けて見ると楕円になるが、縮むのは傾けた向き(B′C′ の向き)だけで、それと直角な向きの直径は縮まない。だから、楕円の長軸方向の直径 1.6 秒角は、リングの本当の直径 2 r を見こむ角。
角度 × 距離 = 長さ なので、距離 = 長さ ÷ 角度。2 r = 0.407 パーセク = 0.407 × 2.1 × 10 5 天文単位で、1 天文単位が 1 秒角に見える距離が 1 パーセクだから
D = 0.407 × 2.1 × 10 5 1.6 ≈ 5.3 × 10 4 パーセク
大マゼラン雲までの距離として知られている約 5 万パーセクとよく合う。デモで傾き(t 0 、t 1 )を変えても、長軸から出す距離は変わらない。
答え 5.3 × 10 4 パーセク (長軸は傾けても縮まない: 2 × 0.203 × 2.1 × 10 5 1.6 )
第2問 熱を運ぶ大気と海、そして黒潮 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半(Ⅰ)は、地球全体で熱が赤道から極へ運ばれるしくみの問題。低緯度は太陽からたくさんエネルギーを受け取り、高緯度は受け取る量より宇宙へ出す量が多い。それでも低緯度がどんどん熱くなったり、極がどんどん冷えたりしないのは、大気と海洋が熱を極の方へ運んでいるから。図2—1 はその運ばれる量を緯度ごとに示したグラフで、北向きを正、南向きを負にとっている。
後半(Ⅱ)は黒潮。海面が沖側で高く岸側で低いと、海の中の同じ高さ(同じ水平な面の上)では沖側ほど水圧が大きく、水を岸側へ押す力(圧力傾度力)がはたらく。一方、地球の自転のため、動いている水には北半球では進む向きの右へ曲げる見かけの力(コリオリの力、大きさ f v )がはたらく。この2つがつり合った流れが (1) 式で、地衡流 とよばれる。
(1) 式は「坂の力 g Δ h L = コリオリの力 f v 」を v について解いた形。最後の問いは、流れが運んでくる熱と海面から出ていく熱のつり合いの勘定。
Ⅰ a〜c:地球の表面が受け取る太陽放射量は、太陽が高くのぼる低緯度で多く、低くしかのぼらない高緯度で少ない(1年で平均すると、大気の上の端に来る日射で赤道は約 420 W/m²、極は約 170 W/m²。地表に届く量はこれより少ないが、低緯度で多く高緯度で少ない形は変わらない)。だから a は太陽放射量、b は低緯度、c は高緯度。この「低緯度で余り、高緯度で足りない」をならすために、熱が低緯度から高緯度へ運ばれる。
d・e:太い実線は細い実線と破線を足したもの。細い実線は低緯度(北緯 20〜30° 付近)で大きく、破線は中・高緯度(北緯 40〜50° 付近)で大きい。低緯度から中緯度へ熱を運ぶのは黒潮や湾流などの海流、中・高緯度で熱を運ぶのは温帯の高気圧・低気圧(偏西風の波)なので、細い実線が海洋、破線が大気。高緯度では海面が氷におおわれることもあり、海洋の運ぶ量は小さい。
f:北半球では北向き(正)、南半球では南向き(負)に運ばれている。どちらも極へ向かう=極向き。
デモのグラフを「熱の余り・不足」に切りかえると、図の線の上がり下がりから、緯度 35° ほどより赤道側の帯で熱が余り、極側の帯で足りないことが分かる。運ばれる量がいちばん多いのは、その境目の緯度。
答え a—10,b—1,c—2,d—7,e—5,f—12
Ⅱ問1 まず圧力の差を考える。海面は沖側(南)が高い。海の中の同じ高さ(同じ水平な面の上)で比べると、沖側の方が上に乗っている水が Δ h の分だけ多いので水圧が大きい。答えで「同じ高さ」と書くのはこのため。それぞれの場所の海面から測った同じ深さで比べると、海水の密度が一様なら水圧は同じになるので、「同じ深さ」ではなく「同じ高さ(同じ水平な面)」で比べる。水は圧力の大きい方から小さい方へ押されるので、圧力傾度力は沖側から岸側、つまり流れに直角に岸側(北)へ向く。
次にコリオリの力。北半球では、動いている水には進む向きの右へ曲げる力がはたらく。黒潮はおよそ東(北東)へ流れているので、その右は南=沖側。
流れが一定の速さで続くには、流れに直角な向きの力がつり合っていなければならない。岸向きの圧力傾度力と、沖向きのコリオリの力が向かい合ってつり合っている。
デモの上から見た図のように、止まった水を放すと、まず坂の力で岸の方へ動き出し、コリオリの力で右へ曲げられて下流へ向きを変える。デモの計算には摩擦が無いので、一定の流れに落ちつくことはなく、約 1 日(2 π / f )ごとに止まりかけてはまた動き出す輪を描き続ける(下流向きの速さは 0 と 2 v の間をゆれ、岸の向きには 2 v / f 、はじめの設定で約 37 km より先へは行かない)。このゆれをならした平均が (1) 式の v で、平均すると岸を左に見て下流へ流れる。実際の海では摩擦などでこのゆれが弱まり、ほぼ (1) 式のつり合った流れが残る。岸に向かって押されているのに、平均すると岸へは行かずに岸にそって流れる。
輪が岸の向きへ張り出す距離 2 v / f は、流れの幅 L が狭いほど、緯度が低いほど大きくなり、幅を 50 km にすると 74 km、さらに北緯 15° にすると 275 km と、流れの幅を越える。デモは坂の力をどこでも同じとしているので、そういう設定では輪の大きさに意味はなく、ならした平均の流れだけが意味を持つ(デモの上から見た図の右上に赤字で出る)。
答え 流れに直角に岸側(北側)へ働く。沖側の海面が高いので,同じ高さでは沖側ほど水圧が大きく,水は沖側から岸側へ押されるからである。この力が,北半球で流れの右側(沖側)へ働くコリオリの力とつりあう。
Ⅱ問2 体積流量は 1 秒間に断面を通る水の体積なので、平均の流速 × 流れの幅 × 流れの厚さ = v L H 。(1) 式を入れると
v L H = g Δ h f L · L · H = g Δ h H f
流れの幅 L が消えるので、L を知らなくても求められる。
f = 2 ω sin 30 ∘ = 2 × 7.3 × 10 − 5 × 0.50 = 7.3 × 10 − 5 s − 1
v L H = 9.8 × 1.0 × 300 7.3 × 10 − 5 ≈ 4.03 × 10 7 m 3 s − 1
デモで流れの幅を半分にすると、速さは2倍になるが流量は変わらない。
答え 4.0 × 10 7 m 3 s − 1 ( v L H = g Δ h H f = 9.8 × 1.0 × 300 2 × 7.3 × 10 − 5 × 0.50 )
Ⅱ問3 (1) 式を Δ h について解くと Δ h = f L v g 。v と L が断面A と B で同じなら、Δ h はコリオリの係数 f に比例し、f = 2 ω sin ϕ なので sin ϕ に比例する。
Δ h B = Δ h A × sin 37 ∘ sin 30 ∘ = 1.0 × 0.60 0.50
北へ行くほどコリオリの力が強くなるので、同じ速さの流れを支える坂の力も大きくなければならない(海面の高さの差が大きくなる)。デモでは、北緯 37° で同じ平均の速さになる Δ h を探すと、この値になる。
答え 1.2 m ( v , L が同じなら Δ h ∝ f ∝ sin ϕ : 1.0 × 0.60 0.50 )
Ⅱ問4 黒潮が A から B へ流れる間に、海面から大気へ毎秒 4.0 × 10 14 J の熱が出ていく。横からの熱の出入りは無視するので、この熱は黒潮が A から運んでくる熱と B へ運び出す熱の差でまかなわれる。つまり、流れる水は A から B へ行く間に冷える。
1 秒間に流れる水の質量は 1.0 × 10 3 × 3.0 × 10 7 = 3.0 × 10 10 k g 。この水の温度が Δ T 下がるときに出す熱は(質量)×(比熱)×Δ T なので
3.0 × 10 10 × 4.2 × 10 3 × Δ T = 4.0 × 10 14
Δ T = 4.0 × 10 14 1.26 × 10 14 ≈ 3.17 K
上流の断面A の方が高い。有効数字2桁にまとめる。
デモでは、A から B までを箱に分けて水を流しながら熱を出させると、しばらくして水温が A から B へまっすぐ下がる形に落ちつき、B で A よりこの分だけ低くなる。流量が半分なら、同じ熱を出すのに水温は2倍下がる。
答え 断面Aの方が 3.2 K 高い( 4.0 × 10 14 1.0 × 10 3 × 4.2 × 10 3 × 3.0 × 10 7 )
第3問 溶岩の中のまるい岩石は、どこから来たか 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 火成岩を「組織」と「鉱物の組み合わせ」で見分け、野外での出方からでき方を考える問題。
組織 :マグマが地表や地表近くで急に冷えると、大きな結晶(斑晶)のまわりを細かい結晶やガラス(石基)がうめる斑状組織になる=火山岩。地下深くでゆっくり冷えると、どの結晶も大きく育った等粒状組織になる=深成岩。
鉱物の組み合わせと色指数 (黒っぽい鉱物の体積の割合):石英やカリ長石を多く含み色指数が小さいものは酸性岩(流紋岩・花こう岩)、カンラン石や輝石を多く含み色指数が大きいもの(およそ 35〜70)は塩基性岩(玄武岩・はんれい岩)。その間が中性岩(安山岩・閃緑岩)。
出方 :(a) は地域に広くあり、溶岩の下にある=火山より前からあった岩。(c)(d) は溶岩の中にしか無い=マグマといっしょに地下から来た岩。
問1 溶岩そのものは、4種類のうちどれか。(a) は地域に広く分布する別の岩、(c)(d) は溶岩の中にだけ入っているまるい岩石なので、溶岩は (b) と考えられる。
(b) は斑晶(輝石と斜長石)のまわりが細かい結晶とガラスで、斑状組織の火山岩。色指数 60 は黒っぽい鉱物がとても多いことを示し、輝石と斜長石の組み合わせとあわせて塩基性の火山岩(問題文には書いていないが、塩基性岩の斜長石はカルシウムに富む)。
選択肢のうち、凝灰岩と砂岩は堆積岩、安山岩・デイサイト・流紋岩は色指数がもっと小さい火山岩なので外れる。
問2 (a) は石英・斜長石・カリ長石・黒雲母を含む。石英とカリ長石を多く含むので酸性の岩石。
結晶はどれも数 mm で大きさがそろっている(等粒状組織)ので、地下深くでゆっくり冷えてできた深成岩。酸性の深成岩の名前を選ぶ。流紋岩とデイサイトは同じような成分の火山岩なので、斑状組織になるはず。
問3 (c) はカンラン石・輝石・斜長石で、石英やカリ長石を含まない塩基性の組み合わせ。結晶はどれも数 mm の等粒状組織なので深成岩。
塩基性の深成岩を選ぶ。かんらん岩はカンラン石が主で斜長石をほとんど含まない超塩基性岩、閃緑岩は中性岩、玄武岩は同じ成分の火山岩、石灰岩と流紋岩は成分が全くちがうので外れる。
(d)(カンラン石と斜長石)も同じなかまの、よりカンラン石の多い深成岩。
問4 (a) の花こう岩は、この地域に広く分布し、溶岩におおわれている。つまり火山ができる前から、地表近くから地下にかけて広がっていた岩(基盤の岩)。
マグマは地下のマグマだまりから地表へ上がるとき、この花こう岩の中を通る。通り道の壁の岩を割って取りこむと、その破片はマグマの中に入ったまま運ばれ、溶岩の中に残る。このような岩を捕獲岩という。
デモでは、かけらを「マグマが上がる速さ − かけらがしずむ速さ」で動かしている。花こう岩はマグマとほぼ同じ重さなのでほとんどしずまず、マグマといっしょに上がる(デモではどちらも 2650 kg/m³ とした。花こう岩を 2900 kg/m³ に重くすると 1 日に約 1.2 km しずむが、マグマが 0.1 m/s で上がれば、それでも運び上げられる)。
答え マグマが上昇する途中で,周囲に広く分布する花こう岩を破片として取りこみ,そのまま噴出したから。
問5 (b)(c)(d) の鉱物はどれも輝石・カンラン石・斜長石のなかまで、似た成分をもつ。(c)(d) は溶岩の中にしか無いので、同じマグマから生まれたと考えるのが自然。
玄武岩質のマグマがマグマだまりでゆっくり冷えると、決まった順に結晶ができる。有色鉱物では先にカンラン石、次に輝石。斜長石はその間ずっとできる。先にできたカンラン石や輝石はマグマより重いので、しずんで底にたまる。こうして結晶がマグマから分かれていくと、残りのマグマの成分が少しずつ変わっていく。これを結晶分化作用という。
まずカンラン石と斜長石がたまって (d) の岩、次に輝石が加わって (c) の岩が、マグマだまりの底で深成岩のようにゆっくり固まる。
カンラン石を取りのぞかれた残りのマグマは、輝石と斜長石の結晶を浮かべたまま地表へ噴き出し、急に冷えて (b) の溶岩になる。(b) の斑晶に輝石と斜長石だけがあってカンラン石が無いのは、この順番と合う。噴き出すとき、底の (c)(d) の岩をかけらとして取りこんだ。
デモでは、半径 1 mm のカンラン石の結晶が玄武岩質マグマの中で 1 日に約 1.2 m しずむ。ねばりけが 1000 倍のマグマでは、1 年でも 0.5 m ほどしかしずまず、結晶は分かれにくい。
答え マグマだまりの玄武岩質マグマから,先に晶出したカンラン石と斜長石が沈積して(d),次に輝石が加わって(c)ができ,カンラン石を失った残りのマグマが輝石と斜長石を斑晶に含んだまま噴出して(b)になった。