— 60 —
地 学
第1問 以下の問Ⅰ~Ⅲに答えよ。数値での解答には有効数字 2 桁で答え,計算の過程も示せ。必要であれば,log 10 2 = 0.30 ,log 10 2.5 = 0.40 ,log 10 3 = 0.48 を用いてよい。
問Ⅰ 恒星から放射されるエネルギーの強度は,図1—1に示すように温度によって決まる放射(黒体放射)のスペクトルで近似できる。このとき,以下の問いに答えよ。ただし,O6型主系列星の表面温度は 40000 K ,M6型主系列星の表面温度は 3000 K とする。
(1) 黒体放射スペクトルが最大となる波長と温度には一意の関係がある(ウィーンの変位則)。O6型主系列星からの放射エネルギーの強度が最大となる波長を求めよ。
(2) 肉眼では,O6型主系列星は青白く,M6型主系列星は赤く見える。この理由を図1—1を参考にして説明せよ。
(3) 太陽黒点は周囲に比べて温度が低い。このことから,太陽黒点が肉眼で黒く見える理由を図1—1を参考にして説明せよ。
(4) 太陽から放射されるX線の強度は,その表面温度の黒体放射から予想される強度より大幅に大きいことが知られている。その理由を述べよ。
— 61 —
図1—1 黒体放射スペクトルと温度の関係
— 62 —
問Ⅱ 主系列星の光度 L と半径 R は質量 M に依存する。このことに関する以下の問いに答えよ。ただし,太陽の光度を L ⊙ ,半径を R ⊙ ,質量を M ⊙ ,表面温度を 6000 K とする。また,O6型主系列星の質量を 30 M ⊙ ,表面温度を 40000 K とする。
(1) 質量が 10 M ⊙ 以下の主系列星では,光度は質量の 4 乗に比例する。一方,それよりも質量の大きな主系列星では,光度は質量の 2 乗に比例する。このことから,O6型主系列星の光度を L ⊙ を用いて答えよ。
(2) O6型主系列星の半径を R ⊙ を用いて答えよ。ただし,恒星表面からの放射はシュテファン・ボルツマンの法則に従うものとする。
(3) 1 M ⊙ 以上の質量を持つ主系列星では,半径は質量の n 乗に比例するとする。(2)の結果を用いて,n の値を求めよ。
(4) 主系列星の寿命は,質量を光度で割った量 ( M L ) に比例する。このとき,O6型主系列星の寿命を求めよ。ただし,質量が 10 M ⊙ の主系列星の寿命を 2000 万年とする。
— 64 —
問Ⅲ ある球状星団を観測し,個々の恒星のスペクトル型と見かけの等級の関係をグラフにしたところ,図1—2のようになった。この球状星団についての以下の問いに答えよ。ただし,太陽(G2型星)の絶対等級は 5 等級とする。
(1) 球状星団での星形成は過去のある時点で一斉に起こり,その後は星形成活動が行われていないと考えられている。図1—2の球状星団が星形成を行ってから現在までの期間の長さは太陽の寿命の何倍かを,その理由とともに答えよ。ただし,ここでの解答は有効数字 1 桁でよい。
(2) 別の観測から,この球状星団の手前に星間雲が広がっており,見かけの等級は星間雲がない場合に比べて 1 等級暗くなっていることが明らかになった。このとき,この球状星団までの距離を求めよ。
— 65 —
図1—2 ある球状星団に含まれる恒星の見かけの等級とスペクトル型の関係
— 68 —
第2問 大気と海洋に関する以下の問Ⅰ~Ⅱに答えよ。
問Ⅰ 活発な水の循環は,地球大気および地球の気候を特徴づける要素の一つである。大気中の水蒸気は,地球表面からの蒸発により供給され,降水により除去される。また,降水過程に伴う水蒸気の凝結は,潜熱を解放することで大気循環の駆動源となる。
図2—1は,経度方向に平均した年平均の降水量と蒸発量の緯度分布を示したものである。これに関して以下の問いに答えよ。数値での解答には有効数字 1 桁で答え,計算の過程も示せ。
(1) 図2—1のA,Bの線は,降水量と蒸発量を表している。それぞれがどちらに対応するか答えよ。また,Bに矢印で示した北緯 5 度付近の極大域を何とよぶか答えよ。
(2) 降水量と蒸発量は局所的につり合っておらず,その不均衡は低緯度で特に顕著である。これを補うような大規模な大気の循環を何とよぶか答えよ。また,大気中の水蒸気収支におけるその循環の役割について,循環の向きを明示しつつ 2 行以内で説明せよ。
(3) (2)で答えた循環をはじめ,低緯度で吹く風は地衡風で説明できない場合が多い。赤道近くの風が地衡風ではない理由を 1 行で説明せよ。
— 69 —
(4) 図2—1に示した降水が,気圧 600 h P a と 400 h P a の間の大気層で一様に生じる水蒸気の凝結によりもたらされると仮定したときに,北緯 5 度において,その大気層に加えられる熱量は 1 日あたり何℃の気温上昇に相当するかを求めよ。ただし,降水量の値は図から読み取り,必要に応じて凝結の潜熱 L = 2.5 × 10 6 J / k g ,大気の定圧比熱容量(気圧によらないとする)c p = 1.0 × 10 3 J / ( k g ℃ ) ,重力加速度 g = 9.8 m / s 2 を用いること。また,凝結に伴う大気質量の変化は無視してよい。
図2—1 経度方向に平均した年平均の降水量と蒸発量の緯度分布
— 72 —
問Ⅱ 海水の密度と海洋の深層循環について述べた次の文章を読み,以下の問いに答えよ。数値での解答には有効数字 2 桁で答え,計算の過程も示せ。
海洋の温度分布を鉛直方向に見ると,多くの場所では図2—2の実線のようになっている。海面付近には温度が比較的一様な a があり,その下には温度が深さとともに急激に変化する水温躍層が存在し,さらにその下には低温な深層水が存在する。こうした場所では深くなるにつれて密度が高くなっており,このことは表層と深層の海水交換が活発でないことを示す。
一方,大西洋北縁(グリーンランド海やラブラドル海)では,図2—2の破線のように,海面付近から深層まで一様で低温な温度分布が見られる。このような場所では,(ア)大気による冷却で高密度化した海面付近の海水が深層へ沈むという深層水形成が生じており,全世界の海洋の深層を占める低温水の源になっている。(イ)この深層水は,全世界の海洋深層をめぐりながらゆるやかに上昇し,最終的に深層水形成場所の海面付近に戻ってくる。
海水の密度は温度だけでなく塩分にも依存し,(ウ)海面付近での海水の高塩分化が主要因となって深層水形成が生じている場所も存在する。
(1) 上の文章中の空欄 a に入れるべき最も適切な語を答えよ。また,それが形成される理由を 2 行以内で説明せよ。
(2) 下線部(ア)に関して,深層水形成が起こる場所では他の場所よりも顕著に多くの熱が海面から奪われる。1.0 × 10 3 W / m 2 の熱によって 1 m 2 の海面の下にある質量 1 k g の海水が一様に冷却される場合,1 秒あたりの密度増加を求めよ。ただし,海水の比熱容量を 4.0 × 10 3 J / ( k g ℃ ) とし,1 ℃ の温度低下は 0.25 k g / m 3 の密度増加をもたらすとする。
— 73 —
(3) (2)で述べた冷却の大部分は海水の蒸発によるが,蒸発は塩分の増加を通しても密度を高める。1 m 2 の海面の下にある塩分 S = 35 ‰ を持つ質量 M = 1 k g の海水を考え,その海面から 1.0 × 10 3 W / m 2 の熱を奪うだけの蒸発が起こった結果として塩分が一様に増加する場合,1 秒あたりの密度増加を求めよ。ただし,蒸発による 1 秒あたりの海水質量変化が Δ M [ k g / s ] のとき,塩分変化 Δ S [ ‰ / s ] は S × Δ M M で近似できることを用いてよい。また,海水蒸発の潜熱は 2.5 × 10 6 J / k g であり,1 ‰ の塩分増加は 0.75 k g / m 3 の密度増加をもたらすとする。
(4) 海洋の表層循環が成因の面からは風成循環とよばれるのに対して,下線部(イ)の深層循環は成因の面からは何とよばれるか答えよ。また,この循環はどのようにして全地球規模の気候に影響を及ぼすか,例をひとつ挙げて 2 行以内で説明せよ。
(5) 下線部(ウ)に該当する場所の代表は,地中海および南極大陸の周囲である。これらの海域の海面付近の海水を高塩分化する原因は何か,それぞれについて 1 行で答えよ。
図2—2 3月における海洋の鉛直方向温度分布。実線は東経180度,北緯40度(太平洋中央部),破線は西経5度,北緯75度(グリーンランド海)。
— 76 —
第3問 以下の問Ⅰ~Ⅱに答えよ。
問Ⅰ 地球の表面は球面であり,これを覆う変形しない板であるプレートの運動は,地球の中心を通る軸のまわりの回転運動である。図3—1のプレートAとプレートBの間には,プレートが形成される拡大境界である中央海嶺が存在する。図3—2は,この中央海嶺の一部を模式的に示したものである。
図3—1 プレートAとプレートBの相対的な運動
— 77 —
図3—2 プレート間の拡大境界(中央海嶺)の模式図
(1) 中央海嶺の軸は,ところどころで断裂帯を境にしてずれている。図3—2で,軸の間をつなぐ部分(点Sと点Tの間)はプレートAとプレートBの境界をなす断層となるが,このような断層を何とよぶか。
(2) 図3—2の点Sと点Tの間の断層において起きる横ずれ断層型の地震について考える。
(a) 断層におけるずれの向きを,点S,Tを含めた図を描き,矢印を用いて示せ。
(b) 震央が点Uである場合,この地震による初動が,震源から外に向かう押し波になる領域を,点S,T,Uを含めた図を描いて示せ。
— 78 —
(3) 図3—2のような,現在拡大を続けている中央海嶺付近における地磁気の強さ(全磁力)の強弱の分布を,図3—3に白と黒の 2 色で模式的に示す。このような縞状の地磁気異常の原因は,海洋底の岩石が冷却した時点の地磁気の方向に磁化し,その磁気を保持していることである。
(a) 岩石がこのようにして獲得し,保持している磁気を何とよぶか。
(b) 図3—3において黒で示した部分では,白で示した部分に比べて全磁力が強いか弱いかを,理由を含めて 2 ~3 行で答えよ。
図3—3 中央海嶺付近における全磁力の強弱分布の模式図
— 79 —
(4) 図3—1において,プレートAとプレートBの相対的な運動を考える。この相対的な運動もまた,ある軸のまわりの回転運動であり,その回転の速さ(角速度)はプレート内のどこにおいても等しい。回転軸が地表面を通る点(回転の極)をP,地球の中心をOとする。点Q,点RはプレートAとプレートBの間の中央海嶺の軸上にあり,∠ P O Q = 30 ∘ ,∠ P O R = 60 ∘ である。
点Qの付近で地磁気異常の縞模様を調べた結果,プレートA,プレートBのいずれにおいても,海嶺の軸から拡大方向に 65 k m 離れた地点の海底は,現在から 300 万年前に形成されたことがわかった。プレートAとプレートBの運動は過去 300 万年間変化していないものとして,点RにおけるプレートAとプレートBの相対的な運動の速さを,c m / 年を単位として有効数字 2 桁で求めよ。
— 80 —
問Ⅱ 次の文章を読み,以下の問いに答えよ。
図3—4はある地域の地質図であり,破線は 50 m 間隔の等高線を示す。岩体Aは貫入した花こう岩,地層Bは石灰岩,地層C~Gは砕せつ物からなる堆積岩であり,Bからはこの地層が古第三紀に堆積したことを示す化石が見つかった。B~Fの境界面の走向および傾斜は図中に示されている通りである。このことから,これらの地層はほぼ南北方向に走る軸を持つ ア 構造を作っていると考えられる。また,GとA,E,Fとの境界面は傾斜 0 ∘ であり,Gの最下部には基底礫岩が含まれる。このことから,GとA,E,Fとの境界は イ であることがわかる。また,Bの中でAとの境界に近い部分は接触変成作用を受け,ウ になっていた。
(1) 文章の空欄 ア ~ ウ を埋めよ。
(2) 花こう岩とはどのような岩石か。組織と化学組成についてその特徴を 1 行で述べよ。
(3) 下線部に関して,Bから見つかる可能性のある化石を以下の選択肢から 1 つ選べ。
イノセラムス,フデイシ(筆石),アンモナイト,カヘイ石(ヌンムリテス),サンヨウチュウ(三葉虫)
(4) この地質図から判断できるこの地域の地史(堆積や地質構造の形成の順番)をA~Gの岩体及び地層の記号を用いて 3 行以内で説明せよ。ただし地層の上下の逆転はないものとする。
— 81 —
図3—4 ある地域の地質図
第1問 星の色・重さ・年齢 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 星の「色」「重さ」「年齢」を、放射の法則でつないでいく問題。使う道具は3つある。
黒体放射 :星の表面から出る光は、温度だけで形が決まるスペクトル(黒体放射)で近似できる。温度が高いほど、どの波長でも強く、山(一番強い波長)が短い波長の側へ動く。山の波長と温度の積が一定(ウィーンの変位則 λ max T ≈ 2.9 × 10 3 μ m · K )。1 m² から出る光の合計は温度の4乗に比例する(シュテファン・ボルツマンの法則 E = σ T 4 )。
主系列星の質量と光度 :問Ⅱでは「光度は質量の4乗(10 M ⊙ より重いと2乗)」というきまりが与えられる。星全体の光度は、表面積 × 1 m² あたりの放射なので L = 4 π R 2 σ T 4 。寿命は「燃料の量(質量)÷ 使う速さ(光度)」に比例する。
HR図と星団の年齢 :星団の星はいっせいに生まれた。重い星ほど早く主系列を離れるので、主系列が曲がり始める点(転向点)の星の寿命が、そのまま星団の年齢になる。距離は見かけの等級 m と絶対等級 M から m − M = 5 log 10 d 10 p c で出す。
問Ⅰ(1) ウィーンの変位則を使う。まず図1—1 で「山の波長 × 温度」がいくらかを読む。30000 K の曲線の山は約 0.1 μ m 、3000 K の山は約 1 μ m で、どれも積が約 3 × 10 3 μ m · K になる(ていねいに読むと 3000 K の山は 1 μ m より少し左で、積は 2.9 × 10 3 )。
問題はウィーンの定数の値を与えず、図1—1 を見せて「山の波長と温度には一意の関係がある」と言っているので、図から積を読んで使う形が問題の意図に近い。図の目盛りで「3000 K の山はちょうど 1 μm」と読むと積は 3.0 × 10 3 μ m · K 。O6型星は 40000 K なので
λ max = 3.0 × 10 3 μ m · K 4.0 × 10 4 K = 7.5 × 10 − 2 μ m
これは見える光(約 0.4〜0.7 μm)よりずっと短い紫外線。
ウィーンの定数 2.898 × 10 3 μ m · K (約 2.9 × 10 3 )を覚えていて使うと、2.898 × 10 3 ÷ ( 4.0 × 10 4 ) = 0.07245 で、有効数字2桁では 7.2 × 10 − 2 μ m になる(2.9 × 10 3 に丸めてから割ると 0.0725 で、2桁目が 2 か 3 か決まらない)。有効数字の2桁目は図の読み方と使う定数で変わるので、どの値を使ったかを計算の過程に書いておくとよい。デモでは、プランクの式の山を数値で探した値がウィーンの式と一致し、図の4本の山も同じ積になっている。図を画素から細かく読むと 3000 K の山は 0.97 μm で、「1 μm」の読みとの差は 3%(目盛りで読む幅のうち)。
答え 7.5 × 10 − 2 μ m (図1—1 の 3000 K の山は 1 μm なので λ T = 3.0 × 10 3 μ m · K , λ = 3.0 × 10 3 μ m · K 4.0 × 10 4 K 。ウィーンの定数 2898 μ m · K (約 2.9 × 10 3 )を使えば 7.2 × 10 − 2 μ m )
問Ⅰ(2) 人の目が感じる光(可視光)は約 0.4 μ m (青・紫)から 0.7 μ m (赤)の狭い範囲だけ。星の色は、この範囲の中で青の側と赤の側のどちらが強いかで決まる。
O6型星(40000 K)の山は紫外線にあるので、可視光の範囲はスペクトルの右側の下り坂にあたる。波長が短い青の側ほど強いので、青白く見える。
M6型星(3000 K)の山は約 1 μm の赤外線にあるので、可視光の範囲は左側の上り坂。波長の長い赤の側ほど強いので、赤く見える。
デモの右のグラフは、可視光の所だけを取り出して 0.55 μm(緑)の強さを 1 にそろえたもの。青の帯と赤の帯の強さの比は、O6型で約 3.9、M6型で約 0.25 になる。
答え 可視光(約0.4〜0.7 μm)の範囲で,表面温度の高いO6型星は放射の強さが波長の短い青の側ほど強く,温度の低いM6型星は波長の長い赤の側ほど強いから(放射が最大となる波長は,O6型星では紫外線,M6型星では赤外線にある)。
問Ⅰ(3) 黒点の温度は約 4000 K、まわりの光球は約 6000 K。図1—1 のように、温度が低い曲線はどの波長でも温度が高い曲線より下にある。つまり黒点はどの色の光も、まわりより弱く出している。
どのくらい弱いか。全部の波長を合わせると ( 4000 / 6000 ) 4 ≈ 0.2 倍。可視光だけにしぼると、4000 K の山は赤外線の側へずれるので、さらに弱く約 0.1 倍になる。
黒点も光を出していないわけではない(黒点だけを取り出せば明るく光って見える)。まわりの明るい光球と並べると、その数分の1しかないので、目には黒く見える。
答え 黒点は周囲より温度が低いので,どの波長でも放射が周囲より弱く,特に可視光の強さは周囲の数分の1(4000 Kなら約0.1倍)しかない。明るい光球と並ぶと相対的に暗く,黒く見える。
問Ⅰ(4) X線は波長が約 0.01 μ m より短い光。6000 K の黒体放射では、山(約 0.5 μm)から遠く離れたこの波長の光は、指数の形で急に弱くなり、ほとんど0になる(デモの計算では、1 nm の光は 0.5 μm の光の 10 − 1000 倍より小さい)。
それなのに X線が強く出ているのは、光球(約 6000 K)とは別に、もっと温度の高い所があるから。太陽の外側に広がるコロナ は 100 万 K をこえるうすいガスで、この高温のガスが X線を出す。フレア(太陽の表面の爆発)のときには、さらに強い X線が出る。
答え 太陽の外層にある100万K以上の高温のコロナ(やフレア)のガスがX線を出しているから。約6000 Kの光球の黒体放射からはX線はほとんど出ない。
問Ⅱ(1) 質量によって比例のきまりが変わるので、10 M ⊙ で区切って2段階で計算する。
まず 10 M ⊙ までは L ∝ M 4 なので、10 M ⊙ の星の光度は 10 4 L ⊙ 。そこから 30 M ⊙ までは L ∝ M 2 なので
L = 10 4 L ⊙ × ( 30 10 ) 2 = 9 × 10 4 L ⊙
もし 4 乗のまま計算すると 30 4 ≈ 8 × 10 5 L ⊙ と 9 倍も大きくなってしまう。デモのグラフで、10 M ⊙ から先の線が点線(4 乗のまま)より下を通るのがこの差。
答え 9.0 × 10 4 L ⊙ (10 M ⊙ で 10 4 L ⊙ ,そこから ( 30 10 ) 2 倍)
問Ⅱ(2) 星全体の光度は、表面積 × 1 m² あたりの放射:L = 4 π R 2 σ T 4 。太陽とくらべると 4 π σ は消えて
L L ⊙ = ( R R ⊙ ) 2 ( T T ⊙ ) 4
R R ⊙ = L L ⊙ ( T ⊙ T ) 2 = 9 × 10 4 × ( 6000 40000 ) 2 = 300 × 0.0225 = 6.75
光度は 9 万倍でも、表面温度が 6.7 倍高いので1 m² あたりの放射は 6.7 4 ≈ 2000 倍。そのぶん半径は 7 倍ほどですむ。デモでは、σ T 4 を使わずにプランクの式を波長ごとに足しあげて同じ半径を探しても 6.75 になる。
答え 6.8 R ⊙ ( L ∝ R 2 T 4 より R = 9.0 × 10 4 × ( 6000 40000 ) 2 = 6.75 )
問Ⅱ(3) 太陽(1 M ⊙ 、1 R ⊙ )も O6型星も同じきまり R ∝ M n にのるので、30 n = 6.75 を解けばよい。両辺の常用対数をとると
n = log 10 6.75 log 10 30
与えられた対数の値を使うため、6.75 = 27 4 = 3 3 2 2 と分ける。log 10 6.75 = 3 × 0.48 − 2 × 0.30 = 0.84 、log 10 30 = 1 + 0.48 = 1.48 なので、n = 0.84 ÷ 1.48 を計算して有効数字2桁にする。
ていねいな対数の値で計算すると 0.56 になる。与えられた log 10 3 = 0.48 が少し大きめの値なので、2桁目が 1 ずれる。
答え n = 0.57 ( 30 n = 6.75 = 27 4 より n = 3 × 0.48 − 2 × 0.30 1 + 0.48 = 0.84 1.48 )
問Ⅱ(4) 寿命は M L に比例するので、10 M ⊙ の星とくらべる。
M L | 30 = 30 9 × 10 4 = 1 3000 , M L | 10 = 10 10 4 = 1 1000
比は 1 3 なので、2000 万年の 1 3 で約 670 万年。
重い星は燃料(質量)が3倍あっても、使う速さ(光度)が9倍なので、早く燃えつきる。デモで ▶ を押すと、30 M ⊙ の燃料の残りが一番早く 0 になる。同じきまりで太陽(1 M ⊙ )を計算すると 200 億年になり、実際の約 100 億年とはずれる(L ∝ M 4 は大まかなきまり)。
答え 6.7 × 10 6 年( 2000 万年 × 30 / ( 9.0 × 10 4 ) 10 / 10 4 = 2000 万年 × 1 3 )
問Ⅲ(1) 球状星団の星は、同じときにいっせいに生まれた。重い星ほど明るく、寿命が短い(問Ⅱ(4))ので、時間がたつと重い星から順に主系列を離れて巨星になる。
いま主系列の上に残っている星のうち、一番重い星(HR図で主系列の一番左上、主系列が右上へ曲がり始める点)は、ちょうど今、寿命を終えつつある。だから、この星の主系列の寿命が星団の年齢になる。
図1—2 で主系列が曲がり始める点は、G0 と K0 の間の、G0 に近い所(G2 型あたり)にある。G2 型は太陽と同じ型なので、そこにいる星は太陽と同じくらいの質量で、寿命も太陽と同じ。
デモでは年齢のつまみを動かすと曲がり角が主系列の上を動き、太陽の寿命の 1 倍でちょうど G2 に来る。
答え 1 倍。主系列から星が離れ始める点(転向点)が,太陽と同じG2型付近にある。太陽と同じ質量の星がちょうど主系列の寿命を終えつつあるので,星団の年齢は太陽の寿命と同じ。
問Ⅲ(2) 曲がり角にある G2 型の主系列星は太陽と同じ星なので、絶対等級は 5 等。図1—2 で G2 型の主系列の見かけの等級は約 18 等。
星間雲がなければ、この星は 1 等級明るく見えるはず。距離を出すには、星間雲の影響を除いた見かけの等級 18 − 1 = 17 等を使う。
17 − 5 = 12 = 5 log 10 d 10 p c
より log 10 d 10 p c = 2.4 、d = 10 3.4 p c 。
10 0.4 は log 10 2.5 = 0.40 を使うと 2.5 なので、d = 2.5 × 10 3 p c 。
星間雲の分を引き忘れると 10 3.6 ≈ 4.0 × 10 3 p c となり、暗く見える分だけ 1.6 倍遠いと見積もってしまう。
答え 2.5 × 10 3 p c (G2型の主系列星は見かけ18等,星間雲の分を除くと17等。 17 − 5 = 5 log 10 d 10 p c より d = 10 3.4 = 2.5 × 10 3 )
第2問 雨がくれる熱と、沈んでいく海水 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半(問Ⅰ)は、大気の中の水の出入り の問題。水蒸気は地表からの蒸発で大気に入り、雨(降水)で出ていく。ある緯度で降水と蒸発がつり合っていなければ、足りない分は風がほかの緯度から運んでいるはず。この「運び役」が大気の大きな循環になる。
また、水蒸気が凝結して雨になるとき、蒸発のときにもらった熱(潜熱)を大気に返す。最後の計算は、この潜熱で空気の層がどれだけ温まるかの勘定。空気の層の質量は、圧力の差を重力加速度で割れば出る(圧力は「その上にある空気の重さ」だから)。
後半(問Ⅱ)は、海水の密度 の問題。海水は冷えるほど、また塩分が高いほど重くなる。重くなった表面の水は沈み、下の水と入れかわる。これが深層水のでき方で、全世界の海の深い所をめぐる深層循環のもとになる。
問Ⅰ(1) 2本の線のうち、北緯 5 度付近にとがった山があるのが B、南北の緯度 20 度前後に大きなふくらみがあるのが A。
熱帯の赤道付近は、南北からの貿易風が集まって強い上昇気流ができ、背の高い積乱雲が並ぶ。ここで雨がたくさん降る。雨の量は狭い帯に集中するので、とがった山になる。だから B が降水量。
亜熱帯(緯度 20〜30 度)は、上空から空気が下りてくる亜熱帯高圧帯で、晴れて乾いた風が吹くので、海からの蒸発がさかん。だから A が蒸発量。
北緯 5 度付近の降水の帯は、南北の貿易風が集まる所で、熱帯収束帯 (赤道収束帯)という。デモで図の B を地球全体で平均すると約 2.7 kg/(m²日)(1 年で約 1000 mm)になり、実際の地球の平均降水量と合う。
答え A 蒸発量,B 降水量。矢印の極大域は熱帯収束帯(赤道収束帯)。
問Ⅰ(2) デモの下の帯は「降水 − 蒸発」。熱帯収束帯(北緯 0〜10 度)では降水の方が多く、亜熱帯(緯度 15〜35 度)では蒸発の方が多い。熱帯で足りない水蒸気は、亜熱帯から運ばれてきているはず。
これを運ぶのがハドレー循環 :熱帯収束帯で上昇した空気が上空で亜熱帯へ向かい、亜熱帯高圧帯で下降し、地表付近を貿易風として赤道側へもどる、南北の大きな循環。水蒸気は地表付近ほど多いので、運ばれる向きは下の流れ(貿易風)の向き、つまり亜熱帯から熱帯収束帯へ。
熱帯収束帯に集まった水蒸気は、上昇気流で持ち上げられて凝結し、雨になる。上空をもどる空気は雨を降らせたあとの乾いた空気なので、水蒸気をあまり運ばない。デモの計算では、北緯 20 度で水蒸気は南向き(赤道の方)に約 1.3 × 10 9 k g / s 運ばれている。ただしこれは目安の値:図から読んだ線を地球全体で平均すると蒸発 3.05・降水 2.65 kg/(m²日) で、ぴったりつり合っていない。デモは北半球は北極側から、南半球は南極側から別々に足しているので、赤道のすぐ北と南で値がつながらない(北で南向き約 0.9 × 10 9 、南で北向き約 1.5 × 10 9 )。図から確かに言えるのは「亜熱帯から熱帯へ運ばれる」という向きまで。
答え ハドレー循環。亜熱帯高圧帯で蒸発した水蒸気を,地表付近の貿易風が赤道側へ運んで熱帯収束帯に集め,上昇気流によって雨として降らせる。
問Ⅰ(3) 地衡風は、気圧の高い方から低い方へ押す力(気圧傾度力)と、地球の自転によるコリオリの力がつり合って、等圧線に平行に吹く風。
コリオリの力の大きさは、速さ × 2 Ω sin φ (Ω は地球の自転の角速度、φ は緯度)で、緯度の sin に比例する。赤道(φ = 0 )では 0、北緯 5 度でも 45 度の約 0.12 倍しかない。
同じ気圧の坂とつり合うには、コリオリの力が弱いぶん風がとても速くなければならず、赤道では無限に速くないとつり合わない。だから赤道近くの風は地衡風にならず、気圧の低い方へまっすぐ吹きこむ(熱帯収束帯に集まる)。
答え 赤道付近ではコリオリの力がほぼ0で,気圧傾度力とつり合えないから。
問Ⅰ(4) まず図2—1 から北緯 5 度の降水量を読む。矢印の山の値は 7 k g / ( m 2 日 ) 。1 m² あたり 1 日に 7 kg の水蒸気が凝結したことになる。
7 × 2.5 × 10 6 = 1.75 × 10 7 J
この熱を受け取る空気の層(600〜400 hPa)の質量を出す。圧力は「その上にある空気の重さ ÷ 面積」なので、2つの高さの圧力の差 200 h P a = 2.0 × 10 4 P a は、その間の空気の重さ(1 m² あたり)にあたる。
m = 2.0 × 10 4 9.8 ≈ 2.04 × 10 3 k g
熱量 = 質量 × 比熱 × 温度の上がり なので
Δ T = 1.75 × 10 7 2.04 × 10 3 × 1.0 × 10 3 ≈ 8.6
1 日に 9 ℃ 近くも温まる熱は、大気にとってとても大きい。実際には温まった空気が上昇し、膨張して冷えるので気温は上がり続けないが、この潜熱がハドレー循環を動かすエネルギーになっている。デモで層の上下の端を変えると、同じ雨でも層が厚いほど温まり方は小さくなる。
答え 9 ℃ (降水 7 kg/(m²日)。 7 × 2.5 × 10 6 200 × 10 2 9.8 × 1.0 × 10 3 = 8.6 )
問Ⅱ(1) 図2—2 の実線を見ると、海面から深さ約 100 m までは水温がほぼ一様(約 10 ℃)で、その下で急に下がっている。この海面付近の、水温がそろった層を表層混合層 (混合層)という。
水温がそろうのは、上下によく混ざっているから。海面は風に吹かれて波が立ち、その力で表面近くの水がかき混ぜられる。また、夜や冬に海面が冷やされると、表面の水が重くなって沈み、下の水と入れかわる(対流)。どちらも表面近くの水を上下に混ぜる。
デモの柱のモデルで、はじめ(図2—2 の実線)の混ざった層は約 60〜100 m。表面を冷やし続けると、この層がどんどん深くなる。
答え 表層混合層(混合層)。海面付近の海水が風や波でかき混ぜられ,また海面で冷やされて重くなった水が沈む対流でも上下に混ざるから。
問Ⅱ(2) 1 秒間に 1.0 × 10 3 J の熱が、1 kg の海水から奪われる。海水 1 kg を 1 ℃ 下げるのに 4.0 × 10 3 J 要るので、1 秒に下がる水温(℃)は
1.0 × 10 3 4.0 × 10 3 × 1 = 0.25
1 ℃ 下がると密度は 0.25 k g / m 3 増えるので、1 秒の密度の増え方は
0.25 × 0.25 = 0.0625 k g / m 3
答え 6.3 × 10 − 2 k g / m 3 (1秒あたり。 1.0 × 10 3 4.0 × 10 3 × 1 = 0.25 ℃ , 0.25 × 0.25 = 0.0625 )
問Ⅱ(3) (2) と同じ 1.0 × 10 3 J の熱を、蒸発で奪う場合を考える。1 kg の海水を蒸発させるには 2.5 × 10 6 J 要るので、1 秒に蒸発する水は
Δ M = 1.0 × 10 3 2.5 × 10 6 = 4.0 × 10 − 4 k g
蒸発するのは水だけで、塩は海に残る。だから残った海水の塩分は上がる。与えられた近似を使うと
Δ S = S × Δ M M = 35 × 4.0 × 10 − 4 = 1.4 × 10 − 2 ‰
1 ‰ で 0.75 k g / m 3 増えるので、密度の増え方は 1.4 × 10 − 2 × 0.75 = 1.05 × 10 − 2 k g / m 3 。有効数字2桁にまとめる。
塩分の効果は、(2) の冷える効果の約 6 分の 1。小さいが、冷却と同時にはたらいて沈み込みを助ける。デモでは、塩の量が変わらないとして数えた値(1.0504 × 10 − 2 )と近似の値がほぼ同じになる。
答え 1.1 × 10 − 2 k g / m 3 (1秒あたり。 Δ M = 1.0 × 10 3 2.5 × 10 6 = 4.0 × 10 − 4 , Δ S = 35 × 4.0 × 10 − 4 = 1.4 × 10 − 2 ‰ , × 0.75 = 1.05 × 10 − 2 )
問Ⅱ(4) 表層の海流は風に引きずられて起きるので風成循環という。これに対し深層循環は、水温(熱)と塩分によって決まる密度の差で起きるので、熱塩循環 とよばれる。
気候への影響の例としては、熱の運び役としてのはたらきがある。北大西洋のグリーンランド海やラブラドル海で深層水が沈み込むと、その分を補うように、低緯度の暖かい表層の水(メキシコ湾流・北大西洋海流)が高緯度へ流れこむ。この暖かい水が大気に熱を渡すので、北西ヨーロッパは緯度が高いわりに冬が暖かい。
ほかに、沈み込む水が大気の二酸化炭素を溶かしこんで深海に長く閉じこめる、という例をあげてもよい。
答え 熱塩循環。北大西洋で深層水が沈み込む分を補うように,メキシコ湾流などが低緯度の暖かい表層水を高緯度へ運び,北西ヨーロッパの冬を温暖にしている。
問Ⅱ(5) 地中海 :夏に乾燥する地中海性気候で、海面からの蒸発がさかん。降水と、流れこむ川の水を合わせても蒸発に追いつかないので、海面付近の塩分が上がる。高塩分の重い水は、ジブラルタル海峡の底を通って大西洋の中層へ流れ出す。
南極大陸の周囲 :冬に海面が凍って海氷ができる。海水が凍るとき、氷になるのはほぼ水だけで、塩分は氷の外へ押し出される。そのため海氷のまわりの海水は塩分が高く、しかも冷たいので、とても重くなって海底まで沈む(南極底層水)。
答え 地中海:乾燥した気候で,蒸発量が降水量と河川からの流入量を上回るから。南極大陸の周囲:海水が凍って海氷ができるとき,塩分が氷から排出され周りに残るから。
第3問 プレートの回転と、地層の歴史 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半(問Ⅰ)はプレートの動きの問題。中央海嶺では、マグマが上がってきて新しいプレートが作られ、海嶺の両側へ離れていく。海嶺の軸はまっすぐ続かず、ところどころで横にずれている。プレートは地球という球の表面の上を動くので、その動きは「地球の中心を通る軸のまわりの回転」になる。
使う考え方は3つ。プレートの境界の種類 (離れる・近づく・すれちがう)、地震の押し引き (震源から見て、動いた岩盤がこちらへ来る向きなら最初の揺れは押し)、地磁気の記録 (冷えて固まった岩石は、そのときの地磁気の向きに磁化したまま残る)。
後半(問Ⅱ)は地質図の読み取り。地層の傾き(走向・傾斜)から地層の曲がり方を、境界の様子(基底礫岩・接触変成)から出来事の前後関係を読む。「上にある地層ほど新しい」「切っている方が新しい」の2つが基本。
問Ⅰ(1) 図3—2 で、北の海嶺の軸は点S から北へ、南の海嶺の軸は点T から南へのびる。それぞれの海嶺で、西側がプレートA、東側がプレートB になり、軸から離れる向きに動く。
S と T の間の区間を見ると、北側は北の海嶺の東側なのでプレートB(東へ動く)、南側は南の海嶺の西側なのでプレートA(西へ動く)。2 枚のプレートが、断層をはさんで横にすれちがっている。
このように、海嶺と海嶺(など、プレートの境界どうし)をつなぐ横ずれの断層を、トランスフォーム断層 という。S より西、T より東の断裂帯は、両側が同じプレートなのですれちがわない(昔の断層の跡)。デモでは印の点の動きで、S と T の間だけ北と南で逆向きに動くのが見える。
問Ⅰ(2)(a) (1) のとおり、S と T の間の断層では、北側のプレートB は東へ、南側のプレートA は西へ動いている。図には S と T を結ぶ線を描き、その北側に東向き(S から T の向き)、南側に西向き(T から S の向き)の矢印を描けばよい。
断層の片側に立って向こう側を見ると、北側に立てば南側は右(西)へ、南側に立てば北側は右(東)へ動いて見える。どちらに立っても向こう側が右へ動くので右横ずれ 。
「海嶺の軸が右にずれているから右横ずれ」と見た目で決めるとまちがえやすい。軸のずれ方ではなく、プレートの動く向きで考える。
答え S と T を結ぶ断層の北側(プレートB)に東向き(S から T の向き),南側(プレートA)に西向き(T から S の向き)の矢印を描く(右横ずれ)。
問Ⅰ(2)(b) 横ずれ断層の地震では、最初の揺れ(初動)が押しになる所と引きになる所が、震源のまわりで4つに分かれる。分けるのは、断層の面(東西の線)と、震源を通って断層に直交する面(南北の線)。
どちらが押しかは、動く岩盤が観測点の方へ向かうかどうかで決まる。震源 U の北側の岩盤は東へ動くので、北側のうち東の観測点へは押し、西の観測点からは遠ざかる(引き)。南側の岩盤は西へ動くので、南側のうち西は押し、東は引き。
したがって押しになるのは、U から見て北東と南西の2つの区切り。北西と南東は引き。デモでは、断層の向きとずれの向きから作った地震の「力の組み合わせ」(モーメントテンソル)で押し引きを計算しても、同じ4つの区切りになる。
答え U を通る断層(東西の線)と,U を通りこれに直交する南北の線で4つに分けたうち,北東と南西の2つの領域が押し波(北西と南東は引き波)。
問Ⅰ(3)(a) 海嶺で上がってきたマグマが冷えて岩石(玄武岩)になるとき、中の磁鉄鉱などの鉱物が、そのときの地磁気の向きに磁化する。いったん冷えると、あとで地磁気の向きが変わっても、この磁化は残り続ける。
このように岩石が獲得し、保持している磁気を残留磁気 という(熱いところから冷えて獲得したものなので、熱残留磁気ともいう)。
問Ⅰ(3)(b) 図3—3 で、海嶺の軸は黒い帯の中にある。海嶺の軸の岩石は、いまできたばかりの岩石なので、いまの地磁気の向きに磁化している。
観測される全磁力は、地球の地磁気に、海底の岩石の残留磁気が作る磁場が足されたもの。軸の岩石の磁化は、いまの地磁気と同じ向きなので、2つが強め合い、全磁力はまわりより強くなる。
一方、地磁気が逆向きだった時代にできた岩石は、いまの地磁気と逆向きに磁化しているので、打ち消し合って全磁力が弱くなる。だから黒(軸と同じ向き=正)が強く、白(逆)が弱い。デモの右のグラフは、年表から作った縞の磁化を足しあげた磁場のずれで、海嶺の軸の上で+(強い)になる。
答え 強い。黒い部分は海嶺の軸を含み,軸の岩石は現在と同じ向きの地磁気で磁化している。その残留磁気が現在の地磁気と同じ向きで足し合わされるので,全磁力が強くなる。
問Ⅰ(4) まず点Q の速さを出す。海嶺の軸から両側へ 65 km 離れた海底が 300 万年前にできたので、プレートA とプレートB はこの間に 2 × 65 = 130 k m 離れた。1 年あたりにすると
130 × 10 5 c m 300 × 10 4 年 ≈ 4.33 c m / 年
次に、回転の運動では、どこでも回る角速度 ω が同じ。回転軸からの距離が r の点の速さは v = r ω 。地球の半径を a とすると、極P からの角度が θ の点の、回転軸からの距離は r = a sin θ 。だから速さは sin θ に比例する。
v R v Q = sin 60 ∘ sin 30 ∘ = 3 / 2 1 / 2 = 3
同じ海嶺の上でも、回転の極に近い所ほどゆっくり、極から 90° の所で一番速く広がる。デモで R の角度を動かすと、グラフの sin の形のとおりに速さが変わる。
答え 7.5 c m / 年 (Q で 2 × 65 k m 300 万年 = 4.33 c m / 年。速さは sin ∠ P O X に比例するので × sin 60 ∘ sin 30 ∘ = 3 )
問Ⅱ(1) ア :地質図の走向・傾斜の記号を見る。西側の2か所(D〜F の境界付近)の地層は西へ 30°、東側の3か所(B〜E の境界付近)の地層は東へ 22〜32° 傾いている。どちらも真ん中の B から外へ向かって傾いている。上下の逆転がなければ、外側ほど上の(新しい)地層で、芯の B がいちばん古い。このように山形に曲がった構造を背斜という。走向はほぼ南北なので、軸も南北。
イ :G と A・E・F の境界は水平(傾斜 0°)で、下の地層の曲がった境界を切っている。さらに G のいちばん下に基底礫岩(下の岩石が削られてできた礫)がある。いったん陸になって削られ、その後にまた堆積が始まった証拠なので、この境界は不整合。
ウ :石灰岩は炭酸カルシウムでできている。高温のマグマ(花こう岩)に接して熱せられると、方解石の結晶が大きく育ち直して、白い結晶質石灰岩(大理石)になる。
答え ア 背斜,イ 不整合,ウ 結晶質石灰岩(大理石)
問Ⅱ(2) 組織 :花こう岩は、マグマが地下深くでゆっくり冷えて固まった深成岩。ゆっくり冷えるので結晶が大きく育ち、同じくらいの大きさの粗い結晶がすきまなく集まった等粒状組織になる(石基が無い)。
化学組成 :S i O 2 を多く(約 70 %)含む酸性(フェルシック)の岩石で、石英・カリ長石・斜長石などの白っぽい鉱物が多く、全体に白っぽい。
答え 粗い結晶が集まった等粒状組織をもち,SiO₂に富む酸性の深成岩。
問Ⅱ(3) 古第三紀は約 6600 万年前から 2300 万年前。選択肢の化石が生きていた時代とくらべる。
イノセラムス(二枚貝)とアンモナイトは中生代の示準化石で、白亜紀の終わり(6600 万年前)に絶滅した。フデイシ(筆石)とサンヨウチュウ(三葉虫)は古生代の生物。古第三紀に栄えたのは、大型の有孔虫であるカヘイ石(ヌンムリテス)。
デモの右の図で、古第三紀の帯に重なるのはカヘイ石の帯だけ。
問Ⅱ(4) 地質図から読める「どちらが先か」を1つずつ並べる。
背斜(ア)で上下の逆転が無いので、芯から外へ B → C → D → E → F の順に堆積した。F まで曲がっているので、曲がった(褶曲した)のは F の堆積のあと。A は曲がった B〜F の境界を切り、自分は曲がっていないので、褶曲のあとに貫入した(B の一部が接触変成を受けたのもこのとき)。ただし、花こう岩の中には層理のような曲がりの目じるしが無いので、平面の地質図だけから「A 自体は曲がっていない」を厳密に確かめるのは難しい。ここでは、A の形が背斜の形に合わせて曲がっておらず、曲がった地層の境界をそのまま切っている、という図のふつうの読み方で「褶曲 → A」とした(この読みを外すと、A が褶曲の前か後かは決まらない)。
G は A・E・F を水平な面で不整合におおうので、A の貫入のあとに土地が隆起して削られ、再び沈降して G が堆積した。
これらの関係をすべて満たす順番は1通りに決まる。デモの断面では、▶ でこの順番を再生できる。
答え B,C,D,E,Fの順に地層が堆積した後,東西から押されて南北の軸をもつ背斜構造ができた。次にAが貫入し,接するBを接触変成させた。その後,隆起して侵食され,沈降してGが不整合に堆積した。