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地 学
第1問 恒星のスペクトル型を横軸にとり,絶対等級を縦軸にとった図をHR図(ヘルツシュプルング・ラッセル図)と呼ぶ。これに関して,次の問Ⅰ~Ⅴに答えよ。ただし,必要なら次の近似 , を使用してよい。
問Ⅰ 図1—1は,銀河系の中で太陽に比較的近い距離にある恒星のHR図である。点線の交点は,HR図上での現在の太陽の位置を表す。恒星の進化をこの図の上で考えて,以下の文中の ア ~ エ に当てはまる語を答えよ。ただし,同じ記号の には同じ語が入る。
太陽程度の質量を持つ恒星の進化は,冷たい星間ガスが重力収縮して原始星が形成されることから始まる。原始星は,図1—1で右上に位置する。原始星は収縮するにつれて,HR図上を左下方向に移動する。中心部の温度が十分高くなって水素の ア 反応が始まると,主系列上の一点に落ち着く。この時期は極めて安定で,太陽の場合は約 億年続く。中心部分の水素の大部分がヘリウムに変わると,外層が膨張をはじめ, イ へと進化する。さらに, ア 反応によって中心部分のヘリウムがより重い元素に変換されてなくなり,外層が不安定となってガスを放出すると,図1—1で左下に位置する ウ となって一生を終える。質量が太陽より十分に大きい恒星の場合には,超新星と呼ばれる爆発現象をおこして質量の大半を星間空間に放出し,後には半径 程度の エ や,重力が大きいために光も脱出できないブラックホールが残る。
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問Ⅱ 図1—1の恒星Sの表面温度は絶対温度で太陽の 倍であり,その光度(恒星の全表面から毎秒放射される光のエネルギー)は太陽の 倍である。恒星Sの半径は太陽半径の何倍か。有効数字 桁で求めよ。途中の計算過程も示せ。ただし,恒星は表面でシュテファン・ボルツマンの法則にしたがってエネルギーを放射しているとする。
問Ⅲ 図1—2は球状星団CのHR図である。球状星団の恒星は,過去のある時に一斉に誕生したと考えられている。球状星団Cの恒星と太陽とでは,どちらが先に誕生したと考えられるか。図1—2に基づいて 行程度で説明せよ。ただし,点線の交点は現在の太陽の位置を表す。
問Ⅳ 図1—1では,球状星団Cと異なり,太陽に比べて表面温度が高く光度が大きい恒星が存在している。その理由を 行程度で説明せよ。
問Ⅴ ある恒星が主系列にとどまる時間を,その恒星の寿命と呼ぶことにする。恒星の寿命は,その恒星が誕生した時にもっている水素の総量に比例し,その全表面から毎秒放射されるエネルギーに反比例する。すなわち,恒星の質量に比例し,光度に反比例する。また,恒星の光度は質量の 乗に比例するものとする。太陽の寿命を 億年としたとき,問Ⅱの恒星Sの寿命を有効数字 桁で求めよ。計算過程も示せ。なお,恒星の光度は,その寿命のあいだ変化しないものとする。
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図1—1 太陽に比較的近い距離にある恒星のHR図。左ほど表面温度が高い。矢印で示した点は恒星Sを示す。
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図1—2 球状星団CのHR図。左ほど表面温度が高い。
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第2問 雲・降水および海洋に関する以下の問Ⅰ~Ⅲに答えよ。
問Ⅰ 雲粒の生成と成長に関する以下の(1)~(4)に答えよ。ただし,氷晶の存在は考えなくてよい。
(1) 大気中の空気塊に含まれる水蒸気の分圧を とし,この空気塊の温度における飽和水蒸気圧を とする。相対湿度 [%] を表す式を求めよ。
(2) 雲粒が生成するためには,相対湿度 が を超えることが必要である。空気塊のこのような状態を何と呼ぶか。
(3) 大気が窒素,酸素,水蒸気のみで構成されているとすると,相対湿度 が よりもはるかに大きい値にならないと水蒸気の凝結が起こらないため,雲粒は生成しにくい。ところが実際の大気では, が をわずかに超えた程度でも雲粒が生成する。その理由を 行程度で答えよ。
(4) 凝結によって生成する雲粒の直径は 程度であるが,雨滴の直径は 程度になることがある。雲粒から雨滴への成長過程を 行程度で説明せよ。
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問Ⅱ 酸性雨の原因となる大気中の物質Aが,雨滴へ溶け込み地表面に落下する過程について,以下の(1)~(3)に答えよ。なお,図2—1は,その過程を模式的に表したものである。
(1) 地表面から高さ [] の雲底までの間で,全ての雨滴は半径 [] の球形であるとする。また,雨滴の単位表面積あたりに毎秒溶け込む物質Aの分子数を [個/(・秒)] とする。 と が高さによらず一定であるとき,雨滴 個に毎秒溶け込む物質Aの分子数 [個/秒] を求めよ。
(2) 前問(1)の条件に加えて,雨滴の落下速度は高さによらず [/秒] で表されるものとする。ここで は定数である。地表面に到達した雨滴 個あたりに含まれる物質Aの分子数 [個] を求めよ。ただし,雨滴が雲底を離れた瞬間から地表面に到達するまで物質Aが雨滴に溶け込み続けるものとする。
(3) 降水に含まれる物質Aの濃度が高いほど,降水のpHは小さな値になるものとする。前問(2)の条件で,雨滴の半径が と の つの場合を考えたとき(ただし とする),地表面で観測される降水のpHはどちらの場合が小さいか。理由とともに答えよ。
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図2—1 物質Aが,落下中の雨滴へ溶け込む過程。雨滴の周りの拡大図において,実線矢印は雨滴の落下方向,破線矢印は物質Aが雨滴に溶け込む様子を表す。
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問Ⅲ 図2—2は北緯 度から南緯 度までの太平洋,大西洋,南大洋(南極海)の海面における,海水の温度(水温)と塩分の年平均分布である。なお塩分とは,海水 中に溶けている塩類のグラム数である。これらの図を見て以下の(1)~(4)に答えよ。
(1) 水温分布を決める最大の要因は,海面を通じて出入りする熱であり,水温は低緯度側で高く,高緯度側で低い傾向にある。しかしながら,図2—2(a)において水温の等値線は必ずしも東西方向ではない。北緯 度付近では,海流の働きにより,等値線が北西—南東方向にやや傾いている。そのしくみを 行程度で説明せよ。
(2) 太平洋の低緯度東側では,貿易風の働きにより,北緯 度から南緯 度の範囲で赤道に近いほど水温が低い傾向にある。貿易風によって赤道付近の水温が低くなるしくみを 行程度で説明せよ。
(3) 図2—2(b)において,塩分の南北変化の特徴を 行程度で説明せよ。ただし,陸地の近くでの変化は考えなくてよい。
(4) 陸地の近くを除くと,塩分分布を決める最大の要因は,大気・海洋間の淡水のやり取り(蒸発および降水)である。北緯 度から南緯 度の範囲における大気の循環と塩分の南北変化との関係を 行程度で説明せよ。
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図2—2 海面における(a)水温および(b)塩分の年平均分布。等値線間隔は(a)が2℃,(b)が0.5である。なお,図を見やすくするために,塩分が33未満の等値線は描かれていない。
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第3問 地球,月,小惑星に関する以下の問Ⅰと問Ⅱに答えよ。
問Ⅰ ~ 年代のアポロ計画により,月の岩石が採取され,形成年代が測定された。図3—1は地球と月の表面のさまざまな場所で採取した岩石の形成年代(絶対年代)を年代別の頻度分布で示している。図3—2は月の「高地」と「海」の境界付近の写真である。図3—3は,月表面の形成年代とクレーター数密度(単位面積あたりのクレーター数)との関係を示している。以下の(1)~(4)に答えよ。
(1) 図3—1で示されているような,数億年から数十億年前に形成された月や地球の岩石の絶対年代を推定する方法を つあげ,その原理について ~ 行程度で説明せよ。
(2) 月と比較すると,地球の表面の岩石は新しい形成年代を持つものが多い。月と地球のそれぞれの進化過程を考慮し,形成年代の頻度分布が異なる理由を 行程度で説明せよ。
(3) 図3—2にみられるように,「高地」にはクレーターが多いのに対し,「海」では少ない。この理由を,図3—1と図3—3に基づいて, 行程度で説明せよ。
(4) 「海」はどのように形成されたと考えられるか。図3—1と図3—3に基づいて 行程度で説明せよ。
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図3—1 地球と月で採取された岩石の形成年代の頻度分布
図3—2 月の「高地」と「海」との境界(破線)付近の写真
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図3—3 月表面の形成年代と直径1km以上のクレーター数密度との関係
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問Ⅱ 月の「海」の岩石には,かんらん石という鉱物が多く含まれている。この鉱物は地球の上部マントルを構成すると考えられ,また惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワ(長径約 )の表面から持ち帰った微粒子の中からも発見された。かんらん石は という化学組成の鉱物(マグネシウムかんらん石)と という化学組成の鉱物(鉄かんらん石)の固溶体となっている。この固溶体中の 原子と 原子の数の総和に対する 原子の数の割合を とする( はマグネシウムかんらん石, は鉄かんらん石)。この の値は地球の上部マントル,月の「海」,イトカワのかんらん石において異なっており,例えば上部マントル起源の岩石からは が約 ,イトカワからは が約 のかんらん石が見つかっている。以下の(1)~(4)に答えよ。
(1) 固溶体はケイ酸塩鉱物によく見られる。次の鉱物の中で固溶体と見なされる化学組成を持つものをすべて選べ。また,選んだ各鉱物について,割合が変わる主要な つの元素を記せ。
石英,斜長石,輝石,紅柱石
(2) マグマの結晶分化作用などを考える上で,鉱物の密度は重要な指標となる。かんらん石の モルあたりの体積(モル体積)は, によらず一定であるとする。この場合 のかんらん石の密度は のかんらん石に比べ,何 % 高いか。計算過程とともに有効数字 桁で求めよ。ただし ,,, の原子量をそれぞれ ,,, とする。
(3) かんらん石のモル体積は,実際には が変わることにより変化し,マグネシウムかんらん石の密度は ,鉄かんらん石の密度は となっている。かんらん石のモル体積が の 次式で表されるとすると, のかんらん石の密度は のかんらん石に比べ,何 % 高いか。計算過程とともに有効数字 桁で求めよ。
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(4) 地球とイトカワは,それらの誕生時には内部構造が一様で,両者の化学組成が同じであったと仮定する。現在の地球の上部マントルとイトカワで,かんらん石の化学組成の違いが見られる原因としてどのようなことが考えられるか。 つの天体の大きさと形成過程などをもとに考察し,~ 行程度で述べよ。
第1問 HR図で見る、恒星の大きさと一生
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
HR図は、横に恒星の表面温度(スペクトル型。左ほど高温)、たてに本当の明るさ(絶対等級。上ほど明るい)をとった図。恒星の大部分は、左上から右下へのびる帯(主系列)に並ぶ。右上には、温度が低いのに明るい=とても大きい星(巨星)、左下には温度が高いのに暗い=とても小さい星(白色矮星)がある。
使う道具は2つ。1つはシュテファン・ボルツマンの法則:表面 から毎秒出る光のエネルギーは ( は絶対温度)。星全体から出る量(光度)は、表面積をかけて
もう1つは等級と明るさの関係:5 等級で明るさ 100 倍、1 等級で約 2.5 倍。
後半は「恒星の寿命」。明るい星ほど燃料(水素)を速く使うので、寿命が短い。この一言で、球状星団(一斉に生まれた古い星の集まり)と太陽の近くの星(いろいろな時期に生まれた星)のHR図のちがいが説明できる。
問Ⅰ
恒星は、星間ガスが自分の重力で縮んで原始星になるところから始まる。縮むと中が熱くなり、中心が約 1000 万 K をこえると、水素がヘリウムに変わる核融合反応が始まる。この反応で出るエネルギーが、表面から光として出ていく分を補い、中を熱いままに保つ。熱いガスの圧力は中ほど高く、その差が外へ押す力と、重力で縮もうとする力とがつり合うので、星は大きさを変えずに主系列の上に長くとどまる(太陽では約 100 億年)。つり合っているのは「力どうし」(圧力の差による力と重力)で、核融合はそのための熱を出し続ける役目。
中心の水素がなくなると、外側がふくらんで表面の温度が下がり、HR図の右上の赤色巨星になる。太陽程度の質量の星は、最後に外側のガスを放出し(惑星状星雲)、中心に残った高温で小さな芯が、HR図の左下の白色矮星になる。
太陽よりずっと重い星は、超新星爆発を起こし、あとに半径 ほどの中性子星か、ブラックホールが残る。中性子星は小さいが、生まれて間もないものは表面が約 100 万 K ととても熱いので、全部の波長を合わせた光度は で太陽の約 0.2 倍もある。それでもHR図に入らないのは、①表面の温度が横軸のいちばん左の O 型(数万 K)よりはるかに高く、図の左の外にあたるから、②光のほとんどが X 線で出て、目に見える光での明るさ(絶対等級)は約 20 等と暗く、たての範囲(15 等まで)の下にも出るから。デモでは、灰色の点が太陽の一生の道すじ(ア → イ → ウ)を動く。
答えア 核融合,イ 赤色巨星,ウ 白色矮星,エ 中性子星
問Ⅱ
光度の式 を、恒星S と太陽の比にする。 と は消えて
(問題の近似 を使う)なので、。有効数字 2 桁にまとめる。
温度が 2 倍だと、表面 から出る光は 倍になる。だから光度が 1000 倍でも、表面積は 倍、半径は約 8 倍で足りる。デモのグラフでは、波長ごとの光の強さの曲線の下の面積が、S の方が 16 倍大きい。図1—1 で S は太陽より約 7.6 等明るい位置にあり、光度 1000 倍(7.5 等)と合っている。
答え倍( より )
問Ⅲ
球状星団の星は一斉に生まれたので、いまはみな同じ年齢。重く明るい星ほど寿命が短いので、年齢が寿命をこえた星から順に主系列を離れ、巨星の側(右上)へ移っていく。だから主系列の上の端(曲がり角)の星の寿命が、その集まりの年齢になる。
図1—2 では、主系列は太陽とほぼ同じ明るさ(約 5 等)の所で曲がり、それより明るい星は右上へ曲がっている。つまり太陽程度の明るさの星も、すでに主系列を離れ始めている。この集まりの年齢は、太陽程度の星の寿命(約 100 億年)ほどある。
一方、太陽はまだ主系列の上にいる(寿命 100 億年のうち、いまは 46 億年)。したがって球状星団C の方が古く、先に誕生した。デモで「集まりの年齢」を動かすと、年とともに曲がり角が下がり、図1—2 の曲がり角の明るさ(約 5.1 等)になるのは約 120 億年のときになる。
答えCの恒星。太陽程度の明るさの星も既に主系列を離れ始めているから。
問Ⅳ
図1—1 の主系列の左上には、太陽より高温で明るい星(S など)がある。これらは質量が大きく、問Ⅴで見るように寿命がとても短い(S で約 5600 万年)。いま主系列にいるということは、生まれてからまだその寿命がたっていない、つまり最近生まれた星だということ。
太陽の近く(銀河系の円盤)には星間ガスがたくさんあり、いまも星が生まれ続けている。だから寿命の短い明るい星も、生まれたばかりのものが主系列にいる。球状星団は昔一斉に生まれたきりで、その後は星が生まれていないので、明るい星はとっくに主系列を離れている。
デモで「星の生まれ方」を「生まれ続ける」に切りかえると、何十億年たっても、左上に明るい主系列の星が残ることが見える。
答え太陽近傍では現在も星が誕生し続けており,寿命の短い高温・高光度の大質量星も,誕生後まもないものが主系列にとどまっているから。
問Ⅴ
寿命は「燃料の量 ÷ 使う速さ」で、燃料(水素の量)は質量に比例し、使う速さは光度に比例する。光度は質量の 4 乗に比例するので、S の質量は
寿命は質量に比例し光度に反比例するので、太陽の寿命 100 億年を使って
年に直すと 年。有効数字 2 桁にまとめる。
燃料は太陽の 5.6 倍あるのに、使う速さが 1000 倍なので、寿命は 180 分の 1 になる。まとめると寿命は質量の 3 乗に反比例する。デモでは、S のタンクが空になっても、太陽のタンクはまだ 99% 以上残っている。
答え年(,寿命億年)
第2問 雲粒から雨粒へ、そして海の水温と塩分
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
前半(問Ⅰ・問Ⅱ)は雲と雨の粒の話。雲粒は直径 ほど、雨粒は ほどで、体積では 100 万倍ちがう。「どうやって雲粒ができるか」「どうやって 100 万倍に育つか」が問Ⅰの筋。問Ⅱは、落ちる雨粒に物質が溶けこむ量を、表面積と落ちる時間のかけ算で求める計算問題。
後半(問Ⅲ)は、図2—2 の海面の水温と塩分の地図を読む問題。水温は「海面での熱の出入り」に加えて「海流が水を運ぶこと」で決まり、塩分は「蒸発で濃くなる・雨でうすまる」ことで決まる。どちらも、大気の大きな流れ(貿易風・偏西風・ハドレー循環)と、それに動かされる海の流れ(環流)に結びつけて説明する。
問Ⅰ(1)
相対湿度は、空気にいま含まれている水蒸気の量が、その温度の飽和水蒸気量(平らな水面と水蒸気がつり合い、蒸発と凝結が差し引き 0 になるときの量)の何 % かを表す。ふだんはこれが上限の目安になるが、次の(2)のように、これより多く含むこともある。水蒸気の量は水蒸気の分圧 で表せるので、飽和水蒸気圧 との比に 100 をかければよい。
問Ⅰ(2)
相対湿度が をこえた状態、つまり飽和水蒸気圧より多くの水蒸気を含んでいる状態を過飽和という。平らな水面なら、過飽和の空気からは水蒸気がどんどん凝結していく。
問Ⅰ(3)
小さな水滴は表面が強く曲がっているので、表面の水分子が外へ逃げやすい。そのため、小さな水滴がつり合うには、平らな水面よりずっと高い湿度が要る。窒素・酸素・水蒸気だけの空気で、水分子が集まってできたばかりの粒(半径 ほど)がつり合うには、湿度は約 も必要になる。
実際の大気には、海の塩のつぶ、土ぼこり、燃えかすなどの小さな粒(エーロゾル)がたくさん浮いている。これが凝結核になる。水に溶ける粒なら溶けた分だけ水分子が逃げにくくなり、はじめから大きさのある粒の表面で凝結が始まるので、湿度が をわずかにこえただけで雲粒へ育つ。
デモのグラフは、粒の表面でつり合う湿度の曲線。食塩の粒()が溶けた粒では、山の高さは で、まわりの湿度がそれより高いと雲粒へ育ち続ける。純水だけの粒は、同じ湿度でも蒸発して消えてしまう。
答え大気中のエーロゾルが凝結核となり,その表面で水蒸気が凝結しやすいから。
問Ⅰ(4)
凝結で育つ速さは、半径の 2 乗が時間に比例する形()で、大きくなるほど遅くなる。デモの数値だと、凝結だけで半径 (直径 )まで育てるには約 173 時間(7 日ほど)かかってしまい、実際の雨の降り方に合わない。
そこで効くのが、粒どうしの衝突と併合。雲粒の中に少し大きめの粒があると、それは周りより速く落ちるので、下にある小さな雲粒に追いついてぶつかり、くっついて大きくなる。大きくなるとさらに速く落ち、1 秒間に通りぬける体積も広がって、もっとたくさんの雲粒を取りこむ。
このように「育つほど速く育つ」ので、デモの数値では 20 μm から雨粒の大きさまで約 45 分で育つ。雨粒 1 個は、雲粒約 100 万個分が集まったもの。
答え凝結で育った大きめの雲粒は速く落ち,途中で小さな雲粒に衝突して併合し,さらに速く落ちて多くを取りこむことをくり返して雨滴になる。
問Ⅱ(1)
物質Aは雨滴の表面から溶けこむ。 あたり毎秒 個溶けこむので、表面積をかければよい。半径 の球の表面積は なので
問Ⅱ(2)
雨滴は雲底から地面まで の距離を、速さ で落ちる。かかる時間は
この間ずっと、毎秒 個ずつ溶けこむので、地面に着くまでの合計は
大きい雨滴ほど表面は広いが、速く落ちるので溶けこむ時間は短い。2 つを合わせると、 は半径に比例する。
問Ⅱ(3)
pH を決めるのは、分子の数 ではなく濃度(雨水の体積あたりの数)。雨滴の体積は なので
濃度は半径の 2 乗に反比例する。 なので、小さい方の の雨の方が濃く、pH が小さい。
小さい雨滴は「体積のわりに表面が広い」うえに「ゆっくり落ちて長く溶かす」ので、二重に濃くなる。デモでは、半径を半分にすると濃さは 4 倍になる。なお、実際の雨粒の落ちる速さは半径に比例しない所もあるが、その実際の速さで計算しても、小さい雨粒ほど濃いことは変わらない。
答えの場合。雨滴中の濃度はで,半径が小さいほど高く,pHが小さくなるから。
問Ⅲ(1)
北緯 30 度付近の北太平洋・北大西洋には、偏西風と貿易風によって時計回りの大きな環流(亜熱帯環流)がある。その西の端では、黒潮・メキシコ湾流という暖流が、低緯度の暖かい水を北へ運ぶ。東の端では、カリフォルニア海流・カナリア海流という寒流が、高緯度の冷たい水を南へ運ぶ。
そのため、同じ緯度でも大洋の西側は暖かく、東側は冷たい。等温線は、西側では北へ、東側では南へずれるので、北西—南東の向きに傾く。
図2—2(a) で 20 ℃ の線をたどると、東経 150 度で北緯約 36 度、西経 130 度で北緯約 27 度と、確かに西ほど北にある。デモの模型でも、環流を強くするほど西の暖かい水が北へ広がり、環流を 0 にすると等温線は東西にまっすぐになる。
答え北半球の亜熱帯には時計回りの環流があり,西側では暖流が低緯度の暖水を北へ,東側では寒流が高緯度の冷水を南へ運ぶから。
問Ⅲ(2)
赤道付近では、東寄りの貿易風が吹いている。風が海面を引きずると、地球の自転の効果(コリオリの力)のため、表層の海水は全体として北半球では風の向きの右、南半球では左へ運ばれる(エクマン輸送)。東風(西へ向かって吹く風)なら、北半球では北へ、南半球では南へ運ばれる。
赤道をはさんで表層の水が北と南へ分かれていくので、赤道では足りなくなった水を補うように、下から冷たい水が湧き上がる(赤道湧昇)。だから赤道に近いほど水温が低い。
デモの上の図では、水(青)が風(灰色)の向きから、北半球では右へ、南半球では左へそれて動く。理想的なエクマン輸送(風に引きずられる層全体で足し合わせた水の動き)は風と直角だが、模型は表層の水を 1 枚の層にまとめて摩擦を入れているので、それる角度は直角より小さい(北緯 5 度で約 66 度、北緯 12 度で約 79 度。赤道に近いほどコリオリの力が弱く、風の向きに近づく)。それでも北半球では北へ、南半球では南へ分かれることは変わらない。下の断面では、赤道で冷たい水が持ち上がっている。風を西風にすると向きがすべて逆になり、湧き上がりは止まる。
答え東寄りの貿易風によるエクマン輸送で表層水が北半球では北へ,南半球では南へ運ばれて赤道で発散し,下層の冷たい水が湧き上がるから。
問Ⅲ(3)
図2—2(b) を、陸から離れた所で南北にたどる。たとえば西経 150 度では、北緯 23〜32 度(35 より高い)と南緯 9〜29 度(35.5 より高い。36 の線で囲まれた所は、このすぐ東から始まる)あたりが最も高く、赤道のすぐ北(北緯 7〜16 度)でいったん低くなり(34.5 より低い)、北緯 40 度・南緯 40 度より高緯度へ行くほど低くなっている。
つまり、塩分は緯度 20〜30 度の亜熱帯で最も高く、赤道付近でやや低く、高緯度ほど低い。大西洋でも同じ形で、北緯・南緯 20 度前後に 37 をこえる所がある。
答え緯度20~30度の亜熱帯で最も高く,赤道付近でやや低く,高緯度で低い。
問Ⅲ(4)
塩分は、蒸発すると水だけが出ていくので濃くなり、雨が降ると真水が加わるのでうすくなる。だから「蒸発 − 降水」が大きい所ほど塩分が高い。これを、大気の南北の循環(ハドレー循環)と結びつける。
赤道付近(熱帯収束帯)では、貿易風が集まって空気が上昇し、積乱雲が発達して雨が多い。降水が蒸発より多いので塩分が低い。上昇した空気は上空で緯度 20〜30 度まで運ばれて下降する(亜熱帯高圧帯)。下降気流の下では雲ができにくく晴れて乾いているので、蒸発が降水より多く、塩分が高い。
デモの模型では、蒸発と降水だけを入れても、塩分は「蒸発 − 降水」とよく似た形(北の山は北緯 23 度、赤道のすぐ北に谷)になり、図2—2(b) から読んだ値と同じ並び方になる。熱帯収束帯の雨をなくすと、赤道のすぐ北の深い谷(塩分 34.7)は消え、南北 2 つの山の間のゆるいくぼみ(35.2 ほど)だけが残る。
答え赤道付近の熱帯収束帯は上昇気流で降水が蒸発より多く塩分が低い。緯度20~30度の亜熱帯高圧帯は下降気流で蒸発が降水より多く塩分が高い。
第3問 月の岩石の年代、クレーター、かんらん石
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
問Ⅰは、月の表面の「年代の読み方」の問題。道具は2つある。1つは放射年代:岩石に含まれる放射性の原子が一定の割合で別の原子に変わることを使った、絶対的な時計。もう1つはクレーターの数:昔ほど天体の衝突が多かったので、古い地面ほどクレーターが多い。図3—3 は、放射年代の分かっている場所のクレーターの数をもとに作った「ものさし」。
図3—1 の読み方:月の「海」の岩石は約 31〜41 億年前(多いのは 33〜35 億年前)、「高地」の岩石は 35〜45 億年前で多くは 39 億年より前。地球の岩石は 0〜35 億年前に広がり、新しいものが多い。
問Ⅱは、かんらん石の密度の計算と、天体の大きさによる進化のちがい。固溶体とは、結晶の中の決まった席に入る元素が、ある範囲で入れかわれる鉱物のこと。かんらん石では、Mg と Fe が同じ席を取り合う。
問Ⅰ(1)
数億年〜数十億年前の岩石には、放射年代測定を使う。放射性の原子(親)は、温度や圧力に関係なく、決まった時間(半減期)ごとに半分ずつ別の原子(娘)に変わる。岩石が固まったときに鉱物に閉じこめられた親から、時間とともに娘がたまっていく。
いまの親の数を 、たまった娘の数を とすると、はじめの親は 。 年たつと親は 倍( は半減期)になるので
娘と親の比を測れば、固まってからの時間が分かる。ただしこの式が使えるのは、固まったときに娘が入っていなかった(入っていたならその分を差し引く)ことと、固まってから親も娘も岩石に出入りしなかったことが条件。
数十億年を測るには、半減期が同じくらい長い原子を使う。ウラン238(半減期約 45 億年、鉛206 になる)のほか、カリウム40 からアルゴン40 ができるのを使うカリウム・アルゴン法、ルビジウム87 からストロンチウム87 ができるのを使う方法などがある。どれか1つをあげて原理を書けばよい。なお、カリウム40 は壊れたうち約 1 割だけがアルゴン40 になり、残りはカルシウム40 になる。カリウム・アルゴン法ではアルゴンだけを測るので、その割合を入れて式を直して使う。デモの年代の計算は、壊れた親を全部「娘」として数える形にしている。
答えウラン・鉛法。ウラン238は一定の割合(半減期約45億年)で鉛206に変わるので,岩石中の親と娘の量の比から,固まってからの時間が求まる。
問Ⅰ(2)
地球の表面の岩石は、プレートの運動で海洋プレートが沈みこんで作り替えられ、火山活動で新しい岩石ができ、風や水による侵食・堆積や変成作用でも作り替えられ続けている。だから古い岩石はほとんど残らず、新しい年代の岩石が多い。
月は半径が地球の約 4 分の 1 と小さく、内部の熱を早く失った。プレート運動は無く、大気や水による侵食もない。図3—1 の月の試料には約 31 億年前より新しいものが無く、海の玄武岩を作った火山活動はそのころまでに大きく衰えたと考えられる(図は集めてきた岩石の年代なので、月全体でそれより後の火山活動がまったく無かったとまでは言えない)。だから、できたときの古い岩石が表面にそのまま残っている。
デモでは、天体が集まるときの熱と冷えるのにかかる時間が、どちらも半径の 2 乗に比例することを見る。月は地球にくらべて、熱は約 22 分の 1、冷える時間は約 13 分の 1。
答え地球ではプレート運動や火成活動・侵食で表面の岩石が作り替えられ続けるが,月は小さく早く冷えて活動が衰え,古い岩石がそのまま残ったから。
問Ⅰ(3)
図3—3 を見ると、形成年代が 35 億年前の表面では 1 万 あたり約 50 個なのに、40 億年前の表面では約 600 個と、12 倍ほどになる。約 38 億年前より昔は、天体の衝突がとても多かった。
図3—1 では、高地の岩石は多くが 39 億年より前にでき、海の岩石は主に 39〜31 億年前にできている。高地の表面は衝突が非常に多かった時代をまるごと経験しているのでクレーターが多く、海の表面は衝突が少なくなってからできたのでクレーターが少ない。
デモでは、45 億年前から時間を進めて2つの地面にクレーターを落とす。右の地面を途中で溶岩が埋めると、それまでのクレーターは消え、あとから落ちた少しだけが残る。
答え図3—3のように古い表面ほどクレーター数密度が急に大きく,図3—1より高地は主に39億年より前,海は主に39~31億年前と新しいから。
問Ⅰ(4)
月の海は、黒っぽく平らな玄武岩でできている。形は丸いものが多く、巨大な天体の衝突でできた盆地(大きなくぼみ)にあたる。
図3—1 から、海の岩石は高地よりあとの約 39〜31 億年前にできた。この時期に月の内部で岩石が部分的に融けてできた玄武岩質のマグマが、割れ目を通って上がってきて、低い盆地に溶岩としてあふれ出した。溶岩はそれまでにあったクレーターを覆い、平らな表面を作った。
図3—3 で海の年代にあたるクレーターの数は 1 万 あたり 30〜300 個ほどで、高地より一けた少ない。これは、海の表面が衝突の多い時代が終わるころ以降に「作り直された」ことと合っている。
答え高地ができた後の約39~31億年前,衝突でできた大きな盆地を月の内部から噴出した玄武岩質の溶岩が埋め,古いクレーターを覆ってできた。
問Ⅱ(1)
固溶体かどうかは、化学組成の中で入れかわる元素があるかで見分ける。
斜長石は、(曹長石)と (灰長石)の間で連続的に組成が変わる固溶体(Na と Ca が入れかわり、それに合わせて Si と Al も入れかわる)。輝石は などで、Mg と Fe が入れかわる。
石英 と紅柱石 は、組成が決まっていて入れかわる元素が無い。
問Ⅱ(2)
Mg と Fe の席は化学式あたり 2 つあり、その割合 が Fe。1 mol の重さ(モル質量)は
で 、 で 。
答え(モル質量 より で , で 。体積一定なので )
問Ⅱ(3)
1 次式 とすると、、。
密度は 、 で、比は 。約 高い。
(2) より差が小さくなるのは、Fe が Mg より重いだけでなく少し大きく、Fe が入るほど結晶がふくらむから。体積一定のままだと鉄かんらん石は になるはずだが、実際は で、その分だけ体積が 5% 大きい。
答え(モル体積 , の1次式で は , は 。密度 ,,比 )
問Ⅱ(4)
はじめは地球もイトカワも同じ組成(鉄の一部は金属として、一部はケイ酸塩の中に含まれていた)だったとする。ちがいを生むのは天体の大きさ。
注意:はじめからあった金属鉄が沈むだけなら、残ったケイ酸塩の中の Fe と Mg の割合は変わらない。かんらん石の が小さくなるには、ケイ酸塩の中の鉄が金属の側へ移るか、鉄の多い部分がマグマとして抜けていくことが要る。
地球は大きいので、材料の微惑星が集まるときの衝突のエネルギーや、放射性元素の崩壊熱で内部が高温になり、広く融けた(マグマオーシャン)。融けると、重い金属鉄は沈んで中心に集まり核になり、軽いケイ酸塩がマントルになる。高温・高圧で金属とケイ酸塩がまざり合うとき、ケイ酸塩の中にあった鉄の一部も金属の側へ移って(還元されたり、金属の融けた液に溶けこんだりして)いっしょに核へ持っていかれたと考えられる。そのため上部マントルのかんらん石は鉄が少なく が小さい(さらに、マントルが部分的に融けるとき Fe はマグマの側に入りやすく、マグマが抜けたあとのマントルは Mg に富む)。
イトカワは長径 500 m ほどととても小さく、集まるときの熱はごくわずかで、熱もすぐ逃げるので融けて分かれることがなかったと考えられる。鉄は分かれずに鉱物の中に残るので、かんらん石の は大きいまま。デモの計算では、集まるときの熱で上がる温度は、地球で数万 K、イトカワでは ほどにしかならない。
ただし、いまのイトカワの大きさだけでは、昔の熱の歴史までは決まらない。イトカワは、もっと大きな天体がこわれたかけらが集まってできたと考えられていて、もとの天体はいまより大きかったかもしれない。デモの数字は「いまの大きさのまま集まったら」の目安。答えでは「イトカワやそのもとの天体は、融けて鉄が分かれるほどには熱くならなかった」と書く。
答え地球は大きいため,集積時の衝突エネルギーや放射性元素の崩壊熱で内部が融けて分化した。このとき金属鉄が核に沈み,ケイ酸塩中の鉄も一部が金属側へ移ったので,上部マントルのかんらん石はxが小さい。イトカワやそのもとの天体は小さく,融けるほど熱くならず鉄が分離しなかったのでxが大きい。