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地 学
第1問 太陽系以外の惑星系に関する以下の問Ⅰと問Ⅱに答えよ。
問Ⅰ ある恒星が惑星を持ち,我々がその惑星の公転面をほぼ真横から見る位置にいる場合,惑星が恒星の手前を通過すると恒星の光をわずかに隠す。これを恒星面通過という。現在の望遠鏡の能力では,恒星は広がりのない点状にしか見えず,惑星は直接見ることすらできない。しかし,恒星面通過を観測することで,惑星の存在が確認でき,加えてその大きさや公転周期が推定できる。恒星面通過は太陽系以外の惑星系を探るための重要な現象である。
恒星Sと惑星Xからなる惑星系がある。惑星Xは恒星Sを中心とする半径 a の円軌道を公転しており,恒星Sの万有引力による加速度 G M / a 2 と遠心力による加速度 V 2 / a とがつりあっている。ここで G は万有引力定数,M は恒星Sの質量,V は惑星Xの公転の速さである。恒星Sは惑星Xよりはるかに重いため,静止していると考えてよい。惑星Xは光を出さない球とみなすことができ,恒星Sの手前を通過する際は,自身と重なる部分の恒星表面からの光を完全にさえぎる。
地球から恒星Sの明るさ(放射エネルギー)を測定したところ,図1—1に示すように,惑星Xの恒星面通過により,周期 P = 2.7 × 10 − 2 年で,Δ T = 7.0 × 10 3 秒の間だけ規則的に暗くなることがわかった。相対的な減光量 δ は 1.6 × 10 − 3 である。ここで δ は,恒星Sの通常の明るさを F 1 ,暗くなっているときの明るさを F 2 として,δ = ( F 1 − F 2 ) / F 1 で定義される。図1—2は恒星面通過の際の惑星Xの動きの想像図である。恒星Sは一様に光る円盤とみなせ,惑星Xはその手前をA~Eのいずれかを通って左から右に横切るものとする。
恒星Sは太陽と同じ質量,半径,絶対等級を持つことがわかっている。以下では,地球の公転軌道を半径 1.0 天文単位の円とし,その公転の速さを 3.0 × 10 4 m / 秒,太陽の半径を 7.0 × 10 8 m ,地球から見た太陽の見かけの等級を − 26.8 等級,log 10 2 = 0.301 ,log 10 3 = 0.477 とせよ。
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(1) 惑星Xの公転の速さが V = 1.0 × 10 5 m / 秒であることを導け。
(2) 恒星面通過の際の惑星Xの動きとして可能性のあるものを,図1—2のA~Eのうちからすべて選び,その理由を 1 ~ 2 行で示せ。
(3) 惑星Xの半径を有効数字 2 桁で求めよ。
(4) 惑星Xから見た恒星Sの見かけの等級を小数点以下 1 桁まで求めよ。
図1—1 恒星Sの明るさの時間変化
図1—2 恒星面通過の際の惑星Xの動きの想像図。惑星Xは恒星Sの手前をA~Eのいずれかを通って左から右に横切る。Cは恒星Sの中心を通る。
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問Ⅱ 大気をもつ惑星Yの恒星面通過を考える。図1—3に示すように,惑星Yは恒星Qを焦点とした楕円上を公転する。また,地球は惑星Yの公転面上にあり,速さ v で恒星Qから遠ざかる。惑星Yが恒星Qと地球の間を通過する際の速度ベクトルを,地球を向く成分とその垂直方向の成分に分解し,それぞれの大きさを V 1 ,V 2 とする。v ,V 1 ,V 2 は,いずれも恒星Qに対する速さである。このとき,恒星Q,惑星Y,地球それぞれの大気による吸収線の波長のドップラー効果による変化を測ることによって,これら 3 つの天体の相対速度を知ることができる。以下では,天体の自転の影響は無視できるものとする。
惑星Yの恒星面通過が起こる直前に地球から恒星Qを観測した。そのとき得られたスペクトルの一部を図1—4(a)に模式的に示す。この波長域にある吸収線はすべて元素Aによるものと考えられる。波長 λ 0 での吸収は,恒星Qの光が地球の大気を通過する際に起きたものである。一方,地球と恒星Qの間に相対速度があるため,光の速さを c とすると,恒星Qの大気中で起きた吸収の波長は ( v / c ) λ 0 だけ変化し,λ 1 = ア として観測される。この波長域に 2 本の吸収線があることから,地球と恒星Qのいずれの大気にも元素Aが含まれることがわかる。
惑星Yの恒星面通過中にも,地球から惑星Yの大気を通して恒星Qのスペクトルを観測した。得られたスペクトルを図1—4(b)に示す。波長 λ 0 ,λ 1 ,λ 2 に吸収線があることから,惑星Yの大気にも元素Aが含まれることがわかる。
図1—4(b)にある吸収線の波長 λ 1 は,次のように 2 段階に分けて考えることにより求めることもできる。「仮に,惑星Yにいる人が恒星Qのスペクトルを観測できたとしたら,図1—4(c)のように波長 λ 0 と λ 3 の吸収線が観測されるであろう。そして,惑星Yを図1—4(c)のスペクトルを放つ光源とみなし,地球からこの光源を観測した」と考えるとよい。
(1) 文章中の空欄 ア に入る適切な式を記せ。
(2) 波長 λ 2 を λ 0 ,c ,v ,V 1 ,V 2 のうち必要なものを用いて表せ。また,λ 2 と λ 0 の位置関係をもとに,v と V 1 の大小を 1 行程度の理由とともに記せ。
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(3) 波長 λ 3 を λ 0 ,c ,v ,V 1 ,V 2 のうち必要なものを用いて表せ。
(4) 文章中の下線部の考え方に基づき波長 λ 1 を求め,(1)の答えと一致することを示せ。途中の計算過程も簡潔に示すこと。ただし,v ,V 1 ,V 2 はいずれも c に比べ十分に小さいので,( v / c ) や ( V 1 / c ) などの 1 次の項に比べ,( v / c ) 2 ,( V 1 / c ) 2 ,( v V 1 / c 2 ) などの 2 次以上の項は無視してよい。
図1—3 恒星面通過中の模式図。地球の相対速度は恒星Qと地球を通る直線上にあり,これ以外の成分を持たない。
図1—4 元素Aの吸収線の模式図。(a)地球から恒星Qを観測。波長 λ 0 と λ 1 に吸収線がある。(b)地球から惑星Yの大気を通して恒星Qを観測。(c)惑星Yから恒星Qを観測。
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第2問 大気や海洋の運動は熱・水・塩分などの輸送に大きな影響を与えている。このことに関連する以下の問Ⅰと問Ⅱに答えよ。
問Ⅰ 中緯度では,大気による熱や水の輸送に偏西風波動が大きな役割を果たしている。図2—1は,5 月のある日の日本付近の 700 h P a の高層天気図である。等圧面等高線と等温線はともに南北に波打っているが,さらに詳細に見ると,等温線は等圧面等高線より西にずれ,気圧の谷より少し西で寒気が南に張り出していることがわかる。図2—2(a)はこの様子を模式的に示したものである。
図2—1
図2—2
(1) 上空で吹く風はほぼ地衡風であると考えてよい。図2—2(a)の点Xにおいて,気圧傾度力の向きと風が吹いている向きを矢印で示すとどの方向になるか。a~hのうちからそれぞれ 1 つずつ選べ。
(2) このように寒気が南に張り出している位置が気圧の谷より西にずれている状況で熱の南北輸送を考えるとき,熱は風によって差し引き南向き,北向きのどちらに輸送されることになるか。理由をつけて 2 行程度で答えよ。
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(3) このとき,地上の低気圧がある経度は上空の気圧の谷の経度とは異なっていた。このずれは,気圧の谷より西にずれたところで寒気が南に張り出していることと関連がある。図2—2(a)において 700 h P a の気圧の谷の東西にある同高度・同気圧の 2 点AとBを考え,両点を通る北緯Y度線に沿った鉛直断面図を図2—2(b)に示す。点AとBの直下で同じ標高の地表面の点A′とB′のどちらの気圧が低いか。理由をつけて 2 行程度で答えよ。ただし,気圧の谷より西で寒気が南に張り出している状況は地表まで続いているものとする。
(4) 偏西風波動に伴ってできる温帯低気圧の多くは,発達すると地上に降水をもたらすが,その水は同じ場所で蒸発して供給されたものだけではない。図2—3のように面積が S m 2 の領域をとったところ,領域で平均した単位面積あたりの年間蒸発量が E m なのに対し,年間降水量は P m であった。一方,この領域の上空の大気全体では,1 年間で質量 C k g の水が凝結したが,水蒸気と雲の量はともに 1 年経過した後も変わっていなかった。以下では,液体の水の密度を ρ k g / m 3 ,単位質量の水の凝結熱を L J / k g とし,輸送量は差し引きして外からこの領域に運ばれてくる場合を正にとるものとする。
(a) 水全体の収支のつりあいを考えることにより,大気の水平運動により 1 年間にこの領域に輸送される水の量(k g )を表す式を導け。
(b) とくに水蒸気の形で輸送される水は,熱の収支の観点からすると,その水蒸気が凝結したときに放出する凝結熱(潜熱)を運ぶことになり,これを「潜熱輸送」という。水蒸気の収支のつりあいを考えることにより,大気の水平運動により 1 年間に領域に輸送される潜熱(J )を表す式を導け。
図2—3
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問Ⅱ 図2—4は大西洋付近の海水塩分分布を描いたものである。この図において塩分の単位を表す‰とは,海水 1 k g 中に溶けている塩類のグラム数を指す。この図に示した塩分分布は,少なくとも過去 100 年程度の間では大きく変化していないことが知られている。この塩分分布のさまざまな側面について述べた次の文章を読み,下の問いに答えよ。ただし,ここではアフリカ大陸南端に相当する南緯 30 度を大西洋南端,それより南を南大洋とみなす。
大西洋中央部の海面塩分は熱帯で極小,亜熱帯で極大となっている。その主な原因は降水や蒸発の大小であるが,それのみでは海面塩分は熱帯で低下,亜熱帯で上昇し続ける。(ア)両者の塩分差拡大を抑える主要因の 1 つは,風を原因とする海洋表層の運動が南北方向に海水を運ぶことである。
グリーンランド海の海面付近には比較的高塩分の海水が存在し,これが冷却によって高密度化して沈降することが,後述する深層流の起源になっている。グリーンランド海が高塩分なのは,(イ)湾流(メキシコ湾流)とそれに続く北大西洋海流が亜熱帯から高塩分海水を運び込むことによる。
北極海の海面塩分は非常に低く,これは周囲の大陸から河川水が大量に流入していることと関係がある。(ウ)これに対して,北極海の海面塩分が低下し続けない原因としては,海氷に関わる過程が重要なものの 1 つに挙げられる。
大西洋から北極海までを含む南緯 30 度より北の領域全体でみた場合,蒸発・降水・河川水流入の結果として,差し引きで海面から M = 3 × 10 8 k g / 秒の水が失われていると推定される。塩分分布からは,深さ 3000 m 付近を中心に南下する深層流や,深さ 1000 m 付近で北上する中層流の存在が示唆される。(エ)これらによって大西洋と南大洋の間で海水が交換されることで,大西洋から北極海までの領域の海水量や塩分分布を一定に保つことができる。
(1) 下線部(ア)について,北半球の海面付近ではこの運動はどちら向きになるか。熱帯海上の風向きを考慮して,理由とともに 1 ~ 2 行で答えよ。
(2) 下線部(イ)に挙げた湾流は世界でも有数の強い海流であるが,これは何を原因としてどのように形成されているか。3 行程度で説明せよ。
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(3) 北極海には年間を通じて海氷が存在し,それは冬季の生成と夏季の融解を繰り返す。海氷には海水中の塩類がとりこまれにくいため,海氷生成は周囲の海水塩分を高め,融解はそれを低める。また,海氷は風や海流の影響を受けて運動する。北極海の海氷量が経年変動しない場合,1 年を通してみて海氷が下線部(ウ)に述べた働きをするためには,北極海の海氷についてどのような状況が必要か。上記を参考にして 1 ~ 2 行で述べよ。
(4) 下線部(エ)に関連して,この領域内の海水質量と総塩量が変化しないという事実を用いると,大西洋南端における海水交換量を推定できる。図2—4(b)より,南緯 30 度において,深層では塩分 S 1 = 34.9 ‰ の海水が F 1 k g / 秒だけ大西洋から流出し,中層では塩分 S 2 = 34.4 ‰ の海水が F 2 k g / 秒だけ大西洋に流入しているとみなす。これ以外の海水交換が無いものとして,F 1 を有効数字 1 桁で求めよ。解答を導く過程も記述すること。
図2—4 年平均海水塩分分布。(a)海面,(b)緯度—深さ面上に0度から西経60度までの東西平均を描いたもの。等値線間隔は0.5‰。ただし,(b)では34‰から35‰の間のみ細線が0.1‰間隔で描かれている。(b)において黒く塗りつぶした領域は海底地形を示す。なお,グリーンランド海と北極海の海面付近は塩分変化が大きいため,(b)においてはすべての等値線が描かれているわけではない。
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第3問 活断層と地震に関する以下の問Ⅰと問Ⅱに答えよ。
問Ⅰ 長さ約 30 k m の横ずれ活断層Fにおいて,断層に沿ったいくつかの地点で地表面をはぎとり,活断層Fとそれに接する地層を水平面上に露出させた。そのうちの 1 つの地点でのスケッチを図3—1に示す。
この地点の断層と地層の関係は次のようであった。地層は主に河川の堆積物からなる。下位より砂層 a ,砂礫(れき)層 b からなり,西に緩く傾斜している。砂礫(れき)層 b は礫(れき)層 c に不整合で覆われている。玄武岩質の火成岩岩脈 d が,a ,b ,c 各層に貫入している。礫(れき)層 e は不整合によってこれらの地層の一部を覆っている。さらに砂層 f が不整合によって a ,e 各層および断層を覆っている。このはぎとり地点では,活断層F以外の断層は見いだされなかった。また,この活断層は水平面に対して垂直であり,横ずれ変位を繰り返している。
各地層は木片化石を豊富に含んでいる。図3—1中の★印の各地点から木片化石を採取し,放射性同位体を用いて年代測定を行ったところ,次の結果を得た。① 8000 年前,② 7700 年前,③ 7500 年前,④ 5700 年前,⑤ 7800 年前,⑥ 8100 年前,⑦ 2000 年前,⑧ 1400 年前。ただし,木片化石は再堆積したものではない。図3—1のスケッチ地点の付近には,火成岩岩脈 d と同時期に流出した玄武岩質溶岩が分布している。その中に含まれる炭化した木片の年代は 3700 年前であった。年代測定の誤差はここでは考えないものとする。
図3—1 活断層Fとそれに接する地層のはぎとりスケッチ。点線は不整合を示す。
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(1) 図3—1の矢印で示される砂層 a と砂礫(れき)層 b の整合境界について断層による変位量をメートル単位で答えよ。また,その整合境界が形成された年代の範囲を推定し,その根拠とともに 2 ~ 3 行程度で記述せよ。
(2) 図3—1の調査結果から,図3—2の灰色四角 1 ,2 ,3 に示される断層活動の年代—横ずれ変位量の関係が復元された。そのうち 1 については次のように説明できる。「2000 年前の年代を示す礫(れき)層 e の変位量は 2 m である。また活断層Fは,1400 年前の年代を示す砂層 f に覆われている。したがって,2000 年前から 1400 年前の間に起こった断層活動による変位量の合計は 2 m である。」これを参考にして 2 の断層活動を復元し,3 行程度で説明せよ。
(3) はぎとりを行った他の地点でも同様の調査を行った結果,8000 年前から現在までの間の横ずれ変位量と年代の関係がさらに細かく分かり,図3—2の太い実線のようになっていることが明らかにされた。図中の Ⅰ ~ Ⅴ に見られる急激な変位は,大地震にともなう活断層の横ずれによるものと考えられる。図3—2から,大地震の起こった時期と横ずれ変位量の間に,太い点線で示される一定の関係があると見ることができる。この関係を用いて活断層の 1000 年あたりの変位量を有効数字 2 桁で答えよ。また,次回の大地震がいつ起こるかを有効数字 1 桁で推定せよ。
図3—2 活断層の活動時期と8000年前からの横ずれ変位量の関係
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問Ⅱ 問Ⅰでみた活断層F(以下で,F断層と呼ぶ)は,水平面に対して垂直な横ずれ断層である。ここでは現在も,マグニチュード 3 以下の小さな地震(以下で,微小地震と呼ぶ)が活発に起こっている。ただし,微小地震による変位は小さく,問Ⅰのような方法で測定される断層全体の横ずれ変位にはほとんど影響を与えないことがわかっている。これらの微小地震について調べるため,地表にある 3 つの観測点A,B,Cで地震の観測を行った。図3—3のように,F断層が y z 平面に一致するように座標軸をとり,x 軸は北向きを正に,y 軸は東向きを正に,z 軸は下向きを正にとる。3 つの観測点の座標(k m 単位)は,A ( 8 , 0 , 0 ) ,B ( − 8 , 0 , 0 ) ,C ( 8 , 10 , 0 ) である。
得られた地震記録から,まず(ア)微小地震の震源の位置を決定するため,3 つの観測点におけるP-S時間(P波が到着してからS波が到着するまでの時間)を測定した。その結果,(イ)観測されたどの微小地震においてもAとBの 2 つの地点で観測されるP-S時間が等しいことから,微小地震の震源は全てF断層面上にあることがわかった。さらに(ウ) 3 つの観測点におけるP波初動(P波の最初の動き)を調べたところ,微小地震の際に生じる断層の変位の向きは,70 ページの図3—1からわかる断層の変位の向きに一致することがわかった。
以下では,地震波は震源から観測点まで直線的に伝播し,P波およびS波の速さは場所によらず一定で既知であるものとする。
図3—3 観測点A,B,Cの配置。原点Oは地表面にある。
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(1) 下線部(ア)に述べたように,一般に,地表にある 3 つの観測点におけるP-S時間 T 1 ,T 2 ,T 3 がわかると,各観測点から震源までの距離 d 1 ,d 2 ,d 3 がそれぞれわかるため,震源の位置を決定できる(ただし 3 つの観測点は一直線上にはないものとする)。しかし,3 つの観測点にP波が到着した時刻 t 1 ,t 2 ,t 3 のみからでは震源までの距離 d 1 ,d 2 ,d 3 がわからず,震源の位置を決定できない。決定できない理由を 1 ~ 2 行程度で述べよ。
(2) 下線部(イ)に関連して,ある微小地震では,観測点AとBで観測されたP-S時間がともに 2 秒,観測点Cで観測されたP-S時間が 3 秒であった。この微小地震の震源の座標(k m 単位)を有効数字 1 桁で答えよ。ただし,P-S時間 T と震源までの距離 d の関係は定数 k を用いて d = k T と与えられ,ここでは k = 6 k m / 秒であるとする。
(3) P波初動は,震源から外に向く押し波である場合を「押し」,震源の側に向く引き波である場合を「引き」と呼ぶ。下線部(ウ)の結果を踏まえて,y = 5 k m 付近で起こった地震のP波初動は,3 つの観測点A,B,Cでそれぞれ「押し」であるか「引き」であるかを答えよ。
(4) 問ⅠではF断層の全体が破壊してずれた地震の跡をみた。一方,下線部(イ)と(ウ)の結果から,微小地震もまたF断層面上の一部が破壊してずれた結果であることがわかる。長さ 30 k m の断層が 2 m の横ずれ変位を起こすと,マグニチュード 7 の地震が起こるとする。地震のマグニチュードが 2 増えると放出されるエネルギーは 1000 倍に増える。断層の破壊は岩盤にたまったひずみが限界を超えることで生じる。限界となるひずみの大きさは地震の規模によらずほぼ一定と考えてよいため,1 回の地震で破壊される断層の長さを L とすると,変位量 D は L に比例して増え,放出されるエネルギーは L の 3 乗に比例して増えると考えてよい。これらの考えにもとづいて,マグニチュード 3 の地震で破壊される断層の長さと横ずれ変位量を推定し,それぞれ有効数字 1 桁で答えよ。
第1問 恒星の前を横切る惑星 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半(問Ⅰ)は、惑星が恒星の前を横切るときの「恒星の明るさの変わり方」から、見えない惑星のことを調べる問題。図1—1 の明るさのグラフには、読みとれることが3つある。くり返しの間隔 P (公転周期)、暗い時間 Δ T (惑星が恒星の前を横切るのにかかる時間)、暗くなる割合 δ (惑星が隠す面積の割合)。
使う道具は2つ。ケプラーの第3法則 (周期の2乗は軌道の半径の3乗に比例する)と、円軌道の速さの式 V 2 = G M a 。恒星Sは太陽と同じ質量なので、地球の値(1 天文単位・1 年・3.0 × 10 4 m / s )と比べれば G や M を知らなくても計算できる。
後半(問Ⅱ)はドップラー効果 の問題。光を出すもの(または受けるもの)が遠ざかると、波長がのびて見える。速さが光の速さ c よりずっと小さいとき、のびる割合は「遠ざかる速さ ÷ c 」。どの吸収線が「だれの大気で・だれから見て」できたのかを1本ずつ整理するのが筋になる。
問Ⅰ(1) 地球と惑星Xは、どちらも太陽と同じ質量の星のまわりを回っている。ケプラーの第3法則を、天文単位と年の単位で書くと a 3 = P 2 なので
a = P 2 / 3 = ( 2.7 × 10 − 2 ) 2 / 3
2.7 × 10 − 2 = 27 × 10 − 3 で、27 1 / 3 = 3 、( 10 − 3 ) 1 / 3 = 10 − 1 だから P 1 / 3 = 0.30 、a = 0.30 2 = 0.090 天文単位。
円軌道では V 2 = G M a なので、同じ M なら速さは a に反比例する。地球(a = 1 )の速さとくらべて
V = 3.0 × 10 4 × 1 0.090 = 3.0 × 10 4 0.30
太陽のすぐ近く(水星の軌道の4分の1ほど)を回るので、地球より3倍以上速い。
答え V = 3.0 × 10 4 × 1 a = 3.0 × 10 4 0.30 = 1.0 × 10 5 m / s (ケプラーの第3法則 a 3 = P 2 より a = ( 2.7 × 10 − 2 ) 2 / 3 = 0.090 天文単位。 V 2 = G M / a なので V ∝ a − 1 / 2 )
問Ⅰ(2) 暗くなっている時間 Δ T の間に、惑星は恒星の円盤の前を端から端まで横切る。その長さ(弦の長さ)は
V Δ T = 1.0 × 10 5 × 7.0 × 10 3 = 7.0 × 10 8 m
中心から高さ h の所を横切る弦の長さは 2 R 2 − h 2 。これが R になるのは h = 3 2 R 、つまり中心から見て 60 ∘ の所を通る道すじ。図1—2 では A と E が 60 ∘ の点を通る。C(まん中)なら弦は 2 R 、B と D(30 ∘ )なら 3 R で、どちらも長すぎる。
上を通るか下を通るかは、明るさのグラフでは区別できないので、A と E の両方を選ぶ。デモで道すじを切りかえると、A・E だけ暗い時間が 7.0 × 10 3 s になる。
答え A,E。暗い間に進む距離 V Δ T = 7.0 × 10 8 m は恒星の半径 R に等しく,弦の長さが R になるのは中心から 3 2 R 離れたAとEだけだから。
問Ⅰ(3) 惑星がすっかり恒星の前に入っているとき、隠れるのは惑星の円の面積 π r 2 。恒星は一様に光る円盤なので、暗くなる割合は面積の比になる。
δ = π r 2 π R 2 = ( r R ) 2 = 1.6 × 10 − 3
より r R = 0.04 、r = 0.04 × 7.0 × 10 8 。
木星の半径(約 7 × 10 7 m )の半分より小さく、海王星(約 2.5 × 10 7 m )に近い。太陽系なら木星型惑星(巨大惑星)にあたる大きさで、地球の約4倍。ただし、岩の惑星かガスの惑星かを決めるには、半径だけでなく質量(平均密度)も要る。
デモで惑星の半径を変えると、暗くなる深さは変わるが、暗い時間はほとんど変わらない。時間は道すじ、深さは大きさ と、別々に読める。これは惑星が恒星より十分小さいときの話で、A・E の道すじで半径を 9.4 × 10 7 m 以上にすると、惑星が恒星の縁からはみ出したまま通るので、いちばん暗いときでも ( r R ) 2 より浅くなる(デモでも確かめられる)。
答え 2.8 × 10 7 m ( δ = ( r R ) 2 より r = 7.0 × 10 8 × 1.6 × 10 − 3 = 7.0 × 10 8 × 0.04 )
問Ⅰ(4) 恒星Sは太陽と同じ絶対等級(本当の明るさ)なので、惑星Xから見た明るさは、地球から見た太陽の明るさとの距離のちがいだけで決まる。明るさは距離の2乗に反比例するので
惑星Xから見た明るさ 地球から見た太陽の明るさ = ( 1 0.09 ) 2
等級は、明るさが 100 倍で 5 等級小さくなる目盛り(m = − 2.5 log 10 ( 明るさ ) + 定数 )。だから
m = − 26.8 − 2.5 log 10 ( 1 0.09 ) 2 = − 26.8 + 5 log 10 0.09
log 10 0.09 = 2 log 10 3 − 2 = 2 × 0.477 − 2 = − 1.046 を入れて計算し、小数点以下1桁にまとめる。
約 120 倍明るいので 5 等級ほど明るくなる。空に見える恒星の円の大きさも、地球から見た太陽の約 11 倍になる。
答え − 32.0 等 (明るさは ( 1 0.09 ) 2 倍。 m = − 26.8 + 5 log 10 0.09 = − 26.8 + 5 × ( 2 × 0.477 − 2 ) )
問Ⅱ(1) 図1—4(a) の λ 0 の吸収線は、光が地球の大気を通るときにできた。地球の大気は観測する人といっしょに動いているので、波長はずれない。
もう1本は、恒星Qの大気でできた吸収線。Q と地球は v の速さで離れていくので、地球で見る波長は v c λ 0 だけ長くなる(本文の「( v / c ) λ 0 だけ変化」は、遠ざかるので長くなる向き)。図1—4(a) でも λ 1 は λ 0 の右(長い側)にある。
問Ⅱ(2) λ 2 は、図1—4(b) で恒星面通過のときだけ現れる線なので、惑星Yの大気でできた吸収線。Y の大気の中では、吸収はもとの波長 λ 0 で起こる。それを地球で見るので、効くのは Y と地球の間の速さ 。
Y は地球の方へ V 1 で動き、地球は同じ向きに v で逃げている。どちらも同じ線の上の動きなので、Y と地球の間が離れていく速さは v − V 1 。横向きの速さ V 2 は、見る向きに垂直なので(1次の近さでは)ドップラー効果に効かない。よって、のびる割合は v − V 1 c 。
図1—4(b) では λ 2 は λ 0 より左(短い側)にあるので、λ 2 − λ 0 = v − V 1 c λ 0 < 0 。つまり Y と地球の間は縮んでいて、Y の方が速い。デモで V 1 を v より小さくすると、λ 2 は λ 0 の右へ移る。
答え λ 2 = ( 1 + v − V 1 c ) λ 0 。 V 1 > v 。 λ 2 が λ 0 より短く,惑星Yは地球に近づいている( V 1 − v > 0 )から。
問Ⅱ(3) 今度は、惑星Yにいる人が恒星Qの光を見る場合。Y の大気の吸収線は、Y にいる人から見ればずれないので λ 0 のまま(図1—4(c) の λ 0 )。
恒星Qの大気の吸収線は、Q と Y の間の速さでずれる。Q は止まっていて、Y は Q から遠ざかる向き(地球の方)に V 1 で動いているので、のびる割合は V 1 c 。ここでも V 2 は見る向きに垂直なので(1次の近さでは)効かない。
問Ⅱ(4) 下線部の考え方:惑星Y を「(c) のスペクトルを出す光源」とみなして、それを地球から見る。Y から出た光の波長は、(2) と同じく Y と地球の間の速さ v − V 1 の分だけずれる。(c) の λ 3 の線を地球で見ると
λ 3 ( 1 + v − V 1 c ) = λ 0 ( 1 + V 1 c ) ( 1 + v − V 1 c )
λ 0 ( 1 + V 1 c + v − V 1 c + V 1 ( v − V 1 ) c 2 )
最後の項は c 2 で割った2次の項なので落とせる。V 1 の項が打ち消しあって、λ 0 ( 1 + v c ) が残る。
Q から Y へ行くときに V 1 の分のびて、Y から地球へ行くときに V 1 の分縮むので、途中の Y の速さは消える。デモの波の山を1つずつ追う計算でも、Y で受けて出しなおした光は (1) の λ 1 と同じ位置に来る。
答え λ 1 = λ 3 ( 1 + v − V 1 c ) = ( 1 + V 1 c ) ( 1 + v − V 1 c ) λ 0 = ( 1 + v c + V 1 ( v − V 1 ) c 2 ) λ 0 ≈ ( 1 + v c ) λ 0 (2次の項を落とすと (1) と一致)
第2問 大気と海が運ぶ熱・水・塩 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半(問Ⅰ)は、中緯度の上空を波打って流れる偏西風(偏西風波動)が、熱や水を南北に運ぶしくみの問題。高層天気図の等高線 (700 hPa の気圧になる高さを結んだ線)は、地上天気図の等圧線と同じ見方ができる。高さが低い所ほど気圧が低い。上空の風は地衡風 (気圧傾度力とコリオリの力がつり合った風)で、等高線に沿って、北半球では低い方を左に見て吹く。
(3) は静水圧 のつり合い:ある所の気圧は、その上にある空気の重さで決まる。冷たい空気は密度が大きく重い。(4) は、大気の中の水の量が1年で変わらないことから、出入りを足し引きする「収支」の問題。
後半(問Ⅱ)は、大西洋の塩分の分布が 100 年ほど変わらないことから、海水の運ばれ方を考える問題。塩分は、蒸発で上がり、降水・川の水・氷の融けた水で下がる。それでも分布が変わらないのは、海水の流れがつり合うように運んでいるから。最後の (4) は、水と塩の2つの収支から、見えない深層流の量を出す。
問Ⅰ(1) 気圧傾度力は、気圧(ここでは等高線の高さ)の高い方から低い方へ、等高線に直角にはたらく。図2—2(a) では北ほど等高線の値が低い(寒気の側)。点X を通る等高線は右上(北東)へ上がっているので、それに直角で北西側を向く矢印 h が気圧傾度力。
上空の風は地衡風なので、気圧傾度力とコリオリの力がつり合う。北半球のコリオリの力は進む向きの右へはたらくので、風が等高線に沿って「低い方を左に見る」向きに吹くと、コリオリの力は右(高い方)を向いて、気圧傾度力と逆向きでつり合う。
点X で低い方(北西)を左に見る向きは、等高線に沿って北東へ向かう b。デモで止まっている空気のかたまりを放すと、はじめは h の向きに動き出し、右へ曲げられて、平均すると b の向きに流れる。
問Ⅰ(2) 等高線が南へ垂れ下がった所が気圧の谷。地衡風は等高線に沿って吹くので、谷の西側では等高線が北西から南東へ下がっていて、風は北寄り(南へ向かう成分がある)。谷の東側では南西から北東へ上がっていて、風は南寄り(北へ向かう成分がある)。
寒気は谷より少し西に張り出しているので、南へ向かう北寄りの風の所に冷たい空気がある。つまり冷たい空気が南へ運ばれる。東側の南寄りの風の所には暖かい空気があり、北へ運ばれる。
冷たい空気が南へ行くことと、暖かい空気が北へ行くことは、どちらも熱を北へ運ぶはたらき。差し引きして熱は北向きに運ばれる。デモのグラフでは、北風(マイナス)の所で気温が低く、南風(プラス)の所で気温が高い。寒気のずれを 0 にすると、南北に運ぶ熱の平均は 0 になる。
答え 北向き。気圧の谷の西側では北寄りの風が寒気を南へ,東側では南寄りの風が暖気を北へ運ぶので,差し引き熱は北へ運ばれる。
問Ⅰ(3) A と B は同じ高さで、どちらも 700 hPa。地表の気圧は「700 hPa + そこから地面までの空気の柱の重さ(1 m² あたり)」になる。
A′ と B′ は同じ標高なので、A から A′、B から B′ までの空気の柱は同じ高さ。ちがうのは中身の空気の温度で、A の下は寒気、B の下は暖気。気体の密度は、同じ圧力なら温度が低いほど大きい(ρ = p R T )。だから A の下の柱の方が重く、A′ の気圧の方が高い。
デモでは、700 hPa の気温を寒気側 0 ℃・暖気側 6 ℃ として、1 m ずつ空気の重さを足していくと、A′ が約 1006 hPa、B′ が約 998 hPa。地上の気圧が低いのは B′ の側なので、地上の低気圧は、上空の気圧の谷より東の暖かい側にできる(低気圧の中心は、上へ行くほど西へかたむく)。
答え B′。A′とB′の上の空気の柱は700hPa面までの高さが同じだが,Aの下は寒気で密度が大きく重いので,地表の気圧はB′の方が低い。
問Ⅰ(4)(a) 大気の中の水(水蒸気+雲)は、1年たっても量が変わらない。だから、1年に入ってきた水と出ていった水は同じ。
入ってくるのは、地表からの蒸発 ρ S E (体積 S E m 3 に密度 ρ をかけた質量)と、大気の水平運動による輸送(水蒸気と雲の両方)。出ていくのは降水 ρ S P 。凝結は、水蒸気が雲に変わるだけで、大気の中の水の量は変えないので、ここでは入らない。
ρ S E + ( 輸送 ) = ρ S P
デモのモデルでは、領域の東西の面を通る水蒸気と雲の量を別に足しあげて、この式とぴったり合うことを確かめている。
答え ρ S ( P − E ) (大気中の水は変わらないので, ρ S E + ( 輸送 ) = ρ S P )
問Ⅰ(4)(b) 今度は水蒸気だけの収支を考える。水蒸気も1年で量が変わらないので、入る量と出る量が等しい。
水蒸気が入ってくるのは、蒸発 ρ S E と、水平運動による水蒸気の輸送。水蒸気がなくなるのは、凝結して雲になる C だけ。
ρ S E + ( 水蒸気の輸送 ) = C
水蒸気 1 kg は、凝結するときに L J の熱を出すので、運びこまれる潜熱は L 倍する。雲として運ばれてくる水は、すでに凝結した後なので潜熱を持っていない。デモでは、面を通る水蒸気だけに L をかけると、この式と一致する。
答え L ( C − ρ S E ) (水蒸気は変わらないので, ρ S E + ( 水蒸気の輸送 ) = C )
問Ⅱ(1) 熱帯の海の上では、北東から吹く貿易風(東寄りの風)が吹いている。
風に押された海面近くの水には、コリオリの力(北半球では進む向きの右へ曲げる力)がはたらく。風の力とコリオリの力がつり合うと、海面近くの層全体としては、風の向きの右 90° の向きへ運ばれる(エクマン輸送)。貿易風は西寄り(北東からなら南西)へ向かうので、その右 90° は北〜北西で、北向きの成分をもつ。
だから北半球の熱帯の海面近くの水は北へ運ばれ、塩分の低い熱帯の水が塩分の高い亜熱帯へ入って、両者の塩分の差が広がるのを抑える。デモで海面近くの層を動かして平均すると、風に対して − 90 ∘ (右)の向きになる。
答え 北向き。熱帯では東寄りの貿易風が吹き,北半球では海水は風の向きの右へ運ばれる(エクマン輸送)から。
問Ⅱ(2) 湾流は、北大西洋の海を時計回りにまわる大きな流れ(亜熱帯循環)の西の端の部分。この循環は、低緯度の東寄りの貿易風と、中緯度の西寄りの偏西風が、海面を逆向きに押すことでできる(風が原因の流れ=風成循環)。
ふつうに考えると渦は左右対称になりそうだが、実際には西の岸(北アメリカの東岸)に沿う流れだけが、狭くて速い。これはコリオリの力が高緯度ほど大きいため。この効果があると、南向きのゆっくりした流れが大洋の広い範囲に広がり、北へもどる流れは西の岸に沿った細い帯に集まる(西岸強化 )。黒潮も同じしくみでできる。
デモで「コリオリの力が北ほど強くなる割合」を 0 にすると、渦は左右対称になる。割合を大きくすると渦の中心が西へ寄り、西の岸の北向きの流れが、東の南向きの流れの 10 倍以上速くなる。
答え 低緯度の貿易風と中緯度の偏西風によって北大西洋に時計回りの亜熱帯循環ができる。コリオリの力が高緯度ほど大きいため流れは大洋の西側に集まって強まり(西岸強化),北米東岸に沿って北上する狭く速い湾流となる。
問Ⅱ(3) 北極海の塩分が下がり続けないためには、川から入る真水の分を、どこかで取り除かなければならない。海氷ができるときは塩がとりこまれにくいので、真水だけが氷として取り出される。
しかし、冬にできた氷が同じ北極海で夏に融けると、取り出した真水がそのまま返ってくるので、1年で差し引き 0 になる。海氷の量は年ごとに変わらないので、北極海の中で「できる量>融ける量」なら、その差の分の氷が、風や海流で北極海の外(グリーンランド海など)へ運び出されて、外で融けていることになる。
外へ出ていく氷の量が川の水の量と同じなら、塩分はつり合う。デモで外へ出る割合を 0 にすると、塩分は下がり続ける。
答え 北極海で1年にできる海氷の量が融ける量より多く,その差の分の海氷が風や海流で北極海の外へ運び出されて融けること。
問Ⅱ(4) 南緯30度より北の大西洋〜北極海を1つの箱と考える。出入りは3つ:深層から出ていく F 1 (塩分 S 1 )、中層から入ってくる F 2 (塩分 S 2 )、海面から差し引き出ていく水 M 。海面から出ていくのは蒸発した真水なので、塩は含まない。
F 2 = F 1 + M
塩の量が変わらないので(海水 1 kg の塩は、塩分 ‰ の数だけ g)
S 1 F 1 = S 2 F 2 = S 2 ( F 1 + M )
F 1 = S 2 M S 1 − S 2 = 34.4 × 3 × 10 8 34.9 − 34.4 ≈ 2.1 × 10 10 k g / s
塩分の差がわずか 0.5 ‰ なので、深層流は海面から失われる水の約 70 倍という大きな量になる。これはおよそ 20 Sv(1 秒に 2000 万 m³)で、実際に観測されている大西洋の南北の循環と同じくらいの大きさ。
答え 2 × 10 10 k g / s (水の量: F 2 = F 1 + M ,塩の量: S 1 F 1 = S 2 F 2 より F 1 = S 2 M S 1 − S 2 = 34.4 × 3 × 10 8 0.5 = 2.1 × 10 10 )
第3問 活断層のずれと地震 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半(問Ⅰ)は、活断層の地面をはぎとって出てきた地層のスケッチ(図3—1)から、断層がいつ・どれだけずれたかを読み解く問題。使う考え方は地層の新旧 (下にある地層ほど古い、不整合で覆う地層はその下より新しい、貫入した岩脈は貫かれた地層より新しい)と、ずれの量は古い目印ほど大きい ということ。断層は地震のたびにずれを積み重ねるので、ある目印のずれは「その目印ができてから後の地震のずれの合計」になる。
化石の年代は「その地層がたまった年代」と考えてよい(再堆積していない)。岩脈d の年代は、同じ時期に流れ出た溶岩の中の木片から 3700 年前と分かる。
後半(問Ⅱ)は地震の観測の問題。P 波と S 波は速さがちがうので、着いた時刻の差(P−S 時間)は震源までの距離に比例する(d = k T )。震源は、観測点を中心とする球の交わりで決まる。P 波の最初の動き(初動)が押しか引きかは、断層がどちら向きにずれたかで決まる。
問Ⅰ(1) 矢印で示された砂層 a と砂礫層 b の境界の線は、断層の北側と南側で途切れている。それぞれの線を断層の線まで延ばし、断層と交わる位置の差を読む。図3—1 の目盛りで、北側の線は東の端から約 5 m、南側の線は約 14 m の所で断層に当たるので、ずれは約 9 m。北側の地層が東へずれているので、右横ずれ(向こう側が右へずれる)。
この境界ができた年代は、上下の地層の化石からはさみこむ。境界より下の砂層 a には 8000 年前(①)と 8100 年前(⑥)の化石があるので、境界は 8000 年前より新しい。境界より上の砂礫層 b には 7800 年前(⑤)、7700 年前(②)、7500 年前(③)の化石があり、いちばん古いのは 7800 年前なので、境界は 7800 年前より古い。
デモで時間を巻きもどすと、7800 年前より前まで戻したときに a・b の境界の線がつながる。
答え 9 m 。8000年前〜7800年前。境界の下の砂層aの化石(①8000年前,⑥8100年前)より新しく,上の砂礫層bの化石(⑤7800年前,②7700年前,③7500年前)より古いから。
問Ⅰ(2) 1 の説明と同じ考え方で、「ある目印のずれ」から「それより新しい目印のずれ」を引くと、その間の期間のずれになる。
岩脈 d は、同じ時期の溶岩の年代から 3700 年前に貫入した。岩脈は北側と南側で約 4 m ずれている(図3—1 の目盛りで、岩脈の縁は北側で約 11 m、南側で約 15 m の所で断層に当たる)。つまり 3700 年前から後に、合計約 4 m ずれた。
一方、2000 年前の礫層 e のずれは 2 m(問題文)。これは 2000 年前から後のずれの合計。したがって、3700 年前から 2000 年前の間のずれは 4 − 2 = 2 m。これが図3—2 の灰色四角 2 にあたる。
デモでは、3700 年前まで巻きもどすと岩脈がつながり、2000 年前まで巻きもどすと礫層 e がつながる。古い地層ほど大きくずれていることが見える。
答え 岩脈dは同時期の溶岩の年代から3700年前に貫入し,断層で4mずれている。2000年前の礫層eのずれは2mなので,3700年前から2000年前の間の断層活動による変位量の合計は4−2=2mである。
問Ⅰ(3) 図3—2 の太い点線は、各地震が起きる直前の点(段の下の角)をつないだ線。点線の傾きが、長い目で見たずれの平均の速さになる。図の細い点線から、点線は地震Ⅰ(約 7800 年前)に 0 m、地震Ⅴ(約 1600 年前)に 7 m を通る。
7 m 7800 − 1600 年 ≈ 1.1 × 10 − 3 m / 年
1000 年あたりにすると約 1.1 m。(図の点線の画素に直線を合わせると 1.15 くらいで、1.2 に丸まる読みもある。ここでは問題が細い点線で示した 1600 年前・7 m と、点線の始まりの 7800 年前・0 m の2点から 1.1 とした。)
点線が段の下の角を通るということは、「前の地震のずれの分だけひずみがたまると、次の地震が起きる」というきまりになっている。地震Ⅴの後の高さは約 9 m なので、点線が 9 m に届くときが次の大地震。地震Ⅴで約 2 m ずれたので、それがたまるのに
2 m 1.1 m × 1000 ≈ 1.8 × 10 3 年
約 1600 年前から約 1800 年後なので、いまから約 1800 − 1600 = 200 年後、有効数字1桁で約 2 × 10 2 年後。
1.1 に丸めずに 7 ÷ 6.2 = 1.13 m を使っても同じになる。点線をいままで延ばすと 7 + 1.13 × 1.6 ≈ 8.8 m で、9 m まであと約 0.2 m。
0.2 m 1.13 m × 1000 ≈ 1.7 × 10 2 年
ただし、この答えは図の読み方でぶれやすい。大きな数どうし(約 1800 年と 1600 年)の引き算なので、読みが少しずれるだけで答えが大きく動く。たとえば点線を段の角5つにいちばんよく合うように引き直すと約 80 年後、地震Ⅴの時期を約 1660 年前と読むと(2 ÷ 1.1 で数えて)約 160 年後になり、読み方しだいで 50〜220 年後くらいまで広がる。ここでは問題の太い点線と細い点線から読める2点(7800 年前に 0 m、1600 年前に 7 m)と、地震Ⅴの後の高さ約 9 m を使った。
デモで▶を押すと、地震のたびに断層をまたぐ線が一度にずれ、下の帯でひずみがたまっていくようすが見える。地震Ⅴのずれを大きくすると、段が高くなり、次の地震までの時間が長くなる。
答え 1.1 m (1000年あたり)。次の大地震は今から約 2 × 10 2 年後(地震Ⅴ(約1600年前)の2mのずれが 2 ÷ 1.1 × 1000 ≈ 1.8 × 10 3 年でたまる)
問Ⅱ(1) P 波が観測点に着いた時刻 t i は「地震が起きた時刻 t 0 」+「伝わるのにかかった時間 d i / v P 」。距離 d i を出すには、かかった時間 t i − t 0 が必要だが、地震が起きた時刻 t 0 は観測からは分からない。
分からないものは、震源の位置(x , y , z の3つ)と起きた時刻 t 0 の4つ。3つの観測点の到着時刻では式が3つしかないので、1つに決まらない。デモのグラフでは、起きた時刻を少しずつ変えると、そのたびに3つの時刻にぴったり合う別の震源が見つかる。
P−S 時間を使えば、同じ震源から同時に出た P 波と S 波の着く時刻の差なので、起きた時刻を知らなくても距離が出る。
答え P波の着いた時刻だけでは地震の起きた時刻(発震時)がわからず,伝わるのにかかった時間,つまり距離が求まらないから。
問Ⅱ(2) P−S 時間から距離を出す:A と B は 6 × 2 = 12 km、C は 6 × 3 = 18 km。
A と B から等しい距離の点は、A と B の垂直二等分面 x = 0 、つまり F断層の面の上にある。震源を ( 0 , y , z ) とおくと、A ( 8 , 0 , 0 ) からの距離の式は
8 2 + y 2 + z 2 = 12 2 ⟹ y 2 + z 2 = 80
8 2 + ( y − 10 ) 2 + z 2 = 18 2 ⟹ ( y − 10 ) 2 + z 2 = 260
2つの式を引き算すると − 20 y + 100 = 180 、よって y = − 4 。これを入れて z 2 = 80 − 16 = 64 、z は下向きが正なので z = 8 。
デモでは、断層の面の上に「A からの距離が合う円」と「C からの距離が合う円」を描くと、2つの円の交点が震源になっている。
答え ( 0 , − 4 , 8 ) ( d A = d B = 12 より x = 0 。 y 2 + z 2 = 80 , ( y − 10 ) 2 + z 2 = 324 − 64 より y = − 4 , z = 8 )
問Ⅱ(3) 図3—1 では、断層の北側の地層が東へずれている(右横ずれ)。微小地震も同じ向きにずれるので、断層の北側(x > 0 )は東(y の正の向き)へ、南側は西へ動く。
震源のまわりを、断層の面(x = 0 )と、震源を通ってそれに直角な面(y = 5 )で4つに分けて考える。北側の地面が東へ動くと、その行く手の北東の区画は押され(押し)、後ろの北西の区画は引っぱられる(引き)。南側の地面は西へ動くので、南西が押し、南東が引き。
A ( 8 , 0 ) は北側で震源(y = 5 )より西なので北西:引き。B ( − 8 , 0 ) は南側で西なので南西:押し。C ( 8 , 10 ) は北側で東なので北東:押し。デモで震源の位置を動かすと、区画の境目が動いて押し引きが入れかわる。
問Ⅱ(4) M7 と M3 では、マグニチュードが 4 ちがう。2 増えるとエネルギーが 1000 倍なので、4 小さいとエネルギーは 1000 − 2 = 10 − 6 倍。
( L 30 k m ) 3 = 10 − 6 ⟹ L 30 k m = 10 − 2
よって L = 0.3 k m 。変位量は L に比例するので、2 m × 10 − 2 。
マグニチュードが 2 小さくなるごとに、長さも変位量も 10 分の 1 になる。M3 の微小地震でこわれるのは、30 km の断層のうちのごく一部で、変位も数 cm しかない。だから問Ⅰのような方法で測る断層全体のずれにはほとんど影響しない。
答え 長さ 3 × 10 2 m ,横ずれ変位量 2 × 10 − 2 m (M が 4 小さいとエネルギーは 10 − 6 倍, L 3 ∝ エネルギーなので L は 10 − 2 倍: 30 k m → 0.3 k m , D も 10 − 2 倍: 2 m → 0.02 m )