PDFの 41 枚目
地 学
第1問 次の文章を読み,下の問いに答えよ。
天の川銀河の中心には太陽の 300 万倍の質量が集中しており,これはブラックホールであると考えられている。ただし,現在の観測精度では,質量が集中している範囲は半径 0.1 光年より小さいということしかわかっていない。一方,理論的には,この程度の質量のブラックホールの半径はおよそ 1000 万 k m であり,0.1 光年よりもはるかに小さい。したがって,観測結果だけからは,銀河の中心にブラックホール以外の天体が存在する可能性も否定できない。そこで,仮にブラックホールではなく太陽のような恒星の集まりがあるとしたらなにが起こるか,考えてみよう。
問1 半径 R の球形の空間の中に質量 M の星が N 個あるとして,これらの星の速度 v を求めよう。簡単のために,球の表面にそって円運動している星を考える。このような星では,遠心力による加速度 v 2 R と万有引力による加速度 G M N R 2 がつりあっている。ここで,G は万有引力定数である。
(1) v を R ,M ,N ,G で表せ。
(2) R = 0.10 光年,M = 2.0 × 10 30 k g ,N = 3.0 × 10 6 として,v の値を有効数字 1 桁で求めよ。なお,G = 6.7 × 10 − 11 N m 2 / k g 2 ,光速度は 3.0 × 10 8 m / s ,1 年は 3.2 × 10 7 s とせよ。
問2 星が空間に一様に分布しているとして,その中を速度 v で動く星が単位時間のあいだに他の星と衝突する確率 P を求めよう。ただし,まわりの星は止まっているとする。すべての星が同じ半径 r をもつとし,2 つの星はその中心間の距離が 2 r になったら衝突すると仮定する。これは,星を中心として星の進行方向に垂直な半径 2 r の円を考えたとき,その円が移動してできる円柱の中に他の星の中心が入っていれば衝突するということである(図1—1)。
PDFの 42 枚目
(1) 星の数密度(単位体積あたりの星の数)を n として,P を r ,n ,v で表せ。
(2) r = 7.0 × 10 8 m とし,v には問1で求めた値を用い,それ以外は問1と同じ値を用いて,P を 1 / s を単位として有効数字 1 桁で求めよ。ただし,星は半径 R の球形の空間の中に一様に分布しているとする。
(3) ある星が他の星と衝突するまでの平均時間 T は,1 / P で表される。T を年を単位として有効数字 1 桁で求めよ。
問3 宇宙の年齢である 1.3 × 10 10 年のあいだに星の集まりはどうなると考えられるか,上の T の長さを考慮して 100 字以内で説明せよ。
図1—1
PDFの 43 枚目
第2問
次の文章を読み,下の問いに答えよ。
大気と海洋の担う南北方向の熱輸送は,地球の気候にとって重要な役割を果たしている。このうち海洋による熱輸送は,海洋のさまざまな循環によりもたらされている。
図2—1は,太平洋や大西洋のような北半球中緯度における海洋表層の流れを単純化して表したものである。東西方向,南北方向ともに数千キロメートルにもおよぶこのような水平方向の循環は亜熱帯環流と呼ばれ,低緯度帯の (a) と中緯度帯の (b) により駆動されている。また,このような大規模な海洋の流れは,圧力傾度力とコリオリ力がつり合っている (c) となっており,(ア)強い流れが海洋の (d) に集中していることが特徴的である。
図2—2は,図2—1の a-a’ 緯度線に沿って,南北方向の流速の東西分布を単純化して描いたものである。海洋西岸から 200 k m の範囲では 1.0 m / s で北向きに流れており,それ以外の場所では 2.5 × 10 − 2 m / s でゆっくりと南に向かって流れている。北向きの流れが熱帯付近の暖かい海水を高緯度側に運び,南向きの流れがやや水温の低い海水を低緯度側へと運んでおり,(イ)これらの差が亜熱帯環流による正味の南北方向の熱輸送となる。
問1 (a) ~ (d) に入る適切な語句を以下から選び,(a)-1 のように記せ。
1. 海陸風
2. 偏西風
3. 密度流
4. 中央部
5. 潮 流
6. 東 側
7. 西 側
8. 貿易風
9. 季節風
10. 地衡流
11. 熱帯収束帯
問2 下線(ア)のような海流の名前を 2 つあげよ。
PDFの 44 枚目
図2—1 北半球中緯度における亜熱帯環流の模式図
図2—2 a-a’ 緯度線上の南北方向の流速の東西分布(北向きの流れを正、南向きの流れを負とする)
PDFの 45 枚目
問3 図2—1のA地点(南向きの流れ)において,流れの向きに対する圧力傾度力とコリオリ力の向きを図示せよ。解答用紙には,南向きの流れを表す以下のような矢印を描き,その矢印に対してそれぞれの力の向きを図示すること。
問4 下線(イ)で示される,正味の熱輸送の量を求めてみよう。ここでは,亜熱帯環流によって図2—1の a-a’ 線の緯度を横切る熱輸送を考える。
(1) a-a’ 線の緯度を横切る北向きの流量を V [ m 3 / s ] ,北向きの流れの平均水温を T 1 [ ℃ ] ,南向きの流れの平均水温を T 2 [ ℃ ] ,海水の密度を ρ [ k g / m 3 ] ,比熱を C [ J / ( k g · ℃ ) ] とする時,この緯度を横切る正味の熱輸送量 Q [ J / s ] はどのように表されるか記せ。ただし,亜熱帯環流に伴って a-a’ 線を横切る北向きの流量と南向きの流量は等しいとする。
(2) T 1 = 18 ℃, T 2 = 16 ℃, ρ = 1.0 × 10 3 k g / m 3 , C = 4.0 × 10 3 J / ( k g · ℃ )
とした場合,図2—2の流速分布を用いて正味の熱輸送量を有効数字 2 桁で求めよ。ただし,流れは深さ 250 m まで一様であるとし,ここではそれよりも深いところの流れは考えない。
地球規模の海洋循環には表層の亜熱帯環流だけでなく,深層の流れを伴った循環(鉛直循環)もあることが知られている。この循環は,高緯度域の海面付近で作られる密度の高い海水が海洋の深層へと沈み込むことにより駆動されている。北半球の鉛直循環を東西方向に平均してみると,高緯度域で深層へ沈み込んだ海水は熱帯域へ移動し,表層では逆に熱帯域から高緯度に向かって流れている。鉛直循環は,亜熱帯環流に比べて流量は少ないが,海洋の担う南北方向の熱輸送にとって重要な役割を果たしている。
PDFの 46 枚目
問5 一般に,海面における海水の密度変化は,水温や塩分が変化することによりもたらされている。海面で密度の高い海水が形成される原因を 2 つあげよ。
問6 鉛直循環だけを考えて,どのくらいの熱が輸送されるかを求めてみよう。鉛直循環として 2.0 × 10 7 m 3 / s の海水が循環しており,北向きに流れる表層海水の平均水温が 17 ℃,深層の南向きの流れの平均水温が 2 ℃ であったとする。この時,鉛直循環による南北方向の熱輸送量は,問4で求めた水平方向の循環による熱輸送量の何倍になるか求めよ。その算出の過程も示せ。ただし,海水の密度,比熱は問4で用いた値と同じとする。
PDFの 47 枚目
第3問
Ⅰ 図3—1は,地球の表層と内部をめぐる物質の定常的な循環を模式的に示したものである。地球を構成する代表的な構成単位をボックスであらわし,そこにある主要な物質を【 】内に示している。また,矢印は物質の主要な移動や変化を示す。
物質の移動や変化は,さまざまな作用によって起こることが知られている。たとえば,図3—1で地表の物質には,堆積岩,変成岩,深成岩,火山岩などが風化作用と侵食作用を受けてもたらされたものが多いが,火山噴火により直接もたらされる場合もある。この図をもとに,以下の問いに答えよ。
問1 (A)~(H)に入るもっとも適切な語句を以下から選び,(A)—アのように答えよ。
ア.部分溶融
イ.結晶分化
ウ.マグマの固結
エ.運 搬
オ.かんらん岩質
カ.花こう岩質
キ.玄武岩質
ク.続 成
ケ.堆 積
コ.大陸移動
サ.マントル対流
シ.変 成
ス.不整合
セ.隆 起
問2 海底の堆積物は図3—1中の(a)の矢印の過程によって,最終的にマントルにもたらされる。これはどのような過程か,15 字以内で記せ。
問3 (G)マグマからは(H)作用により S i O 2 量の異なるさまざまなマグマが発生することが知られている。さらに図3—1にあるように「地殻の溶融」でもマグマの生成が起こっているとされる。
(1) 地殻の溶融により発生するマグマが固結してできた深成岩は,大陸地殻に大量に分布する。その岩石名を記せ。
(2) 地殻の溶融が起こっていないとすると,(1)で答えた岩石について説明できない事実がでてくる。それはどのようなことか,理由も含めて 80 字以内で記せ。
PDFの 48 枚目
図3—1
PDFの 49 枚目
Ⅱ 図3—2は,破線のルートでおこなったある地域の地質調査の結果を示している。A地点からF地点までの間に,れき岩層,泥岩層,砂岩層,石灰岩層が認められた。また,D地点では砂岩層の中に白色の薄い凝灰(ギョウカイ)岩層がはさまれていた。D地点と同じ凝灰岩層は,G地点とH地点でも認められた。これらの各地層の走向傾斜はいずれも同じで,走向は N 45 ∘ W ,傾斜は 30 ∘ S W であった。F地点には断層が認められ,その走向は N 45 ∘ W ,傾斜は 45 ∘ N E で,断層を境に石灰岩層と砂岩層が接していた。以下の問いに答えよ。
問1 C地点は,B地点の北東(北から東側へ 45 度の方向)に位置し,水平距離で 60 m 離れている。B地点とC地点の間に分布する泥岩層の層厚を求めよ。
問2 D地点の凝灰岩層のような,広い範囲の地層の対比に用いることのできる地層を何と呼ぶか答えよ。
問3 D地点の凝灰岩層と同じ地層の露出が予想される地点を,K,L,M,Nの 4 つの地点の中から 1 つ選び記号で答えよ。
問4 F地点の断層の変位に関する記述で正しいものを以下の(ア)~(カ)のうちから 2 つ選び記号で答えよ。
(ア) 北東側の地層が南西側の地層に対して相対的にずり下がった正断層
(イ) 北東側の地層が南西側の地層に対して相対的にずり上がった逆断層
(ウ) 断層に沿った上下方向の相対的な変位は分からない
(エ) 北東側の地層が南西側の地層に対して相対的に左にずれた左ずれ断層
(オ) 北東側の地層が南西側の地層に対して相対的に右にずれた右ずれ断層
(カ) 断層に沿った水平方向の相対的な変位は分からない
PDFの 50 枚目
図3—2 調査地域の地形図と地層の分布 実線は等高線を表わし,標高はメートルで示す。
第1問 銀河の中心に、星が集まっていたら 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 天の川銀河の中心には、太陽の 300 万倍の質量が、半径 0.1 光年より小さい所に集まっている。ブラックホールだと考えられているが、観測だけでは「太陽のような星がぎっしり集まっているだけ」の可能性を消せない。この問題は、もし星の集まりだったら何が起こるか を計算して、その可能性を調べる。
使う道具は2つ。1つめは円運動のつり合い :回っている星では、遠心力の加速度 v 2 R と、万有引力の加速度 G M N R 2 がつり合う(球の外側から見ると、中の質量が全部中心にあるのと同じように引かれる)。
2つめは衝突の確率 :動いている星のまわりに半径 2 r の円を考え、その円が進んでできる円柱の中に、ほかの星の中心が入ればぶつかる。円柱の体積を数えれば、ぶつかる回数が分かる。最後に、ぶつかるまでの時間と宇宙の年齢をくらべる。
問1(1) 球の表面にそって半径 R の円を回る星を考える。星をひっぱるのは、球の中にある星 N 個の万有引力で、その質量の合計は M N 。回っている星から見ると、外向きの遠心力と内向きの万有引力がつり合っている。加速度で書くと
v 2 R = G M N R 2
両辺に R をかけて v 2 = G M N R 。正の平方根をとる。
半径が小さいほど、同じ質量のまわりを速く回る。デモのグラフでは、半径を小さくすると速さが急に大きくなる。
問1(2) まず R をメートルになおす。1 光年は「光が 1 年に進む距離」なので
R = 0.10 × 3.0 × 10 8 × 3.2 × 10 7 = 9.6 × 10 14 m
次に G M N = 6.7 × 10 − 11 × 2.0 × 10 30 × 3.0 × 10 6 = 4.02 × 10 26 。これを R で割ると
v 2 = 4.02 × 10 26 9.6 × 10 14 ≈ 4.2 × 10 11
平方根は約 6.5 × 10 5 m / s で、有効数字 1 桁にまとめる。光の速さの約 460 分の 1 という、ものすごい速さで回っている(有効数字 1 桁の 6 × 10 5 で割るとちょうど 500 分の 1)。
デモでは、この速さで星を放して万有引力だけで動かすと、きれいな円を描いて約 290 年で 1 周する。
答え 6 × 10 5 m / s ( R = 0.10 × 3.0 × 10 8 × 3.2 × 10 7 = 9.6 × 10 14 m , v = 4.2 × 10 11 = 6.5 × 10 5 )
問2(1) 図1—1 のように、動く星のまわりに半径 2 r の円を考える。2つの星の中心が 2 r まで近づくとぶつかるので、この円が通りすぎた場所にほかの星の中心があれば衝突する。
単位時間(1 秒)に星は v だけ進むので、円が通る円柱の体積は
π ( 2 r ) 2 × v = 4 π r 2 v
この中にある星の数は、体積に数密度 n をかけて 4 π r 2 n v 。
星がとてもまばらで、1 秒にぶつかる数が 1 よりずっと小さいときは、この数がそのまま「1 秒の間にぶつかる確率」になる。デモでは、星をばらまいて円柱に入った星を数えると、この式どおりの数になる。
答え P = 4 π r 2 n v (半径 2 r の円柱が単位時間に進む体積 π ( 2 r ) 2 v の中の星の数)
問2(2) n = N 4 3 π R 3 = 3 N 4 π R 3
P = 4 π r 2 v × 3 N 4 π R 3 = 3 N r 2 v R 3
数を入れる:r 2 = 4.9 × 10 17 、R 3 = ( 9.6 × 10 14 ) 3 ≈ 8.85 × 10 44 、v ≈ 6.5 × 10 5 なので
P = 3 × 3.0 × 10 6 × 4.9 × 10 17 × 6.5 × 10 5 8.85 × 10 44 ≈ 3.2 × 10 − 15
単位は 1 / s 。v に (2) の答えの 6 × 10 5 を使っても 3.0 × 10 − 15 で、有効数字 1 桁ではどちらも同じになる。
答え 3 × 10 − 15 1 / s ( n = 3 N 4 π R 3 = 8.1 × 10 − 40 m − 3 , P = 3 N r 2 v R 3 )
問2(3) T = 1 P を秒で出して、1 年 = 3.2 × 10 7 s で割る。
T = 1 3 × 10 − 15 ≈ 3 × 10 14 s , 3.3 × 10 14 3.2 × 10 7 ≈ 1 × 10 7 年
(P = 3.23 × 10 − 15 のまま計算すると 9.7 × 10 6 年で、どちらも有効数字 1 桁で同じ。)
星と星の間は、ふつう星の半径の 1 万倍以上もあいている。それでも速さが大きく数が多いので、1000 万年ほどで一度はぶつかる。デモのグラフは「まだ一度もぶつかっていない星の割合」で、時間 T で約 37 % まで減っていく。
問3 問2 の T は約 1000 万年で、宇宙の年齢 1.3 × 10 10 年の約 1000 分の 1。つまり、星の数・大きさ・集まりの半径が今のまま続くとすると、宇宙が始まってから今までに 1 つの星が平均 1000 回以上(約 1300 回)ほかの星とぶつかる計算になる。実際には1回目の衝突から先は星の数や重さが変わっていくので、この回数は「ぶつかるのは一度や二度ではない」ことを示す目安である。
ぶつかった星は合体して、より重い星になる。重い星ほど燃料を早く使い切って一生が短く、最後は自分の重さでつぶれる(重力崩壊)。これが何度もくり返されると、「普通の星がたくさん静かに集まっている」状態は長く続かず、中心には重い天体(最後はブラックホール)ができると考えられる。
ただし、この計算から確かに言えるのは「ぶつかるまでの時間が宇宙の年齢よりずっと短いので、太陽のような星の集まりのままではいられない」というところまで。ぶつかる速さは問1 の v (約 650 km/s)ほどで、太陽の表面から飛び出すのに要る速さ(約 620 km/s)と同じくらいなので、ぶつかった星がうまく合体するか、こわれてガスをまき散らすかは、この計算だけでは決まらない。「ブラックホールになる」は、合体した重い星やまき散らされたガスが中心に集まってつぶれる、という見通しを足した考えなので、答えの最後の文も「ブラックホールになると考えられる」と書いている。
だから、今も半径 0.1 光年より小さい所に 300 万倍の質量があるなら、それは星の集まりではなくブラックホールと考えるのが自然、という結論になる。
デモでは、ぶつかるまでの時間 T が集まりの半径の 3.5 乗に比例することが分かる。半径が約 0.8 光年より大きければ T は宇宙の年齢をこえ、ぶつかることだけで見れば星の集まりのままでもいられる(星そのものの一生など、ほかの変化は考えていない)。観測で「0.1 光年より小さい」と分かったことが決め手になっている。
答え 平均時間は約1000万年で宇宙の年齢の約1000分の1なので,星は何度も衝突・合体して大質量星となり,早く進化して重力崩壊する。星の集まりのままではいられず,やがてブラックホールになると考えられる。
第2問 海の流れが運ぶ熱 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 海の流れが、赤道の方の熱を北へ運ぶしくみの問題。前半は、北半球の中緯度の海を時計回りに回る大きな流れ(亜熱帯環流 )。後半は、高緯度で重くなった水が沈んで深い所を戻ってくる流れ(鉛直循環 )。
大きな海の流れは、地衡流 (海面の坂による力=圧力傾度力と、地球の自転によるコリオリの力がつり合った流れ)になっている。北半球のコリオリの力は、進む向きの右へはたらく。
熱の運ばれ方は「水の量 × 水温」で考える。北へ暖かい水が行き、同じ量の少し冷たい水が南へ戻れば、差の分だけ熱が北へ運ばれる。図2—2 は、西の 200 km だけ速く北へ、残りの 8000 km はゆっくり南へ流れる様子を表している(見やすく描いた図で、長さの縮尺どおりではない)。
問1 亜熱帯環流を回しているのは風。低緯度(北緯 10〜20° ほど)では東から西へ吹く貿易風 、中緯度(北緯 30〜50° ほど)では西から東へ吹く偏西風 。この2つにはさまれた海の水は、時計回りに回される。
このような大きく、ゆっくりした流れでは、圧力傾度力とコリオリの力がつり合っていて、これを地衡流 という。
図2—1 を見ると、流れの線は西の岸の近くで混み合っている。流れの線が混み合う所ほど流れは速い。つまり強い流れは海の西側 に集まる(西岸強化)。これは地球が丸く、緯度によってコリオリの力の大きさが変わることで起こる。
デモでは、時計回りの環流を描くと、西側だけ線が混み合う。
答え (a)-8,(b)-2,(c)-10,(d)-7
問2 下線(ア)は、海の西側に集まる強い流れ(西岸境界流)のこと。北太平洋の亜熱帯環流の西の強い流れは、日本の南岸を北東へ流れる黒潮 。北大西洋では、アメリカの東岸を北へ流れる湾流 (メキシコ湾流)。
どちらも、低緯度の暖かい水を速く北へ運ぶ暖流で、幅 100 km ほど、速さは 1 m/s をこえる。
問3 A は南向きの流れの中にある。北半球のコリオリの力は、進む向きの右 にはたらく。南を向いて立つと、右手は西 。だからコリオリの力は西向き(流れに直角)。
地衡流では、コリオリの力とつり合う力が必要で、それが圧力傾度力(海面の坂を下る向きの力)。コリオリの力と同じ大きさで逆向きなので、東向き (南を向いて左手の向き)になる。
言いかえると、A では西の方が海面が高く、東へ行くほど低い。デモのグラフは、地衡流のつり合いから計算した a–a' にそった海面の高さで、西岸から 200 km で約 1.5 m 高くなり、そこから東の岸まで少しずつ下がっていく。A はその下り坂の上にある。
デモの下の絵では、止まった水を東向きの坂の力で押すと、はじめは東へ動き出すが、コリオリの力で右へ曲げられる。東へ最大 686 m 出てはもどる輪をかきながら、平均して南へ流れていく(ある瞬間には東へも動くが、平均すると東へは進まない)。坂を横に見て流れるのが地衡流。
答え 南向きの矢印に直角に,圧力傾度力は東向き(流れの左側),コリオリ力は西向き(流れの右側)。2つの力は同じ大きさで逆向き。
問4(1) a–a' 線を北へ横切る水は、1 秒に V [ m 3 ] 。その質量は ρ V で、水温 T 1 の水が運ぶ熱は ρ C V T 1 。
南へ戻る水も、流量は同じ V で、水温は T 2 。これが運ぶ熱は ρ C V T 2 で、向きは南。北向きを正として差し引くと
Q = ρ C V T 1 − ρ C V T 2 = ρ C V ( T 1 − T 2 )
「北向きと南向きの流量は等しい」が大事な条件。流量が同じなら、水温を ℃ で測っても K で測っても同じ答えになる。デモのグラフで、水温の「0 の点」をずらしても答えが変わらない(平らな線)のはこのため。流量をずらすと、0 の点のとり方で答えが変わってしまい、「運ぶ熱」が決まらない。
問4(2) 図2—2 から、北向きの流れは幅 200 km、速さ 1.0 m/s。深さ 250 m まで一様なので、断面積は 2.0 × 10 5 × 250 m 2 。流量は
V = 1.0 × 2.0 × 10 5 × 250 = 5.0 × 10 7 m 3 / s
2.5 × 10 − 2 × 8.0 × 10 6 × 250 = 5.0 × 10 7 m 3 / s
で、ちょうど同じになっている(図の数値が (1) の条件と合っている)。
Q = 1.0 × 10 3 × 4.0 × 10 3 × 5.0 × 10 7 × ( 18 − 16 ) = 4.0 × 10 14 J / s
デモでは、断面を 1 km × 10 m のます目に分けて、ます目ごとに「密度 × 比熱 × 速さ × 水温 × 面積」を足しても同じ値になる。
答え 4.0 × 10 14 J / s ( V = 1.0 × 2.0 × 10 5 × 250 = 5.0 × 10 7 m 3 / s , Q = 1.0 × 10 3 × 4.0 × 10 3 × 5.0 × 10 7 × 2 )
問5 海水の密度は、水温が低いほど、塩分が高いほど大きい。だから海面で水が重くなる原因は、この2つの向きで考える。
1つは冷やされること 。高緯度の冬には、冷たい空気に熱をうばわれて水温が下がる。
もう1つは塩分が上がること 。海水が凍って海氷ができるとき、氷にはほとんど塩が入らず、まわりの水に塩が残される。また、蒸発が多い所でも水だけが出ていくので塩分が上がる。北大西洋やグリーンランドの近く、南極のまわりでは、こうして重くなった水が深く沈みこんでいる。
答え 冷却による水温の低下。海氷ができるときに塩分がはき出されること(や蒸発)による塩分の増加。
問6 問4 と同じ考え方で、北へ行く表層の水と、南へ戻る深層の水の水温の差を使う。流量は 2.0 × 10 7 m 3 / s 、水温の差は 17 − 2 = 15 ℃。
Q 鉛直 = 1.0 × 10 3 × 4.0 × 10 3 × 2.0 × 10 7 × 15 = 1.2 × 10 15 J / s
問4 で求めた水平の循環は 4.0 × 10 14 J / s なので
1.2 × 10 15 4.0 × 10 14 = 3.0
水の量は水平の環流(5.0 × 10 7 )の 4 割しかないのに、行きと帰りの水温の差が 15 ℃ と、環流の 2 ℃ よりずっと大きいので、運ぶ熱は多くなる。デモのグラフでは、水の量を変えると運ぶ熱が比例して変わり、0.7 × 10 7 m 3 / s ほどで水平の環流と同じになる。実際に大西洋で測られている南北の熱の運ばれ方も、10 15 W ほどの大きさになっている。
答え 3.0 倍 ( 1.0 × 10 3 × 4.0 × 10 3 × 2.0 × 10 7 × ( 17 − 2 ) = 1.2 × 10 15 J / s , 1.2 × 10 15 4.0 × 10 14 = 3.0 )
第3問 物質のめぐりと、地質図の読み方 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 Ⅰは、地球の表面と内部を物質がめぐる図(図3—1)を読む問題。地表の岩石はけずられて海へ運ばれ、たまって地層になり、押し固められ、熱や圧力で変成し、プレートの沈み込みでマントルへもどる。マントルがとけるとマグマができ、それが冷えて固まった岩石がまた地表に出てくる。矢印ごとに「どんな作用か」を考える。
Ⅱは地質図の問題。地層の面の向きは走向 (面と水平面が交わる線の向き)と傾斜 (面が一番急に下がる向きと角度)で表す。この地域の地層は走向 N45°W(北から西へ 45°)、傾斜 30°SW(南西へ 30° で下がる)。つまり、北東へ行くほど同じ層の面が高くなる 。
地図の問題は、点の「位置」と「標高(等高線から読む)」の両方を使う。ある層が地表に出るのは、その場所の地表の高さと、層の面の高さが同じになる所。
Ⅰ問1 上の段から順に見る。地表の物質が海底へ行く矢印には、侵食のあとに運搬 (水や風で運ばれる)と堆積 (たまる)が入る。海底の堆積物が地層の堆積岩になるのは、上に積もった物の重さで押し固められ、すきまに鉱物ができて固まる続成 作用。
堆積岩や深成岩が変成岩になる (D) は変成 作用。マントルのボックスの (E) は、上部マントルをつくるかんらん岩質 の岩。これが一部だけとける(部分溶融 、(F))と、玄武岩質 のマグマ((G))ができる。
(H) は、問3 の文にもあるように、玄武岩質マグマから SiO₂ の量のちがうマグマがいろいろできる作用なので結晶分化 。マグマが冷えると、SiO₂ の少ない鉱物(かんらん石・輝石など)から先に結晶になって取り除かれ、残ったマグマは SiO₂ が多くなっていく。
答え (A)—エ,(B)—ケ,(C)—ク,(D)—シ,(E)—オ,(F)—ア,(G)—キ,(H)—イ
Ⅰ問2 海底にたまった堆積物は、海洋プレートにのって運ばれ、海溝でプレートと一緒にマントルへ沈み込む。その途中で変成を受け、一部はマントルへもたらされる。字数が 15 字と短いので、「プレートの沈み込み」が伝わるように書く。
Ⅰ問3(1) 大陸地殻に大量にある、SiO₂ の多い深成岩は花こう岩 。石英・カリ長石・斜長石・黒雲母などからなる白っぽい岩石で、大陸の上部の地殻の主な岩石になっている。地殻の岩石がとけてできるマグマは SiO₂ が多いので、これが固まると花こう岩になる。
Ⅰ問3(2) もし地殻の溶融が無ければ、花こう岩のマグマは、マントルからきた玄武岩質マグマの結晶分化だけで作らなければならない。
結晶分化で SiO₂ の多いマグマができるのは、先に SiO₂ の少ない結晶がたくさん取り除かれた後の「残り」だけ。デモの目安のモデル(出ていく結晶はマグマより SiO₂ が 8 % 少ない)で計算すると、SiO₂ 50 % のマグマが 70 % になるまでに残るのは 8 % ほどしかない。
ただし「残り 8 %」は、結晶とマグマの SiO₂ の差を 8 % とおいた目安のモデルから出た数で、問題文や図から決まる値ではない。差を 12 % にすると残りは約 19 %、4 % にすると約 0.7 % になる。だから答えには目安のモデルの値を書かず、「少量の残液としてしかできない」と書いた。どの値でも「SiO₂ の多いマグマは、もとのマグマの一部の残りとしてしかできず、その何倍もの苦鉄質の岩石が残る」ことは変わらない。
つまり、花こう岩を 1 作るには、(このモデルでは)その 10 倍以上の玄武岩質マグマが必要になり、同時に残りの 9 割以上は SiO₂ の少ない岩石(斑れい岩やかんらん岩のような苦鉄質の岩石)として地殻にたまるはず。ところが大陸地殻には花こう岩がとても多く、それに見合う大量の苦鉄質の岩石は見つからない。この「量が合わない」ことが、説明できない事実になる。地殻の岩石が直接とければ、SiO₂ の多いマグマがたくさんできるので説明がつく。
答え 玄武岩質マグマの結晶分化ではSiO₂に富むマグマは少量の残液としてしかできず,大陸地殻の大量の花こう岩を説明できない。残るはずの大量の苦鉄質岩も見られない。
Ⅱ問1 まず図3—2 で B と C の標高を読む。B と C はどちらも 100 m の等高線の上にある(同じ高さ)。
次に B から C への向き。C は B の北東にある。走向が N45°W なので、北東はちょうど走向に直角で、傾斜の向き(南西)の反対。つまり B→C は、地層を真横に切る向き。
B と C を通る断面を考えると、泥岩層の上の境目(B を通る)と下の境目(C を通る)は、どちらも南西へ 30° 傾いた平行な直線になる。層の厚さは、この2本の直線の間の、直線に直角な長さ。水平に 60 m はなれた同じ高さの2点を通る平行線の間の距離は
t = 60 × sin 30 ∘ = 30 m
デモで傾斜を変えると、B と C が同じ高さなら、同じ 60 m の幅でも、傾斜が小さいほど層は薄い。C が B より高いときは、高さの差の分も考える必要があり、答えは変わる(10 m 高いと約 21 m)。高さの差があると、傾斜が小さいほど薄いとは限らない(たとえば C が 20 m 高いと、傾斜 10° で約 9 m、5° で約 15 m)。
答え 30 m (B と C は同じ 100 m の等高線上,B→C は走向に直角, 60 sin 30 ∘ )
Ⅱ問2 火山灰は、1 回の噴火で広い範囲に一度に降りつもる。だから、はなれた場所で見つかった同じ凝灰岩層は「同じ時にできた」と言え、地層どうしの時代を結びつける目印になる。このような層を鍵層 という。凝灰岩のほか、特徴のある化石を含む層なども鍵層になる。
Ⅱ問3 D の凝灰岩層(標高 110 m)の面を、K・L・M・N の場所まで延ばして、その場所での面の高さと、地表の高さをくらべる。
面は北東へ行くほど高くなる。走向線(面の高さが同じ所を結んだ線。この地域では北西—南東の向き)で考えると分かりやすい。D を通る走向線の高さは 110 m で、北東へ 10 tan 30 ∘ ≈ 17 m 進むごとに 10 m ずつ高くなる。
地図で見ると、L と N は、どちらも D から見てちょうど北西・南東の向き、つまり D と同じ 110 m の走向線の上にある。ところが地表の高さは、L が 130 m、N が 110 m。N では地表と面の高さが同じなので凝灰岩が顔を出すが、L では面は地下 20 m にある。
K は D より南西にあり、面は約 76 m で地表(110 m)より 30 m 以上下。M は北東にあり、面は約 153 m で地表(130 m)より上=もう削られてなくなっている。デモのグラフで、地表と面の差が 0 になるのは 1 か所だけ。
Ⅱ問4 F の断層は走向 N45°W・傾斜 45°NE なので、断層面は北東へ下がっている。断層面より上にある北東側が上盤、南西側が下盤。
どちらが下がったかは、地層の新しい・古いで分かる。南西側では、北東へ行くほど下の(古い)層が出てきて、F の南西側は一番下の石灰岩。ところが F の北東側には、石灰岩の上にあるはずの砂岩(と凝灰岩)がある。同じ高さに新しい層が来ているので、北東側(上盤)が相対的に下がった=正断層 。
凝灰岩で確かめると、南西側の凝灰岩の面を G まで延ばすと高さ約 200 m になるが、G の凝灰岩は 130〜140 m にある(G は 140 m の等高線に囲まれた谷の奥で、F を通る 130 m の線より上)。北東側の凝灰岩は 60 m 以上低い。デモでは、北東側を断層面にそって約 60 m 下げると、凝灰岩が G を通る。
一方、横の向きのずれ(横ずれ)は分からない。地層の走向と断層の走向が同じ(どちらも N45°W)なので、北東側が断層にそって横にずれても、層は自分自身の向きにそって動くだけで、地図の上の層の並びは変わらない。上下のずれは分かり、水平のずれは分からない、の2つを選ぶ。