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地 学
第1問 地球から 20 パーセク離れた恒星Xについての以下の問いに答えよ。数値での解答にはすべて有効数字 2 桁で答え,計算過程も示せ。なお,見かけの等級 m と見かけの明るさ l の間には l = C × 10 − 0.4 m (C は定数)の関係が成り立つ。また,必要に応じて 10 0.1 = 1.26 ,10 0.5 = 3.16 ,log 10 2.1 = 0.322 ,log 10 2 = 0.301 ,log 10 1.9 = 0.279 を用いよ。
問Ⅰ Xを長期間にわたって観測したところ,2 つの主系列星からなる食変光星であり,図1—1のような周期 1 年の変光曲線を示すことがわかった。以下,主星をX1,伴星をX2と呼ぶ。また,X1とX2は円軌道で共通重心のまわりを公転していると仮定し,X2は食によりX1に完全に隠されるものとする。
(1) 図1—2はX1に対するX2の軌道を描いたものである。図1—1の(A),(B),(C)は,図1—2の(1)~(4)のどれに対応するかを答えよ。
(2) X1の絶対等級を求めよ。
(3) X1の見かけの明るさを l 1 ,X2の見かけの明るさを l 2 とする。この時,l 1 / l 2 の値を求めよ。
(4) X2の絶対等級を求めよ。
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図1—1 恒星Xの変光曲線
図1—2 X1に対するX2の軌道
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問Ⅱ さらなる観測を行ったところ,X1の質量は太陽質量の 4.5 倍,X2の質量は太陽質量の 3.5 倍であることが明らかになった。
(1) X1,X2間の距離は何天文単位になるか,答えよ。
(2) 日本が有する最大の光学赤外線望遠鏡はハワイ・マウナケア山にあるすばる望遠鏡で,0.06 秒角離れた 2 つの点源を分解できる。恒星Xをすばる望遠鏡で観測したとき,X1とX2に分解して見ることができるか,理由とともに答えよ。
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問Ⅲ 食変光星の軌道は一般には円軌道ではなく,楕円軌道である。X1に対するX2の軌道が図1—3に示されたような楕円軌道である場合,図1—1の t は円軌道の時の値である 0.5 年からどう変化するか,理由とともに答えよ。ただし,公転周期は 1 年のままであるとする。
図1—3 楕円軌道の場合のX1に対するX2の軌道
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第2問 大気と海洋に関する以下の問Ⅰと問Ⅱに答えよ。
問Ⅰ 図2—1は,梅雨期のある日の 850 h P a における高層天気図を示している。この日は, ア 前線の一種である梅雨前線が西日本の南海上を通り太平洋にまで伸びていた。梅雨末期には大雨が生じるが,その原因は中国付近の低気圧の周りの気流や,フィリピン方面からBの西縁を回り込むように梅雨前線に流れ込む気流である。そのとき,梅雨前線南方の伸びた多湿の部分は イ と呼ばれる。以下の(1)~(5)に答えよ。
図2—1 梅雨期のある日の850 hPaにおける高層天気図。等圧面等高線(単位 m)は等間隔である。
(1) 空欄 ア と イ に当てはまる語を答えよ。
(2) 図2—1の気圧配置において,AとBはそれぞれ何と呼ばれているかを答えよ。また,梅雨前線はどのような環境のもとで作られているか,その特徴を 1 ~2 行程度で答えよ。
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(3) 図2—1の 850 h P a 等圧面上の点CとDの高さの差を h とすると,CとDの間にある単位質量あたりの空気にはたらく気圧傾度力は g h L で与えられる。ただし,L はCとDの水平距離,g は重力加速度である。気圧傾度力が g h に比例する理由を 2 ~3 行程度で説明せよ。
(4) 単位質量あたりの空気にはたらく転向力は風速に比例し,比例係数は f である。地衡風のバランスがなりたつとして,図2—1のCとDの間の 850 h P a での風速を,g = 9.8 [m / s 2 ],L = 220 [k m ],f = 7.1 × 10 − 5 [/ s ] として有効数字 2 桁で答えよ。
(5) 梅雨前線のすぐ南方で水蒸気密度が 1.3 × 10 − 2 k g / m 3 であった。大気の厚さを 8.5 k m とし,ここに含まれる水蒸気がすべて凝結して降水になったとすると降水量は何 m m になるか,有効数字 2 桁で答えよ。ただし,水の密度を 1.0 × 10 3 k g / m 3 とし,水蒸気密度は高さによらないとする。
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問Ⅱ 図2—2はある年の冬に本州の南で観測された,東経 137 度線に沿う水温の南北断面を海面から 2000 m の深さまでの範囲で表している。また,図2—3はこのうちの北緯 30 度における水温と酸素飽和度の深さ方向の分布を海面から海底までの範囲で表している。なお,酸素飽和度は,海水に溶けることができる酸素の最大量(飽和量)に対する実際に溶けている酸素の量の割合であり,海水が海面で大気と接触しているときはほぼ 100 % であるが,海水が海面を離れてから時間が経つほど減少する。これらの図を見て以下の(1)~(4)に答えよ。
(1) 150 m から 1000 m くらいの深さまで,深さとともに急激に水温が下がる部分が見られる。この部分の名称を答えよ。
(2) 海水の密度は水温と塩分により決まるが,図2—2に示される海域では主に水温によって決まり,水温が高いほど密度は小さくなる。また,海流は地衡流であり,流速は海面でもっとも大きく,深さとともに小さくなる。図2—2に示す北緯 25 ~34 度の範囲において,海面の高さおよび海面付近の東西方向の流速成分は東経 137 度線に沿ってどのような南北分布を示すか,理由とともに 3 ~4 行程度で答えよ。
(3) 海面から 150 m の深さまで酸素飽和度がほぼ 100 % の部分が見られる。なぜこのような分布になるか,1 行程度で答えよ。
(4) 海底付近にも酸素飽和度が比較的高い水があるのはなぜか。海水の動きと関連づけて,1 ~2 行程度で説明せよ。
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図2—2 東経137度線に沿う水温[℃]の分布。右側の黒く塗りつぶした領域は本州南岸の海底を示す。
図2—3 北緯30度,東経137度における水温と酸素飽和度の鉛直分布。
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第3問 図3—1に示すように,ある火山周辺の 3 本の観測線に沿って多数の地震計を地表に並べて観測を行った。観測線の長さは 8 k m であり,AA′,BB′は南北方向,CC′は東西方向の観測線である。地表面は平らであるとして,以下の問Ⅰ~Ⅲに答えよ。
図3—1 火山と地震観測線AA′,BB′,CC′を南東側から見た鳥瞰図。火山を原点,東向きにx軸,北向きにy軸をとる。原点からAA′,BB′,CC′までの最短距離は,それぞれ3 kmである。
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問Ⅰ 観測期間中,いくつかの地震が発生した。そのうち地震①は,図3—1のFを震央とし南北に延びる横ずれ断層で発生した。震央Fは x 軸上の x = − 4 [k m ] の地点にあり,震源の深さは 2 k m と推定されている。この地震のAA′に沿う地震波到着時間を図3—2に示す。以下の(1)~(6)に答えよ。なお数値での解答には計算過程も示せ。
図3—2 観測線AA′に沿う地震計で記録した地震①のP波およびS波到着時間。なおtは地震発生からの時間を表す。
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(1) 図3—2でP波初動の方向は y > 0 [k m ] の観測点では地面の上がる向き,y < 0 [k m ] では地面の下がる向きであった。この初動の向きから,横ずれ断層が右ずれか左ずれかを,理由とともに 1 ~2 行程度で記せ。
(2) 地震①の断層運動を起こした圧縮の力の方位を答えよ。
(3) 図3—2の y = 2 [k m ] での地震波到着時間から,P波の速度を有効数字 1 桁で求めよ。
(4) 図3—2の y = 2 [k m ] でのデータを用いて震源距離に関する大森公式の係数を有効数字 1 桁で求めよ。
(5) 図3—2でP波到着時間は,ある曲線上にある。その曲線の式を時間 t ,南北位置 y ,およびP波速度 v で表せ。
(6) 地震①を観測線BB′で観測したところ,− 1 [k m ] < y < 1 [k m ] の範囲にある地震計で火山を通過するS波が見られなかったとする。このとき火山の地下の状態について推測できることを,1 ~2 行程度で記せ。
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問Ⅱ 図3—3,3—4は別の 2 つの地震②,③のP波到着時間を示している。これら 2 つの地震の震源位置として最も適当なものを下記の(a)~(g)から,それぞれ 1 つ選び理由とともに記せ。
(a) 観測網の南方約 100 k m ,深さ 5 k m
(b) 観測網の北方約 100 k m ,深さ 5 k m
(c) 観測網の西方約 100 k m ,深さ 5 k m
(d) 観測網の東方約 100 k m ,深さ 5 k m
(e) x = 4 k m ,y = 0 k m ,深さ 2 k m
(f) x = − 4 k m ,y = 0 k m ,深さ 2 k m
(g) 原点付近で深さ 2 k m
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図3—3 観測線AA′,BB′,CC′に沿う地震計で得られた,地震②によるP波到着時間。tは地震発生からの時間を表す。
図3—4 観測線AA′,BB′,CC′に沿う地震計で得られた,地震③によるP波到着時間。tは地震発生からの時間を表す。
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問Ⅲ 火山の活動が終わり,地殻が冷却されると,磁場の強さに変化が現れることがある。以下の(1)と(2)に答えよ。
(1) このような磁場の変化が現れる理由を,1 ~2 行程度で説明せよ。
(2) 現在の地球磁場のもとで,このような磁場の変化が日本の火山で発生する場合に,地表面では火山の北側で磁場が弱く,南側で強くなる。その理由を 2 ~3 行程度で説明せよ。
第1問 2つの星がかくし合う(食変光星) 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 2つの星がおたがいのまわりを回り、地球から見ると交互に相手を隠す食変光星 の問題。星が隠れると全体の明るさが下がるので、変光曲線(図1—1)の「どれだけ暗くなったか」から、それぞれの星の明るさが分かる。
使う道具は3つ。等級と明るさ :l = C × 10 − 0.4 m なので、等級の差 Δ m は明るさの比 10 0.4 Δ m に直せる。距離と等級 :絶対等級 M は 10 パーセクから見た等級で、m − M = 5 log 10 d 10 p c 。ケプラーの第3法則 :連星の間の距離 a (天文単位)、周期 P (年)、質量の合計 M 1 + M 2 (太陽=1)の間に a 3 P 2 = M 1 + M 2 が成り立つ。
問Ⅲはケプラーの第2法則(面積速度一定:星と相手を結ぶ線が同じ時間に同じ面積を掃く)を使う。遠い所ではゆっくり、近い所では速く動く。
問Ⅰ(1) 図1—2 では地球は下の方向にある。(2) の位置では X2 が X1 の手前(地球側)、(4) の位置では X2 が X1 のうしろ。どちらでも食が起きる。(1) と (3) では2つの星は横に離れて見え、食は起きない。
どちらの食が深いかを考える。問題文から X2 は X1 に完全に隠される、つまり X2 の方が小さい。主系列星では、小さい(質量の小さい)星ほど表面温度が低く、表面 1 m² あたりの明るさも小さい。
X2 が手前に来ると、X1 の表面のうち X2 の大きさの分が隠れ、「X1 の表面の明るさ × 隠した面積」だけ暗くなる。X2 がうしろに隠れると、「X2 全体の明るさ」=「X2 の表面の明るさ × X2 の面積」だけ暗くなる。隠れる面積は同じなので、表面が明るい X1 が隠される方が深い。したがって深い食 (A) は X2 が手前の (2)、浅い食 (C) は X2 がうしろの (4)。
X2 は反時計回りに回るので、(2) の次は (3)。(A) から4分の1周期後の (B) は (3) の位置。デモで「(A) のとき X2 は」をうしろに切りかえると、図の等級に合わせるには X2 の表面温度が X1 の 1.23 倍(小さい方が熱い)でなければならず、主系列星どうしではおかしいことが分かる。
答え (A) (2),(B) (3),(C) (4)
問Ⅰ(2) 浅い食 (C) では X2 が X1 のうしろに完全に隠れているので、見えているのは X1 だけ。このときの等級 0.05 がそのまま X1 の見かけの等級 m 1 になる。
m 1 − M 1 = 5 log 10 20 10 = 5 × 0.301 = 1.505
M 1 = 0.05 − 1.505 = − 1.455
答え − 1.5 (X2が隠れる(C)で見えるのはX1だけ: m 1 = 0.05 , M 1 = 0.05 − 5 log 10 2 )
問Ⅰ(3) 食の外(− 0.20 等)は X1 と X2 の両方の光、(C)(0.05 等)は X1 だけの光。等級の差は 0.25 なので、明るさの比は
l 1 + l 2 l 1 = 10 0.4 × 0.25 = 10 0.1 = 1.26
l 1 l 2 = 1 0.26 ≈ 3.85
問題の値 10 0.1 = 1.26 を使うと有効数字2桁でこうなる(10 0.1 をもっとくわしく 1.2589 とすると 3.86 )。
答え 3.8 ( l 1 + l 2 l 1 = 10 0.4 × 0.25 = 1.26 , l 1 l 2 = 1 0.26 )
問Ⅰ(4) X2 は X1 より l 1 l 2 = 3.8 倍暗いので、見かけの等級は X1 より 2.5 log 10 3.8 大きい。3.8 = 2 × 1.9 と考えると log 10 3.8 = 0.301 + 0.279 = 0.580 なので
m 2 = 0.05 + 2.5 × 0.580 = 1.50
M 2 = 1.50 − 1.505 ≈ 0.0
これは 0 に近い数どうしの差なので、有効数字2桁では決められない。与えられた近い値の使い方(l 1 l 2 を 3.8 に丸めるか、1 0.26 = 3.85 のままにするか)で、− 0.005 (3.8 に丸めたとき)から + 0.008 (1 0.26 のまま)くらいまでぶれる。だから小数第1位までの 0.0 (約 0 等)と答える。デモは 10 0.1 も log も近い値に丸めずに計算するので、もとの設定で約 + 0.01 と出る(これも小数第1位では 0.0 )。 絶対等級で X1 より約 1.5 等暗い。X1(主星)の方が明るく、表面も熱い、という問Ⅰ(1) の見方とつじつまが合う。
答え 0.0 ( m 2 = 0.05 + 2.5 log 10 3.8 = 1.50 , M 2 = 1.50 − 1.505 )
問Ⅱ(1) ケプラーの第3法則を連星に使う。天文単位・年・太陽質量の単位では
a 3 P 2 = M 1 + M 2
周期は図1—1 から P = 1 年、質量の合計は 4.5 + 3.5 = 8 なので、a 3 = 8 。
デモでは、2つの星を万有引力だけで動かして、ちょうど1年で1周する距離を探しても 2 天文単位になる。
答え 2.0 天文単位( a 3 = ( 4.5 + 3.5 ) × 1 2 = 8 )
問Ⅱ(2) 1 天文単位の長さを 1 パーセク先から見ると、角度は 1 秒角(パーセクの決め方)。角度は距離に反比例するので、2.0 天文単位を 20 パーセク先から見ると
2.0 20 = 0.10 秒角
これはすばる望遠鏡が分けられる 0.06 秒角より大きいので、2つの星を分けて見ることができる。
ただし、この連星は食を起こす=軌道をほぼ真横から見ている。見かけの間隔は、(1) や (3) の位置で一番広い 0.10 秒角になり、食の前後((2)・(4) の近く)では 0 に近づく。デモでは、0.06 秒角をこえて分けて見えるのは1年のうち約 59 % の間だと分かる。
答え 分解できる。見かけの間隔は最大で2.0天文単位÷20パーセク=0.10秒角となり,0.06秒角より大きいから(ただし食の前後は2つの星が近づいて見え,分解できない)。
問Ⅲ 食が起きるのは、X2 が X1 の真下(手前)と真上(うしろ)を通るとき。図1—3 では (2′) と (4′)。円軌道ならこの2点は軌道をちょうど半分に分けるので、t = 0.5 年だった。
楕円軌道でも X1 は楕円の焦点にある。ケプラーの第2法則により、X2 と X1 を結ぶ線が掃く面積は時間に比例する。(2′) から (3′) を通って (4′) へ行く側は、X1 から遠い大きなふくらみで、掃く面積が全体の半分より大きい。遠い所では X2 はゆっくり動く、と言いかえてもよい。
したがって (A) の食から (C) の食までの時間は、周期 1 年の半分より長くなる。反対に (4′) から (1′) を通って (2′) にもどる側は近い所を速く通るので、半年より短い。
デモでは、図の X1 の位置を焦点とみなした離心率 0.49 の楕円で約 0.78 年。遠い端の向きを反対側へ回すと (A)→(C) が近い側になり、t は 0.5 年より短くなる。答えは「遠い端がどちら側にあるか」で決まる。
答え 0.5年より長くなる。(2′)から(3′)を通って(4′)へ行く道はX1から遠い側で,ケプラーの第2法則(面積速度一定)により遠い所ほどゆっくり動くので,半周より多くの時間がかかる。
第2問 梅雨前線の風と、本州の南の海 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半(問Ⅰ)は梅雨の高層天気図の問題。850 h P a の天気図は、気圧が 850 h P a になる高さを等高線で描いたもの(地上約 1.5 km)。高さが高い所は、同じ高さで比べると気圧が高い所にあたる。だから等高線の混み具合から、気圧の坂の急さ(気圧傾度力)が読める。
上空の風は、気圧傾度力と、地球の自転による転向力(コリオリの力:北半球では進む向きの右へ曲げる見かけの力)がつり合って吹く。これが地衡風 で、等高線に沿い、高い方を右に見て吹く。
後半(問Ⅱ)は本州の南の海の水温と酸素の問題。暖かい水は軽いので、暖かい水の層が厚い所ほど海面が高くなる。海の流れも地衡流で、海面の高い方を右に見て流れる。酸素飽和度は「その水が最後に海面にいてからの時間」の目安で、海面を離れて時間がたつほど生き物に使われて減る。
問Ⅰ(1) 梅雨前線は、北の冷たい空気と南の暖かい空気の勢力がつり合って、ほとんど動かない前線なので停滞前線 の一種。
梅雨の末期には、南西から暖かく湿った空気が舌のように細長く流れこみ、大雨のもとになる。天気図で湿った部分が舌の形に伸びるので湿舌 とよぶ。
問Ⅰ(2) A はオホーツク海の上の高気圧でオホーツク海高気圧 。冷たく湿った空気(オホーツク海気団)をつくる。B は日本の南東の太平洋の上の高気圧で太平洋高気圧 (小笠原高気圧)。暖かく湿った空気(小笠原気団)をつくる。
梅雨前線は、この2つの気団の境目にできる。どちらも湿っているので、温度のちがいより水蒸気の量のちがいが目立つ前線で、2つの勢力がほぼつり合っているので長く停滞する。さらに B の西のふちを回って、フィリピン方面から暖かく湿った空気が前線に流れこむ。
答え A オホーツク海高気圧,B 太平洋高気圧(小笠原高気圧)。冷たく湿ったオホーツク海気団と暖かく湿った小笠原気団の勢力がほぼつり合う境目で,南西から暖かく湿った空気が流れこむ所。
問Ⅰ(3) C と D はどちらも 850 h P a の面の上にあり、D の方が h だけ高い。C と同じ高さで D の真下の点を考えると、そこの気圧は 850 h P a よりも「その上にある厚さ h の空気の重さ」の分だけ高い。
空気の密度を ρ とすると、底 1 m 2 の厚さ h の空気の重さは ρ g h なので、同じ高さでの気圧の差は
Δ p = ρ g h
単位質量の空気にはたらく力は、気圧の差を距離 L と密度 ρ で割ったもの(体積 1 m 3 の空気は質量 ρ )。
Δ p ρ L = ρ g h ρ L = g h L
ρ が消えるので、力は g h に比例する。デモの上の断面で、斜めの 850 h P a の面と、その下のうすい空気の層がこの ρ g h にあたる。
答え 850hPa面はDの方がhだけ高いので,Cと同じ高さではDの上に厚さhの空気が余分にあり,気圧がその重さρghだけ高い。この気圧差を密度ρと距離Lで割ると単位質量あたりの力gh/Lとなるから。
問Ⅰ(4) まず h を読む。等高線のラベルは 1480・1520・1560 と 40 m ごとで、その間に1本ずつ線があるので、等高線は 20 m ごと。C と D は隣り合う線の上にあるので h = 20 m 。
地衡風では、気圧傾度力と転向力 f V がつり合う。
f V = g h L ⟹ V = 9.8 × 20 7.1 × 10 − 5 × 2.2 × 10 5 ≈ 12.5 m / s
有効数字2桁にまとめる。D(南)の方が高いので、風は高い方を右に見る向き、つまり等高線に沿って南西から北東へ吹く。
デモでは、止まった空気を放すと最初は坂を下る向き(D から C へ)に動き出すが、転向力で右へ曲げられ、くるくる回りながら(約 25 時間で1回)平均では等高線に沿って 12.5 m/s で流れていく。
答え 1.3 × 10 m / s ( V = g h f L = 9.8 × 20 7.1 × 10 − 5 × 2.2 × 10 5 ,等高線は 20 m ごとで C と D は隣り合う線)
問Ⅰ(5) 底 1 m 2 、高さ 8.5 k m の空気の柱にふくまれる水蒸気の質量は
1.3 × 10 − 2 × 8.5 × 10 3 = 110.5 k g
これが全部水になって 1 m 2 に広がると、水の密度 1.0 × 10 3 k g / m 3 で割って深さは 0.1105 m 、つまり約 110 m m 。有効数字2桁にまとめる。
実際の大気では水蒸気は高い所ほど少ない(上空は冷たく、水蒸気をあまりふくめない)。デモで 2.5 km 上がるごとに 1 / e に減るとすると約 31 mm になる。「水蒸気密度は高さによらない」という仮定が、答えを大きくしている。
答え 1.1 × 10 2 m m ( 1.3 × 10 − 2 × 8.5 × 10 3 = 1.1 × 10 2 k g / m 2 )
問Ⅱ(1) 海の表面近くの暖かい水と、深い所の冷たい水の間で、深さとともに水温が急に下がる層を水温躍層 という。図2—2 の 150〜1000 m の層は、1年中ある大きな躍層で主水温躍層 とよぶ。図2—3 でも、150 m 付近の 20 ℃ から 1000 m の約 4 ℃ まで急に下がり、その下は 4400 m までに 3 ℃ しか下がらない。
問Ⅱ(2) 図2—2 の等温線を見ると、暖かい水の層は 25°N から 31°N 付近まではほぼ同じ厚さ(少しずつ厚くなる)で、32°N より北で等温線が急に浅くなる=暖かい水の層が急に薄くなる。
暖かい水は軽い。深い所で圧力がそろう(深い水はほとんど動かない)とすると、軽い水の柱ほど高く積み上がる。したがって海面の高さは、31°N 付近まではわずかに高くなり、32〜34°N で北へ急に下がる。デモで等温線を読んで計算すると、この下がり方は約 1 m になる(ただしこの数は、問題には無い「水温と密度の関係(1 ℃ あたりの密度の変わり方)」と「1000 m より深い所の水は動かない」という仮定を入れた模型の値。問題の図と文から決まるのは、南が高く北へ下がるという形と流れの向きまで)。
海の流れは地衡流で、北半球では海面の高い方を右に見て流れる。32〜34°N では南(右)が高いので東向きの強い流れ=黒潮。流速は坂の急さに比例するので、坂の急な所ほど強い。25〜31°N では北がわずかに高いので、弱い西向きの流れになる。流速は海面で一番大きく、深くなるほど小さい(等温線の傾きが上ほど大きいことと合う)。
答え 暖かく軽い水の層は約32°Nより南で厚く,北で急に薄くなる。深い所で圧力がそろうので,海面は31°N付近で最も高く,32〜34°Nで北へ急に下がる。地衡流は高い側を右に見て流れるので,32〜34°Nに強い東向きの流れ(黒潮)があり,その南は弱い西向きになる。
問Ⅱ(3) 図2—3 では、表面から約 150 m まで水温が約 20 ℃ でそろい、酸素飽和度もほぼ 100 %。水温がそろっているのは、その層がよくかき混ぜられている(表層混合層)しるし。
冬は海面が冷やされて重くなった水が沈み、強い季節風も表面をかき混ぜるので、表面から 150 m ほどまでが一つにまざる。この層の水は、いつも海面で大気と接している水と入れかわっているので、酸素はほぼ飽和している。
答え 冬の冷却と風で表層がよく混ざり,大気と接した水だから。
問Ⅱ(4) 酸素飽和度は、水が海面を離れてから時間がたつほど下がる。図2—3 では 1300 m 付近で約 17 % と一番低く、それより深くなると増えて、海底付近では約 47 % ある。つまり海底付近の水は、1300 m 付近の水より「海面を離れてからの時間」が短い。
これは、南極のまわり(や北大西洋)などの極の海で、冷やされて重くなった海水が海面から海底まで沈みこみ、深層循環として海底に沿ってゆっくり運ばれてくるから。沈むときに海面で酸素をたくさん取りこんでいる。
デモの深い所のモデルでは、海底から入る水の酸素を 5 % にすると深い所で酸素を使い切ってしまう。海底付近の酸素は、底の水がつねに入れかわっていることで保たれている。
答え 南極付近などの極域の海面で冷やされて沈んだ酸素の多い水が,深層循環で海底付近を運ばれてくるから。
第3問 火山のまわりの地震計と、冷えた岩の磁石 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 火山のまわりに並べた地震計で、地震の揺れが届く時刻を測る問題。図3—1 の説明から、火山を原点として AA′ は x = − 3 k m 、BB′ は x = 3 k m の南北の線、CC′ は y = − 3 k m の東西の線。地面は平らで、地震波はまっすぐ一定の速さで進むとして考える。
使う考え方は4つ。初動の押し引き :震源から押し出される向きの揺れ(押し)が届くと地面は上がり、引きこまれる向き(引き)だと下がる。横ずれ断層では、押しと引きの場所が断層面とそれに直角な面で4つに分かれる。走時 :震源から観測点までの距離 ÷ 速さ。大森公式 :震源距離は初期微動継続時間(S 波と P 波の届く時刻の差)に比例する。S 波は液体を伝わらない 。
問Ⅲは岩石の磁気の問題。岩石は熱いと磁石の性質を失い、冷えるとそのときの地球の磁場の向きに磁化する。
問Ⅰ(1) AA′(x = − 3 )は、震源の F(x = − 4 )の東 1 km にある。図3—2 の観測では、その北側(y > 0 )で押し(地面が上がる)、南側(y < 0 )で引き(下がる)。
断層は南北にのびている。断層の東側の地面が北へ動いたとすると、北東の方の岩は押され(押し)、南東の方の岩は引っぱられる(引き)。観測と合う。逆に東側の地面が南へ動いたなら、北東が引き・南東が押しになり、観測と合わない。
東側の地面が北へ、西側の地面が南へ動いた。断層の片側に立って向こう側を見ると、向こう側は左へ動いている(東側に立って西を見ると、西側は南=左へ動く)。このようなずれを左ずれ という。
デモで「ずれの向き」を右ずれにすると、AA′ の押し(▲)と引き(▼)が全部入れかわる。
答え 左ずれ。断層の東側の観測点で北側が押し,南側が引きなので,東側の地盤が北へ動いた。西側から見ても向こう側が左へ動く。
問Ⅰ(2) 横ずれ断層を起こす圧縮の力は、断層面に対して斜め 45° の向きにはたらく。押しと引きの4つの区画のうち、圧縮の力の向きは「引き」の区画の真ん中を通る(その向きには岩が押しこまれるので、そちらの観測点からは引きこまれるように見える)。
左ずれの場合、押しは北東と南西、引きは北西と南東。したがって圧縮の力は北西―南東の向き。東西に押したのでも南北に押したのでもなく、断層面に斜めに押したことで、東側が北へ、西側が南へずれる。デモでは、引きが一番強い水平の向きを探すと北から時計回りに 135°(南東)とその反対の北西になる。
問Ⅰ(3) y = 2 の地震計は ( − 3 , 2 , 0 ) 、震源は ( − 4 , 0 , 深さ 2 ) なので、震源距離は
1 2 + 2 2 + 2 2 = 3 k m
図3—2 で y = 2 の P 波の到着時刻は 0.60 秒。
v = 3 0.60 = 5 k m / s
デモで図の P 波の線全体に合う速さを探しても 4.99 km/s になる。
答え 5 k m / s (震源距離 1 2 + 2 2 + 2 2 = 3 k m ,P波 0.60 秒)
問Ⅰ(4) 図3—2 で y = 2 の S 波の到着時刻は約 1.04 秒(1 秒の線の少し右)。初期微動継続時間は
1.04 − 0.60 = 0.44 秒
大森公式 D = k T (D :震源距離、T :初期微動継続時間)に入れると
k = 3 0.44 ≈ 6.8 k m / s
k は P 波と S 波の速さで決まり、k = v P v S v P − v S 。図の線から v P = 5.0 、v S = 2.9 k m / s と読むと 6.9 で、同じ値になる。S 波の時刻を 1.0 秒と粗く読むと 3 / 0.4 = 7.5 となってしまうので、グラフは細かく読む。
答え 7 k m / s (S波 1.04 秒,初期微動継続時間 0.44 秒, k = 3 ÷ 0.44 )
問Ⅰ(5) 南北の位置 y の地震計 ( − 3 , y , 0 ) と震源 ( − 4 , 0 , 2 ) の距離は
1 2 + y 2 + 2 2 = y 2 + 5
P 波はこの距離を速さ v でまっすぐ進むので、t = y 2 + 5 v 。両辺を2乗して整理すると v 2 t 2 − y 2 = 5 で、これは双曲線。
y = 0 (震源に一番近い所)で一番早く、北と南へ同じ形で遅れていく。デモで地面の中を細かいマス目に分けて一番早く届く道すじを探しても、この式の時刻と合う(まっすぐ進むのが一番早い)。
答え t = y 2 + 5 v ( v 2 t 2 − y 2 = 5 ,長さは km)
問Ⅰ(6) S 波(横波)は、ずれに逆らう力がはたらかない液体の中を伝わらない。BB′ の − 1 < y < 1 の地震計に届く波は、震源から火山の真下を通ってくる(道すじは火山の真下を深さ約 0.86 km で通る)。
その道すじの上だけ S 波が消えたのだから、火山の地下の浅い所に、S 波を通さない液体の部分がある。火山の地下の液体はマグマなので、マグマだまりがあると考えられる。
デモで、中心の深さ 1 km・半径 0.6 km ほどの液体の球を置くと、ちょうど − 1 < y < 1 の道すじだけが通り抜けられなくなる。球をもっと深くすると道すじが上を通り、S 波はどこでも届く。
答え 火山の地下の浅い所(深さ1km前後)に,S波を伝えない液体の部分,つまりマグマだまりがある。
問Ⅱ 地震②(図3—3):3本の観測線とも同じ形の曲線で、どれも線の真ん中(0)で一番早い約 0.7 秒。3本の線の真ん中から同じ距離にある所は原点の真下。原点の真下 d km の震源なら、線の真ん中までの距離は 3 2 + d 2 なので、d = 2 として
3 2 + 2 2 5 = 0.72 秒
が合う。(e)(f) では AA′ と BB′ の時刻が大きくちがうはずで、合わない。
地震③(図3—4):AA′ と BB′ はどちらも南ほど早い直線で、1 km 北へ行くごとに 0.2 秒ずつ遅れる。これは 5 km/s の波が南から北へまっすぐ進んでくる形で、震源がとても遠い南にある(遠くから来た波の面はほぼまっすぐ)。CC′(東西)はどこでもほぼ同じ時刻で、東西の方向からではないことと合う。到着が約 20 秒後なので、距離は 20 × 5 = 100 k m 。
デモで候補を切りかえると、近い震源は曲線、遠い震源はまっすぐな線になり、線の形だけで遠い・近いが分かる。
答え 地震②は(g),地震③は(a)。②は3本の線とも中央で最も早い同じ形の曲線なので3本から等距離の原点の真下で,最も早い約0.7秒は√(3²+2²)÷5=0.72秒に合い深さ2km。③はAA′・BB′で南ほど早く1kmごとに0.2秒(5km/s)ずつ遅れる直線で,CC′はほぼ同時なので南から来た波で,約20秒×5km/s=100km。
問Ⅲ(1) 岩石にふくまれる磁鉄鉱などの鉱物は、キュリー点(磁鉄鉱で約 580 ℃)より熱いと磁石の性質を失う。火山の活動中、地下の熱い岩体は磁化していない。
活動が終わって岩体が冷え、キュリー点より低くなると、そのときの地球の磁場の向きに磁化する(熱残留磁化)。岩体全体が大きな磁石になるので、その作る磁場が地球の磁場に加わり、地表で測る磁場の強さが変わる。
答え 冷えてキュリー点より低温になった岩石が,そのときの地球磁場の向きに磁化し(熱残留磁化),その磁場が加わるから。
問Ⅲ(2) 日本付近の地球の磁場は北向きで、下向きに約 50° 傾いている(伏角)。冷えた岩体はこの向きに磁化した磁石になる。磁石は、磁化の向きの前後(北の下の方と南の上の方)に磁極をもつ。
岩体のまわりの磁場は、磁石の外の磁力線の形になる。南側の地表は、岩体の上の南寄りの磁極に近く、そこでは岩体の磁場が地球の磁場と同じ向き(北向き・下向き)の成分をもつので強め合う(岩体の磁場がぴったり平行になるわけではなく、強さの変化を決めるのは「地球の磁場の向きの成分」がプラスかマイナスか)。北側の地表では岩体の磁場が逆向きの成分をもつので、打ち消し合って弱くなる。
デモでは、伏角 49°・中心の深さ 2 km で、南 2 km で約 74 nT 強く、北 2 km で約 37 nT 弱くなる。伏角を 0°(赤道)や 90°(北極)にすると南北が同じ形になるので、「北で弱く南で強い」のは地球の磁場が斜めに傾いているからだと分かる。
答え 日本の地球磁場は北向きで下へ傾いている。冷えた岩体はこの向きに磁化した磁石になり,その磁場は火山の南側の地表では地球磁場を強める向きの成分をもち,北側では弱める向きの成分をもつから。