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地 学
第1問 宇宙膨張に関する以下の文章を読み,問Ⅰ~Ⅵに答えよ。
宇宙膨張の特徴として,私たちの銀河を含む任意の銀河から十分遠方にある別の銀河に対し,「観測される後退速度については,ハッブルの法則が成り立ち」かつ(ア)「異なる方向の銀河の運動については,距離が等しければ方向によらず相対速度の大きさは同じであること」があげられる。この特徴を利用すると,宇宙膨張に伴う十分遠方の銀河の速度について,観測者と銀河を結ぶ方向(視線方向)にハッブルの法則に従う後退速度成分のみがあり,視線方向に垂直な方向の速度成分を持たないことが導かれる。このことを,以下のような単純なモデルを利用して示してみよう。ただし,現実の宇宙では,銀河の視線方向に垂直な速度成分は数百 秒から千 秒程度の大きさを持つことがあるが,数百 ( パーセク)以上の遠い銀河では,その大きさは視線方向の速度の大きさに比べて小さく,本問で考えている状況が近似的に成り立っている。
図1—1のように,地球を原点Oとする直交座標(以後,O座標系と呼ぶ)を取り, 軸, 軸, 軸上で,原点から十分に離れた距離 のところに, つの銀河 ,, があるとする。このとき, つの銀河が視線方向に垂直な方向の速度成分を持つと仮定し,O座標系におけるそれぞれの速度成分を ,, とする。ただし座標系の取り方は,銀河 の速度ベクトルが 平面内にあるように設定されており, である。また,地球から観測した銀河 の視線方向の速度の大きさを とすると, である。
さて,図1—2はO座標系の 平面であるが,これを参考にすると,(イ)銀河 の速度の 方向の速度成分は であり,銀河 の速度の 方向の成分は である。したがって,銀河 から観測した銀河 の後退速度の大きさは となる。
なお,本問で考えている距離の範囲では空間は曲がっていないとする。
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図1—1
図1—2
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問Ⅰ 地球から十分に離れた銀河を考える。地球からその銀河までの距離を ,地球上の観測者から見た銀河の視線方向の後退速度の大きさを 秒,ハッブル定数を (秒・)として,ハッブルの法則を書け。
問Ⅱ 銀河 の速度の 方向成分 と銀河 の速度の 方向成分 を, を使って表せ。
問Ⅲ 銀河 から観測したときの銀河 の後退速度の大きさを,下線部(イ)とは異なる考え方に基づき, を使って表せ。
問Ⅳ 下線部(イ)と,問Ⅱ,問Ⅲの結果に基づき, の関係を導け。
問Ⅴ 問Ⅱ,問Ⅲ,問Ⅳの考え方を参考にして,以下のことを導け。
(1) 銀河 から観測した銀河 の後退速度の大きさは であること。
(2) 銀河 から観測した銀河 の後退速度の大きさは であること。
(3) , であること。
問Ⅵ 下線部(ア)と,問Ⅱ,問Ⅳ,問Ⅴで導かれた関係を利用して,視線方向に垂直な運動の速度成分は全てゼロになることを示せ。
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第2問 月のマグマ活動に関する以下の文章を読み,問Ⅰ~Ⅱに答えよ。
月の表面には,後に示す図2—1のように,巨大隕石の衝突によって生じた衝突盆地と呼ばれるくぼみが多数存在し,その中には,内部からマグマが噴き出したところが少なくない。噴出した溶岩流に覆われた衝突盆地は月の海と呼ばれ,それ以外の場所は月の高地と呼ばれる。地震波の観測から,月の高地には深さ数十 のところに境界があることが分かっており,それよりも浅い部分を月の地殻,深い部分を月のマントルと呼ぶ。このような地殻とマントルの境界は,衝突盆地の部分ではアイソスタシーのために浅くなっている。
問Ⅰ 表2—1は,アポロ計画で月から採集された岩石(a)(b),および地球の地殻と上部マントルの主要な構成鉱物であるかんらん石,輝石,斜長石,石英,カリ長石の化学組成と密度を示したものである。化学組成は酸化物重量%,岩石(a)の密度は溶融状態,その他は固体状態での値である。
岩石(a)は 億年~ 億年前に月の海を広く覆った黒色の溶岩で,かんらん石,輝石,斜長石が含まれ,球状の空隙やガラス質の部分を含むものもある。岩石(b)は月の高地に産し, 億年前後の放射年代を示す緻密な白っぽい岩石で,空隙やガラス質の部分は含まない。(ア)月のマントルは,地震波速度から,主としてかんらん石と輝石から構成されていると推定されている。その上にある月の地殻は,主として(b)のような岩石で構成されているとする。表2—1にもとづき,以下の問いに答えよ。
(1) 岩石(a)に類似した特徴を持ち を 重量%程度含むものは,地球上の多くの火山に産するが,この地球上の岩石は何と呼ばれるか。
(2) 岩石(b)は,一種類の無色透明鉱物を約 重量%含む。この鉱物名を表2—1から選択し,その選択理由を 行程度で説明せよ。
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(3) 月は形成直後に高温になり,数百 の深さまで溶融状態にあったと考えられている。その後に月は冷却し,かんらん石,輝石,斜長石が同時に結晶化する時期に,下線部(ア)のような地殻とマントルの構造が形成されたと推測されている。この内部構造の形成過程を 行程度で説明せよ。
表2—1
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問Ⅱ 億年~ 億年前に起きた月の海でのマグマの噴出を,図2—1に示した簡単なモデルにしたがって考察しよう。噴出前には,衝突盆地の内外でアイソスタシーが成り立っている。マグマは深さ の位置で発生し,地表までつながる変形しない鉛直の亀裂中をゆっくり上昇する。マグマ上端が深さ に達すると,(イ)深さ にあるA点とB点にかかる圧力が等しくなってマグマの上昇が止まる。衝突盆地の深さ が より大きい場合にはマグマが地表に噴出し, が より小さい場合には噴出は起きない。
以下では,B点における地殻の厚さを ,マグマの密度を ,地殻の密度を ,マントルの密度を とし,,, は,それぞれ場所によらず一定であるとする。また,深さ にあるマグマは水平に薄く広がっており,その厚さは無視できるものとする。
図2—1 40億年~30億年前の月の地下構造の模式図
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(1) 地下深いところでは,その深さより上にある物質の単位面積あたりの質量と重力加速度 の積に等しい圧力を受ける。したがって,下線部(イ)の状態にまでマグマが満ちた亀裂の底(図2—1のA点)における圧力は となる。同様に考えると,図2—1のB点における圧力を ,,, の関数として表すことができる。A,B両点の圧力が等しいことを用いて, を ,,,, で表せ。
(2) 溶岩流が見られる月の衝突盆地は,深さ が 以上のものにほぼ限られることが観測されている。ここで,,, として,
(a) マグマの密度 が の場合, が 以上のときにのみマグマが噴出するためには, の最大値は何 となるか,有効数字 桁で答えよ。
(b) マグマの密度 が小さくなると, の最大値は(a)の場合と比べてどう変化するか,理由とともに答えよ。ただし, は より大きいものとする。
(3) 地球の海洋底に噴出する典型的なマグマの密度 は である。もしこのマグマが月のマントルで発生して上昇したとすると,月面のどのような場所に噴出することができるか,理由とともに 行程度で答えよ。ただし,マグマは月のマントルのいたるところで発生し,月の内部にはマグマの通路となる亀裂がいたるところにできているものとする。また, および の値は(2)と同じとする。
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第3問 約 億年におよぶ地球の歴史において,表層の環境は多様な変遷を経てきた。これに関連する以下の問Ⅰ~Ⅲに答えよ。
問Ⅰ 表層の海水において,溶け込む二酸化炭素の量や炭酸系物質(,,)を合計した濃度(以下,炭酸系物質濃度と略す)は,水温や生物活動,下層の海水との混合など様々な要因に依存する。大気中の二酸化炭素が海水に溶け込む量は,海水が低温なほど多い。ただし,北極海のように海氷で海面が覆われると,二酸化炭素の吸収は著しく阻害される。
(1) 北大西洋高緯度では,低緯度から北上してきた表層水が冷却され,秒で深層へと沈降している。いま,北大西洋低緯度および高緯度での表層水の炭酸系物質濃度をそれぞれ , とする。ここで,高緯度と低緯度の濃度差が,大気から海洋への二酸化炭素の吸収のみによって生じたと仮定する。このとき,高緯度海域で 秒間に深層へと輸送される炭素量のうち,大気から北大西洋の表層水に吸収された量 グラムを,,,,, で表せ。ただし, は炭酸系物質 モル中の炭素重量( グラム)である。
(2) (1)において,,, としたとき,炭素量 は 年間( 秒)で何ギガ()トンになるか,有効数字 桁で答えよ。また, 年間に海洋全体が大気から吸収する炭素量( ギガトンとする)に対する の割合を求めよ。
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問Ⅱ 地球とそれをとり巻く大気(地球・大気系)の熱エネルギー収支について,下の図3—1に示す簡略化モデルに基づき考えよう。地球の全表面について平均すると,単位時間に大気の上端に達する太陽放射エネルギー量は単位面積あたり で,このうち地表に吸収される量は で与えられる。ここで, は太陽定数である。(ア) は太陽放射に対する地球・大気系全体の反射率を表し(),雪氷や雲からの寄与がとくに大きい。以下の議論では,大気による太陽放射の吸収や大気の対流の効果は考えない。
図3—1において,地球・大気系は,一様な温度 をもつ地表面と,一様な温度 をもつ大気から成るものと簡略化されている。地表面から単位時間・単位面積あたり出される赤外放射(地球放射)エネルギー量は である。また,大気が上方・下方にそれぞれ射出する赤外放射エネルギー量は単位面積・単位時間あたり で,そのうち下方に出された は全て地表面に吸収される。一方,(イ)大気中の水蒸気や二酸化炭素などの温室効果気体や雲などの効果により,地表面から出される のうち の割合()が大気に吸収され,そのまま宇宙空間へ透過する割合は である。
図3—1によれば,(ウ)地表面は と を吸収して加熱されるが,それらの合計に等しい量の を射出することで,熱エネルギー収支のつり合いが保たれている。同様に,大気は を吸収して加熱されるが,上方と下方へそれぞれ を射出することで,熱エネルギー収支がつり合っている。ここで,(エ), と与えられる。定数 の値は不変であり,, は絶対温度である。
(1) 下線部(ウ)を参考にして,
(a) 地表面と大気のそれぞれに関する熱エネルギー収支のつり合いを表す式を求め,それらを組み合わせることにより, が
と表されることを示せ。
(b) 同様に, を と を用いて表わせ。
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(2) 温室効果気体の濃度の増加が , をそれぞれどのように変化させようとするか,上の(1)で導いた つの表式,および下線部(イ),(エ)を参考にして説明せよ。ただし,その濃度増加はわずかで, は変化しないものとする。
(3) 地球は進化の過程において,海洋や大陸がほぼ全面的に雪氷に覆われるような,極めて寒冷な気候状態をいく度か経験してきた。こうした「全球凍結」に向う過程においては, や の低下に伴い と がともに変化し,その結果として や の低下がさらに加速され,著しい寒冷化がもたらされたと考えられている。なお,雲量や の値には変化がなかったものとする。
(a) の低下が にもたらし得る変化について,下線部(ア)を参考にして 行で説明せよ。
(b) と それぞれの低下が にもたらし得る変化について,問Ⅰや下線部(イ)を参考にして,大気中の主要な 種類の温室効果気体の変化に関連づけて 行程度で説明せよ。
(c) これらの や の変化が,なぜ や をさらに低下させて地球環境を「全球凍結」状態へ向わせようとするのか,上の(1)で導いた つの表式に基づき,その理由を 行程度で述べよ。
図3—1 地球・大気系の放射エネルギー収支を表す簡略化モデル。白抜き矢印が赤外放射,陰影付き矢印が太陽放射に伴うエネルギーの輸送を示す。矢印は輸送されるエネルギー量が大きいほど太く描かれている。
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問Ⅲ 約 億年前に地球が誕生した直後には,活発な火成活動によって二酸化炭素を主成分とする原始大気が形成された。最古の堆積岩の時代は約 億年前と推定されており,この頃までに大陸と海洋が形成されたと考えられる。高い二酸化炭素濃度と温暖な気候のもと,大陸では強い風化・侵食作用が進行していた。約 億年前の地層からは,生物の外形を残した最古の化石が確認される。約 億年前以降の地層からは,ストロマトライトと呼ばれる炭酸塩岩が見い出され,光合成をするラン藻が繁栄した事を示している。また,堆積岩中の炭酸塩岩の割合も増加してくる。(オ) 億年~ 億年前には,石英と赤鉄鉱が薄層をつくる縞(しま)状鉄鉱層が堆積し,約 億年前以降には赤色の泥岩や砂岩が堆積した。約 億年前の先カンブリア時代末期には,地球は著しく寒冷化し,大陸や海洋の大部分が厚い氷床で覆われる「全球凍結」状態に陥った。(カ)やがて「全球凍結」から回復すると,現在の生物界の系統にはつながらない大型の動物群が出現したが,間もなく絶滅した。古生代に入ると硬い殻を持つ生物が出現し,生物界の多様性が爆発的に拡大した。これを(キ)カンブリア大爆発と呼ぶ。
(1) 下線部(カ)の大型の動物群を何と言うか。
(2) 下線部(キ)に関連し,カンブリア大爆発において出現した主要な生物名を一つ答えよ。
(3) 原始大気の二酸化炭素濃度は現在の ~ 倍もあったと推定されているが,約 億年前には現在の 倍程度にまで低下したことが分かっている。二酸化炭素濃度の低下の要因について, 行程度で述べよ。
(4) 下線部(オ)に関連し,約 億年前以降に縞状鉄鉱層や赤色堆積岩が堆積した要因について, 行程度で述べよ。
(5) 下線部(カ)に関連し,「全球凍結」を終了させた要因について,問Ⅰや問Ⅱを参考にして, 行程度で考察せよ。なお,「全球凍結」の前後で,太陽放射エネルギーや火成活動は一定であったとする。
第1問 広がる宇宙に、横向きの動きはあるか
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
「宇宙が膨張している」とは、銀河が視線方向(観測者と銀河を結ぶ向き)に遠ざかっていくことだ、とふつうは考える。この問題は、それが本当に「視線方向だけ」なのか、横向きの動きが混ざっていないのかを、2つの性質だけから導く。
性質1(ハッブルの法則):どの銀河から観測しても、十分遠い銀河の後退速度(視線方向に遠ざかる速さ)は距離に比例する。地球だけが特別なのではなく、銀河 に住む人から見ても同じ法則が成り立つ、というのが大事な点。
性質2(下線部(ア)):距離が等しければ、どの向きの銀河も相対速度の大きさ(速度の差のベクトルの長さ)は同じ。
道具は「速度をある向きに分ける」ことだけ。単位ベクトル の向きの成分は で、2つの銀河の速度の成分の差が、片方から見たもう片方の後退速度になる。地球から ・・ まではどれも距離 、銀河どうしの距離はどれも であることを使っていく。
問Ⅰ
ハッブルの法則は「後退速度は距離に比例する」。比例の定数がハッブル定数 なので、そのまま式にする。単位も合っている: の単位 (秒・)に距離 をかけると 秒になる。
デモでは として、距離 の銀河は 秒で遠ざかる。
問Ⅱ
は y 軸の上にあるので、地球から見た視線方向は y 方向。したがって、 の後退速度は速度の y 成分 そのもの。同じように、z 軸の上の の後退速度は z 成分 。
・・ はどれも地球から距離 にあるので、問Ⅰのハッブルの法則から後退速度はどれも 。 の後退速度が なので で、 も も になる。
答え, (,も距離にあるので,視線方向の後退速度は)
問Ⅲ
下線部(イ)は、速度を の向きに分けて差をとる考え方だった。ここでは別の考え方として、 を観測者とみてハッブルの法則を使う。
と は直角をはさむ2辺がどちらも の直角三角形の2つの頂点なので、間の距離は 。ハッブルの法則はどの銀河から見ても成り立つので、 から見た の後退速度は
デモの答え合わせでは、横向きの速さが無い宇宙で、 と の間の距離がのびる速さを実際に測ると になっている。
答え(からまでの距離は。から見てもハッブルの法則が成り立つので)
問Ⅳ
同じ「 から見た の後退速度」を、下線部(イ)(速度を分けて差をとる)と問Ⅲ(ハッブルの法則)の2通りで表したので、等しいとおく。
両辺に をかけ、問Ⅱの を入れると
が消えて、 と の関係だけが残る。
デモのグラフは、 を動かしたときの「 から見た の後退速度」。ハッブルの法則の線 と交わるのは の1点だけで、たとえば のまま にすると 秒ずれる。
答え に を入れると ,よって
問Ⅴ(1)
下線部(イ)と同じ考え方で、今度は xz 平面の中で考える。 は 、 は にあるので、 から へ向かう単位ベクトルは 。
(、、問Ⅱの を使った)。 から見た の後退速度は、 の成分から の成分を引いたものなので、 になる。
答えからへの向きは, , / 。この向きの成分はが/ / ,が/ / 。差をとって/
問Ⅴ(2)
こんどは yz 平面。 は 、 は にあるので、 から へ向かう単位ベクトルは 。
( を使った)。差をとると 。
答えからへの向きは, , / 。この向きの成分はが/ / ,が/ / 。差をとって/
問Ⅴ(3)
問Ⅳと同じく、ハッブルの法則による値と等しいとおく。 間も 間も距離は なので、どちらの後退速度も のはず。
両辺に をかけると、1つめから 、2つめから が 0 と分かる。
ここで立ち止まって見ると、問Ⅳ・Ⅴで分かったのは「、、」だけで、横向きの速さそのものは 0 と決まっていない。デモの「回る宇宙」は、宇宙が広がりながら全体として回っている場合で、ちょうどこの関係を全部満たす(z 軸まわりの回転が 、x 軸まわりの回転が をつくる)。回っていても、どの2つの銀河の間でもハッブルの法則は成り立ってしまう。
答え間,間の距離はどちらもなので,(1)(2)はどちらもに等しい。/ より ,/ より
問Ⅵ
残った回転を消すのが下線部(ア)。地球から見て、・・ は同じ距離 にあるので、相対速度の大きさ(ここでは速さそのもの)は等しい。速さの2乗で書くと
問Ⅳ・Ⅴの結果 、、 を入れて を引くと
左の2つから 、すると右の等式から 。これで 、、 となり、はじめから なので、6つの横向きの成分が全部 0 になる。
座標軸の向きは、どの銀河を x 軸の上に置くようにとってもよいので、この結論はどの十分遠い銀河にもあてはまる。デモのグラフでは、回っている宇宙では回転の軸に垂直な向きの銀河ほど速く、速さが向きで変わる(回転 800・500 km/秒で 21 km/秒のちがい)。回転を 0 にしたときだけ、どの向きも同じ速さになる。
答え下線部(ア)より,地球から同じ距離にある,,の速さは等しい:。, , を入れると 。よって , で,()。座標軸はどの銀河に向けてもよいので,横向きの速度成分は全てゼロ。
第2問 月のマグマは、どこで噴き出すか
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
月の表面は、白っぽい「高地」と、黒っぽい「海」に分かれている。海は、巨大な隕石がぶつかってできたくぼみ(衝突盆地)を、あとから内部のマグマが噴き出して埋めた所。この問題は、その岩石が何でできているかと、なぜ盆地だけにマグマが噴き出したのかを考える。
問Ⅰは表2—1の読み取り。化学組成は酸化物の重さ%で、鉱物ごとに「多い成分」がちがうことを手がかりにする。かんらん石・輝石は ・ が多く(色がついていて重い)、斜長石は ・、石英は だけ、カリ長石は が多い(どれも無色で軽い)。密度の列も大事で、鉱物がマグマの中で浮くか沈むかを決める。
問Ⅱは圧力のつり合いの問題。深い所の圧力は、その上にある物質の重さで決まる(単位面積あたりの質量 × )。マグマは、まわりの岩より軽いぶんだけ押し上げられ、亀裂の中の「マグマの柱の重さ」が、同じ深さの岩の重さと等しくなる所で止まる。これはアイソスタシー(浮いている氷山のようなつり合い)と同じ考え方。
問Ⅰ(1)
岩石(a) は、月の海を覆った黒い溶岩で、かんらん石・輝石・斜長石を含み、気泡の抜けた穴やガラス質の部分がある。これは、とけた岩石が地表に流れ出て急に冷えたこと(火山岩)を示している。
化学組成は が %と少なめで、・ が多い。地球の火山岩で が %程度、黒っぽく、かんらん石・輝石・斜長石からなるものは、ハワイや海嶺など多くの火山で見られる岩石にあたる。
(月の海の岩石は が %と、地球のものよりずっと多いのが特徴。)
問Ⅰ(2)
岩石(b) の組成で目立つのは、 %と %が多く、・ がわずかなこと。
無色透明な鉱物は、表の中では斜長石・石英・カリ長石(かんらん石と輝石は を含み色がつく)。そのうち、石英は しか含まず、カリ長石は が %あるが (b) には %しかない。 %・ %の斜長石が、(b) の組成とよく合う。
確かめとして、(b) を5つの鉱物の混ぜ合わせ(割合はどれも 以上で、足すと %)で一番よく表す割合を計算すると、斜長石が約 %、残りがかんらん石(約 %)と輝石(約 %)で、問題の「約 重量%」と合う。この割合での密度も約 で、表の に近い。デモでは、斜長石の割合のつまみを %前後にすると、棒グラフの と の高さが (b) にそろう。
答え斜長石。・が多く・が少ない組成が合う。
問Ⅰ(3)
月ができた直後は、数百 km の深さまでとけていた(マグマの海)。冷えていくと、とけた液体の中に結晶ができ始める。結晶は、まわりの液体より重ければ沈み、軽ければ浮く。
表の密度をくらべる。とけたマグマは (a) のように約 。かんらん石と輝石は でマグマより重く、斜長石は でマグマより軽い。したがって、かんらん石・輝石は沈んで底にたまり、斜長石は浮いて上に集まる。
こうして、下にかんらん石・輝石の層(マントル)、上に斜長石ばかりの層(地殻)ができる。高地の岩石 (b) が斜長石約 %で、 億年前後という古い年代を示すことも、月の最初期に浮いてできた地殻だと考えるとよく合う。デモでは、軽い斜長石(青)が上へ、重いかんらん石・輝石(赤)が下へ動き、それぞれ上と下にたまる。マグマの密度を に下げると斜長石も沈み、上に地殻ができない。
答えマグマの海から晶出したかんらん石と輝石はマグマより重く沈んでマントルに,軽い斜長石は浮いて集まり地殻になった。
問Ⅱ(1)
A 点(亀裂の底)の上には、深さ から まで、高さ のマグマの柱がある。圧力は問題文のとおり 。
B 点(高地の下、深さ )の上には、厚さ の地殻と、その下の深さ から までのマントルがある。それぞれの「厚さ × 密度 × 」を足して
なお、衝突盆地の下でも、深さ ではアイソスタシーにより B 点と同じ圧力になっている。だから盆地の下の亀裂でも、マグマは同じ深さ まで上がる。盆地の深さ が より深ければ、マグマは盆地の底からあふれ出す。
答え(B 点の圧力 より)
問Ⅱ(2)(a)
「 が 以上のときにのみ噴出する」とは、 の盆地では噴出しない、つまり ということ。
(1) の式に数値を入れる(単位は km と )。
が大きいほど は小さくなる(深い所でできたマグマほど高く上がる)。 から
は より深く、マグマがマントルでできるという設定とも合う。有効数字 1 桁で答える。デモのグラフで、 の直線が の線と交わる所がこの 。
答え( km より )
問Ⅱ(2)(b)
を小さくすると分子も分母も大きくなるが、割合で見ると分母( ほどの小さな数)のほうがずっと大きく増えるので、全体では小さくなる( を 下げると、分子 は 増えて約 %、分母 は 増えて約 %。 で 、 で約 、 で約 )。
しくみで言うと、マグマが軽いほど、同じ B 点の圧力とつり合うのに長い(高い)マグマの柱が要る。だから同じ から上がっても、上の端はより浅い所( が小さい)まで届く。 を より深く保つには、マグマのできる所を浅くしなければならない。
ただし書きの「 は より大きい」は大事な条件。マグマが地殻()より軽いと、次の (3) のように をどこにとっても地表まで噴き出してしまい、「 の最大値」という話そのものが成り立たない。
答え小さくなる(浅くなる)。が小さいとマグマの柱が軽く,同じからでも高く上がってが小さくなるので, km を保つにはを浅くしなければならない(はとともに減る)。
問Ⅱ(3)
高地の下では、マントルは深さ から下なので 。 で で、 が深いほどさらに小さくなる。 は、マグマの柱の上の端が高地の地表(深さ 0)より上まで押し上げられる、ということ。
わけは、このマグマが月の地殻()よりも軽いこと。地殻の中を通る部分でも、まわりより軽いので押し上げられ続ける。だから、くぼんだ盆地でなくても、高地を含めて亀裂のある所ならどこからでも噴き出せる。(盆地の下は地殻が薄く、 より浅い所にもマントルがある。そこでできたマグマも、上にある地殻・マントルより軽いので、盆地の底より上まで押し上げられて噴き出す。)
実際の月では溶岩は盆地に限られているので、月の海のマグマは地球の海洋底のマグマより重かった((2) のように ほど)と分かる。岩石(a) が や を多く含むことと合う。
答え高地を含む月面のどこにでも噴出できる。がより小さく,がどの深さでもが負となり,盆地がなくても地表に達するから。
第3問 地球の温度を決めるつり合いと、全球凍結
答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方
地球の表面の環境(大気・海・氷・生物)が、46 億年の間にどう移り変わってきたかを、3つの面から考える問題。
問Ⅰは炭素の運ばれ方の勘定。海水にとけた炭素(炭酸系物質)の濃度 に、流れる水の量 秒をかけると、1 秒に運ばれる炭素の量 秒になる。
問Ⅱは熱のつり合い。地表と大気を1つずつの箱と考え、それぞれの箱に「入る熱 = 出る熱」を書く。物体が出す放射は絶対温度の4乗に比例する()ので、放射の量が分かれば温度が分かる。後半は、温度が下がると反射率 や温室効果の割合 が変わり、それがさらに温度を下げる「正のフィードバック」の話。
問Ⅲは地球の歴史の知識。大気の が減り、光合成で酸素が増え、全球凍結とそこからの回復をへて、生物が一気に多様になった流れをたどる。問Ⅰ・問Ⅱの考え方が、最後の問いで「全球凍結をどう終わらせたか」につながる。
問Ⅰ(1)
低緯度の表層水は、北へ流れる間に冷やされ、大気の を吸収して、高緯度で濃度 になって沈む。濃度の差が大気からの吸収だけで生じたとするので、沈む水 は、大気から の炭酸系物質を吸ったことになる。
1 秒に沈む水は なので、1 秒に深い所へ運ばれる「大気から来た炭酸系物質」は 。炭酸系物質 1 mol には炭素 グラムが含まれるので、炭素の重さにすると グラム。これを 秒分集める。
問Ⅰ(2)
単位をなおす。、 ギガトン なので、 ギガトン。有効数字 1 桁にまとめる。
海全体の吸収 2 ギガトンに対する割合は 。北大西洋の高緯度というせまい海だけで、海全体の吸収のおよそ 2 割を深い所へ運んでいることになる。デモで、沈む水を半分にすると も半分になる。
答えギガトン,割合 ()
問Ⅱ(1)(a)
地表は と を吸収し、同じ量の を出す。
大気は を吸収し、上と下へ ずつ、合わせて を出す。
2つめの式から 。これを1つめに入れると
となり、両辺を で割れば示す式になる。
デモでは、地表と大気を冷たい所から少しずつ温めていくと、ちょうどこの式の値に落ち着く。さらに「大気の上の端」でも、宇宙へ出ていく が入ってくる と等しくなっている。ただしこれは地表と大気の2つの式を足せば出てくる関係なので、新しい条件ではなく、計算のまちがいを見つけるための確かめ。
答え地表:,大気:。後の式より / を前の式に入れて / ,よって / /
問Ⅱ(1)(b)
(a) の途中で出てきた に、(a) の を入れる。
問Ⅱ(2)
温室効果気体が増えると、地表からの赤外放射のうち大気に吸収される割合 が大きくなる(下線部(イ))。 は変わらないので は一定。
: は、 が大きいほど分母が小さくなり、大きくなる。 なので は上がる。
:下線部(エ)の と (1)(b) を等しいとおくと、両辺の が消えて
が大きいほど右辺は大きいので、 も上がる。 が増えるだけなら「 が大きくなった分」とも考えられるので、 を消してから判断するのがポイント。
2つの式をくらべると、どんな でも で、地表はいつも大気より の4乗根倍(約 1.19 倍)暖かい。デモのグラフでも、2本の曲線はどちらも右上がり( が から で が約 K、 が約 K 上がる)。
答え温室効果気体が増えるとが大きくなる。/ / が増えるのでは上がる。また/ より/ も増えるのでも上がる。
問Ⅱ(3)(a)
下線部(ア)にあるとおり、反射率 には雪や氷の寄与が特に大きい。雪氷は太陽の光をよく反射する(白い)。
地表の温度 が下がると、雪や氷に覆われる面積が広がるので、地球全体としての反射率 は大きくなる。
答えが下がると雪氷に覆われる面積が広がり,反射率が大きくなる。
問Ⅱ(3)(b)
二酸化炭素:問Ⅰにあるように、海水は冷たいほど多くの を溶かす。 が下がって海水が冷えると、大気の が海に吸収されて減る。
水蒸気:空気が含むことのできる水蒸気の量(飽和水蒸気量)は、温度が低いほど少ない。 が下がると、大気中の水蒸気が減る。
どちらも温室効果気体が減るので、地表の赤外放射を吸収する割合 は小さくなる。
答えが下がると海水に溶けるが増えて大気のが減り,が下がると大気中の水蒸気が減るので,が小さくなる。
問Ⅱ(3)(c)
が大きくなると (地表が吸収する太陽放射)が減る。 が小さくなると分母 、 が大きくなる。どちらも と を小さくし、 と を下げる向きにはたらく。 には 自身が入っているので、 が減るだけでは が下がるとは言えない。問Ⅱ(2) と同じく、 を消した で判断する。
すると (a)(b) により、 はさらに大きく、 はさらに小さくなり、また温度が下がる。はじめの変化を強める向きに働くので、寒冷化が加速して全球凍結へ向かう。
デモは、 と が温度で変わる仮のモデル。 の分をわずか 減らす( がその分だけ減る)。温度が下がったことによる ・ の追加の変化(雪氷の広がり・水蒸気の減り)が無いとすれば約 K の冷えですむところが、追加の変化があると約 K 冷えて全体が凍る。
答えが増えるとが減り,が減ると/ とが増すので,とが減ってとがさらに下がり,との変化が強まるから。
問Ⅲ(1)
全球凍結(約 6 億年前)から回復した先カンブリア時代の終わりに現れた、殻や骨格をもたない大型の動物化石の群れ。オーストラリア南部の丘陵の地名にちなんで名づけられた。やわらかい体の平たい生き物が多く、いまの動物のグループにはつながらないと考えられ、カンブリア紀の前に姿を消した。
問Ⅲ(2)
カンブリア紀(古生代のはじめ、約 5.4 億年前から)には、かたい殻や骨格をもつ動物が一気に現れ、いまの動物の主なグループ(門)がほぼ出そろった。
代表的なものは、節足動物のなかまで、体が3つの部分に分かれた殻をもち、化石として世界中から見つかるもの。ほかにも、大型の捕食者のアノマロカリスや、カナダのバージェス頁岩の動物群などがある。
問Ⅲ(3)
大気から を取り除く道すじを考える。問題文にあるように、約 38 億年前までに海ができ、大陸では強い風化・侵食が進んでいた。
は雨水や海水に溶ける。大陸の岩石が風化すると、カルシウムイオンなどが川から海へ運ばれる。海の中で、溶けた (炭酸水素イオンなど)とカルシウムイオンが結びつき、炭酸カルシウム(石灰岩などの炭酸塩岩)として沈殿する。全体をまとめると
27 億年前以降は、ストロマトライトをつくるラン藻の光合成も を使い、「堆積岩中の炭酸塩岩の割合も増加」したと問題文にある。こうして大気の は大きく減った。
答え風化で海に運ばれたと,溶けたが炭酸塩岩として沈殿したから。
問Ⅲ(4)
縞状鉄鉱層は、酸化鉄(赤鉄鉱 )の層をふくむ地層。昔の海には、酸素が少ないために水に溶けやすい鉄イオン()がたくさん溶けていた。
ラン藻などの光合成で酸素が出されると、海水中の鉄イオンが酸化され、水に溶けにくい酸化鉄となって沈殿した。
約 20 億年前以降は、酸素が大気にもたまり、陸の上でも鉄がさびて(酸化して)赤色の泥岩や砂岩ができるようになった。
答えラン藻の光合成の酸素で,海の鉄が酸化して沈み,陸の鉄もさびたから。
問Ⅲ(5)
全球凍結の間、大気から を取り除くしくみを考える。問Ⅲ(3) の風化による炭酸塩岩づくりは、陸が氷に覆われて雨もほとんど降らず、ほとんど進まなくなる。問Ⅰのとおり海への吸収も、海面が海氷に覆われると著しく阻害される。光合成も弱まる。
一方、火成活動(火山)は凍結の前後で一定なので、火山ガスの は出続ける。取り除かれない は大気にたまり続け、やがて温室効果()がとても大きくなる。
問Ⅱ(1) の で、 が大きく が小さくても、 が十分大きくなれば が上がる。氷がとけ始めると が下がり、こんどは正のフィードバックが温暖化の向きに働いて、一気に凍結から抜け出す。
デモの仮のモデルでは、凍った地球は の分 が をこえるまで戻らない(暖かい地球が凍り始めるのは より下)。同じ でも、暖かい所から来たか凍った所から来たかで行き先がちがうので、抜け出すには大量の がたまる必要がある。
ただし は、モデルの決め方しだいの数字。このモデルでは「地表の平均が K(−18 ℃)より上がると氷が減り始める」と決めてある。もし (全部が雪氷)のまま変わらないとすると、 を まで上げても は約 K(−10 ℃)で、0 ℃ には届かない。 は現実の全球凍結が終わった条件を確かめた値ではなく、「 がたまると抜け出せる」というしくみを見せるための仮の値。
答え凍結中は風化や海への吸収でがほとんど除かれず,火山ガスのが大気にたまった。が増して温室効果が強まり,が上がって氷がとけた。