PDFの 45 枚目
地 学
第1問
1963 年,アメリカのシュミットらは,3C273 と呼ばれる電波源の位置に光で見える恒星状の天体があることに気が付いた。パロマ山天文台の 5 m 望遠鏡を用いた分光観測により,この天体は 48 , 000 k m / s の速度で遠ざかっており,ハッブルの法則を仮定すると 6.40 × 10 8 パーセクという当時の常識を越えた距離にあることがわかった。過去に撮影した写真を調べたところ,恒星状の天体は変光しており,変光が起こる時間的な長さから,その広がりは 1 パーセク(見かけの直径 10 , 000 分の 3 秒角に相当)あるいはそれ以下と評価された。この天体 3C273 に代表される,写真上の見かけは恒星と区別がつかない天体は,クェーサーと呼ばれ,宇宙でもっとも明るい天体である。以下の問いで,数値は有効数字 3 桁で答えよ。必要があれば,次の近似を用いよ。
10 0.2 = 1.6 ,10 0.28 = 2.0 ,10 0.8 = 6.4 。また,赤方偏移による波長のずれが等級に及ぼす影響は無視してよい。
問1 3C273 の水素原子の H β 線が観測される波長(n m )を求めよ。後退速度がゼロの水素原子 H β 線の波長は 486 n m である。なお,1 n m = 10 − 9 m ,光速 = 3.00 × 10 5 k m / s である。
問2 3C273 の距離を求めるのに仮定されている,ハッブル定数(k m / s / M p c )を求めよ。なお,1 M p c は 10 6 パーセクである。
問3 3C273 の平均的な見かけの等級は 12.8 等である。3C273 の絶対等級を求めよ。
PDFの 46 枚目
問4 1 , 000 億個ほどの星の集団であると考えられている渦巻銀河の M31(アンドロメダ星雲)の見かけの等級は 3.50 等,絶対等級は − 20.5 等,見かけの直径は 180 分角である。
(1) M31 までの距離(パーセク)を求めよ。
(2) M31 を 3C273 の距離においたときの,見かけの等級と見かけの直径(秒角)を求めよ。
(3) 3C273 の光度は,M31 の光度の何倍か。
問5 以上の結果から,クェーサーの特徴を銀河と比較しながら 100 字程度で説明せよ。
PDFの 47 枚目
第2問
Ⅰ
問1 以下の に適当な語句をいれよ。
(1) 大陸移動説を近代地球科学の領域に持ち込み,プレートテクトニクス理論の先駆けとなったのはウェゲナーである。ウェゲナーの推論の出発点は,大陸の形のパズル合わせであった。ウェゲナーが提唱し,3 億年ほど前に存在したといわれる巨大大陸を (a) と呼ぶ。
(2) プレートテクトニクスは,単に大陸が移動したということを主張したにとどまらず,(b) を説明することができた。プレートテクトニクスは,アルプス,ヒマラヤなどの褶曲山脈の成因について,大陸の衝突の結果として説明したのである。
(3) (c) の概念はウイルソンによって提出されたもので,通常の水平ずれ断層とは成因,運動の性質などを異にする断層である。(c) は,大洋の中央海嶺に見ることが出来る。海洋底につらなる大洋中央海嶺は連続した山脈ではなく,多数の断層帯によって切断されステップ状にずれている。
(4) (d) は,高温のマントル物質が湧昇するところで,その位置はマントル内部に固定されていると考えられている。プレートは,(d) 上を移動するので,プレート上に火山がならぶ。
PDFの 48 枚目
問2 図2—1は,バインとマシューズによるテープレコーダーモデルの模式図である。このモデルのもととなった観測事実は,海洋底拡大の重要な証拠となった。
(1) これは,何の縞模様をあらわしているのか答えよ。
(2) なぜ,この縞模様が海洋底拡大の重要な証拠となったのか,縞模様形成の過程を含めて 120 字以内で説明せよ。
図2—1
PDFの 49 枚目
Ⅱ
問1 以下の に適当な語句をいれよ。
大地震が発生すると,海底に隆起・沈降が生じ,その影響で津波が発生する場合がある。津波が伝わる速さは,地震波とくらべるとはるかに (a) 。津波は,海が浅くなるにつれて,進行速度が (b) なり,振幅は (c) なる。
問2 津波が水深 4 , 000 m の外洋を伝播するときの伝播速度を求めよ。
重力加速度を 9.8 m / s 2 とする。また,必要であれば,2 = 1.4 をもちいよ。答えだけでなく計算過程も明記せよ。
問3 図2—2は,地震波の到達時刻(P波は●,S波は◇)をもとに,横軸に震央距離,縦軸に走時をとり,プロットしたものである。図2—2のグラフを解析することによって,1900 年代のはじめ頃,地下に存在する不連続面が発見された。
(1) この不連続面の名前を書け。
(2) この不連続面の上側の層の名前を書け。
(3) この不連続面の下側の層の名前を書け。
(4) このグラフから,なぜ不連続面が発見されることになったのかを,100 字以内で説明せよ。
PDFの 50 枚目
図2—2
PDFの 51 枚目
第3問
次の文章をよく読み,問1から問6に答えよ。
A岬南端に,幅 200 m 長さ 1 k m にわたって大きな火成岩体が露出している。この火成岩体を調査したB君の報告を見てみよう。
この(あ)火成岩体は東北にのびたレンズ状の岩体であり,鉛直な層理面を示す周囲の堆積岩に対して,その層理面にほぼ平行な境界面を持っている。境界付近の堆積岩には黒雲母などが観察され,石英の粒子径も大きい。しかし,境界から 300 m 程度離れた堆積岩にはそのような特徴は認められなかった。一方,(い)火成岩は,境界付近では細粒・緻密な鉱物によって構成されているが,境界から離れるに従って結晶粒が大きくなり,岩体の中心部では 1 c m にも達する大きな鉱物が観察できる。ルーペでよく観察すると,この火成岩は(う)黒い短冊形の鉱物と,同量程度の白い長柱状の鉱物およびやや茶色を帯びた黒いカンラン石によって構成されていることがわかった。カンラン石は,火成岩体の東部に集中していた。火成岩体の緻密・細粒な境界付近の岩石をいくつか化学分析したところ,S i O 2 の重量分率は約 50 % ,M g O の重量分率は約 10 % であった。
問1 下線部(あ)に関して,この火成岩の名前を,以下の候補からもっとも適当なものを一つ選択せよ。
閃緑岩,安山岩,流紋岩,玄武岩,はんれい岩,花こう岩
問2 下線部(い)の観察事実から判断して,この火成岩が生成したときに,どのような現象が生じたか,50 字以内で簡潔に記載せよ。
問3 下線部(う)の黒い短冊形の鉱物と白い長柱状の鉱物の名称を,以下の候補から選択せよ。
石英,雲母,輝石,ザクロ石,斜長石,正長石,けい線石
PDFの 52 枚目
問4 カンラン石を化学分析したら,重量分率で M g O が 39.1 % ,F e O が 22.6 % ,S i O 2 が 38.3 % であった。この分析値から,この鉱物の組成式を S i を 1.00 として計算せよ。解答は途中の計算式がわかるように記載すること。M g ,F e ,S i ,O の原子量はそれぞれ,24.3 ,55.8 ,28.1 ,16.0 とする。
問5 カンラン石が,火成岩体の東に集中しているのはなぜか。以下の(a)から(f)のなかから 2 つの理由を選択せよ。
(a) 火成岩体はかつて高温の岩石であった。
(b) 火成岩体ははじめマグマであった。
(c) 周囲の堆積岩ははじめ砂であった。
(d) カンラン石は砂より重い。
(e) カンラン石はマグマより重い。
(f) カンラン石は黒雲母より重い。
問6 火成岩体の中心部の岩石はどのような M g O と S i O 2 の重量分率となっていると考えられるか。問4の問題文を参考にして次の中から選択せよ。
(a) M g O ,S i O 2 の重量分率はそれぞれ 10 % 以上,50 % 以上であった。
(b) M g O ,S i O 2 の重量分率はそれぞれ 10 % 以上,50 % 未満であった。
(c) M g O ,S i O 2 の重量分率はそれぞれ 10 % 未満,50 % 以上であった。
(d) M g O ,S i O 2 の重量分率はそれぞれ 10 % 未満,50 % 未満であった。
第1問 星にしか見えない、いちばん明るい天体 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 クェーサー 3C273 を例に、「遠くの天体の距離と本当の明るさをどう知るか」をたどる問題。使う道具は3つある。
赤方偏移(ドップラー効果) :遠ざかる天体からの光は波長がのびて見える。速さが光よりずっとおそいときは、のびる割合は 速さ ÷ 光の速さ。ハッブルの法則 は「銀河の遠ざかる速さは距離に比例する」(v = H d 、H はハッブル定数)。
等級と距離 :等級は 5 等級で明るさが 100 倍ちがう目盛り(1 等級で約 2.5 倍)。明るさは距離の2乗に反比例するので、見かけの等級 m と絶対等級 M (10 パーセクに置いたときの等級)には
m − M = 5 log 10 d 10 p c
の関係がある。見かけの大きさ (角度)は距離に反比例する。
数値は有効数字3桁で、問題にある近似 10 0.8 = 6.4 、10 0.28 = 2.0 を使う。3C273 の距離 6.40 × 10 8 パーセクは 6.4 × 10 8 = 10 8.8 と書ける、というのが計算の鍵になる。
問1 天体が遠ざかりながら光を出すと、1つの波の山を出してから次の山を出すまでに、天体は少し遠くへ進む。そのぶん地球に届く山と山の間隔(波長)がのびる。のびる割合は
v c = 48000 3.00 × 10 5 = 0.160
λ = 486 × ( 1 + 0.160 ) = 486 × 1.16 = 563.76 n m
もとは青緑色の H β 線が黄緑色の所まで動いてしまうほどの大きなずれ。なお、この式は光よりずっとおそいときの式で、光の 16% の速さでは、光に近い速さの式(相対論)とくらべて 7 nm ほどずれる(デモの赤い山)。
答え 564 n m ( 486 × ( 1 + 48000 3.00 × 10 5 ) = 486 × 1.16 )
問2 ハッブルの法則 v = H d を H について解く。距離は 6.40 × 10 8 パーセク = 640 M p c なので
H = v d = 48000 k m / s 640 M p c
単位は「1 Mpc 遠いごとに、何 km/s 速く遠ざかるか」。今の測定値(約 67〜73)と同じくらいの大きさになる。
答え 75.0 k m / s / M p c ( 48000 640 )
問3 m − M = 5 log 10 d 10 を M について解くと M = m + 5 − 5 log 10 d (d はパーセク)。
log 10 ( 6.40 × 10 8 ) = log 10 6.4 + 8 で、10 0.8 = 6.4 だから log 10 6.4 = 0.8 。よって log 10 d = 8.8 。
M = 12.8 + 5 − 5 × 8.8 = 17.8 − 44.0
太陽の絶対等級は約 4.8 等なので、3C273 は太陽より 31 等級も明るい。
答え − 26.2 等( M = 12.8 + 5 − 5 log 10 ( 6.40 × 10 8 ) = 17.8 − 5 × 8.8 )
問4(1) M31 について、見かけの等級と絶対等級の差(距離指数)は
m − M = 3.50 − ( − 20.5 ) = 24.0 = 5 log 10 d 10
よって log 10 d 10 = 4.8 、d = 10 5.8 = 10 0.8 × 10 5 。10 0.8 = 6.4 を使う。
デモの表の値(6.31 × 10 5 )は近似を使わずに計算したもの。問題の近似 10 0.8 = 6.4 は本当は 6.31 なので、1.4% 大きめになる。
答え 6.40 × 10 5 パーセク( 3.50 − ( − 20.5 ) = 24.0 = 5 log 10 d 10 より d = 10 5.8 )
問4(2) 3C273 の距離 6.40 × 10 8 は、M31 の距離 6.40 × 10 5 のちょうど 1000 倍。
明るさ :距離が 1000 倍だと明るさは 1000 2 = 10 6 分の1。100 倍暗いごとに 5 等級なので、10 6 分の1は 15 等級暗い。
m = 3.50 + 5 log 10 1000 = 3.50 + 15
見かけの直径 :角度は距離に反比例するので 1000 分の1。180 分角 = 180 × 60 = 10800 秒角だから、10800 ÷ 1000 秒角。
こんなに遠くても、M31 は 10 秒角ほどに広がったぼんやりした天体に見える。3C273 の広がりは 10000 分の 3 秒角以下で、写真では点(恒星と同じ)にしか見えない。デモで M31 を遠ざけると、同じ拡大の写真の中で M31 は小さく暗くなるが、点にはならない。
答え 見かけの等級 18.5 等,見かけの直径 10.8 秒角(距離が 1000 倍なので 3.50 + 5 log 10 1000 , 180 × 60 ÷ 1000 )
問4(3) 光度(本当の明るさ)は、絶対等級でくらべる。3C273 は − 26.2 等、M31 は − 20.5 等で、差は 5.7 等級。1 等級は 10 0.4 倍なので
10 0.4 × 5.7 = 10 2.28 = 10 2 × 10 0.28 = 100 × 2.0
別の見方:問4(2) で M31 を 3C273 と同じ距離に置くと 18.5 等。同じ距離で 12.8 等の 3C273 との差は 5.7 等級で、同じ答えになる。デモでは「見かけの明るさ × 距離²」でくらべても同じ値になることを確かめている。
答え 2.00 × 10 2 倍( 10 0.4 × ( − 20.5 − ( − 26.2 ) ) = 10 2.28 )
問5 距離 :3C273 は M31 の 1000 倍遠い(問題文の「当時の常識を越えた距離」)。答えの「銀河よりはるかに遠く」は、ここでくらべた M31 のような銀河とくらべての話。どんな銀河よりも遠い、という意味ではない。
明るさ :1000 億個の星の集まりである銀河 M31 の約 200 倍の光度をもつ。
大きさ :変光から見積もった広がりは 1 パーセク以下。M31 の直径は 180 分角 × 距離 ≒ 3 × 10 4 パーセクなので、その数万分の1以下。変光から大きさが分かるのは、光る所の全体が一度に明るくなっても、奥の側からの光は手前の側より遅れて届くから。大きさ 1 パーセクなら光で 3.3 年分の遅れがあり、光る所の全体がそろって明るさを大きく変える変光は、それより速くは見えない。
ただし、この考え方で決まるのは「明るさの大部分を出していて、そろって変光する所」の大きさ。大きな天体でも、その中の一部(変光星や超新星など)はもっと速く変光できる。だから「銀河は 10 万年より速くは変光できない」とは言えない。3C273 の「1 パーセク以下」は、明るさを変えている光が、全体の明るさの大部分を出す所から来ていると考えて出した大きさ。
つまりクェーサーは、とても小さな領域から、銀河全体の何百倍ものエネルギーを出している天体。今では、銀河の中心の巨大ブラックホールに物質が落ちこむときの光だと考えられている。
答え クェーサーは銀河よりはるかに遠くにあり,光度は1000億個の星からなる銀河の約200倍もある。一方,大きさは変光から1パーセク以下で,銀河の数万分の1しかない。ごく狭い領域から莫大なエネルギーを出す天体である。
第2問 動く海底、津波、地下の境目 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 前半(Ⅰ)は、大陸移動説からプレートテクトニクスへ、という考え方の歴史をたどる問題。プレートテクトニクス は「地球の表面は十数枚の硬い板(プレート)に分かれていて、それぞれが年に数 cm ずつ動いている」という考え。プレートは海嶺で生まれ、海溝で沈みこむ。プレートの境目には、離れる境界(海嶺)・近づく境界(海溝・衝突帯)・すれちがう境界(トランスフォーム断層)がある。
海洋底の縞模様の問いは、「岩石は固まるときの地磁気の向きを覚えている」ことと「地磁気は何度も逆転してきた」ことの2つを組み合わせる。
後半(Ⅱ)は、波の速さの問題。津波は海の底から水面まで全部の水が動く波で、速さは水深で決まる。地震波の問いは、走時曲線 (震央からの距離と、波が着くまでの時間のグラフ)の傾きが「速さの逆数」であることがカギ。
Ⅰ問1(1) ウェゲナーは、大西洋をはさむ南アメリカとアフリカの海岸線の形がよく合うこと、両方の大陸で同じ化石や同じ地層が見つかることなどから、昔はすべての大陸が1つにまとまっていたと考えた。
その巨大な大陸を、ギリシャ語の「すべての陸地」という意味の言葉で名づけた。約 3 億年前にでき、約 2 億年前から分かれはじめたと考えられている。
Ⅰ問1(2) 空欄のすぐあとの文が手がかり。「アルプス,ヒマラヤなどの褶曲山脈の成因について,大陸の衝突の結果として説明した」とある。
大きな山脈ができること(地層が押し曲げられて褶曲し、盛り上がること)を造山運動 という。ウェゲナーの時代には、大陸を動かす力も山脈のでき方も説明できなかった。プレートテクトニクスは、動くプレートどうしがぶつかる所で山脈ができる、と説明した。ヒマラヤは、北へ動いてきたインド大陸がユーラシア大陸にぶつかってできた。
Ⅰ問1(3) 海嶺は1本の長い山脈ではなく、ところどころで横にずれて階段のようになっている。そのずれの所にある断層がトランスフォーム断層 (ウィルソンが考えた)。
ふつうの横ずれ断層なら、海嶺のずれた向きに岩盤がずれたと考える。ところが実際は、2つの海嶺の間の区間では、それぞれの海嶺から生まれた板が逆向き に動いてすれちがっている。ずれの向きは、海嶺のずれ方から想像する向きと逆になる。また海嶺の外側(割れ目帯)では両側の板が同じ向きに動くので、ずれは起きない。
デモでは、赤い線(2つの海嶺の間)だけが本当にずれている所で、点線の部分は両側とも同じ向きに動いている。
Ⅰ問1(4) ハワイのように、プレートの境目ではない所にも火山がある。これは、マントルの深い所から熱い物質がわき上がる場所(ホットスポット )の上にできた火山。ホットスポットの位置はマントルに対してほとんど動かない。
その上をプレートが動くと、火山はできたあとプレートに乗って運ばれ、ホットスポットの上には次の新しい火山ができる。こうして、遠い島ほど古い 火山の列ができる。デモのグラフでは、プレートの向きが変わってからできた(若い)島は、年齢と距離が1本の直線に並び、その傾きがプレートの速さになる。向きが変わる前にできた古い島は、列が折れ曲がっているぶん、ホットスポットからのまっすぐな距離がプレートの動いた道のりより短くなり、直線より下にずれる(もとの設定の 9 cm/年・4700 万年前に 60 度では、7000 万年前の島の「距離 ÷ 年齢」は約 7.9 cm/年)。だから「距離 ÷ 年齢 = プレートの速さ」は、向きが変わってからの島に使う(古い島まで使うなら、まっすぐな距離ではなく列に沿った道のりで測る)。列が折れ曲がっているのは、プレートの動く向きが変わったあと(ハワイ諸島と天皇海山列の折れ曲がり)。
Ⅰ問2(1) 図2—1 の白黒の縞は、海底の岩石が持っている磁気(残留磁気)の向き を表している。図には色の意味の説明(凡例)が無いが、中央海嶺の上の帯が黒いので、黒を今の地磁気と同じ向き(正)、白を逆向きとして読む(いまは正の時期なので、海嶺の真上でいまできている岩石は必ず正)。
海の上で船から磁力計を引いて測ると、場所によって地磁気が少し強かったり弱かったりする(地磁気の異常)。その強い所と弱い所が、海嶺に平行な縞になって並んでいることが分かった。
答え 海洋底の岩石が固まったときの地磁気の向き(残留磁気)が,正と逆に交互に並ぶ縞模様(地磁気の縞状異常)
Ⅰ問2(2) ① 海嶺ではマントルからマグマがわき上がり、冷えて固まって新しい海底(玄武岩)になる。岩石の中の磁鉄鉱などの鉱物は、固まって冷えるとき、そのときの地磁気の向き に磁石になり、その向きを覚えたままになる。
② 地磁気の向き(N 極と S 極)は、数万〜数百万年ごとに逆転 してきた。
③ 海底は海嶺から両側へ同じ速さで広がっていく。だから、ある時代にできた岩石は、海嶺をはさんで左右同じ距離の所に運ばれている。
この3つから、正と逆の縞が海嶺に平行に、しかも左右対称 に並ぶ。縞の対称性は、海底が海嶺で生まれて両側へ広がっている(海洋底拡大)ことを示す。デモのグラフで、右側と左側を折り返したものがぴったり重なる。縞の幅は「広がる速さ × その向きが続いた時間」なので、年表が分かれば広がる速さも分かる(片側 2.5 cm/年なら、いちばん内側の 78 万年分で 19.5 km)。
答え 海嶺で湧き出たマグマは冷えて固まるとき,その時の地磁気の向きに磁化される。地磁気は逆転をくり返すので,海洋底が海嶺から両側へ移動すると,正逆の磁化の縞が海嶺をはさんで対称に並ぶ。これは海洋底が海嶺で生まれ拡大している証拠である。
Ⅱ問1 津波の速さは水深を h として v = g h 。外洋でも約 200 m/s で、地震の P 波(約 6 km/s)や S 波(約 3.5 km/s)よりずっと遅い。だから、地震のゆれを感じてから津波が来るまでには時間がある(津波警報が間に合う理由)。
海が浅くなると、g h で速さは遅くなる。後ろの速い水が前の遅い水に追いつくので、波の長さは縮み、そのぶん水が積み上がって振幅は大きく なる。エネルギーの流れがほぼ保たれるとすると、振幅は水深の 4 乗根に反比例する(グリーンの法則)。デモでは、4000 m から 50 m まで来ると、1 m の山が約 2.8 m になる。
Ⅱ問2 v = g h = 9.8 × 4000 = 39200
39200 = 19600 × 2 = 140 2 × 2 と分けると、39200 = 140 2 。2 = 1.4 を使う。
時速にすると約 700 km で、ジェット機ほどの速さ。この式が使えるのは、波長(数十〜数百 km)が水深(数 km)よりずっと長いから。デモで波長を水深と同じくらいまで短くすると、画面のメモに出る「くわしい式」の速さは g h よりずっと小さくなる(水深 4000 m・波長 4 km で約 79 m/s)。ただし、動く水面の絵と高さのグラフは、波長によらない長い波の式で計算しているので、波長のつまみを動かしても変わらない。
答え v = g h = 9.8 × 4000 = 39200 = 140 2 = 140 × 1.4 = 196 m / s (約 2.0 × 10 2 m / s )
Ⅱ問3(1) 1909 年、モホロビチッチは、クロアチアの地震の記録を図2—2 のようなグラフに並べ、P 波にも S 波にも2本の線があることに気づいた。地下のある深さに、地震波の速さが急に変わる境目があると考えた。これが発見者の名前をとった不連続面(モホ面)。
Ⅱ問3(2) モホ面より上は地殻 。大陸では厚さ 30〜40 km ほど(高い山脈の下では 60 km をこえる)、海洋では 5〜10 km ほど。花こう岩質〜玄武岩質の岩石でできていて、P 波の速さは 6 km/s 前後。デモで図2—2 の線を読むと、上の層の P 波は約 5.7 km/s。
Ⅱ問3(3) モホ面より下はマントル 。かんらん岩のような重い岩石でできていて、P 波の速さは約 8 km/s に上がる。図2—2 の下の層を通る P 波の線から読むと約 7.8 km/s で、実際のマントルの一番上の値とよく合う。
Ⅱ問3(4) 走時曲線の傾きは「1 km 進むのにかかる時間」=速さの逆数。図2—2 では、P 波(●)の点が、近い所では急な線に、遠い所ではゆるい線に乗っている。遠い所ほど速い波が先に着いている。
これは、2 つの道すじの競争で説明できる。近い所 では、地殻の中をまっすぐ進む波(直接波)が先に着く。遠い所 では、いったん下の速い層まで下り、境目に沿って速く進んでから上がってくる波(屈折波)の方が、遠回りでも先に着く。先に着く波が入れかわる距離で、走時曲線の傾きが小さくなる(折れ曲がる)。
直接波 x V 1 と屈折波 x V 2 + 2 h 1 V 1 2 − 1 V 2 2 が等しくなる距離から、境目の深さ h が計算できる。図2—2 の P の線を読んで入れると、深さは約 35 km になり、大陸の地殻の厚さとよく合う。デモで観測点を遠ざけていくと、ある距離から青い点(下の層を通る波)の方が先に着くようになる。
答え 震央距離がある距離をこえると,地殻を直接伝わる波より,下の速い層を伝わって屈折してくる波が先に着くため,走時曲線の傾きが途中で小さくなる。この折れ曲がりから,速度の異なる層の境界がわかった。
第3問 岬の火成岩体を読む 答えは東大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 野外で見た1つの火成岩体の観察記録から、でき方を推理する問題。手がかりは文章の中にちりばめられている。
化学組成 :境界付近の S i O 2 が約 50%。火成岩は S i O 2 の量で、約 45〜52% を玄武岩質(塩基性)、52〜66% を安山岩質(中性)、66% 以上を流紋岩質(酸性)に分ける。粒の大きさ :細かい粒の中に斑晶がある組織は火山岩、全部が大きな結晶の組織は深成岩。この2つを組み合わせると岩石の名前が決まる。
形と向き :岩体は周りの堆積岩の層理面と平行で、その層理面は今は鉛直(立っている)。堆積岩はもともと水平にたまるので、この岩体は、もとは水平な地層の間に板のように入りこんだマグマ(シル)で、あとで地層ごと立ち上がったと読める。これが問5の「東」の意味を解くカギになる。なお、岩体は東北にのびているので、立った板の面は北西と南東を向いている。問題の「東部」は、正確には南東の側を指すと読める。
問1 S i O 2 が約 50% なので玄武岩質のマグマからできた岩石。玄武岩質の岩石は、火山岩なら玄武岩 、深成岩ならはんれい岩 。
岩体の中心では 1 cm にもなる大きな鉱物が見え、構成鉱物(輝石・斜長石・カンラン石)もすべてルーペで見分けられる大きさ。これは地下でゆっくり冷えた深成岩の組織(等粒状組織)。境界付近だけ細かい粒なのは、次の問2の理由による。
候補のうち、閃緑岩・安山岩は中性、流紋岩・花こう岩は酸性なので、S i O 2 50% とは合わない。
問2 結晶の大きさは、マグマがどれだけゆっくり冷えたかで決まる。ゆっくり冷えると、少ない結晶の核がじっくり育って大きな結晶になる。急に冷えると、たくさんの核が一度にでき、育つ前に固まるので細かい粒になる。
マグマ(約 1200 ℃)が冷たい堆積岩の間に入りこむと、境界ではマグマはすぐに冷やされる。熱の伝わり方の計算では、境界の温度はすぐにマグマと堆積岩のまん中くらい(100 ℃ の堆積岩なら 650 ℃)になり、固まる温度より低いので、境界付近は一瞬で固まる。
一方、中心は両側の岩石にはさまれて熱が逃げにくい。幅 200 m の岩体の中心が固まるまで、デモの計算ではおよそ 90 年かかる。ゆっくり冷えたので、中心ほど結晶が大きく育った。
ただしこの 90 年は、問題に無い値を仮に置いた目安で、問題から決まる年数ではない。マグマ 1200 ℃・堆積岩 100 ℃・固まりきる温度 1000 ℃、熱の伝わりやすさ(熱拡散率)10 − 6 m 2 / s をマグマも堆積岩も同じとし、熱が伝わるだけとした計算である。マグマが固まるときに出す熱(潜熱、約 4 × 10 5 J / k g )を 1200〜1000 ℃ の間で出すとして入れると約 250 年(比熱のとり方で 230〜280 年、熱が伝わるだけの計算の約 2.6〜3.2 倍)になり、熱の伝わりやすさが半分なら年数は2倍になる。言えるのは「境界は一瞬、中心は何十年〜何百年」というけたの違いまで。このように急に冷えた境界付近の部分を急冷周縁相という。
なお、境界付近の堆積岩に黒雲母ができ石英の粒が大きくなっているのは、マグマの熱で変成した(接触変成作用)ため。同じ仮の計算でも、300 m 離れると堆積岩は 230 ℃ ほどまでしか熱くならず、変成の特徴が見られないことと合う。
答え マグマが冷たい堆積岩に貫入し,境界付近は急冷されて細粒に,中心部はゆっくり冷えて粗粒になった。
問3 はんれい岩の主な鉱物は、有色鉱物の輝石 (とカンラン石)と、無色鉱物の斜長石 。
黒い鉱物の候補は雲母と輝石。黒雲母は薄くはがれる板状の鉱物で、はんれい岩の主な鉱物ではない。短冊形(短い柱状)の黒い鉱物は輝石。
白い鉱物の候補は石英・斜長石・正長石。石英と正長石は S i O 2 の多い花こう岩などに多く、玄武岩質のはんれい岩にはほとんど含まれない。はんれい岩の白い柱状の鉱物は Ca に富む斜長石。「同量程度」という量の比も、はんれい岩の典型(斜長石と有色鉱物がほぼ半分ずつ)に合う。
答え 黒い短冊形の鉱物:輝石,白い長柱状の鉱物:斜長石
問4 酸化物の重量% を、式量で割ると物質量(何 mol 分か)になる。式量は M g O = 40.3 、F e O = 71.8 、S i O 2 = 60.1 。100 g あたりで
M g : 39.1 40.3 = 0.9702 , F e : 22.6 71.8 = 0.3148 , S i : 38.3 60.1 = 0.6373
酸素は、M g O と F e O に 1 個ずつ、S i O 2 に 2 個ずつ入っているので
O : 0.9702 + 0.3148 + 2 × 0.6373 = 2.5596
Si を 1.00 にするため、全部を 0.6373 で割る。Mg は 1.52、Fe は 0.494、O は 4.02 になる。
確かめ:Mg + Fe ≒ 2.02、O ≒ 4.02 で、カンラン石の組成式 ( M g , F e ) 2 S i O 4 とよく合う。Mg と Fe は同じ場所を取り合う(固溶体)ので、合計が 2 になればよい。逆に、この組成式から重量% を計算しもどすと、MgO 39.06%・FeO 22.62%・SiO₂ 38.32% で、分析値に合う。
答え Mg : 39.1 40.3 = 0.9702 , Fe : 22.6 71.8 = 0.3148 , Si : 38.3 60.1 = 0.6373 , O : 0.9702 + 0.3148 + 2 × 0.6373 = 2.5596 。Si で割って M g 1.52 F e 0.494 S i 1.00 O 4.02
問5 カンラン石が一方の側に集まるには、カンラン石が動ける 状態で、一方向の力 を受ける必要がある。
動けるのは、岩体がまだ液体のマグマだったとき((b))。高温でも固体の岩石((a))の中では、結晶は動けない。力は重力で、カンラン石の方がマグマより重ければ沈む((e))。カンラン石の密度は約 3.3〜3.5 g/cm³、玄武岩質マグマは約 2.7 g/cm³。
砂((d))や黒雲母((f))との重さくらべは、マグマの中で沈むかどうかとは関係がない。(c) は堆積岩の話で、岩体の中のカンラン石の動きとは関係がない。
最初に読んだとおり、岩体はもとは水平な板で、あとで地層ごと立ち上がった。カンラン石はもとの底に沈んでたまり、その底が今の東側になった。マグマのねばりけを 100 Pa·s と仮に置いたデモの計算では、半径 1 mm の粒は 1 年に約 550 m 沈み、200 m を約 130 日で沈む。中心が固まるまでの何十年〜何百年(問2の仮の計算で約 90 年、潜熱を入れると約 250 年)よりずっと早く底に着く。
問6 境界付近の急に冷えた部分は、カンラン石が沈む前に固まったので、もとのマグマの組成(M g O 約 10%、S i O 2 約 50%)をそのまま残している。
中心部の岩石は、このマグマからカンラン石が東へ抜けた残り。問4のカンラン石は M g O 39.1%(10% より多い)、S i O 2 38.3%(50% より少ない)。M g O の多いものが抜ければ残りの M g O は減り、S i O 2 の少ないものが抜ければ残りの S i O 2 は増える。
たとえば全体の 10% のカンラン石が抜けたとすると、残りは
M g O : 10 − 0.1 × 39.1 0.9 ≈ 6.8 % , S i O 2 : 50 − 0.1 × 38.3 0.9 ≈ 51.3 %
抜けた割合が 1% でも 20% でも、M g O は 10% 未満、S i O 2 は 50% 以上になる(M g O が多く S i O 2 が少ないものを抜くので、増え減りの向きは割合によらない)。ただし抜ける割合には上限があり、10 ÷ 39.1 ≈ 25.6 % より多く抜くと残りの M g O がマイナスになってしまうので、それより少ない。逆に東の端はカンラン石がたまって M g O が多く S i O 2 が少ない。このように、結晶が分かれてマグマの組成が変わっていくことを結晶分化作用という。