(必要なときは次の値を用いよ。原子量:H = 1.00,C = 12.0,N = 14.0,O = 16.0,Si = 28.0。,,。)
第1問
問 1 次の文章を読んで,設問(1)〜(4)に答えよ。
密閉した容器内で,物質 A(気体)と物質 B(気体)から,物質 C(気体)が生成する反応(Ⅰ)を考える。
ここで,A,B,C は理想気体とし,気体定数を [Pa·L/(K·mol)] とする。絶対温度 [K] で平衡に達したときの A,B,C の分圧をそれぞれ [Pa], [Pa], [Pa] とすると,反応(Ⅰ)の圧平衡定数 [Pa⁻²] は,,, を用いて ア と表される。また,反応(Ⅰ)の濃度平衡定数 [(mol/L)⁻²] は,A,B,C の濃度の代わりに ,, を用いて イ と表される。はじめに容器に入れた A の物質量を [mol],B の物質量を [mol],平衡に達したときに A の反応した割合を ,このときの全圧を [Pa] とする。平衡に達したときの B の物質量 [mol] は,,, を用いて ウ と表される。また, は,,,, を用いて エ と表される。
つぎに,物質 X(気体)から,物質 Y(気体)と物質 Z(気体)が生成する反応(Ⅱ)を考える。
ある一定の温度で反応(Ⅱ)を進行させると,X の分解速度 [mol/(L·min)] は,X の濃度 [X] [mol/L] と反応速度定数 を用いて,① と表される。この反応を 45 ℃で進行させたとき,反応開始からの時間 [min] と [X] との関係は表 1 のようになった。
表 1 X の分解反応における時間 と濃度 [X] の関係(45 ℃)
| [min] | 0.00 | 10.0 | 20.0 |
| [X] [mol/L] |
下線①より,温度一定のもとで,ある瞬間における X の分解速度は
となる。式(1)を変形し,積分すると
が得られる。ここで, [mol/L] は X の初濃度, は自然対数の底である。[X] が の半分となるまでにかかる時間(半減期)を [min] とすると,式(2)から, オ が得られる。これより,反応(Ⅱ)では, は によって決まり, に依存しないことがわかる。つまり, を測定すれば を求めることができる。
設問(1):文中の空欄 ア 〜 エ にあてはまる最も適切な数式を記せ。
設問(2):下線①に関して,45 ℃で反応(Ⅱ)を進行させたときの の値を有効数字 2 桁で求め,単位を含めた形で答えよ。
設問(3):文中の空欄 オ にあてはまる最も適切な数式を記せ。
設問(4):アレニウスは,比例定数 ,活性化エネルギー [J/mol], [J/(K·mol)], によって, が,次式で表されることを見いだした。
ただし, である。反応(Ⅱ)において,X の初濃度を変えずに温度を [K] から [K] へ変化させたとき,X の分解速度が 3 倍になった。,, を用いて を数式で表せ。ただし, と は温度によらず一定であるとする。
問 2 次の文章を読んで,設問(1)〜(3)に答えよ。
酵素は触媒として働くタンパク質である。酵素の活性は pH によって大きく影響を受けるため,酵素を用いた実験では緩衝液を用いることが多い。①弱酸に強塩基,あるいは弱塩基に強酸を徐々に加えると,その水溶液はある添加量の範囲で緩衝作用を示す。また,②弱酸(あるいは弱塩基)とその塩の混合水溶液も緩衝液になる。
設問(1):下線①に関して,0.40 mol/L 酢酸 水溶液 100 mL に,0.10 mol/L 水酸化ナトリウム NaOH 水溶液を徐々に加えたときの滴定曲線を図 1 に示す。図 1 の点 Q は中和点である。

図 1
(i) 水酸化ナトリウム水溶液を加える前の酢酸水溶液の水素イオン濃度と pH を計算し,有効数字 2 桁で求めよ。ただし,酢酸の電離度は 1 に比べて非常に小さい。温度は 25 ℃で一定とし,酢酸の電離定数 mol/L,,, とする。
(ii) 一価の弱酸である乳酸 を水に溶かすと,次の電離平衡の式(Ⅰ)が成りたつ。
0.40 mol/L 乳酸水溶液 100 mL に,0.12 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加えた。このときの滴定曲線を図 1 に描き入れた場合,点 Q に相当する点 Q′ はどこに位置するか。点 Q に対する相対的な位置として最も適切なものを(ア)〜(ケ)の中から 1 つ選び,記号で答えよ。ただし,乳酸の電離度は 1 に比べて非常に小さい。温度は 25 ℃で一定とし,乳酸の電離定数 mol/L とする。
(ア) 左上 (イ) 上 (ウ) 右上 (エ) 左 (オ) 変わらない (カ) 右 (キ) 左下 (ク) 下 (ケ) 右下
設問(2):下線②に関して,乳酸とその塩の乳酸ナトリウム の緩衝液を考える。0.80 mol/L 乳酸水溶液 100 mL,0.20 mol/L 乳酸ナトリウム水溶液 200 mL を混合した。この緩衝液の水素イオン濃度と pH を計算し,有効数字 2 桁で求めよ。ただし,緩衝液中では,設問(1)-(ii)の式(Ⅰ)の電離平衡は,多量に存在する乳酸イオン により左にかたよっており,乳酸の電離によって生じる水素イオン はきわめてわずかである。温度は 25 ℃で一定とし,乳酸の電離定数 mol/L,, とする。
設問(3):以下の 内の 6 つの塩のうち,その水溶液が酸性になるものをすべて選び,化学式で答えよ。
硫酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム,硫酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,塩化ナトリウム,塩化アンモニウム
第2問
問 1 次の文章を読んで,設問(1)〜(5)に答えよ。
①単体の炭素 C は様々な構造をもつことが知られており,近年新しく見いだされた同素体もある。常温常圧において,周期表で同じ 14 族に属する単体のケイ素 Si や,炭素とケイ素のみからなる化合物である ア にも,炭素の同素体のひとつであるダイヤモンドと同様な結晶構造をもつものがある。同様な結晶構造の物質間で比較すると,ダイヤモンド,ア,ケイ素の順に,電気伝導性は イ(増加・減少) し,硬度は ウ(高く・低く) なる。
けい砂を水酸化ナトリウム水溶液と混ぜて圧力容器中で加熱すると,粘度の高い溶液である エ が得られる。エ には,ナトリウムイオン,水酸化物イオンのほかに,ケイ素と酸素を含む分子量の大きいイオンが溶解している。②この溶液に塩酸を加えると,白色の固体である オ が析出する。オ に含まれる水溶性の成分を洗浄・除去して乾燥させた固体は カ と呼ばれる。カ は分子の大きさ程度の微細な空間を多数含み,明確な結晶構造をもたない非晶質である。
設問(1):文中の空欄 ア 〜 カ にあてはまる最も適切な物質名を記せ。ただし,空欄 イ,ウ については,括弧内の語句のいずれかを選択せよ。
設問(2):下線①について,炭素の同素体のひとつであるグラフェンは,平面に隙間なくしきつめた正六角形の各頂点に炭素原子をもつ単層の物質である。グラフェンの炭素原子の最近接原子間距離は 0.142 nm(1 nm = m)である。このとき,1.0 cm² あたりの炭素原子の個数を有効数字 2 桁で求めよ。
設問(3):ア は,炭素とケイ素が交互に結合した結晶構造をもち,炭素とケイ素の最近接原子間距離は 0.188 nm である。ダイヤモンドの最近接原子間距離が 0.154 nm,密度が 3.51 g/cm³ であるとき,ア の密度を有効数字 2 桁で求めよ。ただし, として計算せよ。
設問(4):常温常圧において,二酸化炭素 は孤立分子として存在し,二酸化ケイ素 のような立体網目構造の固体にならない。組成式 の物質が,孤立分子および のような立体網目構造である場合を仮定し,式量あたりの結合エネルギーの総和をそれぞれ計算せよ。またこれらの結合エネルギーの総和を用いて, が孤立分子として安定に存在する理由を説明せよ。結合エネルギーの値はそれぞれ次の値を用いよ。
C−O 結合 352 kJ/mol,C=O 結合 803 kJ/mol
設問(5):下線②について,エ を塩酸で中和して オ が生じる化学反応式を記せ。ただし,エ の組成式を とせよ。
問 2 次の文章を読んで,設問(1),(2)に答えよ。
マグネシウム Mg は価電子を ア 個もつ金属元素であるが,その性質は同族のカルシウム Ca などのアルカリ土類金属と大きく異なることが知られている。例えば,カルシウムは常温の水と激しく反応して溶解するが,マグネシウムは常温の水とはほとんど反応せずに金属光沢を保つ。これはマグネシウム表面の酸化被膜が常温の水に難溶であり,内部を保護するためである。このように,金属の表面にち密な酸化被膜が生じ,それ以上の反応がほとんど進行せずに内部が保護される状態は イ と呼ばれる。しかし,マグネシウムは ウ(冷水・熱水) や弱酸性の水溶液と反応し,気体である エ を発生する。
大気から取り込まれた酸素 を正極活物質,マグネシウムを負極活物質とした図 1 に示す①電池を考える。この電池に海水や食塩水などを電解質水溶液として注入すると,正極では の還元反応により水酸化物イオンが生じ,負極ではマグネシウムの酸化反応によりマグネシウムイオンが生じる。この原理に基づく電池はマグネシウム空気電池として,災害などの非常時にも使用可能な小型電源として実用化されている。

図 1

図 2
設問(1):文中の空欄 ア 〜 エ にあてはまる最も適切な数字,語句,化学式を記せ。ただし,空欄 ア には整数を,空欄 ウ には括弧内の語句のいずれかを,空欄 エ には化学式を記せ。
設問(2):下線①に関して以下の実験を行った。
図 1 の電池を電源として,図 2 のような電極 A,B と硫酸 水溶液で構成される電解槽に接続した。電極には白金 Pt を用いている。電池を接続すると電解槽中の電極 A,B から,それぞれ気体 エ と が発生していた。次に,隔膜で分けられた電極 A 側の 水溶液に硫酸銅(Ⅱ) を溶解させると,エ が発生しなくなり,電極 A 上には銅 Cu が析出した。エ 発生と Cu 析出の実験中は 0.50 mA の一定電流が 193 時間流れ,析出した Cu の質量は 95.25 mg であった。以下の問いに答えよ。
(i) 図 1 の電池全体の化学反応式を記せ。
(ii) 電極 A は図 1 の電池の正極と負極のいずれに接続されていたかを記せ。
(iii) なぜ エ が発生しなくなり,Cu が析出したのか,その理由を エ と Cu のイオン化傾向の大小関係に触れて,還元という言葉を用いて 45 字以内で説明せよ。
(iv) 193 時間経過後に発生していたすべての エ の質量 [mg] を有効数字 2 桁で求めよ。ただし,ファラデー定数を 96500 C/mol とし,必要なときは原子量として H = 1.00,O = 16.0,Mg = 24.3,Cu = 63.5 を用いよ。
第3問
問 1 次の文章を読んで,設問(1)〜(5)に答えよ。
化合物 A〜D はいずれも分子量 104 の炭化水素であり,異性体の関係にある。1 mol の芳香族化合物 A に 1 mol の臭素 を付加させると芳香族化合物 E が得られる。化合物 B と C はともに図 1 で示したエンジインと呼ばれる鎖状の炭素骨格をもち,枝分かれしていない。この骨格をもつ化合物を水素供与体の存在下で加熱すると,図 2 に示すように,☆印を記した炭素原子の間で新たな結合ができ,続いて 2 個の水素原子が付加してベンゼン環をもつ化合物が生じる。この反応により,化合物 B からは芳香族化合物 F が,化合物 C からは芳香族化合物 G がそれぞれ得られる。化合物 A と F をそれぞれ過マンガン酸カリウム 水溶液で酸化すると,ともに安息香酸が得られる。

図 1

図 2
設問(1):化合物 A の分子式を記せ。
設問(2):白金触媒の存在下,化合物 A に水素 を付加させると不飽和結合をもたない化合物が得られる。しかし,化合物 A に含まれる不飽和結合の一部に水素が付加しないと,不飽和結合をもつ様々な生成物が生じうる。これらの生成物のうち,不斉炭素原子をもつものは全部で何種類あるか答えよ。ただし,鏡像異性体を区別する必要はなく,化合物 A に含まれる不飽和結合の反応性には差がないものとする。
設問(3):化合物 B と C それぞれについて,図 1 の ア 〜 エ にあてはまる原子もしくは原子団を化学式で答えよ。
設問(4):図 3 にならって化合物 E〜G の構造式を記せ。ただし,鏡像異性体を区別する必要はない。

図 3
設問(5):化合物 D は不飽和結合をもたず,全ての C−C 結合の長さは等しい。また,どの水素原子 1 個を塩素原子に置き換えても,あるいはどの炭素原子 1 個をケイ素原子に置き換えても,それぞれ 1 種類の化合物となる。図 3 にならって化合物 D の構造式を記せ。ただし,鏡像異性体を区別する必要はない。
問 2 次の文章を読んで,設問(1)〜(5)に答えよ。
イオン交換樹脂のうち,スルホ基などの酸性の官能基が導入された樹脂を陽イオン交換樹脂という。陽イオン交換樹脂をカラム(太めのガラス円筒の先にコックがついたもの)に詰め,①塩化ナトリウム水溶液を通すと,流出する水溶液は酸性を示す。
適切な pH のもとで,等電点の異なるアミノ酸の混合水溶液の電気泳動を行うと,各アミノ酸を分離することができる。同様に,陽イオン交換樹脂を利用することによってもアミノ酸混合水溶液から各アミノ酸を分離できる。アミノ酸混合水溶液を強酸性にしたのち,陽イオン交換樹脂を詰めたカラムに通すと,すべてのアミノ酸が吸着する。このカラムに緩衝液を順次 pH を上げながら流していくと,等電点に達して樹脂との吸着力を失ったアミノ酸から順番に流出する。この原理を用いて,2 つのペプチド X および Y に含まれるアミノ酸の種類を決定するために,以下の実験 1〜5 を行った。
実験 1:ペプチド X の水溶液に薄い水酸化ナトリウム水溶液を加えた後,薄い硫酸銅(Ⅱ) 水溶液を加えると,赤紫色を呈した。
実験 2:ペプチド X は不斉炭素原子を 3 個もち,環状構造をもたないことがわかった。ペプチド X に十分量の無水酢酸を反応させると分子量が 84 増加し,続いて酸触媒を用いてメタノールを作用させると,分子量がさらに 14 増加し,分子式 で表される化合物が生じた。
実験 3:等電点におけるペプチド Y の構造は,図 1 で表されることがわかった。ただし,図 1 中の*を記した炭素は不斉炭素原子を示す。
実験 4:ペプチド X と Y の混合物を酸で完全に加水分解したところ,天然に存在する 4 種類の α-アミノ酸 a〜d の混合物が得られた。
実験 5:実験 4 で得られたアミノ酸混合物の塩酸水溶液(pH 2.5)を調製し,これを陽イオン交換樹脂を詰めたカラムに通し,すべてのアミノ酸を吸着させた。このカラムに pH 4.0 の緩衝液を流したところ,アミノ酸 a が流出した。次に,pH 7.0 の緩衝液を流したところ,アミノ酸 b と c が流出した。アミノ酸 b は分子式 で表される必須アミノ酸であった。最後に,pH 11.0 の緩衝液を流したところ,アミノ酸 d が流出した。

図 1
設問(1):下線①について,流出する水溶液が酸性を示す理由を説明せよ。
設問(2):実験 1 の結果のみから,ペプチド X の構造についてわかることを簡潔に説明せよ。
設問(3):ペプチド X の分子式を記せ。
設問(4):アミノ酸 a および d の名称を,以下の の中からそれぞれ選べ。
アスパラギン,アラニン,グリシン,グルタミン酸,システイン,チロシン,セリン,フェニルアラニン,メチオニン,リシン
設問(5):図 1 にならって,pH 7.0 の水溶液中におけるアミノ酸 b および c の構造式を記せ。ただし,不斉炭素原子が含まれる場合は,すべての不斉炭素原子に*を記せ。