九大 過去問 2026年 生物|AI解答・解説・シミュレーション|アトリエファクトリー

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九州大学 令和8年度 前期日程 理科(生物基礎・生物)(改変あり)(2026年。九州大学のサイト(「試験問題、解答例等について」のページ)の PDF)

問題・解答例・出題意図(九州大学の公表資料)

九州大学の利用の条件について

九州大学は「九州大学入学試験問題等の利用について」(令和7年3月31日)で、入学試験問題等の2次利用(インターネット上に載せることを含む)を、条件を守ることで事前の承認なしにできるとしている。このサイトでの対応は次のとおり。

解答とシミュレーション(AIで作成)

制作

制作:アトリエファクトリー(aTELiER FACTORY) https://atelierfactory.jp/

お知らせ

解答・解説・シミュレーションは、すべて AI で作成しています。九州大学が公表した解答ではありません。

理科は、九州大学の「標準解答例」と見比べ、すべて一致しています(標準解答例を先に開いているので、見ずに解いたとは言えません)。数学は九州大学が解答例を出していないので、自分で解いて別の計算で確かめています。作成に使ったものとは別のAIでも全問を点検し、見つかった誤りを直しています。くわしくは「問題取得方法と回答生成方法」をご覧ください。

44

第1問

次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。(25 点)

植物の多くは,<u>光合成</u>①によって,二酸化炭素と水から有機物を合成し,独立栄養的に成長している。光合成は,光をエネルギー源として駆動されるため,植物にとって光は不可欠である。しかし,光合成によって利用できる強さを超える光を受けると,葉緑体が損傷し,その結果,光合成活性は著しく低下する。

自然界において,太陽の移動や他の植物の陰などによって,光の強さ(光強度)は常に変化している。しかし,植物は固着性の生物であり,自ら生育環境を選んで移動することはできない。そのため,植物は周囲の光環境を鋭敏に感知し,それに応じて最適な光合成を営むために,多様な光応答を誘導する。

光応答の一つとして,植物は光強度に応じて葉緑体の細胞内の配置を動的に変化させる。植物の葉に強光が当たると,葉緑体は光が直接当たらない細胞の縁へ移動するため,葉における光の吸収量が低下する(図 1 右:葉緑体逃避反応)。その結果,植物は過剰な光による害を回避できる。逆に,弱光では,葉緑体が光を受けやすい位置(細胞上面)に移動し,光の吸収量が増加する(図 1 左:葉緑体集合反応)。その結果,弱光の下で,植物の光合成効率は向上する。このような光強度に応じて葉緑体が細胞内を移動する現象は,<u>葉緑体光定位運動</u>②と呼ばれ,植物特有の<u>青色光受容体</u>③であるフォトトロピンによって誘導される。

以上のように,植物は光を,光合成のエネルギー源として利用するだけでなく,<u>周囲の光環境を知るための情報源としても利用し,生育地に適応している</u>④。

1f1

図 1

45

問 1.下線部①に関連する次の問いに答えなさい。

(1) 葉緑体に豊富に含まれ,主に青色と赤色の光を吸収する光合成色素を答えなさい。

(2) 地球上に最も多量に存在するとされる酵素で,カルビン(カルビン・ベンソン)回路において,細胞内に取り込まれた二酸化炭素を基質とする反応を触媒する酵素の名前を答えなさい。

問 2.下線部②に関連する次の問いに答えなさい。

(1) シロイヌナズナの通常の植物(野生型)の葉に,弱光および強光をそれぞれ照射し,葉緑体集合反応と葉緑体逃避反応を誘導した。その際,葉における光の吸収程度の指標として,波長ごとの吸光度を測定した結果を図 2 に示す。

1f2

図 2

同様の実験を,フォトトロピンを完全に欠く変異体(変異体 X)を用いて行った場合,変異体 X の葉の吸光度を表すグラフとして最も適切なものを図 3 の (a)〜(d) の中から 1 つ選びなさい。ただし,光強度に依存した葉における吸光度の変化は,葉緑体の細胞内の配置のみに依存するものとする。

1f3

図 3

46

(2) 図 4 の黒実線は,シロイヌナズナの野生型の葉における光強度と光合成活性の関係を示したものである。

1f4

図 5 に示すように,シロイヌナズナの野生型の葉における葉緑体の細胞内局在は,図 4 の<u>光強度①</u>では葉緑体集合反応と葉緑体逃避反応の中間のような局在を示し,図 4 の<u>光強度②</u>では葉緑体逃避反応の局在を示す。一方で,葉緑体逃避反応を完全に欠く変異体(変異体 Y)は,光強度に関係なく常に葉緑体集合反応の局在を示す。また,葉緑体集合反応を完全に欠く変異体(変異体 Z)は,光強度に関係なく常に葉緑体逃避反応の局在を示す。

1f5

図 5

47

葉緑体が損傷を受けずに光合成に利用できる最大の光強度は,60 キロルクスであるとする。このとき,図 4 の<u>光強度①</u>と<u>光強度②</u>において,変異体 Y および変異体 Z は,野生型と比べて光合成活性がどのように変化すると考えられるか,表 1 の (a)〜(f) の中から正しいものを 1 つずつ選びなさい。なお,細胞内に含まれる葉緑体数は,全て同一のものとする。

1t1

問 3.下線部③に関連する次の問いに答えなさい。

(1) 光屈性は,フォトトロピンによる青色光の感知と,植物ホルモンの先端から基底部へ一定の方向性をもった移動によって誘導される。光屈性に関与する植物ホルモンを答えなさい。また,この植物ホルモンのような移動様式を何というか答えなさい。

(2) フォトトロピンは,光屈性,葉緑体集合反応,および葉緑体逃避反応を誘導する。これら以外にフォトトロピンが誘導する応答を,(a)〜(d) の中から 1 つ選びなさい。

(a) 葉の展開  (b) 葉の老化の促進  (c) 気孔の閉鎖  (d) 重力屈性

(3) 植物の光受容体の中で,花芽形成の制御に関与する青色光受容体を 1 つ答えなさい。

48

問 4.下線部④に関連して,植物は周囲の光環境に応じて,茎の伸長成長を制御する。一般的に,赤色光下での茎の伸長成長制御には,フィトクロムタンパク質が関与する。そこで,全長のフィトクロムタンパク質のどの部分が,茎の伸長成長制御に重要かを調べるために,シロイヌナズナを用いて以下の実験を行った。

実験 1:図 6 に示すように,全長のフィトクロムタンパク質(全長),およびフィトクロムタンパク質をアミノ末端側(N 末)とカルボキシル末端側(C 末)に分けたタンパク質に,緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合させた(全長-GFP,N 末-GFP,C 末-GFP)。これらのタンパク質をコードする遺伝子を,フィトクロム変異体(フィトクロムタンパク質を完全に欠く変異体)に,それぞれ遺伝子導入し,遺伝子組換え植物(形質転換体)を作出した。また,作出した 3 つの形質転換体は,いずれも融合したタンパク質を適切に発現しており,フィトクロムタンパク質の発現量は,野生型(通常の植物)と同等であることを確認した。

次に,野生型,フィトクロム変異体,上記で作出した 3 つの形質転換体(全長-GFP 形質転換体,N 末-GFP 形質転換体,C 末-GFP 形質転換体)の種子を播種し,種子の発芽を誘導後,暗所,もしくは赤色光のみを照射する条件(赤色光条件)で 4 日間生育させた。図 7 に,4 日間生育させた植物体(芽生え)の胚軸(子葉と根の間の茎に相当する部分)の長さを測定した結果を示す。なお,実験で使用する植物を文中に波線で示した。

1f6

図 6

49
1f7

図 7

(1) 図 7 の結果の解釈として,フィトクロムタンパク質の N 末側は,植物の胚軸の伸長成長をどのように制御しているかについて,暗所と赤色光条件に分けて,(a)〜(c) の中からそれぞれ適切なものを 1 つ選びなさい。なお,解答には同じ記号を選んでもかまわない。また,GFP タンパク質単独,あるいは GFP とフィトクロムタンパク質との融合は,フィトクロムタンパク質の機能に一切影響を与えないものとする。

(a) 伸長の促進

(b) 伸長の抑制

(c) 制御に関与しない

50

実験 2:暗所と赤色光条件で生育させた 3 つの形質転換体について,芽生えの胚軸の細胞の GFP 蛍光を,蛍光顕微鏡を用いて観察した。その結果,全長のフィトクロムタンパク質は,暗所では細胞質に,赤色光条件では核に局在していた(図 8)。一方,いずれの光条件においても,N 末側のみのフィトクロムタンパク質は細胞質と核の両方に,C 末側のみのフィトクロムタンパク質は核のみに局在することが分かった(図 8)。

1f8

図 8

そこで,図 9 で示すように,N 末-GFP の断片に,タンパク質の局在場所を細胞質のみに限定できるアミノ酸配列(NES),もしくは核のみに限定できるアミノ酸配列(NLS)を付加した 2 つの形質転換体(N 末-GFP-NES 形質転換体,N 末-GFP-NLS 形質転換体)を新たに作出した。なお,作出した 2 つの形質転換体は,いずれも融合したタンパク質を適切に発現しており,フィトクロムタンパク質の発現量は,野生型と同等であることを確認した。

1f9

図 9

51

実験 1 と同様に,野生型,フィトクロム変異体,実験 1 で作出した全長-GFP 形質転換体,新たに作出した 2 つの形質転換体の種子を播種し,種子の発芽を誘導後,暗所,もしくは赤色光条件で 4 日間生育させた。図 10 に,芽生えの胚軸の長さを測定した結果を示す。また,実験で使用する植物を文中に波線で示した。

1f10

形質転換体はフィトクロム変異体に遺伝子を導入して作出

図 10

(2) 図 10 より,赤色光条件において,N 末-GFP-NES 形質転換体(N 末側のフィトクロムタンパク質が細胞質のみに局在する形質転換体)の胚軸の長さは,フィトクロム変異体と同程度であったのに対して,N 末-GFP-NLS 形質転換体(N 末側のフィトクロムタンパク質が核のみに局在する形質転換体)の胚軸の長さは,野生型および全長-GFP 形質転換体に比べ,著しく短くなることが分かった。この理由を,実験 1 および実験 2 の結果に基づき,フィトクロムタンパク質の C 末側の機能の観点から 60 字以内で説明しなさい。なお,NES および NLS のアミノ酸配列の単独発現は,胚軸の伸長成長に一切影響を与えないものとする。

52

第2問

次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。(25 点)

ヒトは,環境の変化に適応するため,多様な仕組みを進化させてきた。例えば視覚系では,周囲の光環境の変化に応じて網膜の感度が動的に調節される。明るい場所から暗い場所に移動した後,網膜の光感度が徐々に上昇していく過程は〔 ア 〕と呼ばれる。一方で,<u>ヒトの網膜には構造的な限界があるため,それを補う仕組みがある</u>①。

身体活動が活発になると,自律神経系の 1 つである〔 イ 〕神経系が優位となる。このとき急増するエネルギー需要は,〔 イ 〕神経系に応答して副腎髄質から分泌される〔 ウ 〕や<u>すい臓から分泌されるホルモンによる血糖調節</u>②,さらに<u>赤血球のヘモグロビンの質的・量的変化</u>③など複数の仕組みにより支えられる。

免疫システムもまた体内環境を守る重要な要素として発達してきた。このシステムは,マクロファージなどが異物を即座に排除する〔 エ 〕免疫と,T 細胞や B 細胞が特定の異物を記憶して応答する〔 オ 〕免疫に大別され,後者では B 細胞が産生する〔 カ 〕が抗原を特異的に認識する。こうした免疫応答は全身に拡がり,体温,代謝,さらには行動様式までも変化させる。

このように,ヒトの環境適応は,神経系,代謝系,免疫系などの多様な調節機構により実現される。

問 1.文章中の〔 ア 〕〜〔 カ 〕に入る適切な語句を答えなさい。

問 2.下線部①に関して,ヒトの網膜には視細胞のない盲斑があるが,通常はその視野の欠損に気づかない。こうした網膜の構造的な限界とそれを補う仕組みについて,2 つの印(●と+)が記載された図 1 を用いた実験を行い,次の結果を得た。

53
2f1

図 1

・右眼のみ(左眼を覆う)で●を注視しながら図 1 を右眼に近づけたり遠ざけたりすると,ある距離で+が消失した。

・左眼のみ(右眼を覆う)で+を注視しながら図 1 を左眼に近づけたり遠ざけたりすると,ある距離で●が消失した。

・両眼で観察した場合は,どちらの印を注視しても,図 1 との距離にかかわらず両方の印が常に見えた。

上記の実験結果について,以下の文章中の〔 キ 〕と〔 ク 〕に入る適切な語句の組み合わせを,(a)〜(d) から 1 つ選びなさい。

右眼の網膜において盲斑が存在するのは,注視している物体が投影される領域の〔 キ 〕側の領域である。片眼のみで見た場合には視野の欠損を認識できるが,両眼で見た場合には視野の欠損を認識できない。これは左右の眼の視野が重なっているうえ,脳の左右の視覚野が〔 ク 〕して欠損した情報を補うためである。

(a) キ:鼻 ク:連携

(b) キ:耳 ク:連携

(c) キ:鼻 ク:独立

(d) キ:耳 ク:独立

54

問 3.下線部②の具体例として,成人健常者にブドウ糖溶液を飲んでもらい,その後の血糖値と,血糖調節を担うすい臓の主要なホルモンであるホルモン A およびホルモン B の血中濃度を測定した。その結果を図 2 に示す。次の問いに答えなさい。

2f2

図 2

(1) すい臓の主要なホルモン A とホルモン B の名称をそれぞれ答えなさい。

(2) ホルモン B の働きとして,以下の文章中の〔 ケ 〕と〔 コ 〕に入る適切な語句の組み合わせを,(a)〜(f) から 1 つ選びなさい。

ホルモン B は肝臓でグリコーゲンの〔 ケ 〕を促進し,血液中へのグルコースの放出〔 コ 〕。

(a) ケ:合成 コ:を促進する

(b) ケ:分解 コ:を促進する

(c) ケ:合成 コ:は変化させない

(d) ケ:分解 コ:は変化させない

(e) ケ:合成 コ:を抑制する

(f) ケ:分解 コ:を抑制する

55

(3) 身体活動が活発になり,筋肉がエネルギー源として体内のブドウ糖を利用する際には,ホルモン A の分泌量はどう変化すると考えられるか。適切なものを,(a)〜(c) から選びなさい。

(a) 増加する  (b) 変化しない  (c) 減少する

問 4.下線部③に関して,ヒトは,体がおかれている生理的環境変化に応じて,短期的にはヘモグロビンの質を,長期的にはヘモグロビンの量も変化させて環境に適応する。この現象に関して,以下の問いに答えなさい。

(1) 短期的な環境適応の例として,運動時のヘモグロビンの酸素運搬機能の調節が挙げられる。運動によって筋肉における酸素を使ったエネルギー産生が高まると,二酸化炭素濃度の上昇と pH の低下が起こる。これらの変化は,筋肉内の血管を通過する赤血球のヘモグロビンの酸素結合力に影響を与え,酸素解離曲線は平常時(実線)から運動時(破線)へ右方に移動する(図 3)。なお,酸素解離曲線は,酸素分圧に応じたヘモグロビンの酸素結合率(飽和度)を示す。

2f3

図 3

運動時におけるヘモグロビンの質的変化(図 3)の意義について,同じ酸素分圧での平常時と運動時のヘモグロビンの酸素飽和度に着目して 60 字以内で述べなさい。

56

(2) 長期的な環境適応の例として,高地順応におけるヘモグロビン量の増加や酸素飽和度の調整による酸素運搬能力の向上が挙げられる。表 1 は,平地滞在時と高地順応後に測定した血液のデータである。平地滞在時に比べて,高地順応後の筋肉への酸素供給量は血液 1.0 mL あたり何 mL 増加したか。有効数字 2 桁で答えなさい。ただし,ヘモグロビン 1.0 g は 1.4 mL の酸素と結合するものとする。

2t1

(3) ヒトでは赤血球は一定の寿命(平均 120 日)で入れ替わり,常に産生と分解が釣り合うように調節されている。体重 60 kg の成人健常者の平地滞在時の血液 1.0 L あたりの赤血球数は 5.0×1012 個,血液の密度は 1.0 kg/L,体重に対する血液の質量比は 8.0 % とする。この成人が平地滞在時と数年間の高地順応後に測定したヘモグロビン濃度が表 1 の通りであったとき,以下の文章中の〔 サ 〕と〔 シ 〕に入る数値を有効数字 2 桁で答えなさい。ただし,赤血球 1 個あたりに含まれるヘモグロビン量は一定であり,ヘモグロビン濃度の増加比がそのまま赤血球数の増加比に反映されるものとする。また,ヘモグロビン濃度と赤血球数以外は平地滞在時と高地順応後で変化しないものと仮定する。

平地滞在時において 1 日あたりに産生される赤血球数は〔 サ 〕個である。高地順応後には,平地滞在時の産生量に比べて 1 日あたり〔 シ 〕個の赤血球が増加していると見積もられる。

58

第3問

以下の問いに答えなさい。(25 点)

問 1.減数分裂は配偶子を生み出すことで有性生殖を可能にする重要な細胞分裂様式である。減数分裂のもう一つの重要な側面は,生じる配偶子がもつ遺伝情報の多様性を生み出すことにある。減数分裂が配偶子ごとの遺伝情報の違いを生み出す仕組みは,主として減数〔 ア 〕分裂〔 イ 〕期において,対合した〔 ウ 〕染色体間で起こる〔 エ 〕と呼ばれる染色体の部分的な交換に基づいている。〔 エ 〕の結果,〔 ウ 〕染色体間で<u>の遺伝情報の入れ替わり,すなわち〔 オ 〕が起こる</u>①。その後,生み出された配偶子は受精を経て次世代を形成する。

(1) 文章中の〔 ア 〕〜〔 オ 〕に入る適切な語句を答えなさい。

(2) 下線部①に関連して次の問いに答えなさい。

ショウジョウバエの常染色体上に,正常体色を司る対立遺伝子 A および黒体色を司る対立遺伝子 a,そして正常眼色を司る対立遺伝子 B および紫眼色を司る対立遺伝子 b があったとする。これらの遺伝子座間において〔 オ 〕の現象が一回の減数分裂過程で 10 % の確率で生じるとする。遺伝子型が AaBb であるオス・メスを交配した場合,次世代の個体が示す表現型の出現頻度について最も適切なものを表 1 の①〜④から選びなさい。なお上記の A および B に対し,a および b はそれぞれ潜性であり,これらの遺伝子座は同一染色体上に存在し,各対立遺伝子は図 1 のように存在するとする。また,〔 オ 〕はオス・メスのショウジョウバエで等しく起こるものとする。

3f1

太線は染色体を,文字は対立遺伝子を表す。

図 1

59
3t1

問 2.卵は発生に必要な様々な物質を細胞質中に蓄えた大きな細胞である。ショウジョウバエの前後軸の形成においては,卵内にあらかじめ蓄積する mRNA やタンパク質などの分子(母性因子,母性効果遺伝子に由来する分子)の偏りをもった分布が重要な役割をもつ。このような分子のうち<u>卵前方に局在するビコイド mRNA は,受精後に翻訳されタンパク質となり胚の前方部を形づくる</u>①。一方,<u>卵後方に蓄積するナノス mRNA は,受精後に翻訳されタンパク質となり胚の後方部(腹部)を形づくる</u>②。ビコイド mRNA とナノス mRNA の卵への蓄積は,ショウジョウバエ卵巣中における卵を作り出す過程(卵形成過程)において生じる。

(1) 下線部①に関連して,次の問いに答えなさい。

ビコイド遺伝子について,正常な働きをもつタンパク質をコードする対立遺伝子を M,機能を欠いたタンパク質をコードする対立遺伝子を m とした場合,前方部の形成不全が起こる胚となる受精卵を生み出すオス・メスショウジョウバエの遺伝子型の組み合わせとして適切なものを次の (a)〜(i) から全て選びなさい。なお,m は M に対し潜性であるとする。

(a) オス:MM メス:MM  (b) オス:Mm メス:MM

(c) オス:mm メス:MM  (d) オス:MM メス:Mm

(e) オス:Mm メス:Mm  (f) オス:mm メス:Mm

(g) オス:MM メス:mm  (h) オス:Mm メス:mm

(i) オス:mm メス:mm

60

(2) 下線部②に関連して,次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。

ナノスタンパク質を欠く受精卵に由来する胚は,胚の後方部(腹部)の形成が起きなくなる表現型を示す。また,ナノスタンパク質を欠く受精卵では,ハンチバック遺伝子に由来する分子(ハンチバック mRNA,ハンチバックタンパク質)の量が,正常な胚に比べて図 2 のように変化する。

3f2

図は受精卵の後方を表す。白色は分子の蓄積がないことを,灰色は分子が蓄積していることを示す。

図 2

(i) 『ナノスタンパク質を欠く受精卵に由来する胚で,胚の後方部(腹部)の形成が起きなくなる原因が,図 2 に示したハンチバックタンパク質の量の変化に起因するという仮説』を証明したい。この仮説を証明するために,ナノスタンパク質を欠く受精卵に対し行う操作として適切なものを,次の①〜③から 1 つ選びなさい。

① ナノス mRNA を増やす。

② ハンチバック mRNA を増やす。

③ ハンチバック mRNA を減らす。

(ii) 前問 (i) の操作を行った受精卵に由来する胚がどのような表現型を示せば仮説が正しいと証明できるかを 40 字以内で答えなさい。

(3) 図 2 に示す結果に基づき,ナノスタンパク質がハンチバック mRNA に対し,どのように作用するかを 40 字以内で述べなさい。

61

問 3.以下の文章中の〔 カ 〕〜〔 ケ 〕に入る適切な語句を答えなさい。

ショウジョウバエの胚の前後軸が指定された後,複数の調節遺伝子が前後軸に沿って異なった場所で発現するようになる。発現する調節遺伝子の組み合わせにより,さらに別のグループの遺伝子が働いて,胚は前後軸に沿った節(体節)が並んだ状態を形づくる。前後軸に沿った体節をつくる遺伝子を総称して〔 カ 〕遺伝子という。〔 カ 〕遺伝子には発現が始まる時期などによって 3 つのグループがあり,例えば前後軸が指定された後,初めに発現することで胚の大まかな区画化を行う〔 キ 〕遺伝子群などがある。一連の〔 カ 〕遺伝子の働きにより形成されたそれぞれの体節が,その後の発生において成体のどの部位になるかは,〔 ク 〕遺伝子と呼ばれる調節遺伝子の働きによって決まる。〔 ク 〕遺伝子に由来するタンパク質は,それぞれ非常によく似かよった〔 ケ 〕と呼ばれるアミノ酸配列をもつことが特徴である。〔 ク 〕遺伝子は,ショウジョウバエに限らずほとんど全ての動物のゲノムに存在し,動物の形づくりに働いている。

62

第4問

次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。(25 点)

細胞増殖を促進するタンパク質である上皮成長因子(EGF)は,正常状態では上皮成長因子受容体(EGFR)に結合し,細胞の成長や増殖を調節する。しかし,EGFR 遺伝子に変異が起こると細胞増殖の制御ができず,無秩序に細胞が増殖し,がんが発生しやすくなることが知られている。この EGFR の性質を調べるために,実験 1〜4 を行った。

実験 1:ヒト肺がん細胞から RNA を抽出し,<u>RNA を用いて相補的な DNA を合成した</u>①。得られた DNA を鋳型にしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って EGFR 遺伝子を増幅した。

問 1.下線部①のように RNA から DNA を合成する反応の名称を答えなさい。

問 2.以下の文章中の〔 ア 〕〜〔 ウ 〕に入る適切な語句を答えなさい。

DNA を構成するアデニン(A),チミン(T),グアニン(G),シトシン(C)は,A−T 間では〔 ア 〕本,G−C 間では〔 イ 〕本の〔 ウ 〕結合を形成して,二重らせん構造を維持する。

問 3.図 1 の点線の内側は,遺伝子を増幅する過程の 1 サイクル目の PCR の温度条件を示す。図中の①,②の過程で起こる反応をそれぞれ 30 字以内で答えなさい。矢印は時間の経過を示す。

4f1
63

実験 2:実験 1 で得られた PCR 産物の遺伝子配列を確認したところ,正常な EGFR と比較して,858 番のロイシン(L)がアルギニン(R)に変異していた。肺がんでは,この変異以外に 790 番のチロシン(T)のメチオニン(M)への変異も多く検出されている。そこで,790 番と 858 番の 2 つのアミノ酸に変異を有する EGFR 遺伝子を作製することにした。これ以降,正常な EGFR と各アミノ酸変異を T790M,L858R と表記し,それぞれに対応する遺伝子を EGFR(正常型),EGFR(L858R),EGFR(T790M/L858R)と称する。なお,ヒト EGFR は 1,210 個のアミノ酸からなる。

実験 1 で得られた EGFR(L858R)遺伝子を用いて,図 2 に示す方法で EGFR(T790M/L858R)遺伝子を作製するために,フォワード 1(F1)プライマーとリバース 1(R1)プライマー,フォワード 2(F2)プライマーとリバース 2(R2)プライマーを設計した。

・1 回目の PCR では,F1 プライマーと R1 プライマーを使用して,1 塩基から 2,391 塩基までを増幅した。

・2 回目の PCR では,F2 プライマーと R2 プライマーを使用して,2,349 塩基から必要箇所までを増幅した。

・3 回目の PCR では,1 回目と 2 回目の PCR 産物を混合して鋳型とし,F1 プライマーと R2 プライマーを使用して,EGFR(T790M/L858R)遺伝子を作製した。

4f2

図 2

64

問 4.R1 プライマーの設計には,図 3 に示す EGFR(L858R)の 786 番(バリン:V)から 797 番(システイン:C)のアミノ酸配列(上段)と,それらのアミノ酸をコードする塩基配列(下段)の 2,356 番(g)から 2,391 番(c)までの配列情報を用いた。

4f3

図 3

R1 プライマーの設計で正しいのは (ア)〜(エ) のどれか選びなさい。

(ア) 5′- gtg cag ctc atc acg cag ctc atg ccc ttc ggc tgc -3′

(イ) 5′- gtg cag ctc atc atg cag ctc atg ccc ttc ggc tgc -3′

(ウ) 5′- gca gcc gaa ggg cat gag ctg cgt gat gag ctg cac -3′

(エ) 5′- gca gcc gaa ggg cat gag ctg cat gat gag ctg cac -3′

問 5.R2 プライマーの設計には,図 4 に示す EGFR(L858R)の 1,199 番(アルギニン:R)から 1,210 番(アラニン:A)のアミノ酸配列(上段)と,それらのアミノ酸をコードする塩基配列(下段)の 3,595 番(a)から終始コドン(*)の 3,633 番(a)までの配列情報を用いた。なお,R2 プライマーを用いて作製する EGFR(T790M/L858R)遺伝子は,読み枠を合わせて 3′ 末端側に蛍光タンパク質の遺伝子配列を直接融合させてプラスミドを作製する。

4f4

図 4

R2 プライマーの設計で正しいのは (ア)〜(エ) のどれか選びなさい。

(ア) 5′- agt acg agg tta ttt aag tga cga aac acc gcg ctg -3′

(イ) 5′- acg agg tta ttt aag tga cga aac acc gcg ctg gga -3′

(ウ) 5′- tgc tcc aat aaa ttc act gct ttg tgg cgc gac cct -3′

(エ) 5′- tca tgc tcc aat aaa ttc act gct ttg tgg cgc gac -3′

65

実験 3:プラスミドを細胞株に導入し,任意のタンパク質を細胞に過剰発現させることで目的のタンパク質の機能を評価できる。機能評価では,プラスミドが導入されなかった細胞は解析しないため,プラスミドが導入される細胞の割合(導入率)は重要である。このシステムを用いるために,蛍光タンパク質を発現するプラスミドを用いてプラスミド導入試薬 A〜D のうち最適な導入試薬を検討した。表 1 に,試薬処理前と試薬処理 48 時間後の全細胞数と蛍光タンパク質発現細胞数の計測結果を示す。

4t1

問 6.細胞へのプラスミドの導入率が最も高いのは,試薬 A〜D のどれか 1 つ答えなさい。ただし,使用したプラスミドと試薬の濃度は全て同じである。細胞に導入されたプラスミドは細胞内で全て蛍光タンパク質を発現することとする。このプラスミド自体は細胞の生存・増殖には影響しないものとする。

66

実験 4:次に,EGFR(正常型)遺伝子と実験 2 で作製した EGFR(T790M/L858R)遺伝子の 3′ 末端側に蛍光タンパク質の遺伝子配列を直接融合させたプラスミドを作製した。これらを使って,新規抗がん剤の探索のために,EGFR(T790M/L858R)を発現させた細胞の細胞増殖率を強く抑制する薬剤を見つけることにした。各プラスミドをヒト肺がん由来の細胞に実験 3 で選んだ試薬を用いて導入し,過剰発現させた。その細胞に,抗がん剤の候補化合物 X,Y,Z を各濃度(0.001〜10 μM)で処理し,48 時間後に蛍光タンパク質発現細胞数を測定した。比較対象として候補化合物と等量の溶媒のみを処理した未処理群を作製し,未処理群の蛍光タンパク質発現細胞数を 100 % としてそれぞれの蛍光タンパク質発現細胞の割合を算出した。EGFR(正常型)遺伝子を導入した細胞の結果を図 5 左,EGFR(T790M/L858R)遺伝子を導入した細胞の結果を図 5 右に示す。ただし,各群において使用した細胞数は同じで,プラスミドは全群において同じ割合で細胞に導入され,細胞に導入されたプラスミドは全て蛍光タンパク質を発現するものとする。

4f5

図 5

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問 7.ヒト肺がん由来の細胞を使用した実験 4 の結果を適切に考察しているのはどれか。(ア)〜(カ) から 2 つ選びなさい。なお,化合物による抗がん作用とは,細胞増殖を抑制し細胞死を誘導することとする。

(ア) 化合物 X は,EGFR(正常型)を発現させた細胞に対して抗がん作用を示すが,EGFR(T790M/L858R)を発現させた細胞に対してはそのような効果は小さい。

(イ) 化合物 X は,EGFR(正常型)あるいは EGFR(T790M/L858R)を発現させたどちらの細胞においても,投与濃度を下げると抗がん作用を示す。

(ウ) EGFR(T790M/L858R)を発現させた細胞に化合物 Y を処理した場合,50 % の細胞が生存する濃度は 0.01 μM である。

(エ) 化合物 Y は,EGFR(正常型)を発現させた細胞と比較して,EGFR(T790M/L858R)を発現させた細胞に対して,強い抗がん作用をもつことから,抗がん剤候補化合物として適している。

(オ) 化合物 Z は,EGFR(正常型)あるいは EGFR(T790M/L858R)を発現させたどちらの細胞においても,細胞増殖を促進する。

(カ) 化合物 Z は,EGFR(T790M/L858R)を発現させた細胞に対して,化合物 Y より強い抗がん作用を示す。

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第5問

次の文章を読み,以下の問いに答えなさい。(25 点)

問 1.生物を対象とした分類学は,18 世紀中頃,スウェーデンの生物学者〔 ア 〕によって体系化された。〔 ア 〕は生物に二名法に基づいた世界共通の名前である〔 イ 〕を付けることを提唱した。この方法の導入により,生物の名前や分類に統一性が生まれ,研究成果を広く共有できるようになった。現在では,生物間の系統関係を調べた結果を踏まえ,生物は階層的に分類・整理されている。特に,<u>界より上位の分類階級はドメインと呼ばれ,3 つのグループから構成されている</u>①。

(1) 文章中の〔 ア 〕,〔 イ 〕に入る適切な語句を答えなさい。

(2) 下線部①に関して,ドメインを構成する 3 つのグループを全て答えなさい。

問 2.ダーウィンは調査船ビーグル号に乗り,約 5 年の歳月をかけて南米やアフリカなどを訪問した。帰国後,1859 年に「種の起源」を出版し,観察した動植物を紹介するとともに,進化の原動力として自然選択を提唱した。自然選択とは,環境に適応した形質をもつ個体が生き残りやすく,その特徴が次世代に受け継がれる仕組みである。

自然選択の存在を明らかにするために,これまでに様々な調査が行われてきた。例えば,<u>生命表</u>①は発育段階ごとの生存数や死亡数をまとめたもので,どの発育段階で自然選択が強く働いているかを示すことができる。<u>生存曲線は生命表をもとに生存個体数の推移をグラフ化したものであり,生物の生存曲線には代表的に 3 つの型が知られている</u>②。

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(1) 下線部①に関して,生物 P の生命表を調査したところ,表 1 の結果が得られた。表 1 の (a)〜(d) にあてはまる数字を答えなさい。

5t1

(2) 下線部②に関して,生物 Q,R の生命表を調査したところ,表 2 の結果が得られた。また,生存曲線は図 1 のようになった。生物 Q と R に該当するものを,(a)〜(d) の中からそれぞれ 1 つ選びなさい。

(a) イワシ  (b) シジュウカラ  (c) ヒト  (d) ミツバチ

5t2
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問 3.生物の進化のうち,集団内での遺伝的構成が変化し,それに伴って,種内の形質などが変化することがある。こうした現象を小進化と呼ぶ。虫こぶを形成するミバエにおいては,生物間相互作用による小進化が報告されている。虫こぶとは,昆虫が植物に何らかの刺激を与え,植物組織を異常に肥大させるなどして形成された構造のことである。

5f1

ミバエは草原環境から森林環境まで広く生息しており,キク科のソリダゴという植物にのみ虫こぶを形成することが分かっている。ミバエの生活史は図 2 のとおりである。メス成虫はソリダゴの茎に卵を産み込む。産み込まれた卵はほどなくしてふ化する。ふ化した幼虫は,組織肥大を誘導する物質をソリダゴの茎に注入する。これにより虫こぶの形成が始まり,幼虫を覆うように茎が肥大化し,球形の虫こぶとなる。虫こぶは幼虫の成長とともに肥大化し成熟する。成熟した虫こぶの直径には多様性があり,直径 12 mm 程度の小さい虫こぶから,直径 22 mm 程度の大きい虫こぶもみられる。ミバエ幼虫は虫こぶの内側の植物組織をエサとして成長し,やがてサナギとなる。羽化した成虫は,虫こぶの壁をかみ破り植物体外へ飛び立つ。

ミバエには 2 種の天敵がいる。1 つは,草原環境と森林環境の両方に生息するカタビロコバチという寄生蜂である。カタビロコバチは虫こぶの外から産卵管を差し込み,中にいるミバエ幼虫に自らの卵を産み付け寄生する。寄生されたミバエは死亡する。もう 1 つは,森林環境のみに生息するコガラという野鳥である。コガラはくちばしで虫こぶに穴をあけ,中にいるミバエ幼虫を捕食する。

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草原環境と森林環境において,虫こぶの直径ごとに,生き残ったミバエの割合,カタビロコバチに寄生されたミバエの割合,コガラに捕食されたミバエの割合を調査したところ,図 3 の結果が得られた。

なお,ミバエの死亡要因はカタビロコバチによる寄生とコガラによる捕食のみとする。また,大きい虫こぶを作るミバエと小さい虫こぶを作るミバエでは,羽化時期や発育期間などの生態的な特徴は同じとする。

5f2

図 3

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図 3 の (a),(b) にあてはまるグラフを次の選択肢①〜⑧の中から,それぞれ 1 つ選びなさい。また,草原環境と森林環境において,虫こぶの大きさにどのような自然選択が働いていると解釈できるか。理由とともに 60 字以内で説明しなさい。なお,同じ選択肢を複数回選んでもよい。

5f3